2023年05月27日
英語の成績の上がりやすい子、上がりにくい子。

都立小金井公園のヒナゲシ。
今年もきれいに咲いていました。
さて、今回は、英語の成績の上がりやすい子は、どういう子かという話。
それはもう指示したことをその通りに実行してくれる子が一番成績が上がりやすいです。
これをやりなさい、と私が言ったことをその通りにやる子です。
しかし、これがなかなか難しいのが現実です。
本人の判断で、助言されたことを実行しない子もいます。
反抗しようと思っているわけではなく、指示通りにやろうとしても、できない子もいます。
英語で多いのが、授業を受けるのに、学校の教科書を持ってこない子です。
単純に忘れてしまうようです。
学校に置きっぱなしなのでしょう。
今は、公立中学ではむしろ「置き勉」を推奨する動きもあります。
しかし、それは、普段は家庭では使わないだろう重い紙の辞書や社会や理科の教科書、資料集などの話だと思うのです。
英語の教科書なんて薄いし、家庭学習に必要なのに、学校に置きっぱなし。
高校生にもいます。
塾の英語の授業では、高校の英語コミュニケーションの教科書本文を1文ずつ読んで訳してもらっています。
今どき古くさいやり方のようですが、結局、英文を英文のままざっくり読んで、学校の先生から全訳プリントをもらって意味を理解しているだけの子の中には、実は自力では全く英文を読めない子たちがいます。
そうした子たちの指導には、やはり1文ずつ丁寧に読んで訳す過程が必要です。
昔のように、日本語の順番に直すことはしません。
英文の意味のまとまりごとに、日本語に直していくだけです。
直訳で構いません。
英文の意味を本当に理解しているかどうかの確認をしているのです。
そして、訳してもらった後は、重要文にアンダーラインを引いた全訳プリントを渡しています。
重要文とは、文法重要事項が含まれている文と、重要表現を含む文です。
その暗唱が宿題です。
暗唱といっても、お経のような丸暗記ではなく、全訳を見ながら、意味のまとまりごとに復元していく練習です。
英文の構造把握の練習でもあります。
これをやっておけば、空所補充問題も乱文整序問題も、和文英訳問題も大丈夫。
一度自力で訳した英文は内容の理解も深まり、内容に関する問題の精度も上がります。
基本的に、この繰り返しで、英語コミュニケーションの教科書範囲の問題は確実に得点が上がっていきます。
ところが、この授業の流れをなし崩しに破壊していく生徒もいます。
教科書を忘れてくるんです。
例えば、
「プリントなら持っています」
という子。
高校の英語の先生も、今は本当に親切なので、教科書本文を行間をかなり空けて印刷しているプリントを配ってくれることが多いです。
そこに、生徒は、和訳や重要文法事項を書き込めばいいようになっています。
それは、教科書にカタカナで読み方を書き込んだり意味を書き込んだりするのを止める意味があると思います。
教科書にそんなものを書き込んだら、その助けを常に借りて英文を読むことになります。
結果として、そうした補助のない定期テストでは、まるで初めて読む英文のように意味がわからない・・・ということになります。
教科書は、常にまっさらに。
それを読んで意味がわかるようにしておく。
英語学習の基本です。
「プリントなら持っています」
という子。
そのプリントには、当然、文法上の注意事項や全訳が書き込まれていました。
「・・・私はこれからあなたに、いつものように、教科書本文を読んで訳してもらおうと思うのですが、あなたは、それを、訳が全部書き込んであるそのプリントでやるのですか?」
「・・・」
「その時間に何の意味があるんですか?」
「・・・」
「意味のある学習をしましょうよ」
「・・・」
それは、教科書を単純に忘れただけなのか。
それとも、本当に、そのプリントで大丈夫だと思い込んで、故意に教科書を持ってこなかったのか。
後者の可能性もあるところが、子どもの判断力の怖いところです。
また別のとき。
その子は、やはり教科書を持ってこなかったのですが、
「スマホに全文入っていますから、大丈夫です」
と言いました。
スマホで、教科書本文を撮影したのでしょうか?
なぜ、わざわざそんなことを・・・?
意味はわからないですが、それで学習できないわけではないですから様子を見ていますと、なかなか画面が出てこないのでした。
「・・・どうしました?」
「何か、画面にぐるぐる回る円が出てきて、それから白いままで・・・」
「・・・あなたのスマホで撮影した画像ではないのですか?」
「サイトからダウンロードするんです」
「・・・」
どこのサイト?
教科書会社のサイト?
学校のサイト?
今の高校生は、学習する際に、デジタル面で色々な特典を享受していますが、そのすべてが常に万全に機能するとは限りません。
ついに、その時間内に、サイトにアクセスすることができませんでした。
デジタルなんて、そんなものです。
便利なようで、いざというときに使えないことも覚悟しておかなければならないのがデジタルです。
紙の教科書を毎回持ってきなさいよー。
なぜ、そんな簡単なことが実行できないのー?
そうやって、1週また1週と学習が遅れているのに、定期テストのときだけ、
「何で塾に通っているのに、成績が上がらないんだろう?」
と変な顔をされても困るんですよ。
障壁は、あなたなのよー。
私は、あなたの成績を上げたいのだよー。
英語の「論理・表現」も、学校のテキストを持ってこない子がいます。
もしも、私が、学校のテキストで文法を解説し、学校のテキストの練習問題を授業中に解くのならば、嬉々として持ってくるのだと思いますが、そういうことは、自分でやるように話しています。
それを面倒見ていると、むしろ、成績が下がっていく可能性のほうが高いのです。
昔、大手の個別指導塾で働いていた頃は、そういうことを生徒に要望されることが多く、対応に苦慮しました。
数学でも英語でも、学校から配布されるテキストや問題集だけをやりたがるのです。
それすら自力ではできない子の場合はまた話が違ってきますが、普通の理解力のある子ならば、学校のテキストや問題集は自分で解けます。
塾では、同じ進度で別の問題を解くことで理解を深め、演習量を増やすのが学習上の効果が高いです。
しかし、個別指導塾に中学生・高校生が期待することは、学校の問題集や宿題を一緒に解いてほしい、わからないところを教えてほしい、ということだったりします。
それをやっていると、多くの場合、だんだんと本人が考えなくなってしまうのです。
ちょっと解けないと、すぐ諦める。
私が解くのを待っている。
私の解説を聞いて理解できれば、それでOKだと思ってしまう。
「解説を聞いて理解できる」ことと「自力で類題が解ける」こととは、次元の違うこと。
そういうことがわかっているのか、いないのか。
わかっていても、楽なほうに流れてしまうのかもしれません。
塾に通うということは、学習量が増えるということでなければおかしいです。
市販では手に入らない良い教材で、多くの演習ができるということ。
わからないことを解決するのはもちろん重要なのですが、「わかった」だけではダメなのです。
「わかった」ことを「自力で解ける」に変えていくには多くの演習が必要です。
それを保証するのが塾という場です。
ところが、学校のテキストで教えていると、学校のテキストすら自力で解かなくなる子が現れます。
もちろん、それ以外の勉強なんかやりません。
真面目で、人一倍成績のことを気にしている子が、そうなってしまうことがあります。
学校のテキストをやりたいのは、学校の先生に優等生と見られたいから。
学校推薦か総合型選抜で大学に行くつもりなので、学校の成績がとにかく大事。
それはわかります。
「では、学校の定期テストは、学校の問題集と全く同じ問題しか出題されないのですか?」
と尋ねると、ぐっと答に詰まってしまう子もいます。
そこまで定期テストの点数を気にしているのなら、受けた後のテストを正確に分析しましょう。
学校の問題集と1字1句たがわぬそっくり問題しか出ないのならば、私も、学校の問題集で教えます。
でも、類題が出題されるのであるなら、学校の問題集だけ解いていてもダメじゃないの?
そのように説明すると、さすがにその損得は理解できるようで、学校のテキストの問題を塾で解くことは諦めてくれます。
大手の個別指導塾で働いた頃は、この問題の解決がつかないことがありました。
生徒本人と、講師と、保護者と、教務(塾の正社員)。
この四者の思惑が絡まってしまうのです。
私が生徒を説得しても、生徒が家に帰って保護者に何か違う伝え方をして、保護者から教務にクレームがくる可能性は常にありました。
その場合に、教務が私をかばってくれることはありません。
クレームがきたら、講師を変えるだけです。
それが特に間違っているとも思えません。
組織としては、そういう判断になるでしょう。
そうなると、講師側は、保身のため、生徒の望む通りの授業をすることになります。
波風立てないことが一番大切。
成績は上がらなくても、生徒本人の希望通りの授業をしている限り、講師を変えるとか塾をやめるということにはならないから・・・。
これは、構造的な問題で、誰が悪いということではないのです。
大きな組織は、そうなってしまいます。
生徒の成績を上げたいという目標は1つのはずなのですが。
自分の学習のやり方では成績が伸びないから塾に来るのに、結局、自分のスタイルを通したい子は多いのです。
大人の言うことにいちいち懐疑的になる年齢なので、単純に強要もできません。
説得を繰り返していかなければならない中で、早めに了解して助言通りにやってくれる子は、成績が上がっていきます。
一方、本人の望んでいることと私の要求することがなかなか一致しない場合、その間は成績は上がらないことが多いです。
特に、本人が「わからないところを教えてもらいたい」という認識だけで個別指導塾に入ってくると、なかなか成績が上がらないことがあります。
これは、一見優等生で真面目な印象の子に多いのです。
さて、そんなわけで、論理・表現の学校のテキストを塾に持ってこない・・・。
「動名詞の慣用表現は、学校のテキストには何が載っていますか?テキストを出して」
「・・・持ってきていません」
「・・・では、学校のテキストにどれが載っていたか、この塾のテキストで見て、思い出せるものはありますか?」
「・・・」
「慣用表現は、学校のテキストに小さい字でまとめて書いてあるので、あまり大事じゃないと思うでしょう?でも、テストに出るのは、それですよ」
「・・・」
英文法が苦手な子には、さまざまな理由があります。
根本は、そもそも英文法の意義を認めていない。
そんなものを学習しなくても、大丈夫だと誤解しています。
そんなのじゃない英語の勉強をしたいと、本人は願っています。
これも、結局、自分の考え、自分の学習スタイルを通したいことの現れでしょう。
その認識を改めない限り、成績は上がりません。
しかし、英文法の意義は認めていても、学習が下手な子もいます。
英文法のテキストの各単元の冒頭は、中学の復習です。
例えば、「動名詞」ならば、まずは、普通に動名詞を用いた例文が並んでいます。
動名詞が主語の文。
動名詞が目的語の文。
動名詞が補語の文。
そんなもの、生徒にとっては大差ありません。
どうでもいい。
全部中学の復習だ。
これならわかる、と思うと、それでもう大丈夫だと誤解してしまう子がいます。
希望的観測が優先されてしまうようです。
しかし、高校で学習する動名詞は、その先の内容です。
動名詞の意味上の主語。
動名詞の否定形。
動名詞の完了形。
動名詞の受動態。
さらに、慣用表現。
こちらが高校で新出の内容で、定期テストに出るのは、当然そちらのほうなのですが、学習のポイントが理解できず、ズレてしまうのです。
学校の英文法テキストは、左側が解説ページ、右側が練習問題ページの構成のものが普通です。
右側の練習問題を解くことで、自分の理解のズレに気がついて修正できる子もいます。
しかし、できない子もいるのです。
自分が何で誤答しているのか、よくわからない。
何を問われている問題なのか、把握していない。
さて、定期テスト直前。
「では、学校のテキストの問題を解き直しましょうか。テキストを開いて」
と私が言うと、さすがに定期テスト直前は、学校のテキストを持ってきていますが、見ると、問題の答を全部テキストに直接書き込んでいる子がいます。
「・・・テキストに答を直接書き込むなと、言いましたよね。解き直せなくなるから。ノートに解きなさいと言いましたよね?」
「・・・」
高校生になっても、「書き込み式ドリル」が大好きで、ノートに解くのはあまり好きではない・・・。
その癖が強く、注意されたことも忘れ、つい書き込んでしまう・・・。
気持ちはわかるのです。
でも、そこを改めないと、成績は上がりません。
やってはいけない、と言われていても直せない。
その繰り返しです。
このように、幾度か失敗を繰り返して、ようやく、生徒の成績は少しずつ上がっていきます。
Posted by セギ at 13:48│Comments(0)
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