たまりば

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2020年01月22日

高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。2次方程式の解の正負。



今回も「複素数」。
まずは、複素数の範囲での因数分解です。

問題 x4+3x2-40 を次の範囲で因数分解せよ。
(1)有理数 (2)実数 (3)複素数

こうした問題でネックとなるのは、数学用語の理解です。
「有理数」「実数」「複素数」の定義を覚えていないと、問題が要求していることがよくわかりません。
言葉の定義がわからない場合は、下の記事に戻って、ご確認ください。
https://seghi.tamaliver.jp/e469030.html

(1)有理数
「有理数」の範囲での因数分解というのは、今まで通りの因数分解ということです。
x4+3x2-40
=(x2+8)(x2-5)
これ以上はどうにもならない。
これが有理数の範囲での因数分解です。

(2)実数
実数は、有理数の外側に無理数を含んだ集合です。
平たく言えば、√ が出てきても良いのです。
ならば、( )の中はまだ分解できますね。
a2-b2=(a+b)(a-b) の公式を使えば後ろのほうの( )をさらに分解できます。

(x2+8)(x2-5)
=(x2+8)(x+√5)(x-√5)

(3)複素数
複素数の範囲での因数分解ならば、前のほうの( )も分解できます。
まずは、x2+8=0 を解いてみましょう。
x2=-8
x=±√-8
x=±2√2 i
この解から逆に2次方程式を復元するなら、
(x-2√2 i)(x+2√2 i)=0 
となります。
これが、最初の x2+8=0 と等しいのですから、
x2+8=(x-2√2 i)(x+2√2 i)
と分解できます。
公式 a2-b2=(a+b)(a-b) を利用しても同じです。
x2+8
=x2-(-8)
=x2-(2√2 i)2
=(x+2√2 i)(x-2√2 i)

よって、(3)の答えは、
(x+2√2 i)(x-2√2 i)(x+√5)(x-√5)
となります。

( )内が全てxの1次式に因数分解できました。
あとは、ここまでやる必要があるのかどうかということ。
やりたいならば、ここまでできるということなのです。


問題 2次方程式x2+2(a+2)x-a=0 が-3と2の間に異なる2つの解をもつような定数aの範囲を定めよ。

2次方程式の解の正負に関する問題です。
数Ⅰ範囲でのこの典型題については、以下に解説してありますので、ご覧ください。

http://seghi.tamaliver.jp/e446027.html

以下は、上のページをご参照いただいた、あるいは、その典型題なら理解していることを前提に解説が進みます。

f(x)=x2+2(a+2)x-a とおきます。
これは下に凸に放物線のグラフとなります。
それが、-3と2の間で2か所、x軸と交われば良いのです。
まずは、その通りのグラフを描いて考えます。
このようなグラフにするためには、ともかく、x軸と2点で交わらなければならないので、判別式を用いましょう。
判別式D>0 ならば、x軸と2点で交わります。

ここのところで、「え?」となってしまう人もいると思います。
「D>0ならば、放物線は、x軸の上に浮いて、交わらないんじゃないの?」
と言う子は多いです。
感覚的にわからないでもない誤解ですが、判別式は、そういうものではないです。
判別式は、放物線のグラフの概形とそのように短絡的につながるものではありません。

判別式は、2次方程式の解の公式の√ 部分の中身です。
√ 部分の中身が0ならば、2次方程式の解は、1つ、すなわち重解となります。
2次関数のグラフで言えば、x軸と接している状態です。
√ 部分の中身が正の数ならば、2次方程式の解は、2つの実数解となります。
2次関数のグラフで言えば、x軸と2点で交わっています。
√ 部分の中身が負の数ならば、2次方程式の解は、2つの虚数解となります。
グラフで言えば、x軸とは共有点がない、平たく言えば、下に凸のグラフならばX軸より上に浮いています。
それを判別するのが判別式でした。

グラフがx軸より上に浮いているからD>0ではないのです。
異なる2つの解をもつ、すなわちx軸と2か所で交わるから、D>0なのです。

[1]判別式D>0より
D/4=(a+2)2+a>0
a2+4a+4+a>0
a2+5a+4>0
(a+1)(a+4)>0
a<-4,-1<a ・・・①

この計算過程でも、「何をどうやっているのか、わからない」と混乱する高校生はいます。
2次不等式の解き方を忘れてしまっているのです。
わからない場合は、下のページを見てください。
http://seghi.tamaliver.jp/e445206.html

数Ⅱを高校生に教えていて困るのは、数Ⅰで学習したことをほとんど忘れている場合があること。
数Ⅰの内容が身についていないと、数Ⅱを学習していくのには多くの困難があります。
数Ⅱで新しく学ぶ内容がわからないわけではないのです。
数Ⅰで学習済みの内容がわからないのです。
数Ⅱで突然つまずくわけではないのです。
数Ⅰが身についていないから、その上にはもう何も積み上がらないだけなのです。

「でも、何を復習したら良いのかわからない」
という反応がありがちです。
復習して無駄な箇所などありませんので、自分で曖昧になっていると感じるところをどこからでも復習しましょう。
今回は、2次不等式の計算が必要なのに、そこが曖昧だと気づいたら、そこを復習してください。
春休みなどの時間があるときにまとまった復習をしたいのならば、特に「2次関数」と「三角比」は、今後もずっとネックとなり続けるので、最優先の復習課題です。
応用問題はわからなくても何とかなるので、基本の定理や計算方法とのその意味はわかるようにしておくと、数Ⅱの学習が随分楽になります。

さて、問題に戻りましょう。
x軸との交点が2つあることから、とにかく、[1]の条件を考えました。
他にどんな条件を満たせば、解は、-3と2との間に2つあるのでしょうか。
1つには、放物線の軸が、-3と2との間にあると良いですね。
y=ax2+bx+cの軸の方程式は、x=-b/2a でした。
それを用います。
(ここのところを唐突に感じたら、数Ⅰ「2次関数」の軸の方程式のところを復習してください)

[2]軸の方程式より
-3<-2(a+2)/2<2
-3<-a-2<2
-1<-a<4
1>a>-4
-4<a<1 ・・・②

しかし、この条件だけでは、放物線は横にだらんと広がり、-3と2の間にx軸との交点が2つあることにならないかもしれません。
ここで、あと2つの条件に気づきます。
f(-3)>0 と、f(2)>0 です。
x=-3のときのyの値が0より大きいならば、その右側で、放物線x軸と交わっているてしょう。
x=2のときのyの値が0より大きいならば、その左側で、放物線はx軸と交わっています。

[3] f(-3)>0, f(2)>0 より
f(-3)=(-3)2+2(a+2)(-3)-a>0
9-6(a+2)-a>0
9-6a-12-a>0
-7a-3>0
-7a>3
a<-3/7 ・・・③

f(2)=22+2(a+2)×2-a>0
4+4(a+2)-a>0
4+4a+8-a>0
3a+12>0
3a>-12
a>-4 ・・・④

これでグラフはイメージ通りの形になりますね。
よって、①~④より、
-1<a<-3/7となります。


2次方程式の解の正負に関する問題は、数Ⅰのときも数Ⅱのときも、テストに出て当然の典型題なのですが、難しいせいか、出ないことを祈る、祈っているから出ないだろうという訳のわからない神頼みで避けて通る人がいます。
意味を理解しながら、自力で解けるように練習を重ねてください。

  


  • Posted by セギ at 11:28Comments(0)算数・数学

    2020年01月18日

    新指導要領に思う。



    このブログの本当に初期のものを読み返し、以下の内容のものを発見しました。
    中学でようやく「ゆとり教育」が終わり、新しい学習指導要領になるときのものでした。
    新しい学習指導要領とは、現行の指導要領です。
    小学校では、来年度からさらに新しい学習指導要領となります。
    その変わり目の今、昔のブログを読むと、当時との違いに感慨を新たにしました。
    以下、当時のブログを採録します。


    来年から、中学は新指導要領になり、教科書は大改訂されます。
    「ゆとり教育」で、3割削減されていた指導内容の多くが、戻ってきます。
    数学の教科書は、例題解説や練習問題のページが増え、発展的内容も盛り込まれ、教科書の「参考書化」「問題集化」が言われています。
    私としては、今度の改訂は歓迎です。
    今まで公立中学生に数学を教えていてダメだなあと感じてきたことの1つに、応用問題への拒絶反応ということがあります。
    基礎学力がある。
    数学センスもいい。
    これなら、都立自校作成校や私立有名校に入れるかもしれない。
    そう思って、そのために必要な難度の高い問題を教えるのですが、どうにも身につかない子がいます。
    「学校で習っていない」と言うんです。
    習っていなくても、入試には、出るのですが。

    ただ、気持ちはわかります。
    そんなに難しいことを勉強しても、学校の定期テストには出ない。
    「入試のときに必要だ」と塾のセンセイが言っても、そんなに先のことは実感がわかない。
    すぐに必要ではないことは後回しになるのは、子どもも大人も同じです。

    そして、中3の晩秋。
    いざ志望校の過去問を解いてみると、30点しか取れません。
    数学が30点では、合格は難しい。
    だから、自校作成校はあきらめ、一般都立に。
    私立志望の場合も、一般受験は無理だから、単願推薦だけ。
    そんなふうに、ランクダウンせざるを得ない子もいました。
    もちろん、中1の最初から、私の言葉を信じて、不当なほどに難しい問題にもくいついてきてくれる公立中学生の子たちもいました。
    集団指導の上位クラスで、高度な公式も、定理も、応用問題の解法パターンも、競って身につけるムードになれば、あとは楽勝でした。
    私としても、その信頼は絶対に裏切れません。
    そういう子たちには、都立自校作成校でも、私立でも、行きたい高校に合格してもらいました。

    だけど、「信じてついてきてくれた子たちにだけ、信頼に応える。私の言葉を信じなかった子は、志望校に行けないのは仕方ない」では、少しおかしいですよね。
    中学生の稚拙な判断が、将来を左右してしまうなんて。
    素質のある子には、その素質を順当に開花してもらいたい。

    私立入試に出題されるレベルの問題が、最初から教科書に載っていれば。
    数学が得意な子だけにでも、学校で教えてくれれば。
    定期テストに1問だけでも、そのレベルの応用問題が出題されるようになれば。
    子どもの意識が変わる。
    学校では完全に理解できなくてもいいんです。
    学校で少しでも教わり、必要なことなんだと子どもが理解すれば、塾で完全に身につけます。
    新しい教科書なら、それがあり得るかもしれない。
    私は、そこに期待しています。


    ・・・さて、引用はここまで。
    現在の私に戻ってまいりました。
    ほんの9年前のことなのに、隔世の感があります。
    今、公立中学校の生徒で、応用問題を解かせてこのような抵抗を示す子は存在しません。

    本人の学力によっては、問題を解きたがらないということは、今もあります。
    教わるのは好きだが問題演習は苦手で、宿題を出しても解いてこない子はいます。
    1問わからないと、そこから先は全部解いてこないのです。
    「わからなかった」といって、全て授業で教わろうとします。
    そういう子は、現代も存在しますし、伸ばすのが難しいタイプの子です。
    昔ならば、集団指導の授業で受験テクニック的なことを教わると満足し、良い授業を聞いたことで自分の学力は伸びたと誤解する子です。
    今ならば、ネットの授業動画を見るだけで満足する子も、このタイプに入るでしょう。
    しかし、聴いただけ、見ただけでは、学力は伸びません。
    それで得た知識をもとに、さて、自力で問題を解くことができるのか?
    テストは、演習力がものを言います。

    最初は誤答ばかりでも、本人なりに何かを考えて根拠をもって解いてきてくれるなら、それに対し指導も補助もしていくことが可能です。
    必ず伸びます。
    しかし、全く解いてこない、あるいは「勘」で解いてくるだけで考えて問題を解くということがない場合、いつまで経っても演習力は養えません。
    本人にとっては、わからないから解けない。
    わからないから「勘」で解いている。
    そこを直せと言われるのは不当だという気持ちがあるかもしれません。
    受験が近づいても、志望校の過去問をまともに解けない。
    「勘」で解くしかない。
    そういう学力の子は、今も存在します。

    しかし、基礎力は十分あるのに、定期テストには出ないからと応用問題の演習を拒むような子は、今は公立中学の生徒でもほとんど見なくなりました。
    理由は単純。
    定期テストに応用問題が出るからです。
    しかも、移行措置で、テストに新傾向の問題もちらほら見られるようになってきています。
    授業で扱われたわけではなく、既存の問題集にも存在しないタイプの問題が、するっと定期テストに出題されています。
    今は配点が低いので影響は少ないですが、これの配点が高くなると、本人の思考力が得点を左右するようになっていきます。

    新傾向というのは、まさに新傾向なので、その新傾向を分析するのは最初のうちは極めて難しいのです。
    AIが分析しますよ、などというのは胡散臭い。
    AIは、過去のビッグデータをもとに分析しますので、新傾向には弱いのです。
    次のテストで何が出題されるかの特定は不可能でしょう。
    そして、「新傾向」と称する問題に、出題頻度の高い形式が生まれてきたとき、それは新傾向でも何でもない「典型題」となっていきます。
    AIが統計的にこういう問題の出題度数が高いと判断する頃には、既に人間の講師が典型題の判断をしているはずです。
    問題として質が高い良問であるという判断基準が人間にはありますから。

    しかし、こんなふうに書くのも、当時と比べると隔世の感があります。
    個別指導塾を開いたばかりの当時の私のライバルは、集団指導塾であり、学生アルバイトを多数抱える大手個別指導塾でした。
    現在の私のライバルは、授業を動画で提供する有料サイトであり、AIを活用した個別指導プログラムです。

    学力向上の根本は基礎力。
    基礎力を鍛えるカリキュラムの選定は、AIにも可能でしょう。
    ただ、誤答する子の理由は様々です。
    知識不足にしろ何にしろ、根拠をもって本気で解いて誤答したのなら、その能力をAIは正確に判定できるかもしれません。
    しかし、「勘」で解いている子に次に解くべき適切な問題を指示できるのでしょうか。
    また、理解はしているけれど多種多様なケアレスミスを繰り返す子に、正しい次の指示ができるでしょうか。
    そうしたことは分析できず、誤答すれば少し易しい類題を指示するだけ、ということはないのでしょうか。
    毎回、解けば解くほど「易しい類題の森」に迷い込み、それでもケアレスミスを繰り返すので、学力がついたと見なされない、という可哀想な子が現れないと良いのですが。

    3.5-1=4.5 といった計算ミスをする子は、小数の計算の仕組みが理解できていないとは限りません。
    答案を書くときのほんの一瞬、脳に何かが起こるのでしょう。
    そうしたミスを見たとき、私は、その子に小数の計算の復習は命じません。
    そうした子は、小数の計算だけを間違うわけではなく、次の問題では、56÷2=26 と暗算ミスをしてしまったり、さらに次の問題では、2x2と書くべきところを2x3と書き誤ってしまうのです。
    ミスの原因は小数の理解不足ではありません。
    しかし、AIは、小数の復習を命じるかもしれません。
    それを命じられた恥ずかしさで、細心の注意を払うようになり、ケアレスミスが減る子もいると思います。
    しかし、どこまでレベルを下げても、それでもケアレスミスをする子もいると思います。
    小数の計算なんかできるよと思いながら、しぶしぶ解くと、それもまた、ケアレスミス・・・。
    気がつくと、小学校の算数の復習コースに迷い込んでいた・・・。
    そんな学力ではないのに。
    その都度チューターに相談してレベルを操作し直してもらう繰り返し。
    そんなことにならないと良いのですが。

    教材会社から送られてくるAI導入のパンフレットなど見ながらも、初期費用の高さ以上にまだ心配な点が多くあり、導入する気にはなれません。
    うちの教室に通ってくれる生徒の成績が順調に上がっている現在、私が判断したほうが適切だという気持ちがあります。
    当面情勢を観察します。


      


  • Posted by セギ at 13:32Comments(0)算数・数学

    2020年01月12日

    つるかめ算と連立方程式。




    小学校で学ぶ算数と、中学から学び始める数学は、違う構造をもっています。
    例えば、代数の分野でいうと、文章題を解く場合、小学校の算数は、答えを求めるための式をたてます。
    子どもたちは、問題を最後まで見通して、答えを求める式をたてなければなりません。
    言い換えれば、最後まで見通すことができない子は、文章題の式をたてることをあきらめてしまいます。

    ニュートンは、こういっています。
    「算数では、与えられた量から求める量へと進んでいって問題が解けるのに比べて、代数は、逆の方向に進む。つまり、あたかもそれをよく知っているかのように、求める量から出発して、すでにわかっている量へ進んでいく」
    連立方程式の文章題を例にとって考えてみます。

    問題 ある展覧会の入場料は、大人1人250円、子ども1人100円である。ある日の入場者の総数は170人で、入場料の合計が27200円であった。この日の大人と子どもの入場者数をそれぞれ求めなさい。

    小学校で学ぶ普通の算数では、この問題は解けません。
    最後まで見通し、大人と子どもの人数を求める式をたてることが、この問題の構造では難しいからです。

    しかし、中学で学ぶ数学ならば、これは、解けます。

    求めたいものを x や y にすれば、式はたちます。
    文章の流れにそって式をたてるだけ。
    いわば、日本語で書かれた文章を方程式に翻訳する作業です。

    大人の人数を x 人、子どもの人数を y 人とする。

     x+y=170          ・・・①
     250x+100y=27200  ・・・②

    加減法で解きましょう。
    ①の式を100倍すれば、y を消すことができます。

    ①×100-②

       100x+100y=17000
     -)250x+100y=27200
     -150x      =-10200
               x=68 ・・・③

    ③を①に代入して

     68+y=170
         y=102

    よって、x=68 , y=102

      大人68人、子ども102人


    ところで、この問題、ふつうの小学生は解けませんが、これを方程式を使わずに解くのが、「受験算数」と呼ばれる私立中学を受験するための特別な算数です。
    いわゆる特殊算。
    その中で、これは、「つるかめ算」と呼ばれるものです。

    「池に鶴と亀がいて、足の合計は何本、頭の合計は何個。鶴は何羽、亀は何匹いるか」というのが、江戸時代からのこの問題の古典的構造なので、「つるかめ算」と呼ばれています。

    問題をもう一度確認しましょう。

    問題 ある展覧会の入場料は、大人1人250円、子ども1人100円である。ある日の入場者の総数は170人で、入場料の合計が27200円であった。この日の大人と子どもの入場者数をそれぞれ求めなさい。

    大人と子ども、どちらに揃えても、最終的には同じ答えが出ますが、今回は子どもに揃えてみましょう。
    入場者を全員子どもだったと仮定します。
    入場者の総数は170人ですから、入場料の合計は、
    100×170=17000 (円)
    現実の合計とは差があります。
    現実との合計料金の差は、
    27200-17000=10200 (円)
    その差は何で生まれたものかというと、全員を子どもと仮定したからです。
    大人と子どもの1人分の料金の差は、
    250-100=150 (円)
    ですから、子ども1人を大人1人に置き換えると、合計料金は150円ずつ増えて、現実に近づいていきます。
    では、何人分を大人に置き換えたら、現実の合計料金と同じになるでしょう。
    10200÷150=68 (人)
    つまり、大人は68人。
    では、子どもは、
    170-68=102 (人)

    この解き方が、つるかめ算です。

    このように式だけで解いていく方法の他に、つるかめ算は面積図を用いて解く方法があり、今はそれで教えるのが主流です。
    考え方の根本は、式だけで解いても面積図で解いても同じです。

    なぜ小学生にこのような解き方を教えるのかというと、まだ定まっていないものをxやyとして方程式を立てるということが、子どもには理解しづらいことだからです。
    大人が「え?こんなことが理解できないの?」と思うようなことが、子どもには理解できないことがあります。
    発達段階の過程で、理解できないこともあるのです。
    子どもは、身長・体重はそれなりに増え、口のきき方も大人と対等になっていたりしますが、頭の中はまだ混沌としています。
    非常に主観的で、論理性に欠けます。
    客観的なこと・論理的なこと・抽象的なことは受けいれられず、具体的なこと・即物的なことしかわかりません。
    意味不明で幻想的なことのほうにリアリティを感じたりもします。

    方程式は、もう少し成長しなければ、理解できないのです。
    中学生になれば誰でも理解できるのかというとそうでもなく、本人の発達段階によっては、中学生でも、解き方の丸暗記はできるとしても、なぜそれで解けるのかは理解できない場合もあります。
    なぜそれで解けるのか理解できないので、文章題を読み取って自力で立式し計算することはできません。
    「文章題が苦手」という漠然としたことではなく、理解できないんだから仕方ない、ということもあると思います。



    写真は、東京都神津島。2006年春撮影。

      


  • Posted by セギ at 13:47Comments(0)算数・数学

    2020年01月08日

    中1の壁。算数と数学。



    小学校は、基本的なことのみ学習しますので、大多数の生徒は、自分は学校の勉強についていけていると感じています。
    「学校では勉強ができるほうである」と感じている小学生が過半数かもしれません。
    しかし、過半数が勉強ができるほう、というのは明らかに事実とは異なります。
    易しいカラーテストと、好意的な絶対評価の成績によって、事実誤認が起きている・・・。
    冷酷な言い方をすれば、そういうことになります。

    しかし、学習に自信をもって取り組むのは良い効果のあることで、大半の生徒は、中学入学後もしばらくの間は、自分は学校の勉強についていけていると感じ、意欲的に学習を続けます。
    むしろ、「学校では勉強ができるほうである」と感じる生徒も、中1の1学期までは多いのです。
    心配していた英語も数学も、1学期の成績は「5」。
    ああ、大丈夫だ、とさらに自信を深めます。

    しかし、それは、英語や数学では人生で最初で最後の「5」だった・・・。
    以後は下がり続け、やがて「3」になった。
    そういう人も、多いのです。

    その意味で、「中1の壁」は1学期にあるのではなく、2学期、3学期にあります。

    中1の1学期の数学のテスト範囲である「正負の数」や「文字式」は、解き方を丸暗記した子が高得点を取ることのできる単元であり、それでたまたま「5」になってしまうのです。
    計算自体は、1桁や2桁の計算ばかりで、小学校の計算ドリルよりもむしろ簡単です。

    英語も、現行の教育課程では、中1の1学期ですと、アルファベットや、易しい単語を書くことができれば大丈夫です。
    文法は、be動詞の肯定文、疑問文、否定文だけです。
    その後、Do you~?がどうしても身につかず、何でも Are you~?としてしまう人も、名詞の複数形や動詞の三単現のことを毎度うっかり忘れてしまう人も、1学期の間は、英語はミスする原因が少なく、楽勝です。

    中1の1学期の成績は、その後を保証するものではありません。
    中1の1学期で「5」を取って、その後普通に勉強していれば、中学生の間はおそらく「2」にはならないだろう・・・。
    その程度の保証しかできません。
    2学期で「4」、3学期で「3」と下がっていくのは、むしろ、よくあることです。
    こういう成績表はよく見ます。

    中1の1学期の成績は、幻です。
    中1の壁は、2学期・3学期にあります。

    特に数学。
    中1の2学期は、「方程式の利用」「比例・反比例」を学習します。
    数学的な考え方を問われるようになるのですが、ここで、小学校の算数から脱却できない子、すなわち壁を乗り越えられない子が現れます。

    小学校の算数と中学の数学と、何がそれほど違うのか?
    文章題で考えてみると、その違いが明瞭です。


    算数の文章題は、答えを求めるための式をたてます。
    しかし、数学は、文字xを使って、数量の関係を表す方程式をたて、それを解いて答えを求めます。
    文章で書かれてあることを方程式に翻訳する作業をすることになります。
    あとは、式が自動的に答えを出してくれる。
    方程式は、とても便利なものです。

    そんなに便利なものなら、小学生のときから方程式を教えればいいじゃないか。
    途中で突然切り換えるから、そこで気持ちがついていけなくなって、数学が苦手になるのでは?

    そういう思いもわかるのですが、子どもには発達段階があります。
    小学生の脳は、方程式を理解できるほどには発達していないことが多いのです。
    個人差はありますが、小学生が自ら方程式を立式し文章題を解くのは不可能に近い。
    それが私の実感です。
    大人から見たら、
    え、何でこの程度の簡単なことが理解できないの?
    小学生でも、これくらいのことは、ちゃんと説明すれば、わかるでしょう?
    と思うようなことが、小学生には、全く理解できないことがあります。

    まだわかっていない数値を式の中に利用して式を立てることなど、絶対にできない。
    だって、その数値はわかっていないのだから。

    そういう思いが強いのです。
    抽象思考ができず、全て具体的に考えないとダメなので、具体的にわかっていないことは式の途中では扱えないのです。

    中学受験をする受験算数の特殊算の多くは、方程式を使えば解けます。
    それなのに、方程式を使わず、線分図だの面積図だの公式だの、訳のわからない方法で解く。
    あれは、おかしいんじゃないか、と思う人もいると思います。
    受験をするくらいだから、学力は標準以上なのだろう?
    教えれば、方程式も理解できるんじゃないか?
    塾のアルバイト学生講師の中には、本人が秀才である分、不遜な人もいます。
    テキストの指導法や解説を無視し、小学生に方程式を教えてしまうことがあります。
    小学生に方程式を教えないのには教えないだけの理由があると考えられず、自分だけが新しい教え方を発見した気になって、方程式を教えてしまうのです。

    若くて自信たっぷりな先生に、子どもは迎合しがちです。
    「どうだ。このやり方なら、どんな問題でも解けるんだぞ」
    「うわあ。先生、すごいねえ」
    大手の個別指導塾で教えていた頃、私が授業している隣りのブースから、そんな声が聞こえてきて、まずいなと感じたことは幾度かありました。
    しかし、私は、それを報告する立場にありませんでした。
    報告しても、教務につまらない密告をする嫌なヤツになるだけでした。
    教務も、そんな密告は、余計な仕事が増えるだけなので聞きたくないのです。
    教務は保護者からクレームがあればすぐに動きます。
    しかし、関係ない講師の関係ない進言への反応は鈍いのが普通です。
    生徒は、喜んでいる。
    生徒がその講師を指名している。
    保護者からのクレームもない。
    なら、それでいいのです。
    その子の受験勉強に大きく影響する、たいへんなことが起きている。
    それは、わかっていたのですが。

    大手の個別指導塾では、「成績が上がらない」と保護者からクレームがきた場合に、では、講師を替えて仕切り直しましょう、というクレーム処理の方法をとることが多いです。
    室長に呼ばれ、クレームのきている子なのでよろしく頼むといわれ、その子の授業に入ってみると、前任者が方程式を教えていた、ということもありました。
    特殊算の公式も、線分図や面積図の描き方も教わっていない。
    かと言って、方程式を立てられるわけでもない。
    その子の頭の中は、ぐちゃぐちゃになっていました。

    方程式を教えたところで、子どもの立てる方程式は、
    70-25÷5=x
    といったものになりがちです。
    xを使う意味がありません。
    わからないものをわからないままxとおき、関係を表す式をたてる。
    方程式のそうした構造は、子どもには理解しづらいのです。

    小学校でも、6年生になれば少しだけ「文字を使った式」の学習は行うのですが、
    x-40=120 とか、x×38+5=81
    といったレベルの易しいものだけです。
    文章題からその式を立てさせる場合は、本当に構造の易しいものに、しかも最大限の補助をして、ようやく式が立てられるというレベルです。
    ここまで易しいと、方程式にする意味がないので、小学生には不評です。
    なんで、この単元のときだけは、120+40という式をたてたらいけないんだろう?
    なぜ、x-40=120 というわかりにくい式をわざわざ立てるのだろう?
    子どもたちは首を傾げ、その単元が終われば、もう文字を使った式のことは忘れ、2度と方程式は立てません。
    方程式のことが気に入り、以後ずっと使う子は、特別に数学センスのある子だけです。

    小6で学習する「文字を使った式」という単元の目的は、文字を使った式に少し慣れるというだけのことなのでしょう。
    中学で学習することのちょっとした予告編だよと子どもには伝えています。
    中学生になったときに、「そういえば、昔、これに似たことを少しだけやった」という記憶があれば、それでいい。
    それで、小学校から中学への橋渡しになる。
    その程度のことだと思うのです。

    小学生に本格的に方程式を教える場合は、その子の発達段階をよく見極めて教える必要があります。
    また、方程式の学習の前に、まずは正負の数の学習が必要です。
    負の数がわかっていないと、方程式は、解けるものと解けないものが出てしまいます。
    さらに、逆算との違いをこんこんと解き、出来るようになるまで常に補助していく必要があります。
    方程式は、逆算ではありません。
    式の両辺に何かをたす、ひく、かける、割る、という作業を行うことで、式を解きほぐしていく。
    xについて解くとはそういうことだいうことを、理解できるまで解説し続ける必要があります。
    逆算して求めているのではないのだ。
    xについて解いているのだ。
    この大きな転換は、中学生でも理解できない子は理解できないのです。
    作業手順として暗記するだけで、意味はわかっていない子は中学生でも多いのです。

    もしも小学生に方程式を学ばせたいのなら、低学年の頃から算数は先取り学習をし、何でも早め早めに学ばせ、その子に数学的才能があると確信できた場合に、その子の肉親が、信念をもって教え通す。
    小学生だけの解き方という「雑音」が入らない状況を作り、毎日教え続ける。
    それくらいの覚悟がいることだと思います。


    小学生の間は方程式は絶対に理解できない。
    一方、中学生になれば、誰でも方程式は理解できる。

    そのように単純なことではありません。
    個人差、ということをここでもう一度考える必要があります。
    小学生でも、方程式を理解できる子も存在します。
    一方、本当は、中学生になっても、方程式を理解できる発達段階に至っていない子も多いのです。
    方程式の計算は、手順として覚えます。
    学校で学習する内容ですし、周囲の皆がそれに従ってやっているのですから、本人も作業手順は覚えるのです。
    何で中学に入ったらこのやり方に変わったのかはわからないけれど、逆らっても仕方ない。
    移項すると符号が変わる理由はよくわからないけれど、それはそういうもの、皆がそれでやっているのだから仕方ない、覚えるだけ、と諦めて解いていきます。

    しかし、そういう子たちは、文章題を読んで、方程式を自ら立てることは、できません。
    何を要求されているのか、わからないのだと思います。
    その子たちは、内心、
    急にどうしたの?
    何で文字を使って式を立てなければいけない?
    何でそんなことをしなければならないの?
    と思っているのかもしれません。

    そして、小学生と同様に、
    「わからない数値は、わからないのだから、そんなものを式の途中に使うことはできない」
    「式というのは、答えを出すために立てるものだ。関係を表す式とか訳のわからないことを言われても、意味がわからない」
    と思っているのかもしれません。

    あるいは、
    「自分は、小学生のときから文章題は苦手だった。文章題は、自分は解けない。でも、計算はできる。基本はできるから、それでいいでしょう?はい、それで終わり」
    と心に決めてしまって、まともに問題を読むこともしない子も多いと思います。

    ここの壁は厚いです。

    しかも、中1の2学期には、その先に、もっと恐ろしい「関数」が待っています。
    y=3x だなんて、xもyも結局定まらない。
    比例だの何だと言っているが、何のために何を勉強しているのか、本当にわからない。
    これは何に使うの?
    何の役に立つの?
    数学の根本がわからない子は、関数がわからないことが多いのです。
    関数がなぜ存在しているのか、何のためにこんなことを大事そうに学ぶのか、意味がわからないのです。
    本質が全く理解できないのです。
    小6でも「比例・反比例」は学習しているのですが、そのときも、何のために何をしているのか全くわからず、困惑したままその単元の学習が終わっていく子は多いです。
    むしろ、算数・数学は意味がわかったことは一度もないし、意味を考えたことも一度もない、言われた作業を覚えた手順でやるだけさ、という子のほうが抵抗感は少ないのかもしれません。
    しかし、言われた作業を覚えた手順でこなすだけにしては、関数は複雑です。
    文章題への利用のあたりで、ブラックアウトとなりがちです。


    2学期に成績が下がって。
    中1の3学期になって重い腰を上げて塾にやってくる。
    作業手順を覚えるだけの勉強をやめられない子は、そのままかもしれません。
    しかし、その中に原石が存在することも、私は知っています。
    考えるとは、何をどうすることであるか。
    作業手順の暗記ではない数学の勉強とは、どういうことか。
    表面上は普通のテキストを普通に解いていくだけの授業の中にある、数学的な「対話」。
    本質的な「理解」。
    そうしたものがあれば、時間がかかっても、必ず成績は上向いていきます。
    数学力がついていきます。

      


  • Posted by セギ at 13:49Comments(0)算数・数学

    2019年12月31日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。解と係数の関係。その2。


    数Ⅱ「複素数」の「解と係数の関係」の続きです。

    問題 2次方程式 x2-(a-1)x-2a=0 の解の差の平方が17のとき、aの値を求めよ。

    こういうサラッと1行で終わる問題、怖いですね。
    何の手がかりもないと感じるので、何をどう解いていいか、わからない。
    高校数学、特に模試などで0点を取る人がいるのも、このように何をどうして良いのか全くわからない問題が並んでいるからでしょう。

    しかし、中学までは、逆に、問題文が何行もある問題が苦手な人が多かったと思います。
    文字を読むことそのものがあまり好きではない人は、ついつい問題文を読み飛ばし、大事な情報を読まないで解いたりして失敗することも多かったのではないでしょうか。
    以前、下のような反比例の問題を生徒と解いていたときのことです。

    問題 A町からB町まで行くのに、1時間に3km進むと4時間かかります。かかる時間は、1時間に進む道のりに反比例します。
    (1) 1時間に進む道のり xkm と、かかる時間 y 時間との関係を式に表しなさい。

    問題文に「反比例します」と書いてありますし、比例定数は3×4=12であることも明白です。
    文章題としても、これくらいコンパクトな内容ならば、読み通すのも難しくありません。
    それなのに、何分経っても考え込んでいて、手が動かない。
    まさかと思いながらも、その子のテキストの大問の問題番号の横を指さして、
    「ここ、読んだ?」
    と訊くと、首を横に振りました。
    (1)から読み、その上の問題文を読んでいなかったのでした。

    大問の番号の横に書いてある文は、国語の場合などは特に、「以下の文章を読んで後の問いに答えなさい」といった、読んでも読まなくても変わりはないどうでもいいことしか書いてない場合があるのも事実です。
    そのため、大問の横は読まない癖がついている子は案外多いようです。
    大問の問題番号の横の文字は読まない。
    (1) の後からしか読まない。
    そんなことが習慣になっているのです。

    「・・・いや、問題番号の横に、A町とかB町とか、3kmとか4時間とか、記号や数字が書いてあるのを目の端に感じたら、それは読みましょう。それは大事な情報ですよ。それを読まなかったら解けないですよ」
    そう説明したのですが、問題文を読まない癖というのは、小学校の低学年から長い年月をかけて熟成されてしまった癖なので、1度そんな癖がついてしまったら、以後長くその子の足枷になる可能性があります。

    読まないから解けない。
    問題文を読めば、解ける。
    その当たり前のことに気づいた子から順番に成績が上がっていきます。
    読解力があれば、数学はできる。
    国語ができれば、数学もできる。

    しかし、それも万能ではありません。
    勿論、基本的な読解力もない状態では、どの科目も成績が伸びていくのは難しいです。
    しかし、国語ができれば、必ず数学もできると言えるか?
    それが言えるのは、高校入学までではないでしょうか。
    高校数学は、問題文の文字情報が極端に減っていきます。
    読解力よりも、純粋に数学力が問われるようになっていきます。
    少なくとも、今まではそうでした。
    来年度から実施される予定の大学入試共通テストがそれをかき乱すのかどうかは、まだ、今のところよくわかりません。
    文章がやたらと長いだけの粗悪な文章題が、純粋に数学が得意な子の進路を阻むことがなければ良いのですが。

    「新傾向問題」と称する、数学なのにやたらと文章や図表による説明の長い問題は、急に世に出てきたものではありません。
    そんな「新傾向問題」は、戦後の長い教育史の中で、度々現れては効果が疑問視されて潰れてきました。
    都立高校入試も、20年ほど前は、そんな「新傾向」の文章題が出題されていたのです。
    やたらと長い文章と図や表を読んで、方程式を立てたり、規則性を見抜いたり、確率を求めたりする問題でした。
    今も、都立入試の大問2にその気配は少し残っていますが、悪問だった「新傾向」は大きく改訂され、文章は短くなり、質は高くなり、高校数学に確かにつながる数学力を試す良問となっています。

    数学の「新傾向問題」は、実施されて数年を経ると、こんな問題では数学力は問えないという批判が沸点に達し、中止になる。
    その繰り返しです。
    子どもの読解力が心配なのはわかりますが、それは他の科目で問うことができますので、数学でやらなくても良いのです。


    そんなこんなで、さて、もう一度上の問題を見直しましょう。
    新傾向でも何でもない、従来からの問題です。

    問題 2次方程式 x2-(a-1)x-2a=0 の解の差の平方が17のとき、aの値を求めよ。

    「解の差の平方」のあたりは多少読解力が問われますが、その他の情報としては、これは2次方程式の問題であるらしい、というだけです。
    問題文を読んでも、どう解くのかピンとこない。
    そうした問題のほうが、高校数学らしい問題だと感じます。
    読解力ではなく純粋に数学力の勝負になってくるのが高校数学といえるかもしれません。

    問題集を解いていてこの問題を目にするのならば、ここは「解と係数の関係」のページだから、解と係数の関係を使うのだろうと考えることもできます。
    しかし、こういう問題が実力テストや模試に出ている場合、何の単元の何に関する問題で何を利用したらいいかわからない高校生は多いと思います。
    その結果、答案を1行も書き出せない・・・。
    数学の答案は、1行目の書き出しが一番難しいですから。
    発想の原点が書かれているのが1行目なのですから。

    2次方程式が与えられて、解がどうのこうのと言われたら、とりあえず「判別式」か「解と係数の関係」が使えるのではないか?
    そう発想できるように、頭の引き出しにいつも使える形で定理を入れておく必要があります。
    結局、定理がすぐに使える状態で頭に入っているかどうかです。

    では、解と係数の関係だろうと判断し、この問題を解いてみましょう。
    この2次方程式の2つの解をα、βとします。
    解と係数の関係より、
    α+β=a-1 ・・・①
    αβ=-2a ・・・②
    また、「解の差の平方が17」なのですから、
    (α-β)2=17 ・・・③
    です。
    このように、作れる式をまずは作れるだけ作ってみます。
    文字が3通り、式が3本作れました。
    この連立方程式は、解けますね。

    解いてみましょう。
    ③より、
    α2-2αβ+β2=17
    (α+β)2-4αβ=17
    これに①、②を代入して、
    (a-1)2-4・(-2a)=17
    a2-2a+1+8a=17
    a2+6a-16=0
    (a+8)(a-2)=0
    a=-8、2
    これが解答となります。


    問題 2次方程式 4x2-2x+a=0 の解がsinθ、cosθであるとき、定数aの値を求めよ。

    さて、三角比が登場しました。
    三角比を見ると動揺が走り、ノートに直角三角形を描き出す人もいるかもしれませんが、この問題は、そのような三角比の最初の定義に戻る必要はないのです。
    ここでは、単にsinθ、cosθというのはある数値なのだと理解しておけば大丈夫です。
    その2つの数値が、与えられた2次方程式の2つの解です。
    ところで、今回、x2の係数が4ですので、そこにも注意します。
    解と係数の関係は、
    2次方程式 ax2+bx+c=0 の2つの解をα、βとすると、
    α+β=-b/a 、αβ=c/a です。
    x2の係数の a=1 のときは、α+β=-b、αβ=c となりますが、この問題では a=4 であることに注意が必要です。

    解と係数の関係より、
    sinθ+cosθ=1/2 ・・・①
    sinθ・cosθ=a/4 ・・・②
    とりあえず、2本の式は立ちました。
    ても、これだとわからない値がaを含めて3種類なのに、式は2本。
    これでは、解けないですね。
    もう1本、式が必要です。
    ここで、三角比の相互関係の公式を思い出せれば、この問題は解けます。
    sin2θ+cos2θ=1 という式がありました。(2は指数です)

    よし、解きましょう。
    ①を2乗して、
    (sinθ+cosθ)2=1/4
    sin2θ+2sinθ・cosθ+cos2θ=1/4
    sin2θ+cos2θ+2sinθ・cosθ=1/4
    三角比の相互関係の公式より、
    1+2sinθ・cosθ=1/4
    2sinθ・cosθ=-3/4
    ②を代入して、
    2・a/4=-3/4
    2a=-3
    a=-3/2
    これで答えが出ました。

    ああ、やはり、純粋に数学的な問題のほうが、良い問題が多いなあ・・・。
    読めと言われれば新傾向の文章題でも何でも読みますが、どうせ読むのなら、香り高い文学作品とか、エッジの効いた評論とか、そういうものを読みたいです。
    お正月は、そういうものを読んで過ごそうかなあ。
    というわけで、皆さまも良いお年を。

      


  • Posted by セギ at 13:19Comments(0)算数・数学

    2019年12月23日

    算数から高校数学へ。データの分析。アクティブラーニング的に。


    「データの分析」は、小学校から高校まで一貫して学習する数学の大きな単元です。

    計算ができるだけではダメ。
    未来を生きる子どもたちは、数値を分析し、読み取る力が必要だ。

    そうした意図のもと、小学生から「棒グラフ」「折れ線グラフ」「整理のしかた」「平均値・単位量あたり」「資料のちらばりと柱状グラフ」と学習を進めていきます。
    中学では、「度数分布表と柱状グラフ」「有効数字」「標本調査」。
    高校になると「四分位数と箱ひげ図」「分散と標準偏差」「相関係数」さらに「期待値」「確率偏差」と学習が進みます。

    この単元のそうした趣旨も理想もわかるのですが、実際に問題を目にすると、なかなか厄介だなと感じます。
    まずは、小6向けの内容で、アクティブラーニングの可能性を考えてみましょう。


    問題 AとBの2つのふくろには、以下の重さの10個ずつのミカンが入っています。
    Aのふくろ
    80g、85g、94g、95g、96g、96g、98g、99g、103g、110g
    Bのふくろ
    84g、87g、87g、88g、100g、100g、101g、102g、102g、103g

    2つのふくろのミカンは同じ値段です。あなたはどちらのふくろのミカンを買いますか。理由も答えなさい。


    ・・・鮮度や皮のつやはどうなんですか?
    産地は同じなんですか?
    私は、皮がむきやすそうなミカンが好きなので、実物を見て買いたいです。
    いや、ミカンはあまり好きじゃないから、どちらも買わない・・・。
    そもそも、こんなどうでもいいことで悩む時間が無駄だ。どうせ大差ないから、どっちだっていいよ。

    このように活発な意見が出る教室は、ある意味健全な教室です。
    ただ、そうした意見がいつまでも強い主張を繰り返し、その先に進まない場合は、授業は失敗です。
    こうした意見が出ても、では、鮮度や産地は同じとしよう、今回は真剣に考えて、どちらかを選ぶとしようという前提を周知徹底できるのがアクティブラーニングの基本。
    先生、ご苦労様です。

    学習の目的から外れた意見を除外することができたとして、しかし、アクティブラーニングで苦しいのは、生徒からその先の意見が全く出ないことです。
    あるいは、1つの正論が席巻し、それ以外の意見は出ないこと。

    小6「資料のまとめ方」の冒頭でこのアクティブラーニングを行った場合、生徒から出てくる答は、ただ1つに集まって終わる可能性があります。
    すなわち、ミカンの重さの合計で比べる。
    あるいは、平均値を求める。
    今回、ミカンはどちらも10個なので、合計でも平均でも同じことです。
    秀才たちは異口同音にそれを主張するでしょうし、それは、1つの正しい答です。
    正しい1つの意見が場を席巻し、はあそうですかと大多数は黙っている授業・・・。
    アクティブラーニングの1つの末路です。


    Aのふくろの合計は、956g。平均値95.6g。
    Bのふくろの合計は、954g。平均値95.4g。
    だから、合計や平均値が重いAのふくろのほうを買う。

    しかし、それは正解の1つに過ぎないのです。
    小6の学習目標は、実は平均値の活用ではありません。
    平均は、小5で既に学習済みです。

    では、小6の学習では何を目指すのか?
    それ以外の見方で、AのふくろとBのふくろを比べることが目標です。
    この単元は「資料の散らばり」に注目することが学習の目標なのです。
    アクティブラーニングは、生徒たちに話し合いをさせれば良いというものではなく、学習目標に沿った深い学びが得られるように、議論を誘導する必要があります。
    目標があるのです。
    「だったら、それをさっさと説明してくれ。覚えるから」
    という子に、それじゃ深い学びじゃないでしょう?というのが、アクティブラーニングなのです。
    簡単なことじゃないです。


    もう一度、AとBと2つのふくろのミカンの重さを見比べてみてください。
    実際に買うとしたら?

    私なら、Bを買います。
    なぜか?
    100g以上の大きいミカンが6個も入っていて、おいしそうだからです。

    ・・・え?
    そんな漠然とした主観的な答が、算数・数学で通用するの?
    そういうことを答えて良かったの?
    そんなのは、一番最初に除外された、つやはどうなのかとか産地はどこなのかと同じ種類のことじゃないの?

    違うのです。
    データの見方として、それは「あり」なのです。

    「平均値」は、データを分析するための1つの重要な観点です。
    しかし、平均値がそのデータの全てを説明するわけではありません。


    2つのふくろのみかんの重さを再度見てみましょう。

    Aのふくろ
    80g、85g、94g、95g、96g、96g、98g、99g、103g、110g
    Bのふくろ
    84g、87g、87g、88g、100g、100g、101g、102g、102g、103g

    平均値では、Aのふくろのほうが確かに重いです。
    しかし、10個を重い順、あるいは軽い順に並べた真ん中の値、すなわち「中央値(メディアン)」で見た場合。
    Aは96g。
    Bは100g。
    Bのふくろのほうが、中央値は大きいのです。

    なぜ、平均値と中央値にそのような差が生じるのか?
    それは、資料の散らばり具合によるものです。
    Aは、まず、最小値も最大値も大きい。
    最大値と最小値の差を「範囲(レンジ)」と言いますが、110-80=30(g) が、Aの範囲。
    103-84=19(g) が、Bの範囲です。

    ここで、散らばり具合をわかりやすくするために、度数分布表を作ってみます。

    Aのふくろは、
    階級(g)         度数
    80以上85未満    1
    85   90       1
    90   95       2
    95  100       4
    100 105       1
    105 110       1

    Bのふくろは、
    階級(g)         度数
    80以上85未満    1
    85   90       3
    90   95       0
    95  100       0
    100 105       6
    105 110       0

    ここから柱状グラフを描けば、さらに一目瞭然でしょう。
    Aは広い範囲で、きれいな山を描いて資料が分散されています。
    一方Bは、範囲が狭い上に、その中でも大きいものと小さいものに大きく割れているのが見てとれます。


    ここで、中学で学習する内容をちょっと補足します。
    資料の性質を示す値を「代表値」と呼びます。
    「平均値」も「中央値」も代表値です。
    さらに「最頻値(モード)」と呼ばれるものがあります。
    その資料の中で、最も多く出てくる値です。
    度数分布表にした場合には、その階級の真ん中の値「階級値」で考えます。
    Aのふくろの最頻値は、97.5g。
    Bのふくろの最頻値は、102.5g。
    Bのほうが大きいです。

    小学校の算数や中学の数学はここまでですが、高校数学になると、ここからさらに四分位数を求め、箱ひげ図を描きます。
    四分位数というのは、データを小さい順に並べたときに、4等分する位置にあるデータをQ1(第1四分位数)、Q2(第2四分位数=中央値)、Q3(第3四分位数)としていくものです。
    柱状グラフでも散らばり具合は一目瞭然ですが、柱状グラフは場所を取ります。
    もっと多数のデータを比較する場合には、スペースの問題で、柱状グラフを描けないこともあります。
    そのために、四分位数と箱ひげ図があります。
    それを見るだけで、データのおおよその傾向を読み取ることができるのです。

    Aのふくろは、
    Q1=94g、Q2=96g、Q3=99g
    Bのふくろは、
    Q1=87g、Q2=100g、Q3=102g

    ここで気づくのです。
    最小値と最大値の差、すなわち範囲だけを見たときは、Aのほうが範囲が広いデータです。
    しかし、Q3-Q1の値、すなわち「四分位範囲」を見てみると、
    Aのふくろは、99-94=5。
    Bのふくろは、102-87=15。
    Bのふくろのほうが、別の意味で散らばっているデータだということが読み取れます。
    さらにAの平均値95.6gと、Bの平均値95.4gを考慮に入れた場合、Aのふくろは平均値と中央値に大きな差はなく、バランスのとれた散らばりである一方、Bのふくろは、平均と中央値との差が大きく、バランスを欠いた散らばりであることが見てとれます。

    それらの値を箱と線分で表したのが、箱ひげ図です。
    箱ひげ図の形状から、柱状グラフの形状を推理することができます。
    狭いスペースで多くのデータの散らばりを比較できます。
    箱ひげ図についての詳細は、過去ページをご参照ください。
    https://seghi.tamaliver.jp/e449491.html


    繰り返しになりますが、データの特徴を説明する数値を「代表値」といいます。
    ただ、「代表値」という用語は中学の数学で学ぶもので、小学生にその用語で説明することはありません。
    こんな用語を教えると、それを暗記することが大事なんだと勘違いして学習がブレる子が現れますから、用語は教えないほうが良さそうです。

    平均値の他に、中央値(メジアン)、最頻値(モード)。
    そうした代表値からデータをどう読み取るか。
    小6「資料のまとめ方」という単元の学習目標は、そうした用語は教えないけれど、データの散らばりとその整理の仕方、そしてそこから読み取れる特徴を考えることなのです。

    小6では、まずは数直線の上に、全てのデータを点として打ち込み、ちらばり具合を見ます。
    次に度数分布表を作ります。
    上にも描いた、〇〇g以上〇〇g未満が何個というものをまとめた階級別の表のことです。
    なお、小6では、「度数分布表」という用語は教えません。
    「階級」「階級値」といった用語も教えません。
    資料を整理した「表」と呼ぶだけです。
    相手は小学生。
    95g以上100g未満という階級に、100gは入るのか入らないのかの判断も誤るレベルです。
    わかっているつもりでも、ついうっかり。
    用語を覚えている余裕はないのです。
    難しい用語を教えると、それを覚えることに必死になって、学習のピントがずれてしまいますから。
    用語を教えず、度数分布表を作ることだけに専念してもらっても、ミスは起こります。
    表の個数の合計と本当の合計とが一致しないことがしばしば起こるのが小学生です。

    どのデータを入れ忘れたの?
    ちゃんと指差しながら順番に「正」の字を書いていった?
    え?階級ごとに個数をそれぞれ数えた?
    それは不正確になりがちだよー。
    え?それくらい、できる?
    そんな意地を張って、データの整理が不正確になるようなこと、大人はしないですよ。
    子どもっぽいなあ・・・。
    まあ、本当に子どもだからしょうがないけど。
    ・・・という学習レベルなのです。
    個々のデータの取り扱いの基本も、ここで学びます。

    さらに、小6では、柱状グラフを作ります。
    「柱状グラフ(ヒストグラム)」という用語だけは、教えます。

    さらに、中央値や最頻値も、概念として学びます。
    ただし、そうした用語は使いません。
    柱状グラフから、
    「もっとも個数が多いのは、何g以上何g未満の範囲ですか?」
    「重さの小さいみかんから順番に並べたときに、ちょうど真ん中の重さのみかんは何g以上何g未満の範囲に入りますか」
    といった問題を解くだけです。

    ・・・問われたことには答えられるけれど、一体何を学んでいるのか、目的がよくわからない・・・。
    あまりにも遠回りにものごとを問いかけるので、データの読み解き方を学んでいると気づかない場合もあるかもしれません。
    だから、学習の総まとめとして、冒頭の問題をアクティブラーニングするのは「あり」ではないかと思います。

    AのふくろとBのふくろと、どちらのふくろを買うか?
    大きいミカンが沢山入っているBのふくろが良いという「最頻値」を重視した意見。
    でも、最大のミカンはAのふくろに入っているから、Aのふくろのほうがいいんじゃないかという「最大値」を重視した意見。
    真ん中の値はBのほうが大きいからBにするという「中央値」を重視した意見。
    Bのふくろのほうが、一番大きいミカンと一番小さいミカンとの差が小さいから、家族で平等に食べらるんじゃないかという「範囲」を重視した意見。
    やっぱり平均が大きいほうがお得だからAにするという意見。

    根拠さえ明確で論理的であるなら、どの答も正解なのです。
    多様な解答、学んだことを活かした解答が多くの生徒から出たなら、学習は成功。
    これが、アクティブラーニング。


    こういう授業を想像し、面白そうだなあ、自分もこういう授業なら楽しく参加できたのに、と思う方もいらっしゃると思います。
    確かに、楽しい面もあります。
    字面だけの暗記事項ではなく、生きた知識が身につき、深い理解が得られます。
    でも、この授業に毎回積極的に参加していくのは、大変です。
    生徒にも先生にも強いストレスがかかる授業です。

    特に、冒頭のような予習的なアクティブラーニングを行う場合。
    これから学ぶことを生徒から引き出そうとするアクティブラーニングは、先生にとっても生徒にとっても難行苦行です。

    小5で「平均」について学習したのです。
    だから、そのことを思い出して、平均によって2つのデータを比較する。
    それが、ただ1つの正解。
    そう思っていると、それではない他の考え方はないかと要求される。
    一瞬、頭が真っ白になる子もいるでしょう。
    それまでの学習をきちんと身につけていればいるほど、それを否定されるのは、つらいでしょう。

    先生は言います。
    小5で学習した「平均」にこだわらず、もっと自由に考えてみなさい。

    ・・・はあ?
    習ったことに基づいて、正しい意見を言って、何が悪いの?
    自由って何?

    真面目に努力しているが頭の硬い子にとって、こんなストレスフルな問いかけはないでしょう。
    頭の硬い子が絶句してしまうかもしれません。
    その一方で、これから学習することになる「範囲」「中央値」「最頻値」という観点の意見を言えた子は称賛されるでしょう。
    これから学習する内容を使って意見を言える子は賞賛される・・・。
    自力でそれを発想したのなら凄いですが、本当に自力で発想したとは限りません。
    予習している子もいると思います。
    予習したことを、まるで自分の意見みたいに発表すると、うーんアクティブですね、と褒められる・・・。
    予習していながらしていないふりで、先生の意図に沿った意見を言った子が褒められる茶番劇・・・。
    そういうものになる可能性もあるのが、アクティブラーニングです。

    ただ、度数分布表やヒストグラムについて予習していても、あるいは皆が学習した上で総まとめとして上のアクティブラーニングを行うとしても、先生の望むような多様な意見を出せる子は少ないかもしれません。
    学習した通りの練習問題には答えられても、こうしたアクティブラーニングにその知識を活用するのは、本人の能力が高くないとなかなか難しいのです。
    ヒストグラムに関する練習問題で、繰り返し「真ん中の値はどれですか?」「最も多い値はどれですか?」と尋ねられていても、それが重要なことだと気づかない。
    データを読み取るときに、それを活用するのだと気づかない。
    子どもの頭は、ものごとを統合するのがまだ難しく、「それはそれ、これはこれ」になりがちです。
    勉強したことと、それを実際に活用することとが、なかなか結びつかないのです。
    勉強したことは勉強したこととして、問われたことには「勘」で答える。
    小学生には、そういう子が案外多いように感じます。

    カラーテストも「勘」で解き、それでそこそこの点数を取ってしまいます。
    それは、記号問題だから勘が通用し、記述式なら勘は通用しないというレベルのことではありません。
    小学生の場合、文章題の立式も勘で行い、それでそこそこ正解してしまう「成功体験」を低学年で積んでしまう子が多いのです。
    そのまま、高学年になり、勘では通用しない単元になっても、勘で解くことをやめられません。
    文章題は正解できなくなっても、「この単元はたまたま苦手なだけ」ということにしてしまいがちです。
    「単位量当たり」「速さ」「割合」といった単元がたまたま苦手なだけということに本人はしていますし、保護者もそのように位置づけてしまうかもしれません。
    しかし、それは、もしかしたら、そもそも物を考える習慣がない、考えて問題を解く習慣がないということを示している可能性があります。

    だからこそ、アクティブラーニングの必要性が叫ばれているのですが、これもまた難しい問題をはらんでいます。
    文章題すら「勘」で解く子たちは、アクティブラーニングも「勘」でこなそうとするでしょう。
    考えろと言われても、それが何をどうすることなのかわからない子が、教室に多い。
    そうした中で行うアクティブラーニング。
    深い学びを得られるのは、考えることを知っている子たちだけ。
    考えるということを知らない子たちは、置いてきぼりです。
    結果、何を学んでいるのかすら把握できない子も増えていきます。

    国立大学の附属中学などでは、もう何十年も前から、こうしたアクティブラーニングの授業を行っています。
    そこで勉強についていけなくなった子が、
    「授業で何をやっているのかわからない。勉強のできるヤツ何人かと先生が話し合っているだけ」
    と評するのは、そうした理由によるところが大きいと思います。

    繰り返しますが、アクティブラーニングは、上手くいけば、その効果は絶大なのです。
    ものを考えるということがどんなに楽しいことか。
    教科書に載っている無味乾燥に見えることが、どれほど生きた知識であるか。
    学校では教えてもらえないことの価値はわかります。
    でも、その前に、学校で教えてもらえることの価値も知ってほしい。

    「中央値」「最頻値」「最大値」「範囲」といった、学習内容としては無味乾燥なものが、実はみかんのふくろ1つ買うのでも使えるものだということ。
    算数・数学は実生活と関係のあるものなのだということ。
    私たちは、どのようにデータを見たらよいか、その観点を学んでいるのだということ。
    そういうことへの理解を深めるためのアクティブラーニング。
    学んだことが、実感と結びつく。
    そうした高い理想を、できるだけ多数の生徒が享受できることを願ってやみません。

    アクティブラーニングの授業が、来年度の小学校の新しい学習指導要領から、ついに本格始動します。

      


  • Posted by セギ at 12:16Comments(0)算数・数学

    2019年12月11日

    勉強が苦手な子の1つの傾向。



    高校生と「分詞」の学習をしていたときのことです。
    まずは、中学の復習でもある、分詞の限定用法の学習をしました。
    名詞を修飾する用法です。
    現在分詞と過去分詞のどちらを用いるか、その使い分けが重要です。

    そこから先が高校の「分詞」の学習。
    分詞の叙述用法に進みました。
    SVCやSVOCのCに分詞を用いる用法です。
    ここでも現在分詞と過去分詞の使い分けが課題です。
    SVCの場合は、Sが動作主ならばCは現在分詞。
    Sが動作される側ならばCは過去分詞。
    SVOCの場合は、Oが動作主ならばCは現在分詞。
    Oが動作される側ならばCは過去分詞。
    「動作主」という言葉は厳密には古文で使用する用語ですが、便利なので私は英語の授業で使っています。
    文法が得意な子にとっては、明瞭でわかりやすいルールです。
    英語はこういう大きいルールが広く適用されるので学びやすいのです。

    しかし、その子は文法が苦手でした。
    説明を聞くだけで理解するのは難しいので、何度もルールを復唱してもらい、その後、練習問題を解きました。

    He kept (knock) on the door until I opened it.

    その子の答えは knocked でした。
    「・・・・え?何で?」
    文法を正確に復唱できるまで何度も練習したのに、何で?
    「door はノックされるから・・・・」
    「・・・・え?」
    限定用法の話はさっき終わり、叙述用法だよと言ったのに、何でその話に戻るんだろう?
    door は、直前・直後の名詞ではないから、分詞に修飾される名詞ではありません。
    「・・・・knock の直前の単語は kept だし、knock の直後の単語は on だよ。door は随分離れている。関係ないよ」
    「あ・・・」

    文法が苦手な子に英文法の授業をしていると、上のようなことが起こります。
    教えたことが上手く伝わっていきません。
    上の例は、相手が何をどう誤解したのか明確だったので改善の可能性がありましたが、普段はもっと不可解なミスも多いです。
    ミスの原因を生徒が言語化できない場合が多く、なぜそこを間違えるのか、教える側として理解しにくい場合がしばしばあります。
    こちらから一方的に解説するだけの授業では、途中で気が逸れて、聞いている顔で実は聞いていないということはあると思います。
    まだらにしか聞いていないので、関係のないことが本人の頭の中でつながってしまうのです。
    だから、今学んでいることは何であるか、本人に復唱してもらい、確認をしています。
    その上で、やはり、間違える・・・。
    どうしてそんなことが起こるのだろう・・・?


    もう一度その子の学校の教科書に戻り、文法を確認してから教科書の練習問題を解くと、それは全部正解できました。
    限定用法だけでなく、叙述用法も全て正解です。
    「教科書の問題は正解できるね」
    「これは、答を覚えているから・・・・」
    「え・・・・?答を覚えている?」
    「復習したっていう意味ですよ」
    「・・・・私は何回解いても、問題の答なんか覚えないけど?」
    「・・・・・?」
    「何でそんな意味のないことを覚えるの?」
    文法は覚えないのに、何で答を覚えるの?(''Д'')

    愕然として、私は悟りました。
    文法が苦手な子は、そういう勉強をしてしまうのか・・・・。

    なぜ英語が得意にならないのか、その一端が垣間見えた気がしたのです。
    いや、英語に限らず、なぜ勉強が得意にならないか。
    努力をしているのは伝わってくるのに、なぜ結果が出ないのか。
    その一端が見えた気がしました。
    理屈をどれだけ教わっても、それを復唱しても、問題を解く際にその理屈を活用できないのです。
    それはそれ、これはこれ。
    問題を解くときは、本人の中で別の解き方で解いてしまいます。
    多くは勘で解いたり、昔学習した別の文法を使ってしまったり。
    だから、最初に解くときは大半の問題を間違えてしまいます。
    それから正しい答を覚えます。
    目の前の1問1問の答を覚えること。
    それが、勉強。
    つまり、根幹のルールなどの抽象化したものを理解し活用することが苦手で、全て、個々の具体にしか対応できないのではないかと感じます。


    それは、小学生に受験算数を教えていても感じることです。
    集団指導塾に通い、受験算数だけうちの教室で補習をしている子には、その集団指導塾のテキストで復習することから学習を始めます。
    復習する様子を見ていると、受験算数が苦手な子も、テキストの基本問題は自力で解くことができるのです。
    しかし、テキストの基本問題とほとんど同じ構造の月例テストの問題は正解できません。
    ほとんど同じ構造で、難度も同じで、同じ考え方で解く問題なのに、なぜ解けないのだろう?
    月例テストなんて、8割は基本問題なのに。

    理由は明らかです。
    個々の問題の式と答を暗記しているだけで、理解していないのです。
    「式と答を覚えること」=「勉強」になっていて、それ以外の勉強ができないのです。


    受験算数の場合、自力で解き方を発見できるセンスのある子や、思考力のある子もいます。
    発達段階の個人差の大きい時期ですから。
    算数の問題を考えることが好きな子、自力で図を描いたり整理したりすることができる子たちです。
    そうした子たちには、補習というよりもっと自由に力を伸ばす授業をします。
    「〇〇算の解き方」を1つ1つ暗記する必要は、本当はないのです。
    線分図の描き方と面積図の描き方、そしてその活用の仕方を学べば、受験算数の解き方はそんなに幾通りもありません。
    相当算も食塩水も売買損益も差集め算もニュートン算も、根底にあるものは、全て同じです。
    思考力のある子は、そうした統合や抽象化が可能です。

    しかし、小学生の段階では、解き方の抽象化はできない子も多いです。
    その場合、「〇〇算の解き方」を1つ1つ覚えていくことから始めます。
    それでも、「解き方・考え方」を覚えるのなら、そのことで思考力を養っていくことができます。
    最終的には統合も可能です。
    しかし、子どもの中には、
    テキストの問題1の式は、4×5÷2=10 
    問題2の式は、5×10÷2=25 
    と、式と答を覚えているだけの子もいます。

    ・・・何の意味があるの?(''_'')

    そう思うのですが、本人にしてみると、覚えてしまうのだから仕方ない、ということのようです。
    小学生の柔らかい脳は、見たものをすぐに覚えてしまうことができますから。
    解き方を理解することと、問題の式と答を覚えてしまうこととの違いがわからないのかもしれません。

    では、式の暗記などできないくらいに基本問題を大量に解けば、その中から本人がエッセンスを抽出し、解き方を脳内に取り込むことができるのではないか?
    そうした発想から、宿題を大量に出す塾もあるのですが、算数が苦手な子たちは、問題を解くのが遅いです。
    問題文を読むのも、立式するのも、計算するのも時間がかかります。
    本当はもっと速く解けるけれど、沢山問題を解くと疲れるので、自らスピードを調節し、だらだら解くことが習慣化している子もいるかもしれません。
    スピードを上げたら、沢山問題を解かねばならない。
    沢山勉強させられて、損だ。
    そのような損得計算をしている子もいるように思います。
    そうして、メインテキストの基本問題だけをねっとりと時間をかけて解き、式と答を覚えてしまいます。


    私の教室で、英語が得意な子たちは、90分の授業時間の中で、問題のぎっしり詰まった40ページほどの文法テキストを1冊仕上げて帰っていきます。
    書きません。
    問題を見て、即答しています。
    さすがに40ページを全て解くわけではなく、その子の理解度を見ながら、とびとびに解きます。
    それでも、20ページほどは演習するでしょう。
    四択問題も。
    空所補充問題も。
    乱文整序問題も。

    一方、英語が苦手な子たちの演習スピードは、そういうわけにはいきません。
    書かずに即答という授業形態がまず無理で、解いた問題の答が手元に残らないと復習できないから不安だと言いますので、書いて解かねばなりません。
    最初にいろいろ説明しなければなりませんし、間違えているとさらに説明する時間も長くなります。
    その上で演習スピード自体も遅いので、90分の中で結局1ページしか解けないこともあります。
    そしてその1ページの問題の答えを覚えることが、その子にとっての復習なのだとしたら・・・・。
    20ページと1ページ。
    教室で20ページ解く子が、問題の答えを覚えているかといったら、覚えているはずがありません。
    いちいち答えを覚えていられるような量ではありません。
    余程印象的な問題が含まれていたら別でしょうが、翌週同じ問題を解いても、同じだと気づかず解き終わるかもしれません。
    学習した文法にしたがってサクサク解いているだけだからです。
    何度解いても正解ですが、それは答を覚えているからではないのです。

    受験算数が得意な子たちは、個々の問題の解き方をカチッと暗記しているわけではないので、図の描き方に無駄な要素もあります。
    例えば、水そうに直方体の重りを沈めていく問題。
    水面には波が立っているはずだからと、さざ波を立てた水槽の断面図を描いたりします。
    水面は、水槽のふちよりも薄く描き、濃淡のある図を描くこともあります。
    そのせいで、せっかく描いた図が役に立たないこともあります。
    私がさざ波を濃い直線に描き直すこともときに必要です。
    しかし、「これは一種の面積図なんですよ」と言うだけで、その子の脳が動き出します。
    それ以上の解き方を手取り足取り教える必要がないのです。
    算数・数学の問題を解く上では必要のないこだわりは、いつか本人が捨てるでしょう。
    思考力は本物で、これは誰にも奪えないし、本人も捨てようがない。


    個々の問題の答だけを故意に覚えようとしているわけではない。
    復習すると自然に答を覚えてしまうだけだ。

    苦手な勉強をそれでも一所懸命やっている子たちは、そのように言うかもしれません。
    それでも、「その勉強のやり方は変えなさい」と言わざるをえません。
    その勉強では、類題で正答できないのですから。
    個々の問題の答は覚えても、もっと重要なことを覚えていないのです。
    その問題を解く中で抽出し理解するべきことを把握できていません。
    答を覚えてしまうくらいに数少ない問題をねっとり見つめ続けることが本当に理解すべきことの把握につながっていないのです。

    有効なやり方は正反対のものでしょう。
    教科書の問題の答なんかいちいち覚えていないけれど、文法は覚えた。
    式も答も覚えていないけれど、解き方は理解した。
    だから、その問題は何度解いても正答できる。
    類題も正答できる。
    テストの問題も正答できる。
    入試問題も正答できる。
    勉強はそういうふうにやっていってほしいです。

    生徒たちに最も教えたいのは、そういう勉強のやり方です。

      


  • Posted by セギ at 12:39Comments(0)算数・数学英語

    2019年12月08日

    数A「不定方程式」のさまざまな解き方。アクティブラーニング的に。


    今回は、少し戻って、数Aの「不定方程式」について考えてみましょう。
    こんな問題です。

    問題 130x+31y=1 の整数解を求めよ。

    不定方程式は、具体的なxとyの値を1組見つければ、そこから解いていくことができます。
    基本の解き方は、このブログの過去ページ、「数A不定方程式」を参照してください。
    https://seghi.tamaliver.jp/e461561.html

    以降は、不定方程式の基本の解き方は理解していることを前提の説明となります。
    基本の考え方を丁寧に説明するわけではありませんので、根本が曖昧な場合は、上の該当ページから順次、不定方程式のページをご覧ください。

    さて、この方程式が成立するxとyの値を1組見つけましょう。
    簡単なものなら暗算で求めることができますが、上の方程式は係数が大きいので、暗算ではなかなか解にたどりつきません。
    こんなとき、どう求めたら良いでしょうか。

    ここで最もシンプルな解き方が、互除法を利用する解き方です。
    これは、全ての高校で学習する解き方です。

    130=31・4+6 より 6=130-31・4
    31=6・5+1   より 1=31-6・5

    これを利用して、上の方程式と同じ構造の式を1本作っていきます。
    1=31-6・5
    =31-(130-31・4)・5
    =31-130・5+31・20
    =130・(-5)+31・21

    130・(-5)+31・21=1 という式を得ることができました。

    与えられた方程式とこの式の辺々を引きます。

      130x    +31y =1
    -)130・(-5)+31・21=1
      130(x+5)+31(y-21)=0

    この先は、いつも通りの解き方です。
    130(x+5)=-31(y-21) 
    130と31は互いに素ですから、x+5は、31の倍数でなければ、この式は成立しません。
    x+5=31k(kは整数)
    よって、
    x=31k-5
    y=-130k+21 (kは整数)

    繰り返しますが、この答案を読んでいて、「え?なぜ?」と思う方は、基本の解き方が曖昧になっているかもしれません。
    該当ページに戻ってご確認ください。


    さて、解の値の1組を暗算で求められないときの解き方は、このように互助法を利用するのが一般的ですが、これしか求め方がないわけではありません。
    問題の解き方は1つではないのです。
    他の解き方を考えたり、他の人の解き方を見て、どうやって求めているのか論理の流れを理解したりするのも面白い勉強です。
    回り道な解き方には首を傾げたり。
    ハッとするようなスマートな解き方に感動し、自分もその解き方を以後取り入れたり。
    アクティブラーニングです。
    今回は、この問題の他の解き方の例をいくつか見ていきましょう。


    1つには、130という係数をもう少し小さくし、暗算しやすくする方法があります。
    もう一度、上の問題を確認しましょう。

    問題 130x+31y=1

    この130という係数が大き過ぎて、暗算に向きません。
    まずは、31に揃えることを考えてみます。
    130=31・4+6 ですから、
    (31・4+6)x+31y=1
    ここでいったん展開し、31でくくります。
    31・4x+6x+31y=1
    31(4x+y)+6x=1
    4x+y を1つの数とみなして、この方程式が成立する整数を考えます。
    31と6という係数ならば、その和が1になる数を見つけるのは比較的容易です。
    4x+y=1、x=-5 のとき、この方程式は成立します。
    そこで、x=-5を、4x+y=1に代入すると、
    x=-5、y=21
    これで、1組の整数解を見つけることができました。
    あとは普通の不定方程式の解き方と同じです。
      130x   +31y=1
    -)130・(-5)+31・21=1
      130(x+5)+31(y-21)=0
    130(x+5)=-31(y-21)
    130と31は互いに素だから、
    x=31k-5
    y=-130k+21 (kは整数)

    先程と同じ解になりました。


    最後に、飛び道具的に登場するのが、合同式による解法です。
    合同式は発展的内容で、高校によっては学習しないこともあります。
    中高一貫校でも、都立自校作成校でも、数Aを最初に学習する段階では、学習しない高校が増えてきました。
    しかし、理解できれば悪魔的に物事が簡単になるのが合同式です。
    合同式の考え方については、過去ページ
    https://seghi.tamaliver.jp/e460234.html
    を参考にしてください。

    基本の考え方は、ある自然数で割った余りが同じ数同士は合同である、ということ。
    これを利用して、上の問題を解きます。

    問題 130x+31y=1

    ここで、31y≡0 (mod31) です。

    31yは、31の倍数です。
    つまり、31yを31で割ったら、余りは0です。
    だから、他の、余りが0の数と合同です。
    それを上のように、31y≡0 (mod31) と書き表します。

    これを上の方程式に代入すると、
    130x≡1 (mod31) となります。

    「はあ?何?何?」となる人が多いかもしれません。
    31で割った余りに着目すると、左辺の余りは、31yの部分の余りは0なので、130xを31で割った余りだけを考えれば良いのです。
    一方右辺は、1なので、31で割った余りは1です。
    よって、
    130x≡1 (mod31) となります。

    ここで、130xをもう少し整理できないでしょうか?
    130xを31で割ってみましょう。
    130x=31・4x+6x です。
    31・4x は31の倍数で、この部分の余りは0ですから、余りとして着目されるのは6xの部分のみです。
    よって、
    130x≡6x (mod31) となります。
    右辺は変わらず1ですから、
    6x≡1 (mod31) です。

    ところで、合同式は、
    a≡b、のとき、a+c≡b+c、 a-c≡b-c、 ac≡bc (a、b、cは整数)
    という性質があることが証明されています。
    その証明は、式の変形と代入で証明するタイプのもので、実感を伴うものではありません。
    数学が嫌いな子は、その証明を見ても納得も感動もせず、嫌な顔をすることのほうが多いです。

    定理の証明がそういうものであるのは、高校数学では本当に多いです。
    小学校で学習する、三角形の面積の公式のように、証明がそのまま解き方の意味である、というものではありません。
    数学が好きな人は、証明の筋道を確認し、ああ、本当に証明されている、だから使っていいとなると、あっけらかんと使用します。
    しかし、数学が嫌いな人は、そういう証明の筋道を追うことが心の負担です。
    本当に証明されているのかどうか、読んでいてよくわからないのかもしれません。
    証明がよくわからないことに心の負担が増し、定理を丸暗記して使うことにも抵抗があり、その定理を上手く使用できないということがあるようです。

    解き方の丸暗記はやめよう、意味を理解しよう、と今まで頑張ってきたけれど、もう意味がわかりません。
    疲れました・・・。
    今までありがとうございました・・・。
    みたいな表情を浮かべる生徒に対し「待て、待て、待て。待ちなさい」と私は必死に声をかけることになります。
    大丈夫、ゆっくり見ていけばわかるから。
    必ずわかるから。
    わかって、納得できれば、そんな証明は忘れていいんだから。
    定理を証明しろという問題はテストには出ないから。
    こんな定理を自力で証明したのは数学者で、ある意味ちょっとどうかしている人たちだから、気にしなくていいのです。

    ここでは証明は省略します。
    興味のある方は、検索するか、高校数Aの教科書・参考書をご覧ください。

    戻りましょう。
    6x≡1
    これをxについて解きたいのですが、x≡1/6 というわけにはいきません。
    31で割った余りに着目しているのに、分数が出てきたらおかしなことになります。
    合同式の性質に、両辺を同じ数で割っても成立する、というものはないのです。
    そこで、31で割った余りが見やすいように、いったん5倍します。
    余りが見やすくなれば何でもいいのですが、今回は5倍が妥当でしょう。
    30x≡5
    30=31・1-1 ですから、30≡-1 です。
    よって、30x≡-x
    すなわち、-x≡5
    ここで、両辺に-1をかけて、
    x≡-5 (mod31)
    つまり、xは、31で割ると5不足する数なのです。
    よって、x=31k-5 (kは整数) と表すことができます。

    これを問題の不定方程式に代入します。
    130x+31y=1 に代入して、
    130(31k-5)+31y=1
    130・31k-130・5+31y=1
    yについて解きます。
    31y=-130・31k+650+1
    31y=-130・31k+651
    y=-130k+21

    よって、
    x=31k-5
    y=-130k+21 (kは整数)
      
    解説を加えながら解いていったので、かなり長くなりましたが、この合同式を利用した解き方は、答案としては一番短いのです。
    慣れれば、おそろしく簡単に解を求めることができるのが、合同式による解法です。
    発展的な内容になればなるほど、答案はシンプル。
    数学はかくも美しいのです。

      


  • Posted by セギ at 15:46Comments(0)算数・数学

    2019年12月01日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。解と係数の関係。


    今回は、「解と係数の関係」。
    これは、数Ⅰで学習済みの内容です。
    それに虚数解を加えたのが今回の学習内容です。

    解と係数の関係とは?
    2次方程式 ax2+bx+c=0 の2つの解をα、βとすると、
    α+β=-b/a 、αβ=c/a

    これが解と係数の関係です。
    説明しましょう。

    α、βを解に持つ2次方程式の1つは、
    (x-α)(x-β)=0 と表すことができます。
    これを展開すると、
    x2-αx-βx+αβ=0
    x2-(α+β)x+αβ=0 ・・・①
    となります。
    一方、ax2+bx+c=0 の両辺をaで割ると、
    x2+b/ax+c/a=0 ・・・②
    ①と②は同じ方程式ですから、係数を比較すると、
    α+β=-b/a 、αβ=c/a

    この説明では、α、βを解に持つ2次方程式の1つは、(x-α)(x-β)=0 と表すことができる。
    というところが少し難しいところかもしれません。

    (x-2)(x-3)=0
    という2次方程式を解けと言われたら、
    x=2、3
    という解になります。
    逆に、解がx=2、3 である2次方程式を復元するなら、
    (x-2)(x-3)=0は、その1つです。
    「1つ」というのは、x2の係数は1とは限りませんから、上の式の両辺を何倍かした方程式は全て、x=2、3 を解に持ちます。
    ですから、x=2、3 を解にもつ方程式は無数に存在するけれど、とにかく、(x-2)(x-3)=0 はその1つです。
    同じように、解がx=α、β である2次方程式の1つは、
    (x-α)(x-β)=0 です。
    ここがわかれば、その後は特に難しいことはないと思います。
    符号処理で少し混乱する人がいるかな?というくらいでしょう。


    (x-2)(x-3)=0
    のような、因数分解を用いた2次方程式の解法は、中3で学習する内容です。
    解くことはできても、なぜそれで解けるのか、本質を理解していない人は案外多いところです。
    本質を理解していない人は、例えば、
    x(x-2)=0
    のように少し目先が変わると、正解できません。
    x=0 という解を発見できず、x=2 のみ答えて不正解となってしまうことが多いのです。

    (x-2)(x-3)=0 
    これは、(x-2)と(x-3)との積が0だということです。
    かけ算の答えが0になるとき、少なくとも一方は0です。
    だから、x-2=0、または x-3=0
    よって、x=2、または x=3
    これが、因数分解による解き方の意味です。
    だから、
    x(x-2)=0 のときは、
    x=0 または、x-2=0 となり、
    x=0、または x=2 となります。


    2次方程式の解と係数に関する問題を実際に解いてみましょう。

    問題 2数 2+√5i 、2-√5i を解とするxの2次方程式を求めよ。

    もう一度確認しますが、α、βを解とするxの2次方程式の1つは、x2-(α+β)x+αβ=0 です。
    ですから、α+βとαβ、すなわち、2つの解の和と積を求めれば、2次方程式は楽に復元できます。
    上の問題で2数の和は、
    (2+√5i)+(2-√5i)=4
    2数の積は、(2+√5i)(2-√5i)=4-5i2=4-5・(-1)=4+5=9
    よって、求める2次方程式は、
    x2-4x+9=0です。


    問題 連立方程式 x+y=-4、xy=6 を解け。

    急に応用になって、え?どういうこと?と思いますね。
    この学習の流れでないならば、普通に代入法で解くことを思いつくでしょう。
    まずはそれでやってみましょう。

    x+y=-4 より y=-x-4
    これをxy=6 に代入して、
    x(-x-4)=6
    -x2-4x-6=0
    x2+4x+6=0
    解の公式を用いて、
    ;x=-2±√4-6
     =-2±√-2
     =-2±√2 i
    x=-2+√2 i をx+y=-4 に代入して、
    -2+√2 i +y=-4
    y=-4+2-√2 i
     =-2-√2 i
    また、x=-2-√2 i をx+y=-4 に代入して、
    -2-√2 i+y=-4
    y=-4+2+√2 i
     =-2+√2 i
    よって、(x、y)=(-2+√2i、-2-√2i)、(-2-√2i、-2+√2i)

    これで構わないわけですが、与えられたのがxとyの和と積であることを利用する解き方もあります。
    αとβが解である2次方程式の1つは、
    x2-(α+β)+αβ=0 でした。
    和と積がわかっていれば、その2数を解とする2次方程式はすぐに作れるということです。
    では、x と y の和と積がわかっている今回、その2数を解とする2次方程式はすぐに作れるんじゃないでしょうか。
    x と y が今回はαとβにあたるのです。
    だから、xやyとは違う文字の2次方程式にしましょう。
    t を用いてみます。
    t2-(x+y)t+xy=0 
    という式の解は、t=x、y 
    となる仕組みですね。
    よって、
    +4t+6=0
    t=-2±√4-6
     =-2±√2 i
    xとyはこの方程式の2つの解で、どちらがどちらであると特定できるものではありません。
    したがって、
    (x、y)=(-2+√2 i、-2-√2 i)、(-2-√2i、-2+√2i)

    どちらの解き方でも良いのですが、こちらのほうが早く解けます。
    いすれ高校でもアクティブラーニングが本格的に導入されます。
    教科書に載っている解き方を丸暗記して解くのではなく、何通りもの解き方を理解し、最善の解き方を判断していくことが重要です。



      


  • Posted by セギ at 17:44Comments(0)算数・数学

    2019年11月24日

    数学の語句補充問題は難しい。


    数学の語句補充問題というのは、現在、中学の数学のテストで必ず出される問題となっています。
    どの問題がどの領域の問題であるかを問題に明示しなければならなくなり、「知識・理解」を問う問題として、数学の語句補充問題が作られるようになりました。
    これを苦手とする子は多いです。

    例えば、こんな問題です。

    問題 以下の空所にあてはまる語句を答えよ。
    y=ax+b の形で表すことができる関数を(1)という。(1) のグラフは(2)となる。また、aをグラフの(3)、bを(4)と呼ぶ。
    yの増加量÷xの増加量で表されるものを(5)といい、(1)においては、aの値が(5)を表す。

    正解は、
    (1) 1次関数 (2) 直線 (3) 傾き (4) 切片 (5) 変化の割合
    となります。

    語句の定義に関するこうした問題は、類題をいくつか解けば、何とか穴埋めできると思います。
    しかし、何の準備もなくいきなりこの問題を解こうとすると、かなり難しいことは、実際に解いてみると実感できるのではないでしょうか。

    上の問題では、(2)直線 という答えが、一般の感覚ではもっとも難しいと思います。
    そんなことを問われているとは、正解を見るまで想像もしていなかった・・・。
    正解を見ると、まあそうだなと納得するが、自力で穴埋めできる気がしない・・・。
    数学の問題を解くのが好きな人でも、そう感じるかもしれません。
    また、中学生では、「傾き」と「変化の割合」をどう使いわけるのかわからず、答えが逆になってしまう子が多いです。
    こうした問題の対策としては、数学の教科書や参考書の、語句の定義に関する文を繰り返し読んでおくこと。
    このような問題をテスト前に解いて慣れておくこと。
    それである程度は対応できます。

    上のような語句の定義に関する問題はまだ答えを絞り込みやすいのです。
    この種の問題としては良問と言えます。
    数学的な考え方の語句補充になると、さらに難度が上がります。
    例えば、こんな問題。

    問題 以下の空所に当てはまる語句を答えよ。
    2元1次方程式の(1)は直線のグラフになる。
    つまり、2元1次方程式のグラフの交点とは(2)である。
    (3)の解は2つの2元1次方程式の(2)であるから、交点の座標は(3)を解くことで求めることができる。

    言いたいことはわかるのですが、当てはまる語句は色々と候補が浮かび、1つに定まらない・・・。
    そこを空所にした出題者の意図がよくわからない。
    そういうことが起こりがちです。

    これの模範解答は、
    (1)解を座標とする点の集まり (2)共通の解 (3)連立方程式

    ・・・いや、わからないわ、これは・・・。
    正解を見れば、まあそれはそうだと思うものの、自力で答えを書き込むのは難しいです。
    空所補充問題の正答が日本語として3文節以上というのは、悪問の始まりです。


    2次方程式の因数分解による解法の考え方を説明する空所補充問題を見たこともあります。

    問題 次の☐に当てはまる、語句または文字・数字を答えよ。
    (x-a)(x-b)=0 であるとき、
    ☐-a=0 または☐-b=0 であるから、x=a または x=b である。

    この2か所の空所を、
    a-a=0 またはb-b=0 であるから、x=a または x=b である。
    と埋めている子がいました。
    答案を見て、うーん、これは本当は意味がわかっているのかもしれない。
    でも、もしかしたら何もわかっていないのかもしれない。
    答案の見た目では、それがわからない・・・。
    どう評していいものかと困惑しました。
    ちなみに、正解は2か所とも「x」が入ります。
    採点は、両方ともバツとなっていましたが、正直、問題にも悪い点がある、と感じました。
    これが入試問題だったら異論が噴出し、「別解あり」、あるいは「問題無効」の措置が取られたかもしれません。

    数学の先生が悪いわけではありません。
    こういう「知識・理解」に関する空所補充問題を定期テストに出題するよう指導しているのは文科省です。
    ただ、どういう形で出題するかは個々の先生の裁量に任されているはずなので、こういうところで変に独自性を示すのはやめて、語句の定義に関する、ありがちで穏当な問題を出題してくれることを望むばかりです。
    基本的な知識の定着を確認するのが目的の出題だと思いますので、奇をてらう必要はないのです。
    三角形の合同条件を書かせたり。
    数学用語や定理の名称を空所補充させたり。
    そういうことは大賛成です。
    あるいは、数学的な考え方に関するこうした語句補充問題は、せめて選択肢を示してくれないかなと思います。


    とはいえ、数学用語の理解・数学的な考え方の理解をテストで試すのは、こういう形が便利なのかもしれません。
    解き方だけ丸暗記して、数学的な意味はまったく理解していない子に、その勉強ではダメだということを自覚してもらうには良いきっかけではあります。

    高校の定期テストでは、このような語句補充問題は出題されません。
    問題文をどう読み取るか、記述答案をどう書くかで、数学的な知識・理解は十分に測ることができるからです。
    例えば、こんな問題。

    問題 曲線 y=f(x) の接線の傾きはx2に比例する。また、この曲線は、点(3,2)、(6,1)を通る。この曲線を表す式を求めよ。

    この問題の意味を読み取れるということは、微分と接線の傾き、あるいは微分と積分との関係が理解できているということです。
    あるとき、この問題の意味がわからない、と質問を受けました。
    「・・・x2 に比例するって何ですか?」
    「中学3年のときにやったでしょう。2乗に比例する関数。y=ax2。あれのことです」
    「直線ということですか?」
    「いや、直線になるのは1次関数です。2乗に比例する関数は放物線です」
    「傾きが放物線?傾きは直線じゃないんですか?」
    「うん。接線は直線ですが、接線の傾きの変化は放物線になることもあります。この問題では2乗に比例するんですね」
    「2乗に比例するなんてことが、ありますか?」
    「・・・ありますよ」

    例として、y=2x2 という関数で、
    x   1 2  3  4 ・・・
    x2  1 4  9 16 ・・・
    y   2 8 18 32 ・・・
    このような表をざっと書き、x2が2倍、3倍、・・・になると、yも2倍、3倍、・・・になることを確認すると、その子に驚愕の表情が浮かびました。
    「本当だ。2乗に比例している」
    「はい。そうです。これが2乗に比例する関数です」

    微分・積分は問題なくマスターしている秀才が、なぜ「2乗に比例する関数」を知らないのだろう・・・。
    内心驚愕していたのは私のほうですが、そんなこともたまには起こります。
    用語の理解というのは、繰り返し確認していかないと、思わぬ盲点が存在するのかもしれません。
    その日の授業の帰りぎわ、
    「今日の授業は、2乗に比例する関数のところが一番わかりやすかったです」
    と感想を述べて去っていきました。

      


  • Posted by セギ at 15:36Comments(1)算数・数学

    2019年11月22日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。その2。



    「複素数」の学習、今回は2回目です。
    今回は、2次方程式の解に関する問題から。

    問題 次の2次方程式を解け。
    6x2-2x+1=0

    因数分解できないので、解の公式を使って解きます。
    xの係数が偶数なので、2本目の解の公式が有効ですね。
    x=1±√1-6
     =1±√-5
     =1±√5 i

    虚数単位を使うと、このように、全ての2次方程式に解が存在します。


    問題 次の方程式の実数解を求めよ。
    (2+i)x2+(3+i)x-2(1+i)=0

    これは、係数が虚数です。
    このまま強引に解の公式を利用する方法もあるのですが、ここはシンプルに、実部と虚部に分けて考えると楽に解けます。

    (2+i)x2+(3+i)x-2(1+i)=0
    2x2+ix2+3x+ix-2-2i=0
    (2x2+3x-2)+(x2+x-2)i=0

    虚数a+bi=0 のとき、a=0、かつb=0 ですから、
    2x2+3x-2=0 かつ x2+x-2=0 
    となります。
    ですから、これを連立方程式としてその解を求めれば良いですね。
    2x2+3x-2=0
    (x+2)(2x-1)=0
    x=-2、1/2・・・①
    x2+x-2=0
    (x+2)(x-1)=0
    x=-2、1・・・②
    ①かつ②が解となるので、
    x=-2

    xを基準にまとめるのか、iを基準にまとめるのか、途中でよくわからなくなる人がいます。
    今は実部と虚部に分けて整理しようしているので、iの有無で分けていくのです。

    ここらへんになると、やっていること自体は特に難しくない計算問題でも、気持ちで負けてしまう高校生が現れます。
    精神的に支えていくことも私の仕事になります。
    数学が嫌いな子の多くは、中学の数学も完全に身についているわけではありません。
    「中学の数学くらいわかりますよっ」
    と主張するのですが、2次方程式の解の公式をスラスラ活用できるかというと、それは怪しかったりします。
    「公式くらい、わかってますよっ。でも、僕は、引き算が苦手なんですよっ」
    と言われて、言葉を失ったこともあります。
    ・・・・そうか。
    じゃあ、ゆっくりやろう。
    そう声をかけても良いのですが、そんな優しさはむしろ相手を傷つけてしまいそうでした。
    何より本人が、自分の言った言葉に自分で傷ついて、涙目になっていたのです。


    問題 次の2次方程式の解を判別せよ。
    1/3x2-1/2x+1/5=0

    解の判別に関する問題は、数Ⅰ「2次関数」の章で学習しました。
    ただし、その頃は虚数解というものはなく、「実数解なし」という判別をしていました。
    そこをバージョンアップしていきます。

    解を判別するには、判別式を用います。
    判別式とは何か?
    2次方程式 ax2+bx+c=0 のとき、
    解の公式は、x=(-b±√b2-4ac)/2a です。
    この√ の部分がもし0ならば、解は x=-b/2a の1つだけとなります。
    これがすなわち重解です。
    √ の中身が正の数ならば、異なる2つ実数解が求められます。
    このように、√ の中身で解の個数を判別できるので、√ の中身の部分を「判別式」と言うのでした。
    すなわち、判別式D=b2-4ac
    また、xの係数が偶数のときの解の公式の√ の中身を用いることも可能です。
    判別式D/4=b'2-acとなります。

    まとめますと、
    D>0 のとき、異なる2つの実数解
    D=0 のとき、重解
    D<0 のとき、異なる2つの虚数解
    今後は、このように判別していくことになります。

    さて、上の問題は、
    1/3x2-1/2x+1/5=0
    という見た目です。
    これでは計算しにくいので、係数が整数になるように整理しましょう。
    方程式ですから、両辺を何倍かしても、関係は変わりません。
    3と2と5の最小公倍数は30ですから、両辺を30倍すると、分母を払うことができます。
    10x2-15x+6=0
    よって、
    判別式D=152-4・10・6=225-240=-15<0
    解は 異なる2つの虚数解です。

    しかし、単純に解を判別するだけの問題は、退屈ですね。
    少し応用的なものも解きたくなります。
    例えば、こんな問題です。

    問題 2次方程式 x2+(k+1)x+k+2=0 が異なる2つの虚数解をもつようなkの値の範囲を定めよ。

    判別式を使うんだなあということはピンとくると思います。
    使ってみましょう。
    D=(k+1)2-4・1(k+2)
     =k2+2k+1-4k-8
     =k2-2k-7
    異なる2つの虚数解をもつのですから、D<0 です。
    よって、
    k2-2k-7<0
    これは2次不等式です。
    まず2次方程式に直して計算します。
    k2-2k-7=0 とすると、
    解の公式を用いて、
    k=1±√1+7
     =1±2√2
    よって、上の2次不等式の解は、
    1-2√2<k<1+2√2
    これが最終解答です。

    途中まではわかっても、「2次不等式」のところで詰まってしまう高校生もいます。
    数Ⅰの内容があまり身についていない高校生は、2次不等式の解き方を忘れてしまっているのです。
    そもそも、その前の段階の「判別式」を数Ⅰで学習したことすら曖昧になっている子もいます。
    学校では、数Ⅰでやった内容はざっと復習するだけです。
    それだって随分親切な授業です。
    しかし、完全に忘れてしまっている子にとっては、せっかくやってくれる「ざっと復習」も、その授業スピードでは、速すぎて理解できないようです。
    数Ⅱで大きく崩れ、数学の授業についていけなくなる子が多い原因の1つは、このように、数Ⅰの内容が身についていないことにあります。

    もっとも、高校2年の秋ともなりますと、数学が苦手な生徒への配慮のある高校も多いです。
    授業スピードはゆるめないものの、定期テストは易しくなる高校が多いのです。
    数学の単位が取れないと、卒業できないですから。
    中高一貫の進学校なのに計算ドリルみたいなテストだったりします。
    そうしたテストをつくづくと眺め、結局数学の最終学年でこんなテストになるのなら、中等部のときにあんなに異様な分量と難度のテストで生徒を苦しめて数学嫌いにさせなければよいのに、と嘆息することもあります。
    公立中学から普通の都立高校に進学していたら、この子もセンター試験くらいは対応できる数学力がついたのではないかと思ってしまうことも多いです。
    どの進路が子どもを伸ばすかは、1人1人違う、と感じます。

    2次不等式の解き方を忘れてしまった方は、ここに、2次不等式の基本を説明してあるページがありますので、ご参照ください。
    https://seghi.tamaliver.jp/e445206.html

      


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    2019年11月06日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。

    r


    今回は、いよいよ「複素数」の学習の始まりです。
    その前に、いったん「2次方程式」に話を戻して考えてみましょう。

    例 x2+2x+5=0 を解きなさい。

    解いてみます。
    因数分解はできないようなので、解の公式を使いましょう。
    x=-1±√1-5
     =-1±√-4
    √の中が負の数になってしまいました。( 一一)
    2乗して負の数になる数なんてありません。
    だから、この2次方程式は、「解なし」となります。

    これが、今までの解き方でした。
    実数の範囲では、これで仕方ないのですが、しかし「解なし」というのは少し残念な感じがあります。
    解のない方程式があるなんて、美しくないな。
    これの解があることにしたらどうでしょうか?
    だって、少なくとも数字の上では書き表すことができるのですから。
    これが、複素数の出発点です。

    ピラミッドを作っていた時代から、その数はあるのではないかと問いかけられては否定されてきました。
    複素数の歴史を紐解くと、デカルト、オイラー、ガウスといった数学界のビッグ・ネームが次々と登場します。
    興味がある方は検索して調べてみてもよいと思いますが、複素数を知るのが初めての状態ですと異次元の数学世界が広がっていますので、驚かれるかもしれません。

    物凄くかいつまんで説明しますと、実数というのは、1本の数直線上のどこかに存在する点として表すことができます。
    有理数も無理数も、1本の数直線上に存在します。
    しかし、虚数は、実数の数直線上には存在しません。
    では、どこに存在するのか?
    実数の数直線を含む平面上に存在します。
    その平面が、複素数平面です。
    この瞬間に、数は、1次元から2次元に拡張されたのです。
    複素数は「2元数」ともいいます。
    でも、このお話が始まるのは、まだはるか先。
    複素数平面について学ぶのは、数Ⅲです。
    数Ⅱでは、まずその基礎を学びます。

    では、複素数の定義を見てみましょう。
    まずは虚数単位から。
    2乗すると-1になる数を i とし、虚数単位と呼ぶ。
    すなわち、 
    i2=-1
    また、a>0のとき、
    √-a=√a i , -√-a=-√ai とする。

    そして、複素数の定義。
    a+bi (ただし、a、bは実数。iは虚数単位)
    の形で表される数を複素数といい、aを実部、bを虚部という。
    b=0のとき、すなわちa+0・i=aで、実数aを表す。
    b‡0のとき、すなわち実数でない複素数を虚数という。
    また、a=0のとき、すなわち0+bi=bi を純虚数という。

    以上が、虚数と複素数に関する定義です。
    これ以上は噛み砕ける内容ではないので、1行1行噛みしめて意味を理解してください。
    全て定義ですので、「なぜ?」という質問は存在するはずがありません。
    その定義を受け入れるだけです。
    これから始まる話は、全てこの定義を前提としますよ、というルールのようなものです。
    こんなルールは受け入れられない、自分は違うルールでやっていく、というわけにはいかないのです。

    これまで、数の集合は実数の輪を最大のものとして閉じていました。
    ベン図にするとわかりやすいです。
    まず自然数の集合がありました。
    1、2、3、・・・・といった正の整数です。
    それを含んで、その外側に、整数の集合がありました。
    負の整数や0が自然数の外側に加わったひと回り大きな輪ですね。
    さらにそれを含んで有理数の集合がありました。
    整数で表すことができない小数や分数が外側に加わったひと回り大きな輪です。
    さらにその外側に実数の輪があります。
    実数の輪の内側で、有理数の輪の外側に位置するのが無理数です。
    無理数は、有理数ではない数。
    すなわち分数で現すことができない数です。
    円周率や√2などが無理数でした。
    有理数と無理数とをあわせて、実数と呼びました。
    実数の大きな集合の輪。
    今、その周りに複素数の大きな輪が描かれました。
    実数は、複素数の一部です。
    上の複素数の定義の a+bi で、b=0 の場合が実数ですね。

    ベン図でイメージすると上のようになることを、複素数平面で考えると、実数は1本の数直線上に全て存在し、虚部が0ではない数、すなわち虚数は、その直線以外の平面上に存在しているのです。

    さて、ここまで理解できれば、あとは計算です。
    複素数の計算ルールは、i2=-1 を守ること。
    あとは実数のルール、特に文字式・方程式のルールに似ていますので、大きな抵抗はないと思います。
    実部は実部同士、虚部は虚部同士で足し算できます。
    実部×虚部は可能です。
    虚部×虚部も可能です。

    (a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i
    (a+bi)(c+di)=ac+adi+bci+bdi2
             =(ac-bd)+(ad+bc)i
    ただし、a、b、c、dは実数。


    問題 (3-5i)(7+2i) を計算せよ。
    =21+6i-35i-10i2
    =21-29i-10・(-1)
    =21-29i+10
    =31-29i

    慣れてくれば計算過程は適宜省略し、与式の次は答えでも構いません。
    符号ミスを起こしやすい人は、最初は丁寧に解いていったほうが無難でしょう。


    問題 x=(-1+√5i)/2、 y=(-1-√5i)/2 のとき、x3+y3+x2y+xy2 の値を求めよ。

    これは、様ざまな単元の計算問題で繰り返し出てきた、対称式に関する問題です。
    逐一代入しても答えは出るのですが、面倒で時間がかかります。
    まず、xとyの和と積を求めるのが定石でした。

    x+y=(-1+√5i-1-√5i)/2
       =-2/2
       =-1
    xy=(-1+√5i)(-1-√5i)/4
      =(1-5i2)/4
      =(1+5)/4
      =6/4
      =3/2
    よって、
    x3+y3+x2y+xy2
    =(x+y)3-3xy(x+y)+x2y+xy2
    =(x+y)3-3xy(x+y)+xy(x+y)
    =(x+y)3-2xy(x+y)
    =(-1)3-2・(-1)・3/2
    =-1+3
    =2
    これは、対称式の計算のときによく使う、
    x3+y3=(x+y)3-3xy(x+y)
    という公式を利用した解き方です。

    あるいは、先に、
    x2+y2=(x+y)2-2xy=(-1)2-2・/32=1-3=-2
    を求めているのなら、
    x3+y3+x2y+xy2
    =(x+y)(x2-xy+y2)+x2y+xy2
    =(x+y)(x2-xy+y2)+xy(x+y)
    =(x+y)(x2-xy+y2+xy)
    =(x+y)(x2+y2)
    =-1・(-2)
    =2
    という求め方も可能です。
    これも公式を利用しています。
    x3+y3=(x+y)(x2-xy+y2)
    という公式です。

    新しい単元に入っても、既習の公式を覚えていないと実際の問題は解けません。
    解答・解説を読んでも、何でそういう変形をしているのか、意味がわかりません。
    とにかく、公式は全部頭に入れておきましょう。

    ところで、-1+√5i と-1-√5i は、和や積で虚数部分が消えて、その後の計算が随分楽になりましたね。
    虚部が異符号なのが良かったですね。
    こういう数を「互いに共役な複素数」と言います。
    「a+bi と a-bi を互いに共役な複素数という」というのが定義です。


    問題 -27の平方根を求めよ。
    -27の平方根は、±√-27 です。
    ±√-27 =±√27i=±3√3i

    2乗して負の数になる数の中にも、正の虚数と負の虚数がある・・・。
    そのことで混乱する人もいるようです。
    つながるべきではないところがつながって、頭の中がメビウスの輪になっていないでしょうか?
    虚数にも正負があって、別に構わないです。
    「だって、負の数は2乗したら正の数になってしまうから、-27にはならないじゃないですか?」
    ・・・うん?
    i2がある限り、その数は負の数になりますよ。
    落ち着いて、落ち着いて。


    問題 √-24・√-18 を計算せよ。

    √-24・√-18
    =√24i・√18i
    =2√6・2√3・i2
    =2・2・3√2・(-1)
    =-12√2

    これをいきなり1つの√ でくくり、
    √-24・√-18
    =√-24・(-18)
    =√24・18
    =12√2
    としてはいけないのです。
    a<0、b<0 のとき、√a・√b=√ab ではありません。
    それは、実数のときだけのルールです。
    虚数ではそれはできません。
    必ず、最初に i を使って書き直してから計算していきます。

    なぜできないか?
    だって、上のように計算していいのなら、
    -12√2=12√2 となってしまい、矛盾します。
    これは背理法で証明できることだと推測できますね。
      


  • Posted by セギ at 13:22Comments(0)算数・数学

    2019年10月24日

    中学数学「2乗に比例する関数」。変化の割合と a(p+q)の威力。



    さて、今回は中学数学に戻り、「2乗に比例する関数」を考えてみます。

    中学数学では、2次関数のグラフの頂点は常に原点です。
    一般式は、y=ax2 となります。
    これが、「2乗に比例する関数」と呼ばれるものです。

    この単元で重要なのは、単元の後半の「放物線と直線」「放物線と図形」などの問題です。
    高校入試で出題されるのもそこです。
    しかし、学習の前半、意外に苦戦するのが、「変化の割合」に関する問題です。

    問題 関数 y=-1/4x2 において、xが-9から-6まで増加するときの変化の割合を求めよ。

    変化の割合とは、
    yの増加量
    xの増加量

    で求められるものです。
    それは、グラフ上の2点を結んだ直線の傾きでもあります。

    1次関数においては、変化の割合はグラフの傾きと等しく、y=ax+b のaの値そのものでしたから、特に問題ありませんでした。
    しかし、2乗に比例する関数は、yの増加量が刻々と変化するものですから、変化の割合は計算しないと求められません。

    上の問題で言えば、まずそれぞれのxの値に対するyの値を計算する必要があります。

    x=-9のとき、y=-1/4×(-9)2=-81/4
    x=-6のとき、y=-1/4×(-6)2=-36/4
    xの増加量は3。
    yの増加量は、-36/4-(-81/4)=45/4
    よって、変化の割合は、45/4÷3=15/4

    負の数の計算であること。
    変化の割合を計算する際に、分子が分数である、繁文数になってしまうこと。
    そういうこともあって、途中で計算ミスをしたり、計算の仕方がわからなくなって答えが出せない子が多い問題です。


    計算力がないから、自分はこういう問題は正答できない・・・。

    しかし、諦める必要はありません。
    2乗に比例する関数の変化の割合は、簡単に求める公式があります。
    関数 y=ax2 において、xがpからqに増加したときの変化の割合は、
    a(p+q) で求められるのです。

    上の問題で言えば、-1/4(-9-6)=-1/4×(-15)=15/4
    と、実にあっけなく、正解を出すことができます。

    何で a(p+q) で変化の割合が求められるのか?
    まずはその証明をしましょう。

    y=ax2 において、
    x=p のとき、y=ap2
    x=q のとき、y=aq2
    よって、変化の割合は、
    (aq2-ap2)/(q-p)
    分子を因数分解しましょう。
    =a(q2-p2)/(q-p)
    =a(q+p)(q-p)/(q-p)
    分母・分子に同じ(q-p)がありますから、それで約分できます。
    =a(q+p)
    =a(p+q)

    pやqが負の数のときは、その符号も含めて単純に足したものに a をかければ、すぐに変化の割合を求めることができるのです。


    この公式は公立の中学校では教えません。
    変化の割合の本来の意味と公式の見た目とがかけ離れているため、理解できない子や誤用する子が多いからだと思います。
    中学の段階では、変化の割合の本来の意味をしっかり理解することのほうが重要です。
    変化の割合は、高校数学では「平均変化率」という言葉に変わり、これが微分で大きな意味を持ちます。
    非常に重要な学習事項です。
    a(p+q) という公式は、頂点が原点にある放物線、すなわち y=ax2 においてのみ使用できる公式です。
    高校に入って、もっと一般的な2次関数 y=a(x-p)2+q の学習をするようになったときには使用できません。
    使用期間が限定的であり、かつ、実感に乏しい。
    こんな公式、教えませんよね。

    ところが、中高一貫校では教えます。
    進学塾の、学力が上のクラスでは教えます。
    私も、学力の高い子には教えます。

    だって、本来の求め方をすると、時間がかかる上に計算ミスのリスクが高いのです。
    この公式で求められるのなら、この公式で解いたほうが良いでしょう。

    この公式を教えたときの公立中学の生徒の反応は色々です。
    積極的に活用する子もいますが、教わってもこの公式を使わない子もいます。
    理解できなかったからかな?というとそうではなく、学校で教わっていない公式を使ったらダメなのではないか、というためらいがあるようなのです。
    学校の問題集の発展問題に、a(p+q)を証明する問題が載っている場合は、
    「先生に、何でこんな解き方をしたのと言われたら、学校の問題集に載っていたと説明すれば大丈夫だよ」
    と言うと、ほっとした顔をして、それからは安心して使う子もいます。
    学校で教わった解き方をしないとテストでバツにされる、あるいは目をつけられると思っているのかもしれません。
    数学の先生にそんな人はいないのですが、何だか信用していないんですね。

    小学生の子が、夏休みの筆算の宿題で定規を使っていなかったので全問解き直しをさせられたとか、かけ算の順番を逆に書いたのでバツにされているテストの画像がネット上げられているのを見たりします。
    なるほど、日本は広い。
    そんな目にあう子もいるのだなあと思うのですが、それは小学生の話。
    小学校の先生は、数学の先生ではないのです。
    数学的に正しいとはどういうことかという感覚のない人もなかにはいるので、そんな「事故」もときに起こってしまうのだと思います。
    小学校の先生は、もっと別のことの専門家なので、仕方ないんじゃないかなと思います。

    中学の数学のテストは、「数学のテスト」なのですから、数学的に正しければ、その先生が教えた解き方であろうとなかろうと、マルをもらえます。
    その先生が、その解き方を知らないわけではないですから。
    公立中学で教えても教育効果が上がらないと思うから教えないだけです。
    その子がわかって活用しているのなら、例えば中学生が三角形の面積を求めるのに三角比を使おうとベクトルを使おうと、マルはくれます。
    そこは信用していいところだと思います。

    こういうことは、でも、その子はむしろ被害者かもしれません。
    大人を怒らせないように言動に気をつける。
    目をつけられないように用心する。
    それが行動規範になると、数学よりも、むしろ他の科目で弊害が出ます。
    特に、国語と社会。

    高校の入試問題は、偏差値の高い高校になればなるほど、出題される小説は規範を外れた内容だったりします。
    川端康成や三島由紀夫の小説がさらっと出題されています。
    文学の毒がたっぷり盛られた小説を、そういう子たちは読み取れません。
    小説は「人はこう生きるべきである」といった、正しいこと、ためになることが書いてあると思い込んでいるのかもしれません。
    四択問題ですと、やたら道徳的でもっともらしいことが述べられている選択肢にあっさり引っかかり、失点します。
    「国語は道徳の時間じゃありませんから、そんな説教くさいことを書いてある選択肢は、見た瞬間に消去しなさい。出題されている文章が説教くさい文章だったら仕方ないですけど、これはそうじゃないでしょう?」
    と言っても、キョトンとした顔をします。

    入試問題は、論説文もかなりエッジが効いていることがあります。
    それを読んだ上での200字作文が「私もこれからは一生懸命努力して~」といった決意表明になってしまう子もいます。
    いやいやいや、そんな決意表明は要求されていない・・・。
    この文章を読んで、なぜその決意になる?
    むしろ、読解できていないことを表明しているだけなのでは?
    しかし、そういう作文しか書けない子もいるのです。
    道徳的なことを書いておけば安心。
    それ以外のことを書けと言われると、途端に言葉を失う・・・。

    社会は、地理や歴史はそれほど影響が出ないのですが、公民で妙な選択肢に引っかかります。
    「日本国憲法は、国民の義務を明確にし、国民の権利の過剰な行使を制限するものであり、その改正は内閣が決定し、内閣総理大臣が公布する」
    といった、社会科の先生が遊んでいるとしか思えない選択肢を選んでしまうのです。
    ここまでくると、
    社会科の授業、ちゃんと聞いてる?
    憲法の原文を読んだことある?
    もしかして、世の中ってそういうものだと思っている?
    君を縛るものは、日本国憲法ではなく、そうだと思い込んでいる君の心の中にある何かだよ?
    と心配になってしまいます。

    真面目な優等生なんだけれど、テストで案外得点が伸びないのは、むしろそういうところが原因かもしれない。
    志望校に合格すれば、そんな固定観念を易々と打ち破る人間関係や経験に恵まれるだろう。
    何年かに1人現れるそのような子には、それに期待し、とにかく志望校に合格してもらいました。


    話がかなり逸れましたので、数学の話に戻って。
    上の、変化の割合を求める a(p+q) の公式は、計算ミスをしなくて済むという点で、計算に自信のない人ほど活用してほしい公式です。

    数学力をどのように判断するか、さまざまな観点があると思いますが、「思考力」「計算力」の2点だけで見ても、
    思考力も計算力もある子。
    思考力に乏しいが、計算力のある子。
    思考力はあるが、計算力に乏しい子。
    思考力も計算力も乏しい子。
    の4つのタイプに分かれます。
    それもそれぞれどの程度なのか、グラデーションのある話ではありますが。

    思考力に乏しいが計算力のある子は、数学的思考の面白さに本人が気づくことさえできれば学力が飛躍します。
    中1の段階では数学の成績は「3」で、言うことも何だかトンチンカンだけれど、計算ミスはほとんどない。
    計算する様子を見ていると、地道でもっさりしたやり方ではなく、クールな計算方法を身につけている。
    暗算するところと、しっかり書いていくところのメリハリがある。
    学校で最初に学ぶ、地道でモタモタした計算過程をいつまでも踏んでいるようなところがなく、本人の理解により省略すべきところは省略し、書くべきところはしっかり書いている。
    こういう子は、いずれ大バケする可能性があります。
    問題を解く過程で対話を繰り返しながら、そのうちどうにかなると呑気に構えていると、予想通りに中3では「5」になった。
    そんな子を、今まで何人も見てきました。
    計算を正しくできるというのは、やはり数学的には何らかの達成を見せているのだと思います。
    計算をする際に使っている論理を思考に生かせていないだけで、思考力がないわけではなかったのだ、ということかもしれません。

    「クールな計算方法」を身につけているのが鍵です。
    計算をこのように論理的にこなしているのに、問題を解く際になぜその思考力を使わない?
    そのように感じる子は、いずれどこかの回線がつながって何とかなるだろうという予感がするのです。

    反対に「地道でもっさりした計算」というのは、しかし、多くの子がやってしまう計算です。

    例えば、25000×5000 といった計算。
    これは、25×5を計算して(暗算もできるはずです)、それに0を6個つけたらいいですね。
    小学校でも教えている計算の仕方です。
    習ったときは、誰でもできます。
    しかし、その単元が終わると、それをコロッと忘れて、以後ずっと、0の大行進的な筆算をしてしまう子がいます。
    そして、桁がズレてしまい、誤答します。
    そういう計算をしているのを発見する度に助言しますが、しばらく経つと、また同じ0の大行進を行ってしまう子は多いです。
    つまりは、なぜそれで計算できるのか理解していないのだと思います。
    そういう解き方があることを習えば、そのときだけそのように計算しても、根本を理解できていないのです。
    数字の桁に関する感覚が脆弱なのかもしれません。
    25000×5000
    =25×5×1000×1000
    =125000000
    数字を上のように分解した上で、さらに交換法則・結合法則を利用して計算するのが、この計算方法の意味です。
    やり方だけ覚えるのではなく、その意味がわかっている子は、以後、ずっとこの計算方法で計算します。
    意味がわかっていない子は、やり方をすぐ忘れてしまい、このやり方を自分のものとすることができないのです。

    また、例えば、312×205 といった計算。

      312
     ×205
     1560
    624
    63960

    といった筆算をすれば良いのですが、

      312
     ×205
     1560
     000
    624
    63960

    といった余計な1行を書かずにいられない子もいます。
    これも、省略するよう小学校で教えられているのですが、それを省略できることをすぐに忘れ、型通りに計算してしまうのだと思います。

    また、例えば、25000÷5000 といった計算。
    割られる数と割る数とに、それぞれ同じ数をかけても、あるいは同じ数で割っても、商は同じです。
    だから、
    25000÷5000
    =25÷5
    =5
    と暗算できます。
    慣れてくれば、0がついたままの状態でも桁を読むことで暗算できます。
    しかし、これも、0が3個ついたまま、もっさりした筆算をする子は多いです。
    25000÷5000=25÷5 であることは、小数のわり算を行うためにも重要な考え方です。
    例えば、2.5÷0.5 をなぜ小数点を移動して計算するのかは、上の考え方がもとになっています。
    小数点の移動は、すなわち、割られる数と割る数とをそれぞれ10倍して、25÷5 として筆算しているのです。
    しかし、そのことを理解せず、ただ筆算のやり方だけを覚えている子のほうが多いです。
    計算は意味を失い、ただの作業手順となっています。

    これは学校教育が悪いのではありません。
    学校の授業でも、教科書でも、このことは強調されているのです。
    ただ、本人が、やり方しか覚えない。
    小学校でやり方しか覚えなかったため、中学生・高校生になって、論理的思考についていけなくなってしまうのです。
    どれだけ意味を説明されても、それをまだるっこしいと感じて「やり方だけ教えて」「やり方だけ知りたい」となってしまう子が多いのです。
    頭の回転が速いように見える子に、案外このタイプが多いので、苦慮するところです。
    本人の頭の働かせ方の癖なのでしょう。
    一方で、どんなに小さなことでも、意味を知りたいタイプの子もいます。
    そして、意味を知っている子は、時間が経っても、25000÷5000 といった計算で同じ論理を利用できます。
    算数・数学が統一された論理で動いていることを実感しています。
    数理の根本がわかっているというのは、そういうことだと思います。
    中学や高校の数学になって、何をして良くて、何をしたらダメなのか、自分で判断できなくなるのは、やり方だけ覚えてきたけれど意味を理解していなかったからなのです。

    また、例えばこんな計算。
    -27+18-33+26
    中1の最初に学習する「正負の数」の計算です。
    これも、同符号の計算をまとめてやれば楽であることを学校で指導されているはずです。
    =-60+44
    =-16
    というように。
    しかし、これを、
    -27+18-33+26
    =-9-33+26
    =-42+26
    =-16
    と、順番通りに計算しなければ答えが出せない中学生もいます。
    順番通りでなければ計算できないと思っているのか?
    数字の前にある符号は、計算記号ではなく、その数のもつ正負の符号であることを、学習が終わると忘れてしまうのか?
    つまり、その子にとって上の式は、小学校からお馴染みのたし算と引き算の式のままで、中学で新しく学習した、
    (-27)+(+18)+(-33)+(+26)
    と見ることができないのではないかと思うのです。
    「正負の数」の学習の最初は、このように(  )がついています。
    省略して書くことができるというだけで、(  )は常に存在すると思って計算して良いのです。
    全てたし算ですから、交換法則も結合法則も利用できます。
    そのことを、忘れてしまう。
    あるいは、最初から理解していない。
    だから、法則が使えることがわからない。
    「え?ひき算って、順番変えたらダメなんじゃないの?」
    という小学生の感覚に戻ってしまうのだと思います。

    -27+18-33+26
    =-9-33+26
    =-42+26
    =-16
    という順番で正確に計算している子は、計算力はあるのではないか?
    確かに「人間電卓」的な計算力はあると思います。
    しかし、論理的思考力を感じさせるものではないのです。

    交換法則も結合法則も分配法則も、桁移動の仕組みも、全ては小学校で学習しています。
    大切なことは全て小学校で学んでいます。
    しかし、大切なことを学んでいることに気づかない。
    大切なことを、大切なことだと認識できず、記憶の中からあっさり消して、筆算のやり方や公式の丸暗記のみ行う子は、計算の過程にそれが表れます。
    そうではないクールな計算方法を身につけている子は、数学的思考が可能な子、いずれ大バケする子、と感じるのです。

    一方、思考力はあるが計算ミスの多い子というのも存在します。
    計算のやり方がわからないわけではありません。
    ただ、雑なのか、正確さを保てないのか、計算の正答率はかなり低い。
    計算問題を正答できるかどうか五分五分ということもあります。
    しかし、理解力や思考力があるので、座標平面と図形の問題、動点に関する問題、図形の証明問題、空間図形の求積の問題のような、数学嫌いな子が避けたがる問題も自力で解いていくことができます。
    ただ、計算は合わないことが多いです。

    なぜケアレスミスをそれほど繰り返すのか?
    特定の計算でミスをしやすいのならそこを強化すれば良いのですが、多種多様なミスをその都度新たに繰り出してくるタイプの子が多いのも特徴です。
    ある日は数字を書き間違い、ある日はひき算なのにうっかり足してしまい、ある日は無理な暗算をしてしまい、ある日は符号を書き忘れる・・・。
    考えることに夢中で、手元がおろそかになっているのか?
    式を書いている間に、他のことを考えているのではないか?
    思考力はあるが、集中力が足りないのか?
    さまざまな理由が考えられますが、受験を機に解消される子と、それでは解消されず高校生になってしまう子とがいます。

    ケアレスミスをしやすい傾向は、残念ですが非常に直りにくいものです。
    計算ドリルを何冊解いても、目立った改善は見られないことがあります。
    あとは、ミスしやすい自分と折り合いをつけながら、それを含み込んで点数を読んでいく。
    複雑な計算過程を踏まないよう、上の公式のように、ミスしなくて済む解き方を身につけていく。
    そういうことで対応していけば良いのではないかと思います。
    多少の改善はみられても根本的には直らない。
    この計算力を前提としてやっていくしかない、と感じます。
    本人が一番嫌な思いをしているのですから、自覚すれば直るというものではないのです。
    まして、それを叱ったりしても、直りません。
    誰にも苦手はあります。
    その代わり、思考力を伸ばすだけ伸ばす。
    基本問題で失点する分、テストの後半の応用問題で部分点を取る。
    そういう得点の取り方を考えていくのが現実的ではないかと思います。
    また、そうやってあまり思いつめないようにしていると、前よりは改善されていることも多いです。

      


  • Posted by セギ at 13:48Comments(0)算数・数学

    2019年10月16日

    高校数Ⅱ「式と証明」。恒等式。


    今回は「恒等式」の学習です。
    恒等式とは、その名の通り、常に成り立つ式のことです。
    「xについての恒等式」でしたら、xにどのような値を入れても常に成り立つことを意味します。
    これも、
    「そんなの何に使うの?」
    という疑問がわくかもしれませんが、後になって別の単元でそれを利用して解く問題が出てきますから、ここでしっかり身につけたいところです。

    問題 次の整式がxについての恒等式となるように、定数a、b、cの値を定めよ。
    x2+2x+3=a(x+1)(x-1)+b(x-1)+c

    問題文中にある「整式」とは、「xの係数が整数の式」という意味ではありません。
    分母にxがある「分数式」ではないという意味です。
    xの係数やxの値は整数である必要はありません。

    さて、この問題の解き方は2つあり、それぞれ「係数比較法」「数値代入法」という名前がついています。
    まずは係数比較法から考えてみましょう。
    とりあえず、右辺を展開します。
    a(x+1)(x-1)+b(x-1)+c
    =a(x2-1)+bx-b+c
    =aX2-a+bx-b+c
    これをxについて降べきの順に整理します。
    =ax2+bx+(-a-b+c)
    右辺をこの状態にしてから、もう一度左辺と等号で結びます。
    x2+2x+3=aX2+bx+(-a-b+c)
    この左辺と右辺の係数を比較します。
    これがxについての恒等式なのですから、左辺・右辺それぞれの係数や定数項は等しいです。
    よって、
    1=a
    2=b
    3=-a-b+c
    の3本の式が得られます。
    わからない文字が3つあるとき、式が3本あればその文字の値を求めることができます。
    連立方程式ですね。
    a=1、b=2を-a-b+c=3に代入して、
    -1-2+c=3
    -3+c=3
    c=6
    よって、a=1、b=2、c=6です。

    もう1つの解き方が「数値代入法」。
    xに適当な値を代入して、式を解いていく方法です。
    やはり、わからない文字が3つあるので、式は3本用意します。
    xにどんな値を代入した式でも良いのですが、どうせなら計算しやすいほうがいいです。
    x2+2x+3=a(x+1)(x-1)+b(x-1)+c
    という式から、x=0、1、-1の値を代入すると判断します。

    どういう基準で、それらの値を代入すると判断するのでしょうか?
    x=0ならば、左辺の2つの項が0になり、計算が楽です。
    同様に、x=1ならば、右辺の2つの項が0になり、その後の計算が楽になります。
    x=-1ならば、右辺の第1項が0になり、その後の計算が少し楽です。
    少しでも楽をするために数字を選んでいるだけで、別の他の数字を代入したからといって間違っているわけではありません。

    では、やってみましょう。
    x=0を代入すると、
    0+0+3=a・1・(-1)+b・(-1)+c
    すなわち、
    -a-b+c=3 ・・・・①
    x=1を代入すると、
    1+2+3=a・2・0+b・0+c
    すなわち、
    c=6 ・・・・②
    x=-1を代入すると、
    1-2+3=a・0・(-2)+b・(-2)+c 
    すなわち、
    -2b+c=2 ・・・・③
    0には何をかけても0になるので、消えてしまう項が多いですね。
    だから、xそのものが0になる値や、(x+1)や(x-1)が0になる値を用いています。

    この3本を連立方程式として解いていきます。
    ②を③に代入して、
    -2b+6=2
    -2b=-4
      b=2 ・・・④
    ②、④を①に代入して、
    -a-2+6=3
    -a+4=3
    -a=-1
     a=1

    先程の係数比較法と同じ値が出ましたが、数値代入法の場合、このまま解答してしまうわけにはいきません。
    なぜなら、x=0、1、-1のときにそれが成立することしか今のところわかっていないからです。
    xがいくつかの値に対して成り立つようにa、b、cの値を決定したに過ぎません。
    これは、xについての恒等式であるための必要条件であって、十分条件ではありません。
    そこで、a=1、b=2、c=6をもとの式に代入して、本当に大丈夫なのか確認します。
    すなわち、「十分性を示す」のです。
    a=1、b=2、c=6を与式に代入すると、
    右辺=1・(x+1)(x-1)+2(x-1)+6
       =x2-1+2x-2+6
       =x2+2x+3
    よって左辺=右辺 となり、与式は恒等式となる。
    ゆえに、a=1、b=2、c=6

    数値代入法は、このように最終確認をしなければならないことが答案的には難しく、しかもわかりにくいかもしれません。
    「必要条件」「十分条件」という言葉の意味も忘れかけていた頃に突然これが出てくるので、戸惑う高校生は多いです。
    必要条件と十分条件は、数Ⅰの最初の頃に学習した内容です。
    pならばqであるとき、pをqであるための十分条件、qをpであるための必要条件という
    上の問題でいうならば、「a=1、b=2、c=6ならば、与式はxがどのような値でも成立する」
    ということを示さなければなりません。
    「x=0、1、-1ならば、a=1、b=2、c=6である」
    では、矢印の方向が逆ですね。
    必要条件であるというのはそういう意味です。
    ですから、逆方向の矢印でも大丈夫であること、すなわち「十分性」を示すことが重要です。


    恒等式で難しいのはそこだけだと思うのですが、実際の計算で苦労する高校生もいます。
    3元1次方程式の解き方がわからないわけではないのに、正しい答えを出せない子は案外多いのです。

    中学2年の「連立方程式」の学習のとき、「代入法は嫌い」と言って加減法しかやらない子がいます。
    代入法で簡単に解ける見た目になっている問題も、わざわざ加減法にふさわしい形に式を変形して解いています。
    そういうことも少し尾を引いているのかもしれません。
    代入法が嫌いというのは、代入法の理屈が上手く理解できず、加減法のように手順を把握しやすいほうに逃げているのかもしれません。
    あるいは、2通りの解き方があるなら、1つしか覚えないという学習姿勢がその子にあるのかもしれません。
    解き方を覚える・・・。
    つまり、理解しているわけではなく、作業手順を覚えるだけなので、2通りも覚えられないから加減法しか覚えないということになっている可能性があります。
    型通りの加減法の連立方程式なら解けるのですが、手順を覚えているだけで、なぜそれで解けるのか理解していないのかもしれません。
    しかし、高校生になって使うのは、加減法よりも代入法のほうが多いのです。
    2つの解き方があるとき、1つのやり方しか覚えないのは危険です。
    というよりも、解き方を理解せず、作業手順だけ暗記しようとする姿勢そのものが危険です。
    数学は、論理を理解する科目です。

    理解するのではなく作業手順を暗記する子は、中学からではなく、おそらく小学校の低学年からそういう学習姿勢が始まっています。
    算数の問題を解くときに頭を使っている気配が見られない子は、小学校の算数の成績の良い子にも見られます。
    理解できないから頭を使わないのではないのです。
    「え?その式、どういう意味?ちゃんと考えている?」
    そう呼びかけるだけで、ハッと目が覚めたようになり、問題を解き直す子もいます。
    算数の問題を考えずにパターンで判断して解く習慣がついてしまっているのです。
    おそらく、低学年の頃についた癖なのでしょう。
    しかし、高学年になるとそのパターンが通用しない単元もあり、とんでもない式を立ててしまうようになります。
    「これはわり算だな」と判断すると、問題文の中の大きい数を小さい数で割る式を立てて済ませてしまうのが典型的な例です。
    問題文の中の数値の関係性の把握をしている様子がありません。
    低学年の子どもがパターンを読んでしまい、そのパターンに当てはめて解くようになってしまう背景は、慎重に考えなければならない課題だと感じます。
    国語が苦手で、文章の読み取りに苦しさが伴うことも一因なのかもしれません。
    努力すれば読み取れるけれど、その「努力」には頭に一定の負荷がかかるので、できれば避けたい。
    それは文章の読み取りだけでなく、「考えること」で頭に負荷がかかることをそもそも避けている可能性もあります。
    以前も書きましたが、息が切れて苦しいのが嫌で運動嫌いになる子がいるように、頭に負荷がかかるのが苦しくて考えることが嫌いになる子もいます。
    「考えると脳細胞が潰れる」
    と本気で口にする子たちです。
    実際、何かを考えようとして頭に負荷がかかることが、その子たちにとって本当に苦しくて嫌なことのようなのです。
    必ずしも学力が低いわけではありません。

    パターンで済んでしまう小学校の教科書やカラーテストにも問題はあるのかもしれません。
    あまり難しい問題を解かせていると、小学校低学年で学ぶことを諦める子も出始めるでしょうから、それも大きな問題ですが。

    小学校の算数の成績の良い子が、中学受験を目指したときに、受験算数で信じられないほどに伸び悩むのは、よくあることです。
    受験算数は「大きい数を小さい数で割る」というような安易なパターンは通用しません。
    公式もありますが、それよりも、問題文に書かれてある内容を自力で線分図や面積図に書き起こすことができ、その関係を読み取って立式する能力が必要です。
    あるいは、「速さ」や「時間と水量」などのグラフを読み取る力。
    図形を読み取る力。
    それは読解力と分析力と思考力。
    つまり「学力」が問われています。
    塾のテキストの基本問題は式も答えも暗記してしまうため、基礎力があるように見えても、それは暗記しているだけで、理解はしていない子が案外多いのです。
    そのため、テストは壊滅的な得点となります。
    あの問題もこの問題も本当は理解していなかったんだね、と露呈しますが、では復習しようとなっても、またその問題の式と答えを暗記するだけです。
    暗記するのではなく理解するんだよと教えても、それは何をどうすることなのか本質が理解できないので、何をどうして良いか本人にはわからないことがあります。
    覚醒には時間がかかります。

    問題文を内容を理解して読むことのできる子は伸びる。
    自力で考えることのできる子は伸びる。
    きわめてシンプルですが、最も教えにくいことの1つです。

      


  • Posted by セギ at 13:03Comments(0)算数・数学

    2019年10月03日

    中3数学「2次方程式の利用」文章題の立式とその後の計算。


    今回は中3に戻って、2次方程式の文章題を解いてみます。
    計算問題なら大丈夫なんだけれど、文章題は苦手、という人、多いですよね。

    問題 兄は弟より4歳年上で、兄の年齢の平方は、弟の年齢の平方の3倍より8小さい。兄と弟の年齢を求めよ。

    もう幾度も書いてきましたが、方程式の文章題の答案の1行目は、何をxとしたかを書きます。
    しかし、これを書かない子は多いです。
    つい忘れてしまうようで、答案作成の習慣として定着しません。
    何を文字で表したのか定義しなければ答案を読む人に伝わりません。
    けれど、本人としては、そもそも x を使うように要求しているのは数学の先生なので、自分の関知するところではない、自分の責任ではないという意識があるのかもしれません。
    自分は x なんか使いたいわけではない、使わされているだけだ、という気分なのでしょうか。
    「そんなの書かなくて大体わかるじゃん」
    という気持ちになってしまう底には、そういう意識があるのではないかと思うのです。

    もっと単純に、小6で初めて x や y を使うことになったときは、そんなことは要求されなかった、中学になったら何でそんなにうるさいんだろう、という気持ちもあるのでしょうか。
    小学生にそこまで要求しても無理だから要求されなかっただけなのですが。

    xの定義は重要です。
    式を見て、
    「このxは何を表しているの?」
    と尋ねても、即答できない場合がほとんどだからです。
    自分でもわからないものを他人にはわかれと要求することはできません。

    そういう、「答案を読む人に迷惑をかけるな」系の理由の他に、何をxとするかを明記することは本人にとっても利点が大きいのです。
    文章題が苦手な中学生は、文章題を見た途端に小学生に戻ってしまう傾向があります。
    どうやって答えを求めよう?
    どういう式なら答えが出るだろう?
    かけ算?
    割り算?
    そんなことをうっかりすると考え始めてしまいます。

    「・・・何を x としますか?」
    そう声をかけると、はっと目が覚めた様子で、まずその1行を書き、そうだった、これは方程式だったと気がついて、立式し始める子は多いです。
    私がそのように声をかけなくても、自分で何を x とするかを考えるならば、文章題は自力で解けるようになります。
    数学は、常に1行目の書き出しが一番難しい。
    それさえ書きだせれば、次の段階に進めるのです。

    さて、無事に1行目が書けたとして。

    方程式の文章題の採点基準は、
    ①何を文字においたかを書いてあるか。
    ②方程式が正しいか。
    ③計算の結果が正しいか。
    ④変域について考察してあるか。
    ⑤最終解答が書いてあるか。
    です。

    つまり、立式が正しいことを確認した後は、すぐに計算の結果に目を移し、途中は読まない先生が多いのです。
    ③の計算の結果が正しくない場合のみ、その前に戻って、どの行まで計算が正しいかを確認し、そこまでを赤ペンで区切って部分点を決定というのが採点の普通の流れです。
    どこを採点されているのか、そのメリハリを理解し、答案を書いていくと良いですね。

    さて、問題に戻りましょう。
    これは、兄と弟の年齢のどちらをxとしても構わないです。
    ただ、兄の年齢をx歳とすると、弟の年齢は(x-4)歳と、負の符号が出てきますので、符号ミスが多い人は、ちょっと危険要素が加わることにはなります。
    とりあえず、今回は、弟の年齢をx歳としてみましょう。
    答案に、「弟の年齢をxとする」と書く人も多いですが、xは単位をつけて書きます。
    年齢なら単位は「歳」に決まっているのでまだましですが、例えば速さに関する問題で、xの単位が「分」なのか「秒」なのかわからず、実は本人も混乱しているとなると、大変です。
    「弟の年齢をx歳とする」と書くのが正しい書き方です。

    弟の年齢をx歳とする。

    さて、ここから立式です。
    よくあるのが、こんなミスです。

    (x+4)2-8=3x2

    ・・・うん?
    もう一度問題を読み直しましょう。
    「兄は弟より4歳年上で、兄の年齢の平方は、弟の年齢の平方の3倍より8小さい」

    上のような間違った式を書いてしまうのは、小学生時代に文章題に苦しめられ過ぎた後遺症なのかもしれません。
    「8小さい」をどう処理するか、頭の中であれこれ考えた結果、左辺にくっつけてしまうのです。
    小学校の文章題は、答えを求める式を立てますから、加えたと言われたら引かなければならず、かけたと言われたら割らねばなりません。
    とにかく、裏を裏を考えないと、正しい式が立ちません。
    その癖が中学生になっても抜けない人は多いです。
    方程式は、裏を考える必要はありません。
    問題文に書いてある通りに書いて行けば良いのです。
    「兄の年齢の平方」は「弟の年齢の平方の3倍より8小さい」。
    この前半のカギかっこが、左辺。
    後半のカギかっこが、右辺。
    書いてある通りに書けば、式になります。
    兄の年齢の平方は、(x+4)2。
    弟の年齢の平方の3倍より8小さい数は、3x2-8。
    その2つが等しいのですから、
    (x+4)2=3x2-8
    これが正しい立式です。
    式が表しているのは、兄の年齢の平方です。
    そこから8を引いたりしては、左辺だけが一方的に小さくなっていきます。

    考え過ぎたあげく、
    (x+4)2+8=3x2
    という式を立てる人もいます。
    この式は、間違ってはいません。
    ただ、本人の苦闘が如実に表れているわりに、「あー、はいはい。別に間違ってはいませんよ」程度の評価しか受けません。
    せっかくの方程式の旨味をなぜ生かさない?
    書いてある通りに式を立てるだけでいいのに。
    採点官の感想はその程度です。
    余計なことを考えずに、その方程式が何を表すのかを意識しながら、文章の通りに式を立てるのが、立式のコツです。

    さて、立式したら、計算です。
    (x+4)2=3x2-8
    右辺にもx2の項がありますので、これは一度左辺を展開すると良いですね。

    x2+8x+16=3x2-8
    2x2-8x+8=0

    ・・・うん?
    何か間違っていますね。
    今度は何をしたの?
    単純に移項すれば、
    -2x2+8x+24=0 
    となります。
    そうなると、x2の項に負の符号がついてしまい、それが嫌なのは、わかります。
    だから、移項しつつ、符号を転換することもしたかったようです。
    そして、定数項でしくじった・・・。

    そういうことをやりたい場合、書いているのは左辺でも、意識は全ての項を右辺に移項するイメージでやっていくと、比較的ミスなく書いていけます。
    つまり、本当は、
    0=2x2-8x-24
    と移項しているのですが、「0=」は書かず、いきなり右辺を書いていき、最後に「=0」を書き加えるイメージです。

    2x2-8x-24=0

    しかし、別にそんな無理をせず、
    -2x2+8x+24=0 
    x2-4x-12=0
    としていくのでも、手間は変わりません。
    結局、式全体を割って、x2の係数を1にしますから。

    ちょっとした手間を惜しんで、暗算で済ませて、符号ミスや計算ミスのリスクを抱え込む。
    暗算に時間がかかる上に、実は手間もそんなに違わない。
    そういうことが、方程式の計算には多いです。
    計算は正確であることが大切です。
    というより、正確であること以外は何も求められていません。

    さて、
    x2-4x-12=0
    (x-6)(x+2)=0
    x=6 , -2

    ここで、xの変域(高校生になると定義域と呼びます)を考えます。
    人間の年齢なので、-2歳などありえません。
    そこで、「x≧0 だから」 あるいは、「xは正の整数なので」といった変域を考察する1行が必要となります。
    これが上に書いた、
    ④変域について考察してあるか。
    という採点基準です。

    x=6 , -2
    xは正の整数だから、
    x=6
    兄10歳、弟6歳

    これで答案は終了です。
    さて、もう1問。


    問題 原価500円の品物に、原価のx割の利益を見込んで定価をつけたが、売れないので定価のx割引で売ったところ、45円の損失となった。xの値を求めよ。

    こうした売買損益の問題が苦手な子は、本当に多いです。
    そもそも割合の問題が苦手な上に、「原価」「定価」「売値」「利益を見込む」といった商業用語が出てくるので、ハードルが高いのでしょう。
    原価というのは、仕入れ値。
    お店の人が仕入れた値段です。
    お店の人は、その原価のまま商品を売ったら、1円ももうかりません。
    それでは商売になりません。
    だから、原価に利益を見込んだ定価をつけます。
    まだその利益は確定ではないので、「利益をつける」という言い方はできません。
    これだけの利益を得る予定である、という意味で、「利益を見込む」という言い方をします。

    上の問題は、まずは定価の表し方を考えてみましょう。
    そう呼びかけると、こんな答えが返ってくることがあります。

    500x

    ・・・え?
    500円にx割の利益を見込んだ定価は、500x?
    この答え、数学の成績が「4」の子でも出てくる答えです。

    「・・・1割って、分数ではどう表しますか?」
    「ええと・・・」
    これが、まず出てこないのです。
    「割合」の学習は、小5の3学期に行う場合が多いですが、そのときはまだ「分数のかけ算・わり算」は学習していないため、割合の数値は小数を用います。
    小6になって、分数のかけ算・わり算を学習した直後や「比」を学習する直前に、改めて「割合と分数」を学習するのですが、そこで学びそこねてしまう子は多いです。
    自分は小数を使うからいいや、と思ってしまうのでしょうか。
    また、中1では、「文字式」の学習の際に「a円の1割」といったことを文字式にする練習をします。
    しかし、それもよく理解できないまま、そんなのは多くの問題の中の1問、結局最後までできなかったけれど、まあいいか、と通り過ぎていきます。
    中1の「1次方程式」、中2の「連立方程式」で、文章題を学ぶ度に割合の問題は出てきますが、それもまた、そういうのは自分は難しいからよくわからないけど、まあいいや、と通り過ぎていきます。
    繰り返し繰り返し、幾度学習しても、割合が定着しない子は多いです。

    「1割は、1/10。わかりますか?」
    「ああ、そうだ。1/10」
    「じゃあ、x割は、どう表されるでしょう?」
    「5/10」
    「・・・え?」
    ・・・どこから湧いてきたの、その5/10は?
    500円からきたの?
    やはり、本当に混乱しているのだなあと、驚くことが多いです。

    500円のx割は、500×x/10。
    まず、ここの理解までが大変で、理解できないからとにかくそこは暗記して済ます・・・という子も多いところです。
    方程式の文章題を学ぶ度に丸暗記でやり過ごそうとし、そしてすぐ忘れてしまうのでしょう。
    もとにする量×割合=くらべる量
    この公式は、「比べる量÷もとにする量=割合」という基本の公式を使いやすいように変形しただけの式なので、確かに暗記するしかありません。
    本来、感覚的に実感できる種類のものではありません。
    しかし、私は、この式に実感があります。
    多くの大人もそうだと思います。
    それは、子どもの頃から数限りなく使用し、それで正解が出ることがわかっているので、実感と結びついたのだと思います。
    500円を1/10にしたいときは、500×1/10なのだ。
    それは、500円を3倍したいときに、500×3をするのと同じだ。
    少しも間違っていない。
    沢山使っていくうちに実感を伴ってくるものなのですが、間違った式ばかり立てている子は、その実感が育たないのです。
    この公式が脳の奥まで染みていれば何も問題がないところですが、全く納得しないまま、ただやり過ごして中3まできてしまう子は、相当数いると思います。

    小学生のうちに、何とか割合の基本は身につけてほしい。
    そう思っても、なかなかに厄介なのが割合という単元です。
    うちの塾でも、ことあるごとにふりかえって復習していますが、その都度新鮮に間違えて、また覚え直して、の繰り返しの子は多いです。
    「300円の1/3はいくらですか」
    といった問題で、
    300÷1/3 
    という式を立てることをどうしてもやめられない小学生が多いのです。
    300を1/3にするんだ。
    だったら、わり算だな。
    という感覚が真っ先にきてしまうのだろうと想像されます。
    彼らの中では、300÷1/3と、300÷3 は、同じ意味なのだと思います。
    違いが意識できないのだろうと思うのです。
    だから、300÷3 をする気持ちで、300÷1/3 をしてしまうのでしょう。


    しかも、上の問題は、500円のx割ではなく、原価500円にx割の利益を見込んだのです。
    500(1+x/10)円が、定価となります。
    しかし、ここで突然現れた「1」の意味が理解できない子が多いです。
    もともと500円はある。
    それは、全体1。
    それにさらに、x/10の利益を見込む。
    だから、定価は、500円の(1+x/10)倍になる。
    このことが、実感としてなるほどその通りだと理解できれば、以後、このタイプの問題が幾度出てきても何も困ることはありません。
    しかし、全くわからないまま解き方を暗記しては忘れ、間違えては混乱し、どっちが正しかったからわからなくなってはまた混乱し、を繰り返し、中学生になり高校生になってしまう人は多いです。

    1つのわかりやすい考え方としては、もともと500円の原価はあり、それに利益を見込んで付け加えるのだから、
    500+500×x/10 
    という式なら、ギリギリわかる、という子は多いです。
    それを500でくくると、
    500(1+x/10) になりますよ、と説明すると、
    「本当だ!初めて意味がわかった!」
    と感動します。
    しかし、その感覚のまま、その続きを立式すると、
    500+500×x/10-500×x/10
    という間違った式を導きやすいのです。
    意味が理解できたら、必ず、500(1+x/10) と(  )でくくっておきなさいと厳命しておかないと危険です。
    本当は、最初から 500(1+x/10) の意味を当たり前に理解し、500+500×x/10 という式を介さずに式を立てられるようであってほしい。

    それには、線分図です。

    線分図を描いて、全体を①として、そこにx割、すなわちx/10をたして、・・・という解説が意味をなし、理解してもらえると、私は心底安堵します。
    もう大丈夫。
    この子は、売買損益の文章題をマスターした、大丈夫だ、と感じます。
    しかし、中学受験をした子以外は、線分図の見方をほぼ知りません。
    中学受験生だって、線分図の見方を初めから理解できる子は少ないです。
    4年生の頃から毎週のように見せられ、それを描けと要求され、よくわからないまま物真似のように図を描き続け、反復して反復して、ようやく、6年生になった頃に違和感がなくなり、うっすらとその意味がわかってくる、という子も多いのです。
    数量を線分の長さで表すという概念の理解は、子どもには一大事なのだと思います。
    まして、その線分が、実数と割合と二重の意味を持っているという概念の理解は、さらに困難を極めます。
    わかりやすく目に見える形にしたつもりの図が、子どもに負担を与えるだけで、意味をなさないのです。
    線分図を見ても、何1つ理解できない子は多いです。

    そんな中で、何の偶然なのか、突然ふっと理解できる子がいます。
    頭の中も清明な良く晴れた秋の日に、突然、それはやってくるかもしれません。
    ユ・リイカ!
    我、発見せり!
    センセイが線分図とかいう妙な図で何か繰り返し力説していたことの意味が、今わかった!

    そんな晴れ晴れとした日は、長い格闘の時間があってこそ訪れます。
    諦めてはいけない。
    焦ってもいけない。
    割合の学習は、繰り返し繰り返し根気よく続けていくしかないと思っています。

    上の問題に戻ります。
    この問題、さらに続きがあります。
    その定価を、今度はx割引きするのです。
    したがって、売値は、
    500(1+x/10)(1-x/10)

    1+x/10 が理解できなかったら、1-x/10 が理解できるわけがありません。
    この文章題は、ハードルが高過ぎる。
    というより、ほぼ障害物競走に近い・・・。
    割合が理解できない子を見分け選別するために存在している文章題なのか?
    それほどに、割合が苦手な子には立式が困難なのがこの文章題です。

    500(1+x/10)(1-x/10)
    それでも何とかここまで理解したとして。
    この売値で、45円の損失があった。
    原価500円の品物を500円で売ったら、損失0円。
    では、45円の損失があったということは、売値は、500-45(円)だったということでしょう。
    したがって、式は、
    500(1+x/10)(1-x/10)=500-45
    となります。
    この式を自力で立てられる中3は、本当に凄いのですよ。
    ヽ(^。^)ノ

    ともかく、立式はできたとして。
    しかし、その後の計算も困難を極める子が多いのがこの問題です。

    500(1+x/10)(1-x/10)=455

    これをどう解くか?
    単なる計算問題と異なり、文章題で立てた式は、計算しにくいことが多いです。
    何も指示せず、好きに解いてもらうと、大半の中学生がこの式をグチャグチャにしてしまいます。

    5000(10+x)(10-x)=4550

    ・・・うん?
    何をしたの?

    (500+50x)(500-50x)=455

    ・・・うん?
    大丈夫?

    (1+x/10)(1-x/10)=455/500
    「センセイ、この先どうするの?全部分数になっちゃって、計算できない」
    「・・・うん、そうですね」
    ( 一一)

    500(1+x/10)(1-x/10)
    というのは、
    500×(1+x/10)×(1-x/10) という意味です。
    下手をすると、そういう意味だということすら忘れて、ただ手順だけ覚えて計算している中学生もいます。
    この式、左辺全体がかけ算の大きな1つのまとまりです。
    かけ算のまとまりのところは、1箇所を10で割り、代わりに他の箇所を10倍しても、計算の結果は変わりません。
    それは、小学校の算数で学習していることです。
    50×0.2=5×2=10
    といった数理の仕組みは、小学4年生で学習します。
    こうした計算も、その単元のときだけわかったような顔をするが、以後、全く活用しない小学生が多いです。
    小学校の算数は、数理の根本が詰まっています。
    「小学校のこの単元は苦手だったけど、まあ中学の数学とは関係なくない?」
    とやり過ごして良い単元は1つもありません。
    些末なことに見えることほど、後になって重大事となります。

    これを活用すれば、上の式は極めて簡単になります。
    500(1+x/10)(1-x/10)=455
    5(10+x)(10-x)=455
    全体を10倍する、100倍するといったことは、この式には必要ないのです。

    ここで慌てて(  )を開いてしまう人もいますが、得策ではありません。
    まず、両辺を5で割りましょう。
    (10+x)(10-x)=91
    ここで展開します。
    乗法公式が使えますね。
    100-x2=91
    -x2=-9
    x2=9
    x=±3

    ここで、xの変域について考察します。
    -3割の利益を見込む、といったことはありえません。
    それでは、最初から3割引きしていることになります。
    だから、x>0です。
    x>0 より x=3
    この問題は、問題文の中にxがあり、その値を求めよと言われましたので、これで最終解答です。
    答を書く前に問題文を見直すことが必要ですが、それをしない子も多く、「3割」などと答えて、つまらない減点をされてしまいます。

    さまざまな困難を乗り越えて、文章題をパーフェクトに解く快感。
    そういうものを味わい、どうか文章題を得意になってください。


      


  • Posted by セギ at 11:24Comments(0)算数・数学

    2019年09月27日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その5。とにかく解こうという気持ち。


    さて今回はまずこんな問題から。

    問題 a+b=4 のとき、3a2+b2≧12 を証明せよ。

    a+b=4 という新しい種類の条件が提示されましたが、この使い方は何となくわかるような気がします。
    おそらく、代入して、文字を1種類に整理するのでしょう。
    a+b=4 より b=4-a 
    これを代入して、
    3a2+b2
    =3a2+(4-a)2
    =3a2+16-8a+a2
    =4a2-8a+16
    ここで平方完成してみましょう。
    =4(a2-2a)+16
    =4(a-1)2-4+16
    =4(a-1)2+12

    右辺と同じ12が出てきましたね。
    これで証明できました。
    (a-1)2≧0 より 
    4(a-1)2+12≧12

    等号はa=1のときですね。
    ならば、bも決定します。
    b=4-a=4-1=3
    よって、等号成立は、a=1、b=3のとき。


    前にも書きましたが、不等式の証明を学習していて、よく受ける質問に、
    「どのやり方で証明するのか、判断がつかない」
    というものがあります。
    パッと見た瞬間に、この問題はこのやり方、あの問題はあのやり方で証明する、と判断する基準は何なのか?
    それを質問する高校生は多いです。

    しかし、とにかく試行錯誤してみるのが、力をつけるには一番良いのです。
    「どのやりかたを使っていいのかわからないから、イライラする。解くのが苦痛だ」
    ではなく、
    「どのやりかたを使うのかわからないから、色々試してみる。それが面白い」
    だと思うんです。
    数学を楽しむ態度とはそういうものではないでしょうか。

    正解に至る簡単な見分け方を教えてほしいと思ったり、それがわからないから解けない、とすぐに諦めたり。
    そういう傾向は、高校生になって突然現れるものではありません。
    小学生のときから、そういう傾向はあります。


    例えば、こんな問題。

    問題 14/15 : 35/36 を簡単にしなさい。

    これは、小学校6年生が学習する「比」の問題です。
    教科書で学習する内容よりはやや難しいです。
    しかし、「解けない」と諦めてしまうようなレベルの問題ではないと思うのですが、中学受験をしない小学生で、この問題を正答できる子は意外なほど少ないのです。

    まず、第一段階として、分母の通分が上手くできない子が多いのです。
    小学校では、「連除法」は教えません。

    3 ) 15  36
         5  12

    3×5×12=180 と、このように最小公倍数を求める方法が連除法です。

    現行の教育課程で、学校でこれを学ぶのは、高校1年数A「整数の性質」です。
    小学生にこれを教えないのは、この解き方の意味を理解できる小学生が限られているからでしょう。
    素因数分解を実感として理解できない状態でこの解き方だけを教えても、それは、単なる解き方の作業手順を教えるだけです。
    意味のわからない作業手順の丸暗記を、学校が率先して指導するわけにはいきません。
    公倍数とは何なのか。
    小学生が最初に学習するときは、その本来の意味を理解することを優先したほうがいい。
    意味が明瞭な解き方をしたほうがいい。
    というわけで、学校では、15と36の公倍数を求めるときには、それぞれの倍数を書き出していって、共通のものを見つけるやり方を教えるのが普通です。
    15、30、45、60、75、90、・・・・
    36、72、108、・・・・
    というように並べて書いていきます。
    これが面倒で、途中で諦めて、分母の15と36を通分できない子が多いです。

    上のやり方でもいいけれど、大きい数のほうが、1倍、2倍、3倍、・・・と数がすぐに大きくなっていきますから、書き出していくのは大きい数だけのほうが早いよね、と塾では助言します。
    大きい数を1倍、2倍、3倍、・・・していって、その数が小さい数の倍数にもなっているかどうか確認していけば、最小公倍数は早く見つかります。
    36、72、108、144、180、・・・
    「72は、15の倍数?違うね。108は、15の倍数?これも違うね」
    そう声をかけて、つきっきりで面倒を見ると、誰でも、180という最小公倍数を見つけることができます。

    しかし、作業自体はそんなに難しいことではないのに、宿題に出したり、独りで演習させると、15と36の最小公倍数を見つけられる子は本当に少ないのです・・・。
    180は、36の5倍でしかありません。
    たった5個目に答えがあるのに、そこに至る前に諦めてしまう子が大半なのです。
    算数・数学ができない理由の第一は、それだと思います。
    諦めが早すぎるのです。

    では、なぜ、そんなに簡単に諦めるのか?
    それは、暗算が苦手なことが第一の原因でしょう。
    36を1倍、2倍、3倍、していくことが苦痛なのだと思います。
    しかも、その結果が、15の倍数であるかを確かめるのもつらいのでしょう。
    いちいち筆算しないとそれができない計算力の子もいます。
    36×2=72 を筆算して、それから72÷15を筆算して、という作業をしないと公倍数であるかどうか確かめられない計算力では、15と36の最小公倍数を求めるのは、難行苦行です。
    頭の中でかけ算・わり算することが容易であれば、この問題は諦める必要なく解いていけるのです。

    しかも、この問題が解きにくい原因は、これだけではありません。

    14/15 : 35/36=168/180 : 175/180=168 : 175 

    ここまで解いたとしても、これをさらに簡単にすることができない子が多いのです。
    ここから、さらに、同じ数で割って比を簡単にするのですが、その数、つまり168と175の公約数を見つけることができないのです。
    暗算力のある子は、この2つの数を眺め、頭の中でちょっと暗算しているうちに、「あ、7で割れる」と気がつきます。
    しかし、そうした作業が苦痛で、強要されない限りそんなことは絶対にしない子たちは、7を見つけることができません。

    この問題の公約数は7という1桁の数なので、実はまだ見つけやすいのですが、17や19などのときは、もっと苦労することになります。
    しかし、このような場合にも、公約数を発見する方法はあります。
    168と175と、どちらからアプローチしても良いのですが、175からやってみたほうが簡単そうです。
    175を割ることのできる数を考えます。
    つまり、素因数分解するのです。
    すぐに思いつくのは、5です。
    175÷5=35
    35は、さらに5で割れます。
    35÷5=7
    つまり、175=5×5×7 です。
    これは、175は、5や7で割り切れる、という意味でもあります。
    一方、168という数の中には、5という要素(因数)は絶対ないと見た目でわかります。
    だとすれば、168を割れる可能性のある数は、7です。
    試してみると、確かに割ることができる。
    そういう作業をすれば、共通に割ることのできる数、すなわち公約数を発見することができます。

    このやり方も、小学校では学習しません。
    教科書にある公約数の見つけ方は、それぞれの約数を全て書き出し、共通のものを見つけるやり方です。
    1、2、3、4、7、8、12、14、21、24、42、56、84、168
    1、5、7、25、35、175
    全部書き出すと、最大公約数は、7だとわかります。
    この解き方でしか公約数が見つけられない子は案外多いのです。
    そして、この解き方の作業時間が長くとても面倒くさいので、公約数を見つけることをすぐに諦めてしまうのだと思います。
    教わったやり方から一歩も外れることができないのは、なぜそれで解けるのか、本質を理解していないからでしょう。
    学校で教わったものより少しだけ高度な解き方の意味を理解することができず、あるいは、理解できたとしても、自分で問題を解くときに活用することはできないのです。

    14/15 : 35/36=168/180 : 175/180=168 : 175=24:25
    これが正解です。

    この問題が解けない子たちに欠けている力は何なのか?
    1つには計算力。
    特に、整数が他の整数の積の形に見えているかどうか、です。
    175=5×5×7 という形に見ることができるかどうか。
    こうしたことは、小学校で教える内容ではありませんが、教わらなくても理解している子もいるのです。
    175が、5で割り切れるなら、175÷5の商である35でも、175は割り切れる。
    35で割り切れるということは、35=5×7だから、175は、7でも割り切れる。
    そういう、かけ算とわり算の関係を理解していると言い換えても良いです。
    それは、「わり算の検算」という学習で小学校でも一応触れているのですが、その内容の重要性に気づかず、頭の隅にも残さない子も多いです。
    しかし、算数が本当に得意な子たちは、理解しています。
    かけ算・わり算を沢山やっていく中で自然に獲得している知があるのです。
    数の体系を、数理の根本を、教わらなくても理解している子たちが、算数・数学で高い能力を発揮します。
    一方、計算のやり方などの実務的な学習事項に目を奪われ、論理的なことの重要性に気づかず聞き流す子たちも多いのが現状です。

    また、1つには、理解力と応用力。
    小学校の教え方は、最大多数の子が理解できるようにと考えられた教え方です。
    だから、公倍数の求め方も、公約数の求め方も、とにかく地道です。
    最初はそれで良いのですが、本質を理解したら、もっと早く求める方法があります。
    それを活用できない子が多いのです。
    塾で教えても、そのときは理解した顔をしますが、自分のものにできない子が多いです。
    家庭でご両親が教える場合も、数学が得意な人が教えるほど、むしろ子どもが全くついてこられず喧嘩になってしまうということは多くあると思います。
    私も、その子の理解力次第で連除法も教えるつもりでいるのですが、ちょっと無理だなと判断する場合が多いです。
    せめて、大きいほうの数を1倍、2倍、3倍して、早く最小公倍数を見つけることくらいは身につけてほしいと思っても、結局いつも小さいほうの数を1倍、2倍、3倍し始めて、いつまでも数が大きくならず、なかなか公倍数に至らず、諦めてしまう子が多いのです。
    なぜ、小さいほうの数を1倍、2倍、3倍するのか?
    おそらく、問題に最初に書いてあるのは、小さいほうの数だからでしょう。
    あるいは、片方の数だけ1倍、2倍、3倍していけば良いということをすぐに忘れ、学校の解き方に戻ってしまうので、まず小さいほうの数の倍数を書き出しているのでしょう。
    算数の問題を解く作業が、学校で教わったことを教わった通りに機械的に再現するだけになっていて、考えて作業をする気配がない・・・。
    学力そのものが低いわけではないのに、そのようになってしまっている小学生が多いです。

    もう1つは、粘り強さ。
    学校で教わった地道な解き方だって、いつか答えは出るのです。
    何かやっていけば必ず答えが出せる問題で、なぜ諦めるのか?
    なぜ、36の5倍すらやってみようとしないのか。
    なぜ、その前で諦めるのか?
    180がみつからなかったとして、いっそ36の10倍の360ではどうかと考えてみることも、なぜしないのか?
    後で整理すれば良いのだから、それでも良いのです。
    そういう、ダメでもいいからやってみる強い気持ちに欠け、諦めてしまうのです。


    14/15 : 35/36 を簡単にしなさい。

    さすがに高校生になれば、この程度の問題で諦めてしまうことはないと思います。
    それは、高校生の学力で小学生の問題を見ているからです。
    しかし、その関係は、そっくり、高校生の問題にスライドできるのではないでしょうか。
    高校数学の問題の解き方がわからないとすぐに諦めている高校生は、比を簡単にする問題を諦めている小学生と同じように見える、という視点も存在するのではないでしょうか。
    そして、解けない原因も、共通するものが多いのではないでしょうか。
    1つには、計算力。
    高校数学の問題をあれこれ試行錯誤するためには、自在に計算する力が必要です。
    計算自体が億劫なので、試しに計算してみることができない、ということはないでしょうか。
    また1つには、理解力と応用力。
    問題の目先が変わると解き方がわからないのは、基本問題の意味を本当はわかっていなくて、解き方の作業手順を丸暗記しているだけだからではないでしょうか。
    理解することをおろそかにし、作業手順の丸暗記で済ませてはいないでしょうか。
    そして、もう1つ大切なのは、粘り強さ。
    あと一歩粘れば解ける問題を、途中で諦めてはいないでしょうか。
    わからない。
    簡単に解き方のわかる方法を知りたい。
    と思う前に、あと一歩、粘るだけで実は答えは出るのではないでしょうか。

    色々考えるのが数学の楽しさです。
    粘って、何時間も考えるから、数学は面白いのです。


    さて、次の問題。

    問題 a>1、b>1、a+b=1 のとき、不等式 ax2+by2≧(ax+by)2 を証明せよ。

    まずは、これも代入して、左辺-右辺≧0を証明することを考えてみましょう。
    a+b=1 より b=1-a
    左辺-右辺 
    =ax2+by2-(ax+by)2
    =ax2+(1-a)y2-{ax+(1-a)y}2
    =ax2+y2-ay2-a2x2-2axy(1-a)-y2(1-a)2
    =ax2+y2-ay2-a2x2-2axy+2a2xy-y2(1-2a+a2)
    =ax2+y2-ay2-a2x2-2axy+2a2xy-y2+2ay2-a2y2

    うわあ・・・・。
    この先、やりようがあるのかもしれませんが、ちょっと迂回したくなってきました。
    これは、1回戻って考え直したほうが良さそうです。
    バラバラにしたのが良くなかったのかもしれません。
    代入前に戻って整理してみます。
    中学の数学の、文字式の値を求める問題も、まず整理してから代入するのが鉄則でしたものね。
    x について降べきの順に整理してみましょう。

    ax2+by2-(ax+by)2
    =ax2+by2-(a2x2+2axby+b2y2)
    =ax2+by2-a2x2-2axby-b2y2
    =(a-a2)x2-2abxy+(b-b2)y2
    =a(1-a)x2-2abxy+b(1-b)y2

    あ、これは対称式です。
    対称式というのは、文字を入れ替えても値の変わらない式のことです。
    ここで、あっとひらめくのです。
    a+b=1より、1-a=bですし、1-b=aです。
    この両方をそれぞれに代入してはどうでしょうか。

    =a(1-a)x2-2abxy+b(1-b)y2
    =abx2-2abxy+aby2
    =ab(x2-2xy+y2)
    =ab(x-y)2≧0
    よって、ax2+bx2≧(ax+by)2
    等号成立は、x-y=0、すなわちx=yのとき。

    ・・・そんなやり方、思いつかないよ。
    最初はそういう感想で当然だと思います。
    こんなのは自力で発想できなくても良いのです。
    ただ、このテクニックは、頭の引き出しに入れておきましょう。
    そして、類題を解くときに使えるようにしておくのです。
    テクニックを頭の引き出しに入れておくことは、作業手順の丸暗記とは違うのです。



      


  • Posted by セギ at 12:56Comments(0)算数・数学

    2019年09月22日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その4。絶対値を含む不等式。


    今回は、「絶対値を含む不等式の証明」の学習です。
    「絶対値」という言葉は、中学1年生の「正負の数」で学びます。
    数学学習の初期の初期に出てきます。
    絶対値の定義は、「数直線上での原点からの距離」です。
    だから、+3も-3も絶対値は3です。
    したがって、絶対値とはその数の符号を外した数、すなわち正の数ととらえることが可能です。

    ここまでならシンプルな話なのですが、絶対値に文字がからむと途端にわかりにくくなるようです。
    例えば、高校数Ⅰで学習する以下の内容。

    |a|≧a
    |a|≧-a
    |a||b|=|ab|
    |a+b|2=a2+2ab+b2

    パッと見て、「そりゃそうだ。当たり前だ」と感じる人と、「え?え?何?」と焦る人とがいます。
    1つには、文字が正負の記号を含みこんでいることを理解しきれていないせいかもしれません。
    aという文字は、a≧0の可能性とa<0の可能性とがあります。
    そう説明されれば、「それは知っている。わかっている」と言うのですが、上のような等式・不等式を見るときに、いつの間にか、
    aは正の数。
    -aが負の数。
    という認識になっていないでしょうか?

    「aという文字が何なのか決まっていないのに、何で大小が言えるんですか?」
    不等式の学習がここまで進んでから、突然そう質問されて、その質問がどういう意図のものかわからず、困惑したこともあります。
    「不等式の証明」の学習の始まりには、そういう疑問はもたない様子で、それなりに解いていたのです。
    しかし、絶対値を含む不等式になると、その質問が口をついて出てしまったようです。

    絶対値がわからないのか?
    最初から不等式がわからなかったのか?
    aという文字の正負がわからないのなら、左辺と右辺のどちらが大きいかはそのときによるんじゃないか?
    急にそう感じるようになった、ということなのでしょうか。

    とりあえず、まず、上の不等式を1つ1つ見ていきましょう。
    |a|≧a
    これは、まずはaの正負によって場合分けして考えると理解できると思います。
    a≧0 のときは、|a|=a です。
    a<0 のときは、|a|は正の数、a自体は負の数ですから、|a|>a です。
    それらをまとめると、
    |a|≧a
    となります。
    ≧ というのは、>であるか、または=であるか、ということですから、どちらかになれば良いのです。

    |a|≧-a
    これも、まずはaの正負によって場合分けして考えます。
    a>0 のとき、|a|は正の数で、-aは負の数ですから、|a|>-a が成立します。
    a=0 のとき、|a|=0、そして、-a=0 ですから、|a|=-aです。
    a<0 のとき、|a|は正の数、-aも正の数ですから、|a|=-aです。
    それらをまとめると、
    |a|≧-a は、aの正負に関わらず、必ず成立します。

    |a||b|=|ab|
    これは、比較的理解しやすいかもしれません。
    a、bの正負に関係なく、|a||b|は正の数です。
    |ab|も正の数です。
    よって、
    |a||b|=|ab|
    は、常に成立します。

    |a+b|2=a2+2ab+b2
    もしかしたら、これが一番理解しにくいかもしれません。
    |a+b|2 が正の数であることには疑問の余地はないと思います。
    問題は右辺でしょうか。
    a2+2ab+b2
    これが負の数の可能性があるように感じるので、たとえ絶対値が等しくても、等式は成立しないのではないか、と感じることがあるようです。
    しかし、この右辺は、因数分解できます。
    a2+2ab+b2=(a+b)2
    a+bが正の数であっても負の数であっても、(a+b)2は正の数です。
    よって、左辺も右辺も正の数で、もともと絶対値が等しいことは見ればわかりますから、
    |a+b|2=a2+2ab+b2
    が言えるのです。

    ちなみに、上の記述は、感覚的に納得するための説明であって、証明ではありません。
    証明は、もう少し細かい定義が必要となります。

    これで感覚的に納得してもらえたはずだ・・・、と思っても、納得した顔をしない高校生もいます。
    何か騙された気がすると言うのです。
    詐欺にあったような顔をしています。
    では、どこが疑問なのかと問い返すと、それはどこかはわからないけれど、何となく納得できない・・・という曖昧な答えが返ってきます。
    場合分けして説明されることに、そもそも懐疑を示す人もいます。
    その場合分けが全てではないような気がするというのです。
    そうでない場合もあるのに、そこで騙された気がする・・・。
    どこで騙されたとは指摘できないけれど、きっと騙されている・・・。

    そんなにも疑い深い一方、ネットに書いてある根拠のないことや、テレビで有名人がわかったふうに喋っていることをたやすく信じてしまうのは、なぜなのでしょう。
    友達から聞いた噂話を鵜呑みにしてしまうこともありますよね。
    そういうことを簡単に信じないために、数学を学ぶという側面もあります。
    信じるべきことと疑いを抱くべきことを自分で判断するために、「論理」を学ぶのです。
    数学は、論理を学ぶことができる学問です。

    ともあれ、疑いが消えないならば、そうではない例、すなわち反例を自分であれこれと考えたみたら良いと思います。
    aやbを正の数にしたり、負の数にしたり、色々な組合せで考えて、実際に計算してみて、納得できるまで上の等式・不等式が成立することを確認してみてください。
    それをしてみることで、正負の数に関する自分の認知の歪みに気がつくこともあると思います。
    中学1年で突然習った「負の数」というものの本質をつかみきれないまま、計算のやり方だけ暗記して済ませてきたことが尾を引いているのかもしれません。
    この機会に歪みを正すことができたら、この先の学習が楽になります。


    さて、それでは、数Ⅱの実際の問題にあたってみましょう。

    問題 |a|+|b|≧|a+b|を証明せよ。

    え?
    |a|+|b|=|a+b|じゃないの?
    いつも等しいんじゃないの?
    という錯誤が生まれてしまうことがあるかと思いますが、それは、やはり気がつくとaやbは正の数だと決めつけていることからくる錯覚です。
    実際には、aやbは正の数のこともあれば負の数のこともあり、0のこともあります。
    そのどの場合でも、上の不等式は成立します。
    それを証明しろと言われているのですね。
    不等式の証明は、左辺・右辺の両辺が正の数であることが確実ならば、2乗したもの同士で比較しても大丈夫でした。
    すなわち、(左辺)2-(右辺)2≧0 ならば、(左辺)≧(右辺) です。
    ここで活躍するのが、上の|a+b|2=a2+2ab+b2 などの基本ルールです。

    (左辺)2-(右辺)2
    =(|a|+|b|)2-|a+b|2
    =|a|2+2|a||b|+|b|2-(a2+2ab+b2)
    =a2+2|ab|+b2-a2-2ab-b2
    =2|ab|-2ab≧0

    最後が唐突な印象があるでしょうか。
    では、|ab|-ab の正負について考えてみましょう。
    aとbが同符号あるいは0のときは、ab≧0 です。
    このとき、
    |ab|=ab となり、|ab|-ab=0 です。
    aとbが異符号のとき、すなわちab<0 のとき
    -ab>0 となります。
    |ab|-ab は、正の数と正の数との和となりますから、
    |ab|-ab>0 です。
    これらをまとめると、
    |ab|-ab≧0 となります。
    よって、2|ab|-2ab≧0 も成立します。
    (左辺)2≧(右辺)2であるから、左辺≧右辺も成立し、
    |a|+|b|≧|a+b|
    等号はa=bのとき成立する。


    続いて、こんな問題です。

    問題 |a-b|≧|a|-|b| を証明せよ。

    上の問題と似ているようですが、これはちょっと違うのです。
    何が違うのか?
    |a|+|b|≧|a+b|
    は、左辺も右辺も、正の数です。
    正の数での大小の比較ですから、それぞれ2乗して大小を比較することで単純に判断できました。
    しかし、
    |a-b|≧|a|-|b|
    は、左辺は正の数ですが、右辺は、負の数かもしれません。
    単純に2乗して大小を比較することはできません。
    ここは、場合分けして判断していかなければなりません。
    1) |a|-|b|<0 すなわち |a|<|b| のとき
    |a-b|>0、|a|-|b|<0だから、
    |a+b|>|a|-|b|
    2) |a|-|b|≧0 すなわち |a|≧|b| のとき
    (左辺)2-(右辺)2
    =|a-b|2-(|a|-|b|)2
    =a2-2ab+b2-(|a|2-2|a||b|+|b|2)
    =a2-2ab+b2-a2+2|ab|-b2
    =-2ab+2|ab|
    =2|ab|-2ab
    =2(|ab|-ab)≧0
    ゆえに、
    |a-b|2≧(|a|-|b|)2
    したがって、
    |a-b|≧|a|-|b|
    1)、2)より、
    |a-b|≧|a|-|b|
    等号は|ab|=ab すなわち ab≧0 かつ|a|≧|b|のときに成り立つ。

    いかがでしょうか?
    この機会に、絶対値アレルギーをなくすことができると良いと思います。
    絶対値がわからない、という人は、何か誤解があるのです。
    あるいは、わかっているつもりで、問題を解いている最中に、ふっと混乱が起こるのです。
    そこがスッキリすると、数学全体がかなりスッキリしてくると思います。


      


  • Posted by セギ at 13:16Comments(0)算数・数学

    2019年09月15日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その3。いろいろな問題。


    さて、今回は、不等式の証明に関する少し難しい問題をいくつか解いてみましょう。

    問題 不等式 x2-6xy+10y2≧4y-4 を証明せよ。

    x と y と文字が2つあり、両方とも2次で、しかも、xy の項もあるので、文字ごとに別々に平方完成することはできない問題です。
    さて、どのように解くか?
    これは、まず x を優先し、xを含んでいる項で平方完成してしまいましょう。
    いえ、y を優先しても別に構いません。
    とにかく、どちらかの文字をまず優先するという考え方で処理していきます。

    左辺-右辺
    =x2-6xy+10y2-4y+4
    x2 と-6xyを優先して平方完成します。
    =(x2-6xy+9y2)+y2-4y+4
    =(x-3y)2+y2-4y+4
    後半の3つの項も平方完成できますね。
    =(x-3y)2+(y-2)2≧0
    よって、
    x2-6xy+10y2≧4y-4
    等号成立は、x-3y=0 かつ y-2=0
    すなわち、x=6、y=2のとき。


    問題 不等式 (a2+b2)(x2+y2)≧(ax+by)2 を証明せよ。

    文字が4種類もあるわりに、これは単純に解いていけそうな予感がします。
    左辺-右辺
    =(a2+b2)(x2+y2)-(ax+by)2
    =a2x2+a2y2+b2x2+b2y2-a2x2-2abxy-b2y2
    =a2y2+b2x2-2abxy
    =a2y2-2abxy+b2x2
    =(ay-bx)2≧0
    よって、
    (a2+b2)(x2+y2)≧(ax+by)2
    等号成立は、ay-bx=0 すなわち、ay=bx のとき。

    同様に、
    (a2+b2+c2)(x2+y2+z2)≧(ax+by+cz)2
    も証明可能です。
    これらは、コーシー・シュワルツの不等式と呼ばれているものです。


    問題 x>0のとき、x+16/(x+2)の最小値を求めよ。

    急に最小値と言われても、2次関数ではなさそうなのに、どういうことだろう?
    このように問題の目先が変わると、何をどうして良いか全くわからなくなる人もいると思います。
    「どういうふうに考えるんですか?」
    と相談されることが多いのです。
    分子と分母にxがある場合、相加平均・相乗平均が使える可能性があるよね?と問いかけると、
    「だから、そういうことをどう発想するんですか?」
    と問われます。

    最小値・最大値という文字を見たら、まず2次関数かな?と考える。
    そうでなかったら、あれ?では不等式かな?と発想する。
    何もないところからいきなりその発想をもてないということは理解できます。
    ならば、発想のストックを自分の中にもっておくことをお薦めします。

    では、不等式をどう使うのでしょう?
    最小値というのは、とりうる値の中で最小の数。
    x+16/(x+2) はいくつ以上なのだろうと考えると、あ、これは不等式なんだなと気づくと思います。

    後半の分母が x+2 なので、前半も x+2 にしてみます。
    それなら、相加平均・相乗平均の定理が使えるでしょう。

    相加平均・相乗平均の関係より、
    x+2+16/(x+2)≧2√(x+2)・16/(x+2)
    右辺の√ は、式の最後までかかります。
    x+2+16/(x+2)≧2√16
    x+2+16/(x+2)≧8
    x+16/(x+2)≧6
    よって最小値は6とわかりました。
    ところで、このときのxはいくつでしょう。
    それも求めましょう。
    相加平均・相乗平均の関係より、
    等号成立は、x+2=16/(x+2) のとき。
    よって、
    (x+2)2=16
    x+2=±4
    x=-2±4
    x=-6、2
    x>0より 
    x=2
    よって、
    x=2のとき最小値6

    これが最終解答となります。


    問題 x>0、y>0 のとき、(3x+2y)(3/x+2/y) の最小値を求めよ。

    これも、相加平均・相乗平均を利用するんだろうなあと、一度上のような問題を解くと、発想のヒントが見えてくると思います。
    問題を解く経験を積む。
    発想の源は、経験であることが多いのです。

    とりあえず、与式を展開してみましょう。
    (3x+2y)(3/x+2/y)
    =9+6x/y+6y/x+4
    =13+6x/y+6y/x
    ここで、相加平均・相乗平均の関係より、
    x/y+y/x≧2√x/y・y/x
    x/y+y/x≧2
    よって、
    13+6x/y+6y/x≧13+6・2
    13+6x/y+6y/x≧25
    等号成立は、x/y=y/x のとき。
    x>0、y>0 より
    x2=y2 すなわちx=yのとき。
    よって、
    x=yのとき、最小値25

    これが最終解答です。
    相加平均・相乗平均を利用したときの等号成立のところが何だか飛躍しているようでよくわからない人いるでしうか。
    これは、相加平均・相乗平均の定理を使っているだけなのです。
    a+b≧2√ab
    等号成立は、a=bのとき。
    この定理を利用して、等号成立のときを判断しているだけです。
    その都度計算しているわけではないのです。
    前に学習したことをスルッと使われて解説されると、よくわからない・・・。
    そういうことは、直前で学習したことでもすぐに起こります。
    モヤモヤしたら、定理に戻って確認しましょう。

    また、すぐ上の問題では、
    x/y=y/x のとき、
    x>0、y>0 より
    x2=y2 すなわちx=y
    というところがわからない、という人もいるかと思います。
    両辺が分数の式のとき、互いの分母×分子は等しいということを知らない人は高校生になっても多いです。
    三角比の正弦定理の式も、それを用いて整理すれば簡単になります。

    a/b=c/d のとき、ad=bc
    分数の基本に戻って考えましょう。
    通分・約分するときの基本の考え方ですが、分母・分子に同じ数をかけても、分数全体の大きさは変わりません。
    だから、a/b=ak/bk は常に成立しています。
    この式の、左辺の分子×右辺の分子は、abk。
    右辺の分子×左辺の分子も、abk。
    よって、両辺が分数の式は、たすきにかけたような形に簡単に整理できるのです。
    それで上の x/y=y/x も、x2=y2 と変形できるのです。


    それで思い出したのですが、最近、別の塾で「比」を学習した小学生が、こんな解き方をしました。
    2/15 : 1/5=15 : 10=3 : 2

    ・・・うん?
    何をしたの?
    「x攻撃すると、簡単なんだよ」
    と、その子は、知らないなら教えてあげるというような、謎の上から目線で教えてくれました。
    しかし、この問題の正解は、2 : 3 です。
    その子は、左の項の分母と右の項の分子をかけて、15×1=15。
    左の項の分子と右の項の分母をかけて、2×5=10。
    だから、15 : 10=3 : 2 としてしまったのでした。
    それは、逆です。
    そういうやり方をするのなら、左の項の分子と右の項の分母の積が先、左の項の分母と右の項の分子の積が後。
    比は、順番が大切。
    逆に書いたら、それは誤答。
    「xにかける」のは一見簡単そうですが、どちらを先に書くのか曖昧になったら、そのやり方は失敗します。

    2/15 : 1/5=2/15 : 3/15=2 : 3
    という普通の解き方でなぜいけないのか?
    この解き方のほうが、どういう解き方をしているのか、その意味も明確で、間違える可能性も少なく、解く手間も上の解き方と同じです。

    ところが、小学生は、このような「x攻撃~」的な解き方が好きです。
    その解き方は間違える可能性が高いから普通に通分しなさいと助言したのですが、「嫌だ」の一言で却下されました。
    比なんて、どんなに気をつけても順番を逆に書いてしまうことが多い単元。
    それにさらにこんな不確定要素が加わったら、この先、まともに正解が出る気がしません・・・。
    この先の受験算数は、ほとんど全て比を使います。
    「速さと比」「割合と比」「面積と比」「つるかめ算と比」「平均と比」と、比ばかりなのに・・・。
    算数が苦手な子には理解しづらいところで、ただでも大変なのに、x攻撃をやめさせるという余計な負担が1つ増えました。
    ただ今、その方向に向けて努力中です。

    x攻撃。
    この解き方を教える際に、ただし順番には注意することという指示があったのかもしれません。
    しかし、「順番に注意」といった細則はすぐに頭から抜け落ちていくのが子どもです。
    算数が苦手な子どもたちのために、楽しい解き方を教えてやろう。
    それは善意から出たものでしょうが、その子は、分数比を簡単な整数の比に直す作業の正答率は常に五分五分のリスクを一生かかえる可能性があります。
    この解き方は、リスクが高いです。

    それと混同されやすく、誤解される可能性がありますが、両辺が分数の式を分母と分子の積の形に直すのは、どっちが先でも後でも、必ず等式が成立します。
    一見、上のx攻撃と似ていますが、誤用のリスクはありません。
    誤用のリスクのある解き方は、算数・数学が苦手な子に教えないほうがいい。
    意味がわかる基本の解き方を丁寧に実践することのほうが、結局、子どものためになる。
    これは不文律とすべきだと、改めて感じました。


      


  • Posted by セギ at 13:24Comments(0)算数・数学

    2019年09月08日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その2。相加平均と相乗平均。


    今回は、相加平均と相乗平均の話です。
    言葉がまず少し難しい印象ですね。
    相加平均は、小学生の頃からお馴染みのいわゆる「平均」です。
    加は、加法の加。
    つまり、たし算の平均が相加平均。
    n個の数の和をnで割ったものです。
    一方、相乗平均は、n個の数の積のn乗根となります。
    乗は、乗法の乗。
    つまり、かけ算の平均が相乗平均です。
    ただ、まだ「指数関数・対数関数」の単元を学習していませんので、この「n乗根」というのが厄介です。
    今回の学習内容では、そこまで話を拡大する必要がありませんので、2つの数の積の平方根に限って話を進めましょう。


    2つの数に限定して説明すると、
    相加平均は、2数aとbとの和を2で割ったもの。つまり(a+b)/2。
    相乗平均は、2数aとbの積の平方根。つまり、√ab です。

    a≧0、b≧0のとき
    (a+b)/2≧√ab
    等号はa=bのとき成り立つ。

    これが、相加平均≧相乗平均の定理です。
    証明もそんなに難しくありません。
    左辺-右辺をやってみましょう。
    左辺-右辺≧0 となれば、左辺≧右辺 を証明できますね。

    (a+b)/2-√ab
    これをまず通分します。
    =(a+b-2√ab)/2
    中3で学習した因数分解の公式が使えそうです。
    =(√a2+√b2-2√ab)/2
    =(√a-√b)2/2≧0
    よって左辺≧右辺となり、(a+b)/2≧√ab です。
    等号は√a-√b=0、すなわち a=b のとき成り立つ。

    相加平均≧相乗平均 の定理は、分数のままだと使いにくいので、両辺を2倍して、
    a+b≧2√ab
    の形で利用することが多いです。
    では、実際に利用してみましょう。

    問題 a≧0、b≧0とする。
    (a+1/a)(b+1/b)≧4 を証明せよ。

    左辺の( )内がそれぞれ和の形になっています。
    文字の並びからして相乗平均したら右辺のように文字が消えて数字だけが残りそうです。
    これは、相加平均≧相乗平均 の定理が使えるでしょう。

    相加平均≧相乗平均 より
    a+1/a≧2√a・1/a
    a+1/a≧2 ・・・①
    同様に、
    b+1/b≧2 ・・・②
    ①×②をすると
    (a+1/a)(b+1/b)≧4
    等号はa=1/a かつ b=1/b すなわち、a=b=1のとき成り立つ。

    見た目は似ているようでも、全ての問題で相加平均≧相乗平均を使うわけではありません。

    問題 a≧0、b≧0のとき、√2(a+b)≧√a+√b を証明せよ。

    左辺全体に√ がかかっているものとして読んでください。

    これも、相加平均≧相乗平均 を使うのだろうかと悩む高校生がときどきいますが、試しに使ってみると、すぐに式がグチャグチャになってきて行き詰まることがわかると思います。
    相加はあっても相乗がなさそうな式には、この定理は使えないのです。

    とはいえ、それが見抜けないと言う人もいます。
    そういう人は、あれこれ悩む前に、可能性を感じるのならやってみたら良いと思います。
    手は動かさないのに、「どんなときに使うの?どうやって見分けるの?」と質問する高校生は多いのですが、手を動かし、試行錯誤すれば、見分けがつくようになります。
    そうなる前に説明だけ聞いて見分けようとしても、その説明が長くしかも細かくて何を言っているのかわからないということが起こりがちです。
    しかも、見分け方だけ聞くとなぜか安心するようなのが、見ていて恐ろしい。
    見分け方だけ聞いても、実際にそれで見分けられるようには、なかなかならないです。
    選択肢の1つとして、常に相加平均・相乗平均のことを頭においてください。
    そのほうが良いです。

    さて、相加平均・相乗平均の定理を使わないのなら、どうやって解くのか?
    上の式はa≧0、b≧0ですので、左辺も右辺も正の数であることがわかっています。
    ならば、それぞれ2乗しても大小関係は変わりません。
    だから、それぞれ2乗してみましょう。
    √2(a+b)と√a+√bの2乗の差は、
    2(a+b)-(√a+√b)2
    =2(a+b)-(a+2√ab+b)
    =2a+2b-a-2√ab-b
    =a-2√ab+b
    =(√a-√b)2≧0
    よって√2(a+b)≧√a+√b
    等号は√a-√b=0 すなわちa=b のとき成り立つ。

    今までのところを整理しますと、不等式を証明するには、左辺-右辺≧0 を示すのが基本ですが、そのためには、
    ①平方完成する
    ②相加平均≧相乗平均 を利用する
    ③全体を2乗する
    などのテクニックがあります。
    これらのうちのどのテクニックを使うかは、その問題ごとに自分で判断します。
    判断がつかないうちは試行錯誤してみましょう。
    数学の問題を解いていて一番楽しい時間は、この試行錯誤の時間だと思うのです。
    一番意味のある時間でもあると思います。
      


  • Posted by セギ at 13:30Comments(0)算数・数学

    2019年09月01日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その1。


    今回は、「不等式の証明」に入ります。
    「左辺と右辺が文字ばっかりじゃ、大小なんてわからないんじゃないの?」
    以前、そういう鋭い質問を受けたことがあります。
    文字の値によって大小なんて違ってくるんじゃないの?
    そんなものをどうしたら証明できるの?

    勿論、個々の文字の値が何であるかによって大小が異なる場合がほとんどです。
    証明できるものはごく一部です。
    だから、練習する問題は、証明できるものだけなのです。
    では、どんな場合に証明できるのか?

    まず、左辺-右辺≧0 を証明できれば、左辺≧右辺 です。
    では、どんなときに左辺-右辺は0以上になるのか?
    左辺-右辺を何かの2乗の形にできるなら、それは0以上の数でしょう。
    実数の場合、2乗すれば必ず0以上の数になります。
    不等式は、これを用いて証明することが多いです。

    問題 x4+y4≧x3y+xy3 を証明せよ。

    左辺-右辺
    =(x4+y4)-(x3y+xy3)
    =x4+y4-x3y-xy3
    項の順番を変えてみましょう。
    =x4-x3y-xy3+y4
    ここで、共通因数で括ります。
    =x3(x-y)-y3(x-y)
    ( )の中身が共通因数となりましたので、さらに因数分解できます。
    =(x-y)(x3-y3)
    後半の(  )は、さらに因数分解できます。
    3乗の公式を使います。
    =(x-y)(x-y)(x2+xy+y2)
    =(x-y)2(x2+xy+y2)

    さて、ここまで因数分解して、前半の(x-y)2は、2乗ですから、必ず0以上になります。
    後半の x2+xy+y2 は、どうでしょうか。
    ここは、平方完成してみます。

    平方完成を覚えているでしょうか?
    数Ⅰの「2次関数」でやりました。
    頂点の座標を求めるために式を変形する方法です。
    因数分解と異なり、定数項が(  )の外にはみ出しても、別に構わないのでした。
    今回はxについての文字式と考えて平方完成しますので、yはxの係数として扱います。
    x2+yx+y2
    =(x+1/2y)2-1/4y2+y2
    =(x+1/2y)2+3/4y2≧0
    この式は、前半も後半も2乗の形になっています。
    だから、どちらも0以上の数だとわかります。
    0以上の数同士を足しても、0以上です。
    よって、この式は、0以上です。
    元の式に戻りましょう。
    (x-y)2(x2+xy+y2)
    =(x-y)2{(x+1/2y)2+3/4y2}
    これは、0以上の数と0以上の数の積であることがわかります。
    よって、全体も0以上です。
    左辺-右辺≧0
    左辺≧右辺
    これで証明できました。

    さて、≧のように、等号が含まれている不等式の場合、どんなときに等号が成り立つかを書き添えるのが慣例です。
    (x-y)2{(x+1/2y)2+3/4y2}=0
    は、どんなときに成立するでしょうか。
    前半の( )または後半の{ }の中身が0ならば、積は0です。
    よって、x-y=0 または、x+1/2y=0かつy=0
    となります。
    これを整理すると、
    前半は、x=y です。
    「または」の後のほうは、y=0をx+1/2y=0に代入すると、
    x=0となり、よってx=y=0です。
    これは、前半のx=yの1例と考えることができます。
    よって、等号は、x=y のときに成り立ちます。

    以上が不等式の解き方の基本です。
    因数分解や平方完成を忘れてしまっていると上手くできないかもしれません。
    数学は、積み上げ科目。
    1つの単元が終われば、そのときに使った解法や公式は全て忘れる。
    そういう勉強をしていると段々苦しくなるのは、こういうことがあるからです。

    ただ、1回学習したくらいでは身につかないのも事実です。
    因数分解ばかりしていると、平方完成のやり方を忘れる。
    平方完成ばかりしていると、因数分解のやり方を忘れる。
    また戻って練習して、できるようになって、また忘れて、また練習しての繰り返し。
    それでいいと思います。
    もう無理だ、と諦めてしまう前に、まだできることがあります。






      


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