たまりば

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2019年12月08日

数A「不定方程式」のさまざまな解き方。アクティブラーニング的に。


今回は、少し戻って、数Aの「不定方程式」について考えてみましょう。
こんな問題です。

問題 130x+31y=1 の整数解を求めよ。

不定方程式は、具体的なxとyの値を1組見つければ、そこから解いていくことができます。
基本の解き方は、このブログの過去ページ、「数A不定方程式」を参照してください。
https://seghi.tamaliver.jp/e461561.html

以降は、不定方程式の基本の解き方は理解していることを前提の説明となります。
基本の考え方を丁寧に説明するわけではありませんので、根本が曖昧な場合は、上の該当ページから順次、不定方程式のページをご覧ください。

さて、この方程式が成立するxとyの値を1組見つけましょう。
簡単なものなら暗算で求めることができますが、上の方程式は係数が大きいので、暗算ではなかなか解にたどりつきません。
こんなとき、どう求めたら良いでしょうか。

ここで最もシンプルな解き方が、互除法を利用する解き方です。
これは、全ての高校で学習する解き方です。

130=31・4+6 より 6=130-31・4
31=6・5+1   より 1=31-6・5

これを利用して、上の方程式と同じ構造の式を1本作っていきます。
1=31-6・5
=31-(130-31・4)・5
=31-130・5+31・20
=130・(-5)+31・21

130・(-5)+31・21=1 という式を得ることができました。

与えられた方程式とこの式の辺々を引きます。

  130x    +31y =1
-)130・(-5)+31・21=1
  130(x+5)+31(y-21)=0

この先は、いつも通りの解き方です。
130(x+5)=-31(y-21) 
130と31は互いに素ですから、x+5は、31の倍数でなければ、この式は成立しません。
x+5=31k(kは整数)
よって、
x=31k-5
y=-130k+21 (kは整数)

繰り返しますが、この答案を読んでいて、「え?なぜ?」と思う方は、基本の解き方が曖昧になっているかもしれません。
該当ページに戻ってご確認ください。


さて、解の値の1組を暗算で求められないときの解き方は、このように互助法を利用するのが一般的ですが、これしか求め方がないわけではありません。
問題の解き方は1つではないのです。
他の解き方を考えたり、他の人の解き方を見て、どうやって求めているのか論理の流れを理解したりするのも面白い勉強です。
回り道な解き方には首を傾げたり。
ハッとするようなスマートな解き方に感動し、自分もその解き方を以後取り入れたり。
アクティブラーニングです。
今回は、この問題の他の解き方の例をいくつか見ていきましょう。


1つには、130という係数をもう少し小さくし、暗算しやすくする方法があります。
もう一度、上の問題を確認しましょう。

問題 130x+31y=1

この130という係数が大き過ぎて、暗算に向きません。
まずは、31に揃えることを考えてみます。
130=31・4+6 ですから、
(31・4+6)x+31y=1
ここでいったん展開し、31でくくります。
31・4x+6x+31y=1
31(4x+y)+6x=1
4x+y を1つの数とみなして、この方程式が成立する整数を考えます。
31と6という係数ならば、その和が1になる数を見つけるのは比較的容易です。
4x+y=1、x=-5 のとき、この方程式は成立します。
そこで、x=-5を、4x+y=1に代入すると、
x=-5、y=21
これで、1組の整数解を見つけることができました。
あとは普通の不定方程式の解き方と同じです。
  130x   +31y=1
-)130・(-5)+31・21=1
  130(x+5)+31(y-21)=0
130(x+5)=-31(y-21)
130と31は互いに素だから、
x=31k-5
y=-130k+21 (kは整数)

先程と同じ解になりました。


最後に、飛び道具的に登場するのが、合同式による解法です。
合同式は発展的内容で、高校によっては学習しないこともあります。
中高一貫校でも、都立自校作成校でも、数Aを最初に学習する段階では、学習しない高校が増えてきました。
しかし、理解できれば悪魔的に物事が簡単になるのが合同式です。
合同式の考え方については、過去ページ
https://seghi.tamaliver.jp/e460234.html
を参考にしてください。

基本の考え方は、ある自然数で割った余りが同じ数同士は合同である、ということ。
これを利用して、上の問題を解きます。

問題 130x+31y=1

ここで、31y≡0 (mod31) です。

31yは、31の倍数です。
つまり、31yを31で割ったら、余りは0です。
だから、他の、余りが0の数と合同です。
それを上のように、31y≡0 (mod31) と書き表します。

これを上の方程式に代入すると、
130x≡1 (mod31) となります。

「はあ?何?何?」となる人が多いかもしれません。
31で割った余りに着目すると、左辺の余りは、31yの部分の余りは0なので、130xを31で割った余りだけを考えれば良いのです。
一方右辺は、1なので、31で割った余りは1です。
よって、
130x≡1 (mod31) となります。

ここで、130xをもう少し整理できないでしょうか?
130xを31で割ってみましょう。
130x=31・4x+6x です。
31・4x は31の倍数で、この部分の余りは0ですから、余りとして着目されるのは6xの部分のみです。
よって、
130x≡6x (mod31) となります。
右辺は変わらず1ですから、
6x≡1 (mod31) です。

ところで、合同式は、
a≡b、のとき、a+c≡b+c、 a-c≡b-c、 ac≡bc (a、b、cは整数)
という性質があることが証明されています。
その証明は、式の変形と代入で証明するタイプのもので、実感を伴うものではありません。
数学が嫌いな子は、その証明を見ても納得も感動もせず、嫌な顔をすることのほうが多いです。

定理の証明がそういうものであるのは、高校数学では本当に多いです。
小学校で学習する、三角形の面積の公式のように、証明がそのまま解き方の意味である、というものではありません。
数学が好きな人は、証明の筋道を確認し、ああ、本当に証明されている、だから使っていいとなると、あっけらかんと使用します。
しかし、数学が嫌いな人は、そういう証明の筋道を追うことが心の負担です。
本当に証明されているのかどうか、読んでいてよくわからないのかもしれません。
よくわからないものを使うことにさらに心の負担が増し、ただ丸暗記して使うだけ、となります。

解き方の丸暗記はやめよう、意味を理解しよう、と今まで頑張ってきたけれど、もう意味がわかりません。
疲れました・・・。
今までありがとうございました・・・。
みたいな表情を浮かべる生徒に対し「待て、待て、待て。待ちなさい」と私は必死に声をかけることになります。
大丈夫、ゆっくり見ていけばわかるから。
必ずわかるから。
わかって、納得できれば、そんな証明は忘れていいんだから。
定理を証明しろという問題はテストには出ないから。
こんな定理を自力で証明したのは数学者で、ある意味ちょっとどうかしている人たちだから、気にしなくていいのです。

ここでは証明は省略します。
興味のある方は、検索するか、高校数Aの教科書・参考書をご覧ください。

戻りましょう。
6x≡1
これをxについて解きたいのですが、x≡1/6 というわけにはいきません。
31で割った余りに着目しているのに、分数が出てきたらおかしなことになります。
合同式の性質として、両辺を同じ数で割っても成立する、というものはないのです。
そこで、31で割った余りが見やすいように、いったん、5倍します。
余りが見やすくなれば何でもいいのですが、今回は5倍が妥当でしょう。
30x≡5
30=31・1-1 ですから、30≡-1 です。
よって、30x≡-x
すなわち、-x≡5
ここで、両辺に-1をかけて、
x≡-5 (mod31)
つまり、xは、31で割ると5不足する数なのです。
よって、x=31k-5 (kは整数) と表すことができます。

これを問題の不定方程式に代入します。
130x+31y=1 に代入して、
130(31k-5)+31y=1
130・31k-130・5+31y=1
yについて解きます。
31y=-130・31k+650+1
31y=-130・31k+651
y=-130k+21

よって、
x=31k-5
y=-130k+21 (kは整数)
  
解説を加えながら解いていったので、かなり長くなりましたが、この合同式を利用した解き方は、答案としては一番短いです。
慣れれば、おそろしく簡単に解を求めることができるのが、合同式による解法です。
発展的な内容になればなるほど、答案はシンプル。
数学はかくも美しいのです。

  


  • Posted by セギ at 15:46Comments(0)算数・数学

    2019年12月01日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。解と係数の関係。


    今回は、「解と係数の関係」。
    これは、数Ⅰで学習済みの内容です。
    それに虚数解を加えたのが今回の学習内容です。

    解と係数の関係とは?
    2次方程式 ax2+bx+c=0 の2つの解をα、βとすると、
    α+β=-b/a 、αβ=c/a

    これが解と係数の関係です。
    説明しましょう。

    α、βを解に持つ2次方程式の1つは、
    (x-α)(x-β)=0 と表すことができます。
    これを展開すると、
    x2-αx-βx+αβ=0
    x2-(α+β)x+αβ=0 ・・・①
    となります。
    一方、ax2+bx+c=0 の両辺をaで割ると、
    x2+b/ax+c/a=0 ・・・②
    ①と②は同じ方程式ですから、係数を比較すると、
    α+β=-b/a 、αβ=c/a

    この説明では、α、βを解に持つ2次方程式の1つは、(x-α)(x-β)=0 と表すことができる。
    というところが少し難しいところかもしれません。

    (x-2)(x-3)=0
    という2次方程式を解けと言われたら、
    x=2、3
    という解になります。
    逆に、解がx=2、3 である2次方程式を復元するなら、
    (x-2)(x-3)=0は、その1つです。
    「1つ」というのは、x2の係数は1とは限りませんから、上の式の両辺を何倍かした方程式は全て、x=2、3 を解に持ちます。
    ですから、x=2、3 を解にもつ方程式は無数に存在するけれど、とにかく、(x-2)(x-3)=0 はその1つです。
    同じように、解がx=α、β である2次方程式の1つは、
    (x-α)(x-β)=0 です。
    ここがわかれば、その後は特に難しいことはないと思います。
    符号処理で少し混乱する人がいるかな?というくらいでしょう。


    (x-2)(x-3)=0
    のような、因数分解を用いた2次方程式の解法は、中3で学習する内容です。
    解くことはできても、なぜそれで解けるのか、本質を理解していない人は案外多いところです。
    本質を理解していない人は、例えば、
    x(x-2)=0
    のように少し目先が変わると、正解できません。
    x=0 という解を発見できず、x=2 のみ答えて不正解となってしまうことが多いのです。

    (x-2)(x-3)=0 
    これは、(x-2)と(x-3)との積が0だということです。
    かけ算の答えが0になるとき、少なくとも一方は0です。
    だから、x-2=0、または x-3=0
    よって、x=2、または x=3
    これが、因数分解による解き方の意味です。
    だから、
    x(x-2)=0 のときは、
    x=0 または、x-2=0 となり、
    x=0、または x=2 となります。


    2次方程式の解と係数に関する問題を実際に解いてみましょう。

    問題 2数 2+√5i 、2-√5i を解とするxの2次方程式を求めよ。

    もう一度確認しますが、α、βを解とするxの2次方程式の1つは、x2-(α+β)x+αβ=0 です。
    ですから、α+βとαβ、すなわち、2つの解の和と積を求めれば、2次方程式は楽に復元できます。
    上の問題で2数の和は、
    (2+√5i)+(2-√5i)=4
    2数の積は、(2+√5i)(2-√5i)=4-5i2=4-5・(-1)=4+5=9
    よって、求める2次方程式は、
    x2-4x+9=0です。


    問題 連立方程式 x+y=-4、xy=6 を解け。

    急に応用になって、え?どういうこと?と思いますね。
    この学習の流れでないならば、普通に代入法で解くことを思いつくでしょう。
    まずはそれでやってみましょう。

    x+y=-4 より y=-x-4
    これをxy=6 に代入して、
    x(-x-4)=6
    -x2-4x-6=0
    x2+4x+6=0
    解の公式を用いて、
    ;x=-2±√4-6
     =-2±√-2
     =-2±√2 i
    x=-2+√2 i をx+y=-4 に代入して、
    -2+√2 i +y=-4
    y=-4+2-√2 i
     =-2-√2 i
    また、x=-2-√2 i をx+y=-4 に代入して、
    -2-√2 i+y=-4
    y=-4+2+√2 i
     =-2+√2 i
    よって、(x、y)=(-2+√2i、-2-√2i)、(-2-√2i、-2+√2i)

    これで構わないわけですが、与えられたのがxとyの和と積であることを利用する解き方もあります。
    αとβが解である2次方程式の1つは、
    x2-(α+β)+αβ=0 でした。
    和と積がわかっていれば、その2数を解とする2次方程式はすぐに作れるということです。
    では、x と y の和と積がわかっている今回、その2数を解とする2次方程式はすぐに作れるんじゃないでしょうか。
    x と y が今回はαとβにあたるのです。
    だから、xやyとは違う文字の2次方程式にしましょう。
    t を用いてみます。
    t2-(x+y)t+xy=0 
    という式の解は、t=x、y 
    となる仕組みですね。
    よって、
    +4t+6=0
    t=-2±√4-6
     =-2±√2 i
    xとyはこの方程式の2つの解で、どちらがどちらであると特定できるものではありません。
    したがって、
    (x、y)=(-2+√2 i、-2-√2 i)、(-2-√2i、-2+√2i)

    どちらの解き方でも良いのですが、こちらのほうが早く解けます。
    いすれ高校でもアクティブラーニングが本格的に導入されます。
    教科書に載っている解き方を丸暗記して解くのではなく、何通りもの解き方を理解し、最善の解き方を判断していくことが重要です。



      


  • Posted by セギ at 17:44Comments(0)算数・数学

    2019年11月24日

    数学の語句補充問題は難しい。


    数学の語句補充問題というのは、現在、中学の数学のテストで必ず出される問題となっています。
    どの問題がどの領域の問題であるかを問題に明示しなければならなくなり、「知識・理解」を問う問題として、数学の語句補充問題が作られるようになりました。
    これを苦手とする子は多いです。

    例えば、こんな問題です。

    問題 以下の空所にあてはまる語句を答えよ。
    y=ax+b の形で表すことができる関数を(1)という。(1) のグラフは(2)となる。また、aをグラフの(3)、bを(4)と呼ぶ。
    yの増加量÷xの増加量で表されるものを(5)といい、(1)においては、aの値が(5)を表す。

    正解は、
    (1) 1次関数 (2) 直線 (3) 傾き (4) 切片 (5) 変化の割合
    となります。

    語句の定義に関するこうした問題は、類題をいくつか解けば、何とか穴埋めできると思います。
    しかし、何の準備もなくいきなりこの問題を解こうとすると、かなり難しいことは、実際に解いてみると実感できるのではないでしょうか。

    上の問題では、(2)直線 という答えが、一般の感覚ではもっとも難しいと思います。
    そんなことを問われているとは、正解を見るまで想像もしていなかった・・・。
    正解を見ると、まあそうだなと納得するが、自力で穴埋めできる気がしない・・・。
    数学の問題を解くのが好きな人でも、そう感じるかもしれません。
    また、中学生では、「傾き」と「変化の割合」をどう使いわけるのかわからず、答えが逆になってしまう子が多いです。
    こうした問題の対策としては、数学の教科書や参考書の、語句の定義に関する文を繰り返し読んでおくこと。
    このような問題をテスト前に解いて慣れておくこと。
    それである程度は対応できます。

    上のような語句の定義に関する問題はまだ答えを絞り込みやすいのです。
    この種の問題としては良問と言えます。
    数学的な考え方の語句補充になると、さらに難度が上がります。
    例えば、こんな問題。

    問題 以下の空所に当てはまる語句を答えよ。
    2元1次方程式の(1)は直線のグラフになる。
    つまり、2元1次方程式のグラフの交点とは(2)である。
    (3)の解は2つの2元1次方程式の(2)であるから、交点の座標は(3)を解くことで求めることができる。

    言いたいことはわかるのですが、当てはまる語句は色々と候補が浮かび、1つに定まらない・・・。
    そこを空所にした出題者の意図がよくわからない。
    そういうことが起こりがちです。

    これの模範解答は、
    (1)解を座標とする点の集まり (2)共通の解 (3)連立方程式

    ・・・いや、わからないわ、これは・・・。
    正解を見れば、まあそれはそうだと思うものの、自力で答えを書き込むのは難しいです。
    空所補充問題の正答が日本語として3文節以上というのは、悪問の始まりです。


    2次方程式の因数分解による解法の考え方を説明する空所補充問題を見たこともあります。

    問題 次の☐に当てはまる、語句または文字・数字を答えよ。
    (x-a)(x-b)=0 であるとき、
    ☐-a=0 または☐-b=0 であるから、x=a または x=b である。

    この2か所の空所を、
    a-a=0 またはb-b=0 であるから、x=a または x=b である。
    と埋めている子がいました。
    答案を見て、うーん、これは本当は意味がわかっているのかもしれない。
    でも、もしかしたら何もわかっていないのかもしれない。
    答案の見た目では、それがわからない・・・。
    どう評していいものかと困惑しました。
    ちなみに、正解は2か所とも「x」が入ります。
    採点は、両方ともバツとなっていましたが、正直、問題にも悪い点がある、と感じました。
    これが入試問題だったら異論が噴出し、「別解あり」、あるいは「問題無効」の措置が取られたかもしれません。

    数学の先生が悪いわけではありません。
    こういう「知識・理解」に関する空所補充問題を定期テストに出題するよう指導しているのは文科省です。
    ただ、どういう形で出題するかは個々の先生の裁量に任されているはずなので、こういうところで変に独自性を示すのはやめて、語句の定義に関する、ありがちで穏当な問題を出題してくれることを望むばかりです。
    基本的な知識の定着を確認するのが目的の出題だと思いますので、奇をてらう必要はないのです。
    三角形の合同条件を書かせたり。
    数学用語や定理の名称を空所補充させたり。
    そういうことは大賛成です。
    あるいは、数学的な考え方に関するこうした語句補充問題は、せめて選択肢を示してくれないかなと思います。


    とはいえ、数学用語の理解・数学的な考え方の理解をテストで試すのは、こういう形が便利なのかもしれません。
    解き方だけ丸暗記して、数学的な意味はまったく理解していない子に、その勉強ではダメだということを自覚してもらうには良いきっかけではあります。

    高校の定期テストでは、このような語句補充問題は出題されません。
    問題文をどう読み取るか、記述答案をどう書くかで、数学的な知識・理解は十分に測ることができるからです。
    例えば、こんな問題。

    問題 曲線 y=f(x) の接線の傾きはx2に比例する。また、この曲線は、点(3,2)、(6,1)を通る。この曲線を表す式を求めよ。

    この問題の意味を読み取れるということは、微分と接線の傾き、あるいは微分と積分との関係が理解できているということです。
    あるとき、この問題の意味がわからない、と質問を受けました。
    「・・・x2 に比例するって何ですか?」
    「中学3年のときにやったでしょう。2乗に比例する関数。y=ax2。あれのことです」
    「直線ということですか?」
    「いや、直線になるのは1次関数です。2乗に比例する関数は放物線です」
    「傾きが放物線?傾きは直線じゃないんですか?」
    「うん。接線は直線ですが、接線の傾きの変化は放物線になることもあります。この問題では2乗に比例するんですね」
    「2乗に比例するなんてことが、ありますか?」
    「・・・ありますよ」

    例として、y=2x2 という関数で、
    x   1 2  3  4 ・・・
    x2  1 4  9 16 ・・・
    y   2 8 18 32 ・・・
    このような表をざっと書き、x2が2倍、3倍、・・・になると、yも2倍、3倍、・・・になることを確認すると、その子に驚愕の表情が浮かびました。
    「本当だ。2乗に比例している」
    「はい。そうです。これが2乗に比例する関数です」

    微分・積分は問題なくマスターしている秀才が、なぜ「2乗に比例する関数」を知らないのだろう・・・。
    内心驚愕していたのは私のほうですが、そんなこともたまには起こります。
    用語の理解というのは、繰り返し確認していかないと、思わぬ盲点が存在するのかもしれません。
    その日の授業の帰りぎわ、
    「今日の授業は、2乗に比例する関数のところが一番わかりやすかったです」
    と感想を述べて去っていきました。

      


  • Posted by セギ at 15:36Comments(1)算数・数学

    2019年11月22日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。その2。



    「複素数」の学習、今回は2回目です。
    今回は、2次方程式の解に関する問題から。

    問題 次の2次方程式を解け。
    6x2-2x+1=0

    因数分解できないので、解の公式を使って解きます。
    xの係数が偶数なので、2本目の解の公式が有効ですね。
    x=1±√1-6
     =1±√-5
     =1±√5 i

    虚数単位を使うと、このように、全ての2次方程式に解が存在します。


    問題 次の方程式の実数解を求めよ。
    (2+i)x2+(3+i)x-2(1+i)=0

    これは、係数が虚数です。
    このまま強引に解の公式を利用する方法もあるのですが、ここはシンプルに、実部と虚部に分けて考えると楽に解けます。

    (2+i)x2+(3+i)x-2(1+i)=0
    2x2+ix2+3x+ix-2-2i=0
    (2x2+3x-2)+(x2+x-2)i=0

    虚数a+bi=0 のとき、a=0、かつb=0 ですから、
    2x2+3x-2=0 かつ x2+x-2=0 
    となります。
    ですから、これを連立方程式としてその解を求めれば良いですね。
    2x2+3x-2=0
    (x+2)(2x-1)=0
    x=-2、1/2・・・①
    x2+x-2=0
    (x+2)(x-1)=0
    x=-2、1・・・②
    ①かつ②が解となるので、
    x=-2

    xを基準にまとめるのか、iを基準にまとめるのか、途中でよくわからなくなる人がいます。
    今は実部と虚部に分けて整理しようしているので、iの有無で分けていくのです。

    ここらへんになると、やっていること自体は特に難しくない計算問題でも、気持ちで負けてしまう高校生が現れます。
    精神的に支えていくことも私の仕事になります。
    数学が嫌いな子の多くは、中学の数学も完全に身についているわけではありません。
    「中学の数学くらいわかりますよっ」
    と主張するのですが、2次方程式の解の公式をスラスラ活用できるかというと、それは怪しかったりします。
    「公式くらい、わかってますよっ。でも、僕は、引き算が苦手なんですよっ」
    と言われて、言葉を失ったこともあります。
    ・・・・そうか。
    じゃあ、ゆっくりやろう。
    そう声をかけても良いのですが、そんな優しさはむしろ相手を傷つけてしまいそうでした。
    何より本人が、自分の言った言葉に自分で傷ついて、涙目になっていたのです。


    問題 次の2次方程式の解を判別せよ。
    1/3x2-1/2x+1/5=0

    解の判別に関する問題は、数Ⅰ「2次関数」の章で学習しました。
    ただし、その頃は虚数解というものはなく、「実数解なし」という判別をしていました。
    そこをバージョンアップしていきます。

    解を判別するには、判別式を用います。
    判別式とは何か?
    2次方程式 ax2+bx+c=0 のとき、
    解の公式は、x=(-b±√b2-4ac)/2a です。
    この√ の部分がもし0ならば、解は x=-b/2a の1つだけとなります。
    これがすなわち重解です。
    √ の中身が正の数ならば、異なる2つ実数解が求められます。
    このように、√ の中身で解の個数を判別できるので、√ の中身の部分を「判別式」と言うのでした。
    すなわち、判別式D=b2-4ac
    また、xの係数が偶数のときの解の公式の√ の中身を用いることも可能です。
    判別式D/4=b'2-acとなります。

    まとめますと、
    D>0 のとき、異なる2つの実数解
    D=0 のとき、重解
    D<0 のとき、異なる2つの虚数解
    今後は、このように判別していくことになります。

    さて、上の問題は、
    1/3x2-1/2x+1/5=0
    という見た目です。
    これでは計算しにくいので、係数が整数になるように整理しましょう。
    方程式ですから、両辺を何倍かしても、関係は変わりません。
    3と2と5の最小公倍数は30ですから、両辺を30倍すると、分母を払うことができます。
    10x2-15x+6=0
    よって、
    判別式D=152-4・10・6=225-240=-15<0
    解は 異なる2つの虚数解です。

    しかし、単純に解を判別するだけの問題は、退屈ですね。
    少し応用的なものも解きたくなります。
    例えば、こんな問題です。

    問題 2次方程式 x2+(k+1)x+k+2=0 が異なる2つの虚数解をもつようなkの値の範囲を定めよ。

    判別式を使うんだなあということはピンとくると思います。
    使ってみましょう。
    D=(k+1)2-4・1(k+2)
     =k2+2k+1-4k-8
     =k2-2k-7
    異なる2つの虚数解をもつのですから、D<0 です。
    よって、
    k2-2k-7<0
    これは2次不等式です。
    まず2次方程式に直して計算します。
    k2-2k-7=0 とすると、
    解の公式を用いて、
    k=1±√1+7
     =1±2√2
    よって、上の2次不等式の解は、
    1-2√2<k<1+2√2
    これが最終解答です。

    途中まではわかっても、「2次不等式」のところで詰まってしまう高校生もいます。
    数Ⅰの内容があまり身についていない高校生は、2次不等式の解き方を忘れてしまっているのです。
    そもそも、その前の段階の「判別式」を数Ⅰで学習したことすら曖昧になっている子もいます。
    学校では、数Ⅰでやった内容はざっと復習するだけです。
    それだって随分親切な授業です。
    しかし、完全に忘れてしまっている子にとっては、せっかくやってくれる「ざっと復習」も、その授業スピードでは、速すぎて理解できないようです。
    数Ⅱで大きく崩れ、数学の授業についていけなくなる子が多い原因の1つは、このように、数Ⅰの内容が身についていないことにあります。

    もっとも、高校2年の秋ともなりますと、数学が苦手な生徒への配慮のある高校も多いです。
    授業スピードはゆるめないものの、定期テストは易しくなる高校が多いのです。
    数学の単位が取れないと、卒業できないですから。
    中高一貫の進学校なのに計算ドリルみたいなテストだったりします。
    そうしたテストをつくづくと眺め、結局数学の最終学年でこんなテストになるのなら、中等部のときにあんなに異様な分量と難度のテストで生徒を苦しめて数学嫌いにさせなければよいのに、と嘆息することもあります。
    公立中学から普通の都立高校に進学していたら、この子もセンター試験くらいは対応できる数学力がついたのではないかと思ってしまうことも多いです。
    どの進路が子どもを伸ばすかは、1人1人違う、と感じます。

    2次不等式の解き方を忘れてしまった方は、ここに、2次不等式の基本を説明してあるページがありますので、ご参照ください。
    https://seghi.tamaliver.jp/e445206.html

      


  • Posted by セギ at 11:44Comments(0)算数・数学

    2019年11月06日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。

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    今回は、いよいよ「複素数」の学習の始まりです。
    その前に、いったん「2次方程式」に話を戻して考えてみましょう。

    例 x2+2x+5=0 を解きなさい。

    解いてみます。
    因数分解はできないようなので、解の公式を使いましょう。
    x=-1±√1-5
     =-1±√-4
    √の中が負の数になってしまいました。( 一一)
    2乗して負の数になる数なんてありません。
    だから、この2次方程式は、「解なし」となります。

    これが、今までの解き方でした。
    実数の範囲では、これで仕方ないのですが、しかし「解なし」というのは少し残念な感じがあります。
    解のない方程式があるなんて、美しくないな。
    これの解があることにしたらどうでしょうか?
    だって、少なくとも数字の上では書き表すことができるのですから。
    これが、複素数の出発点です。

    ピラミッドを作っていた時代から、その数はあるのではないかと問いかけられては否定されてきました。
    複素数の歴史を紐解くと、デカルト、オイラー、ガウスといった数学界のビッグ・ネームが次々と登場します。
    興味がある方は検索して調べてみてもよいと思いますが、複素数を知るのが初めての状態ですと異次元の数学世界が広がっていますので、驚かれるかもしれません。

    物凄くかいつまんで説明しますと、実数というのは、1本の数直線上のどこかに存在する点として表すことができます。
    有理数も無理数も、1本の数直線上に存在します。
    しかし、虚数は、実数の数直線上には存在しません。
    では、どこに存在するのか?
    実数の数直線を含む平面上に存在します。
    その平面が、複素数平面です。
    この瞬間に、数は、1次元から2次元に拡張されたのです。
    複素数は「2元数」ともいいます。
    でも、このお話が始まるのは、まだはるか先。
    複素数平面について学ぶのは、数Ⅲです。
    数Ⅱでは、まずその基礎を学びます。

    では、複素数の定義を見てみましょう。
    まずは虚数単位から。
    2乗すると-1になる数を i とし、虚数単位と呼ぶ。
    すなわち、 
    i2=-1
    また、a>0のとき、
    √-a=√a i , -√-a=-√ai とする。

    そして、複素数の定義。
    a+bi (ただし、a、bは実数。iは虚数単位)
    の形で表される数を複素数といい、aを実部、bを虚部という。
    b=0のとき、すなわちa+0・i=aで、実数aを表す。
    b‡0のとき、すなわち実数でない複素数を虚数という。
    また、a=0のとき、すなわち0+bi=bi を純虚数という。

    以上が、虚数と複素数に関する定義です。
    これ以上は噛み砕ける内容ではないので、1行1行噛みしめて意味を理解してください。
    全て定義ですので、「なぜ?」という質問は存在するはずがありません。
    その定義を受け入れるだけです。
    これから始まる話は、全てこの定義を前提としますよ、というルールのようなものです。
    こんなルールは受け入れられない、自分は違うルールでやっていく、というわけにはいかないのです。

    これまで、数の集合は実数の輪を最大のものとして閉じていました。
    ベン図にするとわかりやすいです。
    まず自然数の集合がありました。
    1、2、3、・・・・といった正の整数です。
    それを含んで、その外側に、整数の集合がありました。
    負の整数や0が自然数の外側に加わったひと回り大きな輪ですね。
    さらにそれを含んで有理数の集合がありました。
    整数で表すことができない小数や分数が外側に加わったひと回り大きな輪です。
    さらにその外側に実数の輪があります。
    実数の輪の内側で、有理数の輪の外側に位置するのが無理数です。
    無理数は、有理数ではない数。
    すなわち分数で現すことができない数です。
    円周率や√2などが無理数でした。
    有理数と無理数とをあわせて、実数と呼びました。
    実数の大きな集合の輪。
    今、その周りに複素数の大きな輪が描かれました。
    実数は、複素数の一部です。
    上の複素数の定義の a+bi で、b=0 の場合が実数ですね。

    ベン図でイメージすると上のようになることを、複素数平面で考えると、実数は1本の数直線上に全て存在し、虚部が0ではない数、すなわち虚数は、その直線以外の平面上に存在しているのです。

    さて、ここまで理解できれば、あとは計算です。
    複素数の計算ルールは、i2=-1 を守ること。
    あとは実数のルール、特に文字式・方程式のルールに似ていますので、大きな抵抗はないと思います。
    実部は実部同士、虚部は虚部同士で足し算できます。
    実部×虚部は可能です。
    虚部×虚部も可能です。

    (a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i
    (a+bi)(c+di)=ac+adi+bci+bdi2
             =(ac-bd)+(ad+bc)i
    ただし、a、b、c、dは実数。


    問題 (3-5i)(7+2i) を計算せよ。
    =21+6i-35i-10i2
    =21-29i-10・(-1)
    =21-29i+10
    =31-29i

    慣れてくれば計算過程は適宜省略し、与式の次は答えでも構いません。
    符号ミスを起こしやすい人は、最初は丁寧に解いていったほうが無難でしょう。


    問題 x=(-1+√5i)/2、 y=(-1-√5i)/2 のとき、x3+y3+x2y+xy2 の値を求めよ。

    これは、様ざまな単元の計算問題で繰り返し出てきた、対称式に関する問題です。
    逐一代入しても答えは出るのですが、面倒で時間がかかります。
    まず、xとyの和と積を求めるのが定石でした。

    x+y=(-1+√5i-1-√5i)/2
       =-2/2
       =-1
    xy=(-1+√5i)(-1-√5i)/4
      =(1-5i2)/4
      =(1+5)/4
      =6/4
      =3/2
    よって、
    x3+y3+x2y+xy2
    =(x+y)3-3xy(x+y)+x2y+xy2
    =(x+y)3-3xy(x+y)+xy(x+y)
    =(x+y)3-2xy(x+y)
    =(-1)3-2・(-1)・3/2
    =-1+3
    =2
    これは、対称式の計算のときによく使う、
    x3+y3=(x+y)3-3xy(x+y)
    という公式を利用した解き方です。

    あるいは、先に、
    x2+y2=(x+y)2-2xy=(-1)2-2・/32=1-3=-2
    を求めているのなら、
    x3+y3+x2y+xy2
    =(x+y)(x2-xy+y2)+x2y+xy2
    =(x+y)(x2-xy+y2)+xy(x+y)
    =(x+y)(x2-xy+y2+xy)
    =(x+y)(x2+y2)
    =-1・(-2)
    =2
    という求め方も可能です。
    これも公式を利用しています。
    x3+y3=(x+y)(x2-xy+y2)
    という公式です。

    新しい単元に入っても、既習の公式を覚えていないと実際の問題は解けません。
    解答・解説を読んでも、何でそういう変形をしているのか、意味がわかりません。
    とにかく、公式は全部頭に入れておきましょう。

    ところで、-1+√5i と-1-√5i は、和や積で虚数部分が消えて、その後の計算が随分楽になりましたね。
    虚部が異符号なのが良かったですね。
    こういう数を「互いに共役な複素数」と言います。
    「a+bi と a-bi を互いに共役な複素数という」というのが定義です。


    問題 -27の平方根を求めよ。
    -27の平方根は、±√-27 です。
    ±√-27 =±√27i=±3√3i

    2乗して負の数になる数の中にも、正の虚数と負の虚数がある・・・。
    そのことで混乱する人もいるようです。
    つながるべきではないところがつながって、頭の中がメビウスの輪になっていないでしょうか?
    虚数にも正負があって、別に構わないです。
    「だって、負の数は2乗したら正の数になってしまうから、-27にはならないじゃないですか?」
    ・・・うん?
    i2がある限り、その数は負の数になりますよ。
    落ち着いて、落ち着いて。


    問題 √-24・√-18 を計算せよ。

    √-24・√-18
    =√24i・√18i
    =2√6・2√3・i2
    =2・2・3√2・(-1)
    =-12√2

    これをいきなり1つの√ でくくり、
    √-24・√-18
    =√-24・(-18)
    =√24・18
    =12√2
    としてはいけないのです。
    a<0、b<0 のとき、√a・√b=√ab ではありません。
    それは、実数のときだけのルールです。
    虚数ではそれはできません。
    必ず、最初に i を使って書き直してから計算していきます。

    なぜできないか?
    だって、上のように計算していいのなら、
    -12√2=12√2 となってしまい、矛盾します。
    これは背理法で証明できることだと推測できますね。
      


  • Posted by セギ at 13:22Comments(0)算数・数学

    2019年10月24日

    中学数学「2乗に比例する関数」。変化の割合と a(p+q)の威力。



    さて、今回は中学数学に戻り、「2乗に比例する関数」を考えてみます。

    中学数学では、2次関数のグラフの頂点は常に原点です。
    一般式は、y=ax2 となります。
    これが、「2乗に比例する関数」と呼ばれるものです。

    この単元で重要なのは、単元の後半の「放物線と直線」「放物線と図形」などの問題です。
    高校入試で出題されるのもそこです。
    しかし、学習の前半、意外に苦戦するのが、「変化の割合」に関する問題です。

    問題 関数 y=-1/4x2 において、xが-9から-6まで増加するときの変化の割合を求めよ。

    変化の割合とは、
    yの増加量
    xの増加量

    で求められるものです。
    それは、グラフ上の2点を結んだ直線の傾きでもあります。

    1次関数においては、変化の割合はグラフの傾きと等しく、y=ax+b のaの値そのものでしたから、特に問題ありませんでした。
    しかし、2乗に比例する関数は、yの増加量が刻々と変化するものですから、変化の割合は計算しないと求められません。

    上の問題で言えば、まずそれぞれのxの値に対するyの値を計算する必要があります。

    x=-9のとき、y=-1/4×(-9)2=-81/4
    x=-6のとき、y=-1/4×(-6)2=-36/4
    xの増加量は3。
    yの増加量は、-36/4-(-81/4)=45/4
    よって、変化の割合は、45/4÷3=15/4

    負の数の計算であること。
    変化の割合を計算する際に、分子が分数である、繁文数になってしまうこと。
    そういうこともあって、途中で計算ミスをしたり、計算の仕方がわからなくなって答えが出せない子が多い問題です。


    計算力がないから、自分はこういう問題は正答できない・・・。

    しかし、諦める必要はありません。
    2乗に比例する関数の変化の割合は、簡単に求める公式があります。
    関数 y=ax2 において、xがpからqに増加したときの変化の割合は、
    a(p+q) で求められるのです。

    上の問題で言えば、-1/4(-9-6)=-1/4×(-15)=15/4
    と、実にあっけなく、正解を出すことができます。

    何で a(p+q) で変化の割合が求められるのか?
    まずはその証明をしましょう。

    y=ax2 において、
    x=p のとき、y=ap2
    x=q のとき、y=aq2
    よって、変化の割合は、
    (aq2-ap2)/(q-p)
    分子を因数分解しましょう。
    =a(q2-p2)/(q-p)
    =a(q+p)(q-p)/(q-p)
    分母・分子に同じ(q-p)がありますから、それで約分できます。
    =a(q+p)
    =a(p+q)

    pやqが負の数のときは、その符号も含めて単純に足したものに a をかければ、すぐに変化の割合を求めることができるのです。


    この公式は公立の中学校では教えません。
    変化の割合の本来の意味と公式の見た目とがかけ離れているため、理解できない子や誤用する子が多いからだと思います。
    中学の段階では、変化の割合の本来の意味をしっかり理解することのほうが重要です。
    変化の割合は、高校数学では「平均変化率」という言葉に変わり、これが微分で大きな意味を持ちます。
    非常に重要な学習事項です。
    a(p+q) という公式は、頂点が原点にある放物線、すなわち y=ax2 においてのみ使用できる公式です。
    高校に入って、もっと一般的な2次関数 y=a(x-p)2+q の学習をするようになったときには使用できません。
    使用期間が限定的であり、かつ、実感に乏しい。
    こんな公式、教えませんよね。

    ところが、中高一貫校では教えます。
    進学塾の、学力が上のクラスでは教えます。
    私も、学力の高い子には教えます。

    だって、本来の求め方をすると、時間がかかる上に計算ミスのリスクが高いのです。
    この公式で求められるのなら、この公式で解いたほうが良いでしょう。

    この公式を教えたときの公立中学の生徒の反応は色々です。
    積極的に活用する子もいますが、教わってもこの公式を使わない子もいます。
    理解できなかったからかな?というとそうではなく、学校で教わっていない公式を使ったらダメなのではないか、というためらいがあるようなのです。
    学校の問題集の発展問題に、a(p+q)を証明する問題が載っている場合は、
    「先生に、何でこんな解き方をしたのと言われたら、学校の問題集に載っていたと説明すれば大丈夫だよ」
    と言うと、ほっとした顔をして、それからは安心して使う子もいます。
    学校で教わった解き方をしないとテストでバツにされる、あるいは目をつけられると思っているのかもしれません。
    数学の先生にそんな人はいないのですが、何だか信用していないんですね。

    小学生の子が、夏休みの筆算の宿題で定規を使っていなかったので全問解き直しをさせられたとか、かけ算の順番を逆に書いたのでバツにされているテストの画像がネット上げられているのを見たりします。
    なるほど、日本は広い。
    そんな目にあう子もいるのだなあと思うのですが、それは小学生の話。
    小学校の先生は、数学の先生ではないのです。
    数学的に正しいとはどういうことかという感覚のない人もなかにはいるので、そんな「事故」もときに起こってしまうのだと思います。
    小学校の先生は、もっと別のことの専門家なので、仕方ないんじゃないかなと思います。

    中学の数学のテストは、「数学のテスト」なのですから、数学的に正しければ、その先生が教えた解き方であろうとなかろうと、マルをもらえます。
    その先生が、その解き方を知らないわけではないですから。
    公立中学で教えても教育効果が上がらないと思うから教えないだけです。
    その子がわかって活用しているのなら、例えば中学生が三角形の面積を求めるのに三角比を使おうとベクトルを使おうと、マルはくれます。
    そこは信用していいところだと思います。

    こういうことは、でも、その子はむしろ被害者かもしれません。
    大人を怒らせないように言動に気をつける。
    目をつけられないように用心する。
    それが行動規範になると、数学よりも、むしろ他の科目で弊害が出ます。
    特に、国語と社会。

    高校の入試問題は、偏差値の高い高校になればなるほど、出題される小説は規範を外れた内容だったりします。
    川端康成や三島由紀夫の小説がさらっと出題されています。
    文学の毒がたっぷり盛られた小説を、そういう子たちは読み取れません。
    小説は「人はこう生きるべきである」といった、正しいこと、ためになることが書いてあると思い込んでいるのかもしれません。
    四択問題ですと、やたら道徳的でもっともらしいことが述べられている選択肢にあっさり引っかかり、失点します。
    「国語は道徳の時間じゃありませんから、そんな説教くさいことを書いてある選択肢は、見た瞬間に消去しなさい。出題されている文章が説教くさい文章だったら仕方ないですけど、これはそうじゃないでしょう?」
    と言っても、キョトンとした顔をします。

    入試問題は、論説文もかなりエッジが効いていることがあります。
    それを読んだ上での200字作文が「私もこれからは一生懸命努力して~」といった決意表明になってしまう子もいます。
    いやいやいや、そんな決意表明は要求されていない・・・。
    この文章を読んで、なぜその決意になる?
    むしろ、読解できていないことを表明しているだけなのでは?
    しかし、そういう作文しか書けない子もいるのです。
    道徳的なことを書いておけば安心。
    それ以外のことを書けと言われると、途端に言葉を失う・・・。

    社会は、地理や歴史はそれほど影響が出ないのですが、公民で妙な選択肢に引っかかります。
    「日本国憲法は、国民の義務を明確にし、国民の権利の過剰な行使を制限するものであり、その改正は内閣が決定し、内閣総理大臣が公布する」
    といった、社会科の先生が遊んでいるとしか思えない選択肢を選んでしまうのです。
    ここまでくると、
    社会科の授業、ちゃんと聞いてる?
    憲法の原文を読んだことある?
    もしかして、世の中ってそういうものだと思っている?
    君を縛るものは、日本国憲法ではなく、そうだと思い込んでいる君の心の中にある何かだよ?
    と心配になってしまいます。

    真面目な優等生なんだけれど、テストで案外得点が伸びないのは、むしろそういうところが原因かもしれない。
    志望校に合格すれば、そんな固定観念を易々と打ち破る人間関係や経験に恵まれるだろう。
    何年かに1人現れるそのような子には、それに期待し、とにかく志望校に合格してもらいました。


    話がかなり逸れましたので、数学の話に戻って。
    上の、変化の割合を求める a(p+q) の公式は、計算ミスをしなくて済むという点で、計算に自信のない人ほど活用してほしい公式です。

    数学力をどのように判断するか、さまざまな観点があると思いますが、「思考力」「計算力」の2点だけで見ても、
    思考力も計算力もある子。
    思考力に乏しいが、計算力のある子。
    思考力はあるが、計算力に乏しい子。
    思考力も計算力も乏しい子。
    の4つのタイプに分かれます。
    それもそれぞれどの程度なのか、グラデーションのある話ではありますが。

    思考力に乏しいが計算力のある子は、数学的思考の面白さに本人が気づくことさえできれば学力が飛躍します。
    中1の段階では数学の成績は「3」で、言うことも何だかトンチンカンだけれど、計算ミスはほとんどない。
    計算する様子を見ていると、地道でもっさりしたやり方ではなく、クールな計算方法を身につけている。
    暗算するところと、しっかり書いていくところのメリハリがある。
    学校で最初に学ぶ、地道でモタモタした計算過程をいつまでも踏んでいるようなところがなく、本人の理解により省略すべきところは省略し、書くべきところはしっかり書いている。
    こういう子は、いずれ大バケする可能性があります。
    問題を解く過程で対話を繰り返しながら、そのうちどうにかなると呑気に構えていると、予想通りに中3では「5」になった。
    そんな子を、今まで何人も見てきました。
    計算を正しくできるというのは、やはり数学的には何らかの達成を見せているのだと思います。
    計算をする際に使っている論理を思考に生かせていないだけで、思考力がないわけではなかったのだ、ということかもしれません。

    「クールな計算方法」を身につけているのが鍵です。
    計算をこのように論理的にこなしているのに、問題を解く際になぜその思考力を使わない?
    そのように感じる子は、いずれどこかの回線がつながって何とかなるだろうという予感がするのです。

    反対に「地道でもっさりした計算」というのは、しかし、多くの子がやってしまう計算です。

    例えば、25000×5000 といった計算。
    これは、25×5を計算して(暗算もできるはずです)、それに0を6個つけたらいいですね。
    小学校でも教えている計算の仕方です。
    習ったときは、誰でもできます。
    しかし、その単元が終わると、それをコロッと忘れて、以後ずっと、0の大行進的な筆算をしてしまう子がいます。
    そして、桁がズレてしまい、誤答します。
    そういう計算をしているのを発見する度に助言しますが、しばらく経つと、また同じ0の大行進を行ってしまう子は多いです。
    つまりは、なぜそれで計算できるのか理解していないのだと思います。
    そういう解き方があることを習えば、そのときだけそのように計算しても、根本を理解できていないのです。
    数字の桁に関する感覚が脆弱なのかもしれません。
    25000×5000
    =25×5×1000×1000
    =125000000
    数字を上のように分解した上で、さらに交換法則・結合法則を利用して計算するのが、この計算方法の意味です。
    やり方だけ覚えるのではなく、その意味がわかっている子は、以後、ずっとこの計算方法で計算します。
    意味がわかっていない子は、やり方をすぐ忘れてしまい、このやり方を自分のものとすることができないのです。

    また、例えば、312×205 といった計算。

      312
     ×205
     1560
    624
    63960

    といった筆算をすれば良いのですが、

      312
     ×205
     1560
     000
    624
    63960

    といった余計な1行を書かずにいられない子もいます。
    これも、省略するよう小学校で教えられているのですが、それを省略できることをすぐに忘れ、型通りに計算してしまうのだと思います。

    また、例えば、25000÷5000 といった計算。
    割られる数と割る数とに、それぞれ同じ数をかけても、あるいは同じ数で割っても、商は同じです。
    だから、
    25000÷5000
    =25÷5
    =5
    と暗算できます。
    慣れてくれば、0がついたままの状態でも桁を読むことで暗算できます。
    しかし、これも、0が3個ついたまま、もっさりした筆算をする子は多いです。
    25000÷5000=25÷5 であることは、小数のわり算を行うためにも重要な考え方です。
    例えば、2.5÷0.5 をなぜ小数点を移動して計算するのかは、上の考え方がもとになっています。
    小数点の移動は、すなわち、割られる数と割る数とをそれぞれ10倍して、25÷5 として筆算しているのです。
    しかし、そのことを理解せず、ただ筆算のやり方だけを覚えている子のほうが多いです。
    計算は意味を失い、ただの作業手順となっています。

    これは学校教育が悪いのではありません。
    学校の授業でも、教科書でも、このことは強調されているのです。
    ただ、本人が、やり方しか覚えない。
    小学校でやり方しか覚えなかったため、中学生・高校生になって、論理的思考についていけなくなってしまうのです。
    どれだけ意味を説明されても、それをまだるっこしいと感じて「やり方だけ教えて」「やり方だけ知りたい」となってしまう子が多いのです。
    頭の回転が速いように見える子に、案外このタイプが多いので、苦慮するところです。
    本人の頭の働かせ方の癖なのでしょう。
    一方で、どんなに小さなことでも、意味を知りたいタイプの子もいます。
    そして、意味を知っている子は、時間が経っても、25000÷5000 といった計算で同じ論理を利用できます。
    算数・数学が統一された論理で動いていることを実感しています。
    数理の根本がわかっているというのは、そういうことだと思います。
    中学や高校の数学になって、何をして良くて、何をしたらダメなのか、自分で判断できなくなるのは、やり方だけ覚えてきたけれど意味を理解していなかったからなのです。

    また、例えばこんな計算。
    -27+18-33+26
    中1の最初に学習する「正負の数」の計算です。
    これも、同符号の計算をまとめてやれば楽であることを学校で指導されているはずです。
    =-60+44
    =-16
    というように。
    しかし、これを、
    -27+18-33+26
    =-9-33+26
    =-42+26
    =-16
    と、順番通りに計算しなければ答えが出せない中学生もいます。
    順番通りでなければ計算できないと思っているのか?
    数字の前にある符号は、計算記号ではなく、その数のもつ正負の符号であることを、学習が終わると忘れてしまうのか?
    つまり、その子にとって上の式は、小学校からお馴染みのたし算と引き算の式のままで、中学で新しく学習した、
    (-27)+(+18)+(-33)+(+26)
    と見ることができないのではないかと思うのです。
    「正負の数」の学習の最初は、このように(  )がついています。
    省略して書くことができるというだけで、(  )は常に存在すると思って計算して良いのです。
    全てたし算ですから、交換法則も結合法則も利用できます。
    そのことを、忘れてしまう。
    あるいは、最初から理解していない。
    だから、法則が使えることがわからない。
    「え?ひき算って、順番変えたらダメなんじゃないの?」
    という小学生の感覚に戻ってしまうのだと思います。

    -27+18-33+26
    =-9-33+26
    =-42+26
    =-16
    という順番で正確に計算している子は、計算力はあるのではないか?
    確かに「人間電卓」的な計算力はあると思います。
    しかし、論理的思考力を感じさせるものではないのです。

    交換法則も結合法則も分配法則も、桁移動の仕組みも、全ては小学校で学習しています。
    大切なことは全て小学校で学んでいます。
    しかし、大切なことを学んでいることに気づかない。
    大切なことを、大切なことだと認識できず、記憶の中からあっさり消して、筆算のやり方や公式の丸暗記のみ行う子は、計算の過程にそれが表れます。
    そうではないクールな計算方法を身につけている子は、数学的思考が可能な子、いずれ大バケする子、と感じるのです。

    一方、思考力はあるが計算ミスの多い子というのも存在します。
    計算のやり方がわからないわけではありません。
    ただ、雑なのか、正確さを保てないのか、計算の正答率はかなり低い。
    計算問題を正答できるかどうか五分五分ということもあります。
    しかし、理解力や思考力があるので、座標平面と図形の問題、動点に関する問題、図形の証明問題、空間図形の求積の問題のような、数学嫌いな子が避けたがる問題も自力で解いていくことができます。
    ただ、計算は合わないことが多いです。

    なぜケアレスミスをそれほど繰り返すのか?
    特定の計算でミスをしやすいのならそこを強化すれば良いのですが、多種多様なミスをその都度新たに繰り出してくるタイプの子が多いのも特徴です。
    ある日は数字を書き間違い、ある日はひき算なのにうっかり足してしまい、ある日は無理な暗算をしてしまい、ある日は符号を書き忘れる・・・。
    考えることに夢中で、手元がおろそかになっているのか?
    式を書いている間に、他のことを考えているのではないか?
    思考力はあるが、集中力が足りないのか?
    さまざまな理由が考えられますが、受験を機に解消される子と、それでは解消されず高校生になってしまう子とがいます。

    ケアレスミスをしやすい傾向は、残念ですが非常に直りにくいものです。
    計算ドリルを何冊解いても、目立った改善は見られないことがあります。
    あとは、ミスしやすい自分と折り合いをつけながら、それを含み込んで点数を読んでいく。
    複雑な計算過程を踏まないよう、上の公式のように、ミスしなくて済む解き方を身につけていく。
    そういうことで対応していけば良いのではないかと思います。
    多少の改善はみられても根本的には直らない。
    この計算力を前提としてやっていくしかない、と感じます。
    本人が一番嫌な思いをしているのですから、自覚すれば直るというものではないのです。
    まして、それを叱ったりしても、直りません。
    誰にも苦手はあります。
    その代わり、思考力を伸ばすだけ伸ばす。
    基本問題で失点する分、テストの後半の応用問題で部分点を取る。
    そういう得点の取り方を考えていくのが現実的ではないかと思います。
    また、そうやってあまり思いつめないようにしていると、前よりは改善されていることも多いです。

      


  • Posted by セギ at 13:48Comments(0)算数・数学

    2019年10月16日

    高校数Ⅱ「式と証明」。恒等式。


    今回は「恒等式」の学習です。
    恒等式とは、その名の通り、常に成り立つ式のことです。
    「xについての恒等式」でしたら、xにどのような値を入れても常に成り立つことを意味します。
    これも、
    「そんなの何に使うの?」
    という疑問がわくかもしれませんが、後になって別の単元でそれを利用して解く問題が出てきますから、ここでしっかり身につけたいところです。

    問題 次の整式がxについての恒等式となるように、定数a、b、cの値を定めよ。
    x2+2x+3=a(x+1)(x-1)+b(x-1)+c

    問題文中にある「整式」とは、「xの係数が整数の式」という意味ではありません。
    分母にxがある「分数式」ではないという意味です。
    xの係数やxの値は整数である必要はありません。

    さて、この問題の解き方は2つあり、それぞれ「係数比較法」「数値代入法」という名前がついています。
    まずは係数比較法から考えてみましょう。
    とりあえず、右辺を展開します。
    a(x+1)(x-1)+b(x-1)+c
    =a(x2-1)+bx-b+c
    =aX2-a+bx-b+c
    これをxについて降べきの順に整理します。
    =ax2+bx+(-a-b+c)
    右辺をこの状態にしてから、もう一度左辺と等号で結びます。
    x2+2x+3=aX2+bx+(-a-b+c)
    この左辺と右辺の係数を比較します。
    これがxについての恒等式なのですから、左辺・右辺それぞれの係数や定数項は等しいです。
    よって、
    1=a
    2=b
    3=-a-b+c
    の3本の式が得られます。
    わからない文字が3つあるとき、式が3本あればその文字の値を求めることができます。
    連立方程式ですね。
    a=1、b=2を-a-b+c=3に代入して、
    -1-2+c=3
    -3+c=3
    c=6
    よって、a=1、b=2、c=6です。

    もう1つの解き方が「数値代入法」。
    xに適当な値を代入して、式を解いていく方法です。
    やはり、わからない文字が3つあるので、式は3本用意します。
    xにどんな値を代入した式でも良いのですが、どうせなら計算しやすいほうがいいです。
    x2+2x+3=a(x+1)(x-1)+b(x-1)+c
    という式から、x=0、1、-1の値を代入すると判断します。

    どういう基準で、それらの値を代入すると判断するのでしょうか?
    x=0ならば、左辺の2つの項が0になり、計算が楽です。
    同様に、x=1ならば、右辺の2つの項が0になり、その後の計算が楽になります。
    x=-1ならば、右辺の第1項が0になり、その後の計算が少し楽です。
    少しでも楽をするために数字を選んでいるだけで、別の他の数字を代入したからといって間違っているわけではありません。

    では、やってみましょう。
    x=0を代入すると、
    0+0+3=a・1・(-1)+b・(-1)+c
    すなわち、
    -a-b+c=3 ・・・・①
    x=1を代入すると、
    1+2+3=a・2・0+b・0+c
    すなわち、
    c=6 ・・・・②
    x=-1を代入すると、
    1-2+3=a・0・(-2)+b・(-2)+c 
    すなわち、
    -2b+c=2 ・・・・③
    0には何をかけても0になるので、消えてしまう項が多いですね。
    だから、xそのものが0になる値や、(x+1)や(x-1)が0になる値を用いています。

    この3本を連立方程式として解いていきます。
    ②を③に代入して、
    -2b+6=2
    -2b=-4
      b=2 ・・・④
    ②、④を①に代入して、
    -a-2+6=3
    -a+4=3
    -a=-1
     a=1

    先程の係数比較法と同じ値が出ましたが、数値代入法の場合、このまま解答してしまうわけにはいきません。
    なぜなら、x=0、1、-1のときにそれが成立することしか今のところわかっていないからです。
    xがいくつかの値に対して成り立つようにa、b、cの値を決定したに過ぎません。
    これは、xについての恒等式であるための必要条件であって、十分条件ではありません。
    そこで、a=1、b=2、c=6をもとの式に代入して、本当に大丈夫なのか確認します。
    すなわち、「十分性を示す」のです。
    a=1、b=2、c=6を与式に代入すると、
    右辺=1・(x+1)(x-1)+2(x-1)+6
       =x2-1+2x-2+6
       =x2+2x+3
    よって左辺=右辺 となり、与式は恒等式となる。
    ゆえに、a=1、b=2、c=6

    数値代入法は、このように最終確認をしなければならないことが答案的には難しく、しかもわかりにくいかもしれません。
    「必要条件」「十分条件」という言葉の意味も忘れかけていた頃に突然これが出てくるので、戸惑う高校生は多いです。
    必要条件と十分条件は、数Ⅰの最初の頃に学習した内容です。
    pならばqであるとき、pをqであるための十分条件、qをpであるための必要条件という
    上の問題でいうならば、「a=1、b=2、c=6ならば、与式はxがどのような値でも成立する」
    ということを示さなければなりません。
    「x=0、1、-1ならば、a=1、b=2、c=6である」
    では、矢印の方向が逆ですね。
    必要条件であるというのはそういう意味です。
    ですから、逆方向の矢印でも大丈夫であること、すなわち「十分性」を示すことが重要です。


    恒等式で難しいのはそこだけだと思うのですが、実際の計算で苦労する高校生もいます。
    3元1次方程式の解き方がわからないわけではないのに、正しい答えを出せない子は案外多いのです。

    中学2年の「連立方程式」の学習のとき、「代入法は嫌い」と言って加減法しかやらない子がいます。
    代入法で簡単に解ける見た目になっている問題も、わざわざ加減法にふさわしい形に式を変形して解いています。
    そういうことも少し尾を引いているのかもしれません。
    代入法が嫌いというのは、代入法の理屈が上手く理解できず、加減法のように手順を把握しやすいほうに逃げているのかもしれません。
    あるいは、2通りの解き方があるなら、1つしか覚えないという学習姿勢がその子にあるのかもしれません。
    解き方を覚える・・・。
    つまり、理解しているわけではなく、作業手順を覚えるだけなので、2通りも覚えられないから加減法しか覚えないということになっている可能性があります。
    型通りの加減法の連立方程式なら解けるのですが、手順を覚えているだけで、なぜそれで解けるのか理解していないのかもしれません。
    しかし、高校生になって使うのは、加減法よりも代入法のほうが多いのです。
    2つの解き方があるとき、1つのやり方しか覚えないのは危険です。
    というよりも、解き方を理解せず、作業手順だけ暗記しようとする姿勢そのものが危険です。
    数学は、論理を理解する科目です。

    理解するのではなく作業手順を暗記する子は、中学からではなく、おそらく小学校の低学年からそういう学習姿勢が始まっています。
    算数の問題を解くときに頭を使っている気配が見られない子は、小学校の算数の成績の良い子にも見られます。
    理解できないから頭を使わないのではないのです。
    「え?その式、どういう意味?ちゃんと考えている?」
    そう呼びかけるだけで、ハッと目が覚めたようになり、問題を解き直す子もいます。
    算数の問題を考えずにパターンで判断して解く習慣がついてしまっているのです。
    おそらく、低学年の頃についた癖なのでしょう。
    しかし、高学年になるとそのパターンが通用しない単元もあり、とんでもない式を立ててしまうようになります。
    「これはわり算だな」と判断すると、問題文の中の大きい数を小さい数で割る式を立てて済ませてしまうのが典型的な例です。
    問題文の中の数値の関係性の把握をしている様子がありません。
    低学年の子どもがパターンを読んでしまい、そのパターンに当てはめて解くようになってしまう背景は、慎重に考えなければならない課題だと感じます。
    国語が苦手で、文章の読み取りに苦しさが伴うことも一因なのかもしれません。
    努力すれば読み取れるけれど、その「努力」には頭に一定の負荷がかかるので、できれば避けたい。
    それは文章の読み取りだけでなく、「考えること」で頭に負荷がかかることをそもそも避けている可能性もあります。
    以前も書きましたが、息が切れて苦しいのが嫌で運動嫌いになる子がいるように、頭に負荷がかかるのが苦しくて考えることが嫌いになる子もいます。
    「考えると脳細胞が潰れる」
    と本気で口にする子たちです。
    実際、何かを考えようとして頭に負荷がかかることが、その子たちにとって本当に苦しくて嫌なことのようなのです。
    必ずしも学力が低いわけではありません。

    パターンで済んでしまう小学校の教科書やカラーテストにも問題はあるのかもしれません。
    あまり難しい問題を解かせていると、小学校低学年で学ぶことを諦める子も出始めるでしょうから、それも大きな問題ですが。

    小学校の算数の成績の良い子が、中学受験を目指したときに、受験算数で信じられないほどに伸び悩むのは、よくあることです。
    受験算数は「大きい数を小さい数で割る」というような安易なパターンは通用しません。
    公式もありますが、それよりも、問題文に書かれてある内容を自力で線分図や面積図に書き起こすことができ、その関係を読み取って立式する能力が必要です。
    あるいは、「速さ」や「時間と水量」などのグラフを読み取る力。
    図形を読み取る力。
    それは読解力と分析力と思考力。
    つまり「学力」が問われています。
    塾のテキストの基本問題は式も答えも暗記してしまうため、基礎力があるように見えても、それは暗記しているだけで、理解はしていない子が案外多いのです。
    そのため、テストは壊滅的な得点となります。
    あの問題もこの問題も本当は理解していなかったんだね、と露呈しますが、では復習しようとなっても、またその問題の式と答えを暗記するだけです。
    暗記するのではなく理解するんだよと教えても、それは何をどうすることなのか本質が理解できないので、何をどうして良いか本人にはわからないことがあります。
    覚醒には時間がかかります。

    問題文を内容を理解して読むことのできる子は伸びる。
    自力で考えることのできる子は伸びる。
    きわめてシンプルですが、最も教えにくいことの1つです。

      


  • Posted by セギ at 13:03Comments(0)算数・数学

    2019年10月03日

    中3数学「2次方程式の利用」文章題の立式とその後の計算。


    今回は中3に戻って、2次方程式の文章題を解いてみます。
    計算問題なら大丈夫なんだけれど、文章題は苦手、という人、多いですよね。

    問題 兄は弟より4歳年上で、兄の年齢の平方は、弟の年齢の平方の3倍より8小さい。兄と弟の年齢を求めよ。

    もう幾度も書いてきましたが、方程式の文章題の答案の1行目は、何をxとしたかを書きます。
    しかし、これを書かない子は多いです。
    つい忘れてしまうようで、答案作成の習慣として定着しません。
    何を文字で表したのか定義しなければ答案を読む人に伝わりません。
    けれど、本人としては、そもそも x を使うように要求しているのは数学の先生なので、自分の関知するところではない、自分の責任ではないという意識があるのかもしれません。
    自分は x なんか使いたいわけではない、使わされているだけだ、という気分なのでしょうか。
    「そんなの書かなくて大体わかるじゃん」
    という気持ちになってしまう底には、そういう意識があるのではないかと思うのです。

    もっと単純に、小6で初めて x や y を使うことになったときは、そんなことは要求されなかった、中学になったら何でそんなにうるさいんだろう、という気持ちもあるのでしょうか。
    小学生にそこまで要求しても無理だから要求されなかっただけなのですが。

    xの定義は重要です。
    式を見て、
    「このxは何を表しているの?」
    と尋ねても、即答できない場合がほとんどだからです。
    自分でもわからないものを他人にはわかれと要求することはできません。

    そういう、「答案を読む人に迷惑をかけるな」系の理由の他に、何をxとするかを明記することは本人にとっても利点が大きいのです。
    文章題が苦手な中学生は、文章題を見た途端に小学生に戻ってしまう傾向があります。
    どうやって答えを求めよう?
    どういう式なら答えが出るだろう?
    かけ算?
    割り算?
    そんなことをうっかりすると考え始めてしまいます。

    「・・・何を x としますか?」
    そう声をかけると、はっと目が覚めた様子で、まずその1行を書き、そうだった、これは方程式だったと気がついて、立式し始める子は多いです。
    私がそのように声をかけなくても、自分で何を x とするかを考えるならば、文章題は自力で解けるようになります。
    数学は、常に1行目の書き出しが一番難しい。
    それさえ書きだせれば、次の段階に進めるのです。

    さて、無事に1行目が書けたとして。

    方程式の文章題の採点基準は、
    ①何を文字においたかを書いてあるか。
    ②方程式が正しいか。
    ③計算の結果が正しいか。
    ④変域について考察してあるか。
    ⑤最終解答が書いてあるか。
    です。

    つまり、立式が正しいことを確認した後は、すぐに計算の結果に目を移し、途中は読まない先生が多いのです。
    ③の計算の結果が正しくない場合のみ、その前に戻って、どの行まで計算が正しいかを確認し、そこまでを赤ペンで区切って部分点を決定というのが採点の普通の流れです。
    どこを採点されているのか、そのメリハリを理解し、答案を書いていくと良いですね。

    さて、問題に戻りましょう。
    これは、兄と弟の年齢のどちらをxとしても構わないです。
    ただ、兄の年齢をx歳とすると、弟の年齢は(x-4)歳と、負の符号が出てきますので、符号ミスが多い人は、ちょっと危険要素が加わることにはなります。
    とりあえず、今回は、弟の年齢をx歳としてみましょう。
    答案に、「弟の年齢をxとする」と書く人も多いですが、xは単位をつけて書きます。
    年齢なら単位は「歳」に決まっているのでまだましですが、例えば速さに関する問題で、xの単位が「分」なのか「秒」なのかわからず、実は本人も混乱しているとなると、大変です。
    「弟の年齢をx歳とする」と書くのが正しい書き方です。

    弟の年齢をx歳とする。

    さて、ここから立式です。
    よくあるのが、こんなミスです。

    (x+4)2-8=3x2

    ・・・うん?
    もう一度問題を読み直しましょう。
    「兄は弟より4歳年上で、兄の年齢の平方は、弟の年齢の平方の3倍より8小さい」

    上のような間違った式を書いてしまうのは、小学生時代に文章題に苦しめられ過ぎた後遺症なのかもしれません。
    「8小さい」をどう処理するか、頭の中であれこれ考えた結果、左辺にくっつけてしまうのです。
    小学校の文章題は、答えを求める式を立てますから、加えたと言われたら引かなければならず、かけたと言われたら割らねばなりません。
    とにかく、裏を裏を考えないと、正しい式が立ちません。
    その癖が中学生になっても抜けない人は多いです。
    方程式は、裏を考える必要はありません。
    問題文に書いてある通りに書いて行けば良いのです。
    「兄の年齢の平方」は「弟の年齢の平方の3倍より8小さい」。
    この前半のカギかっこが、左辺。
    後半のカギかっこが、右辺。
    書いてある通りに書けば、式になります。
    兄の年齢の平方は、(x+4)2。
    弟の年齢の平方の3倍より8小さい数は、3x2-8。
    その2つが等しいのですから、
    (x+4)2=3x2-8
    これが正しい立式です。
    式が表しているのは、兄の年齢の平方です。
    そこから8を引いたりしては、左辺だけが一方的に小さくなっていきます。

    考え過ぎたあげく、
    (x+4)2+8=3x2
    という式を立てる人もいます。
    この式は、間違ってはいません。
    ただ、本人の苦闘が如実に表れているわりに、「あー、はいはい。別に間違ってはいませんよ」程度の評価しか受けません。
    せっかくの方程式の旨味をなぜ生かさない?
    書いてある通りに式を立てるだけでいいのに。
    採点官の感想はその程度です。
    余計なことを考えずに、その方程式が何を表すのかを意識しながら、文章の通りに式を立てるのが、立式のコツです。

    さて、立式したら、計算です。
    (x+4)2=3x2-8
    右辺にもx2の項がありますので、これは一度左辺を展開すると良いですね。

    x2+8x+16=3x2-8
    2x2-8x+8=0

    ・・・うん?
    何か間違っていますね。
    今度は何をしたの?
    単純に移項すれば、
    -2x2+8x+24=0 
    となります。
    そうなると、x2の項に負の符号がついてしまい、それが嫌なのは、わかります。
    だから、移項しつつ、符号を転換することもしたかったようです。
    そして、定数項でしくじった・・・。

    そういうことをやりたい場合、書いているのは左辺でも、意識は全ての項を右辺に移項するイメージでやっていくと、比較的ミスなく書いていけます。
    つまり、本当は、
    0=2x2-8x-24
    と移項しているのですが、「0=」は書かず、いきなり右辺を書いていき、最後に「=0」を書き加えるイメージです。

    2x2-8x-24=0

    しかし、別にそんな無理をせず、
    -2x2+8x+24=0 
    x2-4x-12=0
    としていくのでも、手間は変わりません。
    結局、式全体を割って、x2の係数を1にしますから。

    ちょっとした手間を惜しんで、暗算で済ませて、符号ミスや計算ミスのリスクを抱え込む。
    暗算に時間がかかる上に、実は手間もそんなに違わない。
    そういうことが、方程式の計算には多いです。
    計算は正確であることが大切です。
    というより、正確であること以外は何も求められていません。

    さて、
    x2-4x-12=0
    (x-6)(x+2)=0
    x=6 , -2

    ここで、xの変域(高校生になると定義域と呼びます)を考えます。
    人間の年齢なので、-2歳などありえません。
    そこで、「x≧0 だから」 あるいは、「xは正の整数なので」といった変域を考察する1行が必要となります。
    これが上に書いた、
    ④変域について考察してあるか。
    という採点基準です。

    x=6 , -2
    xは正の整数だから、
    x=6
    兄10歳、弟6歳

    これで答案は終了です。
    さて、もう1問。


    問題 原価500円の品物に、原価のx割の利益を見込んで定価をつけたが、売れないので定価のx割引で売ったところ、45円の損失となった。xの値を求めよ。

    こうした売買損益の問題が苦手な子は、本当に多いです。
    そもそも割合の問題が苦手な上に、「原価」「定価」「売値」「利益を見込む」といった商業用語が出てくるので、ハードルが高いのでしょう。
    原価というのは、仕入れ値。
    お店の人が仕入れた値段です。
    お店の人は、その原価のまま商品を売ったら、1円ももうかりません。
    それでは商売になりません。
    だから、原価に利益を見込んだ定価をつけます。
    まだその利益は確定ではないので、「利益をつける」という言い方はできません。
    これだけの利益を得る予定である、という意味で、「利益を見込む」という言い方をします。

    上の問題は、まずは定価の表し方を考えてみましょう。
    そう呼びかけると、こんな答えが返ってくることがあります。

    500x

    ・・・え?
    500円にx割の利益を見込んだ定価は、500x?
    この答え、数学の成績が「4」の子でも出てくる答えです。

    「・・・1割って、分数ではどう表しますか?」
    「ええと・・・」
    これが、まず出てこないのです。
    「割合」の学習は、小5の3学期に行う場合が多いですが、そのときはまだ「分数のかけ算・わり算」は学習していないため、割合の数値は小数を用います。
    小6になって、分数のかけ算・わり算を学習した直後や「比」を学習する直前に、改めて「割合と分数」を学習するのですが、そこで学びそこねてしまう子は多いです。
    自分は小数を使うからいいや、と思ってしまうのでしょうか。
    また、中1では、「文字式」の学習の際に「a円の1割」といったことを文字式にする練習をします。
    しかし、それもよく理解できないまま、そんなのは多くの問題の中の1問、結局最後までできなかったけれど、まあいいか、と通り過ぎていきます。
    中1の「1次方程式」、中2の「連立方程式」で、文章題を学ぶ度に割合の問題は出てきますが、それもまた、そういうのは自分は難しいからよくわからないけど、まあいいや、と通り過ぎていきます。
    繰り返し繰り返し、幾度学習しても、割合が定着しない子は多いです。

    「1割は、1/10。わかりますか?」
    「ああ、そうだ。1/10」
    「じゃあ、x割は、どう表されるでしょう?」
    「5/10」
    「・・・え?」
    ・・・どこから湧いてきたの、その5/10は?
    500円からきたの?
    やはり、本当に混乱しているのだなあと、驚くことが多いです。

    500円のx割は、500×x/10。
    まず、ここの理解までが大変で、理解できないからとにかくそこは暗記して済ます・・・という子も多いところです。
    方程式の文章題を学ぶ度に丸暗記でやり過ごそうとし、そしてすぐ忘れてしまうのでしょう。
    もとにする量×割合=くらべる量
    この公式は、「比べる量÷もとにする量=割合」という基本の公式を使いやすいように変形しただけの式なので、確かに暗記するしかありません。
    本来、感覚的に実感できる種類のものではありません。
    しかし、私は、この式に実感があります。
    多くの大人もそうだと思います。
    それは、子どもの頃から数限りなく使用し、それで正解が出ることがわかっているので、実感と結びついたのだと思います。
    500円を1/10にしたいときは、500×1/10なのだ。
    それは、500円を3倍したいときに、500×3をするのと同じだ。
    少しも間違っていない。
    沢山使っていくうちに実感を伴ってくるものなのですが、間違った式ばかり立てている子は、その実感が育たないのです。
    この公式が脳の奥まで染みていれば何も問題がないところですが、全く納得しないまま、ただやり過ごして中3まできてしまう子は、相当数いると思います。

    小学生のうちに、何とか割合の基本は身につけてほしい。
    そう思っても、なかなかに厄介なのが割合という単元です。
    うちの塾でも、ことあるごとにふりかえって復習していますが、その都度新鮮に間違えて、また覚え直して、の繰り返しの子は多いです。
    「300円の1/3はいくらですか」
    といった問題で、
    300÷1/3 
    という式を立てることをどうしてもやめられない小学生が多いのです。
    300を1/3にするんだ。
    だったら、わり算だな。
    という感覚が真っ先にきてしまうのだろうと想像されます。
    彼らの中では、300÷1/3と、300÷3 は、同じ意味なのだと思います。
    違いが意識できないのだろうと思うのです。
    だから、300÷3 をする気持ちで、300÷1/3 をしてしまうのでしょう。


    しかも、上の問題は、500円のx割ではなく、原価500円にx割の利益を見込んだのです。
    500(1+x/10)円が、定価となります。
    しかし、ここで突然現れた「1」の意味が理解できない子が多いです。
    もともと500円はある。
    それは、全体1。
    それにさらに、x/10の利益を見込む。
    だから、定価は、500円の(1+x/10)倍になる。
    このことが、実感としてなるほどその通りだと理解できれば、以後、このタイプの問題が幾度出てきても何も困ることはありません。
    しかし、全くわからないまま解き方を暗記しては忘れ、間違えては混乱し、どっちが正しかったからわからなくなってはまた混乱し、を繰り返し、中学生になり高校生になってしまう人は多いです。

    1つのわかりやすい考え方としては、もともと500円の原価はあり、それに利益を見込んで付け加えるのだから、
    500+500×x/10 
    という式なら、ギリギリわかる、という子は多いです。
    それを500でくくると、
    500(1+x/10) になりますよ、と説明すると、
    「本当だ!初めて意味がわかった!」
    と感動します。
    しかし、その感覚のまま、その続きを立式すると、
    500+500×x/10-500×x/10
    という間違った式を導きやすいのです。
    意味が理解できたら、必ず、500(1+x/10) と(  )でくくっておきなさいと厳命しておかないと危険です。
    本当は、最初から 500(1+x/10) の意味を当たり前に理解し、500+500×x/10 という式を介さずに式を立てられるようであってほしい。

    それには、線分図です。

    線分図を描いて、全体を①として、そこにx割、すなわちx/10をたして、・・・という解説が意味をなし、理解してもらえると、私は心底安堵します。
    もう大丈夫。
    この子は、売買損益の文章題をマスターした、大丈夫だ、と感じます。
    しかし、中学受験をした子以外は、線分図の見方をほぼ知りません。
    中学受験生だって、線分図の見方を初めから理解できる子は少ないです。
    4年生の頃から毎週のように見せられ、それを描けと要求され、よくわからないまま物真似のように図を描き続け、反復して反復して、ようやく、6年生になった頃に違和感がなくなり、うっすらとその意味がわかってくる、という子も多いのです。
    数量を線分の長さで表すという概念の理解は、子どもには一大事なのだと思います。
    まして、その線分が、実数と割合と二重の意味を持っているという概念の理解は、さらに困難を極めます。
    わかりやすく目に見える形にしたつもりの図が、子どもに負担を与えるだけで、意味をなさないのです。
    線分図を見ても、何1つ理解できない子は多いです。

    そんな中で、何の偶然なのか、突然ふっと理解できる子がいます。
    頭の中も清明な良く晴れた秋の日に、突然、それはやってくるかもしれません。
    ユ・リイカ!
    我、発見せり!
    センセイが線分図とかいう妙な図で何か繰り返し力説していたことの意味が、今わかった!

    そんな晴れ晴れとした日は、長い格闘の時間があってこそ訪れます。
    諦めてはいけない。
    焦ってもいけない。
    割合の学習は、繰り返し繰り返し根気よく続けていくしかないと思っています。

    上の問題に戻ります。
    この問題、さらに続きがあります。
    その定価を、今度はx割引きするのです。
    したがって、売値は、
    500(1+x/10)(1-x/10)

    1+x/10 が理解できなかったら、1-x/10 が理解できるわけがありません。
    この文章題は、ハードルが高過ぎる。
    というより、ほぼ障害物競走に近い・・・。
    割合が理解できない子を見分け選別するために存在している文章題なのか?
    それほどに、割合が苦手な子には立式が困難なのがこの文章題です。

    500(1+x/10)(1-x/10)
    それでも何とかここまで理解したとして。
    この売値で、45円の損失があった。
    原価500円の品物を500円で売ったら、損失0円。
    では、45円の損失があったということは、売値は、500-45(円)だったということでしょう。
    したがって、式は、
    500(1+x/10)(1-x/10)=500-45
    となります。
    この式を自力で立てられる中3は、本当に凄いのですよ。
    ヽ(^。^)ノ

    ともかく、立式はできたとして。
    しかし、その後の計算も困難を極める子が多いのがこの問題です。

    500(1+x/10)(1-x/10)=455

    これをどう解くか?
    単なる計算問題と異なり、文章題で立てた式は、計算しにくいことが多いです。
    何も指示せず、好きに解いてもらうと、大半の中学生がこの式をグチャグチャにしてしまいます。

    5000(10+x)(10-x)=4550

    ・・・うん?
    何をしたの?

    (500+50x)(500-50x)=455

    ・・・うん?
    大丈夫?

    (1+x/10)(1-x/10)=455/500
    「センセイ、この先どうするの?全部分数になっちゃって、計算できない」
    「・・・うん、そうですね」
    ( 一一)

    500(1+x/10)(1-x/10)
    というのは、
    500×(1+x/10)×(1-x/10) という意味です。
    下手をすると、そういう意味だということすら忘れて、ただ手順だけ覚えて計算している中学生もいます。
    この式、左辺全体がかけ算の大きな1つのまとまりです。
    かけ算のまとまりのところは、1箇所を10で割り、代わりに他の箇所を10倍しても、計算の結果は変わりません。
    それは、小学校の算数で学習していることです。
    50×0.2=5×2=10
    といった数理の仕組みは、小学4年生で学習します。
    こうした計算も、その単元のときだけわかったような顔をするが、以後、全く活用しない小学生が多いです。
    小学校の算数は、数理の根本が詰まっています。
    「小学校のこの単元は苦手だったけど、まあ中学の数学とは関係なくない?」
    とやり過ごして良い単元は1つもありません。
    些末なことに見えることほど、後になって重大事となります。

    これを活用すれば、上の式は極めて簡単になります。
    500(1+x/10)(1-x/10)=455
    5(10+x)(10-x)=455
    全体を10倍する、100倍するといったことは、この式には必要ないのです。

    ここで慌てて(  )を開いてしまう人もいますが、得策ではありません。
    まず、両辺を5で割りましょう。
    (10+x)(10-x)=91
    ここで展開します。
    乗法公式が使えますね。
    100-x2=91
    -x2=-9
    x2=9
    x=±3

    ここで、xの変域について考察します。
    -3割の利益を見込む、といったことはありえません。
    それでは、最初から3割引きしていることになります。
    だから、x>0です。
    x>0 より x=3
    この問題は、問題文の中にxがあり、その値を求めよと言われましたので、これで最終解答です。
    答を書く前に問題文を見直すことが必要ですが、それをしない子も多く、「3割」などと答えて、つまらない減点をされてしまいます。

    さまざまな困難を乗り越えて、文章題をパーフェクトに解く快感。
    そういうものを味わい、どうか文章題を得意になってください。


      


  • Posted by セギ at 11:24Comments(0)算数・数学

    2019年09月27日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その5。とにかく解こうという気持ち。


    さて今回はまずこんな問題から。

    問題 a+b=4 のとき、3a2+b2≧12 を証明せよ。

    a+b=4 という新しい種類の条件が提示されましたが、この使い方は何となくわかるような気がします。
    おそらく、代入して、文字を1種類に整理するのでしょう。
    a+b=4 より b=4-a 
    これを代入して、
    3a2+b2
    =3a2+(4-a)2
    =3a2+16-8a+a2
    =4a2-8a+16
    ここで平方完成してみましょう。
    =4(a2-2a)+16
    =4(a-1)2-4+16
    =4(a-1)2+12

    右辺と同じ12が出てきましたね。
    これで証明できました。
    (a-1)2≧0 より 
    4(a-1)2+12≧12

    等号はa=1のときですね。
    ならば、bも決定します。
    b=4-a=4-1=3
    よって、等号成立は、a=1、b=3のとき。


    前にも書きましたが、不等式の証明を学習していて、よく受ける質問に、
    「どのやり方で証明するのか、判断がつかない」
    というものがあります。
    パッと見た瞬間に、この問題はこのやり方、あの問題はあのやり方で証明する、と判断する基準は何なのか?
    それを質問する高校生は多いです。

    しかし、とにかく試行錯誤してみるのが、力をつけるには一番良いのです。
    「どのやりかたを使っていいのかわからないから、イライラする。解くのが苦痛だ」
    ではなく、
    「どのやりかたを使うのかわからないから、色々試してみる。それが面白い」
    だと思うんです。
    数学を楽しむ態度とはそういうものではないでしょうか。

    正解に至る簡単な見分け方を教えてほしいと思ったり、それがわからないから解けない、とすぐに諦めたり。
    そういう傾向は、高校生になって突然現れるものではありません。
    小学生のときから、そういう傾向はあります。


    例えば、こんな問題。

    問題 14/15 : 35/36 を簡単にしなさい。

    これは、小学校6年生が学習する「比」の問題です。
    教科書で学習する内容よりはやや難しいです。
    しかし、「解けない」と諦めてしまうようなレベルの問題ではないと思うのですが、中学受験をしない小学生で、この問題を正答できる子は意外なほど少ないのです。

    まず、第一段階として、分母の通分が上手くできない子が多いのです。
    小学校では、「連除法」は教えません。

    3 ) 15  36
         5  12

    3×5×12=180 と、このように最小公倍数を求める方法が連除法です。

    現行の教育課程で、学校でこれを学ぶのは、高校1年数A「整数の性質」です。
    小学生にこれを教えないのは、この解き方の意味を理解できる小学生が限られているからでしょう。
    素因数分解を実感として理解できない状態でこの解き方だけを教えても、それは、単なる解き方の作業手順を教えるだけです。
    意味のわからない作業手順の丸暗記を、学校が率先して指導するわけにはいきません。
    公倍数とは何なのか。
    小学生が最初に学習するときは、その本来の意味を理解することを優先したほうがいい。
    意味が明瞭な解き方をしたほうがいい。
    というわけで、学校では、15と36の公倍数を求めるときには、それぞれの倍数を書き出していって、共通のものを見つけるやり方を教えるのが普通です。
    15、30、45、60、75、90、・・・・
    36、72、108、・・・・
    というように並べて書いていきます。
    これが面倒で、途中で諦めて、分母の15と36を通分できない子が多いです。

    上のやり方でもいいけれど、大きい数のほうが、1倍、2倍、3倍、・・・と数がすぐに大きくなっていきますから、書き出していくのは大きい数だけのほうが早いよね、と塾では助言します。
    大きい数を1倍、2倍、3倍、・・・していって、その数が小さい数の倍数にもなっているかどうか確認していけば、最小公倍数は早く見つかります。
    36、72、108、144、180、・・・
    「72は、15の倍数?違うね。108は、15の倍数?これも違うね」
    そう声をかけて、つきっきりで面倒を見ると、誰でも、180という最小公倍数を見つけることができます。

    しかし、作業自体はそんなに難しいことではないのに、宿題に出したり、独りで演習させると、15と36の最小公倍数を見つけられる子は本当に少ないのです・・・。
    180は、36の5倍でしかありません。
    たった5個目に答えがあるのに、そこに至る前に諦めてしまう子が大半なのです。
    算数・数学ができない理由の第一は、それだと思います。
    諦めが早すぎるのです。

    では、なぜ、そんなに簡単に諦めるのか?
    それは、暗算が苦手なことが第一の原因でしょう。
    36を1倍、2倍、3倍、していくことが苦痛なのだと思います。
    しかも、その結果が、15の倍数であるかを確かめるのもつらいのでしょう。
    いちいち筆算しないとそれができない計算力の子もいます。
    36×2=72 を筆算して、それから72÷15を筆算して、という作業をしないと公倍数であるかどうか確かめられない計算力では、15と36の最小公倍数を求めるのは、難行苦行です。
    頭の中でかけ算・わり算することが容易であれば、この問題は諦める必要なく解いていけるのです。

    しかも、この問題が解きにくい原因は、これだけではありません。

    14/15 : 35/36=168/180 : 175/180=168 : 175 

    ここまで解いたとしても、これをさらに簡単にすることができない子が多いのです。
    ここから、さらに、同じ数で割って比を簡単にするのですが、その数、つまり168と175の公約数を見つけることができないのです。
    暗算力のある子は、この2つの数を眺め、頭の中でちょっと暗算しているうちに、「あ、7で割れる」と気がつきます。
    しかし、そうした作業が苦痛で、強要されない限りそんなことは絶対にしない子たちは、7を見つけることができません。

    この問題の公約数は7という1桁の数なので、実はまだ見つけやすいのですが、17や19などのときは、もっと苦労することになります。
    しかし、このような場合にも、公約数を発見する方法はあります。
    168と175と、どちらからアプローチしても良いのですが、175からやってみたほうが簡単そうです。
    175を割ることのできる数を考えます。
    つまり、素因数分解するのです。
    すぐに思いつくのは、5です。
    175÷5=35
    35は、さらに5で割れます。
    35÷5=7
    つまり、175=5×5×7 です。
    これは、175は、5や7で割り切れる、という意味でもあります。
    一方、168という数の中には、5という要素(因数)は絶対ないと見た目でわかります。
    だとすれば、168を割れる可能性のある数は、7です。
    試してみると、確かに割ることができる。
    そういう作業をすれば、共通に割ることのできる数、すなわち公約数を発見することができます。

    このやり方も、小学校では学習しません。
    教科書にある公約数の見つけ方は、それぞれの約数を全て書き出し、共通のものを見つけるやり方です。
    1、2、3、4、7、8、12、14、21、24、42、56、84、168
    1、5、7、25、35、175
    全部書き出すと、最大公約数は、7だとわかります。
    この解き方でしか公約数が見つけられない子は案外多いのです。
    そして、この解き方の作業時間が長くとても面倒くさいので、公約数を見つけることをすぐに諦めてしまうのだと思います。
    教わったやり方から一歩も外れることができないのは、なぜそれで解けるのか、本質を理解していないからでしょう。
    学校で教わったものより少しだけ高度な解き方の意味を理解することができず、あるいは、理解できたとしても、自分で問題を解くときに活用することはできないのです。

    14/15 : 35/36=168/180 : 175/180=168 : 175=24:25
    これが正解です。

    この問題が解けない子たちに欠けている力は何なのか?
    1つには計算力。
    特に、整数が他の整数の積の形に見えているかどうか、です。
    175=5×5×7 という形に見ることができるかどうか。
    こうしたことは、小学校で教える内容ではありませんが、教わらなくても理解している子もいるのです。
    175が、5で割り切れるなら、175÷5の商である35でも、175は割り切れる。
    35で割り切れるということは、35=5×7だから、175は、7でも割り切れる。
    そういう、かけ算とわり算の関係を理解していると言い換えても良いです。
    それは、「わり算の検算」という学習で小学校でも一応触れているのですが、その内容の重要性に気づかず、頭の隅にも残さない子も多いです。
    しかし、算数が本当に得意な子たちは、理解しています。
    かけ算・わり算を沢山やっていく中で自然に獲得している知があるのです。
    数の体系を、数理の根本を、教わらなくても理解している子たちが、算数・数学で高い能力を発揮します。
    一方、計算のやり方などの実務的な学習事項に目を奪われ、論理的なことの重要性に気づかず聞き流す子たちも多いのが現状です。

    また、1つには、理解力と応用力。
    小学校の教え方は、最大多数の子が理解できるようにと考えられた教え方です。
    だから、公倍数の求め方も、公約数の求め方も、とにかく地道です。
    最初はそれで良いのですが、本質を理解したら、もっと早く求める方法があります。
    それを活用できない子が多いのです。
    塾で教えても、そのときは理解した顔をしますが、自分のものにできない子が多いです。
    家庭でご両親が教える場合も、数学が得意な人が教えるほど、むしろ子どもが全くついてこられず喧嘩になってしまうということは多くあると思います。
    私も、その子の理解力次第で連除法も教えるつもりでいるのですが、ちょっと無理だなと判断する場合が多いです。
    せめて、大きいほうの数を1倍、2倍、3倍して、早く最小公倍数を見つけることくらいは身につけてほしいと思っても、結局いつも小さいほうの数を1倍、2倍、3倍し始めて、いつまでも数が大きくならず、なかなか公倍数に至らず、諦めてしまう子が多いのです。
    なぜ、小さいほうの数を1倍、2倍、3倍するのか?
    おそらく、問題に最初に書いてあるのは、小さいほうの数だからでしょう。
    あるいは、片方の数だけ1倍、2倍、3倍していけば良いということをすぐに忘れ、学校の解き方に戻ってしまうので、まず小さいほうの数の倍数を書き出しているのでしょう。
    算数の問題を解く作業が、学校で教わったことを教わった通りに機械的に再現するだけになっていて、考えて作業をする気配がない・・・。
    学力そのものが低いわけではないのに、そのようになってしまっている小学生が多いです。

    もう1つは、粘り強さ。
    学校で教わった地道な解き方だって、いつか答えは出るのです。
    何かやっていけば必ず答えが出せる問題で、なぜ諦めるのか?
    なぜ、36の5倍すらやってみようとしないのか。
    なぜ、その前で諦めるのか?
    180がみつからなかったとして、いっそ36の10倍の360ではどうかと考えてみることも、なぜしないのか?
    後で整理すれば良いのだから、それでも良いのです。
    そういう、ダメでもいいからやってみる強い気持ちに欠け、諦めてしまうのです。


    14/15 : 35/36 を簡単にしなさい。

    さすがに高校生になれば、この程度の問題で諦めてしまうことはないと思います。
    それは、高校生の学力で小学生の問題を見ているからです。
    しかし、その関係は、そっくり、高校生の問題にスライドできるのではないでしょうか。
    高校数学の問題の解き方がわからないとすぐに諦めている高校生は、比を簡単にする問題を諦めている小学生と同じように見える、という視点も存在するのではないでしょうか。
    そして、解けない原因も、共通するものが多いのではないでしょうか。
    1つには、計算力。
    高校数学の問題をあれこれ試行錯誤するためには、自在に計算する力が必要です。
    計算自体が億劫なので、試しに計算してみることができない、ということはないでしょうか。
    また1つには、理解力と応用力。
    問題の目先が変わると解き方がわからないのは、基本問題の意味を本当はわかっていなくて、解き方の作業手順を丸暗記しているだけだからではないでしょうか。
    理解することをおろそかにし、作業手順の丸暗記で済ませてはいないでしょうか。
    そして、もう1つ大切なのは、粘り強さ。
    あと一歩粘れば解ける問題を、途中で諦めてはいないでしょうか。
    わからない。
    簡単に解き方のわかる方法を知りたい。
    と思う前に、あと一歩、粘るだけで実は答えは出るのではないでしょうか。

    色々考えるのが数学の楽しさです。
    粘って、何時間も考えるから、数学は面白いのです。


    さて、次の問題。

    問題 a>1、b>1、a+b=1 のとき、不等式 ax2+by2≧(ax+by)2 を証明せよ。

    まずは、これも代入して、左辺-右辺≧0を証明することを考えてみましょう。
    a+b=1 より b=1-a
    左辺-右辺 
    =ax2+by2-(ax+by)2
    =ax2+(1-a)y2-{ax+(1-a)y}2
    =ax2+y2-ay2-a2x2-2axy(1-a)-y2(1-a)2
    =ax2+y2-ay2-a2x2-2axy+2a2xy-y2(1-2a+a2)
    =ax2+y2-ay2-a2x2-2axy+2a2xy-y2+2ay2-a2y2

    うわあ・・・・。
    この先、やりようがあるのかもしれませんが、ちょっと迂回したくなってきました。
    これは、1回戻って考え直したほうが良さそうです。
    バラバラにしたのが良くなかったのかもしれません。
    代入前に戻って整理してみます。
    中学の数学の、文字式の値を求める問題も、まず整理してから代入するのが鉄則でしたものね。
    x について降べきの順に整理してみましょう。

    ax2+by2-(ax+by)2
    =ax2+by2-(a2x2+2axby+b2y2)
    =ax2+by2-a2x2-2axby-b2y2
    =(a-a2)x2-2abxy+(b-b2)y2
    =a(1-a)x2-2abxy+b(1-b)y2

    あ、これは対称式です。
    対称式というのは、文字を入れ替えても値の変わらない式のことです。
    ここで、あっとひらめくのです。
    a+b=1より、1-a=bですし、1-b=aです。
    この両方をそれぞれに代入してはどうでしょうか。

    =a(1-a)x2-2abxy+b(1-b)y2
    =abx2-2abxy+aby2
    =ab(x2-2xy+y2)
    =ab(x-y)2≧0
    よって、ax2+bx2≧(ax+by)2
    等号成立は、x-y=0、すなわちx=yのとき。

    ・・・そんなやり方、思いつかないよ。
    最初はそういう感想で当然だと思います。
    こんなのは自力で発想できなくても良いのです。
    ただ、このテクニックは、頭の引き出しに入れておきましょう。
    そして、類題を解くときに使えるようにしておくのです。
    テクニックを頭の引き出しに入れておくことは、作業手順の丸暗記とは違うのです。



      


  • Posted by セギ at 12:56Comments(0)算数・数学

    2019年09月22日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その4。絶対値を含む不等式。


    今回は、「絶対値を含む不等式の証明」の学習です。
    「絶対値」という言葉は、中学1年生の「正負の数」で学びます。
    数学学習の初期の初期に出てきます。
    絶対値の定義は、「数直線上での原点からの距離」です。
    だから、+3も-3も絶対値は3です。
    したがって、絶対値とはその数の符号を外した数、すなわち正の数ととらえることが可能です。

    ここまでならシンプルな話なのですが、絶対値に文字がからむと途端にわかりにくくなるようです。
    例えば、高校数Ⅰで学習する以下の内容。

    |a|≧a
    |a|≧-a
    |a||b|=|ab|
    |a+b|2=a2+2ab+b2

    パッと見て、「そりゃそうだ。当たり前だ」と感じる人と、「え?え?何?」と焦る人とがいます。
    1つには、文字が正負の記号を含みこんでいることが理解しきれていないせいかもしれません。
    aという文字は、a≧0の可能性とa<0の可能性とがあります。
    そう説明されれば、「それは知っている。わかっている」と言うのですが、上のような等式・不等式を見るときに、いつの間にか、
    aは正の数。
    -aが負の数。
    という認識になっていないでしょうか?

    「aという文字が何なのか決まっていないのに、何で大小が言えるんですか?」
    不等式の学習がここまで進んでから、突然そう質問されて、その質問がどういう意図のものかわからず、困惑したこともあります。
    「不等式の証明」の学習の始まりには、そういう疑問はもたない様子で、それなりに解いていたのです。
    しかし、絶対値を含む不等式になると、その質問が口をついて出てしまったようです。

    絶対値がわからないのか?
    最初から不等式がわからなかったのか?
    aという文字の正負がわからないのなら、左辺と右辺のどちらが大きいかはそのときによるんじゃないか?
    急にそう感じるようになった、ということなのでしょうか。

    とりあえず、まず、上の不等式を1つ1つ見ていきましょう。
    |a|≧a
    これは、まずはaの正負によって場合分けして考えると理解できると思います。
    a≧0 のときは、|a|=a です。
    a<0 のときは、|a|は正の数、a自体は負の数ですから、|a|>a です。
    それらをまとめると、
    |a|≧a
    となります。
    ≧ というのは、>であるか、または=であるか、ということですから、どちらかになれば良いのです。

    |a|≧-a
    これも、まずはaの正負によって場合分けして考えます。
    a>0 のとき、|a|は正の数で、-aは負の数ですから、|a|>-a が成立します。
    a=0 のとき、|a|=0、そして、-a=0 ですから、|a|=-aです。
    a<0 のとき、|a|は正の数、-aも正の数ですから、|a|=-aです。
    それらをまとめると、
    |a|≧-a は、aの正負に関わらず、必ず成立します。

    |a||b|=|ab|
    これは、比較的理解しやすいかもしれません。
    a、bの正負に関係なく、|a||b|は正の数です。
    |ab|も正の数です。
    よって、
    |a||b|=|ab|
    は、常に成立します。

    |a+b|2=a2+2ab+b2
    もしかしたら、これが一番理解しにくいかもしれません。
    |a+b|2 が正の数であることには疑問の余地はないと思います。
    問題は右辺でしょうか。
    a2+2ab+b2
    これが負の数の可能性があるように感じるので、たとえ絶対値が等しくても、等式は成立しないのではないか、と感じることがあるようです。
    しかし、この右辺は、因数分解できます。
    a2+2ab+b2=(a+b)2
    a+bが正の数であっても負の数であっても、(a+b)2は正の数です。
    よって、左辺も右辺も正の数で、もともと絶対値が等しいことは見ればわかりますから、
    |a+b|2=a2+2ab+b2
    が言えるのです。

    ちなみに、上の記述は、感覚的に納得するための説明であって、証明ではありません。
    証明は、もう少し細かい定義が必要となります。

    これで感覚的に納得してもらえたはずだ・・・、と思っても、納得した顔をしない高校生もいます。
    何か騙された気がすると言うのです。
    詐欺にあったような顔をしています。
    では、どこが疑問なのかと問い返すと、それはどこかはわからないけれど、何となく納得できない・・・という曖昧な答えが返ってきます。
    場合分けして説明されることに、そもそも懐疑を示す人もいます。
    その場合分けが全てではないような気がするというのです。
    そうでない場合もあるのに、そこで騙された気がする・・・。
    どこで騙されたとは指摘できないけれど、きっと騙されている・・・。

    そんなにも疑い深い一方、ネットに書いてある根拠のないことや、テレビで有名人がわかったふうに喋っていることをたやすく信じてしまうのは、なぜなのでしょう。
    友達から聞いた噂話を鵜呑みにしてしまうこともありますよね。
    そういうことを簡単に信じないために、数学を学ぶという側面もあります。
    信じるべきことと疑いを抱くべきことを自分で判断するために、「論理」を学ぶのです。
    数学は、論理を学ぶことができる学問です。

    ともあれ、疑いが消えないならば、そうではない例、すなわち反例を自分であれこれと考えたみたら良いと思います。
    aやbを正の数にしたり、負の数にしたり、色々な組合せで考えて、実際に計算してみて、納得できるまで上の等式・不等式が成立することを確認してみてください。
    それをしてみることで、正負の数に関する自分の認知の歪みに気がつくこともあると思います。
    中学1年で突然習った「負の数」というものの本質をつかみきれないまま、計算のやり方だけ暗記して済ませてきたことが尾を引いているのかもしれません。
    この機会に歪みを正すことができたら、この先の学習が楽になります。


    さて、それでは、数Ⅱの実際の問題にあたってみましょう。

    問題 |a|+|b|≧|a+b|を証明せよ。

    え?
    |a|+|b|=|a+b|じゃないの?
    いつも等しいんじゃないの?
    という錯誤が生まれてしまうことがあるかと思いますが、それは、やはり気がつくとaやbは正の数だと決めつけていることからくる錯覚です。
    実際には、aやbは正の数のこともあれば負の数のこともあり、0のこともあります。
    そのどの場合でも、上の不等式は成立します。
    それを証明しろと言われているのですね。
    不等式の証明は、左辺・右辺の両辺が正の数であることが確実ならば、2乗したもの同士で比較しても大丈夫でした。
    すなわち、(左辺)2-(右辺)2≧0 ならば、(左辺)≧(右辺) です。
    ここで活躍するのが、上の|a+b|2=a2+2ab+b2 などの基本ルールです。

    (左辺)2-(右辺)2
    =(|a|+|b|)2-|a+b|2
    =|a|2+2|a||b|+|b|2-(a2+2ab+b2)
    =a2+2|ab|+b2-a2-2ab-b2
    =2|ab|-2ab≧0

    最後が唐突な印象があるでしょうか。
    では、|ab|-ab の正負について考えてみましょう。
    aとbが同符号あるいは0のときは、ab≧0 です。
    このとき、
    |ab|=ab となり、|ab|-ab=0 です。
    aとbが異符号のとき、すなわちab<0 のとき
    -ab>0 となります。
    |ab|-ab は、正の数と正の数との和となりますから、
    |ab|-ab>0 です。
    これらをまとめると、
    |ab|-ab≧0 となります。
    よって、2|ab|-2ab≧0 も成立します。
    (左辺)2≧(右辺)2であるから、左辺≧右辺も成立し、
    |a|+|b|≧|a+b|
    等号はa=bのとき成立する。


    続いて、こんな問題です。

    問題 |a-b|≧|a|-|b| を証明せよ。

    上の問題と似ているようですが、これはちょっと違うのです。
    何が違うのか?
    |a|+|b|≧|a+b|
    は、左辺も右辺も、正の数です。
    正の数での大小の比較ですから、それぞれ2乗して大小を比較することで単純に判断できました。
    しかし、
    |a-b|≧|a|-|b|
    は、左辺は正の数ですが、右辺は、負の数かもしれません。
    単純に2乗して大小を比較することはできません。
    ここは、場合分けして判断していかなければなりません。
    1) |a|-|b|<0 すなわち |a|<|b| のとき
    |a-b|>0、|a|-|b|<0だから、
    |a+b|>|a|-|b|
    2) |a|-|b|≧0 すなわち |a|≧|b| のとき
    (左辺)2-(右辺)2
    =|a-b|2-(|a|-|b|)2
    =a2-2ab+b2-(|a|2-2|a||b|+|b|2)
    =a2-2ab+b2-a2+2|ab|-b2
    =-2ab+2|ab|
    =2|ab|-2ab
    =2(|ab|-ab)≧0
    ゆえに、
    |a-b|2≧(|a|-|b|)2
    したがって、
    |a-b|≧|a|-|b|
    1)、2)より、
    |a-b|≧|a|-|b|
    等号は|ab|=ab すなわち ab≧0 かつ|a|≧|b|のときに成り立つ。

    いかがでしょうか?
    この機会に、絶対値アレルギーをなくすことができると良いと思います。
    絶対値がわからない、という人は、何か誤解があるのです。
    あるいは、わかっているつもりで、問題を解いている最中に、ふっと混乱が起こるのです。
    そこがスッキリすると、数学全体がかなりスッキリしてくると思います。


      


  • Posted by セギ at 13:16Comments(0)算数・数学

    2019年09月15日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その3。いろいろな問題。


    さて、今回は、不等式の証明に関する少し難しい問題をいくつか解いてみましょう。

    問題 不等式 x2-6xy+10y2≧4y-4 を証明せよ。

    x と y と文字が2つあり、両方とも2次で、しかも、xy の項もあるので、文字ごとに別々に平方完成することはできない問題です。
    さて、どのように解くか?
    これは、まず x を優先し、xを含んでいる項で平方完成してしまいましょう。
    いえ、y を優先しても別に構いません。
    とにかく、どちらかの文字をまず優先するという考え方で処理していきます。

    左辺-右辺
    =x2-6xy+10y2-4y+4
    x2 と-6xyを優先して平方完成します。
    =(x2-6xy+9y2)+y2-4y+4
    =(x-3y)2+y2-4y+4
    後半の3つの項も平方完成できますね。
    =(x-3y)2+(y-2)2≧0
    よって、
    x2-6xy+10y2≧4y-4
    等号成立は、x-3y=0 かつ y-2=0
    すなわち、x=6、y=2のとき。


    問題 不等式 (a2+b2)(x2+y2)≧(ax+by)2 を証明せよ。

    文字が4種類もあるわりに、これは単純に解いていけそうな予感がします。
    左辺-右辺
    =(a2+b2)(x2+y2)-(ax+by)2
    =a2x2+a2y2+b2x2+b2y2-a2x2-2abxy-b2y2
    =a2y2+b2x2-2abxy
    =a2y2-2abxy+b2x2
    =(ay-bx)2≧0
    よって、
    (a2+b2)(x2+y2)≧(ax+by)2
    等号成立は、ay-bx=0 すなわち、ay=bx のとき。

    同様に、
    (a2+b2+c2)(x2+y2+z2)≧(ax+by+cz)2
    も証明可能です。
    これらは、コーシー・シュワルツの不等式と呼ばれているものです。


    問題 x>0のとき、x+16/(x+2)の最小値を求めよ。

    急に最小値と言われても、2次関数ではなさそうなのに、どういうことだろう?
    このように問題の目先が変わると、何をどうして良いか全くわからなくなる人もいると思います。
    「どういうふうに考えるんですか?」
    と相談されることが多いのです。
    分子と分母にxがある場合、相加平均・相乗平均が使える可能性があるよね?と問いかけると、
    「だから、そういうことをどう発想するんですか?」
    と問われます。

    最小値・最大値という文字を見たら、まず2次関数かな?と考える。
    そうでなかったら、あれ?では不等式かな?と発想する。
    何もないところからいきなりその発想をもてないということは理解できます。
    ならば、発想のストックを自分の中にもっておくことをお薦めします。

    では、不等式をどう使うのでしょう?
    最小値というのは、とりうる値の中で最小の数。
    x+16/(x+2) はいくつ以上なのだろうと考えると、あ、これは不等式なんだなと気づくと思います。

    後半の分母が x+2 なので、前半も x+2 にしてみます。
    それなら、相加平均・相乗平均の定理が使えるでしょう。

    相加平均・相乗平均の関係より、
    x+2+16/(x+2)≧2√(x+2)・16/(x+2)
    右辺の√ は、式の最後までかかります。
    x+2+16/(x+2)≧2√16
    x+2+16/(x+2)≧8
    x+16/(x+2)≧6
    よって最小値は6とわかりました。
    ところで、このときのxはいくつでしょう。
    それも求めましょう。
    相加平均・相乗平均の関係より、
    等号成立は、x+2=16/(x+2) のとき。
    よって、
    (x+2)2=16
    x+2=±4
    x=-2±4
    x=-6、2
    x>0より 
    x=2
    よって、
    x=2のとき最小値6

    これが最終解答となります。


    問題 x>0、y>0 のとき、(3x+2y)(3/x+2/y) の最小値を求めよ。

    これも、相加平均・相乗平均を利用するんだろうなあと、一度上のような問題を解くと、発想のヒントが見えてくると思います。
    問題を解く経験を積む。
    発想の源は、経験であることが多いのです。

    とりあえず、与式を展開してみましょう。
    (3x+2y)(3/x+2/y)
    =9+6x/y+6y/x+4
    =13+6x/y+6y/x
    ここで、相加平均・相乗平均の関係より、
    x/y+y/x≧2√x/y・y/x
    x/y+y/x≧2
    よって、
    13+6x/y+6y/x≧13+6・2
    13+6x/y+6y/x≧25
    等号成立は、x/y=y/x のとき。
    x>0、y>0 より
    x2=y2 すなわちx=yのとき。
    よって、
    x=yのとき、最小値25

    これが最終解答です。
    相加平均・相乗平均を利用したときの等号成立のところが何だか飛躍しているようでよくわからない人いるでしうか。
    これは、相加平均・相乗平均の定理を使っているだけなのです。
    a+b≧2√ab
    等号成立は、a=bのとき。
    この定理を利用して、等号成立のときを判断しているだけです。
    その都度計算しているわけではないのです。
    前に学習したことをスルッと使われて解説されると、よくわからない・・・。
    そういうことは、直前で学習したことでもすぐに起こります。
    モヤモヤしたら、定理に戻って確認しましょう。

    また、すぐ上の問題では、
    x/y=y/x のとき、
    x>0、y>0 より
    x2=y2 すなわちx=y
    というところがわからない、という人もいるかと思います。
    両辺が分数の式のとき、互いの分母×分子は等しいということを知らない人は高校生になっても多いです。
    三角比の正弦定理の式も、それを用いて整理すれば簡単になります。

    a/b=c/d のとき、ad=bc
    分数の基本に戻って考えましょう。
    通分・約分するときの基本の考え方ですが、分母・分子に同じ数をかけても、分数全体の大きさは変わりません。
    だから、a/b=ak/bk は常に成立しています。
    この式の、左辺の分子×右辺の分子は、abk。
    右辺の分子×左辺の分子も、abk。
    よって、両辺が分数の式は、たすきにかけたような形に簡単に整理できるのです。
    それで上の x/y=y/x も、x2=y2 と変形できるのです。


    それで思い出したのですが、最近、別の塾で「比」を学習した小学生が、こんな解き方をしました。
    2/15 : 1/5=15 : 10=3 : 2

    ・・・うん?
    何をしたの?
    「x攻撃すると、簡単なんだよ」
    と、その子は、知らないなら教えてあげるというような、謎の上から目線で教えてくれました。
    しかし、この問題の正解は、2 : 3 です。
    その子は、左の項の分母と右の項の分子をかけて、15×1=15。
    左の項の分子と右の項の分母をかけて、2×5=10。
    だから、15 : 10=3 : 2 としてしまったのでした。
    それは、逆です。
    そういうやり方をするのなら、左の項の分子と右の項の分母の積が先、左の項の分母と右の項の分子の積が後。
    比は、順番が大切。
    逆に書いたら、それは誤答。
    「xにかける」のは一見簡単そうですが、どちらを先に書くのか曖昧になったら、そのやり方は失敗します。

    2/15 : 1/5=2/15 : 3/15=2 : 3
    という普通の解き方でなぜいけないのか?
    この解き方のほうが、どういう解き方をしているのか、その意味も明確で、間違える可能性も少なく、解く手間も上の解き方と同じです。

    ところが、小学生は、このような「x攻撃~」的な解き方が好きです。
    その解き方は間違える可能性が高いから普通に通分しなさいと助言したのですが、「嫌だ」の一言で却下されました。
    比なんて、どんなに気をつけても順番を逆に書いてしまうことが多い単元。
    それにさらにこんな不確定要素が加わったら、この先、まともに正解が出る気がしません・・・。
    この先の受験算数は、ほとんど全て比を使います。
    「速さと比」「割合と比」「面積と比」「つるかめ算と比」「平均と比」と、比ばかりなのに・・・。
    算数が苦手な子には理解しづらいところで、ただでも大変なのに、x攻撃をやめさせるという余計な負担が1つ増えました。
    ただ今、その方向に向けて努力中です。

    x攻撃。
    この解き方を教える際に、ただし順番には注意することという指示があったのかもしれません。
    しかし、「順番に注意」といった細則はすぐに頭から抜け落ちていくのが子どもです。
    算数が苦手な子どもたちのために、楽しい解き方を教えてやろう。
    それは善意から出たものでしょうが、その子は、分数比を簡単な整数の比に直す作業の正答率は常に五分五分のリスクを一生かかえる可能性があります。
    この解き方は、リスクが高いです。

    それと混同されやすく、誤解される可能性がありますが、両辺が分数の式を分母と分子の積の形に直すのは、どっちが先でも後でも、必ず等式が成立します。
    一見、上のx攻撃と似ていますが、誤用のリスクはありません。
    誤用のリスクのある解き方は、算数・数学が苦手な子に教えないほうがいい。
    意味がわかる基本の解き方を丁寧に実践することのほうが、結局、子どものためになる。
    これは不文律とすべきだと、改めて感じました。


      


  • Posted by セギ at 13:24Comments(0)算数・数学

    2019年09月08日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その2。相加平均と相乗平均。


    今回は、相加平均と相乗平均の話です。
    言葉がまず少し難しい印象ですね。
    相加平均は、小学生の頃からお馴染みのいわゆる「平均」です。
    加は、加法の加。
    つまり、たし算の平均が相加平均。
    n個の数の和をnで割ったものです。
    一方、相乗平均は、n個の数の積のn乗根となります。
    乗は、乗法の乗。
    つまり、かけ算の平均が相乗平均です。
    ただ、まだ「指数関数・対数関数」の単元を学習していませんので、この「n乗根」というのが厄介です。
    今回の学習内容では、そこまで話を拡大する必要がありませんので、2つの数の積の平方根に限って話を進めましょう。


    2つの数に限定して説明すると、
    相加平均は、2数aとbとの和を2で割ったもの。つまり(a+b)/2。
    相乗平均は、2数aとbの積の平方根。つまり、√ab です。

    a≧0、b≧0のとき
    (a+b)/2≧√ab
    等号はa=bのとき成り立つ。

    これが、相加平均≧相乗平均の定理です。
    証明もそんなに難しくありません。
    左辺-右辺をやってみましょう。
    左辺-右辺≧0 となれば、左辺≧右辺 を証明できますね。

    (a+b)/2-√ab
    これをまず通分します。
    =(a+b-2√ab)/2
    中3で学習した因数分解の公式が使えそうです。
    =(√a2+√b2-2√ab)/2
    =(√a-√b)2/2≧0
    よって左辺≧右辺となり、(a+b)/2≧√ab です。
    等号は√a-√b=0、すなわち a=b のとき成り立つ。

    相加平均≧相乗平均 の定理は、分数のままだと使いにくいので、両辺を2倍して、
    a+b≧2√ab
    の形で利用することが多いです。
    では、実際に利用してみましょう。

    問題 a≧0、b≧0とする。
    (a+1/a)(b+1/b)≧4 を証明せよ。

    左辺の( )内がそれぞれ和の形になっています。
    文字の並びからして相乗平均したら右辺のように文字が消えて数字だけが残りそうです。
    これは、相加平均≧相乗平均 の定理が使えるでしょう。

    相加平均≧相乗平均 より
    a+1/a≧2√a・1/a
    a+1/a≧2 ・・・①
    同様に、
    b+1/b≧2 ・・・②
    ①×②をすると
    (a+1/a)(b+1/b)≧4
    等号はa=1/a かつ b=1/b すなわち、a=b=1のとき成り立つ。

    見た目は似ているようでも、全ての問題で相加平均≧相乗平均を使うわけではありません。

    問題 a≧0、b≧0のとき、√2(a+b)≧√a+√b を証明せよ。

    左辺全体に√ がかかっているものとして読んでください。

    これも、相加平均≧相乗平均 を使うのだろうかと悩む高校生がときどきいますが、試しに使ってみると、すぐに式がグチャグチャになってきて行き詰まることがわかると思います。
    相加はあっても相乗がなさそうな式には、この定理は使えないのです。

    とはいえ、それが見抜けないと言う人もいます。
    そういう人は、あれこれ悩む前に、可能性を感じるのならやってみたら良いと思います。
    手は動かさないのに、「どんなときに使うの?どうやって見分けるの?」と質問する高校生は多いのですが、手を動かし、試行錯誤すれば、見分けがつくようになります。
    そうなる前に説明だけ聞いて見分けようとしても、その説明が長くしかも細かくて何を言っているのかわからないということが起こりがちです。
    しかも、見分け方だけ聞くとなぜか安心するようなのが、見ていて恐ろしい。
    見分け方だけ聞いても、実際にそれで見分けられるようには、なかなかならないです。
    選択肢の1つとして、常に相加平均・相乗平均のことを頭においてください。
    そのほうが良いです。

    さて、相加平均・相乗平均の定理を使わないのなら、どうやって解くのか?
    上の式はa≧0、b≧0ですので、左辺も右辺も正の数であることがわかっています。
    ならば、それぞれ2乗しても大小関係は変わりません。
    だから、それぞれ2乗してみましょう。
    √2(a+b)と√a+√bの2乗の差は、
    2(a+b)-(√a+√b)2
    =2(a+b)-(a+2√ab+b)
    =2a+2b-a-2√ab-b
    =a-2√ab+b
    =(√a-√b)2≧0
    よって√2(a+b)≧√a+√b
    等号は√a-√b=0 すなわちa=b のとき成り立つ。

    今までのところを整理しますと、不等式を証明するには、左辺-右辺≧0 を示すのが基本ですが、そのためには、
    ①平方完成する
    ②相加平均≧相乗平均 を利用する
    ③全体を2乗する
    などのテクニックがあります。
    これらのうちのどのテクニックを使うかは、その問題ごとに自分で判断します。
    判断がつかないうちは試行錯誤してみましょう。
    数学の問題を解いていて一番楽しい時間は、この試行錯誤の時間だと思うのです。
    一番意味のある時間でもあると思います。
      


  • Posted by セギ at 13:30Comments(0)算数・数学

    2019年09月01日

    高校数Ⅱ「式と証明」。不等式の証明その1。


    今回は、「不等式の証明」に入ります。
    「左辺と右辺が文字ばっかりじゃ、大小なんてわからないんじゃないの?」
    以前、そういう鋭い質問を受けたことがあります。
    文字の値によって大小なんて違ってくるんじゃないの?
    そんなものをどうしたら証明できるの?

    勿論、個々の文字の値が何であるかによって大小が異なる場合がほとんどです。
    証明できるものはごく一部です。
    だから、練習する問題は、証明できるものだけなのです。
    では、どんな場合に証明できるのか?

    まず、左辺-右辺≧0 を証明できれば、左辺≧右辺 です。
    では、どんなときに左辺-右辺は0以上になるのか?
    左辺-右辺を何かの2乗の形にできるなら、それは0以上の数でしょう。
    実数の場合、2乗すれば必ず0以上の数になります。
    不等式は、これを用いて証明することが多いです。

    問題 x4+y4≧x3y+xy3 を証明せよ。

    左辺-右辺
    =(x4+y4)-(x3y+xy3)
    =x4+y4-x3y-xy3
    項の順番を変えてみましょう。
    =x4-x3y-xy3+y4
    ここで、共通因数で括ります。
    =x3(x-y)-y3(x-y)
    ( )の中身が共通因数となりましたので、さらに因数分解できます。
    =(x-y)(x3-y3)
    後半の(  )は、さらに因数分解できます。
    3乗の公式を使います。
    =(x-y)(x-y)(x2+xy+y2)
    =(x-y)2(x2+xy+y2)

    さて、ここまで因数分解して、前半の(x-y)2は、2乗ですから、必ず0以上になります。
    後半の x2+xy+y2 は、どうでしょうか。
    ここは、平方完成してみます。

    平方完成を覚えているでしょうか?
    数Ⅰの「2次関数」でやりました。
    頂点の座標を求めるために式を変形する方法です。
    因数分解と異なり、定数項が(  )の外にはみ出しても、別に構わないのでした。
    今回はxについての文字式と考えて平方完成しますので、yはxの係数として扱います。
    x2+yx+y2
    =(x+1/2y)2-1/4y2+y2
    =(x+1/2y)2+3/4y2≧0
    この式は、前半も後半も2乗の形になっています。
    だから、どちらも0以上の数だとわかります。
    0以上の数同士を足しても、0以上です。
    よって、この式は、0以上です。
    元の式に戻りましょう。
    (x-y)2(x2+xy+y2)
    =(x-y)2{(x+1/2y)2+3/4y2}
    これは、0以上の数と0以上の数の積であることがわかります。
    よって、全体も0以上です。
    左辺-右辺≧0
    左辺≧右辺
    これで証明できました。

    さて、≧のように、等号が含まれている不等式の場合、どんなときに等号が成り立つかを書き添えるのが慣例です。
    (x-y)2{(x+1/2y)2+3/4y2}=0
    は、どんなときに成立するでしょうか。
    前半の( )または後半の{ }の中身が0ならば、積は0です。
    よって、x-y=0 または、x+1/2y=0かつy=0
    となります。
    これを整理すると、
    前半は、x=y です。
    「または」の後のほうは、y=0をx+1/2y=0に代入すると、
    x=0となり、よってx=y=0です。
    これは、前半のx=yの1例と考えることができます。
    よって、等号は、x=y のときに成り立ちます。

    以上が不等式の解き方の基本です。
    因数分解や平方完成を忘れてしまっていると上手くできないかもしれません。
    数学は、積み上げ科目。
    1つの単元が終われば、そのときに使った解法や公式は全て忘れる。
    そういう勉強をしていると段々苦しくなるのは、こういうことがあるからです。

    ただ、1回学習したくらいでは身につかないのも事実です。
    因数分解ばかりしていると、平方完成のやり方を忘れる。
    平方完成ばかりしていると、因数分解のやり方を忘れる。
    また戻って練習して、できるようになって、また忘れて、また練習しての繰り返し。
    それでいいと思います。
    もう無理だ、と諦めてしまう前に、まだできることがあります。






      


  • Posted by セギ at 11:15Comments(0)算数・数学

    2019年08月25日

    数Ⅱ「式と証明」。等式の証明その2。



    今回も「等式の証明」です。

    問題 a/b=c/d のとき、(a2+c2)/(b2+d2)=ac/bd であることを証明せよ。

    前回の問題よりも複雑になってきました。
    このように与えられた式が分数のときは、どう証明すれば良いのでしょうか。
    例えばaについて解いても、その結果は分数になり、しかも文字が3種類残るので、左辺=右辺を示すことは難しそうだと見通せます。
    こんなとき、別の文字に置き換えるというテクニックがあります。

    a/b=c/d=k とおく。
    すなわち、a=bk、c=dk。
    これを代入して、
    左辺=(b2k2+d2k2)/(b2+d2
       =k2(b2+d2)/(b2+d2
       =k2
    右辺=bk・dk/bd
       =k2
    よって、左辺=右辺

    このテクニックは、とても便利ですので、覚えておきたいものです。
    もう1つ問題を解いてみましょう。


    問題 x/3=y/4=z/2‡0 のとき、(x-y)2/(y2+z2) の値を求めよ。

    これも、与えられた式が分数です。
    ということで、これもkを使ってみましょう。
    x/3=y/4=z/2=k とおくと、
    x=3k、y=4k、z=2k。
    これを代入して、
    与式=(3k-4k)2/(16k2+4k2
       =k2/20k2
       =1/20
    わあ、約分でkが消えて、式の値が出てきましたー。
    やはり便利です。
    このテクニックは、忘れた頃にまた別の単元で使うことがあります。

    こうしたテクニックを覚えておきましょうと話すと、
    「でも、数学は暗記科目じゃないし、解き方の暗記じゃダメだと言っていたくせに」
    という反論もあるかと思います。
    勿論、意味もわからず丸暗記しているのではダメです。
    意味を理解した上で、でも暗記もしましょうということなのです。

    意味がわからないのに暗記だけする。
    小学生の頃から、算数・数学はそのような勉強をしてしまう子は多いです。

    例えばこんな問題の場合。

    問題 5/3dLで2/3㎡の壁を塗れるペンキがあります。2dLでは、何㎡の壁を塗ることができますか。

    かけ算なのか、わり算なのか、問題文を見てもわからない・・・。
    この問題は2段階の計算が必要だということもわからず、一度で答えが出ると思い込んでしまう子も多いです。
    この問題は、まず、1dLあたりの面積を求めます。
    2/3÷5/3=2/3×3/5=2/5(㎡)
    だから、2dLでは、
    2/5×2=4/5
    答は、4/5㎡ です。

    このように単位量あたりの問題の数値が分数になると、かけ算なのかわり算なのか、式の立て方が全くわからない場合。
    こうした問題は、わかりにくかったら整数に直して考えてみましょう。
    「4dLで2㎡の壁を塗れるペンキがあります。3dLでは、何㎡の壁を塗れますか」
    1dLあたりの面積を求めるには、
    2÷4
    これがピンとくるようなら、それは整数でも分数でも同じなのだから、単位量あたりを求めるにはわり算だと判断できます。
    ただ、整数に置き換えても、この式が立てられない子もいます。
    わり算は、大きい数を小さい数でわるものと丸暗記している子たちです。
    その子たちは、2÷4 の式を立てることができません。
    小学生の段階で既に、算数は意味を考えて解くものではなく、解き方を暗記して解くものになっている子は案外多いです。
    単位量あたりの学習をするのが、5年生。
    それに分数のかけ算・わり算が加わるのが、6年生。
    それまでに、もう何年も、算数は解き方を暗記するだけになっているのです。

    丸暗記ではなく、意味を考えて解きましょう。
    そういう子に、そのように声をかけても、ほとんど定着しません。
    そのようなアプローチをしたことがないからでしょうか。
    意味を考えて解くということが、よくわからないようなのです。
    いえ。
    それは話が逆で、意味を考えて解くことができないから解き方を丸暗記し、算数がわかっているふりを長い間続けてきたと見るべきなのかもしれません。
    教科書に載っている、2本の半直線に目盛りをつけたもので説明すると、それが整数の間は何とか理解できるのですが、分数になると目が泳ぎ始める子は多いです。
    その半直線の示す、2倍、3倍ということは理解できても、3/2倍、4/5倍といったことが、そもそも理解できない気配も感じます。
    しかし、学校のテストは明日。
    そんなとき、まずいとは知りつつも、私もこんな教え方をしてしまうことがあります。

    まず、2dLで、8㎡の壁をぬるペンキは、1dLでは何㎡の壁を塗れるかという問題を考えてみて。
    それは、8÷2だよね?
    それはわかるよね?
    8÷2をよく見て。
    2は、2dLの2だね。
    1dLあたりの量を求めるとき、dLのついている数字で割っているね。
    単位あたり量を求めるときには、その単位のついている数字で、割るんだよ。
    1dLあたりの量を求めるなら、dLという単位のついている数字で、割るんだよ。
    もしも、1㎡あたりの量を求めるなら、㎡という単位のついている数字で、割るんだよ。
    そうすると、単位量あたりが出るよ。
    それは、いつでも必ずそうなるよ。

    意味を幾度説明しても理解できなかった子が、この説明で見違えるように正答できるようになります。
    わり算は、大きい数÷小さい数。
    そうした、誤った丸暗記からもバージョンアップできます。
    しかし、これもまた新たな丸暗記に過ぎないのかもしれません。
    暗記の魔力は本当に恐ろしい。
    低学年から丸暗記で算数をこなしてきた子は、理解を促してもほとんど進歩しない一方、単なる解き方だけを教えた途端に異様なほど定着するのです。

    今は仕方ない。
    また、復習のときに。
    忸怩たる思いが胸をよぎります。
    あるいは、幾度復習しても、小学生の間は理解できないかもしれません。
    この解き方の意味を理解するのは、もしかしたら大人になってからかもしれません。
    でも、正しい解き方を知っていたら、いつか、必ず理解できる日がきます。


    こんな問題もあります。

    問題 厚さ2㎝の板を用いて、ふたのない直方体の容器を作った。容器の外側の縦が28㎝、横が32㎝、高さが18㎝のとき、この容器の容積は何㎤か。

    この問題で、こういう式を立てた子がいました。
    26×30×17

    厚さが2㎝であることに気づいていないだけだと思い、
    「板の厚さは2㎝だよ」
    と助言しても、その子は、
    「え?容器のときは、縦と横は-2、高さは-1するんだよ」
    と、逆に私に説明しました。
    「・・・それは、板の厚さが1㎝のときでしょう?」
    「え?」
    その後、正しい内のりの長さの求め方を説明しても、理解してもらうまでに長い時間が必要でした。
    この問題には、実際は挿し絵がついていましたので、それを用いながら説明すれば簡単に理解してもらえそうなものでしたが、図の内のりのここからここまでがと差し示して説明しても、しきりに首をひねり、理解できないようなのでした。
    つまり、学校の教科書やテストでは、容器の内のりを自分で求める問題でも、板の厚さは1㎝と決まりきっている場合がほとんどですので、その解き方だけを丸暗記していたのです。
    だから、板の厚さが2㎝になると、もう正しい式を立てられないのです。
    板の厚さが2㎝だから、容器の内のりの縦と横は-4、深さは-2をすることが、理解できなかったのです。
    なぜ引くのか、その根本を理解せず、ただ解き方だけ暗記していたのでした。


    解き方の丸暗記は、文章題だけに限りません。
    計算も丸暗記で処理し、本質を理解していないことは多いです。
    そのため、やり方を間違って暗記している場合は、繰り返し同じことを同じように間違えてしまいます。

    例えば 1/3(9x-2)+1/2(8x-4)

    文字式の計算です。
    そんなに難しくないはずなのですが、間違える子は、ほぼ同じようにこう間違えてしまいます。
    =3x-2+4x-4
    何をどう間違えているのか?
    前半で言えば、1/3と( )の中の9xだけをかけて、-2はそのままにしてしまうのです。
    1/3が( )内の各項に平等にかかっていくことが理解できていない様子です。
    後半も同様です。

    また別の問題。

    2(3x-4)3(2x+7)
     5      2
    ちょっと見にくいですが、5や2が分母である分数だと思ってください。
    これは、分母が異なるので、通分が必要です。
    そこでは、こういうミスをしてしまう子がいます。
    =4(6x-8)-15(10x+35)

    まず、分母を払うために、全体を10倍したのだろうと想像されます。
    これが方程式ならば、左辺と右辺の両方を10倍しても関係は変わりませんが、今回は文字式ですので、全体を10倍することはできません。
    しかし、やり方を丸暗記し、なぜそれをやっていいのか理解していない子は、文字式でも同じことをしてしまいます。
    また、上の答案の場合、前半の分母の5を10にするために、分子の2を×2して4にしたのと同時に、( )の中にも、全て×2をしています。
    後半も同様に、逐一×5をした様子です。

    何でさっきの問題では、( )の中の片方しかかけないという不平等なことをやっておきながら、今度は必要もないところに逐一×2をするのだろう?
    それは、やはり、どういう性質を利用してそれをやっているのか、本質を理解せず、ただ解き方を暗記しているためだろうと思うのです。

    通分ではこのミスはしない子も、例えば方程式の「割合」に関する文章題で作った式を整理するときに、同じ性質のミスをしがちです。
    割合に関する文章題では、下のような形の式になることは多いです。
    (x-1/10)(x-2/10)=7
    これを整理するとき、
    (10x-1)(10x-2)=70
    としてしまうミスは、中学の数学の成績が「4」の子の中にも見られます。
    ( )を1つずつ10倍したということは、全体を100倍したということだから、右辺は700だよと教えても、きょとんとしてしまいます。
    何でそうなるのか、わからない様子なのです。
    説明すると、そのときは理解した表情にはなるのですが、ひと月もすれば、また同じミスをしてしまいます。
    計算上そんなことはあり得ない、ということを感覚的に把握できるほどの深い理解に至らないのです。
    こういう計算はしてもいい、これはしてはいけないと1つ1つ暗記するしかなく、覚えきれずに失敗するのでしょう。
    何かが理解できていないのです。
    しかし、それは言葉で説明してもなかなか伝わりません。
    わかった顔はしますが、忘れた頃にまた同じミスが復活します。

    数に対する正しい感覚がどうして形成されないのか。
    逆に、上のようなミスは決してしない子の、数に対する感覚は、どのように養われたものなのか。
    小学生時代に何をすれば、上のようなミスはしない子になるのか。
    あるいは、中学や高校からでも、どのような学習をすれば、数理の本質を理解できるようになるのか。
    難しい課題です。



      


  • Posted by セギ at 15:08Comments(0)算数・数学

    2019年08月13日

    数Ⅰ「1次不等式」、1次不等式の文章題。


    さて、お盆休みは、文章題を。
    こんな問題です。

    問題 
    25人以上50人以下の団体で目的地に向かうとする。
    電車賃は目的地まで1人420円で団体割引はない。
    バスは1人480円だが、1万円の団体券で25人まで乗ることができる。
    電車で行ったほうが料金が安いのは、人数が何人以上何人以下のときか?

    中学生・高校生に方程式・不等式の文章題を教えていて苦慮するのは、何年経っても最初の1行を書き出せない人がいることです。
    「求める人数をx人とする」
    これさえ書いてしまえば、その次は、ではこのxを用いて問題文の中のどんな数量を表す式を立てようかと、次の段階に進むことができます。
    この書き出しを発想できず、文章題を見た途端に意識が小学生に戻り、どうやって人数を求める式を立てよう、うーん、うーん、うーん、わかんない・・・と考え込んでしまう人は多いです。
    結局、中学の3年間、方程式の文章題の学習になる度にそれを繰り返す人は多いです。
    そのまま高校生になり、たまに出てくるこうした文章題に歯が立たない。
    そうなりがちです。

    xを用いて式を表すことは発想できても、xを定義しない人も多いです。
    文字を用いるのなら、その文字が何であるかを定義する必要があります。
    どんな文字を用いても良いけれど、その文字が何であるかを定義する。
    それは数学の答案の根本ルールの1つです。
    「えー。面倒くさい。そんなの、わかるじゃん」
    と言う人は、その式が間違っていたときに、何をxとしたのか質問されて、すぐに答えられるでしょうか。
    もう一度問題を読み直し、もう一度解き直さないと、xが何であるかわからないのではないでしょうか。
    自分でも、自分の思考の跡をたどれないのです。
    数日後には自分でも思考の跡をたどれないような答案を、他人が見てわかるわけがありません。
    数学の答案は、どのように解いたのかを相手に明瞭に説明するものです。
    それは、何か月経っても、自分の答案を見直したときに、何をどう解いたのかすぐにわかるということでもあります。
    数学答案の根本のルールはそれです。
    どう書いたら良いかわからない・・・。
    そんな質問もよく受けますが、細部の書き方にこれでなければならないという定型があるわけではありません。
    後で意味がわかるように書けば良いだけです。

    問題に戻りましょう。

    求める人数をx人とする。(25≦x≦50、xは自然数)

    とxに関する定義を書いたら、次は不等式の立式です。
    xを求めることに集中し過ぎるあまり、xの値を表す式を立てようとして苦慮する人もいますが、方程式でも不等式でも、式が表す数量は、xを表すものではありません。
    何か他の数量を表すものです。
    「え?式は関係を表すもので、何かの数量を表すものではないのでは?」
    という質問を受けることがありますが、そのように思っていると式は立てにくいです。
    関係を表す・・・というのは、間違っていませんが漠然としています。
    どうやってどんな関係を表すのか、よくわかりません。
    式が何かの数量を表すことを明確に意識していると、立式は楽になります。

    この問題では、勿論、バスを使った場合の料金の全額と、電車を使った場合の料金の全額とを比較して立式しましょう。
    まずはバス料金のほうから。
    25人分の団体料金が10000円。
    それ以外の人は、普通に1人480円を払います。
    その人数は、(x-25)人。
    よって、バス料金の全額は、
    10000+480(x-25)
    と表すことができます。
    一方、電車料金は、常に1人420円ですから、
    420x円
    電車で行くほうが安くなるのですから、不等式は、
    10000+480(x-25)>420x
    これを解きましょう。
    10000+480x-12000>420x
                  60x>2000
                    x>100/3
                    x>33+1/3 ・・・①

    ああ、じゃあ、答えは、34人以上50人以下だ。

    ・・・本当に、それで良いでしょうか?
    ここで、発想の飛躍が必要となります。
    人数分いなくても、団体券を2枚買うことも可能なのです。
    え?そんなのずるくない?
    そんなことしたらダメなんじゃない?
    ・・・いいえ、別に構わないです。
    座席指定券を買い占めて、座る人もいないのに席を確保するということではありません。
    料金は50人分を払うというだけのことです。
    そもそも、そういうモラルの話をしているのでもありません。
    これは、どちらが安いのか、という単純な計算です。
    ただ、何というか、善良な人というかお人好しというか、そういう人はこの発想がなく、この不等式の問題を間違えてしまうことがあるようです。

    団体券を2枚買うことにすれば、バス料金は20000円。
    電車賃は変わらず、420x円。
    ですから、不等式は、
    20000>420x
        x<20000/420
        x<47+13/21 ・・・②

    ①、②より、
    33+1/3<x<47+13/21
    ここで、25≦x≦50、xは自然数だから、
    求める人数は、34人以上47人以下。

    これで最終解答となります。

    気をつけたいのは、答案の最後を、34≦x≦47 で終えてしまう人もいることです。
    勝手に自分でxを使ったのに、それでは終われません。

    どんな文字を使ってもいいが、正確に定義する。
    使った文字は、最終解答には残さない。
    これを守るだけで、答案を見る先生に「お。答案の書き方がわかっているね」と思われます。
      


  • Posted by セギ at 14:53Comments(0)算数・数学

    2019年08月04日

    高校数Ⅱ「式と証明」。等式の証明。その1。


    本日の学習内容は、「等式の証明」です。
    「等式の証明」は、その次の「不等式の証明」と比べればはるかに易しいです。
    ただ、
    「何のためにこんなことを証明しなければならないのかわからない」
    と言う子もいます。
    何のためにと言われても、これは基礎訓練ですから、証明する内容に大した意味はありません。
    この等式が何かを表しているわけではありません。
    このやり方を利用して、大切な公式や定理も証明できますから、まずその基礎訓練をしましょうということです。
    やってみましょう。

    問題 (a2-b2)(c2-d2)=(ac+bd)2-(ad+bc)2  を証明せよ。

    等式の証明は色々な方法があります。
    ①左辺を変形し、右辺と等しいことを示す。
    ②右辺を変形し、左辺と等しいことを示す。
    ③左辺、右辺をそれぞれ変形し、左辺=右辺であることを示す。
    今までの3つは、同じようなことですね。
    さらに、
    ④左辺-右辺=0であることを示す。
    ⑤左辺÷右辺=1であることを示す。
    といった方法があります。
    問題によってどの方法で示すのが楽であるかを判断します。
    上の問題は単純な構造のものですので、③のやり方で大丈夫そうですね。
    ④や⑤で解くことも勿論可能ですが、これらはもっと発展的な問題のときに利用する方法ですので、無理して使う必要はないでしょう。

    では、解いてみましょう。
    左辺=(a2-b2)(c2-d2)
       =a2c2-a2d2-b2c2+b2d2
    右辺=(ac+bd)2-(ad+bc)2
       =a2c2+2abcd+b2d2-(a2d2+2abcd+b2c2)
       =a2c2+2abcd+b2d2-a2d2-2abcd-b2c2
       =a2c2-a2d2-b2c2+b2d2
    よって左辺=右辺となり、等式が成り立つ。

    考え方は難しくないので、これは計算力の問題となります。
    高校2年ともなりますと、計算力は個人個人で大きな隔たりがあります。
    高校1年生までの数学を完璧にマスターしている子もいます。
    高校受験のための勉強は一所懸命やったので中学数学はマスターしているけれど、高校の数Ⅰ・数Aの内容が定着していない子もいます。
    中高一貫校の子や、高校受験の勉強をしてもよく理解できなかった子の中には、中学数学の内容が定着していない子もいます。

    (a+b)2=a2+2ab+b2
    という乗法公式を覚えていないため、上手く展開できない子。
    何度覚え直しても、(a+b)2=a2+b2 というふうにいつの間にか間違えている子もいます。
    中3で学習するこの乗法公式は、普通に展開しても答えが出そうということもあって、本気で暗記しない子がいます。
    次に因数分解の学習をしたときに、この公式は必要だとようやく気づいても、もう変な癖がついてしまっていて、後の祭りということがあります。
    一度間違って覚えてしまったことの訂正は、本当に難しい。
    こんな公式の1つくらい、覚えても覚えなくても大したことないと思っていたら、その後、延々と使い続けることになり、足枷となる。
    数学にはそういうことが多いです。

    また、
    (ab)2=a2b2
    などの指数法則を理解していないため、上手く展開できない子。
    やり方をその都度暗記しようと努めていても、どうしてそうなるのか根本のところで理解できていない様子の子もいます。
    ・・・いや、見たまま、そうなるでしょう?
    数学が得意な高校生にはそういう数理の感覚があるので、このあたりの断絶は大きいです。

    指数の理解の深さ浅さは、高校数学の理解に強い影響を与えます。
    中1の頃から、指数を含む計算は半分以上不正解で、でも、こういう難しいのは自分はまあいいやと思ってきたら、高校数学になって問題が指数まみれになり、にっちもさっちもいかない・・・。

    指数は特にそうですが、それ以外にも、中3の数学・高1の数学を経てきたとは思えない理解度と計算力で高2の問題を解いているように見える子がいます。
    学力が中2の「連立方程式」くらいで止まっている・・・。
    数学が苦手な子は、そういう子が珍しくないのです。
    その先で学習したことは、定期テストを切り抜けるために一夜漬けで何とかやり過ごしたけれど、身についていない。
    忘れてしまっているのです。

    高校数Ⅱで新しく教わる内容が理解できないわけではないのです。
    でも、そのはるか手前の基本となる知識が抜けている子は多いです。
    そのため、自分で問題を解こうとすると正答を出すことができません。
    一方、数Ⅱの問題集の解答解説は、この程度のことは省略し始めるので、間違えても、何をどう間違えたのかも判断できなくなります。

    夏休みなど、比較的時間に余裕があるときに、総復習できると良いですね。
    学校が出してくれる課題だけでなく、中3の薄い問題集を1冊復習。
    その後、学校の数ⅠAの問題集をもう一度解き直すと、当時よりも理解できることに気づくと思います。
    忘れてしまったのなら、反復し、思い出してください。

      


  • Posted by セギ at 16:04Comments(0)算数・数学

    2019年07月26日

    高校数Ⅱ「式と証明」。分数式の計算。



    今回は「分数式の加法・減法」。
    例えば、こんな問題です。

    x-3         x-1
    x2-6x+8  -  x2-2x-8

    分数をこのブログに書き込んでいくのは難しいのですが、大体の感じはつかめていただけたかと思います。

    計算の基本は、数の計算と同じです。
    分数は、分母が等しくなければ引き算できません。
    すなわち、通分が必要となります。
    このまま、(x2-6x+8)(x2-2x-8)という分母にすることでも通分はできます。
    しかし、それは、普通の分数の計算で、例えば分母が6と8だったときに、それを通分するのに48としてしまうようなものです。
    後の計算が煩雑になる悪手です。
    互いの共通因数を考えて通分しましょう。
    それにはまず、分母をそれぞれ因数分解してみます。
    x2-6x+8=(x-2)(x-4)
    x2-2x-8=(x+2)(x-4)
    (x-4)が共通因数であることがわかります。
    よって、通分した後の分母は、(x-2)(x+2)(x-4)
    このように通分するのですから、それぞれの分子は、それまでの分母にはなかった因数をそれぞれにかけて、
    (分子)=(x-3)(x+2)-(x-1)(x-2)
    この後、分子の計算を行います。
    (分子)=x2-x-6-(x2-3x+2)
        =x2-x-6-x2+3x-2
        =2x-8

    これで、分子は2x-8、分母は(x-2)(x+2)(x-4)
    というところまで整理できました。
    普通の分数の計算でもそうですが、計算後は、約分できるかどうかを確認します。
    分子は2(x-4)と整理できます。
    分母の(x-4)と約分できることがわかります。
    よって、解答は、2/(x-2)(x+2)

    単純な計算ばかりなので、前回の多項式の除法とこの分数式の計算は、数Ⅱの学習内容の中では理解しやすいところです。
    ここが最後のオアシスだったと後になって降り返る人も少なくありません。
    しかし、そのオアシスさえ、計算ミスを繰り返して得点には至らない人も多いのです。
    理解できることと、実際に得点できることとは別のことです。
    途中で一度でも書き間違いや符号ミス・計算ミスをしたら、正解には至りません。

    ミスをなくすには、どうしたら良いか。

    ミスは、学力的に安定した状態ではないために起きている場合があります。
    試しに中学数学の計算問題を解き直してみてください。
    心の中でやってみて判断するだけではダメです。
    実際に中学時代の正負の数の計算、文字式の計算、方程式などをそれぞれ20題ほど解いてみてください。
    簡単過ぎる問題ではなく、多少は複雑な計算過程が必要な問題が妥当です。
    そういう問題は全くミスしないのに、高校の数学の問題を解くとケアレスミスが多いという場合は、高校数学の理解が不十分である可能性が高いです。
    高校数学の基本問題を中心に反復し、基礎力を鍛えれば、基本問題での妙なケアレスミス・計算ミスは減っていくでしょう。

    一方、中学時代の計算問題を解いてもやはりミスがあるという場合は、どういうミスをしているのか分析し、過剰書きにしてみてください。
    符号ミス。
    指数の書き洩らし。
    数字の書き間違い。
    問題の写し間違い。
    ひき算ミス。
    たし算ミス。
    「正」の字を書いて、どのミスが多いのか確認すると良いと思います。
    自分のミスを可視化することで、意識し、改善できるかもしれません。

    ただ、おそらくは、どのミスも同じように分散し、多様なミスが多発している場合が一番多いのではないかと思います。
    特にどこが苦手というのではなく、全般的にミスをしやすい。
    それを直視するのはつらいことかもしれませんが、そうであるなら、ミスを含み込んで得点を読んでいきましょう。
    テストの8割の問題を解けるようになっておけば、ミスを含み込んで、6割は得点できる。
    そのようにミスを織り込み済みの得点の読み方をしたほうが、気持ちが安定します。
    そうすることで、むしろ、ミスは減ると思います。

    英語のスペルミスや時制ミスはほとんどないし、古文の助動詞や助詞の紛らわしいのも識別できるし、日本史や世界史の人名や国名も正確に覚えられるけれど、数学は基本問題でもケアレスミスをするので正解できないなあ・・・。
    高校生になれば、そういうことがはっきりと見えてくる人もいます。
    まあ、何というか、数学と相性が悪い。
    数学の正確さとそりが合わない。
    そういうこともあると思います。

    「数学が世の中の役に立っていることを否定するつもりはない。でも、自分が数学を勉強しなければならない意味はわからない」
    昔、極端な文系秀才の生徒からこのように言われて、さすがに言っていることの筋が通っていると感心したことがあります。
    後は、教育システムの問題です。
    数学に関しては、高校卒業に必要な単位のために最低限の勉強をする。
    受験には使わない。
    そういうやり方もあると思います。

    では、どの段階で文系・理系の判断をするのか?
    極端な文系秀才ならば判断しやすいでしょうが、普通の高校1年は自分が文系か理系かの判断はつかない場合がほとんどです。
    高校1年までは、「数学と歴史が得意。国語と理科が苦手」といった判断に窮する傾向の子のほうがむしろ多いです。
    しかし、高校2年で学習する科目は専門性が高まります。
    「得意なつもりでいたけど、ここまでやるとなると、何かもう訳がわからない。無理だな」
    という判断もあるでしょうし、
    「皆は苦手だ嫌いだと言うけど、自分はこの科目好きだな。何か急に面白くなってきた。これを大学で勉強するためなら、受験に必要な他の科目も頑張れる気がする」
    という判断もあると思います。
    高校2年まで数学をやることでようやく判断がつく人が多いと思います。
    この話をすると、さすがは秀才。それもすぐに理解してくれました。

    理系秀才にとって、古文・漢文の授業もまた、
    「古典を貶める気持ちはないが、自分が古文・漢文を学ぶ意味はわからない。自分が原文を読めるようになる必要はないし、読めるようにはならないと思う。内容だけなら知りたいが、それなら現代語訳で十分だ」
    とも言えます。
    高校2年生まで同じ教育課程であるのは、壮大な無駄のような気もする一方、しかし、全ての子どもに平等な機会を与えるという点では、文系・理系の判断は遅いほうが良いでしょう。
    以前も書きましたが、効率だけを考えたあげく、例えば12歳で学力テストを行い、学力が基準に満たない者にはそれ以上の教育は与えず、基準を満たした者はその能力にあわせ、選抜して専門科目のみ教育する、などという仕組みが素晴らしい社会を生むとは到底思えません。
    そんなのは、悪夢でしかありません。
    自分には必要なさそうな数学や古文も勉強するのは、義務じゃなくて、権利です。
    数Ⅱ・Bに対するあまりの違和感に、これはもうダメだと感じる人も、少し距離をおいて、これを学ぶのも自分の権利と考えて楽しんでくれれば、少し光が見えてくるのではないかと思います。

    話は分数式の計算に戻って。


    2x-5    2x2+9x-28
    x-4  -  x2+2x-24

    さて、これも、上の問題と同じように計算していくこともできるのですが、それぞれの分子と分母を見比べて、分子の係数や次数が分母より大きい場合、もっと整理してからのほうが計算が楽にできます。
    普通の分数の計算で言えば、仮分数を帯分数に直して計算するような感覚です。
    ここで、前回学習した(多項式)÷(多項式)の計算が活きてきます。

    (2x-5)÷(x-4)=2あまり3
    (2x2+9x-28)÷(x2+2x-24)=2あまり(5x+20)

    よって上の分数式は、


          3          5x+20
    2 + x-4  -2 - x2+2x-24 

    と整理されます。

    普通の分数の仮分数を帯分数に直すのと全く同じことをやっています。
    そうすることで、整数は整数同士で、分数は分数同士で引けばよいので、かなりスッキリします。
    その後の計算方法は上の問題と同じです。
    分子の次数が抑えられて、計算しやすくなります。

      


  • Posted by セギ at 22:54Comments(0)算数・数学

    2019年07月17日

    小学算数。EXテストの衝撃。


    先日、小学生が教室にEXテスト(エクストラ・テスト)を持ってきてくれました。
    「こんなテストを、前にも受けたことある?」
    と質問しましたところ、去年も何回かこのテストを学校で受けたとのことでした。

    しかし、こうした口頭の情報は、不確かになりがちです。
    私の質問の意図を子どもは正確に把握できない可能性があるからです。
    普通のカラーテストと混同しているかな?
    それとも、本当に去年も何回かEXテストは受けたのかな?
    謎のままです。
    他の学校の小学生に尋ねると、受験生もそうでない子も、
    「知らない」「受けてない」
    という返答ばかりでした。

    それは中3でもまだそうで、例えば、
    「都立高校入試の模試に似ている学力テストを学校で受けましたか?」
    と質問しても、その子は、それがどのテストを指す何であるかを正確に把握できないことが多いです。
    質問の意図がわからないし、都立高校入試の模試というのをまだ受けたことがないので、それに似ているものと言われてもわからない。
    結局、国が実施する学力調査と誤解してしまう子もいましたし、何を訊かれているのかわからないからか、
    「ない」
    と適当に答える子もこれまで何人も見てきました。
    あった、と答えて、では点数は?とさらに問われるのが嫌なので、テストの存在をなるべく隠そうとする気持ちもあるのかもしれません。
    点数を見せたくないという防衛心が働くのか、こちらが訊かない限りどんなテストのことも言わないのです。
    実物を示して、
    「これをもう受けた?」
    と訊かない限り、明確な答えは得られない。
    しかし、私の手元に実物があるわけではないので、質問もあやふやにならざるを得ず、返答はさらにあやふやになるということが繰り返されます。
    とはいえ、中3が学校で受ける模試に似たテストのことは、私が知らなくてもどうということはないので、近年は質問もしないのですが。
    秋以降、校外で受ける本当の模試の結果を見せてもらえれば問題はありません。


    話を戻しますと、EXテストの見た目は、いつものカラーテストとよく似ていました。
    両面カラー印刷で、カラフルです。
    紙の大きさもいつもと同じです。
    違うのは、テストの質。
    思考力・判断力・表現力を見るEXテスト。
    難度が高いです。

    何だろうこのテストは?
    ネットで検索すると、学校教材のサイトに簡単にいきつくことができました。
    小学校1年生から6年生までのテストがあること、国語と算数があることまでは把握できました。
    理科や社会があるのかどうかはわかりません。
    いつ頃から作られているテストであるのかもわかりませんが、今年初めて作られたテストではないようです。

    個人のブログや悩み相談サイトを見ると。
    小1の子がEXテストで0点を取ってきたとか、同じ子が、小2では15点だったとか。
    中学受験生なんだけれどEXテストでもあまり良い点が取れないとか。
    そうした情報が得られました。
    当然ですが、テストそのものがネットにアップされているようなことはありません。
    それは絶対やったらダメなことですね。

    今回、たった1枚、実際に目にした小6算数のEXテスト。
    それだけで把握できることには限りがありますが、並んでいる問題は、中学受験の受験算数の易しい典型題でした。

    受験算数としては基本問題ですが、その基本問題を解けない中学受験生が多いのが現実です。
    そうした子も、受験勉強を始める前は、学校の普通のカラーテストは満点連発だったのかもしれません。
    「算数は簡単だ」という間違った感覚を抱いていた可能性もあります。
    いや、むしろ、保護者の方が、満点連続のカラーテストを見て、この子は算数は得意だと誤解していた可能性のほうが高いかもしれません。
    「間違った感覚」というのは、カラーテストは、基本中の基本が身についているかどうかを検査するものだからです。
    計算の手順が身についているかどうか。
    公式をそのままあてはめる問題を解けるかどうか。
    非常に簡単であるため、内容を理解していなくても作業手順を覚え込むことだけで、満点が取れます。
    思考力はほとんど必要ありません。
    満点連続のカラーテストを見た保護者の方は、まさか自分の子どもの思考力が弱いとは想像もしないと思います。
    だって、現実にテストは満点なんですから。

    多くの子が、学力的に余裕を持って受けることができるのがカラーテストです。
    それが悪いということではありません。
    小学生のうちから、その子の学力的限界をそんなに突きつけなくてもいいでしょう。
    そんなことをしたら、学ぶこと自体が嫌になってしまいかねません。
    本人は「わーい、満点だー」と喜んでいればいい。
    満点のテストを見た大人も、「わあ。また満点だ。頑張ってるねえ」と褒めたらいい。
    しかし、だから、この子は数学的才能があるとか、中学に入っても数学は大丈夫とか、中学受験をしても大丈夫とか、そんなことの判断材料にはならないことを、大人は知っておいて良いと思います。

    学校の算数の問題はよくできるので、中学受験をしても大丈夫なのではないか?
    そうした誤解から起こる悲劇は、枚挙にいとまがありません。
    中学受験の受験算数は、思考力がないと対応できません。
    それ以前は、パッと見てパッと解き方がわかる問題しか解いたことがないのです。
    筋道立ててじっくり考えるということをしたことがないので、どうしたらいいのかわからない。
    パッと見てわからない問題は、その子には解けない問題です。
    結果的に、受験算数は基本問題を解くのも悪戦苦闘となります。
    それまでもじっくりとものを考えてきた子以外はそうなりがちです。

    とはいえ、今は教育技術が進歩していますから、わからないことをわかるように教えることが可能です。
    筋道立てて考えることも、一歩ずつ教えることができます。
    わからないこともねばって、1つずつ解けるようになっていく。
    じっくり考えていく。
    そういう子は、受験勉強の後半でジリジリと学力を上げていきます。

    ところが、「パッと見てパッと解き方がわかる頭のいい自分」というセルフイメージへの固執の強い子もいます。
    じっくりねばって考えるとはどういうことなのわからないだけでなく、そんなことはやりたくないと思っている子もいます。
    自分が上手くできないことは嫌い。
    苦労して考えてやっと答えがわかるなんてダサい。
    パッと見てもわからない問題を解かされると、劣等感を覚える・・・。
    自分の限界を思い知らされるようで、つらい・・・。
    勉強しているように見えても、テキストに載っている問題の解き方を丸暗記しているだけで深い理解はなく、受験算数の問題の周囲を無意味にぐるぐる回っているような状態で、問題の核心に向かってアクセスできないまま入試を迎える。
    そういう子も多いです。
    つまりは能力よりも精神力の問題になりがちですが、まだ小学生ですから、そんなに強い精神力を求めるほうがどうかしています。
    入試のような人生の一大事に直面する時期ではまだなかった。
    時期を選ぶべきだった。
    成長過程において、中学受験が向いている子もいれば、そうではない子もいる。
    誰もが中学受験をすることが有利なわけではない。
    そういうことだと思うのです。

    思考力が弱いというのは、生涯そうであるというような決定事項ではありません。
    思考力も鍛えれば強くなります。
    パッと見てパッと問題の構造をつかむ瞬発力のようなもののある子は、つまり、頭の回転は速いのです。
    ただ、深く思考したことがない。
    ものごとを筋道たててじっくり考えるということをしたことがない。
    それを要求されて応える精神力もない。
    やってもできなかったという形になるのが嫌なので、勉強しない方向に自分を誘導しがちです。
    逃げ道を探すことに頭を使ってしまう・・・。
    才能の無駄遣いをしてしまう子も多いです。

    数学で大きな結果を出している塾や学校は、「じっくり考えることのできる者が最上位」というヒエラルキーが確立されています。
    じっくり考えることでしか解けない問題を考える。
    それを解いた人が称賛される。
    そうした空気の作り方に成功しています。
    大人がそれを強制してもなかなか従わない子も、自分と同年齢の子たちがじっくり考え、そのヒエラルキーに従っている環境にいると、それに従い始めます。
    考える者が最も優れた者であり、称賛される。
    パッと思いついただけのことを言っても正答できないので、誰もが考え始めます。

    EXテスト。
    今の小学校では、思考力をちょっと試し、それを成績つけの参考にすることはあっても、それ以上の活用は難しいと思います。
    問題解説をしたところで、理解でき、類題が解けるようになる子は半分にも満たないでしょう。
    来年度からの、新しい学習指導要領の下では、どうなるのか?
    これは、そのためのテストなのか?

    蓋を開けてみなければわからないことが、まだ多いです。

      


  • Posted by セギ at 11:40Comments(0)算数・数学

    2019年07月10日

    数Ⅱ「式と証明」。多項式の除法。


    今回は「多項式の除法」です。
    中学数学でやっているような気がするのに、意外に一度もやっていないのが、多項式の除法です。

    問題 (x3+3x2-5)÷(x-2) を計算し、商と余りを求めよ。

    これは筆算していくことができます。
    やり方・考え方は数字のわり算の筆算と同じです。

    例えば、764÷6を筆算してみましょう。

    6 )764

    の7と6を見比べて、7の上に「1」という商が立つと判断します。
    その後、1と6をかけたものを7の下に書いていき、そして7からそれを引きます。
       1
    6 )764
       6  
       1

    これと同じことをやっていきます。

    x-2 )x3+3x2   -5

    x3とxを見比べて、x3の上に「x2」という商が立つと判断します。
    そのx2と「割る数」であるx-2とをかけたものを元の式に下に書いていきます。

        x2
    x-2 )x3+3x2   -5
         x3-2x2

    そして、元の式から、今書いたものを引いていきます。

        x2
    x-2 )x3+3x2   -5
         x3-2x2
            5x2

    次に、引き算の結果である「5x2」とx-2を見比べで、商を立てます。
    「5x」という商が立ちます。
    その5xとx-2をかけたものを下に書いていきます。
    そして、上の行から下の行を引きます。

        x2+5x
    x-2 )x3+3x2     -5
         x3-2x2
            5x2
            5x2-10x
                10x -5

    次に、引き算の結果である「10x」とx-2を見比べて、商を立てます。
    「10」という商が立ちます。
    その10とx-2とをかけたものを下に書き、上の行から下の行を引きます。

        x2+5x  +10
    x-2 )x3+3x2     -5
         x3-2x2
            5x2
            5x2-10x
                10x -5
                10x-20
                    15

    よって、商は x2+5x+10、余りは15です。

    「本当にこんなやり方で割ったことになるの?」
    「何でそれで答えが出るのか、意味がわからない」
    という感想の多いところです。

    そこで、ちょっと検算をしてみましょう。
    わり算は、(割る数)×(商)+(余り)=(もとの数)
    で検算することができるのでした。

    (x-2)(x2+5x+10)+15
    =x3+5x2+10x-2x2-10x-20+15
    =x3+3x2-5

    はい。
    もとの式に戻りました。

    やり方は理解できても、最初のうちはなかなか正答できない高校生が多いです。
    ミスしやすい箇所としては、多項式の書き写し間違い。(特に指数と符号)
    上の式の-5-(-20)のような箇所の符号ミス。

    符号ミスは、中学生になって負の数の計算をするようになると同時に始まります。
    答えが負の数になる問題は決して正答できないというくらいに符号を書き忘れる子もいます。
    これを「ケアレスミス」ととらえ、本人が注意すれば解決すると思うのは、しかし、誤りだと思います。
    そもそも、俗にケアレスミスと呼ばれるものが多い子ほど、ケアレスミスの意味を「ちょっとしたミス」などととらえています。
    ケアレスミスは不注意なミスという意味だよと教えると、嫌な顔をします。
    不注意と指摘されることにも傷ついてしまうようです。
    しかし、問題はもっと深刻で、符号ミスは単なる不注意なミスではないと思ったほうが良いと思います。

    小学校では必要なかった負の符号が中学数学では必要になるのに、そのことが知識として身についていない。
    そうとらえたほうが現実に即していると思います。
    つまりは、本人の脳内の根本のところで知識がバージョンアップされていず、いつまでもいつまでも、ついつい気がつくと負の数など存在しないような感覚で数学を解いてしまっているのだと思うのです。
    バージョンアップは、簡単にできる人もいますが、非常に時間のかかる人もいます。

    傍で見ていると、何でそんなに安易に負の符号を書きもらすのか、意味がわからない・・・。
    ぼんやりしているから、そんなことになるのではないか?
    ・・・ついついそう思ってしまいがちですが、本人もミスなどしたくないから一所懸命やっているはずです。
    それで書きもらすとなると、符号に関するバージョンアップがされていないと見るほうが自然です。
    それは、本人が自覚すれば治るというものではなく、脳内でアップデートされない限り同じミスが繰り返されます。

    では、どうすればアップデートされるのか?
    それは脳次第であるところが歯がゆいところです。
    人間の脳は自力ではコントロールできません。
    何で覚える必要があることを覚えられないの?
    何でアップデートできないの?
    そういうこととの闘いです。
    ただ、「数学なんか嫌い」「数学なんかやっても意味ない」と思っている人のアップデートは当然遅いです。
    せめて、自ら数学から遠ざかることだけは避けたいところです。
    結局、練習を重ねることで、脳がアップデートの必要を感じるのを待つしかありません。

    上の多項式の除法でいえば、引き算であるところをたし算してしまうミスも多いです。
    商を立てた後、例えば3x2の下に-2x2という項を書くところまでは上手くできるのですが、下の項に負の符号がついていると、そのままたし算してしまうミスは多いです。
    指摘してもピンとこない様子で、正しい筆算をしてみせるとようやく理解するということがあります。
    これが繰り返されるのは、もはやケアレスミスというものではなく、そこが明らかに理解不足の弱点となっているのです。
    ケアレスミスじゃないぞー。
    明らかな理解不足だぞー。
    そのミス、何度目だー。
    ・・・そのような指摘をするまでもなく、ほぼ全問どこかでひっかかって誤答しますので、さすがに本人の顔色が悪くなってくるところではあります。
    やり方はわかっているのに、幾度解き直しても正解に至らない。
    解き直す度に違う答えは出るけど、正解でないのはなぜ・・・?
    解答が間違っているんじゃないの?
    数Ⅱに入ると、そういうことが本当に増えてくると思います。
    練習不足なんです。
    数Ⅱの問題を正確に解ける計算力が身についていないのです。
    一度でパッとできるようになる人もいます。
    でも、沢山練習する必要のある人もいます。
    そんなのは、スポーツでも何でも普通のことです。

    こういう話をすると、何だ才能の話かと諦めてしまう人もいると思います。
    これは、努力の話です。
    例えば、目の前でやられると非常に煩わしいペン回し。
    小学校高学年から中学生の頃、特に男子の大半は、あれに夢中になります。
    数回で器用にできるようになる人もいますが、なかなか上手くできなかった不器用な人もきっといたはずです。
    なのに、諦めない。
    学校の授業中、延々とペン回しの練習をしましたよね。
    そして、ついに習得しました。
    努力の成果です。
    努力って、実は誰でもできるのですよ。
    努力の方向性はともかく。


    さて、もう1問。

    問題 (a3+2abc+b3-c3)÷(a+b-c) をaに着目して行い、商と余りを求めよ。

    最初の問題との違いは、文字が1種類ではないこと。
    「aに着目して」ということは、aについての文字式とみなし、他の文字は係数や定数項として扱いなさい、という意味です。
    これは、筆算として書くときから順番を意識し、他の文字はaの係数や定数項であるとわかるようにしておくことで解きやすくなります。
    aについて降べきの順に整理して書いてみましょう。

    a+(b-c) )a3     +2bca+(b3-c3)

    a3とaを見比べると、まずa2という商が立ちます。
    その商と「割る数」であるa+(b-c)をかけていきます。

           a2
    a+(b-c) )a3        +2bca+(b3-c3)
             a3+(b-c)a2 

    上の行から下の行を引きます。
    上から次に使う項も下ろしておきます。

           a2
    a+(b-c) )a3        +2bca+(b3-c3)
             a3+(b-c)a2
              -(b-c)a2+2bca

    ここでは、2次の項はもともと存在しなかったところから(b-c)a2を引くので、
    0-(b-c)a2
    =-(b-c)a2
    となることに注意が必要です。
    上からおろしてくる項は、あえて書けば、
    2bca-0
    =2bca
    となりますので、符号は変わりません。
    0から引くことと、0を引くこととは大違いですね。

    次に-(b-c)a2とaを見比べて、-(b-c)aという商が立ちます。

           a2-(b-c)a
    a+(b-c) )a3        +2bca+(b3-c3)
             a3+(b-c)a2
              -(b-c)a2+2bca
              -(b-c)a2-(b-c)2a

    例によって、上の行から下の行を引くのですが、ちょっと複雑で引きにくいですね。
    こういうときは、ノートの横の空欄などを利用して、そこの部分だけ計算すると良いでしょう。
    係数だけのひき算をすれば良いですね。
    すなわち、
    2bc+(b-c)2
    =2bc+b2-2bc+c2
    =b2+c2

    上から定数項も下ろしてくると、

           a2-(b-c)a
    a+(b-c) )a3        +2bca+(b3-c3)
             a3+(b-c)a2 
              -(b-c)a2+2bca
              -(b-c)a2-(b-c)2a
                      (b2+c2)a+(b3-c3)

    次の商は、(b2+c2) ですね。

           a2-(b-c)a +(b2+c2)
    a+(b-c) )a3        +2bca   +(b3-c3)
             a3+(b-c)a2 
              -(b-c)a2+2bca
              -(b-c)a2-(b2+c2)a+(b3-c3)
                      (b2+c2)a+(b-c)(b2+c2)

    最後の定数項のひき算も複雑ですね。
    ノートの空いているスペースで計算しましょう。
    (b3-c3)-(b-c)(b2+c2)
    =b3-c3-(b3+bc2-b2C-c3)
    =b3-c3-b3-bc2+b2C+c3
    =-bc2+b2c

    これが余りとなります、
    よって、商は  a2-(b-c)a+(b2+c2)
    となりますが、整理したほうが見た目がきれいですね。
    ( )を外しておきましょう。
    従って、商 a2+b2+c2-ab+ca
        余り -bc2+b2c
    となります。

    この筆算は複雑ですが、この先、「分数式の計算」や「因数定理」を学習する際にまた利用しますので、必ず身につけておきましょう。
    とはいえ、ネットでは罫線を上手く引けないので、物凄く見にくいと思います。
    全体の板書が上の画像です。

      


  • Posted by セギ at 12:58Comments(0)算数・数学

    2019年07月06日

    ケアレスミスと数学不安症。


    例えば、都立高校の数学の入試問題で、大問3「関数」、大問4「平面図形」、大問5「空間図形」のそれぞれ一番最後の小問は難しいから解けないので、各5点×3=15点は失点するとして、残る85点は取れる。
    そういう得点の読み方をすることがあります。
    あるいは、定期テストは基本問題だけで80点は取れる。
    これに共通しているのは、「基本問題を解くだけで十分な得点」という夢物語です。

    「夢物語」とあえていうのは、現実はそんなに甘くはないからです。
    基本問題をきっちり得点できる学力の人は、応用問題も解けます。
    基本問題しか解けない人は、基本問題もある程度は失点します。
    それは避けられません。

    しかし、基本が身についていないのに、やたらと応用応用という子には、私も冒頭のような説明をすることがあります。
    定期テストで、公式を代入するだけの基本問題や、出題されるとわかりきっている典型題をポロポロ失点しているのに、最後の応用問題がわからなかったことをやたらと残念がる子もいるからです。
    実際の得点は30点台、40点台なのに、最後の応用問題がわからなかったことを、テストが終わると強調するのです。
    テストが返ってきたら反省が大切なのですが、反省ポイントがズレていては、次回も似たような結果になってしまいます。
    正しい反省を促さなければなりません。
    最後の7点の応用問題が解けなくても、他の問題で正答していたら93点です。
    あなたの現実の点とは50点以上差がありますよ。
    その50点は、どこで失っていますか?
    そういう話をします。

    基礎を固めないうちは、応用問題の解説を聞いても、その問題の解き方を「わかったような気がする」だけで、類題を自力で解けるようにはなりません。
    まして、タイプの異なる応用問題には全く対応できません。
    出るとわかっている典型題なら解説もしますし、練習もします。
    しかし、何でこんな応用問題を出すのか出題意図もよくわからない、ただただ難しいだけの問題を解説するのは時間が惜しい。
    今は、そんな勉強をする時期ではない。
    そのことをわかってもらう必要があります。

    1つ考えられるのは、そういう子の心の中では、「わかる問題」と「解ける問題」との混同があるのではないかということです。
    公式を見て代入すれば解ける問題は、本人の中では「わかる問題」=「解ける問題」。
    解説を聞けば理解できる典型題は、本人の中では「わかる問題」=「解ける問題」。
    だから、そういう問題は、本人の中ではOKになっているのではないか?
    学校でテスト解説を聞いてもよくわからなかった、あるいは解説してもらえなかった最後の応用問題だけは、「わからない問題」。
    だから、とても気にかかる。
    とても残念である。
    そういう気持ちなのではないかと思うのです。

    「わかる問題」と「解ける問題」は違います。
    公式を見て代入すれば解ける問題なのは事実でも、その公式を覚えていないし、代入して解く練習もそんなにしていない場合、テストではもたもたし、代入ミスをしがちです。
    それは「解ける問題」にはなっていないということです。

    「わかる」だけではダメで、「解ける」ようにしなければ。
    基本問題だけでも全部解ければ、定期テストは80点ですよ。
    今、目指すのは、まずはそこですよ。
    基本に目を向けてもらうため、そのように言います。


    ただ、私は、基本問題だけ解ける子が実際に80点を取れるとは思っていません。
    その状態では、80点は無理だとわかっています。
    定期テストなら、基本問題だけで配点は80点になる。
    それは事実です。
    しかし、基本問題しか解けない子は、基本問題を全て正答することはできません。
    学力的に余裕がない子は、ミスをします。
    現状が40点ならば、まずは50点、そして60点と順番に上を目指しましょう。
    60点を越えたら、より発展的な学習も行いましょう。


    学校の定期テスト前日に、数学の授業を振替設定することがあります。
    そんなとき、テスト範囲の演習はひと通り終わっていますので、前日に行うのは最終調整です。
    しかし、単なる確認と調整のために解いている基本問題を計算ミスでぽろぽろ失点する生徒もいます。
    テストに必ず出る、易しい問題で失点します。
    解き方はわかっているのに、計算ミスを繰り返し、正答できないのです。
    計算ミスをすればするほど目に見えて動揺していきます。
    そして、さらにミスを重ね、続く簡単な問題もやはり正答できなくなっていきます。
    目の前で見る見る精神的に崩れていく・・・。
    テスト当日だけではないんだ。
    前日で、既にこういう精神状態なのか・・・。


    『しくじり先生』というバラエティ番組があります。
    ゲスト出演する「先生」役が自身の失敗を語る番組です。
    以前、その番組にG・G・佐藤選手が先生役で出演しました。
    北京オリンピックでエラーを繰り返し、日本代表チームが銅メダルすら取れなかった原因の1つと言われている野球選手です。
    日本代表になるほどのプロ野球選手が、ゴロをトンネル。
    さらに、簡単なフライを落球すること2回。
    なぜそのようなことが起こったのかを本人自らが分析し語っていました。

    G・G・佐藤選手は、1つ目のトンネルの後、もうどんな球も取れる気がしない精神状態に陥ったそうです。
    だから、球が飛んでこないことをひたすら願った。
    オリンピックという大舞台。
    自分のエラーのせいでチームが負けてしまうことに怯えた。
    しかし、怯えるほどにそれは明確なイメージになった。
    あんなゴロもトンネルしてしまった自分は、フライなんか取れるわけがないと思ってしまった。
    そして、実際、もう取れなかった。
    プロ野球選手が・・・・・。

    本番に弱い人の精神状態が赤裸々に語られ、しかも、その精神状態のときに技術的にはどのように失敗するのかVTRを見ながら具体的な説明がありました。
    バラエティ番組のはずなのに、ホラーかと思うほど怖い内容でした。

    1つ目のフライは、緊張で手がガチガチに硬まっていた。
    しかも慌てているため、グローブを出すのが早かった。
    そのため、グローブの土手に当たって球を弾いてしまった。
    さらに、サングラスを帽子の上にかけたまま、目にかけるのをずっと忘れていた。
    球をよく目視できていないのに、そのことにすら気がつかなかった。

    2つ目のフライは、大事に行き過ぎて両手で取ろうとした。
    片手のほうが可動域が広く操作しやすいのに、両手で取ろうとして、結局、球をこぼした。
    普段とは違うことをそのときだけやってしまったのです。
    子どもの頃からフライなんかいくらでも取ってきたプロ野球選手が。


    生徒の数学の答案を見ても、テストのときだけ不可解な答案を書く子がいます。
    普段したことがない計算の工夫をして間違えたり。
    普段は、単なる移項すらいちいち丁寧に書いているのに、テストのときだけ左辺と右辺をひっくり返しながら部分的に移項もして、結果、符号ミスをしたり。
    テストでそういうことをしたいのなら普段から練習しておけば良いのに、なぜか普段は丁寧なやり方を変えない子がテストのときだけそんなことをします。
    あるいは、テスト中だけその解き方が正しいのだとなぜか思い込んで、間違ったやり方をしていたり。
    テストのときだけなぜか普段と違うことをしてしまうのです。
    後で冷静になれば何でそんなことをしていたのか本人も理解できないような考えにとりつかれてしまうようです。
    理解不足だった問題をやっぱり間違えているというような、ある意味で安定感のあるものとは印象の異なる、不安定な数学の答案を見ることがあります。


    「数学不安症」という言葉があります。
    1950年代に確認され、近年、アメリカのスタンフォード大学で、数学の問題を見ると脳の恐怖中枢の活動が高まる人が存在することが実証されました。
    イギリスでは全人口の4分の1が数学不安症であると推測されているそうです。
    理解できない数学の問題を見るとき、ヘビを見たときに感じるような恐怖や不安を感じる。
    不安ばかりでなく、実際に身体に痛みを覚える人もいます。
    数学の問題を見ると頭が痛くなったり、お腹が痛くなったりします。
    他の科目ではそのようなことはないのに、なぜ数学だけそのような不安症が出るのでしょうか?

    正解・不正解があまりにも明確で、到達度に関して数値目標が明示されやすいこと。
    子どもの頃から計算スピードや到達度に関して具体的に強い期待をされ、要求されること。
    そうしたことが他の科目とは異なる点ではないかと分析されています。

    確かに、私がこれまでに見てきた、テスト前日で異様に動揺してしまう子は、本人や保護者が漠然と期待している実力と、本当の実力との乖離の激しい子たちでした。
    子どもの頃から強く期待され要求され、特に計算ミス・ケアレスミスについては強めに指摘されてきたのかもしれません。
    お子さんの小学校の算数を見るお母さんは、計算ミス・ケアレスミスに厳しくなりがちです。
    解けない文章題のことを問題視して叱るお母様は少ないと思うのですが、計算ミス・ケアレスミスは問題視する傾向があると思います。
    ここは得点できるのに、と思ってしまう。
    ついつい、そこを強めに指摘してしまう・・・。

    しかし、毎度毎度計算ミスのことを強めに指摘されてきた小学生が計算ミスをしなくなるかというと、そうでもないのです。
    字が雑で、勉強に対する心構えも甘くて、それでミスばかりしているような小学生ならば、中学・高校と本人が成長するにつれて意識が高まり、計算ミスをしなくなることが期待できます。
    しかし、小学生の頃から、字は丁寧だし、ノートの取り方もしっかりしているのに、なぜか計算ミス・ケアレスミスが多いという子の場合、中学・高校と進むにつれて、指摘されればされるほど、むしろミスは増えていくように感じます。
    学年が上がるにつれて、本人が余裕をもって解くことができる問題は減っていきます。
    期待に応えてテストで高い得点を取ることは、年々難しくなっていきます。
    親からの期待。
    本人のプライド。
    そうしたものが混沌としている中で、
    「失敗してはいけない」
    となったとき、むしろミスをする土壌が出来上がってしまうのでしょう。

    ここで複雑なのは、計算ミスの多い子が、それを直視し、それを自分の課題としてとらえているかというと、むしろそれは本人の中で表面化していないことが多いのです。
    自分がミスをしやすい人間であると認めることは、非常に自己評価を下げる・・・。
    そういう気持ちがあるのかもしれません。
    前述のように、計算ミスをしやすく、基本問題で得点することも心もとない子が、応用問題にこだわるのを見ると、そのように感じます。
    子どもの頃から繰り返し注意されてきたケアレスミスのことを、本人は表面的には自覚していないように見えるのです。
    自分は他人よりはミスが少ないほうだとすら思っているように感じられます。
    そして、応用問題が解けなかったことばかり、強く意識しています。

    ただ、無意識のレベルでは、自分がミスをしやすいことはわかっていると思うのです。
    その影のような不安が、さらにミスを誘い込んでいるのかもしれません。
    テストのときに、気持ちが不安定になり、さらにミスをしやすくなるのです。
    ケアレスミスは、本人が不注意に問題を解いているから起きているとは限りません。
    真剣に解いていても、計算過程で1つ指数を書き洩らしたら、もう正解には至りません。
    心が不安定であるため、正確さ・完璧さを保つことができないのです。
    問題が、本人にとって心の負担になっているほど難しい。
    実は根本のところがあまり理解できていない。
    しかし、それを認められない。
    周囲も認めてくれない・・・。

    計算ミスは、計算ミスだけが課題なのではありません。
    本人の現在の実力と、頭の中で本人が思っている理想の実力との乖離。
    そのことからくる、勉強のやり方のまずさ。
    尽きない不安。
    そこに課題があると感じます。

    多様なミスを多発している人は、ケアレスミスを除外して、「本当は何点取れた」=「自分は何点の実力」と評価する傾向があります。
    保護者の方がそのような得点の読み方をしていることもあると思います。
    だから、実際の得点と自己評価とがいつまでも一致しません。
    本来やるべき、基本問題を何も見ないで自力で解く練習を、ろくにしないでテストを受けています。
    応用問題ばかり気にしています。
    しかし、本当は基本問題を解けないことに、常に影のような不安がさしています。
    そのような状態でテストを受けて、良い結果が出るはずがありません。

    特に高校生で数学の得点が低い場合、理由は明らかに勉強不足なのです。
    学校の問題集をノートに解くことがテスト勉強の全てになっていることは、繰り返しここで書いてきました。
    基本問題すら公式や解答解説を見ながら解いているので、練習になっていません。
    そして、問題集の発展問題や章末の演習問題を何とかノートに解くことに非常に多くの時間を使っています。

    「学校の問題集のB問題の難しいもの、発展問題、章末の演習問題は、3分考えてわからなかったら、赤ペンで解答解説をノートに丸写しして提出しなさい。意味を考える必要はない。式は解説を見ても、計算だけは自分でやろうと思う必要もない。丸写しをしなさい。その代わり、例題とA問題を解答解説を見ないでもう一度解きなさい」
    高校生の場合は、たったそれだけの指示で、テストの得点が目に見えて改善していくことがあります。
    60点までなら、それで上がります。
    60点取れる力がついてから、B問題、発展問題、章末演習問題に目を向けても遅くはありません。

    それでは間にあわなくなるのでは・・・?

    ・・・何に?
    基本も身に着かない今の勉強をしていて、では何に間に合うのでしょう?

    しかし、数学不安症的な子は、このような指示に従うことができない子が多いです。
    やはり、不安なのでしょう。
    それでは、間に合わなくなる・・・。
    あるいは、そんなことをしたら学校の先生に叱られるか目をつけられると思っている子もいます。
    定期テストで30点台の子が応用問題を赤ペンで丸写ししたノートを提出することを問題視する高校の数学の先生なんていません。
    その代わりに例題やA問題をもう1度解いているならなおさらです。
    しかし、そこでも障壁となるのは、実態と乖離した高い理想自己なのかもしれません。
    そうして、解答解説を読んでも意味のわからない発展問題・章末演習問題に時間をかけ、公式を上手く使えない不安定な状態でテストを受け、指数の書き洩らしや符号ミスを多発し、基本問題が8割を占めるテストで惨敗します。
    そして、テストの後は、ケアレスミスした問題は得点できた問題として加算し、捕らぬ狸の皮算用を繰り返します。

    そんなことをしているから、内心の不安が消えない。

    誰にも彼にも基本・基本・基本という教え方には私は懐疑的です。
    小学生や中学生には、その子の現在の学力で理解できる限界まで応用問題を解かせます。
    「同じ問題集を全問3回解き直し」
    といった、写経のような学習方法は、生徒よりも先に私がうんざりしてしまいます。
    解ける問題を3回解いても意味がありません。
    特に公立中学の教科書準拠ワークの基本問題は簡単過ぎて、基本問題を3回解いても定期テストには対応できません。
    そのレベルで良いと思っていると、定期テストの問題は解けません。

    しかし、高校生は違います。
    高校生は、学校の問題集の基本問題を何も見ないで自力で解く学力に至っていない子が多いのです。
    高校数学の基本問題は、彼らにとって基本問題ではありません。
    しかも、そのことに気づいていない。
    あるいは、認められない。
    それでは、不安が消えないでしょう。

    まず自分の不安の正体を見つめましょう。


      


  • Posted by セギ at 13:35Comments(0)算数・数学