たまりば

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2020年12月02日

高校数Ⅰ「三角比」の学習の終わりに、学習が突然瓦解する話。



今回は、「三角比」を学習していて、さあいよいよこの単元の最終目標というところで、それまで学習を積み上げてきたことが一瞬で瓦解した話。
教える者としては、ホラーに類する話です。
もう5年以上前の話です。
会話は、大体こんなふうだったと当時のことを思い出して復元しています。

問題 円に内接する四角形ABCDがあり、AB=4、BC=5、CD=7、DA=10である。
(1) cosAを求めよ。
(2) 四角形ABCDの面積を求めよ。

その前の週の授業で、三角形・四角形の計量の問題の解き方をひと通り解説し、演習もしたので、大丈夫と思って出した宿題でした。
しかし、この宿題が引き金を引き、それまで学習した全てが瓦解したのです。

上の問題は、いきなり「四角形の面積を求めよ」という出題形式でもいいのです。
(1)で、まずコサインを求めよとしてあるのは、だから、大きなヒントです。
解答者にとっては親切な問題だと思います。
いきなり面積と言われても何をどうしていいかわからないけど、コサインを求めよと言われたら、まずそれを考えます。
次に、求めたコサインの値を活用することを考えれば、問題がほぐれてきます。

大丈夫と思い込んでいた私は、上機嫌で答え合わせを始めました。
「(1) の答は?」
「2/5」
「・・・え?どうやって求めたの?」
「普通に求めた」
「・・・え?式は?」
「式なんかない。2/5」
「・・・どういうこと?」

この問題は、cosAを求めるまでに、どんなに省略しても、10行程度の答案が必要です。
しかし、その子のノートには、答しか書かれてありませんでした。

「暗算したらダメだよー。どのように解いたかを書いていくのが、数学の答案なんだよー」
「暗算はしてない。4/10だから、2/5」
「・・・4/10?」

4/10って何だろう?

問題の図を眺めて、私は気づきました。
「cosAを、AB/ADで求めたの?」
「そう!」
褒めてもらえることを期待しているのではないかと感じるほどに明るい声です。
「・・・△ABDは、直角三角形ではないよ」
「え?」
「直角三角形ではないから、コサインを辺の比で求めることはできないよ」
「え?」

これはちょっとした勘違い。
すぐに修正が可能。
そのとき、私はまだそう思っていました。
しかし、それは間違いでした。

その子は、憮然とした顔で言いました。
「直角三角形でもないのに、何でコサインが求められるんですか」
「・・・え?」
「三角比は、直角三角形で使うものなんだから、これは直角三角形でしょう?」
「え?」

え?
この子は、何を言っているの?

「直角三角形でなくてもサインやコサインを使うために、今までの長い学習があったんですよ」
「はあ?三角比は、直角三角形でしょう?」
「違う。違うよ」
「違いませんよ!」
顔を真っ赤にして、その子は怒りだしました。
怒りたいのはむしろこっちでしたが。

前週の授業まで、正弦定理も余弦定理も、三角形の面積の公式も、普通に理解し、普通に問題を解いているように見えたのです。
なぜ、たった1週間で、こんなことになったのか?
もう、「三角比」の単元は終わるのに。
定期テストはもうすぐなのに。
何で全崩壊のようなことが突然起こったのだろう?


振り返れば、最初から、少しの違和感はあったのでした。
まず、三角比の基本を学習するときに、三角比を角度と混乱していたのが第一段階。
sinA=60° といった不可解な答案を初期の頃に書くことがあったのです。
「違うよ。サインは、直角三角形の辺の比だよ。角度のことではないんだよ。sin60°=√3/2 というように、Aのところに角度が入って、sinAは、辺の比なんだよ」
「・・・」
理解しづらい様子で、その子は無言で顔をしかめていました。

次に、三角比の拡張。
直角三角形を離れ、鈍角の三角比を求めたときの違和感が第二段階でした。
その子のノートには、必ず単位円が描かれ、動径の左側に、直角三角形が描かれていました。
「・・・その直角三角形は、描かなくていいんですよ。鈍角の三角比は、その左側の直角三角形の辺の比ということではないよ。ここで、三角比の定義は変わったでしょう?三角比はここから定義し直されたんだよね?」
「学校の先生が、必ず描けと言った」
「必ず?その左側の直角三角形を?学校の先生が?そんな話、聞いたことがないよ」
「・・・」
「それは、三角不等式の問題のときは、必ず単位円を描いて解きなさいという話じゃないのかな?鈍角の三角比を求めるだけの問題で、いちいち単位円は描かないでしょう?」
「・・・」
学校の授業のほうが少し先に進んでいて、三角方程式、三角不等式の学習まで進んでいることは授業の初めに確認してありましたので、多分そういうことだろうと想像されました。
それに対しては、納得することがあった様子でした。
鈍角の三角比、そして三角比の拡張ということについても、静かに話を聞いてくれました。

その後、正弦定理・余弦定理の学習に入ると、公式に代入するだけということもあってか、むしろ抵抗感はなくなり、するすると問題を解くようになっていました。
前週は、三角形の面積の求め方について学習し、そしてその発展である、円に内接する四角形の計量も、難なくこなしているように見えました。

もう「三角比」の学習は終わる。
今日は空間図形と三角比について学習し、後半は定期テスト対策に入れる。
そのように思っていた矢先のことでした。
その子は、突然、三角比は直角三角形でしか使えないという思いにとりつかれてしまったのです。

その子は言いました。
「直角三角形でないなら、どうやってコサインを求められるんですか!」
「どんな場合でも三角比を使えるように定義し直したでしょう?三角比は、角度ごとに固有の値で、その三角形の辺の比ということではなくなったよね。じゃあ、テキストを開いて。鈍角の三角比のところ」
「三角比は、直角三角形の辺の比のことですよ!」
「うん。最初はそうなの。でも、三角比はとても便利だから、どんな角度でも、どんな三角形でも使えるように、定義し直したよね?」

そこで、鈍角の三角比のページに戻って解説をしました。
想像した通り、その子は、鈍角の三角比は、動径の左側、第2象限に描いた直角三角形の辺の比と誤解していました。
それは違うと以前も私は強調したつもりだったのです。
しかし、人は、自分の理解とは異なる情報は聞き流すことがあります。
静かに聞いてくれていたからといって、理解していたわけではなかったのでしょう。
そして、三角比の学習の終わり間際になって、自分の考えを憤然と主張し始めたのです。
今さら自分が理解していたことが覆されるのは嫌だという気持ちもあったのかもしれません。

まっさらな状態で三角比の拡張について学習するよりも、誤解した後に正しく理解するのは、困難を極めました。
「鈍角に三角比なんてないですよ!直角三角形じゃないんだから!」
「うん。そうなんだけど、だから、定義をし直したの。半径1の単位円の円周上の点Pの座標を(x , y)とするとき、サインは y の値、コサインは x の値になるでしょう。そのように定義し直すと、鈍角でも三角比を求めることができます」
「でも、さっきの問題の三角形は、鈍角三角形じゃないじゃないですか!」
「鋭角三角形か、鈍角三角形か、まだわからないですね。でも、鋭角でも、鈍角でも、とにかく、三角比は、角度ごとの固有の値で、その三角形の辺の比じゃないんですよ。だから、どんな三角形でも三角比は使うことができるんです」
「三角比は角度のことじゃないって、前に言ったじゃないですか!」
「・・・はい。三角比は角度のことではないです。その角度ごとに固有の値です」
「何の値なんですかっ」
「・・・」

突然、初期化されたかのように、三角比は直角三角形でしか使えない、と主張し始めた生徒。
なぜ、このようなことが起こったのでしょう?

宿題で解いた、円に内接する四角形の問題は、∠ABDが直角に見えないことはないのでした。
そのように見えるというだけで、実際は直角ではないのですが。
とにかく、直角に見える。
コサインは、辺の比。
そのように思って、宿題を解く。
その気持ちのまま、寝る。
その睡眠中に、脳は知識を整理する。
三角比は直角三角形の辺の比。
そのように整理し直されたのではないかと想像します。
睡眠中に、脳の初期化が行われたのだと思うのです。

では、この宿題さえ出さなければ、そのようなこと起きないのでしょうか?
いいえ。
根本の原因は、その子が三角比のことを、本当は理解していなかった、ということに尽きるのです。
わかっていないこと、誤解したまま済ませてきたことは、いつか何かのきっかけで噴出します。
1つの単元の最初に学習したことは、印象深い。
しかし、途中で学習することは、復習していないと忘れてしまい、知識が抜け落ちていきます。
途中がもろくなっていたのです。
三角比の拡張のことも、正弦定理や余弦定理も、三角形の面積の公式も、記憶から消えかけていたのだと思います。
そんな状態で応用問題を解いたので、一気に瓦解したのでしょう。

前週に類題を解いたノートは、残っていました。
それを見るよう促すと、しぶしぶその子はノートを開き、じっと見つめました。
自分の字で、正しい解き方が記入されてあるノート。
想像もしていなかった複雑な解き方で方程式を立て、ようやくコサインの値にたどりつく、その解き方。
「・・・わからない・・・」
と彼はつぶやきました。
「何で余弦定理を使うんですか?」
「コサインの値を求めたいなら、余弦定理を使うだろうというのが、最初の発想の糸口ですよね」
「余弦定理って、何なんですか?」
「・・・コサインと、三角形の3辺の関係を表している定理です」
「何でそんなことが言えるんですか?」
「・・・余弦定理の証明ということですか?」
「はい」
「余弦定理の証明は、学校で学習したから大丈夫だと、前に言っていましたよね?」
「・・・」

定期テストが近いのに、今更、定理の証明をしなければならないのか・・・。
定理の証明はテストには出ないことは、数回のテストで確認してありました。
高校の定期テストは、定理の証明ではなく、その定理をどう活用するかを問う問題が出題されるのが普通です。
共通テストの出題傾向を鑑み、今後は変わっていくかもしれませんが。

私は、余弦定理を証明するための図を板書しました。
座標平面を描いて、△ABCを、頂点Aが原点にくるように描く。
頂点Bはx軸上。
頂点Cから、辺ABにおろした垂線の足をHとする。
A(0 , 0)、B(c , 0)。
そして、C(b cosA , b sinA)。
しかし、それを説明するには、直角三角形の辺の比を用いることになります。

「・・・やっぱり、直角三角形じゃないですか!」
「うん。直角三角形のときは、辺の比で、サインやコサインを表してもいいんです」
「直角三角形だって、どうやってわかるんですか!」
「点Cから垂線をおろしたんですから、直角です」
「直角じゃなかったら、どうするんですか!」
「・・・直角にしたんだから、直角ですよ」
「そんなの、わからないじゃないですか!」
「・・・」

理解したい気持ちが半分。
でも、私を言い負かしたい気持ちも半分。
もう、訳がわからなくなっているようでした。

余弦定理の証明は、何通りかありますが、どれも複雑な過程があります。
その過程を一応はたどることができたところで、ああそうだったのか、とスッキリするとは限りません。
高校で学ぶ定理なんて、大半がそうです。
小学校で学習する三角形の面積の公式のように、見ればよくわかりスッキリするというようなものではありません。
実感を伴うことは滅多にありません。
理屈が通っているから、それで正しいようだ。
正しいらしいから、使おう。
大半の高校生が、そうやって定理を使っていると思います。

わからない、わかりたくない、という気持ちで見ていたら、余弦定理の証明は、わからないです。
証明がわからない。
だから、定理も使えない。
ひと通り余弦定理の証明を解説しても、その子が納得していないのは、表情からありありと見てとれました。

もう、三角比の何もかもがわからなくなってしまった子。
近づいている定期テスト。
約2か月かけて少しずつ学習し積み上げてきた単元の、最後の最後に来て、一気に瓦解しました。
全崩壊。
何で今更・・・。
徒労感と焦りで、私は頭を抱えたくなりました。

その前の「2次関数」の単元のときは、平方完成の仕組みを理解するところから、本当に苦労しました。
それに比べたら、今回の三角比は、かなりスムーズに学習が進んでいた印象がありました。
しかし、むしろ、そのほうがまずい状態だったのかもしれません。

「定期テストが近いですよ。どうですか。余弦定理は、このように証明できるものです。正しいものです。だから、使ってみませんか?」

わからないのに使っても、仕方ないじゃないですかっ!

そのような反抗も予想しましたが、さすがに、それはありませんでした。
定期テストが近い。
このままでは、まずい。
それは、本人にもわかったのだと思います。


もう一度、最初の問題を見てみましょう。

問題 円に内接する四角形ABCDがあり、AB=4、BC=5、CD=7、DA=10である。
(1) cosAを求めよ。
(2) 四角形ABCDの面積を求めよ。


余弦定理は、コサインと三角形の3辺の関係を表した定理です。
四角形では使えませんから、上の図のように、頂点BとDを結び、2つの三角形に分けて考えます。
しかし、ここで気づきます。
余弦定理からコサインを求めるには、3辺の長さが必要。
しかし、まだ、辺BDの長さがわからない・・・。

ここで、1つのテクニックを用います。
BDは、△ABDにとっても、△BCDにとっても、三角形の1辺です。
共通の辺です。
それを利用して、方程式を立てることができます。

△ABDにおいて、余弦定理より、
BD2=AB2+AD2-2・AB・AD・cosA
  =16+100-2・4・10cosA ・・・①
また、△BCDにおいて、余弦定理より、
BD2=BC2+CD2-2・BC・CD・cosD
ここで、四角形ABCDは、円に内接する四角形です。
円に内接する四角形の対角の和は180°です。
和が180°である2つの角のコサインは、絶対値が等しく符号は正負が逆となります。
よって、
BD2=BC2+CD2-2・BC・CD・(-cosA)
  =25+49+2・5・7・cosA ・・・②
①、②より、
116-80cosA=74+70cosA
-150cosA=-42
cosA=42/150=7/25
これが、(1)の答です。


次に、(2)を考えましょう。
四角形ABCDの面積です。
これは、△ABD+△BCDで求めればよいことはすぐ発想できると思います。
三角形の面積を求めるには、2辺の長さと、その間の角のサインの値が必要です。
では、まず、サインを求めましょう。
(1)で cosAを求めてありますから、そこからサインの値を求めることができます。
三角比の相互関係の公式を利用します。
sin2A=1-cos2A
   =1-49/625
   =576/625
よって、
sinA>0 より
sinA=24/25
和が180°である2つの角のサインの値は等しいので、
sinC=24/25
よって、
四角形ABCD
=△ABD+△BCD
=1/2・AB・AD・sinA+1/2・BC・CD・sinC
=1/2・4・10・24/25+1/2・5・7・24/25
=36
四角形ABCDの面積は、36です。


5年ほど前のこの出来事を、私はほとんど忘れていました。
先日、同じテキストのこの問題を宿題に出した際、同じところを同じように間違えて解いてきた子がいました。
学習の初期の段階で、sinθ=60° といった不可解な答案を書いてきたことも同じ。
しかし、その後、逆に不思議ほど学習が順調に進んでいたのも同じでした。
そして、三角形や四角形の面積を求める頃になって突然、この混乱が起こりました。
三角比は、直角三角形の辺の比。
直角三角形でしか、使えない。
なぜ、直角三角形ではない三角形でサインやコサインを使っているのか?

正直、ぞっとしました。
また、全崩壊か?

「いや。落ち着いてね。三角比は、直角三角形の辺の比から離れて、どんな角度でもサインやコサインを求められるんだよね。あなたは、先週までそれをよく理解して使っていたじゃないですか」
「・・・あ」
「うん。思い出したね。良かった。あなたは、三角比が、よくできる。すごくよくわかっている」
「はーい」
足元に開いていた奈落をすっと跳び越えて、その子は、正しい解き方で、その問題を解き直し始めました。

今回は生徒を呑み込むことのなかったその奈落。
しかし、それは変わらず存在していました。
どうすれば、その奈落は消えるのだろう?
その答は、まだ見つかっていません。

  


  • Posted by セギ at 11:25Comments(0)算数・数学

    2020年11月19日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。円の方程式の応用。円の極線に関する問題。


    今回は、ちょっと難問です。
    わかっていれば、簡単な解き方があるのですが、少し理解しにくい問題です。
    「円の極線」という用語は習わないかもしれませんが、学校の問題集のB問題あるいは発展問題としては出題されていることの多い問題でもありますす。


    問題 点(5,6)から円 x2+y2=9 に引いた2つの接線の接点をP、Qとするとき、直線PQの方程式を求めよ。

    まずは、普通に発想できる地道な解き方で考えてみます。
    直線PQの方程式を求めるには、点P、Qの座標がわかればいい。
    その考え方で、まずは2つの座標を求めてみます。

    点(5,6)を通る、円x2+y2=9 の接線の接点を(p,q)とおく。
    この接点は、円上の点であるから、
    p2+q2=9 ・・・①
    また、点(x1,y1)を通る接線の方程式は、x1・x+y1・y=r2 だから、
    px+qy=9 ・・・②
    ②の直線は、点(5,6)を通るから、代入して、
    5p+6q=9
    これを変形して、
    5p=-6q+9
    p=-6/5q+9/5 ・・・③
    ③を①に代入して、
    (-6/5q+9/5)2+q2=9
    これを計算します。
    36/25q2-2・6/5・9/5q+81/25+q2=9
    61/25q2-108/25q+81/25=9
    61q2-108q+81=225
    61q2-108q-144=0
    解の公式で解きましょう。
    q=(54±√2916+8784) / 61
    =(54±30√13) / 61
    この2つの値を③に代入すると、pの値も2つ求めることができます。
    よって、接点は、
    (45+36√13 / 61 , 54-30√13 / 61) と、
    (45-36√13 / 61 , 54+30√13 / 61)です。
    この2点を通る直線は、直線の式の公式に代入すれば、求めることができます。
    式が煩雑なので、変化の割合の公式で、傾きだけ先に求めてみましょう。
    さすがに、ネットで表示するには煩し過ぎるので、答だけ書くと、
    この直線の傾きは、-5/6 となります。
    計算過程が鬱陶しいわりに、シンプルな答となります。
    そこで、傾きが-5/6で、点(45+36√13 / 61 , 54-30√13 / 61)を求める式を立て、計算します。
    これも計算過程が非常に鬱陶しいので省略しますが、
    y=-5/6x+3/2
    という式を求めることができます。
    このままでも構いませんが、全体を6倍して整理しておくと、
    5x-6y-9=0 
    です。

    求めることはできるのですが、上の解き方は、ネットに書き込むこともできないほどに煩雑な計算過程があります。
    試しに紙に書いて実際に解いてみてください。
    計算してみると、その煩雑さは、ひどいものです。
    途中のどこかで、符号ミスや計算ミスをおかす可能性が高いです。
    もっと、楽な求め方はないものでしょうか?

    あるのです。
    手品のように簡単な解き方があります。
    しかし、理解しづらい点もあります。
    一度の説明では理解してもらえず、「え?」と声を出す生徒が多いです。
    詭弁を弄された。
    何かおかしい。
    そう感じるらしいのです。

    もう一度問題を見てみましょう。

    問題 点(5,6)から円x2+y2=9 に引いた2つの接線の接点をP、Qとするとき、直線PQの方程式を求めよ。

    先ほどの解き方でも使いましたが、
    円 x2+y2=r2 上の接点(x1 , y1)における接線は、x1・x+y1・y=r2
    という公式があります。
    この公式については、以前に解説しました。

    今回の解き方も、まずはそれを使います。
    2つの接点の座標を、P(p , q)、Q(s , t)とします。
    上の公式を利用すると、それぞれの接線は、
    px+qy=9
    sx+ty=9
    となります。
    これらが、点(5 , 6)を通るから、代入すると、
    5p+6q=9 ・・・①
    5s+6t=9 ・・・②
    これは、2点P、Qが、直線5x+6y=9 上にあることを示しています。
    したがって、直線PQの方程式は、
    5x+6y=9

    ・・・はい?
    今、何が起きたの?

    生徒は呆然とし、以後、授業が先に進まないことがあります。


    ①、②の2本の式を求めたところまでは、理解できると思います。
    その後の、「これは、2点P、Qが、直線5x+6y=9 上にあることを示している」が謎。
    そういう感想の人が多いのではないかと思います。
    ここのところで、何か理屈がくるんと裏返る印象があるのでしょう。

    接線の式を求めて、そこに代入して得た式なのだから、これは接線の式だ。
    そこにとらわれ、脳が惑わされてしまうのでしょう。
    ①、②の2本の式は、接線の式ではありません。
    x も y もないのに、接線の式のわけがありません。
    ①、②の式は、接点P、Qの x 座標と y 座標がどのような関係にあるかを示している式です。
    p と q、そして s と t のそれぞれの関係を表している式です。
    この2点の x 座標と y 座標は、
    5p+6q=9
    5s+6t=9
    という同じ構造の関係を満たしています。
    だとしたら、この2点を通る直線は、
    5x+6y=9
    となります。

    それでも、まだよく呑み込めない、という場合。
    では、接線の式ということを離れて、こんな問題だったら、どうでしょうか?

    問題 2点(p , q) , (s , t)があり、
    5p+6q=9
    5s+6t=9
    の関係を満たすことがわかっている。
    2点を通る直線の式を求めよ。

    先ほどの問題の印象がまだ残って、それにとらわれて、これもまた「わからない」「わからない」となってしまう人もいるかもしれません。
    しかし、ごく単純な気持ちで、この式を見てください。
    直線の式は、ax+by+c=0 という形のものです。
    今、定数 c を右辺に移項するなら、
    ax+by=-c
    です。
    その x と y に、この直線上の具体的な点の座標が入ります。
    今、上の(p , q) , (s , t)が、x と y の具体的な中身です。
    具体的な中身というわりに、文字なのがやや難点ですが。
    1点(p , q)だけなら定まらない。
    しかし、2点ともが、
    5p+6q=9
    5S+6t=9
    と、同じ数を用いた関係である場合、この2点を満たす式は、
    5x+6y=9
    以外にはないでしょう。

    逆に考えてみると、さらにわかりやすいかもしれません。
    5x+6y=9
    という直線の式があるとします。
    その直線上の2点(p , q) , (s , t)の座標を用いて、式を立てろと言われたら、
    5p+6q=9
    5S+6t=9
    という式を立てるのではありませんか?

    では、逆に、
    5p+6q=9
    5S+6t=9
    という関係を満たす2点(p , q) , (s , t)を通る式は、
    5x+6y=9
    以外にありえないでしょう。
    2点を通る直線の式は、1本しかありません。
    これ以外の式が、成立するわけがないのです。

    ・・・脳が揺れる。

    以前、この問題を解説したとき、このような感想を述べた高校生がいました。
    悪くない感想だと思います。
    脳が揺れる。
    何か騙されている気がする。
    でも、何をどう騙されているのかは、わからない。

    何も騙していないですよ?

    1つわかりやすい混乱の要因としては、円外の点(5 , 6)から、円x2+y2=9にひいた接線の式を、
    5x+6y=9
    と誤解してしまうこと。
    5x+6y=9
    をこの円の接線と感じて、「それは求める答ではない」と除外してしまうようなのです。

    円x2+y2=r2 上の接点(x1 , y1)を通る接線の式は、
    x1・x+y1・y=r2
    です。
    しかし、この公式のどこに何を代入したら良いのかで混乱しやすい人がいます。
    そうした人は、この式が、円外の点(5 , 6)を通ると言われたときにも、
    5x+6y=r2
    という式を立ててしまうのです。
    式のどこに何を代入するかで混乱してしまうのです。
    点(5 , 6)を通る接線に関連して成立可能な式は、
    5x1+6y1=r2
    なのですが、xとx1、yとy1は何が違うのかよくわからず、あるいは見間違いを起こして、混乱してしまうのでしょう。
    だから、そういう人にとって、
    5x+6y=r2
    は、何がどうなっても接線の式なのだと思います。
    そういうこともあって、思考は、迷宮に入っていくようです。

    「それは違うよ」
    と根拠をもって指摘されたとき、自分の考え違いに気づき、「あっ」と声をあげてすぐに改善できる人もいます。
    しかし、一度間違えてしまうと、そこは違うと指摘されても、迷宮に入っていく人もいます。

    DVDやブルーレイに、一度録画するともう上書きできないタイプのものと、繰り返し消去したり録画したりできるものとがあります。
    それに似て、一度間違えると、もう上書きできない脳の癖というものがあるのだろうかと不審に感じることがあります。

    自分が何をどう間違えたのか、なかなか納得できないだけではありません。
    時間が経つと、自分が間違えたことのほうを正答と誤認したのか、同じところを同じように間違い続ける人もいます。
    幾度解いても、同じことを同じように間違えます。
    これは、学習上の大きな障壁となります。
    意識して取り除きたい障壁です。

    本当は納得していないから、そういうことが起きているとも考えられます。
    現代の子は、対人関係をとにかく気にしますから、納得していないのに、わかったふりをすることがあります。
    とにかく、今のこの場面だけを穏便に切り抜けたいと思うからなのか、わかったふりをしがちです。
    しかし、本当はわかっていなかったので、自分で問題を解くときにそれがぶり返すのでしょう。

    対人関係ばかり気にしてわかったふりをすると、むしろ、後日、同じところを同じように間違えていることに先生は眉を寄せ、対人関係は逆にピリピリする、という可能性もあるのですが、とにかく問題を先送りしたいという気持ちがあり、そうなってしまうのかと想像します。

    別に何度同じところを間違えてもいいですし、何度でも説明するのが教える者の仕事ですが、それよりも、わからないことは、わかったふりをせず、最初から「わからない」と声を上げたほうがいいのです。
    不思議なもので、
    「わからない」
    と生徒が声を上げた瞬間に、人間関係は逆転するのです。
    わかるように説明できない先生が悪いのですから。
    本当のことを口にした方が、常に圧倒的に強いのです。


    円外の点(p , q)から、円x2+y2=r2にひいた接線の2つの接点を通る直線は、
    px+qy=r2 
    です。
    これを、円の極線と呼びます。
    このとき、点(p , q)を、円の極点と呼びます。
    これは、ただ丸暗記するのではなく、なぜそうであるのか、理屈を理解してください。

      


  • Posted by セギ at 11:22Comments(0)算数・数学

    2020年10月29日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。円の接線の方程式。


    今回は、円の接線の方程式です。
    まずは、公式を確認しましょう。

    円 x2+y2=r2 上の点A(x1 , y1)における接線の方程式は、
    x1・x+y1・y=r2

    証明しましょう。
    この円の中心は原点Oです。
    まず点Aが、x軸・y軸上の点ではないとき、
    直線OAの傾きは、y1/x1 となります。
    また、接線は、円の半径である線分OAと垂直ですから、接線の傾きは、
    -x1/y1 
    となります。
    垂直に交わる直線の傾きの積は-1だからです。
    よって、求める接線は、傾きが -x1/y1 で、点(x1,y1)を通る直線ですから、
    y-y1=-x1/y1(x-x1)

    これを変形しましょう。
    両辺にy1をかけて、
    y1(y-y1)=-x1(x-x1)
    展開すると、
    y1・y-y1の2乗=-x1・x+x1の2乗
    移項して、
    x1・x+y1・y=x1の2乗+y1の2乗
    ここで、点Aはこの円上の点だから、(x1,y1)は、この円の方程式の関係を満たすので、
    x1の2乗+y1の2乗=r2
    よって、
    x1・x+y1・y=r2
    これが、接線の方程式です。

    なお、点Aが、x軸上にあるとき、接線の方程式は、円の半径より、
    x=r または、x=-r です。
    上の公式に代入した場合、
    (x1,y1)=(r,0)のとき、
    rx+0・y=r2
    rx=r2
    x=r
    また、(x1,y1)=(-r,0)のとき、
    -rx+0・y=r2
    -rx=r2
    x=-r
    となり、上の公式を用いてよいことがわかります。

    点Aがy軸上にあるときも同様に、代入すると、
    y=r または、y=-r
    という式を得ることができます。


    さて、公式を証明できたので、練習してみましょう。

    問題 円x2+y2=25がある。
    (1) 円上の点(2,√21)における接線の方程式を求めよ。
    (2) 円外の点(1,7)からこの円にひいた接線の方程式を求めよ。

    (1)は、接線の公式に代入するだけですね。
    x1・x+y1・y=r2 に代入して、
    2x+√21y=25
    これでもう答です。

    (2)は、接点がわからないことに注意が必要です。
    公式に(1,7)を代入しても、別の式が出来てしまうだけです。
    公式を使うだけというわけにいきません。
    では、求める式を、何か文字を使って表すことはできないでしょうか?
    求める式は、接線ですから、直線の式です。
    情報としては、点(1,7)を通ることはわかっています。
    直線の公式を思い出してみると、傾きか、あと1点の座標を文字にすれば、仮の式を立てることができそうです。
    どちらでもいけそうですが、傾きを文字に置いたほうが簡単そうな気がするので、それでやってみましょう。

    求める接線の傾きをmとすると、点(1,7)を通ることより、
    y-7=m(x-1)
    これを整理すると、
    y-7=mx-m
    -mx+y+m-7=0
    mx-y-m+7=0

    あとは、このmの値を求めればよいのです。
    mを使った、何か別の方程式を立てましょう。
    使っていない情報は・・・。
    円の半径をまだ使っていない!
    円の中心Oとこの直線との距離が、円の半径5であることを利用できそうです。
    点と直線との距離の公式に代入して、
    |-m+7|/√(m2+1)=5
    両辺に√(m2+1)をかけて、
    |-m+7|=5√(m2+1)
    両辺を2乗して、
    (-m+7)2=25(m2+1)
    m2-14m+49=25m2+25
    -24m2-14m+24=0
    12m2+7m-12=0
    (4m-3)(3m+4)=0
    m=3/4 , -4/3
    よって、求める接線は、
    y-7=3/4(x-1)を整理して、y=3/4x+25/4
    y-7=-4/3(x-1)を整理して、y=-4/3+25/3

    この2本の式が、答です。


    ところで、上の接線の公式、中心が原点の円のときですが、もっとそれ以外の点が中心の円でも使えないでしょうか?
    そういう公式もあります。

    中心が(a,b)、半径がrの円、すなわち、
    (x-a)2+(y-b)2=r2 上の点(x1,y1)における接線の方程式は、
    (x1-a)(x-a)+(y1-b)(y-b)=r2

    これは、平行移動で考えます。
    上の円をC: (x-a)2+(y-b)2=r2 とします。
    この円を中心が原点になるような平行移動すると、
    円C': x2+y2=r2
    となります。
    この平行移動により、接点A(x1,y1)は、A'(x1-a , y1-b)に移動します。
    この点A'における円C'の接線は、公式により、
    (x1-a)x+(y1-b)y=r2 です。
    この接線をもとに位置に平行移動しましょう。
    x軸方向にa、y軸方向にbだけ平行移動すれば戻ります。
    よって、求める方程式は、
    (x1-a)(x-a)+(y1-b)(y-b)=r2
    です。
    途中でよくわからないところがあった人は、おそらく、平行移動のところが曖昧になっていると思いますので、見直すと、意味がわかると思います。

    問題 円(x-1)2+(y-2)2=25上の点(4,6)における接線の方程式を求めよ。

    上の公式に代入すれば求められます。
    (4-1)(x-1)+(6-2)(y-2)=25
    これを整理します。
    3(x-1)+4(y-2)=25
    3x-3+4y-8=25
    3x+4y=36
    これで答です。

    では、こんな問題は?

    問題 円x2+y2-2x-4y-4=0に接し、傾きが2である直線の方程式を求めよ。

    与えられた円の方程式を整理しておきましょう。
    (x-1)2+(y-2)2=4+1+4
    (x-1)2+(y-2)2=9
    よって、この円の中心は(1,2)、半径は3です。

    さて、求めるのは接線です。
    直線で、傾きが2であることがわかっていますから、文字を用いて、
    y=2x+n とおきましょう。

    nを求めるために、何か方程式を立てたいです。
    円の中心と直線との距離は、円の半径のことですから3です。
    これが使えそうです。
    y=2x+n を整理すると、
    2x-y+n=0
    これと点(1,2)との距離は、
    |2-2+n|/√(4+1)=3
    これを計算すると、
    |n|=3√5
    n=±3√5
    よって、求める直線の式は、
    y=2x±3√5

    できました。

    こういう問題が苦手な人は、とにかく、何か文字を使って、求めたい式を表しておき、その文字に関する方程式を立てるんだ、という解き方の流れを把握しておくと、何をしたらよいか、指針が見えてくると思います。
    解き方を丸暗記するには、問題のバリエーションが多いです。
    1問1問暗記しても、テストは別の形式の問題が出題されるかもしれません。
    覚えるべきは、解き方の指針です。
    そして、どんな公式や定理を使うことが多いのか、です。
    接線の公式は勿論ですが、これまでに学習した直線の式や、点と直線との距離など、よく使う公式を把握しておくと発想しやすくなります。


      


  • Posted by セギ at 12:33Comments(0)算数・数学

    2020年10月20日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。円の方程式。円の弦の長さ。



    今回は、円の弦の長さを求める問題です。

    問題 直線 y=x+2 が円x2+y2=5 によって切り取られる弦の長さを求めよ。

    上の図のように、円と直線の交点をA、Bとおくと、求める弦の長さは、線分ABです。
    これを求めればよいのですね。

    求めようと思えば、点A、Bの座標を求めることはできます。
    直線と円の方程式を連立すればよいのですから。
    そうやって2点の座標を求めてから、2点間の距離を求めることはできると思います。
    最悪、その求め方も視野に入れておくとして、他にもっと簡単に求める方法はないでしょうか?

    ここで、点Oと点A、Bを結び、△OABを考えてみます。
    線分OA、OBは、それぞれ円の半径ですから、OA=OBです。
    ということは、△OABは二等辺三角形です。
    二等辺三角形・・・。
    二等辺三角形の定理というと・・・。

    ここで、「2つの底角は等しい」しか思い浮かばない人が多いのですが、案外よく使うもう1つの定理があります。
    「二等辺三角形の頂角の二等分線は、底辺を垂直に2等分する」
    というものです。
    図形が苦手な人に、二等辺三角形の定理を言ってもらうと、こちらの定理を言える人はほとんどいません。
    よく使う大切な定理を活用できる状態で記憶していないので、問題を解くことができないのです。
    幾度それで失敗しても、時間が経つと、またこの定理を忘れています。
    この定理、本当によく使いますから、覚えておいてください。

    頂角の二等分線をひき、線分ABとの交点をMとしましょう。
    定理の通り、AM=BMとなります。
    また、∠OMA=∠OMB=90°です。
    △OMAは、直角三角形。
    三平方の定理が使えます。
    OMとOAの長さを求めれば、AMの長さを求めることができます。
    それを2倍すれば、ABの長さとなります。

    やってみましょう。

    OMは、円の中心O(0,0)と、直線ABとの距離ですから、点と直線との距離の公式に代入しましょう。
    直線x-y+2=0 との距離ですから、
    OM=|2| / √1+1=√2
    また、OAは、円の半径ですから、円の方程式より√5 であることが読み取れます。
    よって、△OMAにおいて三平方の定理より、
    AM=√5-2=√3
    AB=2AM=2√3
    これが答となります。

    この問題は典型題で、よくテストに出ます。
    自力で発想できなかった場合は、この解き方のテクニックを覚えておきましょう。
    数学の問題の解法テクニックを覚えておくことは、解き方の丸暗記というのとは少し違います。
    使いまわしが効く覚え方をしておくことは、必要なことです。
    発想のヒントになります。
    他の問題で、この解き方を使えるかもしれません。
    定理を頭に入れておくことと同様に、数学の問題を解くために必要なことです。
    自力で解き方を発想できない人は、定理やテクニックが頭に入っていないことが多いのです。
    使える武器が頭の中にないのに、発想できない、どうしたら解き方を思いつけるようになるのか、と悩んでいます。
    頭の中にないものは、発想できないと思います。
    誰でも、無から有を生み出しているわけではありません。
    発想は空から降ってくるものではなく、自分の中の知識を組み合わせるのです。
    頭の中にあるものから発想するのです。

    頭の中にある武器が有機的につながっていて、網の目のように張っている人ほど、発想しやすいです。
    どうすれば網の目を張れるかといったら、それは問題を解いた経験値を上げていくのが一番です。
    自分で考えてみる。
    試行錯誤してみる。
    そうした思考の痕跡が網の目の1つ1つになります。
    急にスラスラ解けるようになる発想法や頭の使い方があるのだろうにそれを誰も教えてくれないと嘆くより、自分の頭を使って考えてみましょう。
    使えば使うだけ、頭の中の網の目は張ります。


    ところで、最初の発想に戻って。
    点A、Bの座標を求めれば、2点間の距離を求められる。
    この発想にちょっとこだわってみましょうか。
    とはいえ、円と直線との交点です。
    分子に平方根のある分数になる可能性が高く、嫌な予感がしますが。

    y=x+2 と、x2+y2=5 を連立して、
    x2+(x+2)2=5
    x2+x2+4x+4=5
    2x2+4x-1=0
    明らかに、因数分解はできないですね。
    解の公式を用いましょう。
    x=-2±√4+2 / 2
    =-2±√6 / 2

    点Aのx座標が-2-√6 / 2 で、Bのx座標が-2+√6 / 2 です。
    そして、それぞのy座標は、y=x+2 に代入して求めることができますから、
    A(-2-√6 / 2 , 2-√6 / 2)、B(-2-√6 / 2 , 2+√6 / 2) 
    となります。
    この2点間の距離ですから、2点間の距離を求める公式に代入します。
    手書きならば普通に書いていけばよいのですが、ネット上では見た目が煩雑になるので、途中はちょっと省略します。
    x座標の差の2乗+y座標の差の2乗が、2点間の距離の2乗です。
    x座標の差の2乗は、6。
    y座標の差の2乗も、6。
    よって、2点間の距離の2乗は、12。
    2点間の距離は、√12=2√3 です。

    落ち着いて丁寧に計算すれば、正解に至りますが、やはり、煩雑でした。
    この発想で、もう少し計算が簡単になる方法はないでしょうか?
    さらに考えてみましょう。
    2次方程式といえば、解と係数の関係。
    これを使うのは、どうでしょうか。

    点Aのx座標をα、点Bのx座標をβとおきます。
    これは、先ほどのように、y=x+2 と、x2+y2=5 とを連立して整理した方程式である、
    2x2+4x-1=0
    の2つの解です。
    解と係数の関係より、
    α+β=-2、αβ=-1/2
    となります。
    また、y=x+2 に代入すると、点A、Bの座標は、
    A(α , α+2)、B(β , β+2) と表せます。

    2点間の距離の公式を、ただし2乗のままで表すなら、
    AB2=(β-α)2+{(β+2)-(α+2)}2
    =(β-α)2+(β-α)2
    =2(β-α)2

    ここで、
    (β-α)2=(β+α)2-4αβ ですから、
    AB2=2{(α+β)2-4αβ}
    =2{(-2)2-4・(-1/2)}
    =2(4+2)
    =12
    よって、AB=√12=2√3 となります。

    解をいったんα、βと置くのも、よく使う手法ですが、解くことができるという確証が得られないと、なかなか使う気になれないかもしれません。
    しかし、数学の問題で、最初から解くことができるという確証を得られることは少ないです。
    大抵の場合、見切り発車です。
    ダメだったらまた別の解き方で解こうと思う人たちが、試行錯誤を繰り返し、数学を得意になっていきます。


      


  • Posted by セギ at 12:35Comments(0)算数・数学

    2020年10月12日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。円と直線の位置関係。


    今回は、円と直線の位置関係。
    こんな問題を解いてみます。

    問題 円 (x+4)2+(y-1)2=4 と直線 y=ax+3 が異なる2点で交わるとき、定数aの値の範囲を求めよ。

    円と直線が、2点で交わる。
    これはイメージしやすいですね。
    この問題の解き方は、2通りあります。

    1つめ。
    「異なる2点で交わる」と言われると、思い出すことがあると思います。
    判別式です。
    数Ⅰで、放物線と直線が異なる2点で交わるときなどに、判別式を用いました。
    同じ考え方が使えます。

    円と直線が2点で交わるということは、円の方程式と直線の方程式を連立したときに、交点のx座標を表す数値、すなわちxの解が2つあるということです。
    ということは、その方程式の判別式は、0より大きいということです。

    y=ax+3を(x+4)2+(y-1)2=4に代入して、
    (x+4)2+(ax+3-1)2=4
    x2+8x+16+a2x2+4ax+4-4=0
    (a2+1)x2+(4a+8)x+16=0
    これが異なる2つの実数解をもつことから、
    判別式D/4=(2a+4)2-16(a2+1)>0
    4a2+16a+16-16a2-16>0
    -12a2+16a>0
    3a2-4a<0
    a(3a-4)<0
    0<a<4/3


    2つ目の解き方。
    円の中心と直線との距離が、円の半径と比べてどうであるか、という考え方でも解くことができます。

    円の中心と直線との距離が、円の半径より長いならば、円と直線は交わりません。
    円の中心と直線との距離が、円の半径と等しいならば、円と直線は接します。
    円の中心と直線との距離が、円の半径より短いならば、円と直線は2点で交わります。

    実際に図を描いて考えれば、それはそうだなと納得のいくことだと思います。
    この考え方を使って解いてみましょう。
    まず、円の中心と直線との距離を求めます。
    点と直線との距離の求め方の公式を使うことができます。

    点(x1 , y1)と、直線ax+by+c=0との距離dは、
    d=Ιax1+by1+c|/ √a2+b2 でした。

    直線y=ax+3 は、ax-y+3=0 と変形できます。
    この円の中心は、式から(-4,1)です。
    よって、
    d=|-4a-1+3|/ √a2+1
    これが、円の半径2より小さいのですから、
    |-4a+2|√a2+1<2
    両辺に√a2+1をかけると、
    |-4a+2|<2√a2+1
    両辺を2乗して、
    16a2-16a+4<4(a2+1)
    16a2-16a+4<4a2+4
    12a2-16a<0
    3a2-4a<0
    a(3a-4)<0
    0<a<4/3

    無事に、同じ答となりました。

    この2つの解き方は、どちらでも好きなほうで良いのですが、好みは分かれるかもしれません。
    判別式のほうは、数Ⅰの放物線と直線の交点の問題のときにも、なぜ判別式を使うのかよく理解できなかった人もいると思います。
    そういうものだと諦めて解き方を暗記した人は、ここでまた亡霊に出会ったような気持ちになるでしょう。

    放物線とx軸との共有点の個数の場合は判別式を使うこともギリギリ理解できるけれど、放物線と直線の共有点の個数を判別式で判断できることは、どうにも理解できない。
    苦痛でたまらない。
    放物線と直線を連立した式が、何を表しているのか理解できない。
    つらい。
    そういう人もいたと思います。
    今回、その放物線が円になったからといって、急に理解できるというものではないでしょう。
    ますます訳がわからない、となっても不思議ではありません。

    円と直線を連立した式は、何を表しているか?
    円の式と直線の式のどちらも満たすxの値がどのようなものであるかを表しています。
    それはつまり、円と直線の交点のx座標が何であるかを表しているということです。
    xの値を求めたいとき、連立方程式は代入法にしろ加減法にしろ、1本の式にします。
    その式が何を表しているのかといえば、両方の式を満たすxの値はどのようなものであるかを表しています。
    そして、そのxの値が、2個あるのか、1個あるのか、0個なのかは、その式の判別式でわかります。

    ところが、こういうことが一瞬理解できても、またすぐに思考が混濁し、わからなくなる、という人は多いです。
    つながったと思った瞬間、わかりかけたことが遠ざかり、消えていきます。
    一瞬つかみかけたことが、幻のように遠ざかっていく。
    余程の天才でない限り、この先はこうしたことの繰り返しで、私はそんなことにもロマンを感じたりします。
    幻のようだけれど、一瞬つかみかけた。
    きっと、またつかむことはできる。
    そう思って考え続けていく、その過程が楽しいのです。

    一瞬でも理解できたような気がするだけでも上出来だと思うのです。
    一瞬の理解を繰り返し、頭の中に筋道を作ること。
    もどかしいようでいて、大事なことだと思います。

      


  • Posted by セギ at 11:49Comments(0)算数・数学

    2020年10月05日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。円の方程式。その3。式の中の文字の値の範囲。



    これを書いている現在、高校1年生には「2次方程式の解の個数」に関する問題を指導しています。
    例えば、こんな問題です。

    問題 方程式 x2+6x-2k+1=0 の実数解の個数を求めよ。

    これは、判別式で識別する問題です。
    判別式D>0 ならば、実数解は2個。
    判別式D=0 ならば、実数解は1個。
    判別式D<0 ならば、実数解なし。
    と判別できます。

    判別式 D/4=9-(-2k+1)>0 とおくと、
    9+2k-1>0
    2k>-8
    k>-4

    よって、
    k>-4 のとき、実数解2個。
    k=-4 のとき、実数解1個。
    k<-4 のとき、実数解なし。


    数Ⅱを学習している今なら、こんな問題で済んでいた数Ⅰの頃が懐かしい・・・と遠い目になる人も多いかと思います。
    あの頃、この程度のことを、なぜ難しいと感じていたのだろう・・・。

    しかし、初めてこの問題を解く高校1年生の抵抗感はすさまじいのです。
    5分おきに判別式の解説に戻ってしまうこともあります。
    kについての不等式を立てて解こうとすると、また、
    「何で判別式を使うんだっけ?」
    と言い出すからです。
    ようやく、判別式を使うことは納得できても、解いている途中で、x と k が混ざる・・・。
    方程式を解くのなら、x について何かを求めるのだという意識が抜けず、本人が途中で k を x に書き間違えてしまうこともあります。
    そして、自分の書いた x に自分で混乱して、訳がわからなくなっていきます。
    方程式は x について解くものなのに、k についての、しかも「不等式」を立てている理由が、また一瞬でわからなくなるのです。
    え?
    何のために何でこんな式を立てたんだっけ?
    そこでまた判別式についての解説が必要となります。
    ・・・結局、1問解くために、同じ解説を5回ほど行い、30分以上かかることもあります。

    そもそも、kで場合分けして解の個数を答えるという、答え方そのものが理解しづらい様子です。
    ・・・これで、解いたことになるの?
    方程式は、x について解くものなのに、何で k のことをごちゃごちゃやっているの?
    これじゃ、方程式を解いてないじゃん!
    そんなの、ダメじゃん!
    そういう内心の不満を解決できないようなのです。

    また、こういうのは「超」応用問題だと感じている様子も見られます。
    自分が理解する必要はないんじゃないの?
    こんなのテストに出ないでしょう?
    そうした疑問を抱いているのか、理解しようとする意欲も低いのです。
    x 以外は全て数字の、「以下の2次方程式を解け」という計算問題なら楽しそうに解くのですが、上のような文字kが含まれる問題になると、極端にテンションが低くなる子もいます。
    わからないだけでなく、わかる必要がないと思っていないだろうか・・・?
    そんな心配をしてしまうのです。

    これは、別に応用問題ではありません。
    この先の数学は、こんな問題のほうが多いのです。
    去年までのセンター試験の過去問も、2次関数に関する問題は、x 以外の文字も式に含まれている問題が出題されていました。
    それが「センターレベル」と呼ばれるものでした。
    単純な計算問題なんて、入試には出題されないのです。
    それは共通テストも同様でしょう。
    方程式でも不等式でも関数でも、高校数学では、x 以外の文字が式の中にあって当たり前なのです。
    文字の値の範囲を求めたり、それの範囲によって場合分けしたりする問題は、定番の問題です。
    しかし、これが標準だと説明しても、初めて高校数学を学ぶ子にとって、そんな話は大げさな脅しに過ぎないように感じるのかもしれません。

    高校数学へのぬぐいがたい抵抗感と違和感。
    最近、それを、久しぶりに目のあたりにしています。
    ここ1~2年、数学センスのある高校生ばかり教えていたことに改めて気づかされました。
    この感覚を忘れていました・・・。
    x 以外の文字が出てきた瞬間にアウトな子のほうが、実は多いのでした・・・。

    そんな問題ばかり解いて、苦労して、苦労して。
    やがて、数Ⅱを学習するようになり、さらに苦労して苦労して。
    もう本当にわからない、もうダメだ、とため息をついて。
    そんな高2の夏休みに、学校から出された数ⅠAの復習の宿題が、案外簡単であることに気づいた人もいると思います。
    難しさに対する耐性が増したのです。
    何だ、この程度のことで、難しい難しいと言っていたのか。
    この程度で済むなら世の中平和だ。
    そういう思いで数ⅠAの復習をし、数ⅠAならいける、数ⅠAなら入試に使えるという手応えを得た高校2年生もいると思います。

    そして、この先を学習するなら、数Ⅱだって、これで済むなら世の中平和なのです。
    慣れることは、案外重要なことです。
    難度に慣れること。
    難しい問題と格闘した後、基本問題を解くと、本当に易しくて、心にしみてくると思います。



    さて、数Ⅱに戻ります。
    円の方程式です。
    今回は、こんな問題を。

    問題 方程式x2+y2+2px+3py+13=0 が円を表すとき、定数 p の値の範囲を求めよ。


    x や y 以外に p が出てきても、数Ⅱをここまで学習してきたのですから、もう平気ですよね?
    とりあえず、この方程式を標準形に直してみましょう。

    x2+y2+2px+3py+13=0
    (x+p)2+(y+3/2p)2=-13+p2+9/4p2
    (x+p)2+(y+3/2p)2=13/4p2-13

    これが「円」であるための条件とは?
    右辺は、半径の2乗を表しています。
    であるなら、右辺は、正の数です。

    ・・・わかった!
    13/4p2-13>0 です。
    これが、定数 p の値の範囲です。
    よし、この不等式を解きましょう。

    13/4p2-13>0
    13p2-52>0
    p2-4>0
    (p+2)(p-2)>0
    p<-2 , 2<p

    これが答です。


      


  • Posted by セギ at 11:27Comments(0)算数・数学

    2020年10月01日

    中学受験をするかどうか。


    お子さんを中学受験させるかどうかで、判断に迷い、塾に相談にいらっしゃる方がたまにいらっしゃいます。

    大手の塾は、そんな場合、とにかく受験する方向に持っていくかもしれません。
    受験することにしたほうが、何だかんだとその後の授業を増やすことが可能です。
    夏期講習だ、勉強合宿だと、さらにお金のかかるサービスも提案できます。
    中学受験をしない小学生の保護者にそうしたメニューを提案したところで、乗ってくる場合はほとんどありません。
    受験してくれたほうが、塾にとっては利益があるのです。
    保護者と話すのは、「教務」であって、講師ではありません。
    営業成績が給料やボーナスに反映する職種です。
    もう絶対に中学受験はするべきだという話になっても仕方ありません。

    実際、どんな学力の子も、受験して悪いことはないのです。
    私立中学は、勉強のできる子が通う中学だけではありません。
    平均以下の学力の子の通う中学もあります。
    生徒の学力にあった基礎力重視の授業をしますので、卒業する段階では、平均以上の学力になることもあります。
    勉強以上に大切なことを、その学校で学ぶこともできます。
    生きる力。
    自己肯定感。
    勉強以外の才能。
    大切なことは、学業成績以外にもあります。
    何が幸いするかなんて、後になってみなければわからないのです。
    塾は、無駄で無意味な「商品」を詐欺のように売りつけているわけではありません。


    とはいえ、無駄な商品を売りつけられるのではないか、と警戒する人の気持ちもわかります。
    可能であるなら受験を考えたい。
    そうした場合の中学受験が、名の通った中高一貫校か、最終学歴として納得できる大学の附属中学に限定されている方もいらっしゃると思います。
    それが無理なら、公立中学でいい。
    だから、我が子の学力を、客観的に知りたい。
    しかし、大手の塾にそんなことを相談したら、営業トークでたちまち受験することになって、後悔するかもしれない。
    大手の塾が主催する無料の全国学力テストも、その後の電話勧誘が予想されて鬱陶しい。
    そういうことからは逃れたい。
    しかし、本当のことが知りたい。
    そういう気持ちの保護者の方もいらっしゃるだろうと思います。


    そうした問い合わせをいただいて体験授業をする場合には、私は、例えば、こんな問題を解いてもらいます。


    問題 0から9までの数字を1つずつ書いた10枚のカードがあります。
    このカードを組み合わせて、2けたの数を5組作ります。
    5組の2けたの数の和が、もっとも大きい奇数になるのは、どのような場合ですか。
    5組の2けたの数をすべて答えなさい。


    生徒には、問題を黙読してもらった後、わからない言葉があるかどうかを、まず訊きます。
    4年生ならば、「奇数」「和」といった言葉の意味を知らないこともあります。
    「2けた」がわからない場合もあります。
    それは、説明します。
    説明が理解できるかどうか、その様子も見ます。
    言葉の意味がわかったうえで、この問題の意味がわかるのかどうか?

    小学生の中には、カラーテストのパターン化された問題を、頭で考えることもほとんどなくパッと式を思いついて解いているだけで、問題文をじっくり読む習慣のない子も多いのです。
    こうした、多少複雑な指示がなされている問題文を読み取ることができない子もいます。
    そうした子が受験算数を勉強する場合、かなり苦しいことになるのは予想できます。

    この問題は、6年生でも正解できない子が多いのです。
    受験勉強をしていない子は、ほとんど正解できません。
    だから、不正解でも別に構いません。
    見たいのは、この問題に向かう姿勢です。

    「考える」ということが、何をどうすることか、わかっている子なのかどうか。
    学校のカラーテストでは良い点を取っていても、「考える」という行為をしたことのない子もいます。
    問題を読んで、考えるふりは一応しますが、何をどうして良いか、全くわからないのです。
    パッと見て解き方がわかる問題しか解くことができません。
    何をどう考えていいのかわからないので、パッと見てわからなければ、あとはぼんやりしています。
    考えているふりはしても、何も考えていません。
    早く答を教えてくれないかなあと思っているだけです。
    5分、10分と時間が経てば、そわそわし始めます。
    もう飽きてしまっている様子が見てとれます。

    ・・・それでも受験したいのなら、するべきです。
    そこからは、保護者の決意の問題です。
    受験勉強はつらいものになると思いますが、勉強をする過程で、「考える」ということは何をどうすることかを学ぶことができれば、それは大きな収穫です。
    最終的に望む結果にはならなくても、受験勉強は決して無駄ではありません。

    10分後、1つヒントを出します。
    「和が大きいということは、2桁の数の1つ1つができるだけ大きいほうがいいですね。
    2桁の数をできるだけ大きくするには、どんなカードを十の位にしたらいいでしょうか」

    このヒントの意味を理解でき、問題に再度向きあう姿勢が見られる子もいます。
    しかし、もう答を教えてほしいと思っていて、10分経ってもヒントが1つ出されただけの状況にうんざりしてしまう子もいます。
    こうしたヒントを聞いても、やはり何をどう考えていいのかわからず、試しに何かをやってみようという様子もない子のほうが、一般的には多いのです。
    「考える」教育というのは本当に難しいのです。
    「考える」ことよりも、「やり方を知って覚える」ことのほうを、多くの子どもは好みます。

    さらに5分。
    きょろきょろしたり、後ろで授業を見学しているお母さまを振り返ったりする子の様子を見て、この問題は終了。
    解説に入ります。

    和をできるだけ大きくするには、2けたの数の十の位の数が大きいほうがいいです。
    0から9までの数のうち、2けたの候補となる大きい数というと、5、6、7、8、9。
    すると、一の位の数は、0、1、2、3、4、ということになります。
    しかし、この4つの数の和は、0+1+2+3+4=10で、偶数です。
    和が偶数か奇数かは、一の位で決まります。
    一の位の和を奇数にする必要があります。
    そこで、十の位の候補と、一の位の候補を、1つずつ、入れ替えます。
    それでも、十の位の数はできるだけ大きいほうが良いでしょう。
    4と5を入れ替えましょう。
    すなわち、十の位の数の候補は、4、6、7、8、9。
    一の位の候補は、0、1、2、3、5。
    十の位の候補と一の位の候補の組み合わせは、どれでも構いません。
    とれでも、5つの数の和は、同じになります。
    ですから、正解の1つは、
    40、61、72、83、95、です。
    この問題の正解は、1つではありません。
    この問題の正解は、5×4×3×2×1=120通りあるのです。

    最後の120通りあるという話は、体験授業でする話ではありません。
    これは、「場合の数」の学習をしなければ理解できない話です。
    最初は、たくさんある、というだけで十分でしょう。

    この解説が本当に理解できているかどうかの様子も見ます。
    わかったふりはするが、実のところ興味を失っている子もいます。
    「正解例の他に、答をもう1種類考えてみて」
    というと急に慌てるので、ああ理解したふりをしているだけだったかな、と気づきます。
    慌てはするけれど、その後じっくり考えて正解を出す子は、ああ、時間はかかるが、考えることはできる子だなと気づきます。

    たった1問で何もかもわかるわけではありません。
    しかし、1つの方向性は見えてきます。

    後は、事前にうかがっていた、やりたい単元、苦手な単元の勉強をして、体験授業は終了します。
    それが、中学受験も視野に入っているという小学生の体験授業の1つの流れです。

    繰り返しますが、中学受験のための勉強を通じて、「考える」ことを学ぶことも可能です。
    全ては、保護者の方の決意次第です。
    自分が決めたことだと思えるほうが、後悔は少ないのです。
    当初の第一志望校に合格できる子はごくわずかです。
    それどころか、当初の第一志望校を受験できる子すら少ない。
    それが中学受験の現実です。
    しかし、受験勉強を通じて、思考の訓練と同時に、心の成長を目指すのならば、その経験は深い意味を持ちます。
    端的に、受験算数を勉強した子と、していない子では、中学入学後の数学の地力が違います。
    勉強に無駄なんてないのです。

      


  • Posted by セギ at 12:18Comments(0)算数・数学

    2020年09月24日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。円の方程式。その2。



    今回は、こんな問題から。

    問題 点A(1,3)、B(-2,-2)、C(3,-5)を頂点とする△ABCについて、次の問に答えよ。
    (1) △ABCの外接円の方程式を求めよ。
    (2) △ABCの外心の座標を求めよ。

    では(1) から解いていきましょう。
    「外接円」といった図形用語が出てくると混乱し、もうわからない、という人もいるかもしれません。
    図形は自分は苦手だから、絶対解けない、という謎の思い込みがある様子です。
    しかし、これは図形問題というほどのものではありません。
    △ABCの外接円。
    それは、点A、B、Cを通る円ということです。
    3点を通る円の方程式の求め方を使えば、解けます。

    求める円の方程式を、x2+y2+ℓx+my+n=0 とおく。
    点A(1,3) を通ることから、
    1+9+ℓ+3m+n=0
    よって、
    ℓ+3m+n=-10 ・・・①
    点B(-2,-2) を通ることから、
    4+4-2ℓ-2m+n=0
    よって、
    -2ℓ-2m+n=-8 ・・・②
    点C(3,-5) を通ることから、
    9+25+3ℓ-5m+n=0
    3ℓ-5m+n=-34 ・・・③

    この①、②、③を連立して解けばよいでしょう。
    ①-②より
    3ℓ+5m=-2 ・・・④
    ①-③より
    -2ℓ+8m=24 ・・・⑤
    ④×2+⑤×3
     6ℓ+10m=-4
    -6ℓ+24m=72
       34m=68
        m=2 ・・・⑥
    ⑥を④に代入して、
    3ℓ+10=-2
    3ℓ=-12
    ℓ=-4 ・・・⑦
    ⑥、⑦を①に代入して、
    -4+6+n=-10
    n=-12
    よって、求める円の方程式は、
    x2+y2-4x+2y-12=0 です。

    次に、(2) の△ABCの外心を求めましょう。
    ここで、また図形アレルギーを発動させて、
    「外心って、何の二等分線でしたっけ?」
    と質問する人もいます。
    「・・・外心は、各辺の垂直二等分線の交点ですが、そんなことは使いませんよ。難しく考え過ぎです」
    「えー?」
    「外心は、外接円の中心ですよ?」
    「えー?」
    「・・・さっき求めた円の、中心ですよ」
    「えー・・・」
    難しく考え過ぎて、視野が狭くなってしまうのです。
    外心は、外接円の中心。
    つまり、(1) で求めた円の中心の座標を求めるだけです。
    円の方程式の標準形にしてみればよいですね。

    やってみましょう。
    x2+y2-4x+2y-12=0
    (x-2)2+(y+1)2=12+4+1
    (x-2)2+(y+1)2=17
    この円の中心の座標が、外心です。
    すなわち、答は、(2,-1) です。


    図形が苦手な人に多いのですが、発想が固く、1つのことを思いつくと、もう別の発想ができなくなる場合があります。
    しかし、それは、人間全体の特徴だとする説もあります。

    アメリカの大学での実験だったと記憶していますが、こんなものがありました。
    まず、数十人の被験者を集め、こんな指示を出しました。
    「今から、一切話をしないでください」
    次に、こんな指示を出したのです。
    「誕生日の日付の早い順に並んでください」
    被験者は、一様に声なき驚きを示しました。
    会話しないで誕生日の早い順に並ぶことなど、不可能だ。
    しかし、その直後、被験者の中から、指で数字を示した手を高く掲げ、無言で皆に呼びかける人が現れ始めたというのです。
    そして、全員が、その即席の指文字に従って、並び始めました。

    しばらくして、行列は完成しました。
    ここで結果を確かめあうと、正しく並べた人も多かったのですが、間違えてとんでもないところに並んでしまう人もいたそうです。
    即席の指文字では互いに共通の認識がないため、誤解が起こるのです。
    1月23日と、12月3日を指文字でどう区別するかなどは、共通のルールを事前に確認していなければ難しいのです。

    結果を確認した後、この実験をした科学者は、被験者に話しました。
    もっと、正確に互いの誕生日を確かめあう方法があったのではないですか?
    我々は、話をするなとは言いました。
    しかし、その他のことは制限していません。
    すると、被験者の中から、遠慮がちにこんな意見が出てきます。
    「例えば、運転免許証などを見せ合うとか?」
    さらに、次のような発言も見られたそうです。
    「そうだ、字を書いても良かったんだ。
    互いに誕生日をメモしたものを見せ合えば、良かった」

    幾度行っても、実験の結果はこのようになるといいます。

    これは、何の実験なのか?
    人間は、最初に思いついた発想が、たとえ不完全なものであっても、それに従ってしまうことがある。
    むしろ、誕生日を指で示すことを思いついた人をヒーローのように思ってしまう。
    その他のやり方を考えることができなくなってしまう、というのです。

    しかし、最初に思いついたやり方が最善である場合は少ない。
    多くの場合、3番目に思いついたやり方が最善のやり方である、というのです。
    1つの発想を得ると、それに凝り固まってしまうのが、人間の性質かもしれません。
    けれど、最善のやり方は、3番目に表れる。
    それを知っていると、試行錯誤に向けての心構えができると思います。

    数学の問題を解くときに、何にも発想できなくて諦める人。
    1つのやり方で上手くいかなくて諦める人。
    そこでもう少し粘ることができたら、道が開けると思います。
    少なくとも3通りの方法を思いつくまで、諦めないぞ。
    そのように自分を鼓舞できるかもしれません。


    では、次はこんな問題を。

    問題 2点(4,1)、(-3,8) を通り、x軸に接する円の方程式を求めよ。

    少し難しくなりました。
    これは、求める円の中心を(a , b) とおく、という基本から考えましょう。
    中心が (a , b) で、x軸に接するということは、その円の半径は|b|です。

    上の1行の意味がわからない、という場合は、実際にそうした円を描いて、確認してください。
    bは負の数の場合もありますが、円の半径は正の数なので、半径は|b|とおきます。
    実際に座標平面上に円を描いても、なぜ半径が|b|になるのかわからない、という場合は、座標に関して、何か理解できていないことがあると思います。
    x座標とy座標と、座標平面の縦横の関係がわかっているようでわかっていない人は高校生でも多いのです。
    例えば、(0,3) といった点を、x軸上に打ち込んでしまう人です。
    塾に通ってください。
    独りでは解決できないことも、個別指導なら解決できます。

    話を戻して。
    中心が (a , b) で、x軸に接するということは、その円の半径は|b|です。
    ということは、求める円の方程式は、
    (x-a)2+(y-b)2=|b|2
    すなわち、
    (x-a)2+(y-b)2=b2 と表すことができます。

    ここで、右辺の絶対値記号がなぜ外れるのかわからず、頭を抱えてしまう人もいます。
    bが正の数でも負の数でも、2乗すれば必ず正の数ですから、絶対値記号は外すことができるのです。
    |b|2=b2 です。
    本当に、ここまでくると、以前に学習したことで忘れてしまっていることや理解できなかったことが時限爆弾のように無造作に足元に転がっていて、そのいちいちでつまずくことになります。
    数Ⅱや数Bが、正直何1つわからない、という人は、それ以前の内容が理解不足のために理解できないのです。
    数Ⅱや数Bの内容が極端に難しいわけではないのです。

    再び、話を戻して。
    求める円の方程式は、(x-a)2+(y-b)2=b2 と表すことができます。
    これが、2点(4,1)、(-3,8) を通りますから、
    点(4,1)より、
    (4-a)2+(1-b)2=b2
    これを整理して、
    16-8a+a2+1-2b+b2=b2
    a2-8a-2b=-17・・・①
    点(-3,8)より、
    (-3-a)2+(8-b)2=b2
    9+6a+a2+64-16b+b2=b2
    a2+6a-16b=-73・・・②

    これを連立して解きますが、この解き方にはちょっとテクニックが必要です。
    まず、①-②をすることは、発想できると思います。
    -14a+14b=56
    これを整理して、
    a-b=-4

    ここまではできるのですが、式は1本になったのに、文字が2個あるままで、この先どうしよう、と途方に暮れてしまいそうですね。
    大丈夫。
    式は、1本ではありません。
    ①も②もあるじゃないですか。
    代入し直せばよいのです。
    この「必殺、代入返し」といったテクニックを身につけておくと、計算上で行き詰まったときの対処法を思いつくことができます。
    a-b=-4
    これを整理して、
    -b=-a-4
    b=a+4 ・・・③
    ③を①に代入して、
    a2-8a-2(a+4)=-17
    a2-8a-2a-8=-17
    a2-10a+9=0
    (a-1)(a-9)=0
    a=1,9 ・・・④
    ④を③に代入して、
    a=1のとき、b=5
    a=9のとき、b=13

    よって、求める円の方程式は、
    (x-1)2+(y-5)2=25  と、
    (x-9)2+(y-13)2=169 です。


    問題 点(-2,-1) を通り、x軸、y軸に接する円の方程式を求めよ。

    x軸とy軸に接する円で、x座標とy座標が等しくない円なんてあるの?
    ・・・謎の思い込みで、そのように混乱する人もいます。
    点(-2,-1)は、中心ではありませんので、x座標とy座標は等しくなくても大丈夫です。
    でも、それは、ある意味イメージできているからこその混乱です。
    そうです。
    x軸とy軸の両方に接する円の中心のx座標とy座標の絶対値は等しいです。
    そして、点(-2,-1)を通る円というと、それは第3象限にある円ですから、x座標もy座標も負の数で、等しいことがわかります。
    だから、中心を(a , a)とおくことができます。(a<0)
    よって、求める円の方程式は、
    (x-a)2+(y-a)2=a2 と表すことができます。
    これが点(-2,-1)を通るから、
    (-2-a)2+(-1-a)2=a2
    これを整理して、
    4+4a+a2+1+2a+a2=a2
    a2+6a+5=0
    (a+1)(a+5)=0
    a=-1,-5
    したがって、求める円の方程式は、
    (x+1)2+(y+1)2=1 と、
    (x+5)2+(y+5)2=25 です。



      


  • Posted by セギ at 14:17Comments(0)算数・数学

    2020年09月18日

    禁断の公式。


    毎年のように、中3の男子の間で流行する「公式」があります。
    集団指導塾の上位クラスに通っている友達あたりから教わるのでしょうか。
    気がつくと使うようになっていて、そのせいで誤答が増え、私に使用を禁止される解き方です。

    そうした子は、例えば、こんな誤答をします。

    (2-√7)2
    =-5-4√7

    ノートにこれしか書いてないので、逆にピンとくるのです。
    これは、あの解き方を誤用したのだな?

    そんな禁断の「公式」とは、どんな公式か?
    種明かしをすれば、何でもないものです。
    (√a+√b)2
    =(a+b)+2√ab

    例えば、
    (√2+√3)2
    =5+2√6

    1行で答が出るので、字を書くのが嫌いな子や、そういうのがカッコいいと感じる子に好評の解き方です。
    この程度のことなのに、毎年ブームが起こり、男子生徒の多くがこれにカブれます。

    もともとは、普通の乗法公式です。
    (a+b)2=a2+2ab+b2

    これが、aもbも平方根なら、平方根の中身の数字を単純に足すだけなので、(a2+b2)を先にやって、1行で済ましちゃいなよ、という解き方です。
    公式とすら呼べないしろものです。
    とにかく、どうでもいい。
    くだらない、とすら私は思うのですが、なぜか男子の多くはこれにハマります。
    男女を区別するのは今どきもう古い、ジェンダーを強化するな、というのは私もそうだと思うのですが、現実には、学習上の好みの違いは存在します。
    この解き方に無駄にハマる女子を私は見たことがないのです。
    使っている子もいるのかもしれませんが、使っていても確実に正答するので、使っていることを私に悟られないのが女子、ということはあるのかもしれません。
    こういう解き方をすると計算ミスをしそうな女子は、最初から使わないのでしょう。
    おのれの計算力を顧みず、使って失敗し、私に使用を禁止されるのが、男子。
    そういう違いがあるように思います。

    (√2+√3)2 のように、両方とも平方根であるなら、この解き方は魅力的です。
    しかし、片方整数である場合、無駄な暗算が必要になります。
    (2-√7)2 の場合は、2は2乗して4にし、それに√7の2乗の7を足さなければなりません。
    =11-4√7
    これを一瞬で行うことができ、精度100%であるなら、私は文句を言いません。
    しかし、一度暗算した計算結果を使って、さらに次の暗算をするという二重の暗算は、精度が落ちます。
    無駄に時間もかかります。
    上の誤答例のように、暗算に混乱したあげく、2-7をしてしまうような精度なら、使わないほうがいいのです。
    公式は、それを使うから計算が簡単になったり精度が上がったりするのでなければ意味がありません。
    ケアレスミスが増えるだけの解き方など、公式ではありません。

    「こんなくだらないことで誤答して、5点、5点と点を失って、それでどうやって得点を固めるの?
    正答できるかもしれませんが、できないかもしれませんよね?
    そんな精度のテクニックを取り込んで、それで高校に落ちたら、どうするの?
    解けない問題があるのは仕方ないんですよ。
    でも、こんなことで点を失ってしまうのは、私は本当に嫌なんですよ。
    努力して努力して、応用問題を解けるようになっても、こんなことで点を失ったら、何も変わりませんよ。
    同じ5点なんですよ?」

    1回叱責すると、受験生ならば、それで治る場合が多いです。
    中高一貫校の生徒は、受験が目前ではないので、この叱責ができませんし、治らない場合が多いのですが。


    計算ミス・ケアレスミスに関しては、これは無理だ、これは完全には治らないだろうという場合もあるのです。

    以前も書きましたが、1つには、数学の問題を解いていても、精神的にフワフワし、他のことを同時に考えているタイプの子。
    目の前の数学の問題に集中することができず、問題を解きながら、常に他のことを考えているのです。
    なぜ、そうなるのか、本人にもわからないし、制御することもできない様子です。
    例えば、問題の解き方がわかって、計算をしながら、私に、
    「今日は、何ページまでやるの?」
    と質問してきたりします。
    なぜ、計算しながら、そんなことを質問してくるの?
    なぜ、計算に集中できないの?
    そして、案の定、計算ミスをするのです。
    話し相手が傍にいるからそうなるので、独りで勉強しているときには集中するのかというと、そんなことはないのです。
    独りなら独りでも、問題を解きながら他のことを考えているのは同じです。
    目の前の1つのことに集中することができない。
    常に気が散ってしまう。
    そういう性分なのでしょう。

    もう1つは、数学への苦手意識が強く、過度に緊張している子です。
    ミスすればするほど、不安な表情になり、さらにミスが増えていきます。
    小さなことで簡単にパニックに陥ります。
    問題の読み取り間違いや式の書き間違い、符号や指数の書き漏らしがとにかく多いです。
    数学の問題を解いているときの精神状態が悪いのです。
    あがり症の人が大舞台に立つときのような精神状態になっているのだと想像されます。
    数学の問題を冷静に考えられる精神状態ではないので、テストは信じられないようなミスを連発します。

    以上の2つは、心の問題が大きいので、そう簡単には治りません。
    こういうケアレスミスが簡単に治ると思っているほうがおかしいとすら思います。
    本人が自分の心の状態を自覚し、ミスの多さと一生つきあっていく覚悟を持つ必要があります。


    しかし、そうではなく、計算のやり方や、式の書き方次第で治せるケアレスミスもあります。
    上の、禁断の「公式」を使用しないことなどはその筆頭です。
    正答できるかもしれない。
    でも、失敗するかもしれない。
    精度は人によるでしょうが、成功率70%であっても、そんなものは使用しないほうがいいでしょう。

    しかし、成功率50%であっても、その解き方のほうを選んでしまう中学生もいます。
    丁寧に書いていくのが嫌なのだと思います。
    字を書くことが、あまり得意ではないのかもしれません。
    読みやすく粒の揃った字を水平にササッと書いていくことができない子は案外多いです。
    字の大小がそろわず、だんだん大きくしかも斜めになっていき、解答スペースや計算スペースがなくなってしまう子もいます。
    粒のそろった字を素早く書いていくことは、授業を受けていて板書を書き写すときなどにも必要な技術なのですが、そういうことが上手くできない。
    1文字1文字、字を書くのに時間がかかる。
    精神的なストレスもかかる。
    だから、1行でも答案を減らしたい。
    楽したい。
    そういうことも影響しているかもしれません。


    とはいえ、私もそんなに丁寧に何もかも書けとは言いません。
    意味もなくくどい書き方をする必要はないのです。
    例えば、「正負の数」の学習が終わった中1ならば、もう符号は省略して書いていって良いのに、異様にくどくどとした符号の書き方が癖になって、なかなか治らない子もいます。
    -3-(-7)×(-2)
    といった計算問題を解く際に、
    =-3+(+7)×(-2)
    =-3+(-14)
    =-17
    と、丁寧に丁寧に書いています。
    別に間違っているわけではないですが、そんなのは、
    -3-(-7)×(-2)
    =-3-14
    =-17
    で、いいのです。
    符号の決定と絶対値の決定を分割して行っていくことで、計算は正確になり、かつ短時間で行うことができます。
    上のようにくどくどと何行も書いたあげくに途中で符号を書き間違えている答案を見ると、がっかりします。
    何行も書いていくことで、符号の書き間違いのリスクが高くなっているだけなのです。


    「1次方程式」を学習すると、これも最初に学習した丁寧な解き方から脱却できず、
    7x+5=2x-15
    7x-2x=-15-5
    5x=-20
    x=-4
    といった、丁寧な丁寧な答案を書く子もいます。
    間違っていないからそれでも構わないのですが、上の2行目は書かなくても大丈夫です。

    7x+5=2x-15
    5x=-20
    x=-4

    という計算は、精度を保ちながら行うことができます。
    しかし、計算ミス・符号ミスの多い子の中に、以下のような省略の仕方をする子がいます。

    7x+5=2x-15
    7x-2x=-15-5
    x=-4

    3行目を省略するのです。
    見る度に、ぎょっとする答案です。
    なぜ、2行目をわざわざ書くのに、3行目を省略するの?
    加法してさらに両辺を何かで割るという二重の暗算をしたら、精度が下がって当然です。
    符号ミスも多くなります。

    一番上で書いた、禁断の「公式」も、平方根以外のもので使用した場合、2乗して、さらにたし算をするという二重の暗算がネックとなり、精度が下がるのでした。
    大抵の人間は、二重の暗算を100%の精度では行うことはできません。
    大体はできるかもしれない。
    でも、間違えるかもしれない。
    その程度の精度しか保てないのが普通です。
    しかし、この二重暗算、やってしまう子は多いです。
    移項を暗算するのは、一度の暗算ですから、移項に関する符号処理が理解できていない子を除けば、ほぼ100%の精度で行うことができます。
    しかし、移項の処理を最初に学習したときから一度も省略したことがなく、もう書かないと計算できなくなっている子もいます。
    それでいて、その次に二重の無理な暗算をします。
    答案を見る度びっくりするのですが、こんな書き方が癖になっていて、もう直せない子もいます。

    繰り返しますが、1つの暗算なら精度を保つことができても、暗算した結果を使ってさらに暗算を重ねると、普通の人間は精度が下がります。
    目に見える形のもので暗算することは、暗算の精度に必要なことなのです。
    そのことが理解できていない子が、不用意に二重暗算をし、自ら計算精度を下げています。


    こんな暗算ミスも多いです。
    これは「文字式の計算」。
    例えば、こんな問題です。
    ちょっと見にくいと思いますが、分数式です。
    まずは丁寧な計算から。

    4x+2 /3 - 7x-5 /2
    =2(4x+2)-3(7x-5) /6
    =8x+4-21x+15 /6
    =-13x+19 /6

    このように丁寧に通分していけば、精度を保てます。
    しかし、ここで、一気に通分しながら分子もそれぞれ計算する子が多いです。
    そして、後ろの分数の前にある負の符号を処理できず、計算ミスをします。

    4x+2 / 3 - 7x-5 / 2
    =8x+4-21x-15 / 6
    =-13x-11 / 6

    私は、こんな計算ミスをもう何十年も見ています。
    ああ、この子もそうか、と思いながら。
    通分しながら分子もかけ算した結果を書いていくという作業だけなら何とかできても、そこに後ろの分数は符号が変わるという条件まで加わると、正確に処理できなくなるのです。
    人間の精度なんて、そんなものです。

    そんなミスを繰り返しても、自分の精度の限界を把握できず、同じことをいつまでもやってしまう子は、数学の成績がなかなか上がりません。
    それはそうです。
    穴の空いたバケツで水を汲んでいるようなものですから。
    解くことのできる問題が増えても、計算ミスも増えていたら、正答は増えません。


    これまで、数学の成績が急上昇していった子の例を思い出すと、もともとうちの塾に来る前から計算の精度は高く、計算ミスのことをとやかく言う必要のなかった子が多いのが事実です。
    考え方がよく身についていなかったり、数理の根本について何が誤解があったりして、しばらく妄言を繰り返したりはしますが、数か月後、ロケット並みの上昇をしていきました。

    その他に、これは年齢的なことがあったのだと思いますが、入塾当時はおそろしいほど計算ミスをしていたけれど、中3から高1くらいの時期に、まるで脳がきゅっとしぼられたように計算精度が上がり、数学の成績が高めに安定していった子もいました。
    これは、本人の脳の発達によるものだろうと推測されます。

    そうして、少数ですが、私が直しなさいと言ったことは全て直し、計算過程を改善することで計算精度を上げ、正答率を高めていった子たちがいました。


    同じ計算ミスを繰り返す子に尋ねたことがあります。
    やり方をどう直せばいいのか、わからないの?
    それとも、無理な暗算でも自分はできると思い、自分のやり方をどうしてもつらぬきたいの?
    有名中高一貫校に通っている生徒でした。
    理解力はあるのに、計算ミスばかりしていて、毎度毎度テストで落第点を取り、学校の補習を受けていました。
    しかし、理解力があるというのはやはり物凄いことで、答など期待していなかった私の問いに、その子は答えました。

    理解はしている。
    直そうと思っている。
    でも、実際に問題を解くときには、そのことを忘れてしまう・・・。

    計算ミスをしやすい計算過程を直せない子の、直せない理由として、これ以上の説得力のある言葉を、私は聞いたことがありません。
    そうなんですよね。
    理解できないわけでもなく、反抗したいわけでもなく、ただ、直せないだけなんです・・・。
    多分、皆、そうなんです。


    先日も、高校生が、2次関数の平方完成で、こんなミスをしていました。

    y=1/2x2+2x-6
    =1/2(x+1)2-1/2-6
    =1/2(x+1)2-13/6

    ・・・x2の係数が1ではないときは、いきなり平方完成するなと、もう何回言ったかわからないのに・・・。

    y=1/2x2+2x-6
    =1/2(x2+4x)-6
    =1/2(x+2)2-2-6
    =1/2(x+2)2-8

    と、一度、1/2で単純にくくってからのほうが、平方完成は精度が上がるのです。
    こうしたほうが頭が楽で、正確で、結局速いのです。
    何度も何度もそう説明しているのに・・・。

    理解できないわけではない。
    反抗したいわけでもない。
    ただ直せないだけ。
    わかっているけれど、直せない。

    きっとそうなのです。
    例えば私が急に草野球のピッチャーをやることになって、投球フォームをあれこれ直せと言われたら。
    言われていることは多分理解できるし、反抗したいわけではないけれど、きっと直せない・・・。
    そういうことは、誰にでもあります。
    そのとき、私はどのように声をかけてほしいだろう・・・。


    私は、同じようなミスを何十年も見ています。
    ああ、この子もそうか、と思いながら。
    けれど、それでこの仕事をむなしいと思うことがないことの1つに、あの子の教えてくれた言葉があるような気がします。
    そして、それを乗り越えて成績を上げていった子たちの記憶が、さらに私を支えてくれているのです。

      


  • Posted by セギ at 12:13Comments(0)算数・数学

    2020年09月15日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。円の方程式。その1。


    さて、今回は、円の方程式です。

    まず、「円の方程式」ということの意味がわからず、ポカンとする高校生がいます。

    これは、1つには、中2で最初に学習した、直線の方程式の意味が、実はよくわかっていないことが根本の原因ではないかと思います。
    直線は、x座標とy座標とが同じ関係を持った点の集合です。
    直線の方程式は、そのx座標とy座標の関係を表す式です。
    例えば、直線y=3x+5 ならば、この直線上の全ての点のx座標とy座標には、y=3x+5 という関係があります。

    直線に限ったことではありません。
    曲線でもそれは同じです。
    中3や高1で学習した放物線もそうです。
    1つの放物線上の点のx座標とy座標には共通の関係があります。
    例えば、y=2(x-1)2+3 という放物線ならば、その放物線上の全ての点のx座標とy座標に、この式の関係が成り立ちます。
    そうした関係を持つ点の集合が、y=2(x-1)2+3 という放物線です。

    そして、円もそうです。
    円が閉じているからなのか、何のことかよくわからず、
    「え?円盤の内側のことですか?」
    という質問を受けたことがあるのですが、そうではなく、円周を描いている、曲線のことです。
    その曲線を表す式が、円の方程式です。

    この誤解は、わからないでもありません。
    小学生の頃から、「円の面積」というと、円周で囲まれた、円の内側の面積のことでした。
    それが「円」そのものだと思っても、おかしくありません。
    「円」が円周を形成する曲線そのものであるなら、そんなものに「面積」は存在しないのですから。
    「円」の定義が、揺れているのですね。

    さて、「円の方程式」とは何であるか、意味がわかったところで、では、確認しましょう。

    中心が(a , b)、半径が r の円の方程式は、
    (x-a)2+(y-b)2=r2
    特に、中心が原点、半径が r の円の方程式は、
    x2+y2=r2

    この式の証明は、特に難しくありません。
    上の図を見てください。
    中心が、C(a , b)、半径 r の円があります。
    この円周上の任意の点をP(x , y)とすると、PC=r であることから、2点間の距離の公式を使って、
    √(x-a)2+(y-b)2=r
    と表されます。
    この両辺を2乗すると、
    (x-a)2+(y-b)2=r2
    これは、円周上のどの点の座標(x , y) についても成り立ちますから、これが、中心C(a , b)、半径 r の円の方程式です。
    これを、円の方程式の標準形といいます。

    この式に、中心O(0 , 0)を代入すると、
    (x-0)2+(y-0)2=r2
    よって、
    x2+y2=r2
    これが、中心が原点、半径がrの円の方程式です。


    では、ちょっと練習してみましょう。

    問題1 中心が(1 , 2)、半径が3の円の方程式を求めよ。

    これは、公式に代入するだけです。
    (x-1)2+(y-2)2=9
    これで答です。


    問題2 2点(1 , 2)、(3 , -2)を直径の両端とする円の方程式を求めよ。

    ちょっと難しくなりました。
    中心の座標と半径を自分で求めなければなりません。
    この2点が直径の両端ならば、この2点の中点が、円の中心です。
    まず、それを求めましょう。
    (1 , 2)、(3 , -2)の中点の座標は、(2 , 0)です。
    では、半径は?
    中心と、この2点のどちらかとの距離です。
    (1 , 2)、(2 , 0)の距離を求めましょう。
    √(1-2)2+(2-0)2
    =√1+4
    =√5
    これらを、円の方程式の公式に代入して、
    (x-2)2+y2=5


    問題3 中心が(1 , 2)で、点(2 , -1)を通る円の方程式を求めよ。

    また少し難しくなりました。
    中心はわかっているので、あとは円の半径がわかればいいですね。
    円の半径は、(1 , 2)、(2 , -1) の距離ですから、
    √(1-2)2+(2+1)2
    =√1+9
    =√10
    よって、
    (x-1)2+(y-2)2=10


    問題4 中心が(-2 , -√3)で、y軸に接する円の方程式を求めよ。

    ここまでは比較的順調にきた人も、ここで詰まってしまうことがあります。
    わかりにくいときは、実際に座標平面上にそういう円を描いてみるのが一番です。
    中心は、第3象限にあります。
    中心がそこで、y軸に接する円を描いてみましょう。
    その円の半径は2であることが、見てとれると思います。
    中心のx座標が-2だからです。
    よって、
    (x+2)2+(y+√3)2=4


    問題5 中心が(√3 , 2)で、x軸に接する円の方程式を求めよ。

    これも、実際に座標平面上にそうい円を描いてみるとわかります。
    中心は、第1象限。
    x軸に接する円を描いてみましょう。
    その円の半径は、2であることが見てとれます。
    中心のy座標が2だからです。
    よって、
    (x-√3)2+(y-2)2=4


    こうした練習問題を、最初の1問は機嫌良く解く子が、2問目からもう応用になったと感じるからか、暗く辛そうな表情を浮かべることがあります。
    小学校の頃ならば、上の問題1レベルのような、例題とそっくりな問題だけをたくさん練習します。
    それ以外の問題は教科書に存在しないことすらあります。
    中学校ならば、上の問題1レベルの問題を10問くらい解き、同じページの最後のほうに1~2問、問題2レベルのものがあります。

    しかし、高校は、助走は短く、あっという間に離陸します。
    基本の練習だから大丈夫だろうと解き始めても、例題と全く同じ解き方の問題は1問しかありません。
    いや、1問もないことすらあります。
    自分で解き方を考えなければならない。
    そのことに、気持ちがついていかない子がいます。

    問題4、問題5は、中心のx座標やy座標に注目して円の半径を読み取る問題です。
    こうしたことが、中学生の頃から、うまく理解できない子もいます。
    「円を描いてみるとわかります」
    先ほどはそのように書きましたが、自分で円を描いても、私が描いた円を見ても、何も思いつかない子も、一定数存在します。
    自力で発想できないだけでなく、一度解説されたときに、そういう考え方があると理解し記憶することもできない様子で、毎回、そのような問題で詰まるのです。

    高校生になって突然そうなるわけはないので、中学生の頃から、座標平面上の図形の問題は苦手だったと思います。
    座標平面上の三角形の底辺や高さの読み取りに苦労していたと思うのです。
    座標平面の見方の何かが身についていないのです。
    「2点間の距離を読み取ればいいよね」
    といった説明に眉を寄せることが多く、そのあたりのことが理解できていないのだろうと思われます。
    座標平面上で水平な位置の2点の距離は、x座標の差を読み取ればよいことが理解できない子もいます。
    x軸上に落として考えればよいでしょうとヒントを出しても理解できません。

    座標平面を描き、y軸と接する円を描き、半径を赤くペンで描き、同じ長さをx軸上になぞって示して、こことここは同じ長さだねと解説すると、何とか理解した様子は見せます。
    しかし、しばらく経つと、また何も読み取れなくなります。
    完全にリセットされてしまいます。
    結局、それは理解していなかったということなのだと思いますが。

    x座標とy座標の読み取りがときどき逆転することがあるのも、そうした子たちです。
    最初に覚えるときに、何かを誤解をしてしまったのかもしれません。
    点の座標の根本の何かが理解できていないのかもしれません。

    直線x=1 はy軸と平行な直線です、といった説明も苦手な様子で、頭を抱え、苦しそうにします。
    y軸と平行なら、y=1でなければならないと思うようです。
    何かもっと簡単に頭の中で整理し直したいのに、そうならないことに苦しんでいる様子が見られます。

    ・・・いや、これ以上は簡単にならないです。
    このまま、受け入れてください。
    そのように願うのみです。


    ところで、放物線の方程式は、y=a(x-p)2+q という、平方完成した形の式の他に、y=ax2+bx+c という形の式もありました。
    問題の形式によって、それらを使いわけました。
    あるいは、問題では、y=ax2+bx+c の形の式が与えられ、それを平方完成することも多かったです。

    円の方程式も、そのような一般形があります。
    x2+y2+ℓx+my+n=0
    これが、円の方程式の一般形です。

    この形が問題で与えられたら、標準形に直すことで、その円の中心や半径を求めることができます。
    やってみましょう。


    問題 円x2+y2-2x-6y+5=0 の中心の座標と半径を求めよ。

    x と y、それぞれに、平方完成をすれば求めることができます。
    最初なので、丁寧にやってみます。
    (x2-2x)+(y-6y)=-5
    それぞれ平方完成し、式にはもともとないのに加えてしまった定数項を右辺にも加えることで辻褄を合わせましょう。
    (x-1)2+(y-3)2=-5+1+9
    (x-1)2+(y-3)2=5
    よって、円の中心(1 , 3)、半径√5


    考え方はそんなに難しくないので、あとは、ケアレスミス・計算ミスに気をつけるだけです。
    とはいえ、ここまでくると、1年前に学習した高校1年の数学内容など1つも覚えていない、1つ前の単元どころか、先週学習した内容ももう忘れている、という人が増えてきます。
    周囲は全て霧。
    足元の細い道だけが見えている。
    後ろは、おそらく崖崩れが起きていて、戻れない。
    前方に何があるのかも、わからない。
    このような精神状態で問題を解いているためでしょうか、比較的簡単に思われるこうした問題でも、符号ミス、計算ミス、円の方程式の右辺は半径の2乗であることを忘れているミスなど、多様なミスを繰り返し、正解に至ることが難しい人が出てきます。
    この問題だけならば、落ち着いて解けば正解が出せるはずなのに、もう何を解いても正解に至らない・・・。
    何を解いても正解にならないので、気持ちがどんどん暗くなる・・・。
    精度の低さが、本人の心をむしばんでいきます。

    理解度と精度は、別のことですが、理解があやふやであれば精度が下がります。
    同時に、精度の低さが、精神的な不安を招き、さらに精度を下げていくこともあります。
    全問不正解のとき、それが全てケアレスミスが原因だとしても、
    「いや、自分は理解しているから大丈夫」
    とは思えないでしょう。
    数学が苦手な高校生の多くはそのような精神状態かもしれません。
    理解できないわけではない。
    ただ、計算が合わない。
    正答に至らない。

    そして、理解しているとはいっても、先週学習した問題を、例題も解説もなくすっと出され、さあ解いてと言われたときに、何をどうしていいか、わからない・・・。
    どうしてこんなに頭をすりぬけていってしまうのか。
    理解したつもりだったが何も覚えていないのは、なぜなのか・・・。

    理解と記憶は、また別のものだからです。

    理解すること。
    記憶すること。
    精度を保つこと。

    それは、別べつのことですが、根は同じところにあります。
    改善していくには、反復することです。
    1回目に学習するときよりも、2回目に学習するときのほうが、まだ少し気持ちが落ち着き、わかることが増えます。
    正答も増えていきます。
    諦める前にどうか反復してください。
    数学が受験にどうしても必要な人は、夢を諦める前に、まだできることがあるはずです。

      


  • Posted by セギ at 14:07Comments(0)算数・数学

    2020年09月10日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。三角形の面積。


    さて、今回は、座標平面上の三角形の面積の求め方です。
    例えば、こんな問題。

    問題 点O(0,0)、B(8,2)、C(3,5)を頂点とする三角形OABの面積を求めよ。

    これも、実際に座標平面にこの三角形を描いて考えるとわかりやすいと思います。

    高校生に自力で考えてもらうと、発想が中学生に戻り、中1で学習した解き方をする子が大半です。
    すなわち、この三角形を取り囲むように、三角形の頂点が周上にある長方形を描き、その長方形から、余計な直角三角形を3つ引いて、△OABの面積を求める方法です。
    間違った方法ではありません。
    まずは、それで解いてみましょう。

    △OABを囲むように長方形を作ると、縦5、横8の長方形となります。
    そこから、不要な三角形を3つ分の面積を引きます。
    5・8-1/2・3・5-1/2・5・3-1/2・8・2
    =40-23
    =17

    △OABの面積は、17です。

    しかし、せっかく、2点間の距離の求め方や点と直線との距離の求め方を学習したのですから、それを利用した解き方を考えてみましょう。
    この△OABを、底辺AB、頂点Oの三角形とみなします。
    まずは、底辺の長さを求めましょう。
    点A(8,2)とB(3,5)の距離ですから、2点の距離の公式に代入すると、
    AB=√(8-3)2+(2-5)2
    =√25+9
    =√34

    底辺をABとみなしたら、この三角形の高さは、点Oと直線ABとの距離となります。
    そのため、まず直線ABの式を求めましょう。
    2点(8,2)、(3,5)を通る直線ですから、2点を通る直線を求める公式に代入して、
    y-2=-3/5(x-8)
    両辺を5倍して、
    5y-10=-3(x-8)
    5y-10=-3x+24
    3x+5y-34=0

    この直線と、点O(0,0)との距離ですから、点と直線との距離の公式に代入して、
    距離d=|-34|/ √9+25
    =34/√34

    よって、
    △OAB=1/2・√34・34/√34
    =17

    上と同じ面積を求めることができました。

    しかし、この求め方、高度な考え方を利用しているわりに、むしろ、中1で学習した求め方よりも計算が面倒くさくなっている気がします。
    ご安心ください。
    これも、公式があります。

    点0(0,0)、A(x1,y2)、B(x2,y2)のとき、
    △OAB=1/2|x1y2-x2y1|

    この公式に代入してみましょう。
    △OAB=1/2|8・5-2・3|
    =1/2|40-6|
    =1/2・34
    =17

    ・・・わあ、簡単だあ。

    では、この公式を証明しましょう。
    底辺を線分ABと見るのは、上の解き方と同じです。
    まず、底辺を求めましょう。
    AB=√(x2-x1)2+(y2-y1)2 となります。
    次に、この三角形の高さ、すなわち、点0とABとの距離dを求めます。
    そのために、直線ABの式を求めると、
    y-y1=y2-y1 / x2-x1 (x-x1)
    これを整理します。
    両辺をx2-x1 倍して、
    (y-y1)(x2-x1)=(y2-y1)(x-x1)
    全て左辺に移項して、
    (y-y1)(x2-x1)-(y2-y1)(x-x1)=0
    展開して、整理すると、
    -(y2-y1)x+(x2-x1)y-x2y1+x1y1+x1y2-x1y1=0
    (y2-y1)x-(x2-x1)y-(x1y2-x2y1)=0
    よって、点0(0,0)との距離は、
    d=|0-0-(x1y2-x2y1)| / √(y2-y1)2+(x2-x1)2
    ところで、この分母√(y2-y1)2+(x2-x1)2=ABであ。
    よって、d=|x1y2-x2y1| / AB
    したがって、
    △OAB=1/2・AB・d
    =1/2・AB・|x1y2-x2y1| / AB
    =1/2|x1y2-x2y1|


    原点を通る三角形の面積は、この公式で簡単に求めることができます。
    それでは、こんな問題はどうでしょうか。

    問題 点(3,4)、(-4,1)、(2,-5)を頂点とする三角形の面積を求めよ。

    原点を通っていない・・・。
    では、上の公式は使えないでしょうか?
    いいえ。
    ちょっと工夫すれば使えます。

    原点を通る三角形になるよう、3点を平行移動させればよいのです。
    どれでもいいのですが、今回は、点(2,-5)を原点に移動してみましょう。
    (2,-5)が、(0,0)に移動するのですから、x軸方向に-2、y軸方向に+5だけ平行移動することになります。
    それにあわせて他の点も移動すれば、全体に平行移動したことになりますから、もとの三角形と面積は等しいです。
    (3,4)は、(1,9)に。
    (-4,1)は、(-6,6)に。
    よって、求める三角形は、点(0,0)、(1,9)、(-6,6)を頂点とする三角形と面積は等しいです。
    これを公式に代入すると、
    1/2|1・6-9・(-6)|
    =1/2|6+54|
    =30
    これが求める面積となります。

      


  • Posted by セギ at 13:19Comments(0)算数・数学

    2020年09月03日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。点と直線の距離。



    今回は、点と直線との距離を求める問題です。

    問題 点(1,2) から直線 3x+4y=5 までの距離を求めよ。

    そもそも、「点と直線との距離」とは何か、その確認からしましょう。
    中学生が作図問題を解いている様子を見ていると、ああ、わかっていないかもしれないなあと感じることがあるのが、点と直線との距離です。
    与えられた点と直線との距離を示す線分を描けといった問題に上手く対応できないのです。
    それの応用である、与えられた点を中心とし、与えられた直線と接する円を描けといった問題にも困惑することになります。

    数学で「距離」というのは「最短距離」のことです。
    点と直線との最短距離とは何か?
    その点からその直線に垂線を下したときの、その点と垂線の足との距離が最短距離です。
    ちなみに、垂線の足とは、垂線と直線の交点のことです。

    ・・・このように、説明しても説明しても、そこにまた数学用語が出てきて、それをまた説明しなければならないということが、数学の授業
    では起こりがちです。
    テストのために暗記するけれど、テストが終わったら忘れる。
    そのような学習習慣の子が幾何が苦手な原因の1つが、用語の意味がわからないことです。
    重要なことを覚えていないのです。
    だから、説明を聞いても、その説明が理解できない、という状況に簡単に陥ります。

    用語がごついだけで、言っていることはとても単純なことです。
    点から直線には、多くの線が引けますが、その中で一番短い線は?
    その点からその直線に垂直に引いた線ですよね?
    それが最短距離です。
    そのことを、点と直線との距離と呼びます。

    しかし、上のような不正確な表現は、許されません。
    上の説明は、図を示しながら、ニュアンスで理解してもらおうとしている説明です。
    この説明が通じればよいですが、もし通じなければ、相手を混乱させるだけです。

    勝手な用語を使うと全く通じないことがあります。
    もう何年も前になりますが、中3の生徒が図形問題を解いている途中で、
    「この棒の長さが」
    と言い出して、ぎょっとしたことがあります。
    ・・・棒?
    棒って何のこと?
    虚をつかれて、本当に何のことかわからなかったのですが、それは「線分」のことでした。

    別の子で、これは代数の学習でしたが、式の計算のところで、
    「この式をほぐしていいですか?」
    と質問するので、困惑したこともあります。
    式をほぐす?
    それは、何をどうすること?
    ・・・その子が言っていたのは、式を展開することでした。
    ニュアンスで説明するのは、本人はよく理解できても、他人に通じない可能性が高いのです。

    上の私の説明も、幾何の専門家からすれば、線分を棒と呼ぶほどの暴挙を寄せ集めた説明です。
    1つ1つ、正確に定義された言葉を使うことで、相手に正確に伝わります。
    だから、数学は定義が極めて重要です。


    問題の意味が正確にわかったところで、さて、どう解きましょう。
    もう一度、問題を読んでみます。

    問題 点(1,2) から直線 3x+4y=5 までの距離を求めよ。

    よくわからなかったら、グラフを描いてみると助けになると思いますが、そろそろ、実際にグラフを描かなくても、頭の中のイメージだけで何とかなりそうな気がします。
    とにかく直線 3x+4y=5 がある。
    その直線外の点(1,2) がある。
    その点から直線に垂線を引く。
    その点とその垂線の足との距離が、求める距離です。

    これまで学習したことを利用して求められそうな気がします。
    点(1,2)を、点Pとしましょう。
    与えられた直線 3x+4y=5 を対称の軸として、点Pと対称な点をQ(a,b)とおきます。
    直線 3x+4y=5 と、直線PQは、垂直です。
    線分PQの中点は、直線 3x+4y=5 を通ります。
    こうしたことを利用して、何とか求めることができそうな気がします。
    Qの座標がわかれば、線分PQの長さがわかります。
    それを1/2にしたものが、点Pと直線との距離でしょう。
    その指針で、解いてみましょう。

    まず、与えられた直線の傾きを求めます。
    3x+4y=5 をyについて解くと、
    4y=-3x+5
    y=-3/4x+5/4

    この直線の傾きは、-3/4であることがわかりました。
    では、それと垂直な直線PQの傾きは、4/3です。
    垂直な2直線の傾きの積は、-1だからです。

    直線PQの傾きは、P(1,2)、Q(a , b) を、変化の割合の公式に代入すると、
    b-2 / a-1 です。
    よって、
    b-2 / a-1=4/3
    これを整理すると、
    4(a-1)=3(b-2)
    これは、両辺が分数のときに、互いの分母×分子は等しいことを利用しました。
    4a-4=3b-6
    4a-3b=-2 ・・・①

    式が1本出来ました。
    もう1本式があれば、Q(a , b) を求めることができます。

    線分PQの中点が、対称の軸を通ることを利用しましょう。
    線分PQの中点の座標は、(a+1 / 2 , b+2 / 2)。
    これが直線3x+4y=5を通るから、
    3( a+1 / 2) +4(b+2 / 2)=5
    各辺を2倍して、
    3(a+1)+4(b+2)=10
    これを整理して、
    3a+3+4b+8=10
    3a+4b=-1 ・・・②

    ①、②を連立して、aとbを求めましょう。
    ①×4+②×3 をすると、
    25a=-11
    a=-11/25 ・・・③

    ③を②に代入して、
    3・(-11/25)+4b=-1
    -33+100b=-25
    100b=8
    b=2/25

    よって、Q(-11/25 , 2/25)

    P(1,2)、Q(-11/25 , 2/25)より、PQ間の距離を求めることができます。
    2点の距離を求める公式に代入して、
    √(-11/25-1)2+(2/25-2)2
    =√(-36/25)2+(48/25)2
    =√1296+2304 / 252
    =√3600 / 252
    =60/25
    =12/5

    PQ間の距離が12/5ですので、点Pと対称の軸との距離は、その1/2ですから、
    12/5×1/2
    =6/5

    できました。


    とはいえ、計算が面倒でしたね。

    ・・・これ、公式があったんじゃない?
    そのようなツッコミもあるかと思います。
    はい。
    これは公式に代入して、もっと簡単に答を出せる問題なのです。
    まずは公式を確認しましょう。

    直線 ax+by+c=0 と、この直線外の点(x1,y1)との距離dは、
    d=|ax1+by1+c| / √a2+b2

    このブログの表示では、もう何のことやらさっぱりわからないかもしれません。
    お手元の教科書・参考書で確認されるか、上の画像をご覧ください。
    公式そのものは、そんなに特殊なものではなく、どこの高校でも必ず学習する基本公式です。

    これに代入すると、上の問題は、点(1,2)から直線3x+4y-5=0 までの距離となりますから、
    |3・1+4・2-5| / √9+16
    =|6|/ √25
    =6/5

    と簡単に求めることができます。

    ただ、数学が苦手な子は、そもそも絶対値記号のことを忘れていたり、
    「3・1+4・2+5ではないのは、なぜですか?」
    と質問し、そこの思い込みからなかなか抜け出せないことがあります。

    3x+4y-5=0 と移項したからですよと説明すればわかってくれる場合は比較的簡単ですが、
    「絶対値は正の数なのだから、-5というのはおかしい。+5でなければおかしい」
    という論理のねじれや歪みが生じている場合は、説得は簡単ではありません。
    数学の問題を解いていて、このような論理のねじれや歪みを起こしやすい人がいます。
    絶対値の基本に戻り、|-2|=2といった、絶対値記号の内側は負の数でも構わないことを確認し、誤解を解いていく必要があります。
    自力では、こうした誤解からなかなか脱出できません。
    個別指導の強みはそこです。
    どんな妄言でもよいので、妄言は妄言のまま声に出してくれると、解決への道が開かれます。

    さて、では、この公式の証明を始めましょう。
    直線 ℓ : ax+by+c=0 と、この直線外の点P(x1, y1) がある。
    Pから ℓ に引いた垂線と ℓ との交点をH(x2, y2) とすると、
    PH=√(x2-x1)2+(y2-y1)2 ・・・①
    また H は直線 ℓ 上の点だから、
    ax2+by2+c=0 ・・・②
    ここで、
    (ⅰ) ab≠0 のとき、
    ℓ の傾きは、-a / bであるから、直線PHの傾きは、b/a
    よって、
    y2-y1 / x2-x1=b / a
    これを整理すると、
    y2-y1=b / a ・ x2-x1
    y2-y1 / b=x2-x1 / a
    この値をtとおく。
    すなわち、
    x2-x1 / a=t、 y2-y1 / b=t、
    これを変形して、
    x2-x1=at 、 y2-y1=bt
    x2=at+x1 、 y2=bt+y1 ・・・③
    これを②に代入して、
    a(at+x1)+b(bt+y1)+c=0
    これをtについて解くと、
    a2t+ax1+b2t+by1+c=0
    t(a2+b2)=-ax1-by1-c
    t=-ax1-by1-c / a2+b2 ・・・④
    ③、④を①に代入すると、
    PH=√a2t2+b2t2
    =√(a2+b2)t2
    =√(a2+b2)t2・(ax1+by1+c)2 / (a2+b2)2
    =√(ax1+by1+c)2 / (a2+b2)
    =|ax1+by1+c| / √a2+b2 ・・・⑤

    (ⅱ)a=0、b≠0のとき、
    y=-c/b
    PH=|y1+c /  b|
    =|by1+c|/ |b|
    ⑤の式からもこれと同じ式が得られる。
    またa≠0、b=0のときも、同様のことがいえる。
    よって、aかbのいずれか1つが0のときも、PHは⑤の式であらわされる。

    したがって、(ⅰ)(ⅱ)より、
    PH=|ax1+by1+c| / √a2+b2

    公式の証明を理解したら、あとは活用するだけです。
    この公式は、使う機会がとても多い公式ですので、早めに覚えて活用しましょう。


      


  • Posted by セギ at 11:29Comments(0)算数・数学

    2020年08月26日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その6。恒等式の利用。


    今回は、こんな問題を。

    問題 2直線 2x+y-5=0、3x-2y-11=0 の交点と、点(1,-2) を通る直線の方程式を求めよ。

    ・・・あれ?
    簡単すぎる・・・?
    こういう問題は、以前に学習しましたよね。

    では、まず、その解き方から。

    2点の座標がわかれば、直線の方程式は求められます。
    1点は、問題で示されている点(1,-2)。
    あと1点は、2直線の交点。
    まず、これを求めましょう。
    2直線の方程式を連立して解きます。
    2x+y-5=0   ・・・①
    3x-2y-11=0 ・・・②

    ①×2+②
      4x+2y-10=0
    +)3x-2y-11=0
     7x  -21=0
         7x=21
          x=3 ・・・③

    ③を①に代入して、
    6+y-5=0
       y=-1

    よって、交点の座標は(3,-1) です。

    すなわち、求める直線は、点(1,-2) , (3,-1) を通りますから、2点を通る直線を求める公式に代入して、
    y+2=1/2(x-1)
    y=1/2x-1/2-4/2
    y=1/2x-5/2

    これが答となります。


    この解き方で構わないのですが、後に、2円の共有点と他の1点を通る円の方程式などを求める際に利用する解き方があります。
    こちらのほうが汎用性が高いです。
    ただし、これからの数学の多くはそうですが、汎用性の高い考え方は、難しいです。
    できるだけわかりやすく説明したいと思いますが。
    まずは、答案を見てみてください。

    2直線、2x+y-5=0、3x-2y-11=0 の交点を通る直線の方程式は、
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0 ・・・① と表される。
    この直線が、点(1 , 2) を通るから、
    k(2-2-5)+(3+4-11)=0
    -5k-4=0
    -5k=4
    k=-4/5
    これを①に代入して、
    -4/5(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    -4(2x+y-5)+5(3x-2y-11)=0
    -8x-4y+20+15x-10y-55=0
    7x-14y-35=0
    x-2y-5=0

    これが答です。


    ・・・はあ?
    何それ?
    何をしたの?
    そのkって何?

    そのような声が、絶叫レベルで聞こえてきそうな気がします。

    上の答案は、冒頭の2行が謎に満ちていると感じる人が多いでしょう。

    2直線、2x+y-5=0、3x-2y-11=0の交点を通る直線の方程式は、
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0 と表される。

    ・・・何それ?
    何で、2直線の交点を通る直線の方程式が、そんなもので表されるの?

    問題は、そこですよね。

    これは、kについての恒等式なんです。
    kの値が何であっても、この式は成立するということなのです。

    ・・・どういうこと?

    それでは、kの値が何であってもこの式が成立するための条件を考えてみましょう。
    k(2x+y-5)の部分の、(2x+y-5)の値が0でなければ、そんなものは成立しません。
    この( )の中が、例えば1であったり、2であったり、何か0以外の数字になってしまったら、kの値によって、左辺=0 が成立することもあれば成立しないこともある、となってしまいます。
    kの値が何であってもこの式が成立するためには、kの係数は0である必要があります。
    だから、2x+y-5=0 です。
    また、それだけでは、必ず左辺=0 とはなりません。
    後半の( )の中身、3x-2y-11=0 も同時に満たさなければ、左辺=0 とはなりません。

    ということは、どういうことか?
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式が常に成り立つということは、2x+y-5=0、かつ、3x-2y-11=0 だということです。

    2x+y-5=0、かつ、3x-2y-11=0
    そのときの x と y の値は、この2つの式を連立して解いた解ということです。
    それは、この2直線の交点の座標ですよね?
    だから、
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式が表す直線は、2直線の交点の x 座標と y 座標の値のときは、k の値が何であっても、必ず成立するのです。
    すなわち、この直線は、k の値は謎のままであっても、2直線の交点の x 座標と y 座標の関係は満たします。
    つまり、この直線は、2直線の交点を必ず通るのです。
    わさわざ計算して交点の座標を求めなくても、その交点を通る直線を表すことができるのが、この解き方の利点です。

    それでもまだもやもやするという人のために、一応確認しておきましょうか?
    冒頭の求め方で、2直線の交点の座標は出してありました。
    交点は、点(3,-1) でしたね。
    この値を、この k を用いた式に代入してみましょう。
    k(6-1-5)+(9+2-11)=0
    0・k+0=0
    確かに、これなら、kが何であっても、成立します。
    2直線の交点(3,-1) の値を代入すると、kが何であってもこの式は成立します。
    つまり、この直線は、kの値が何であっても、必ず点(3,-1) は通るのです。

    ただし、このままでは、kが定まっていません。
    2直線の交点は必ず通るけれど、傾きもy切片も定まりません。
    2直線の交点のところでピン留めされた直線が、360度、ぐるぐる回るイメージを抱いてください。
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式が表しているのは、そういう、ぐるぐる回る無数の直線なのです。

    このkが定まるとき、その直線は1つに定まります。
    回転をやめ、定まった傾きとy切片をもった直線の式となります。

    では、どうやってkを求めましょう?
    問題を見直してみましょう。

    問題 2直線 2x+y-5=0、3x-2y-11=0 の交点と点(1,-2) を通る直線の方程式を求めよ。

    求める直線は、点(1,-2) を通るのです。
    ならば、求める直線は、
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式で表されるうえに、さらに、x=1 のときy=-2 という条件を満たすということです。
    そのとき、kの値はただ1つに定まります。
    代入してみましょう。
    k(2-2-5)+(3+4-11)=0
    これをkについて解きます。
    -5k-4=0
    -5k=4
    k=-4/5

    2直線の交点を通る直線は、360度回転して無数に存在するけれど、k=-4/5であるとき、点(1,-2) を通ります。
    では、このkの値を、k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0 の式に代入すれば、求める式になるでしょう。
    代入しましょう。
    -4/5(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    これを整理しましょう。
    両辺を5倍して、
    -4(2x+y-5)+5(3x-2y-11)=0
    展開すると、
    -8x-4y+20+15x-10y-55=0
    7x-14y-35=0
    x-2y-5=0

    これが、求める直線です。
    一番上の求め方では、y=1/2x-5/2となりました。
    形が違うだけで、同じ式です。
    確かめましょうか。
    x-2y-5=0 を、yについて解いてみましょう。
    -2y=-x+5
    y=1/2x-5/2
    やはり、同じ式ですね。


    なぜkを用いるのかが理解できたところで、細かい疑問が浮かぶ人もいるかもしれせん。
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式は、なぜ、2x+y-5のほうにkをかけたのか?
    3x-2y-11のほうにkをかけてはいけないのか?

    どちらでも、大丈夫です。
    同じ結果が出ます。
    同じ交点を通る直線の式を表しているのですから。

    でも、不安な人もいるかもしれません。
    試してみましょう。

    k(3x-2y-11)+(2x+y-5)=0 
    これが点(1,-2)を通るから、
    k(3+4-11)+(2-2-5)=0
    -4k-5=0
    -4k=5
    k=-5/4 

    kの値が違うっ、と慌てないで。
    この段階では違う値が出ます。

    このkを、k(3x-2y-11)+(2x+y-5)=0 に代入します。
    -5/4(3x-2y-11)+(2x+y-5)=0
    -5(3x-2y-11)+4(2x+y-5)=0
    -15x+10y+55+8x+4y-20=0
    -7x+14y+35=0
    x-2y-5=0

    無事に、同じ式となりました。
    大丈夫です。
    どちらでも、好きなほうの直線をk倍してください。


      


  • Posted by セギ at 10:51Comments(0)算数・数学

    2020年08月18日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その5。


    さて、今回は、こんな問題です。

    問題 直線y=3xに関して、直線y=x+2と対称な直線の方程式を求めよ。

    前回は、対称の軸である直線1本と、与えられた点から、その直線に関して対称な点の座標を求める問題でした。
    今回は、対称の軸である直線が1本あるのは同じですが、与えられたのは、点ではなく、もう1本の直線です。
    その直線と対称な関係の直線の式を求めるのです。

    これも、グラフを描いて、具体的に考えたほうがわかりやすいでしょう。
    対称の軸は、y=3x。
    そして、もう1本、与えられた直線 y=x+2 も描きましょう。
    前回説明した通り、大体で大丈夫です。
    その直線と対称の関係にある、もう1本の直線も、大体のイメージでよいので描いてみましょう。
    線対称ですので、対称の軸との交点は一致しているでしょう。
    上の画像の、黒い直線が、対称の軸である y=3x。
    青い直線が、与えられた直線 y=x+2。
    赤い直線が、おおよそのイメージで描いた、求めたい直線です。

    どうすれば、この赤い直線の式を求めることができるでしょうか?
    まずは、画像で板書したのとは異なる、基本的な求め方を解説します。

    直線の式は、2点の座標がわかれば求めることができます。
    だから、赤い直線上の2点の座標を求めることが目標となります。

    対称の関係があるので、黒い直線と青い直線との交点を、赤い直線も通ります。
    まずは、その座標を求めましょう。
    y=3x と y=x+2 とを連立すれば、求めることができます。
    3x=x+2
    2x=2
    x=1
    これをy=3xに代入して、
    y=3
    よって、交点の座標は(1,3)。
    赤い直線も、この交点を通ります。

    残る1点は?
    y=x+2 上の任意の点と対称な点の座標を求めたらどうでしょうか?
    y=x+2 上の点であれば、どんな点でもいいのです。
    それと対称な点が、必ず求めたい赤い直線上にあるでしょう。

    どんな点にしましょうか?
    そこで、悩んで、いつまでも答が出ない人がたまにいるのですが、本当にどうでもいいのです。
    xの値を適当に決めましょう。
    今回は、0にしてみましょうか。
    本当に、何でもいいんです。
    x=0のとき、y=0+2=2となります。
    すなわち、点(0,2) は、直線y=x+2上の点です。

    これと対称な点は?
    前回、対称な点の求め方を学習しました。
    今、求めた点をP(0 , 2)とし、求めたい対称な点をQ(p , q)とおきましょう。
    点Pと点Qを結んだ直線PQは、対称の軸y=3xと垂直に交わります。
    すなわち、傾きの積は、-1です。
    (q-2)/(p-0)・3=-1
    これを変形しておきましょう。
    3(q-2)=-p
    3q-6=-p
    p+3q=6 ・・・①

    点P(0 , 2)と点Q(p , q)の中点(p/2 , q+2 /2)は、対称の軸を通りますから、
    y=3x に代入して、
    q+2 /2=3・p/2
    q+2=3p
    -3p+q=-2・・・②

    ①と②を連立すれば、点Q(p , q)の座標を求めることができます。

    ①×3+② 
       3p+9q=18
    +)-3p+ q=-2
        10q=16
    よって、q=8/5
    これを①に代入して、
    p+24/5=30/5
    p=6/5

    よって、Q(6/5,8/5)とわかりました。
    求めたい赤い直線は、点(1,3)、(6/5,8/5)を通ります。
    2点を通る直線を求める公式に代入して、一気に求めることができますが、今、傾きの分母も分子も分数になるので、先に傾きを計算しておきましょうか。
    xの増加量は、6/5-1=1/5
    yの増加量は、8/5-3=-7/5
    よって、傾きは、-7/5÷1/5=-7
    点(1,3)を通り、傾き-7の直線は、
    y-3=-7(x-1)
    y=-7x+7+3
    y=-7x+10

    これが求める直線です。

    学習の順序として、まずこの求め方を理解するのが順当ですが、この単元で少し後に学習する「軌跡」の考え方をこの段階で少し利用するなら、以下のような求め方もあります。
    おそらく、軌跡を学習した後では、むしろその求め方のほうがピンとくると思います。


    もう一度、問題に戻りましょう。

    問題 直線y=3xに関して、直線y=x+2と対称な直線の方程式を求めよ。

    ここで、y=x+2上の点をP(a , b)、それと対称な求める直線上の点をQ(x , y)とします。
    PとQは逆のほうが良かったなあと画像の板書を撮影した後で気づきましたが、まあ、そんなのは大したことではありません。

    この点Q(x , y)の x と y の関係を表す式を求めることができれば、それが求める直線の式となるのです。

    ・・・はあ?

    まだ軌跡を学習していない生徒にこの説明をすると、たいていポカンとした顔をします。
    よく意味がわからない・・・。
    そういう顔です。
    軌跡を学習した後でも、この説明の意味がわからず、だから軌跡に関する問題を解けない子もいます。

    点Q(x , y)は、求めたい直線上の点です。
    直線上(曲線でもそうですが)の点のx座標とy座標には固有の関係があり、その関係を表したものが、その直線の式です。
    1つの直線上のどの点も、x座標とy座標との関係は同じです。
    同じ関係を持っている点の集合が直線ということです。
    その、x座標とy座標との関係を表した式が、その直線の式です。

    この説明が最初にされたのは、中2の「1次関数」の中での、「連立方程式とグラフ」の学習のときです。
    理解できないままで終わる人、理解したような気はするが、どうせ大した内容ではないと忘れ去った人が多いところです。
    しかし、これが理解できないと、関数の応用問題はほとんど解けないのです。
    一番大切なことを、理解していない・・・。
    そのため、関数が作業手順の丸暗記のまま終わってしまうのは、とても残念なことです。

    直線上の点のx座標とy座標には、全てその直線の式の関係があります。
    例えば、y=2x+1 という式なら、その直線上の全ての点のx座標とy座標には、y=2x+1の関係があります。
    逆に、その直線上のある点のx座標とy座標との関係を求めることができれば、それがその直線の式なのです。

    だから、目標は、点Q(x , y)の、x と y の関係を求めることです。

    どうやって?
    x と y に関する式を立てればよいでしよう。

    ・・・いや、だから、それが答で、それがわからないんでしょう?
    そんなツッコミが聞こえてきそうです。

    確かに。
    いきなり x と y との関係を表す式は立てられません。
    でも、点P(a , b)があります。
    a と b と x と y に関する式なら、何か立てられそうな気がしませんか?
    わからない文字が4つある場合、式が3本あれば、x と y だけが残る式を作ることができます。

    まず、一番簡単で、しかし、案外気がつかない人もいるのが、a と b に関する式です。
    点P(a , b) は、与えられた直線 y=x+2 上の点です。
    だから、y=x+2 の関係を満たします。
    すなわち、
    b=a+2 ・・・①
    これで1本。
    あと2本です。

    直線PQは、対称の軸 y=3x と垂直に交わります。
    すなわち、傾きの積は-1です。
    直線PQの傾きは、どう表せるでしょうか。
    座標は、P(a , b)、Q(x , y)ですから、変化の割合の公式に当てはめると、
    y-b / x-a です。
    傾きの積が-1であることを表す式は、
    y-b / x-a ・ 3=-1
    これを変形し、整理しましょう。
    3(y-b)=-(x-a)
    3y-3b=-x+a
    -a-3b=-x-3y
    a+3b=x+3y ・・・②
    これで2本目。
    あと1本です。

    線分PQの中点は、対称の軸y=3x上の点です。
    PQの中点の座標は、(x+a / 2 , y+b / 2)。
    これがy=3xを通るから、
    y+b / 2=3(x+a / 2)
    これを整理します。
    y+b=3(x+a)
    y+b=3x+3a
    -3a+b=3x-y ・・・③

    これで、式が3本たちました。
    この3本の式を上手く組み合わせて、x と y だけの式にすれば、それが答です。

    どうすれば良いか?
    ここでの発想も、慣れるまでは「えっ?」と思う人もいるようです。
    b=a+2 ・・・① の式は、x も y も含んでいないので、一番使い道がないダメな式のようですが、一番の骨格をなす式なのです。
    この式の a と b を、x と y だけで表すことができれば、a と b は消え、x と y だけの式になるのです。
    a を、x と y だけで表す。
    b を、x と y だけで表す。
    そして、①の式に代入する。
    そうした指針で考えていきましょう。

    ①の使い道は最後。
    ならば、②と③だけで、それをやればよいのです。
    a を、x と y だけで表す。
    つまり、b を消去すればよいのです。

    a+3b=x+3y ・・・②
    -3a+b=3x-y ・・・③

    この2本の式で、b を消去します。
    これも中2で学習した、連立方程式が基本です。
    加減法で、消去できますね。
    ②-③×3
        a+3b= x+3y
    -) -9a+3b=9x-3y
      10a  =-8x+6y
         a=-4/5x+3/5y ・・・④

    次に、a を消去した式を作りましょう。
    ②×3+③
       3a+9b=3x+9y
    +) -3a+ b=3x-y
         10b=6x+8y
          b=3/5x+4/5y ・・・⑤

    できました。
    この2本の式を①に代入すれば、a と b を消去した、x と y だけの式ができます。
    ④、⑤を①に代入して、
    3/5x+4/5y=-4/5x+3/5y+2
    3x+4y=-4x+3y+10
    y=-7x+10

    できました。

    ところで、前回までの直線の式に関する問題に関して、ベクトルを用いた解き方をコメントで書いてくださった方がいらっしゃいました。
    数B「ベクトル」を学習すると、直線と方程式や図形と方程式に関する問題も、一般の図形問題も、ものすごく簡単に解くことができるようになります。
    この数Ⅱ「図形と方程式」を学習している段階では、高校2年生は数B「ベクトル」を学習していない場合が多いので、その解説はしないのですが。

    ただ、「ベクトル」を学習しても、こうした座標平面上の問題で楽に使いこなせるようになる人はそんなに多くないかもしれません。
    問題集の解説を読んでも、何にもわからない。
    意味がわからない。
    何を根拠にどう解いているのか、一切わからない。
    そうなってしまうことがあります。

    ベクトルの最初のほうは、中学理科でやった力の向きと大きさみたいなものかな、何だ簡単だと思ったのに、気がついたら、とんでもないことになっている。
    気がついたら、飛躍している。
    ベクトル方程式なんて、定義から理解不能。
    説明を聞いているだけで、死相が表れる。
    そんな高校生もいます。
    使えると、凄いんです。
    上のような、面倒くさい計算過程の必要な問題が、簡素な手順で解けるんです。

    でも、今はまだ、ベクトルは使わずに、地道に解いていきましょう。
     
      


  • Posted by セギ at 11:16Comments(0)算数・数学

    2020年08月13日

    高校数Ⅰ対称式の計算。



    今回は対称式の話。
    対称式とは、文字式で、文字の値を入れ替えても式全体の値が変わらないものをいいます。
    例えば、x2+y2などがそうです。

    対称式の問題は、多くの単元に登場します。
    平方根と対称式。
    三角比と対称式。
    虚数と対称式。
    新しい事柄を学習する度に、それとからめて対称式の値に関する問題を演習します。
    しかし、対称式の問題を苦手とする高校生は多いです。

    対称式の計算は、発展的なテキストでは中学3年から登場します。
    例えば、こんな問題です。

    問題 x+y=3、xy=2であるとき、x2+y2の値を求めよ。

    x2+y2
    =(x+y)2-2xy
    =32-2・2
    =9-4
    =5

    上の式の1行目から2行目への転換がわからないという子は案外多いのです。
    無いものを足して、その後同じものを引いて辻褄を合わせる、その考え方が難しいのだろうと私は思っていました。

    実際、この考え方を利用する2次関数の平方完成でも最初は苦労する子がいます。
    例えば、2次関数 y=x2+4x+7 を、
    y=(x2+4x)+7
    =(x+2)2-4+7
    =(x+2)2+3 
    と平方完成する際にも、最初は何をやっているのか理解できず、かなり補助が必要な子はいます。

    しかし、習得まで時間がかかることはありますが、2次関数の平方完成に関しては最後まで理解できないということは少なく、大抵の高校1年生ができるようになる作業です。
    平方完成に関する練習問題は豊富にあるので、自力でできるようになるまで練習できるから、ということもありますが、それだけでなく、対称式の値に関する問題ほどの激しい抵抗感を示さずに理解するのです。

    この2つは、わかりやすさという点で、何が違うのでしょう?
    不思議です。
    つまずきやすい理由がわかっていれば、事前にそこを強調し、
    「そこに石がある。そこにつまずくから注意して」
    と促していけるのです。
    しかし、教える者からは平らな道に見えるところでつまずく子がいるように感じることがあります。
    平らな道なのにそこでつまずく子が多いことだけは現象としてわかっているのです。
    なぜなのかはわかりません。
    目を凝らしても、つまずく石は見えない。
    教えることの難しさの1つです。

    これは以前、中学3年生に理科を教えたときのこと。
    「塩化銅水溶液が青く見えるのは、あるイオンが原因です。そのイオン名を答えなさい」
    という問題を解いたときのことです。
    正解は銅イオンです。
    その子の誤答は「水素イオン」でした。
    しかし、その子は納得しませんでした。
    「水素イオンじゃないんですか?水素イオンは必ずあるって学校で言われた」
    「・・・・水素イオンは水溶液中にあるけど、青く見える原因ではないですよ」
    「酸性は青いって学校で言われた」
    「うん?どういうこと?」
    「・・・・銅イオンが青いのは、覚えなければならないことですか?」
    「まあ、そうですね」
    「何だよ、いちいち覚えるのかよ。学校では、理科は暗記するなと言われた」
    「・・・・うん?」
    その子の言うことは一言一言の飛躍が激しく、あっという間に怒り出していました。

    彼の中で、いくつかの知識が頭の中で癒着し、妙なつながり方をしているようでした。
    水溶液の中には水素イオンがある。
    水素イオンがあるものは酸性。
    酸性は青い。
    最後の「酸性は青い」が特に謎なのですが、とにかくこの論法でいくと、塩化銅水溶液を青く見せているものの正体は水素イオンということになってしまうのでした。
    この誤解を解くのはかなり大変でした。

    「わからない」というのは、論理を追えないことではないのかもしれません。
    少し複雑な論理だから途中で迷子になっているのだろうとこちらは思い、ゆっくり説明したり繰り返したりしても、生徒の理解が進まないときがあります。
    「どこからわからない?」と質問します。
    板書の1行ずつを示しながら、あるいは、論理を細かく段階に区切りながら、「ここまではわかる?」と確認しようとします。
    どこからわからないのか、どこから説明すればいいのか。
    しかし、こうした指示に反応してくれず、生徒が何か別のことをずっと言い続けることがあります。
    論理の癒着がその子の中で起きている場合に、そうなることが多いようです。
    他人にはその論理は追えません。
    でも、その子は論理的なことのつもりで話しているので、私が怪訝な顔をすればするほど、むしろ私を説得しようとします。


    対称式の問題でも、ある日、そんなことが起こりました。

    問題 x+y=3、xy=2のとき、x2+y2の値を求めよ。

    x2+y2
    =(x+y)2-2xy
    =32-2・2
    =9-4
    =5

    「それ、最初に入れたらダメ?」
    この問題を解説していたとき、そう質問されたのです。
    最初に入れる・・・・?
    「最初に入れるって、どういうこと?」
    「最初に2乗したらだめ?」
    「うん?どういうこと?式を言ってみて」
    具体的な式を言ってくれれば、最初に入れる、最初に2乗するとは何をすることなのか、わかるかもしれません。
    しかし、それには答えてくれず、何かをずっと説明しているのですが、よく意味がわからないのです。

    授業はここで膠着するか?
    でも、この件に関して、以前に、私は大人のための教室で、重要なヒントを得ていました。

    x2+y2
    =(x+y)2
    =32
    =9

    私はそう板書して、その子に問いかけました。
    「こういうこと?」
    その子の顔がパッと輝きました。
    「そう!そういうこと」
    「・・・うーん。これは間違っています。どこが間違っているか、わかりますか?」
    「えっ?」

    その子は、何を誤解していたのか?
    x2+y2=(x+y)2
    だと思っていたのです。
    x2+y2
    =(x+y)2
    =32
    =9
    と、最初に数字を入れて2乗すれば済むことなのに、なんでまわりくどい計算をしなければならないのかと、それを訴えていたのでした。

    x2+2xy+y2=(x+y)2 です。
    因数分解の公式ですから、当然わかっている内容です。
    それでも、万が一忘れているといけないので、それは赤字で板書もしていました。
    しかし、当人は、x2+y2=(x+y)2 
    だと思いこんでいたのです。
    人は、思いこみが強いとき、それを否定する情報が目の前にあっても無視するそうです。
    確証バイアスと呼ばれる状態です。
    x2+y2=(x+y)2 
    とすれば済むことを、なぜまわりくどい変な解き方をしなければならないのかと不思議に思い、正しい解き方が理解できなかったのでした。

    x2+2xy+y2=(x+y)2
    という因数分解の公式は知っているのです。
    しかし、同時に、
    x2+y2=(x+y)2
    だとも思っている。
    知識が二重構造になっていて、上の2つのことが頭の中に同時に存在しています。
    それはそれ、これはこれ、として存在しているのです。
    乗法公式を学習する前、例えば文字式を学習し始めたばかりの中学1年生に解かせたら、
    (x+y)2=x2+y2
    としてしまうと思います。
    そうしてしまう感覚が、乗法公式を学習した後も残ってしまうのだと思います。

    (x+y)2=x2+y2 ではありません。
    数字を代入してみるとわかります。
    (3+2)2=52=25 です。
    32+22=9+4=13 
    とは異なります。
    しかし、そう説明しても、
    それは、最初に(  )の中の3と2を足してしまうからそうなるので、別々に計算すれば、違う結果になるのでは?
    そのような主張を聞いたこともあります。

    ルールに従っている限り、どこからやっても同じ結果になる。
    それが数理の根本です。

    いや、そうではないことがあった気がする。
    自分はそうではなかった場合を経験している。
    変だなあと思ったけれど、まあ仕方ないと諦めた気がする。
    数学に対して、こうした根本の不安定さや不信感がある子は、案外多いのだと思います。
    原因は本人の計算ミスだろうと想像できるのですが、本人の実感としては、ちゃんと計算したのにそうなったのだ、という記憶が濃いようです。

    このことは、大人のための数学教室で私が教わったことでした。
    大人のための数学教室では、2次式ではなく、
    x3+y3=(x+y)3
    という思い込みがもとで、3次式の解と係数の関係に関する問題が理解できない場面があり、長いやりとりの末、この誤解が発見されました。
    そうではないことも知っている。
    しかし、そうだとも思っている。
    あるいは、そのときだけふっとそう思ってしまう。
    そのときだけは、そう思い込んでしまっていた。
    そういうことが数学への理解を妨げ、不信感を募らせるようです。

    しかし、2次関数の平方完成では、そのような誤解が顔を出しません。
    x2+6x+7
    =(x+3)2-9+7
    =(x+3)2-2
    という作業は誰でも比較的すんなりと理解できるのです。
    xと数字なら大丈夫だが、xとyだと誤解が顔を出す。
    同じことなのですが、違うように見えるようです。

    xと数字なら、xが主体で、数字は添え物的な見方になるが、xとyだと、対等の印象があり、見え方がまた違ってくるのでしょうか。
    そうした見え方の偏りも、数学のわかりにくさの正体なのかもしれません。

    x2+y2
    =(x+y)2-2xy

    この解き方の理解を妨げるものの正体。

    それは、この解き方の難しさにあるのではなく、本人が何か間違った思い込みをしているため、正しい理解が妨げられている。
    つまり、間違った思い込みが解消されれば、この問題は解けるようになるのです。

    難しいから、わからないのかなあ・・・・。
    教える側が勝手にそう思い込んで諦めてしまうことの多くの中に、こうした単純な障壁さえ取り除けば簡単に理解できることがあるのかもしれません。



      


  • Posted by セギ at 08:41Comments(0)算数・数学

    2020年08月09日

    中学数学1年。文字式のルールを理解していますか。


    中1の生徒と「文字式」の予習をしていて、不思議な誤答に出会うようになりました。

    例えば、a+3a=3a2 としてしまうのです。

    「・・・えーと、何でそこをかけ算したの?」
    「・・・」

    「文字式」は、中1で、「正負の数」の次に学習する単元です。
    学習の冒頭で、3×a=3a と表すといった、乗法の記号の省略を学びます。
    そのせいで、全てかけ算に見えてしまうようになったのかもしれません。
    a+3a が、a×(+3a)と見えているのだと思います。

    「正負の数」を学習する際、加法の+の記号の省略を学びます。
    (+3)+(+7)=+10 といちいち書かず、
    3+7=10 と書く。
    (+3)+(-7) は、
    3-7 と、書きます。

    そして、次の「文字式」という単元で、今度は×の記号の省略を学びます。
    しかし、省略せよといいながら、教科書でも参考書でも、説明のために再び丁寧に書いてあることも多いです。
    それで、混乱する子もいるのかもしれません。
    結局、そのときどきの都合で、省略されたりされなかったりしているから、わからなくなっていくのでしょうか。

    問題 a×(-7) を×の記号を使わないで表しなさい。
    こういう問題を、a-7 と誤答してしまうのを見ることもあります。
    本人の中では、a-7=a×(-7) なのでしょう。
    このミスと、a+3a=3a2 とは同じ根をもつものだと感じます。


    式の中の、1つ1つの項を把握できていないのでしょうか?
    ただ、以下のような問題は正答できるのです。

    問題 以下の式の項を答えなさい。
    -3+7-8

    項は、-3、+7、-8
    完璧に正答できます。
    文字式の場合も同様です。

    3a2-2a-1の項を答えなさい。

    3a2、-2a、-1。

    問題なく正解できるのです。
    そして、そのことと、a+3a=3a2 が、普通に同居しているのです。

    1つ1つの項が見えるようになれば、「正負の数」も「文字式」も、問題なく計算できるようになっていく。
    そう思ってきました。
    しかし、各項が把握できるようになり、a+3aは、aという項と、+3aという項なのだと見えているから、むしろ、それをかけ算してしまう・・・。
    昔は見られなかったミスです。
    今年になって、初めて、このようなミスを見るようになりました。
    しかも、複数の生徒が同時多発的に同じミスをしています。
    a+3a のように見るからに「たし算」であるものを「かけ算」することなど、昔は誰も発想しませんでした。
    新しい数学の学習は、誤解されやすい何か危険なものをはらんでいるのでしょうか。


    今年は、学習が後れている分、じっくりと数学を学べているのではないか?
    そのように思っていたのですが、むしろ、
    (+3)+(+7)=+10
    といった、書かなくてもいい符号をわざわざ書いている式を長期間見ることになった中1が多いです。
    そのことも影響しているのかもしれません。
    気がつくと、2月頃から予習を初めて、もう半年も「正負の数」をやっている・・・。
    (+3)×(+7)=+21
    なんていう式を、気がつくと半年も見ています・・・。
    それをさらにくどくどと記述させる問題がテストに出るので、省略できる符号は必ず省略した式を書いていくことを徹底できません。
    省略できる符号は、必ず省略して書く。
    絶対に省略できない符号は、必ず書く。
    「正負の数」の学習が終わった段階で、そうなっているのが目標ですが、いつまでもいつまでも「正負の数」の学習の途中です。
    同時に「文字式」の予習も行っています。
    そのせいで、a+3a の+の符号は、絶対に省略できないから書いてあるのだということが、理解できなくなっているということもあるのかもしれません。

    a+3aは、a+(+3a) と、a×(+3a) と、両方の可能性があると思っている・・・。

    結局、一度でスッキリする説明はなかなかうまくできず、多くの問題を解きながら、それは違う、それは正解、と実践を踏んで、その子の頭の中に正しい概念が作られていくのを待つしかないようです。

    ただ、光も見えています。

    数と文字とをかけるときは、数から先に書く。
    例 a×(-7)=-7a

    こうした細則は、わかりにくいようで、実はすべての例外を排除していくために設けられたルールです。

    「数と文字とをかけるときは、数から先に書くのが文字式のルールでしたよね。 a×(-7) は、-7a と書きます。 a-7という書き方はしません。a-7のときは、(+a)+(-7)という意味です。そして、a+3aは、(+a)+(+3a)という意味です」
    と説明すると、一瞬霧が晴れたような顔になることがあります。

    細則にてらして説明すると、理解してくれるようなのです。
    それは一瞬のことで、また混乱が始まったりもするのですが。

      


  • Posted by セギ at 15:53Comments(0)算数・数学

    2020年07月30日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その4。




    問題 直線 y=2x+1に関して、点A(3,2)と対称な点Bの座標を求めよ。

    さて、応用問題に入ってきました。

    解き方がすぐにピンときたなら必要ありませんが、わからないときは、グラフを描いて考えるのが得策です。
    グラフを描くのが苦手で、時間がかかり、かつ間違ったグラフを描いてしまいがちな人もいると思います。
    しかし、そこでひるんでグラフを描くのをやめてしまうと、この先の問題を自力で解くのはかなり難しくなります。
    グラフは描き慣れれば速く描けるようになりますし、正しく描けるようにもなります。
    練習あるのみです。

    高校生がグラフを描くのを見たとき、これまでで一番驚いたのは、普通の横罫線のノートに、定規で x 軸と y 軸を引いてから、そこに5ミリおきに目盛りを書き込み、それから、これまた定規を使って直線を引いた子を見たときです。
    「高校生は、グラフはフリーハンドで描きましょう。センター試験では、定規の使用は禁止されています。学校のテストも、定規は使用できないでしょう?」
    と声をかけると、それは知っていて、石のように固い表情になりました。
    フリーハンドでは上手く描けない。
    見た目が汚い。
    だから、自分のノートでは定規を使いたいというのです。

    不器用でありながら、潔癖。
    テストのときは定規を使ってはいけないと知っているが、自分のノートくらいはきれいに描きたい。
    そういう思いが強いようでした。
    「問題を解くための参考にするだけのグラフをそんなに丁寧に描いたら、1題解くのに30分くらいかかりませんか」
    そう声をかけても、固い表情のままでした。
    「テストのときには定規を使えないんですから、普段から使わない練習をしていないと、テストのときに余計な心の負担や緊張が生まれませんか」
    そう説得しても、ダメでした。

    しかし、しばらくして、同じ単元を復習したときに、グラフをフリーハンドで描くようになっていました。
    どういう気持ちの変化があったのかは、わかりません。
    学校で何か言われたか。
    友達から助言されたか。


    中学までは、直線のグラフは、方眼紙に定規を使って描きます。
    格子点から1ミリずれていたら、減点、あるいはバツといった厳しい採点基準があります。
    あれも、鬱陶しい話です。
    定規を格子点の真上に当ててしまう子は、そのまま直線を引いてしまい、必ずズレます。
    ペンの幅というものを考えていないのです。
    置き方が適当だと、さらにズレます。
    そういう子たちには、定規の使い方の指導をする必要があります。

    小学校では、筆算のときに引く横線は定規を使え、分数の横線も定規を使え、と訳のわからない要求をする先生もいるようです。
    首を傾げざるを得ない指導ですが、そういう指導をしないと、ぐにゃぐにゃと曲がった線を描き、筆算がどんどん斜めになっていき、計算ミスをしてしまう子がいるのも事実。
    そのための指導なのだとは思います。
    定規ばっかり使っているから、いつまでもきれいな直線が引けないのだ、とも言えますが。
    三鷹の学校の先生でそういう人がいるという話を聞いたことがないのは幸いですが、以前、筆算の横線に必ず定規を使う小学生の女の子に出会ったことはあります。
    まだ小学生なので、使いたいものは使えばいいやとほおっておいたら、そのうち使わなくなりました。


    なぜ高校数学では、グラフは定規を使わずに描くのか?
    正確な理由はわかりません。
    あまり勉強が得意ではない生徒の通う高校の数Ⅰの宿題プリントが方眼紙だったのを見たこともあります。
    そこに定規でグラフを描く宿題でした。
    方眼紙と定規を使わないとグラフを描けない子もいる。
    それも事実だろうと思います。

    ただ、放物線は、定規では描けません。
    この先の数Ⅱで学習するその他の曲線になったらもっとそうです。
    問題を解くのに特に必要としない正確さや手間を省くには、フリーハンドで目盛なしのグラフを描くのが便利です。
    曲線はフリーハンドなのに、一緒に描く直線だけ定規というのも、変に直線だけ目立って不格好です。
    全部フリーハンドでいいんじゃないんでしょうか。

    大体でいいのが、フリーハンドの利点です。
    この図は大体の図です。
    概念図です。
    フリーハンドは、そういう合図なのだと思います。


    なぜ高校数学では、グラフは定規を使わずに描くのか?
    ネットで少し調べてみましたが、
    「グラフは定規を使わずに描くものだ」
    「直線や円くらいはフリーハンドで正確に描け」
    といった上から目線の書き方のものが多く、うわー、数学好きの悪いところ丸出しだなあと、恥ずかしくなってしまいました。
    理屈を好むわりに、自分が確信している大元のところを問われると、高圧的になる。
    ダメダメ、そういうのは。

    いずれ、パソコンやタブレットで問題を解くのが常態になれば、フリーハンドで直線を引くことそのものがありえない時代もくるかもしれません。
    共通テスト試行試験では、太郎と花子がパソコンソフトで放物線を動かしている問題が出題されました。
    今は、そういう時代です。
    2点を決定すれば、画面に直線が描かれます。
    中心と半径を決定すれば、画面に円が描かれます。
    そうした時代に、フリーハンドで直線や円を正確に描くことは、なお要求される能力なのかどうか。
    要求されるかもしれない。
    要求されないかもしれない。
    そうしたことを改めて考えてもよいのではないかと思います。

    しかし、現状、高校の数学のテストで定規の使用は許されていません。
    テストは、パソコン画面ではなく、紙で行われます。
    定規を使わずにグラフを描く練習は必要です。
    その辺は現実的な対応をしましょう。

    問題に戻りましょう。

    問題 直線 y=2x+1に関して、点A(3,2)と対称な点Bの座標を求めよ。

    グラフを描きましょう。
    x軸とy軸をまず描きます。
    目盛は入れません。
    そこに、y切片が1で、右上がりの直線をささっと描きます。
    適当でいいんです。
    その座標平面に、点A(3,2)を打ち込みます。
    パッと感覚的に、この点は直線の右下にあるなとわかればそれでよいのです。
    わからなければ、計算します。
    この直線上で、x=3のとき、y=5です。
    (3,2)は、(3,5)より下の位置にあります。
    これも、神経質な人は、正確に(3,2)の点を打とうとして、グラフとのバランスが取れず、ああ、グラフが間違っていたんだと癇癪を起こしたように全部消して最初からやり直したりする人がいます。
    (3,2)は、座標平面の第1象限に入っていれば、大丈夫です。
    ちょっと歪んでいるのは、心の目で補正しましょう。
    それも耐えられないなら、x軸、y軸を描くのを止めるという手もあります。
    右上がりの直線だけを描く。
    それでも大丈夫です。

    次に、この点Aと対称な点Bを大体のイメージで良いですから、座標平面上に打ち込んでみます。
    「線対称」は、小学6年生で最初に学習する内容です。
    線対称というのは、どういう性質があったでしょうか?
    線対称のとき、対応する点と点とを結ぶ線分は、対称の軸と垂直に交わる。
    線対称のとき、対応する点と対称の軸との距離は等しい。

    6年生の段階で、はっきりとこれらのことを学んでいるのですが、忘れている人も多いと思います。
    このことを利用し、
    「図の中で、垂直に交わっている直線はどれとどれですか?」
    「図の中で長さの等しい線分はどれとどれですか?
    といった問題を解いたはずですが、個々の問題の解き方だけ覚え、根本のルールは記憶から消えている人もいるかもしれません。

    小学生のときも、中学1年でも、まるでドリルのように繰り返し解いた問題。
    そこで終わってしまうので、小6や中1の頃は、
    「だから何なの?当たり前じゃん」
    という印象だった問題。
    いよいよ、この知識が結実するのです。
    繰り返し解いたドリルのような問題は、根本のルールを理解し、脳の奥深くに浸透させ、やがて高校数学で使うためにあったのです。

    求めたい点Bの座標を(p,q)としましょう。
    このpとqの値を求めれば良いわけです。
    直線ABの傾きは、q-2/p-3 と表されます。
    直線の傾きは、変化の割合と等しく、yの増加量/xの増加量 だからです。
    この直線ABは、対称の軸である、y=2x+1 と垂直に交わりますから、傾きの積は-1です。
    よって、2・q-2/p-3=-1
    これを変形して、pとqの関係を表す式を1本導いておきましょう。
    両辺に p-3 をかけて、
    2(q-2)=-(p-3)
    2q-4=-p+3
    p+2q=7 ・・・①

    pとqの値を求めるには、もう1本、pとqに関する式があれば良いです。
    線対称の性質には、もう1つ、対称の点から対称の軸までの距離は等しいというものがありました。
    言い換えれば、2点の中点は対称の軸上にあります。
    点A(3,2)と点B(p,q)の中点の座標は、(p+3 /2,q+2 /2)。
    これは対称の軸上の点ですから、このx座標とy座標は、y=2x+1 の関係を満たします。
    よって、
    q+2 / 2=2(p+3 / 2)+1
    これを整理すると、
    q+2 / 2=p+3+1
    q+2=2p+8
    -2p+q=6 ・・・②

    この①、②を連立して解くと、
    p=-1、q=4
    よって点Bの座標は(-1,4) です。


    応用問題とはいえ、まだ易しい。
    そんなに複雑な問題ではないはずなのですが、この問題、以前、大人のための数学教室で解いたときは、かなり難渋しました。
    解説を終えて、
    「質問はありますか」
    と問いかけたところ、
    「何をやっているのか全くわからない」
    という感想を参加者の方が口にしたのです。

    何をやっているのか、全くわからない?
    え?
    何で?

    後になって振り返ると、分岐点は、①の式を作るときにありました。
    垂直に交わるのだから、傾きの積は-1になりますよね?
    と、
    q-2 / p-3 ・2=-1
    という式を板書したときに、質問があったのです。
    「それ、直線ABの傾きは、-1/2 である、という式にしていいですか?」
    つまり、q-2 / p-3 =-1/2 という式にしたいと言うのです。
    私は、内心、何でわざわざそうするのだろう?
    と微かな違和感を抱きました。

    なぜ、そんなアレンジをするのか?
    これから式を整理するのだから、わざわざ直線ABの傾きは-1/2であることを暗算した上での式など立てなくても良いのだが?

    しかし、参加者の方が書きたいと言った式は、間違った式ではありません。
    その式にして良いかと問われて、ダメという理由はないのです。
    「あ。いいですよ」
    と、私は軽く受け流したのですが、後から考えれば、ここが分岐点だったのです。

    どういうことだったのか?
    参加者の方は、そのとき、p、qに関する式を作ろうとしていたのではなく、直線ABの式を求めようとしていたのです。
    直線ABの式を求めようとしているのに、解説がその方向にいかず、pとqの式を整理したりしている。
    何のために何をやっているのか、全くわからない・・・。

    その誤解がようやく解けてから、私は、参加者に尋ねました。
    「何で直線ABの式を求めようと思ったんですか?」
    「今まで、ずっと直線の式を求めていたから」
    「・・・・なるほど」

    この問題は、点Bの座標を求める問題です。
    B(p,q) と定めたら、後は p と q に関する式を2本作って連立方程式にすればいい、という解き方の流れが、私には見えていました。
    しかし、教わる側は、その流れが見えていなかったのです。

    解説はしたつもりでした。
    点B(p,q) としましょう。
    この p と q の値を求めれば良いですよね?と。

    しかし、初めて見る問題の解説を聞きながらノートも取るという状態では、解説のなかの何が重要で、どれがキーワードであるのかの判断を誤ることがあるのだと思います。

    大人のための教室は、このようにいつも示唆的でした。
    数学の問題を解説していて、これは誤解の余地などないはずだと私が思っていることも、誤解の余地はあるのだということを教えてもらいました。
    数学が苦手な子どもの多くは、何がわからないのかを語る言葉を持ちません。
    日常会話ではおしゃべりな子も、論理的なことを正確に語るのは難しいことも多いです。
    「どこがわからない?」
    という質問は、その字面通りの質問なのですが、どんなに柔らかい口調で尋ねてもなお、
    「なんでこれがわからないんだ?」
    と責められているように感じることがあるようです。
    もともと言葉で説明するのが苦手な子どもが、さらに責められていると感じたら、黙り込んでしまうのも当然なのかもしれません。

    板書を1行ずつ指差しながら、
    「ここはわかる?ここはわかる?何行目がわからない?」
    と、私は、わからなくなっている行を明確にしようとするのですが、こちらのそういう意図を理解してくれず、黙り込んでしまう子もいます。
    「まあ、いいや。次いこう、次」
    と、勝手に諦める子もいます。

    生徒がどこでつまずいているのかを知りたい。
    何がわからないのかを知りたい。
    何を誤解しているのかを知りたい。
    それがわかれば、解決策はある・・・。



    直線の式に関するさまざまな公式など、直線の式を求めることをずっとやっていると、応用問題でも、絶対に直線の式を求めるものだと思い込んでしまう・・・。

    わからない原因が、そんなところにあったとは。

    板書に書いてあること・テキストに書いてあることと、何か少しでも違うことを生徒がやろうとしているとき、生徒の頭の中で何か異変が起きている可能性を考えること。
    微かな違和感を大切にすること。
    それを改めて感じた出来事でした。

    ところで、上の問題ですが、では、直線の式を求めてはいけないのか?
    いえ、いけないことはありません。
    そうやって解く方法もありえます。

    もう一度問題に戻って考えてみましょう。

    問題 直線y=2x+1に関して、点A(3,2)と対称な点Bの座標を求めよ。

    線対称の性質から、直線y=2x+1と直線ABとは垂直に交わります。
    それを利用して、直線ABの式を求めてみましょう。
    傾きは-1/2で、点A(3,2)を通る直線ですから、公式に代入して、
    y-2=-1/2(x-3)
    これを整理して、
    y=-1/2x+3/2+2
    y=-1/2x+7/2
    次に、直線ABと、y=2x+1の交点を求めましょう。
    2本の式を連立して、
    -1/2x+7/2=2x+1
    これをxについて解きます。
    -x+7=4x+2
    -5x=-5
    x=1
    これをy=2x+1に代入して、
    y=2・1+1
     =3
    よって、2本の直線の交点の座標は、(1,3)。

    さて、ここからどうするか?
    点Aとこの交点との距離は、この交点と点Bとの距離と等しいです。
    すなわち、点Aからこの交点への移動は、この交点から点Bへの移動と等しくなります。
    点A(3,2)から交点(1,3)へは、x軸方向に-2、y軸方向に1だけ移動しています。
    よって、交点の座標を同じだけ移動させると、
    x座標は、1-2=-1。
    y座標は、3+1=4。
    よって、点B(-1,4)

    あれ?
    この解き方のほうがわかりやすいし、解きやすい。
    そう思うでしょうか?

    いいえ。
    必要のない直線の式をわざわざ求める、遠回りな解き方です。
    また、この解き方は、中点の座標が分数になったりすると、計算がかなり面倒くさくなりそうです。
    さらに、今後のさらなる応用問題の解き方とのつながりがありません。

    けれど、直線の式を求めることしか発想できないならば、とにかく直線の式を求めて、そこからその先を考える。
    そういう試行錯誤が見られるという意味で、高校生が自力でこのように発想して解いたのなら素晴らしいと思います。
    数学の応用問題を解けるようになるには、自力で問題を解いた経験を増やしていくことが何よりの糧になります。
    いつも解答解説を見て解いている人が、テストのときだけ自力で問題を解くのは不可能です。
    自力で解法を発見することが大切です。

    けれど、それはそれとして、模範解答を読み、その解き方の良さに気づき、取り入れるとさらに力がつきます。
    特に、ABの中点の座標が直線を通ることを用いる解き方は、汎用性があります。
    この先の学習のために身につけておきたい解き方です。

    高校3年生には、同じ入試問題を解くのでも、どう解けば時間を短縮できるのか、どの解き方が計算ミスが少なく楽なのかという方針で授業を進めるようになります。
    基礎学力はあるので、普通の解き方ならもう説明は不要な子には、どうブラッシュアップしていくかがその先の課題です。

    例えば、反復試行の確率と条件付き確率の混合問題などで、
    「私もこれを自分で解いたとき、うっかり数値をそのまま代入しちゃって、計算がウザくてウザくて大変だったんだけど、ここは数値をいったん文字にして式を整理すると、すぐにスッキリするよね」
    といった解説をすると、
    「ははあー。文明開化の音がしますね」
    といった反応がある子には、手応えを感じます。
    解き方は1つではない。
    より洗練された解き方は、どういうものか?
    それを模索していくのも、数学の楽しみの1つだと思います。


      


  • Posted by セギ at 13:44Comments(0)算数・数学

    2020年07月23日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その3


    高校数Ⅱ「図形と方程式」の学習の続きです。
    前回学習した、直線の方程式に関する公式は次のものでした。

    傾きがmで、点(x1,y1)を通る直線の方程式は、
    y-y1=m(x-x1)

    また、2点(x1,y1)、(x2,y2)を通る直線の方程式は、
    y-y1=y2-y1/x2-x1 (x-x1)

    平行な2直線は、傾きが等しい。
    垂直な2直線は、傾きの積が-1。

    今回は、それの応用編です。

    問題 直線2x+y+2=0 に平行で、点(1,2)を通る直線の式を求めよ。

    まず与えられた式を、y=・・・・の形に直して傾きを求め、その上で、点(1,2)を代入して解くという方法を思いつけたら、それはそれでよいのです。
    ただ、これを瞬時に解く公式もあります。

    点(x1,y1)を通り、直線 ax+by+c=0 に平行な直線の方程式は、
    a(x-x1)+b(y-y1)=0 です。

    ax+by+c=0 という式の形に最初は戸惑う人もいるかもしれません。
    中学時代は、直線の式は、y=・・・・の形でなければダメと言われましたが、高校では、右辺が0になる式も用います。
    この後、この形のほうが利用しやすい別の事柄があるからなのです。
    a、b、cは具体的な数字が入ります。
    上の公式は、ax+by+c=0 をy=・・・に変形してみれば理解できます。
    ax+by+c=0
    by=-ax-c
    y=-a/b・x-c/b
    よって、この直線の傾きは、-a/b です。
    前回学習した公式を利用すると、傾きが-a/bで、点(x1,y1)を通る直線は、
    y-y1=-a/b(x-x1)
    両辺をb倍して、
    b(y-y1)=-a(x-x1)
    左辺に移項して、
    a(x-x1)+b(y-y1)=0
    これが、上の公式です。

    この公式を用いると、上の問題は瞬時に解けます。
    直線2x+y+2=0に平行で、点(1,2)を通る直線だから、
    2(x-1)+(y-2)=0
    このまま答えとするのではなく、整理します。
    2x-2+y-2=0
    2x+y-4=0
    これが上の問題の解答です。

    この公式とセットで覚えるとお得な公式は、

    直線ax+by+c=0に垂直で、点(x1,y1)を通る直線は、
    b(x-x1)-a(y-y1)=0

    この公式も、上のような変形の仕方で導くことができます。興味がありましたら、上と同じようにしてやってみてください。
    これらの公式は覚えにくいです。
    別にこんな公式を覚えなくても、まず傾きを求める解き方でも解けます。
    ただ、困るのは、この先、問題集の解説で、この公式を当然のように使い、特に説明も加えていないものがあることです。
    何で急にこんな式が立っているのか、わからない・・・。
    そうならないために、こういう公式もあると頭の隅に置いておきましょう。
    自分では使わなくても良いので、問題集の解説を読んで意味がわからなかったとき、
    「あれ?あの公式を使っているのかな?」
    と考えることができれば、学習が先に進みます。

    こうした公式のメリットは、問題を解く時間を短縮できることです。
    直線の式1本求めるのに、まず傾きを求める解き方では、2分~3分かかります。
    この公式を使えば、30秒もかからないのです。
    逆に言えば、それ以外には特にメリットはないので、どうしても覚えられなかったら、覚えなくても大丈夫です。

    高校生としては、このあたりの内容でどうしても覚えてほしいのは、冒頭に書いた4つの内容。
    これらは使う機会が多いので、いちいち中学生の解き方で時間をかけていると、テストでは時間が足りなくなります。
    それ以上の公式は、使う機会も限られているので、本人の覚える力に応じてで構わないと思います。


    問題 直線ax-6y-5=0が直線2x-3y+6=0に平行であるとき、定数aの値を求めよ。

    これも、傾きを求めれば解ける問題です。
    それぞれの直線を、y=・・・・の形に変形し、傾きを比較すれば、定数aを求めることができます。
    やってみましょう。

    ax-6y-5=0より
    -6y=-ax+5
    y=a/6x-5/6
    よって、この直線の傾きはa/6です。
    2x-3y+6=0
    -3y=-2x-6
    y=2/3y+2
    よって、この直線の傾きは2/3です。
    この2直線は平行なので、傾きは等しいですから、
    a/6=2/3
    a=2/3 ×6
    a=4

    これにも、公式があります。

    2直線a1x+b1y+c1=0、 a2x+b2y+c2=0 が、
    平行なとき、a1b2-a2b1=0
    垂直なとき、a1a2+b1b2=0

    上の問題にこの公式を用いると、
    a・(-3)-2(-6)=0
    -3a+12=0
    -3a=-12
    a=4

    与式をいちいちy=・・・の形に変形せずにすぐに式を立てることができます。
    覚える余力のある人は、覚えておくと良い公式です。

    なぜこの公式が成り立つのか、考えてみましょう。
    直線a1x+b1y+c1=0 の傾きを求めましょう。
    b1y=-a1-c1
    y=-a1/b1-c1/b1
    よって、傾きは、-a1/b1
    また、a2x+b2y+c2=0 は、
    b2y=-a2x-c2
    y=-a2/b2-c2/b2
    よって、傾きは、-a2/b2

    この2直線が平行なとき、傾きは等しいので、
    -a1/b1=-a2/b2
    a1/b1=a2/b2
    両辺に b1b2 をかけて、
    a1b2=a2b1
    a1b2-a2b1=0
    となります。
    この2直線が垂直なとき、傾きの積は-1ですから、
    -a1/b1・-a2/b2=-1
    両辺に b1b2 をかけて、
    a1a2=-b1b2
    a1a2+b1b2=0
    となります。


      


  • Posted by セギ at 18:17Comments(1)算数・数学

    2020年07月17日

    アクティブラーニング時代の定期テスト。


    さて、中学校の定期テストがそろそろ返却され始めていますが、予想通り、新傾向の問題に苦戦している様子が見られます。
    中学の新学習指導要領施行は来年度からですが、既に移行期間に入り、昨年度あたりから、思考力や記述力を試す新傾向の問題が増えてきています。
    さらにその傾向が目立ってきたのが今回のテストでしたが、作る側も解く側も、まだ不慣れで、多少疑問な点もあるのが実情です。

    例えば、こんな問題。

    問題 +5mが、海面から5m高いことを表しているとき、-5mは、海面からどのようであることを表すか。

    正解 海面から5m低い。


    これは、問題の大筋としては新傾向でも何でもないのですが、疑問だったのは、「5m低い」と書いただけでは、バツという採点基準だったこと。
    △ではなく、バツでした。

    勿論、「海面から」という基準を示すことは大切なことなのですが、それを必ず書くよう解答者に促すのなら、問題文の書き方がちょっと違うと思うのです。
    「海面からどのようであることを表すか」と設問の中で既に「海面から」と書いてしまっている場合、解答はそれを省略してよいのです。
    国語の記述問題では許容されていることです。
    「海面から」と必ず生徒が書かねばならないように問題を作るならば、

    問題 +5mが、海面から5m高いことを表しているとき、-5mは、何を表しているか。

    とするべきです。
    そうした問題文の作り方の基本が守られていないので、解答者に無理な要求をする結果となっています。
    この場合、「5m低い」も正解とするべき案件です。

    こういうのは、問題を作る数学の先生が、記述式の問題を作ることにまだ慣れていないことが原因のミスでしょう。
    数学の先生も、国語の記述問題に多く触れて、記述式問題の作法を学んだほうがいいかもしれません。
    大変な時代になりました。

    入試などなら、「5m低い」と書いた人全員が正答とされるでしょう。



    問題 (-15)-(-10) を、加法として計算する式に改めなさい。

    これは、比較的わかりやすい問題と感じました。
    (-15)-(-10)
    =(-15)+(+10)

    とすればよいのだとわかるのですが、ここでも採点基準に問題が生じました。

    (-15)-(-10)
    =-15+10

    とした生徒は、バツ。
    △ですらなく、バツ。
    うーん・・・?

    ( )を外してはいけないなんて、問題に書いてないですよね?
    だったら、別に、-15+10でも、十分に加法に直していますよね?
    え?
    このテストは、アルバイトが採点しているの?
    だんだんと、不安になってきました。
    結局、こういうことがあるから、大学入試共通テストで記述問題が出題されないことになったんです。
    画一的な採点基準で採点すると、理解している子が得点できない変な結果になることがあるのです。

    ただ、私がこの問題を解くのなら、
    (-15)-(-10)
    =(-15)+(+10)
    という模範解答通りの答案を書くとは思います。
    相手の出題意図がわかりますから、いやというほどその意図に沿って、「私は、わかってまーす」とアピールする答案を作成します。
    そういう点では、私はあざといので。
    しかし、実際にこれを解くのは中1ですから、そういうのはまだわからないと思います。
    小学校のカラーテストしか経験したことのない子たちですから。


    問題 -15+6-10+20 を、-15、+6、-10、+20とそれぞれを項と見て計算するのは、どのような良い点があるか。数学的な用語を用いて説明しなさい。

    一番の難問はこれでした。
    「え?どういうこと?」とペンが止まった子が大多数ではないかと思います。

    模範解答は、こんな感じでしょう。

    それぞれを項とし、この式を各項の加法と見るなら、
    -15+6-10+20
    は、交換法則を用いて、
    =-15-10+6+20
    となり、さらに、結合法則を用いて、
    =(-15-10)+(+6+20)
    =-25+26
    と、同符号の計算を先に行うことで、
    =1
    と計算することができる。

    「良い点」とはそれであり、使うべき数学用語は、「交換法則」と「結合法則」です。
    数字と数字の間にある「+」「-」を、「たし算」「ひき算」の意味でとらえるのではなく、-15、-10、+6、+20と、個々の数についている+・-の符号であるととらえることは、算数から数学への大転換の根幹をなすことの1つです。
    これによって、「ひき算」は存在しなくなり、各項の加法と見て計算するようになります。
    加法なので、交換法則も結合法則も利用できます。
    これは、とても重要なことです。

    こういう出題は、しかし、中学生の立場からすると、どうなんだろうなあと思わないでもありません。

    こういう記述問題が全く解けない子には、大きく2つのタイプがあると思います。
    まずは、根本的に数学が苦手な子の場合です。

    -15+6-10+20
    =-15-10+6+20
    と、交換法則を用いて項の順番を変えることは、そういう子が自ら発案することではありません。
    普通の中学1年生は、まだ小学生の尻尾を引きずっていますから、ほおっておけば、
    -15+6-10+20
    =-9-10+20
    =-19+20
    =1
    と、前から順番に計算してしまいます。
    それを、
    「同符号から先に計算しなさい。そのほうが楽でミスが少ないから」
    と教え込んでいるのが実情です。
    何度教えても、時間が経つとまた前から順番に計算してしまうので、さらに助言を繰り返し、何とか同符号から先に計算することを徹底させるだけでもひと仕事です。

    なぜ、そこまで繰り返さないと、そんなことすら定着しないのか?
    彼らは、同符号から先に計算することを、良いことだとは感じていないからだと思います。
    同符号から先に計算しても、前から順番に計算しても、計算ミスをしてしまうのは同じことで、ちっとも楽でも正確でもないからです。
    計算前に順番を変えるといった手間は、むしろ心の負担なのかもしれません。
    何でも前から順番に計算するほうが、覚えることや判断することが少なくて頭が楽だ、と思っている可能性もあります。

    「いや、同符号の計算なら絶対値のたし算になるでしょう?
    たし算のほうが楽ですよ。
    異符号の計算は、絶対値のひき算です。
    ひき算って面倒くさいですよね。
    ミスも多くなりますよ」
    と、私が説得しても、あまり表情に変化が見られない子は多いです。
    たし算でも、ひき算でも、計算ミスをしますから。
    そもそも、計算自体が苦手なんですから。

    それぞれを項と見て計算するのは、どのような良い点があるか?
    ・・・良い点なんて、別にない。
    良いと思ったことなんてない。
    ただ、そうしろと言われたから、そうしているだけ・・・。

    そういう子たちが失点してしまうのは、仕方ないかなとも思うのです。


    一方、-15、-10、+6、+20と、それぞれを項と見ていくことの本質を理解している子でも、こうした記述問題には答えられない子もいると思います。
    問いかけが漠然としているので、何をどう答えていいのか、わからない。
    良いとか悪いとか、そういう観点で数学の問題を見たことがない。
    それぞれを項と見ていくことは、当然のことだと思う。
    それは、良いとか悪いとか、そういう観点のことだろうか?
    いったい、この問題は、何を答えさせたいのだろう?
    自分は、何につきあわされているのだろう?
    そんな感想の子がいても当然ですし、その子が数学が出来ないとは限らないのです。
    今は苦労しても、高校数学で抜群の才能を発揮する可能性もあります。


    なぜ、このような記述問題が出題されたのでしょうか。
    前から順番に計算するよりも、各項の加法と見立て、同符号から先に計算するほうが良い件について、アクティブラーニングが行われたのではないか?
    教室全体で、あるいはグループに分かれて話し合い、項と見立てて計算することの良さ、同符号から先に計算することの良さについて議論がされたのではないか?
    それがあっての出題なのではないと想像されます。
    わざわざ1時間なり2時間なりかけて話しあったことの意味を問う出題なのでしょう。
    「それだけの授業時間をかけたことはテストに出る」
    ということがあざとくピンとくる子ならば、この問題への備えはしたと思います。
    しかし、子どもは、そんな判断はせず、もっとのほほんと授業を受けていることが多いです。

    項と見て計算することの良さについて、テストに出します。

    その一言があったほうが、初心者の生徒たちには良かったかもしれません。
    記述問題を作る数学の先生も、それを解く生徒たちも、初めてのことで、まだまだ不慣れ。
    それを補助する塾も、「何だこれ?」と毎回首をひねることが、まだしばらく続くと思います。
    それでも、この試みが良い方向に向かいますように。
    そう願わずにいられません。

      


  • Posted by セギ at 14:51Comments(1)算数・数学

    2020年07月08日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その2。垂直に交わる直線。


    数Ⅱ「図形と方程式」。今回は、直線の方程式の求め方の2回目です。
    ある直線と平行な直線、あるいは垂直な直線の求め方。

    問題を見てみましょう。

    問題
    (1)直線 y=2x+1 に平行で、点(-2,3)を通る直線を求めよ。
    (2)直線 y=-1/3 x +1 に垂直で、点(1,-2)を通る直線を求めよ。

    まずは(1)から。
    ある直線と平行な直線の求め方は、中2でも学習しています。
    平行だということは、傾きが等しいということ。
    だから、求める直線の傾きも、2です。
    そして、点(-2,3)を通るのですから、前回学習した直線の式、
    y-y1=m(x-x1) に代入して、
    y-3=2(x+2)
    y=2x+4+3
    y=2x+7

    これが答です。

    では、(2)はどうでしょうか?
    ある直線と垂直な直線。
    これも、私立中学や、進学塾の学力上位クラスでは、中学生で学習している内容です。
    もとの直線の傾きと、垂直な直線の傾きとの積は、-1。
    それを利用すれば、求める直線の傾きは、3です。
    あとは、直線の公式を利用し、
    y+2=3(x-1)
    y=3x-3-2
    y=3x-5

    これが答となります。

    ところで、解き方自体は簡単でしたが、もとの直線の傾きと、垂直な直線の傾きとの積は、なぜ-1なのでしょう?
    これは、中学で発展的な学習をしてきた人でも、案外答えられないのです。
    とにかく、-1になるんだ。
    そう教えられて、それを使ってきた。
    理由なんか説明されなかった。
    そのように主張する人もいるかもしれません。

    事実、そうだったのかもしれません。
    しかし、理由も説明されたのに、それを忘れているだけかもしれません。
    簡単そうに思えることでも、理由を説明するとなると結構大変なことが数学にはあります。
    説明するほうも大変ですが、理解するほうも大変です。

    前回説明した、「分数のわり算はなぜ逆数のかけ算で計算できるのか」という件もそうでした。
    今回の件も、そういうものの1種だと思います。

    なぜ2直線が垂直に交わるとき、2直線の傾きの積は-1なのか、説明します。

    上の図を見てください。
    今、垂直な2直線を、
    y=m1x+n1
    y=m2x+n2
    とおきます。

    それぞれの直線を原点を通るように平行移動すると、式はそれぞれ、
    y=m1x
    y=m2x
    となります。
    この2直線も、垂直に交わります。

    それぞれの直線上で、x座標が1の点をM、Nとすると、それぞれの座標は、
    M(1,m1)1、N(1,m2) となります。
    点Mは、y=m1x上の点なので、x座標が1のとき、y座標はm1。
    同様に、点Nの座標は(1,m2)となるのです。

    2直線は垂直に交わっていますから、△OMNは、上の図のように∠MONが90度の直角三角形です。
    三平方の定理より、
    OM2+ON2=MN2 となります。

    では、それぞれの辺の長さはどう求めましょう?
    2点間の距離の求め方は、この前やりましたね。
    O(0,0)とM(1,m1)との距離は、
    √(0-1)2+(0-m1)2 ですから、
    OM2=1+m1の2乗 となります。
    同様に、
    ON2=1+m2の2乗
    MN2=(0-0)2+(m1-m2)2=(m1-m2)2

    これらを、OM2+ON2=MN2 に代入して、
    (1+m1の2乗)+(1+m2の2乗)=(m1-m2)2
    これを展開すると、
    m1の2乗+m2の2乗+2=m1の2乗-2m1m2+m2の2乗
    移項して整理すると、
    2m1m2=-2
    m1m2=-1
    よって、2直線の傾きの積は、-1である。

    どうでしょうか?

    ・・・これも、1つ1つ段階を踏んで論理的なので、途中で、
    「もういいから、垂直な2直線の傾きの積は-1と覚えます」
    とため息をつく人もいるかもしれません。
    簡単そうに見えることでも、証明は結構難しく、理解するのが大変なことはあります。

    証明自体がエキサイティングで、証明を理解することで数学の面白さに目覚める!
    ・・・それならよいのですが、こうした証明は、そんなふうではないことが多いです。
    もっと面白いかと思っていたのに、テンションだだ下がり・・・。

    何とかショーアップして、この手の証明をエキサイティングなものにし、生徒が数学の面白さに目覚めるようにしたらよいのでは?
    それが講師の能力というものなのでは?
    ・・・それもわかります。
    その一方、そんなふうにいちいち「濃い味」のものに調理してスプーンで口の中に入れてあげないと味がわからないのなら、自立した学習者になるのは難しいのではないかとも思うのです。
    面白さは自力で発見できるようであってほしい。
    その狭間で、悩む日々です。

    ただ、理解できたこと自体の快感はあると思います。
    難しいけれど、理解できた。
    霧が晴れた。
    納得できたから、この定理を使おう。
    そのほうが、意味もわからずただ使うだけよりも、精神的に安定した状態で数学の問題に向き合えると思うのです。


      


  • Posted by セギ at 13:49Comments(1)算数・数学