たまりば

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2020年03月31日

伝えることの難しさ。


小学生に算数の授業をしていたときのことです。
こんな問題を解いていました。

問題 青い色紙が45まい、赤い色紙が60まいあります。これらの色紙を、それぞれ同じ数ずつあまりがないように子どもに分けようと思います。子どもが何人のとき分けることができますか。

公約数に関する文章題です。
45と60の公約数を求めればよいですね。
公約数は、1、3、5、15。
だから、答は、1人、3人、5人、15人 です。

この問題は、解答欄が4つあり、「  人、  人、  人、  人」となっていました。
答が4つあることを教えてくれている親切な問題だと私は感じていました。

ところが、ある生徒が、この問題にこういう答を書きました。
「5人、5人、  人、  人」

・・・え?
どういうこと?

「・・・どういう解き方をしましたか?説明してください」
そう問いかけましたが、しかし、その子は押し黙ったまま、何も答えませんでした。
自分の答は間違いなのだなと気づくと、それに関して説明をしない子・できない子は多いのです。
無理もない、とも思います。

以前に見たことのある種類の誤答なら、誤解の原因も見当をつけやすいのですが、このミスは初めて見ました。
45枚の青い色紙と60枚の赤い色紙を、5人と5人に分ける・・・。
45枚を5人に分け、60枚を別の5人に分ける、ということなのだろうか?
上の問題文は、そのように誤読する可能性がどこかにあるものなのだろうか?
そう思って問題文を読み返すと、確かに読み取りにくいところがないわけではないのでした。

「青い色紙が45まい、赤い色紙が60まいあります。これらの色紙を、それぞれ同じ数ずつあまりがないように子どもに分けようと思います」

「それぞれ同じ数ずつ」の「同じ」は、何がどれと同じなのか?
「それぞれ」というのは、どのそれぞれなのだろう?
わからないといえば、わからない・・・。
算数の文章題は大体こういう構造のものという蓄積で問題文を読んでいる私とは、読解の仕方が異なる子どもがいても当然です。


とはいえ、近年、言葉が通じにくい子に以前よりも多く出会うようになったと感じます。
例えば、宿題の答えあわせをするとき。
「では、宿題の答えあわせをしましょう。1番の(1)は?」
と声をかけても、反応が返ってこない子もいます。
この指示では、自分が何をすればよいか、わからないようなのです。

「では、宿題の答えあわせをしましょう。答を言ってください。一番の(1)の答えは何ですか?」
このように問いかければ、反応があります。

コンピュータみたいなのです。
正確にコマンドを伝えないと、反応しない。

さらに言えば、
「宿題の答えあわせをしましょう。赤ペンを用意してください。正解ならば、丸をつけてください」
このように声をかけないと、赤ペンを用意しない子もいます。
答えあわせなのだから赤ペンを用意しよう、というふうには考えないようです。

ところが。
同じ子が、答が間違っていると、消しゴムでその答を消して正解に書き直し、赤丸をつけたりします。
それは、コマンドにない、自己判断です。
私は一切指示していないことなのです。
つまり、実は、コマンド以外のことを自発的に行うこともできるのです。
コンピュータとの決定的な違いはそこです。
誤答を消して、書き直し、赤丸をつける。
そのことについては行動は迅速で、自己判断で処理を行っています。

誤答を消して赤丸をつける行為の是非については、また別に書きたいと思います。
是非も何も、そんなのはダメに決まっていますが、今回の話とは異なる話なのです。
変な話ですが、正確なコマンドをしないと反応が返ってこないと思っていた子が、自分の誤答をスッと消して赤丸をつけるのを見ると、この子には自己判断の能力がある、何かを考えている、と感じとることができるのです。
コンピュータにはない精神の存在を感じる、とでも言いますか。

正確なコマンドをしないと反応が返ってこないタイプの子は、学力を低く見られがちです。
理解力が乏しいように見えます。
そんなの大体わかるだろう?が通じない。
常識で考えなさいよ、が通じない。
受け止め方に幅がないのは知力が乏しいせいではないか、と思われてしまいがちです。
ただ、そうとばかりも言えないのではないかと、その精神の存在を垣間見ると感じます。
勝手に答えを書き直し赤丸をつけるということは、何かを考えているということ。
ただ、それが表面に見えてこないのです。
無口で、無反応です。

新しく学習する内容の解説をした後、
「わかりますか?」
と問いかけても反応のない子にも、たまに出会います。
「わかりました?」
・・・無反応。
「何か質問はありますか?」
・・・無反応。
「どこが、わからないですか?」
・・・無反応。
「もう一度訊きます。わかりますか?わかりませんか?返事をしてもらわないと、あなたがわかったのかわからないのか、私にはわからないんですよ。わからないのならもう一度説明しますし、わかるのなら練習問題を解きます」
「・・・わかる」

数回の問答の末、何とか把握したことですが、どうやら、解説はもうわかったので、次の問題を勝手に読み進めていて、その問題について考えていたようなのでした。
その間、私の問いかけに返事をしなければならないという意識が欠けているのでした。
悪意はないのです。
ただ、他者の存在への認識が弱いのでしょう。
自分は、自分が何を考えているかわかる。
自分がわかるのだから、他人もわかるはずだ。
自己と他者との境界が曖昧なのかもしれません。
だから、返答の必要性が今ひとつ理解できていないのでしょう。
返事をしないくらいのことで、なぜ、こんなに色々言われるのか?
そのような心の動きが内心ではあるのではないかと想像されます。

ただ、これも、説明すれば理解してくれる場合が多いのです。
とにかく、悪意はなく、ただ、コミュニケーションにおいて気づいていないことが多いのです。
根気強く問いかけ、返事をしないと授業が先に進まないことが理解できれば、改善されていきます。


ある日。
その子の数学の宿題ノートを見て、私は仰天しました。
1次方程式の計算問題の宿題を解いたノートでした。

9-(4x+1)=-5x+2    x=6

・・・何?この答案。

符号ミスをしていることより何より、与えられた方程式の横に、x=6 だけ書いてあることにぎょっとしました。
え?
この子は、方程式の解き方を知らないの?

方程式は、解いていく過程そのものが答案です。
「以下の方程式を解きなさい」という問題で、計算過程を省略して最後の行だけ書くということはありえません。
高校数学の応用問題の途中で方程式を用いた際に、
9-(4x+1)=-5x+2 
よって x=-6
と計算過程を省略した答案を書くことはありますが、それは高校生になってからのことで、それでも「よって」くらいは書かないと違和感があります。

やはり、方程式の解き方を知らないのだろうか?

・・・いえ。
以前の授業で、その子が方程式をごく普通の解き方で解いているのを、私は見たことがありました。
方程式の文章題の解説と演習をそれ以前に行っていたのです。
ああ、この子は、方程式は解ける。
そう判断しました。
ただ、( )の前に-の符号がある際の処理が苦手の様子。
計算練習をもっとやらないとまずい。
そのように判断して出した宿題でした。

何でこんな答案を書いてきたんだろう?
全問解き直しをしてもらう間、私はその理由がわからず、ただショックを受けていました。
なぜ、こんなに突然退化するのだろう?
塾に通うようになった結果、方程式も解けなくなったなんて、こんなひどいことはない。

方程式の解き直しが全問終わり、もう1ページ、易しい文章題の宿題の答えあわせを始めたときのこと。
例によって、何をxとしたのか、その1行目が書いてありませんでした。
それは、数学が苦手な中学生のほぼ全員がやってしまうことです。
以前の授業で注意したのに・・・と考えて、あること気づき、私は声を上げそうになりました。

・・・・ああっ!

私は以前の授業で、方程式の文章題に関して、こんな話をしました。
採点する先生は、答案の4つの箇所を見ます。
まず、1行目に、何をxとしたかを書いているか。
次に、方程式を正しく立てているか。
次に、x=・・・の計算結果が正しいか。
最後に、最終解答が正しいか。
その4か所を見て、得点を決定する。
それが、採点の流れだよ。
そういうメリハリを意識して文章題の答案を作っていくんだよ。
そのように解説したのでした。

その子は、その説明を、「方程式は、1行目のあとは、x=・・・が書いてあればいい」と聞き取ったのではないか?
中学生の間は、方程式の計算過程を書いておくのが当たり前です。
計算過程を書いていかなかったら、方程式を解いたことになりません。
そんなところを省略する子などいないから、その話はしなかったけれど。
いや、「当たり前」とか「そんなの常識」とか、そういうことが通用するわけではないのでした・・・。
正しいコマンドをしなければ、正しい反応は得られない。

・・・だとすれば、あの異様な答案は、私のせいなのでした。
( 一一)

無表情に、文章題の宿題の全てに何をxとしたかを書き加えていくその子を見て、考え込んでしまいました。
この子は、私に対して、どのような感想を抱いているだろう?
「自分が言ったことなのに、その通りにしたら次の授業ではそれではダメだと言い出して、全問解き直しを命じる人」だろうか?
これまでも、こういうことの繰り返しで、「先生」と呼ばれる人たちに不信感を抱くことがあったろうか。
大人に不信感を抱くこともあっただろうか。
参ったなあ・・・。

近年、非行少年と呼ばれる子たちで、反社会的な考えや反抗心から犯罪を犯す子は、ごく少ないと聞きます。
むしろ、理解力やコミュニケーション能力に課題があり、周囲の大人と人間関係を結べない子が、社会の隙間に落ちていくようにして犯罪を犯してしまう例が多いそうです。
個別指導塾に来る子は手厚い庇護のもとにある子ですから、もとよりそのような心配はないのですが、このコミュニケーション能力で、貧困やネグレクトなどの課題が家庭にあったなら、どのようなことが起こり得るか、悲惨な想像をしてしまうことがあります。

細心の注意を払っていかなければ。

それと同時に、数回前に私が授業で説明したことをその子は覚えていたのだと思い至りました。
幾度同じ説明をしても、左の耳から右の耳に通り抜けていく様子の子もいる中で、説明を聞いている。
説明を覚えている。
聞いている様子は感じられないけれど、聞いているのです。
この子は、コミュニケーション能力のせいでものすごく損をしているけれど、潜在能力はかなり高いのではないか?
答がわかったときに「わかった!」とも言わないし、嬉しそうな顔もしないから、わかっていないと思われて損をしてきたことも多いのではないか。

誤解をされないような正しい説明をするのは私の仕事。
これは私の能力が試されている私の課題なのだと思います。

  


  • Posted by セギ at 18:14Comments(0)算数・数学

    2020年03月29日

    高校数Ⅱ 組み立て除法と高次方程式。



    今回は、いよいよ「高次方程式の解法」です。
    剰余の定理、因数定理、組み立て除法など、色々と学んできたのは、このためでした。
    やっと、目的を果たすことができます。

    問題 x3+3x2-4=0 を解け。

    2次方程式は、(x-△)(x-☐)=0 の形にくくると解けました。
    (  )(  )でくくる、すなわち因数分解すれば良いのです。
    高次方程式もその仕組みは同じです。
    どうすれば、そのように因数分解できるのか?
    上の問題は、共通因数でくくれるわけでも、公式を利用できるわけでもなさそうです。

    そんなときに使うのが因数定理です。
    f(a)=0 となるaを見つけたら、
    f(x)=(x-a)(   )
    という形に因数分解できるのです。

    そのようになるaを探しましょう。
    それは、暗算でも構いませんが、ちょっと難しいなと感じたらメモを取りましょう。
    上の問題では、a=1 だとすぐ気づきます。
    x=1 を代入すると、
    1+3-4=0 です。
    この正式は、(x-1) という因数を持つことがわかりました。

    では、もう一方の( )には何が入るでしょうか。
    それは、x3+3x2-4 をx-1 で割った商が入ります。
    実際にわり算の筆算をしても良いのですが、手間がかかります。
    ここで役立つのが組立除法です。
    やってみましょう。

    1 3 0 -4   | 1
      1 4  4
    1 4 4  0

    よって、商は x2+4x+4 です。
    これで因数分解できました。
    (x-1)(x2+4x+4)=0

    後半の( )は、公式を利用して、さらに因数分解できます。
    (x-1)(x+2)2=0
    よって、
    x=1、-2  です。


    問題 x4-5x3+10x2-16=0 を解け。

    やはり、因数定理を利用し、因数分解していきます。
    xに代入してこの式の値が0になる数を探します。
    x=1 のとき、1-5+10-16 は0ではないからダメですね。
    x=-1 のとき、1+5+10-16=0
    あ、これだ。ヽ(^。^)ノ

    しかし、xに代入する値が負の数になると、暗算ミスが増える人がいます。
    x3=1 としてしまったり、x3=-1はわかっていたけれど、-5が負の数であることでさらに混乱し、-5x3=-5 としてしまったり。

    負の数がからんでくるとかなりの確率で符号ミスをしてしまう人は多いです。
    中3の受験期に直る人もいますが、もう一生直らないのかもしれないと感じるほどに符号ミスを繰り返す人もいます。
    高校2年生になっても、ネックは符号ミス・・・。
    解き方は理解しても、計算の結果は正解にならない。
    なぜなら途中で符号ミスをするから。
    そういう人は、多いです。

    「ケアレスミスはなくせる」
    と気軽に言う人もいますが、なくせるミスもあるが、一生残るミスもあるだろうと私は思います。
    ミスの原因を自覚すれば直せるという人もいますが、どんなに自覚しても直らないこともあります。

    私自身は、普段は計算精度にある程度の自信をもっていますが、「今日はダメだ」と感じる日もあります。
    どんな日にケアレスミスをしやすいのかというと、例えば、夏期講習などの長期休暇中の講習の後半の日。
    毎日7コマ連続授業。
    朝10時から休みなしで夜9時半まで授業をすることが何日も何日も続きますと、さすがに疲労がたまってきます。
    あるいは、目の前の計算に集中できない心配ごとのあるとき。
    てきめんに計算精度が落ちます。

    だから、疲労や心配ごとで混乱を起こしているときの私の脳の状態が、通常の脳の状態に近い人は、計算ミス・符号ミスが常態であっても、特別不思議なことではないと思います。

    疲労困憊し、計算ミスが増えている私に、
    「気をつけて。自分のミスの原因を自覚して」
    などと注意したところで、直りません。
    そんなことで直るわけがないのです。
    脳が精度を保てないのです。

    数学ではそのように混沌とした脳の状態の人が、例えば英語では三単現や名詞の単複、あるは冠詞の付け忘れなどのミスを全くしない、ということもあります。
    だから、それは、頭がいいとか悪いとか、そういう話ではないのです。
    英語においては精度を保てる人が、なぜ、数学では精度を保てないのか?
    数学の問題を解くときに、疲労困憊したような、あるいは他の悩みごとで混乱したような脳の状態になってしまうのは、なぜなのか?

    1つには、数学の問題を解くときの脳の使い方がよくないと想像されます。
    数学の問題を解くときに、おそらく他の何かを同時に考えています。
    脳をいつもよりもさらに部分的にしか使えない状態にしています。
    でも、なぜ、そのような状態になるのか、おそらく本人もわからない。
    気が散った混乱した状態でしか数学の問題を解けないのはなぜなのか、本人にもわからないのだと思うのです。

    自分はなぜ、マイナスの符号を見落とすのか。
    数字を書き間違えるのか。
    そんなのは、本人にもわからないのです。

    1つ言えるのは、その問題に向かうときの心の在り方が、その問題にふさわしくないのではないか?
    易しい問題だと感じると、なめてかかり、ミスをする。
    難しい問題だと感じると、混乱し、ミスをする。
    問題に対し、いちいち不安定な対応をし、すぐに感情が動く人は、ミスが多いと感じます。
    数学の問題は、易しい問題だろうが難しい問題だろうが、同じ出力で同じように淡々と解いていくのが理想です。


    話が今回も大きく逸れました。
    再度、問題を見直しましょう。

    問題 x4-5x3+10x2-16=0 を解け。

    因数定理を利用し、因数分解していきます。
    x=-1 のとき、1+5+10-16=0 です。
    では、組立除法をしましょう。

    1-5 10   0  -16  | -1
     -1  6 -16   16
    1-6 16 -16    0

    よって、
    (x+1)(x3-6x2+16x-16)=0

    次に、後半の( )をさらに因数分解しましょう。
    xに代入して0になる値を探します。
    1も-1もダメ。
    ではx=2 は?
    8-24+32-16=0
    これですね。

    1 -6  16  -16  | 2
       2  -8   16
    1 -4   8    0

    よって、
    (x+1)(x-2)(x2-4x+8)=0
    最後の( )はもう実数では因数分解できないです。
    では、2次方程式の解の公式で解きましょう。
    xの1次の係数が-4と偶数なので、2本目のほうの公式が使えます。
    x2-4x+8=0
           x=2±√4-8
           x=2±√4 i
           x=2±2 i
    よって、この方程式の解は、
    x=-1、2、2±2 i  です。


    問題 2x3-7x2+2=0

    さて、この方程式でxに代入して0になる値は?
    1も-1もダメ。
    2も-2もダメ。
    計算ミスしたかなあ?とやり直すけれど、やはりダメ。
    それで諦めてしまう高校生が多い問題です。

    0になる値の見つけ方は、±(定数項)/(最高次の項の係数) でした。
    つまり、探すのは整数だけではなく、分数もあり得るのです。
    x=-1/2 を代入してみましょう。
    2/8-7/4+2
    =1/4-7/4+8/4
    =0
    0になりました。

    では、組立除法を。

    2 -7  0   2  | -1/2
      -1  4  -2
    2 -8  4   0

    よって、
    2x3-7x2+2=0
    (x+1/2)(2x2-8x+4)=0
    このままにせず、後半の( )を2で割り、前半の( )に2をかけることで整えます。
    (2x+1)(x2-4x+2)=0

    このように因数分解した結果を見ると、なぜ、±(定数項)/(最高次の項の係数)なのか、漠然と感じとれるのではないかと思います。
    最高次の係数の2が大きく影響するのがわかります。
    因数分解したときに、どこかの( )は、(2x+△)という形になるでしょう。
    そのときのxの解は分母が2の分数の可能性が高いでしょう。

    さて、後半の( )は、解の公式で解きましょう。
    x2-4x+2=0
           x=2±√4-2
           x=2±√2
    よって、この方程式の解は、 x=-1/2, 2±√2 です。


    問題 (x+1)(x+2)(x+3)=5・6・7 を解け。

    この問題、左辺の( )は1ずつ増えているし、右辺の整数も1ずつ増えています。
    これはx=4 が解だなと気づきます。
    x+1が5にあたり、x+2が6にあたり、x+3が7にあたるのですね。

    だからといって、それだけ解答欄に書いておしまい、として良いのでしょうか?
    これは3次方程式です。
    3次方程式は、基本的には解は3つあります。
    残る2つの解を求めずに終わるわけにはいきません。
    これは、やはり、展開して整理しましょう。
    (x2+3x+2)(x+3)=210
    x3+3x2+3x2+9x+2x+6=210
    x3+6x2+11x-204=0

    さて、これが0になるxの値を見つけないといけないのですが、今回はx=4が解の1つであることは既に見つけてありますので、随分楽です。いきなり組立除法できます。

    1  6  11 -204  | 4
       4  40   204
    1 10  51     0

    よって、
    (x-4)(x2+10x+51)=0
    x2+10x+51=0 のとき
            x=-5±√25-51
            x=-5±√26 i
    よって、この方程式の解は、
    x=4, -5±√26 i  となります。
      


  • Posted by セギ at 15:13Comments(0)算数・数学

    2020年03月19日

    高校数Ⅱ「式と証明」。剰余の定理・因数定理の利用。



    今回も「剰余の定理・因数定理の利用」です。

    問題 整式 f(x)をx(x+1)で割ったときの余りが2x+1、x+2で割ったときの余りが7であるという。f(x)をx(x+1)(x+2)で割ったときの余りを求めよ。

    とりあえず、問題の通りに整式 f(x)を表してみましょう。
    f(x)=x(x+1)g(x)+2x+1 ・・・①
    と、まず表すことができます。
    f(x)が何次式なのかわからなので、商も何次式かわからないまま、とりあえずg(x)と置きました。

    また、こうも表すことができます。
    f(x)=(x+2)h(x)+7 ・・・②
    このh(x)も、何次式なのかわからないのでとりあえずおいた商です。

    さらに、この問題の答えとなる余りを含む式を立ててみましょう。
    f(x)=x(x+1)(x+2)i(x)+ax2+bx+c ・・・③
    f(x)が何次式かわからないので、商であるi(x)も何次式であるかはわかりません。
    しかし、x(x+1)(x+2)という3次式で割っていますので、余りはどんなに次数が高くても2次式です。
    このax2+bx+cを求めれば良いのです。

    剰余の定理を用いましょう。
    ①より、f(0)=1 です。

    f(x)=x(x+1)g(x)+2x+1 にx=0 を代入すると、
    f(0)=0・(0+1)・g(0)+2・0+1
    となり、前半部分は0に何をかけても0ですから、
    f(0)=1 となります。
    これが剰余の定理です。
    かけ算のつらなりのどこかが0になるような数を代入するのがコツです。

    これを③に代入すると、
    f(0)=c=1 ・・・④

    また同じく剰余の定理より、①より f(-1)=-1です。
    f(-1)=-1(-1+1)g(x)+2(-1)+1=-2+1=-1 ということです。
    この f(-1)=-1を③に代入すると、
    f(-1)=a-b+c=-1 ・・・⑤

    また、剰余の定理より、②より f(-2)=7 です。
    f(-2)=(-2+2)h(x)+7=7 ということです。
    これを③に代入すると、
    f(-2)=4a-2b+c=7 ・・・⑥

    さて、a、b、cと文字が3種類。
    式が、④、⑤、⑥の3本。
    これは連立方程式として解けます。
    中学生の間は、連立方程式の計算過程は答案にしっかり残さないとテストで減点されますが、高校生は、連立1次方程式は解くことができて当然なので、答案にはその過程は残さなくても大丈夫です。
    勿論、書いてもいいですが。
    ④、⑤、⑥より
    a=5、b=7、c=1
    よって余りは、
    5x2+7x+1
    これが答です。


    問題 f(x)をx2+6で割ったときの余りがx-5、x-1で割ったときの余りが3であるという。
    f(x)を(x2+6)(x-1)で割ったときの余りを求めよ。

    剰余の定理を用いたいと思って、(x2+6)を因数分解すると、(x+√6i)(x-√6i)となります。
    虚数が入ってきて面倒くさいことになりそうです。
    他にスマートな解き方はないでしょうか?

    あります。ヽ(^。^)ノ

    f(x)=(x2+6)g(x)+x-5 ・・・① とおく。
    ここまでは一緒です。
    ここで、その商であるg(x)=(x-1)h(x)+p とおきます。
    g(x)はf(x)とは異なる整式ですから、(x-1)で割ったときの余りは、まだわかりません。
    とりあえず余りはpと置いておくなら、この式は何も問題ないですね。
    何で f(x)ではない式をx-1で割るの?
    意味なくない?
    と思うかもしれませんが、しばしお待ちを。

    これを①に代入するのです。
    f(x)=(x2+6){(x-1)h(x)+p}+x-5

    ①のg(x)のところに先程の式をカポっと代入しています。
    この式を部分的に展開して整理してみましょう。
    f(x)=(x2+6)(x-1)h(x)+p(x2+6)+x-5

    式全体を眺めると、この、p(x2+6)+x-5 が、f(x)を(x2+6)(x-1)で割った余りであることがわかります。
    ここで問題より、f(x)をx-1で割った余りは3でした。
    すなわち、剰余の定理より、f(1)=3 ですから、
    f(1)=(1+6)(1-1)h(x)+p(1+6)+1-5
    すなわち、
    f(1)=7p-4=3 となります。
    これを解いて、
    p=1
    よって、
    p(x2+6)+x-5
    =x2+x+1
    余りは、x2+x+1 です。

    この解き方はスマートで、一番上の問題でも使えます。
    とはいえ、自力でこの解き方を発想するのは難しいかもしれません。
    こういう解き方があるという知識を頭にインプットするのが何よりです。

      


  • Posted by セギ at 11:19Comments(0)算数・数学

    2020年03月08日

    高校数Ⅱ「式と証明」。因数定理と高次方程式。



    今回学習するのは「因数定理」です。
    整式f(x)が、x-aで割り切れるための条件は、f(a)=0である。

    これが因数定理です。
    「x-aで割り切れる」ということは「x-aを因数にもつ」ということ。
    f(x)=(x-a)(   )
    という形に因数分解できるということです。

    前回、剰余の定理を学習しました。
    整式f(x)をx-aで割った余りは、f(a)である、というのが剰余の定理でした。
    それならば、f(a)=0のとき、余りは0です。
    したがって、f(a)は、x-aで割り切れます。
    これが因数定理です。
    3次以上の方程式を解くという学習目標に一歩ずつ近づいてきましたね。

    問題 f(x)=x3-7x+a が x-3 で割り切れるようにaの値を定めよ。

    x=3 を代入すれば良いですね。
    因数定理より、
    f(3)=33-7・3+a=0
    27-21+a=0
          a=-6

    問題 整式x3+6x2+13x+8がx+1を因数にもつかどうかを判定せよ。

    f(x)=x3+6x2+13x+8 とする。
    f(-1)=(-1)3+6・(-1)2+13・(-1)+8
        =-1+6-13+8
        =0
    よって、因数にもつ。

    さて、ここまで勉強して。
    では、3次以上の式を因数分解するには、因数定理を利用すれば良いですね。
    式の値が0になるxの値を見つければよいのです。
    その数をaとすれば、その整式はx-aを因数にもつ。
    すなわち、それで因数分解できます。

    問題 x3-6x2+11x-6 を因数分解せよ。

    xにどんな値を代入すれば、この式は0になるのか。
    試しに+1や-1を代入して、地道に解いていきます。
    丁寧に答案を書いていっても勿論良いですが、面倒くさいので、そのあたりは答案に残さなくて大丈夫です。
    こういう問題は、考え方の過程を問われるタイプの問題ではないのです。
    答えがあっていれば良いのです。
    x=1 とすると、
    与式は、1-6+11-6=0
    やった、もう見つかったー。ヽ(^。^)ノ

    x=1を代入すると0になるということは、与式はx-1を因数にもつ、すなわちx-1で割り切れるということです。
    因数分解するには、x-1で割り切ったときの商が必要ですね。
    その商がもう一つの( )の中身になります。
    そこで、前回学習した組立除法を用います。
    真面目に筆算しても答えは出ますが、組立除法は簡単に答えが出ます。

    1 -6  11 -6   |1
        1 -5  6
    1 -5   6  0

    よって、商はx2-5x+6
    すなわち、
    x3-6x2+11x-6
    =(x-1)(x2-5x+6)
    さて、後ろのほうの( )はさらに因数分解できそうです。
    これは中学3年生の学習内容の因数分解です。
    かけて6、たして-5になる数字を探すと、-2と-3ですから、
    =(x-1)(x-2)(x-3)
    これで因数分解できました。ヽ(^。^)ノ

    ところで、+1や-1なら簡単に見つかって楽勝ですが、問題によってはそうではない場合もあります。
    地道にやるにしても、何か目安はないものでしょうか?

    あります。

    整式f(x)で、f(a)=0となる有理数aの候補は、
    ±(定数項の約数)÷(最高次の係数の約数)
    に限られていることがわかっています。
    上の問題では、定数項は-6。
    したがってその約数は、符号を抜くと、1、2、3、6。
    最高次の係数は、1。
    よって、aの候補は、±1、±2、±3、±6だったことがわかります。
    実際のaは、上の答案の通り、1、2、3でした。
    +1や-1を試してダメだったときには、この考え方を使って、aの候補をさぐっていきます。

    ここで課題となるのが計算力です。
    高校生は、このあたりの解き方が理解できないわけではないのです。
    あるいは、最悪、理解できないまでも、作業手順としては飲み込みやすい内容です。
    しかし、計算力が足りない場合があります。
    例えば-1がaだったのに、代入して符号ミスし、
    「あれ?0にならないから、これは違うんだ」
    と思ってしまい、後は延々と探し続けるということが起こりやすいのです。
    負の数のかけ算やたし算になると、計算精度が下がる。
    これは、大きな課題です。

    計算のやり方が中学1年で教わったやり方と違っているために精度が下がっている人もいます。
    上の問題で言えば、
    1-6+11-6
    =12-12
    というように、正の数どうし、負の数どうしを先に足し、最後に異符号の計算をするのが定石です。
    そのほうが間違えにくいからです。
    ところが、中学1年の学習をしてからもう何年も経っている高校生は、その定石を忘れていることがあります。
    1-6+11-6
    =-5+11-6
    =+6-6
    =0
    と、1つずつ足している子は案外多いです。
    それでも答えは同じですが、足したり引いたりを繰り返している過程で計算ミスをしやすいのです。
    計算ミスの多い人は、計算ミスをしやすい方法で計算している場合があります。
    それを直すだけで、精度は上がります。

    もう1つ。
    計算が苦手なのに暗算に固執するのもリスクが高いです。
    少しメモを取って、目に見える形にすれば楽に速く計算できます。
    絶対に暗算しなくてはいけない、暗算ができないなんて恥ずかしい、といった謎の脅迫観念にとらわれて、メモもとらずにうんうんうなって暗算したあげくに誤答する子もいるのです。
    時間もかかるしミスも多いし、この子は何の苦役を選んでいるんだろうと不思議に思うのですが、
    「メモを取ろうよ」
    という助言を聞いてくれないことがあります。
    効率の良いやり方を選択し、しっかり正答しましょう。

    問題 2x3-5x2+7x-6 を因数分解せよ。

    これは、xに+1や-1を代入しても0になりません。
    定数項は-6、最高次の係数は2。
    +2、-2もダメ。
    +3を試してみますが、やはりダメ。
    -3でもダメ。
    まさかと思いながら、3/2を代入してみます。
    2・(3/2)3-5・(3/2)2+7・3/2-6
    =2・27/8-5・9/4+21/2-6
    =54/8-90/8+84/8-48/8
    =138/8-138/8
    =0
    うわあ、3/2だったー。((+_+))

    それでは組立除法を。


    2   -5   7  -6    | 3/2
         3  -3   6
    2   -2   4   0


    2x3-5x2+7x-6
    =(x-3/2)(2x2-2x+4)
    最初の( )を2倍し、後ろの( )は1/2倍することで整理しましょう。
    =(2x-3)(x2-x+2)
    後ろの( )は、一見因数分解できそうですが、よく見るともうできないですね。
    これが解答となります。

    こういう問題になると、
    「どうやってもaが見つからない」
    と投げ出してしまう高校生がいます。
    涙ぐんでしまう高校生すらいます。
    数学があまりにもわからな過ぎてメンタル崩壊。( ;∀;)

    そんな大げさに考えないで。
    aの候補には限りがあります。
    符号ミスや計算ミスをしないように落ち着いて1つ1つ調べていけば、必ず見つかります。
      


  • Posted by セギ at 13:20Comments(0)算数・数学

    2020年03月01日

    高校数Ⅱ「式と証明」。剰余の定理と因数定理。


    今回も引き続き「剰余の定理」「因数定理」の学習です。

    問題 f(x)=4x3-3x2+ax+b がx2-2x-3 で割り切れるように定数a、bの値を定めよ。

    割り切れるということは、
    f(x)=(x2-2x-3)(   )
    という形に因数分解できるということです。
    さらに、最初の( )をさらに因数分解すると、
    f(x)=(x-3)(x+1)(  )
    という形になります。
    これは因数定理が使えますね。

    この式に、x=3 を代入すると、
    f(3)=(3-3)(3+1)(  )
    という形になります。
    最初の( )の中は、3-3=0 となります。
    0に何をかけても、0ですから、
    f(3)=0 となります。
    これが因数定理です。

    f(3)=0 になりますから、問題で与えられたもとの式に、x=3 を代入しましょう。
    f(3)=4・33-3・32+3a+b=0
    これを整理して、
    108-27+3a+b=0
    3a+b=-81 ・・・①

    また、同様に、f(-1)=0 でもありますから、
    f(-1)=4・(-1)3-3・(-1)2-a+b=0
    これを整理して、
    -4-3-a+b=0 
    -a+b=7 ・・・②

    あとは、aとbの連立方程式として解きます。
    中学2年で学習した内容です。
    ①-②
    4a=-88
    a=-22
    これを②に代入して、
    22+b=7
    b=-15
    よって、a=-22、b=-15 となります。


    問題 整式 f(x)をx-1でわると-1余り、x-4で割ると5余るという。f(x)を(x-1)(x-4)で割ったときの余りを求めよ。

    これは上の問題と異なり、整式 f(x)が何字式なのかわかりません。
    だから、(x-1)(x-4)で割った商が何次式であるかもわかりません。
    なので g(x)と表します。
    fの次だから g で、この文字の使い方にそれ以上の意味はありません。
    何でもいいんです。
    一方、(x-1)(x-4)という2次式で割っているので、余りは1次式です。
    それを ax+b とおきます。
    だから、
    f(x)=(x-1)(x-4) g(x)+ax+b とおくことができます。

    ここで剰余の定理が利用できます。
    x-1で割ると余りが-1なのですから、
    f(1)=-1です。
    すなわち、
    f(1)=a+b=-1 ・・・①
    同様に、
    f(4)=4a+b=5 ・・・②
    ②-①
    3a=6
     a=2
    これを①に代入して、
    2+b=-1
      b=-3
    余りをax+bと表したのでした。
    よって、余りは、2x-3 となります。

    問題 x9-12 を x2-4 で割ったときの余りを求めよ。
    これもg(x)を用いて、
    x9-12=(x2-4)g(x)+ax+b と表すことができます。
    割る式を因数分解して、
    x9-12=(x+2)(x-2)g(x)+ax+b
    剰余の定理を用いましょう。
    x=-2を代入すると、
    (-2)9-12=-2a+b
    左辺と右辺を取り換えながら、式を整理すると、
    -2a+b=-512-12
    -2a+b=-524 ・・・①
    また、x=2を代入すると、
    29-12=2a+b
    2a+b=500 ・・・②
    ①+②
    2b=-24
     b=-12
    これを②に代入して、
    2a-12=500
        2a=512
         a=256
    よって、余りは、256x-12

    問題 x6 を(x-1)2 で割ったときの余りを求めよ。
    今まで通り、まずはg(x)を用いて式を表してみましょう。
    x6=(x-1)2g(x)+ax+b ・・・① とおく。
    剰余の定理を用います。
    x=1を代入して、
    1=a+b ・・・②
    さて、ここまでは順調なのですが、割る式が(x-1)2なので、剰余の定理で代入できる値はx=1しかありません。
    あれ?
    このまま、もう何も動かない?
    ( ;∀;)

    ここで「同じ値を2回代入するぞ方式(仮)」とでも呼ぶべきテクニックを使います。
    勿論、同じ式に同じ値を代入しても同じ結果しか得られません。
    だから、式自体に変化を与えます。
    まずは、②を変形します。
    a+b=1
    b=1-a
    この値を①に代入します。
    x6=(x-1)2g(x)+ax+1-a
    x6=(x-1)2g(x)+a(x-1)+1
    x6-1=(x-1)2g(x)+a(x-1)
    ・・・お?
    右辺は、 x-1 でさらにくくることができそうです。
    x6-1=(x-1){(x-1)g(x)+a}
    そして、左辺も、x-1という因数を持っているのではないでしょうか?
    左辺を因数分解してみましょう。
    (x3+1)(x3-1)=(x-1){(x-1)g(x)+a}
    (x3+1)(x-1)(x2+x+1)=(x-1){(x-1)g(x)+a}
    やはり、左辺にもx-1という因数が存在します。
    ならば、両辺からx-1という因数を除いた残りの部分も等しいはずです。
    すなわち、
    (x3+1)(x2+x+1)=(x-1)g(x)+a
    もとの式と似ているようですが、次数が低くなったので、これは別の式です。
    だから、x=1を代入した値も別の値が出ます。
    これにx=1を代入してみましょう。
    (1+1)(1+1+1)=a
    よって、a=2・3=6 
    です。
    これを②に代入して、
    b=1-6=-5
    よって、余りは、6x-5です。

    ほとんど手品のようなこの解き方。
    「ないわー」
    「そんなの絶対思いつかない」
    と、高校生には大不評です。
    こういうテクニックがあるということを、まずは覚えてください。
    文字を減らし、次数を変えれば、同じ値を代入しても結果は同じではないのです。

    とはいえ、実際の模試や入試問題でこの問題がポコッと出題されたときに、このテクニックを使えるかどうかは微妙です。
    こんな解き方、覚えられない。
    x6を(x-1)2で割った余りを求めるんでしょう?
    実際に筆算で割っていけばいいんじゃないの?
    はい。
    何にも発想できないときには、その解き方、私も賛成です。
    何もしないのが一番良くない。
    とにかく何かをしてみましょう。
    x6をx2-2x+1で筆算しても、結果は勿論、余りが6x-5と出てきます。
      


  • Posted by セギ at 12:07Comments(0)算数・数学

    2020年02月19日

    高校数Ⅱ「式と証明」。剰余の定理と組立除法。


    さてこの学習は、3次式以上の方程式、すなわち「高次方程式」を解くことが目標です。
    そのためには、高次方程式を因数分解することが必要です。

    2次方程式は、因数分解すれば解けました。
    例えば、
    x2-x-2=0 
    という2次方程式は、
    (x-2)(x+1)=0
    と因数分解できます。

    かけ算で答えが0になるということは、少なくとも一方は0です。
    すなわち、x-2=0、またはx+1=0
    よって、
    x=2,-1 
    という解を得ることができます。

    同様に、例えば、ある3次式が、
    (x-1)(x-2)(x+4)=0
    と因数分解されるならば、その解は、
    x=1,2,-4
    です。

    あるいは、
    (x+1)(x2+5x+20)=0
    という形まで因数分解できれば、
    最初の( )からx=-1。
    後の( )は解の公式で解いて、2つの解を得ることができるでしょう。

    目標は、そういうことができるようになることです。
    では、どうすれば、3次以上の式を因数分解できるのでしょうか?
    そこに向かって学習は進んでいきます。

    多項式を余りなく因数分解したい。
    ( )( )という形にくくりたい。
    そのために、まずは3次式÷1次式の余りの性質について考えていきます。

    ここで登場するのが、「剰余の定理」です。

    f(x)=ax3+bx2+cx+d を x-α で割った商が px2+qx+rで、あまりがRだとします。
    これは、
    f(x)=(x-α)(px2+qx+r)+R
    と書き表すことができます。

    使っている考え方は、小学校で勉強する、わり算の検算の式です。
    わられる数=わる数×商+余り
    という式です。
    小学校で学習したことなのに、覚えていない人の多い式です。
    中学時代に方程式の利用で用いましたし、数A「整数の性質」でも利用しましたので、もうさすがに覚えているでしょうか。

    ただ、公式としては覚えているけれど、なぜ、「わる数×商+余り」がわられる数に戻るのか、理屈が理解できない、何も実感がないとなると少し心配ではあります。
    かけ算とわり算との関係を小学生の頃に学びそこねた可能性があるのです。
    算数・数学が得意な人は、わり算の逆の作業がかけ算であることは、いちいち教わらなくても計算している課程で実感として理解しているのですが、小学生の頃にそのように頭を働かしたことが一度もない人は、この公式を実感できません。
    丸暗記するしかなく、何度覚えてもまた忘れてしまうようなのです。
    わる数に商をかけて、余りを足したら、もとの数に戻る。
    そんなことは、説明するまでもない自明の理。
    そのように実感できる人も多いのですが、全く理解できない人もまた多いのです。
    頭の中に数理の体系のある人と、暗記した作業手順だけがある人との違いとも言えます。

    小学生の頃に、算数の色々なことを実感で理解できず、作業手順を丸暗記するだけだった人は、高校数学を理解するのに多くの困難を伴うことになります。
    また、中学で学習した(  )(  )という書き方が、(  )×(  )という意味であることを忘れている、気づいていない、という高校生もいます。
    (x+2)(x+3) を計算しなさい、といった問題を解くことはできますが、それは何も考えずに作業をしているだけで、(x+2)×(x+3) ということをやっているのだと、知らないのです。
    わかっていないのに、作業手順だけで解いています。
    土台がこのようにフワフワした状態だったり、いくつか抜けてスカスカだったりするところに、強引に高校数学の内容を乗せていくので、積載量を超えると、一気に崩れ落ちます。

    本当に、今学んでいることだけが理解できないのなら、わかりやすく解説すれば疑問が解けるのですが、解説すればするほど、その背後にわかっていないことが幾層にもあり、教えていて呆然とすることがあります。
    大元をたどれば、小学生の頃の本人の学び方の癖、習慣にたどりついてしまいます。
    小学生の頃、意味を説明されても、聞いていなかった可能性が高いのです。
    興味がなかったのでしょう。
    結論さえわかれば、それでいい。
    細かい説明は、右の耳から左の耳へ。
    意味よりも、やり方だけ知りたい。
    やり方だけ教えて。
    覚えるから。
    そういう学習を小学校の低学年の頃からずっと続けてきた子が、高校数学を学ぶと、作業手順が複雑で覚えられなくなり、「意味がわからない」とこぼすようになります。
    本当は、もっとずっと前から、意味はわかっていなかったのです。
    最初の最初、算数にまでさかのぼらないと、意味のわかる学習にたどりつけないことがあるのです。

    ただ、もう高校生なので、小学生のときには理解できなかったことも、今なら理解できるかもしれません。
    わり算の検算の式を、今こそ理解し、高校数学に生かしてください。

    剰余の定理に話を戻します。
    (x)=ax3+bx2+cx+d を x-α で割った商が px2+qx+rで、あまりがRだとします。
    これは、
    f(x)=(x-α)(px2+qx+r)+R
    と書き表すことができます。

    さて、ここに、x=αを代入してみましょう。
    すると、最初の( )内が(α-α)=0となります。
    0に何をかけても0ですので、
    (α-α)(pα2+qα+r)=0 となります。
    したがって、( )( )の部分は消えてしまい、
    f(α)=R 
    となります。
    多項式f(x)をx-αで割った余りは、f(α)、すなわち、もとの式にx=αを代入した数となる。
    これが剰余の定理です。
    この考え方が、高次方程式を因数分解するための基本です。
    まずは、剰余の定理に慣れるための練習問題を解いてみましょう。


    問題 f(x)=3x2-6x2+3x を x-3 で割った余りを求めよ。

    x-3で割るのですから、x=3を代入すれば良いですね。
    ここで、x=3か、x=-3か、符号がわからなくなる人がいます。
    f(x)=(x-3)(      )+・・・ という式を作りたいのだから、x-3=0 となるときのxの値、つまり x=3 だ、というところまで戻って考えれば、混乱を避けられます。

    f(3)=3・33-6・32+3・3
       =81-54+9
       =36
    余りは、36です。

    ところで、これでは余りしか求められませんが、商と余りと両方を求める方法はないでしょうか?
    勿論、真面目に筆算すれば良いのですが、もっと簡単な方法はないでしょうか?
    あるんです。
    それが組立除法です。

    まず、上の板書を見てください。
    読みにくいからと無視すると、この先の話は何もわからないので、我慢してご覧ください。
    ax3+bx2+cx+dをx-αで割った商がpx2+qx+r、あまりがRだったときの筆算を書いたものです。

    筆算するとき、まず ax3÷x を考えて商を立てます。
    今、その商が px2 と立ちました。
    ということは、aとpは、同じ数だということになります。
    すなわち、p=aが成り立ちます。
    次に、筆算では、立てた px2 という商と -α をかけたものを筆算で書き込み、bx2 との差を下に書いていきます。
    その係数は b-(-αp)=b+αp です。
    次の商で qx が立ったということは、q=b+αp が成り立ちます。
    同様に、r=c+αq 、R=d+αr が成り立ちます。
    すなわち、筆算しなくても、p=aですし、そこから芋づる式に、q、r、Rを求めていくことができます。
    それを図式化したのが、組み立て除法です。

    やり方自体は簡単なのですが、理解するまでに相当すったもんだするのが、この「組立除法」です。
    上の画像の後半は、その組立除法のやり方を示しています。
    まず、与えられた多項式の係数だけを書いていきます。
    ない次数の項があったら、忘れずに0も入れていきます。
    の横に、x-α で割る場合は、αを記入します。
    符号がわからなくなったらx-α=0となるときのxの値だと思い出してください。

     a  b  c  d   |α
               

    その下に1行分のスペースを開けて、下線を引いておきます。
    その下線の下に、まずは、aをそのまま下ろします。
    次に、bの下に、αaの値を記入します。
    bとαaの和を下線の下に記入します。それがqです。
    そのqとαの積をcの下に記入します。
    その値とcとの和を下線の下に記入します。それがrです。
    そのrとαとの積をdの下に記入します。
    その値とdとの和を下線の下に記入します。それがRです。
    下線の下に書かれた数値が、p、q、r、Rとなります。

    具体的な問題でやってみましょう。
    問題 x3-4x2+6x-7 をx-1 で割ったときの商と余りを求めよ。

    まず、与式の係数を書いていきましょう。

     1  -4  6  -7   |1

    次に、上の説明した通りの計算をしていきます。

     1 -4  6  -7    |1
        1 -3   3
     1 -3  3  -4

    よって、商は、x2-3x+3 、余りは-4です。

    いったん理解すれば、計算方法自体は簡単なのですが、こうやって書いていて、理解してもらえる自信がありません。
    実際に授業を受けてもらい、補助しながら演習すれば、何ということもないのですが。
    このように文字情報だけですと、何でもない前提でつまずいてしまい、わからないと感じる場合もあるかもしれません。
    どうしても個別指導を受けられない場合は、多くの具体的な計算の結果を見て、やり方を身につけるのが早道だと思います。
      


  • Posted by セギ at 14:14Comments(0)算数・数学

    2020年02月07日

    数Ⅱ「式と証明」2次方程式の解の範囲。少し難問を解いてみましょう。


    数Ⅱの2次方程式の解の範囲に関する問題をさらに解いてみます。
    少し難しい問題に挑戦してみましょう。

    問題 2次方程式 x2-2(a-4)x+2a=0 の2つの解がともに2より大きい場合の定数aの値の範囲を定めよ。

    数Ⅱ的アプローチで解いてみましょう。
    まずは、判別式D≧0 はこの2次方程式が実数解をもつための大前提です。
    あれ、D>0 じゃないの? と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この問題は「2つの解」と書いてあっても、その2つが異なる解であるとは書いていないのです。
    つまり、重解の可能性は否定できないのです。
    重解のときの判別式はD=0。
    だから、今回の判別式の範囲はD≧0 となります。

    判別式 D/4=(a-4)2-2a≧0
    a2-8a+16-2a≧0
    a2-10a+16≧0
    (a-2)(a-8)≧0
    a≦2, 8≦a ・・・①

    さて、解と係数の関係をここから利用します。
    上の2次方程式の2つの解をα、βとすると、問題の条件より、
    α>2、β>2
    すなわち、
    α-2>0、β-2>0
    よって、
    (α-2)+(β-2)>0 かつ、(α-2)(β-2)>0 

    ここで、α>2、β>2から
    α+β>4 かつ、αβ>4
    と単純にやってしまうと、誤差が生じてしまいます。
    正負の判断は、積の場合、必ず右辺を0に直して行わないと、正確なものにならないのです。
    上の、(α-2)(β-2)>0 を展開してみましょう。
    αβ-2α-2β+4>0 です。
    単純な、αβ>4 とは異なることがわかりますね。

    (α-2)+(β-2)>0
    α+β-4>0
    解と係数の関係より、
    α+β=2(a-4)-4>0
    2a-8-4>0
    2a>12
    a>6 ・・・②

    (α-2)(β-2)>0
    αβ-2α-2β+4>0
    αβ-2(α+β)+4>0
    解と係数の関係より、
    2a-2・2(a-4)+4>0
    2a-4a+16+4>0
    -2a+20>0
    -2a>-20
    a<10 ・・・③

    ①、②、③より
    8≦a<10

    これが解答です。


    しかし、上の件がどうしても納得いかず、α>2、β>2なんだから、α+β>4、αβ>4でいいんじゃないかと思う人もいるかもしれません。
    それで解くとどうなるでしょう。
    やってみましょう。
    判別式 D≧0 より、a≦2、8≦a ・・・① は同じです。
    α+β>4 も同じですから、
    2(a-4)>4
    2a-8>4
    2a>12
    a>6 ・・・②
    αβ>4 とすると、
    2a>4
    a>2 ・・・③
    ①、②、③より
    8≦a
    という別の答になってしまいます。


    「本当はこっちのほうが正しいんだよ」という不毛な論争の前に、それでは数Ⅰ的アプローチで、解答を確認してみましょう。

    判別式 D≧0 より、a≦2、8≦a ・・・① は同じです。
    次に、軸の方程式が2より大きいことを利用します。
    軸の方程式は、x=2(a-4)/2=a-4
    よって、a-4>2
    a>6 ・・・②
    さらに、2つの解が2より大きいということは、f(x)=x2-2(a+4)+2a としたときのf(2)の値は正の数ということになります。
    これは、放物線を実際に描いてみると実感できます。
    f(2)=4-2(a-4)・2+2a>0 
    4-4a+16+2a>0
    -2a>-20
    a<10 ・・・③
    ①、②、③より
    8≦a<10

    (α-2)(β-2)>0 の解き方と解が一致しましたね。

    8≦a ではなく、8≦a<10。
    どちらが本当の正解か?
    a=10を代入して確認してみましょう。
    「2次方程式 x2-2(a-4)x+2a=0 の2つの解がともに2より大きい」という条件を満たすでしょうか?
    x2-2(10-4)x+2・10=0
    x2-12x+20=0
    (x-2)(x-10)=0
    x=2,10
    解の1つは2となり、「2より大きい」という条件を満たしません。
    8≦a では正解とならないことがわかります。


    問題 x2-2(a-4)+2a=0 の2つの解がともに2より小さい場合の定数aの値の範囲を定めよ。

    これも、上の解き方と基本は同じなのですが、「2より小さい」と言われると混乱する人もいるようです。
    まず、判別式D≧0 であることは、上の問題と同じです。
    これは大丈夫でしょう。

    判別式 D/4=(a-4)2-2a≧0
    a2-8a+16-2a≧0
    a2-10a+16≧0
    (a-2)(a-8)≧0
    a≦2, 8≦a ・・・①

    次の解と係数の関係を利用します。
    上の2次方程式の2つの解をα、βとすると、
    α<2、β<2 より
    α-2<0、β-2<0 です。
    よって、
    (α-2)+(β-2)<0 かつ、(α-2)(β-2)>0
    解と係数の関係より、α+β=2(a-4)、αβ=2a だから、
    (α-2)+(β-2)=2(a-4)-4<0
    2a-8-4<0
    2a<12
    a<6 ・・・②
    (α-2)(β-2)=αβ-2(α+β)+4>0
    2a-2・2(a-4)+4>0
    2a-4a+16+4>0
    -2a>-20
    a<10 ・・・③
    ①、②、③より
    a≦2 が解答となります。


    問題 2次方程式 x2-2(a-4)x+2a=0 の1つの解が4より大きく、他の解は4より小さいとき、定数aの値の範囲を定めよ。

    何だか、これが一番難しそう・・・と思いますが、解き方としては、これが一番簡単です。

    上の2次方程式の解をα、βとする。
    α<β とすると、α<4、β>4
    すなわちα-4<0、β-4>0
    よって、(α-4)(β-4)<0
    αβ-4α-4β+16<0
    αβ-4(α+β)+16<0
    解と係数の関係よりα+β=2(a+4)、αβ=2aだから、
    2a-4・2(a-4)+16<0
    2a-8a+32+16<0
    -6a<-48
    a>8

    あっという間に答えが出ました。

    この問題は、数Ⅰ的アプローチでも、簡単に解くことができます。
    f(x)=x2-2(a-4)x+2a とおくと、
    f(4)<0
    16-2(a-4)・4+2a<0
    16-8a+32+2a<0
    -6a<-48
    a>8

    同じ答えとなりますね。

    こういう解き方のときは、何で判別式Dの話は出てこないのかなあ・・・と思う人もいるかもしれません。
    どちらの解き方でも、α<4<β あるいは、f(4)<0 と定めたときに、もう、放物線はx軸と交わることが確定しているからなんです。
    下に凸の放物線が、自動的に、びょーんと下に引っ張られて、どうしたってx軸と2点で交わっているイメージをもてたら、大正解です。

      


  • Posted by セギ at 11:49Comments(0)算数・数学

    2020年02月05日

    数Ⅱ「式と証明」2次方程式の解の範囲。アクティブラーニング的に。


    さて、前回は、2次方程式の解の範囲に関して、数Ⅰで学習した解き方を解説して終わりました。
    前回の問題は、数Ⅰの解き方が適していたのです。
    しかし、数Ⅱで学習する「解と係数の関係」を用いると、もっと簡単に解くことができる問題も多いです。

    今回は、こんな問題を見てみましょう。

    問題 2次方程式x2+2(a+2)x-a=0 が異なる2つの正の解をもつような定数aの範囲を定めよ。

    このタイプの問題の中では、一番易しいと思います。
    まずは、もう一度、数Ⅰの解き方で解いてみましょう。
    f(x)=x2+2(a+2)x-a という放物線をイメージします。
    そのグラフとx軸との交点のx座標が、上の2次方程式 x2+2(a+2)x-a=0 の解です。
    実際に、x軸と放物線との概形を描いて具体的にイメージすると、この解き方は理解しやすいです。

    どうすれば、x軸と放物線との交点は2つともx軸の正の位置にくるか?
    条件は3つあります。

    (1)判別式D>0 であること。
    これにより、放物線は、x軸と2つの交点をもつことになりますので、大前提です。

    (2)放物線の軸が、y軸より右にあること。
    もしも、放物線の軸が、y軸より左にあったら、x軸との交点の少なくとも1つは負の数になってしまいます。

    (3) f(0)>0 であること。
    放物線がx軸と2つの交点をもつことと、軸がy軸よりも右側にあることがクリアできても、そのままでは、放物線は横にだらしなく広がり、1つの交点のx座標は負の数になってしまう可能性があります。
    y軸との交点、すなわちy切片が正の数であれば、放物線はスッとすぼまり、問題の条件通り、x軸との交点は2つともx軸の正の部分となります。

    納得できない場合、この3つの条件を満たすが、x軸との交点は負の数になる放物線を描いてみようとしてください。
    どう描いても、放物線はx軸の正の部分と2か所で交わるようになります。
    反例が存在しない。
    すなわち、この3つの条件を満たせば、必ず、放物線はx軸の正の部分と2か所で交わるのです。

    ここのところは、「解き方」として丸暗記するだけでは忘れるのも早いので、心の底から納得できるまで理解を深めてほしいと思います。
    ただ、この問題だけ急に理解を深めようとしても、それ以前の学習を「まあよくわからないけど、そういうものなんだろう」と流してきた人には難しいかもしれません。
    こういう問題になると急に眉を寄せて、
    「わからない。わからない。わかるように解説してほしい」
    と要求する人がいます。
    気持ちはわかりますが、放物線とx軸との交点が2次方程式の解だということも、まずなかなか理解できない場合もあるのです。
    どこからわからなくなっているのか?
    中2で学習した、連立方程式の解が2直線の交点の座標だということも、本質は理解していなかったのではないか?
    中3で学習した、直線と放物線の交点の座標を求めるときに2つの式を連立して解くことも、本質は理解していなかったのではないか?

    「覚えやすいこと」=「わかること」。
    「覚えにくいこと」=「わからないこと」。
    覚え方を教えてもらえば、意味なんかわからなくてもいい。
    そういう学習を小学生の頃から続けてきたのではないか?
    でも、高校数学は複雑で、とうとう覚えきれなくなってきた・・・。
    そうして急に「意味がわからない」という方向にシフトし始めた。
    本当は、意味なんか、小学生の頃からわかっていなかったのに・・・。

    高校数学がわからなくなる子に、そういう子は多いです。
    中学の数学は、暗記と反復で何とかこなしてきた。
    なぜその解き方で解けるのか、深く考えたことなどなかったけれど、典型題の暗記と反復でそこそこの点数を取ってきた。
    ところが、高校数学は、暗記しきれない・・・。
    暗記しても暗記しても、頭から公式や解法が抜け落ちる・・・。

    ・・・そんな勉強をしてきたからですよ、と責めるのは簡単です。
    でも、意味がわからないことに気づいた今こそが、チャンスです。
    もう小学生のときの頭脳ではありません。
    脳は日々成長しています。
    中学生のときに、わからないから諦めてきたことも、もう理解できるかもしれません。
    あのときはわからなかったことも、今ならわかるかもしれないのです。
    1つ1つ、意味に立ち返ることができれば、高校数学はわかるようになります。
    実際は、そんなに大したことはやっていないのですから。
    高校数学なんて、数学の基礎のまた基礎です。
    理解しようと努力すれば理解できるレベルです。
    あとは、どれだけ粘れるか、です。
    今までのように「もういいから、やり方だけ覚えよう」と思ってしまったら、今までと同じ。
    それどころか、暗記することが本当に多いですから、もう数学は諦めることになります。
    数Ⅱのここからが正念場です。


    さて、問題に戻ります。
    上の解法で解いてみましょう。
    (1)判別式より
    x2+2(a+2)x-a=0 の判別式をDとすると、
    D/4=(a+2)2-(-a)>0
    a2+4a+4+a>0
    a2+5a+4>0
    (a+1)(a+4)>0
    a<-4,-1<a ・・・①

    (2)軸の方程式より
    f(x)=x2+2(a+2)x-a の軸の方程式は、x=-2(a+2)/2=-a-2
    軸はy軸より右側にあるから、
    -a-2>0
    -a>2
    a<-2 ・・・②

    (3) f(0)>0より
    f(0)=-a>0
    a<0 ・・・③

    ①、②、③より
    a<-4

    これが解答となります。


    この解き方で何も問題ないのですが、さてここからアクティブラーニング的に。
    グループに分かれて、この問題の解き方を皆で考えなさいと指示された場合、当然、数Ⅰ的な上の解き方が案として出てくるわけですが、他の解き方はないでしょうか?
    数Ⅱで解と係数の関係を学習しました。
    それを利用した解き方も可能ではないでしょうか。
    もう一度問題を見てみましょう。

    問題 2次方程式x2+2(a+2)x-a=0 が異なる2つの正の解をもつような定数aの範囲を定めよ。

    とりあえず、この2次方程式に異なる2つの実数解がないことには、前提が覆ります。
    だから、判別式D>0 は絶対に必要です。
    それは、数Ⅰの解き方と同じですね。
    あとは、解と係数の関係から考えていきます。
    この2次方程式の2つの解をα、βとします。
    この2つが正の数なのですから、α+β>0 ですし、αβ>0 です。
    この条件をクリアすれば、この2次方程式は、2つの正の解をもつでしょう。

    解いてみましょう。
    (1)判別式より
    これは先ほども計算しました。
    x2+2(a+2)x-a=0 の判別式をDとすると、
    D/4=(a+2)2-(-a)>0
    a2+4a+4+a>0
    a2+5a+4>0
    (a+1)(a+4)>0
    a<-4,-1<a ・・・①

    (2)解と係数の関係より
    α+β=-2(a+2)>0
    -2a-4>0
    -2a>4
    a<-2 ・・・②

    αβ>0
    -a>0
    a<0 ・・・③

    ①、②、③より
    a<-4


    同じ答えとなりました。
    そして、こちらのほうが、簡単に式を立てて計算していくことができるのが、答案を見比べて明瞭だと思います。

    数Ⅰで学習した解き方、数Ⅱで学習するこの新しい解き方。
    片方しか覚えない、面倒だから、ではなく、両方とも理解し、適宜使い分けることをお薦めします。

      


  • Posted by セギ at 11:33Comments(0)算数・数学

    2020年01月27日

    絵に描いたような失敗。


    授業中に小学生の宿題を見ていたときのことです。
    その子は、長期の休み中の講習に参加しませんでした。
    随分長い間授業をしないことになりますから、学力が下がるのは想定していました。
    その分、沢山の宿題を出したとしても、休み明けの授業でその大量の宿題の答えあわせをするのは難しいのです。
    ほとんどが正解であるならば、20ページくらいの宿題を出すことも可能ですが、半分は誤答であるなら、その宿題の答えあわせと解き直しをするのに、3~4回の授業が必要になります。
    休み中の宿題の解き直しをしている間に、学校の授業はひと月も先に進んでしまいます。

    それでも、特に計算力が心配な子でもありましたので、分数の加減乗除の問題がぎっしり詰まっている計算プリントを休み前に2ページ渡しました。

    休み明け、その子は、その宿題の半分を解いてきませんでした。
    言い訳は、
    「昨日、頭が痛かったから」

    ・・・はあ?(''Д'')
    休みはたっぷりありましたよね?
    何で、長い休み中の宿題を、塾の前日に解くの?
    塾の前日、たまたま頭が痛かったから、宿題はできなかった。
    そういう言い訳が通用すると、何で思っているの?

    しかし、そんなことも想定内のことでした。
    勉強が苦手な子が長い休みの間に塾に来ないということは、そういうことです。
    うちは、大手の塾のような積極的な電話勧誘や、休み前に個別面談の時間を作って講習参加への営業を行う、ということはありませんので、休み中の講習に参加しようとしない子は、そのままになってしまいます。
    ただ、休み中に全く講習に参加しない例は珍しく、最低でも週1回の通塾ペースは保ってくださる方がほとんどですが。
    さすがに、受験生なのに講習に参加しないという異常事態が起こった場合は理由を尋ね、解決に向けて努力しますし。


    さて、宿題の残り半分は翌週までの宿題ということにして、とにかく演習を始めると、その子は、2桁のたし算・ひき算が上手く出来ないのでした。
    式は正しいのですが、計算が合わないのです。
    特にひき算。
    繰り下がりのあるひき算ができなくなっていました。
    筆算の上の数から下の数を引けない場合、下から上を引いていました。
    例えば、93-47=54 としてしまうのです。

    ・・・これは想定外でした。
    何でここまで計算力が落ちるんだろう?
    計算スピードが遅くなるとか、ミスが増えるとか、その程度のことは予想していましたが、ひき算ができなくなるまで退化するとは、さすがに想像していませんでした。
    「・・・計算力が落ちていますね」
    そう指摘すると、その子は、答えました。
    「そんなわけない。休み中はずっと〇〇タッチで勉強していた」
    「・・・」

    ああ、そうか・・・。
    休み中、個別指導を受けない代わりに、通信端末とタッチペンで勉強する通信教育のほうに行っちゃったかー。

    休み前に予習した内容に関しては、もう忘れていても仕方ないと思っていたら忘れていなかったので、それは、通信教育の効果なのかもしれません。
    でも、たし算・ひき算ができないと、解き方がわかっていても、正解は出せません。

    学習する際の用具というのは意外に学習に影響します。
    日本の子どもが、国際的な読解能力テストで順位が低かったのも、コンピュータを使用する解答形式に慣れていないことも一因ではなかったか、と分析されています。
    逆に、コンピュータを使った学習ばかりしていると、紙と鉛筆で問題を解くことに違和感があり、手が上手く動かずスムーズに計算出来ないということも起こるでしょう。
    タッチペンによる学習も同様で、そればかりやっていると、紙と鉛筆を使って行う筆算の感覚がにぶる。
    ふっと、やり方がわからなくなってしまう。
    それは、学力的に心配な面のある子ほど影響が大きい。
    そういうことがあるかもしれません。

    通信端末のようなガジェットは子どもに受けがいいので、与えておけば学習意欲が高まるということはあると思います。
    ただ、今のところ、日本の教育現場において、テストは紙と鉛筆で解くものです。
    入試も同様です。
    紙と鉛筆を持つとテンションが下がったり違和感があったりするようでは、テストの結果に影響します。

    これはまた別の話になりますが、以前、ある英語塾が通信端末を導入して、生徒が家庭でも英文を読んだり聴いたりできるようにしたことがありました。
    英語塾に週2回通うだけでは、効果は限定的。
    毎日英語に触れるほうが学習効果が高い。
    だから、それは英断だったはずなのですが、生徒たちは、その端末に他のアプリを入れられること、通信型の対戦ゲームができることを発見しました。
    以後、その端末はゲーム機と化し、子どもたちは、英語の勉強をしているふりでゲームをやり放題となりました。
    また、生徒同士のコミュニケーションも一気に深まり、塾の授業が終わっても塾の前にたむろし、いつまでも喋っていて帰らないという事態も発生しました。
    ガジェット、おそるべし。

    何でも使い方次第なので、全否定するのはおかしいのです。
    ただ、端末を子どもに持たせるときは、大人が目を配る。
    それは、ガラケーの時代から大人が学んでいることです。
    新しいことを導入すれば、保護者は楽になるのではなく、むしろ目を配ることが増える。
    そのように思ったほうがいいように思います。


    話を、たし算・ひき算が上手くできなくなっていた子に戻します。
    翌週、その子は、残りの宿題を解いてきました。
    分数のわり算の宿題でした。
    その宿題の結果は、全問不正解でした。
    分数のわり算のやり方がわからなくなっていたのです。
    わられる数とわる数の両方を逆数にして、計算していました。

    その子は、全問不正解が納得できなかったのか、最初は私の採点ミスを疑ったようでした。
    「そんなはずない。ネットで調べたのに」
    と言うのです。

    ・・・分数のわり算のやり方を、ネットで調べた?

    ネットで調べ、分数のわり算は逆数のかけ算に直せば良いことを知り、そうして、わられる数とわる数の両方を逆数にして計算したのでした。
    それでは、全問不正解になります。

    私は、その子に渡してある塾テキストの該当ページを開き、指さしました。
    「分数のわり算のやり方は、ここに載っています。このテキストでも、学校の教科書でも、見やすく、わかりやすく載っています。なぜそのやり方で解けるのか、意味も書いてあります。やり方を忘れたのなら、なぜ、まず教科書やテキストを見ないの?」
    「ああっ!」
    その子は、幽霊を見たほどの衝撃を受けた顔をしていました。

    いえ、ネットではダメで、教科書なら良いという話でもないのです。
    肝心なのは、ネットでも何でも、本人の注意力や読解力が不足していれば、「分数のわり算は、逆数にしてかけ算する」という情報は、わられる数もわる数も逆数にするという方向へ行きやすいということなのです。
    実際に学校で勉強していても、塾で演習していても、途中からそんなふうになってしまい、違う違う違う、わられる数はそのままだよと幾度も制して、意味を確認し、それでも、翌週もまた間違えているのでもう一度解説して、練習して、そんなふうにしてやっと分数のわり算が身につく子は多いのです。

    情報を自ら得て活用する学力を育てる。
    21世紀型の人材を育成する。
    良い目標だと思います。
    しかし、つまりそれは、子どもの地力では、その力が欠けている子が多いから、そういう力を育てる必要があるということです。
    子どもが勉強のためにネットを利用しているときにも、大人は目を配る必要があります。
    間違ったサイトを見ていないか。
    正しく情報を読み取っているか。
    家庭の役割は増えこそすれ、減ってはいないのです。

    機械を用いて自学自習できるのは、ある程度の学力と判断力がついてからです。
    それまでは、どのように機械を利用しているか、それを丁寧に見守る大人が必要です。

      


  • Posted by セギ at 13:10Comments(0)算数・数学

    2020年01月22日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。2次方程式の解の正負。



    今回も「複素数」。
    まずは、複素数の範囲での因数分解です。

    問題 x4+3x2-40 を次の範囲で因数分解せよ。
    (1)有理数 (2)実数 (3)複素数

    こうした問題でネックとなるのは、数学用語の理解です。
    「有理数」「実数」「複素数」の定義を覚えていないと、問題が要求していることがよくわかりません。
    言葉の定義がわからない場合は、下の記事に戻って、ご確認ください。
    https://seghi.tamaliver.jp/e469030.html

    (1)有理数
    「有理数」の範囲での因数分解というのは、今まで通りの因数分解ということです。
    x4+3x2-40
    =(x2+8)(x2-5)
    これ以上はどうにもならない。
    これが有理数の範囲での因数分解です。

    (2)実数
    実数は、有理数の外側に無理数を含んだ集合です。
    平たく言えば、√ が出てきても良いのです。
    ならば、( )の中はまだ分解できますね。
    a2-b2=(a+b)(a-b) の公式を使えば後ろのほうの( )をさらに分解できます。

    (x2+8)(x2-5)
    =(x2+8)(x+√5)(x-√5)

    (3)複素数
    複素数の範囲での因数分解ならば、前のほうの( )も分解できます。
    まずは、x2+8=0 を解いてみましょう。
    x2=-8
    x=±√-8
    x=±2√2 i
    この解から逆に2次方程式を復元するなら、
    (x-2√2 i)(x+2√2 i)=0 
    となります。
    これが、最初の x2+8=0 と等しいのですから、
    x2+8=(x-2√2 i)(x+2√2 i)
    と分解できます。
    公式 a2-b2=(a+b)(a-b) を利用しても同じです。
    x2+8
    =x2-(-8)
    =x2-(2√2 i)2
    =(x+2√2 i)(x-2√2 i)

    よって、(3)の答えは、
    (x+2√2 i)(x-2√2 i)(x+√5)(x-√5)
    となります。

    ( )内が全てxの1次式に因数分解できました。
    あとは、ここまでやる必要があるのかどうかということ。
    やりたいならば、ここまでできるということなのです。


    問題 2次方程式x2+2(a+2)x-a=0 が-3と2の間に異なる2つの解をもつような定数aの範囲を定めよ。

    2次方程式の解の正負に関する問題です。
    数Ⅰ範囲でのこの典型題については、以下に解説してありますので、ご覧ください。

    http://seghi.tamaliver.jp/e446027.html

    以下は、上のページをご参照いただいた、あるいは、その典型題なら理解していることを前提に解説が進みます。

    f(x)=x2+2(a+2)x-a とおきます。
    これは下に凸に放物線のグラフとなります。
    それが、-3と2の間で2か所、x軸と交われば良いのです。
    まずは、その通りのグラフを描いて考えます。
    このようなグラフにするためには、ともかく、x軸と2点で交わらなければならないので、判別式を用いましょう。
    判別式D>0 ならば、x軸と2点で交わります。

    ここのところで、「え?」となってしまう人もいると思います。
    「D>0ならば、放物線は、x軸の上に浮いて、交わらないんじゃないの?」
    と言う子は多いです。
    感覚的にわからないでもない誤解ですが、判別式は、そういうものではないです。
    判別式は、放物線のグラフの概形とそのように短絡的につながるものではありません。

    判別式は、2次方程式の解の公式の√ 部分の中身です。
    √ 部分の中身が0ならば、2次方程式の解は、1つ、すなわち重解となります。
    2次関数のグラフで言えば、x軸と接している状態です。
    √ 部分の中身が正の数ならば、2次方程式の解は、2つの実数解となります。
    2次関数のグラフで言えば、x軸と2点で交わっています。
    √ 部分の中身が負の数ならば、2次方程式の解は、2つの虚数解となります。
    グラフで言えば、x軸とは共有点がない、平たく言えば、下に凸のグラフならばX軸より上に浮いています。
    それを判別するのが判別式でした。

    グラフがx軸より上に浮いているからD>0ではないのです。
    異なる2つの解をもつ、すなわちx軸と2か所で交わるから、D>0なのです。

    [1]判別式D>0より
    D/4=(a+2)2+a>0
    a2+4a+4+a>0
    a2+5a+4>0
    (a+1)(a+4)>0
    a<-4,-1<a ・・・①

    この計算過程でも、「何をどうやっているのか、わからない」と混乱する高校生はいます。
    2次不等式の解き方を忘れてしまっているのです。
    わからない場合は、下のページを見てください。
    http://seghi.tamaliver.jp/e445206.html

    数Ⅱを高校生に教えていて困るのは、数Ⅰで学習したことをほとんど忘れている場合があること。
    数Ⅰの内容が身についていないと、数Ⅱを学習していくのには多くの困難があります。
    数Ⅱで新しく学ぶ内容がわからないわけではないのです。
    数Ⅰで学習済みの内容がわからないのです。
    数Ⅱで突然つまずくわけではないのです。
    数Ⅰが身についていないから、その上にはもう何も積み上がらないだけなのです。

    「でも、何を復習したら良いのかわからない」
    という反応がありがちです。
    復習して無駄な箇所などありませんので、自分で曖昧になっていると感じるところをどこからでも復習しましょう。
    今回は、2次不等式の計算が必要なのに、そこが曖昧だと気づいたら、そこを復習してください。
    春休みなどの時間があるときにまとまった復習をしたいのならば、特に「2次関数」と「三角比」は、今後もずっとネックとなり続けるので、最優先の復習課題です。
    応用問題はわからなくても何とかなるので、基本の定理や計算方法とのその意味はわかるようにしておくと、数Ⅱの学習が随分楽になります。

    さて、問題に戻りましょう。
    x軸との交点が2つあることから、とにかく、[1]の条件を考えました。
    他にどんな条件を満たせば、解は、-3と2との間に2つあるのでしょうか。
    1つには、放物線の軸が、-3と2との間にあると良いですね。
    y=ax2+bx+cの軸の方程式は、x=-b/2a でした。
    それを用います。
    (ここのところを唐突に感じたら、数Ⅰ「2次関数」の軸の方程式のところを復習してください)

    [2]軸の方程式より
    -3<-2(a+2)/2<2
    -3<-a-2<2
    -1<-a<4
    1>a>-4
    -4<a<1 ・・・②

    しかし、この条件だけでは、放物線は横にだらんと広がり、-3と2の間にx軸との交点が2つあることにならないかもしれません。
    ここで、あと2つの条件に気づきます。
    f(-3)>0 と、f(2)>0 です。
    x=-3のときのyの値が0より大きいならば、その右側で、放物線x軸と交わっているてしょう。
    x=2のときのyの値が0より大きいならば、その左側で、放物線はx軸と交わっています。

    [3] f(-3)>0, f(2)>0 より
    f(-3)=(-3)2+2(a+2)(-3)-a>0
    9-6(a+2)-a>0
    9-6a-12-a>0
    -7a-3>0
    -7a>3
    a<-3/7 ・・・③

    f(2)=22+2(a+2)×2-a>0
    4+4(a+2)-a>0
    4+4a+8-a>0
    3a+12>0
    3a>-12
    a>-4 ・・・④

    これでグラフはイメージ通りの形になりますね。
    よって、①~④より、
    -1<a<-3/7となります。


    2次方程式の解の正負に関する問題は、数Ⅰのときも数Ⅱのときも、テストに出て当然の典型題なのですが、難しいせいか、出ないことを祈る、祈っているから出ないだろうという訳のわからない神頼みで避けて通る人がいます。
    意味を理解しながら、自力で解けるように練習を重ねてください。

      


  • Posted by セギ at 11:28Comments(0)算数・数学

    2020年01月18日

    新指導要領に思う。



    このブログの本当に初期のものを読み返し、以下の内容のものを発見しました。
    中学でようやく「ゆとり教育」が終わり、新しい学習指導要領になるときのものでした。
    新しい学習指導要領とは、現行の指導要領です。
    小学校では、来年度からさらに新しい学習指導要領となります。
    その変わり目の今、昔のブログを読むと、当時との違いに感慨を新たにしました。
    以下、当時のブログを採録します。


    来年から、中学は新指導要領になり、教科書は大改訂されます。
    「ゆとり教育」で、3割削減されていた指導内容の多くが、戻ってきます。
    数学の教科書は、例題解説や練習問題のページが増え、発展的内容も盛り込まれ、教科書の「参考書化」「問題集化」が言われています。
    私としては、今度の改訂は歓迎です。
    今まで公立中学生に数学を教えていてダメだなあと感じてきたことの1つに、応用問題への拒絶反応ということがあります。
    基礎学力がある。
    数学センスもいい。
    これなら、都立自校作成校や私立有名校に入れるかもしれない。
    そう思って、そのために必要な難度の高い問題を教えるのですが、どうにも身につかない子がいます。
    「学校で習っていない」と言うんです。
    習っていなくても、入試には、出るのですが。

    ただ、気持ちはわかります。
    そんなに難しいことを勉強しても、学校の定期テストには出ない。
    「入試のときに必要だ」と塾のセンセイが言っても、そんなに先のことは実感がわかない。
    すぐに必要ではないことは後回しになるのは、子どもも大人も同じです。

    そして、中3の晩秋。
    いざ志望校の過去問を解いてみると、30点しか取れません。
    数学が30点では、合格は難しい。
    だから、自校作成校はあきらめ、一般都立に。
    私立志望の場合も、一般受験は無理だから、単願推薦だけ。
    そんなふうに、ランクダウンせざるを得ない子もいました。
    もちろん、中1の最初から、私の言葉を信じて、不当なほどに難しい問題にもくいついてきてくれる公立中学生の子たちもいました。
    集団指導の上位クラスで、高度な公式も、定理も、応用問題の解法パターンも、競って身につけるムードになれば、あとは楽勝でした。
    私としても、その信頼は絶対に裏切れません。
    そういう子たちには、都立自校作成校でも、私立でも、行きたい高校に合格してもらいました。

    だけど、「信じてついてきてくれた子たちにだけ、信頼に応える。私の言葉を信じなかった子は、志望校に行けないのは仕方ない」では、少しおかしいですよね。
    中学生の稚拙な判断が、将来を左右してしまうなんて。
    素質のある子には、その素質を順当に開花してもらいたい。

    私立入試に出題されるレベルの問題が、最初から教科書に載っていれば。
    数学が得意な子だけにでも、学校で教えてくれれば。
    定期テストに1問だけでも、そのレベルの応用問題が出題されるようになれば。
    子どもの意識が変わる。
    学校では完全に理解できなくてもいいんです。
    学校で少しでも教わり、必要なことなんだと子どもが理解すれば、塾で完全に身につけます。
    新しい教科書なら、それがあり得るかもしれない。
    私は、そこに期待しています。


    ・・・さて、引用はここまで。
    現在の私に戻ってまいりました。
    ほんの9年前のことなのに、隔世の感があります。
    今、公立中学校の生徒で、応用問題を解かせてこのような抵抗を示す子は存在しません。

    本人の学力によっては、問題を解きたがらないということは、今もあります。
    教わるのは好きだが問題演習は苦手で、宿題を出しても解いてこない子はいます。
    1問わからないと、そこから先は全部解いてこないのです。
    「わからなかった」といって、全て授業で教わろうとします。
    そういう子は、現代も存在しますし、伸ばすのが難しいタイプの子です。
    昔ならば、集団指導の授業で受験テクニック的なことを教わると満足し、良い授業を聞いたことで自分の学力は伸びたと誤解する子です。
    今ならば、ネットの授業動画を見るだけで満足する子も、このタイプに入るでしょう。
    しかし、聴いただけ、見ただけでは、学力は伸びません。
    それで得た知識をもとに、さて、自力で問題を解くことができるのか?
    テストは、演習力がものを言います。

    最初は誤答ばかりでも、本人なりに何かを考えて根拠をもって解いてきてくれるなら、それに対し指導も補助もしていくことが可能です。
    必ず伸びます。
    しかし、全く解いてこない、あるいは「勘」で解いてくるだけで考えて問題を解くということがない場合、いつまで経っても演習力は養えません。
    本人にとっては、わからないから解けない。
    わからないから「勘」で解いている。
    そこを直せと言われるのは不当だという気持ちがあるかもしれません。
    受験が近づいても、志望校の過去問をまともに解けない。
    「勘」で解くしかない。
    そういう学力の子は、今も存在します。

    しかし、基礎力は十分あるのに、定期テストには出ないからと応用問題の演習を拒むような子は、今は公立中学の生徒でもほとんど見なくなりました。
    理由は単純。
    定期テストに応用問題が出るからです。
    しかも、移行措置で、テストに新傾向の問題もちらほら見られるようになってきています。
    授業で扱われたわけではなく、既存の問題集にも存在しないタイプの問題が、するっと定期テストに出題されています。
    今は配点が低いので影響は少ないですが、これの配点が高くなると、本人の思考力が得点を左右するようになっていきます。

    新傾向というのは、まさに新傾向なので、その新傾向を分析するのは最初のうちは極めて難しいのです。
    AIが分析しますよ、などというのは胡散臭い。
    AIは、過去のビッグデータをもとに分析しますので、新傾向には弱いのです。
    次のテストで何が出題されるかの特定は不可能でしょう。
    そして、「新傾向」と称する問題に、出題頻度の高い形式が生まれてきたとき、それは新傾向でも何でもない「典型題」となっていきます。
    AIが統計的にこういう問題の出題度数が高いと判断する頃には、既に人間の講師が典型題の判断をしているはずです。
    問題として質が高い良問であるという判断基準が人間にはありますから。

    しかし、こんなふうに書くのも、当時と比べると隔世の感があります。
    個別指導塾を開いたばかりの当時の私のライバルは、集団指導塾であり、学生アルバイトを多数抱える大手個別指導塾でした。
    現在の私のライバルは、授業を動画で提供する有料サイトであり、AIを活用した個別指導プログラムです。

    学力向上の根本は基礎力。
    基礎力を鍛えるカリキュラムの選定は、AIにも可能でしょう。
    ただ、誤答する子の理由は様々です。
    知識不足にしろ何にしろ、根拠をもって本気で解いて誤答したのなら、その能力をAIは正確に判定できるかもしれません。
    しかし、「勘」で解いている子に次に解くべき適切な問題を指示できるのでしょうか。
    また、理解はしているけれど多種多様なケアレスミスを繰り返す子に、正しい次の指示ができるでしょうか。
    そうしたことは分析できず、誤答すれば少し易しい類題を指示するだけ、ということはないのでしょうか。
    毎回、解けば解くほど「易しい類題の森」に迷い込み、それでもケアレスミスを繰り返すので、学力がついたと見なされない、という可哀想な子が現れないと良いのですが。

    3.5-1=4.5 といった計算ミスをする子は、小数の計算の仕組みが理解できていないとは限りません。
    答案を書くときのほんの一瞬、脳に何かが起こるのでしょう。
    そうしたミスを見たとき、私は、その子に小数の計算の復習は命じません。
    そうした子は、小数の計算だけを間違うわけではなく、次の問題では、56÷2=26 と暗算ミスをしてしまったり、さらに次の問題では、2x2と書くべきところを2x3と書き誤ってしまうのです。
    ミスの原因は小数の理解不足ではありません。
    しかし、AIは、小数の復習を命じるかもしれません。
    それを命じられた恥ずかしさで、細心の注意を払うようになり、ケアレスミスが減る子もいると思います。
    しかし、どこまでレベルを下げても、それでもケアレスミスをする子もいると思います。
    小数の計算なんかできるよと思いながら、しぶしぶ解くと、それもまた、ケアレスミス・・・。
    気がつくと、小学校の算数の復習コースに迷い込んでいた・・・。
    そんな学力ではないのに。
    その都度チューターに相談してレベルを操作し直してもらう繰り返し。
    そんなことにならないと良いのですが。

    教材会社から送られてくるAI導入のパンフレットなど見ながらも、初期費用の高さ以上にまだ心配な点が多くあり、導入する気にはなれません。
    うちの教室に通ってくれる生徒の成績が順調に上がっている現在、私が判断したほうが適切だという気持ちがあります。
    当面情勢を観察します。


      


  • Posted by セギ at 13:32Comments(0)算数・数学

    2020年01月12日

    つるかめ算と連立方程式。




    小学校で学ぶ算数と、中学から学び始める数学は、違う構造をもっています。
    例えば、代数の分野でいうと、文章題を解く場合、小学校の算数は、答えを求めるための式をたてます。
    子どもたちは、問題を最後まで見通して、答えを求める式をたてなければなりません。
    言い換えれば、最後まで見通すことができない子は、文章題の式をたてることをあきらめてしまいます。

    ニュートンは、こういっています。
    「算数では、与えられた量から求める量へと進んでいって問題が解けるのに比べて、代数は、逆の方向に進む。つまり、あたかもそれをよく知っているかのように、求める量から出発して、すでにわかっている量へ進んでいく」
    連立方程式の文章題を例にとって考えてみます。

    問題 ある展覧会の入場料は、大人1人250円、子ども1人100円である。ある日の入場者の総数は170人で、入場料の合計が27200円であった。この日の大人と子どもの入場者数をそれぞれ求めなさい。

    小学校で学ぶ普通の算数では、この問題は解けません。
    最後まで見通し、大人と子どもの人数を求める式をたてることが、この問題の構造では難しいからです。

    しかし、中学で学ぶ数学ならば、これは、解けます。

    求めたいものを x や y にすれば、式はたちます。
    文章の流れにそって式をたてるだけ。
    いわば、日本語で書かれた文章を方程式に翻訳する作業です。

    大人の人数を x 人、子どもの人数を y 人とする。

     x+y=170          ・・・①
     250x+100y=27200  ・・・②

    加減法で解きましょう。
    ①の式を100倍すれば、y を消すことができます。

    ①×100-②

       100x+100y=17000
     -)250x+100y=27200
     -150x      =-10200
               x=68 ・・・③

    ③を①に代入して

     68+y=170
         y=102

    よって、x=68 , y=102

      大人68人、子ども102人


    ところで、この問題、ふつうの小学生は解けませんが、これを方程式を使わずに解くのが、「受験算数」と呼ばれる私立中学を受験するための特別な算数です。
    いわゆる特殊算。
    その中で、これは、「つるかめ算」と呼ばれるものです。

    「池に鶴と亀がいて、足の合計は何本、頭の合計は何個。鶴は何羽、亀は何匹いるか」というのが、江戸時代からのこの問題の古典的構造なので、「つるかめ算」と呼ばれています。

    問題をもう一度確認しましょう。

    問題 ある展覧会の入場料は、大人1人250円、子ども1人100円である。ある日の入場者の総数は170人で、入場料の合計が27200円であった。この日の大人と子どもの入場者数をそれぞれ求めなさい。

    大人と子ども、どちらに揃えても、最終的には同じ答えが出ますが、今回は子どもに揃えてみましょう。
    入場者を全員子どもだったと仮定します。
    入場者の総数は170人ですから、入場料の合計は、
    100×170=17000 (円)
    現実の合計とは差があります。
    現実との合計料金の差は、
    27200-17000=10200 (円)
    その差は何で生まれたものかというと、全員を子どもと仮定したからです。
    大人と子どもの1人分の料金の差は、
    250-100=150 (円)
    ですから、子ども1人を大人1人に置き換えると、合計料金は150円ずつ増えて、現実に近づいていきます。
    では、何人分を大人に置き換えたら、現実の合計料金と同じになるでしょう。
    10200÷150=68 (人)
    つまり、大人は68人。
    では、子どもは、
    170-68=102 (人)

    この解き方が、つるかめ算です。

    このように式だけで解いていく方法の他に、つるかめ算は面積図を用いて解く方法があり、今はそれで教えるのが主流です。
    考え方の根本は、式だけで解いても面積図で解いても同じです。

    なぜ小学生にこのような解き方を教えるのかというと、まだ定まっていないものをxやyとして方程式を立てるということが、子どもには理解しづらいことだからです。
    大人が「え?こんなことが理解できないの?」と思うようなことが、子どもには理解できないことがあります。
    発達段階の過程で、理解できないこともあるのです。
    子どもは、身長・体重はそれなりに増え、口のきき方も大人と対等になっていたりしますが、頭の中はまだ混沌としています。
    非常に主観的で、論理性に欠けます。
    客観的なこと・論理的なこと・抽象的なことは受けいれられず、具体的なこと・即物的なことしかわかりません。
    意味不明で幻想的なことのほうにリアリティを感じたりもします。

    方程式は、もう少し成長しなければ、理解できないのです。
    中学生になれば誰でも理解できるのかというとそうでもなく、本人の発達段階によっては、中学生でも、解き方の丸暗記はできるとしても、なぜそれで解けるのかは理解できない場合もあります。
    なぜそれで解けるのか理解できないので、文章題を読み取って自力で立式し計算することはできません。
    「文章題が苦手」という漠然としたことではなく、理解できないんだから仕方ない、ということもあると思います。



    写真は、東京都神津島。2006年春撮影。

      


  • Posted by セギ at 13:47Comments(0)算数・数学

    2020年01月08日

    中1の壁。算数と数学。



    小学校は、基本的なことのみ学習しますので、大多数の生徒は、自分は学校の勉強についていけていると感じています。
    「学校では勉強ができるほうである」と感じている小学生が過半数かもしれません。
    しかし、過半数が勉強ができるほう、というのは明らかに事実とは異なります。
    易しいカラーテストと、好意的な絶対評価の成績によって、事実誤認が起きている・・・。
    冷酷な言い方をすれば、そういうことになります。

    しかし、学習に自信をもって取り組むのは良い効果のあることで、大半の生徒は、中学入学後もしばらくの間は、自分は学校の勉強についていけていると感じ、意欲的に学習を続けます。
    むしろ、「学校では勉強ができるほうである」と感じる生徒も、中1の1学期までは多いのです。
    心配していた英語も数学も、1学期の成績は「5」。
    ああ、大丈夫だ、とさらに自信を深めます。

    しかし、それは、英語や数学では人生で最初で最後の「5」だった・・・。
    以後は下がり続け、やがて「3」になった。
    そういう人も、多いのです。

    その意味で、「中1の壁」は1学期にあるのではなく、2学期、3学期にあります。

    中1の1学期の数学のテスト範囲である「正負の数」や「文字式」は、解き方を丸暗記した子が高得点を取ることのできる単元であり、それでたまたま「5」になってしまうのです。
    計算自体は、1桁や2桁の計算ばかりで、小学校の計算ドリルよりもむしろ簡単です。

    英語も、現行の教育課程では、中1の1学期ですと、アルファベットや、易しい単語を書くことができれば大丈夫です。
    文法は、be動詞の肯定文、疑問文、否定文だけです。
    その後、Do you~?がどうしても身につかず、何でも Are you~?としてしまう人も、名詞の複数形や動詞の三単現のことを毎度うっかり忘れてしまう人も、1学期の間は、英語はミスする原因が少なく、楽勝です。

    中1の1学期の成績は、その後を保証するものではありません。
    中1の1学期で「5」を取って、その後普通に勉強していれば、中学生の間はおそらく「2」にはならないだろう・・・。
    その程度の保証しかできません。
    2学期で「4」、3学期で「3」と下がっていくのは、むしろ、よくあることです。
    こういう成績表はよく見ます。

    中1の1学期の成績は、幻です。
    中1の壁は、2学期・3学期にあります。

    特に数学。
    中1の2学期は、「方程式の利用」「比例・反比例」を学習します。
    数学的な考え方を問われるようになるのですが、ここで、小学校の算数から脱却できない子、すなわち壁を乗り越えられない子が現れます。

    小学校の算数と中学の数学と、何がそれほど違うのか?
    文章題で考えてみると、その違いが明瞭です。


    算数の文章題は、答えを求めるための式をたてます。
    しかし、数学は、文字xを使って、数量の関係を表す方程式をたて、それを解いて答えを求めます。
    文章で書かれてあることを方程式に翻訳する作業をすることになります。
    あとは、式が自動的に答えを出してくれる。
    方程式は、とても便利なものです。

    そんなに便利なものなら、小学生のときから方程式を教えればいいじゃないか。
    途中で突然切り換えるから、そこで気持ちがついていけなくなって、数学が苦手になるのでは?

    そういう思いもわかるのですが、子どもには発達段階があります。
    小学生の脳は、方程式を理解できるほどには発達していないことが多いのです。
    個人差はありますが、小学生が自ら方程式を立式し文章題を解くのは不可能に近い。
    それが私の実感です。
    大人から見たら、
    え、何でこの程度の簡単なことが理解できないの?
    小学生でも、これくらいのことは、ちゃんと説明すれば、わかるでしょう?
    と思うようなことが、小学生には、全く理解できないことがあります。

    まだわかっていない数値を式の中に利用して式を立てることなど、絶対にできない。
    だって、その数値はわかっていないのだから。

    そういう思いが強いのです。
    抽象思考ができず、全て具体的に考えないとダメなので、具体的にわかっていないことは式の途中では扱えないのです。

    中学受験をする受験算数の特殊算の多くは、方程式を使えば解けます。
    それなのに、方程式を使わず、線分図だの面積図だの公式だの、訳のわからない方法で解く。
    あれは、おかしいんじゃないか、と思う人もいると思います。
    受験をするくらいだから、学力は標準以上なのだろう?
    教えれば、方程式も理解できるんじゃないか?
    塾のアルバイト学生講師の中には、本人が秀才である分、不遜な人もいます。
    テキストの指導法や解説を無視し、小学生に方程式を教えてしまうことがあります。
    小学生に方程式を教えないのには教えないだけの理由があると考えられず、自分だけが新しい教え方を発見した気になって、方程式を教えてしまうのです。

    若くて自信たっぷりな先生に、子どもは迎合しがちです。
    「どうだ。このやり方なら、どんな問題でも解けるんだぞ」
    「うわあ。先生、すごいねえ」
    大手の個別指導塾で教えていた頃、私が授業している隣りのブースから、そんな声が聞こえてきて、まずいなと感じたことは幾度かありました。
    しかし、私は、それを報告する立場にありませんでした。
    報告しても、教務につまらない密告をする嫌なヤツになるだけでした。
    教務も、そんな密告は、余計な仕事が増えるだけなので聞きたくないのです。
    教務は保護者からクレームがあればすぐに動きます。
    しかし、関係ない講師の関係ない進言への反応は鈍いのが普通です。
    生徒は、喜んでいる。
    生徒がその講師を指名している。
    保護者からのクレームもない。
    なら、それでいいのです。
    その子の受験勉強に大きく影響する、たいへんなことが起きている。
    それは、わかっていたのですが。

    大手の個別指導塾では、「成績が上がらない」と保護者からクレームがきた場合に、では、講師を替えて仕切り直しましょう、というクレーム処理の方法をとることが多いです。
    室長に呼ばれ、クレームのきている子なのでよろしく頼むといわれ、その子の授業に入ってみると、前任者が方程式を教えていた、ということもありました。
    特殊算の公式も、線分図や面積図の描き方も教わっていない。
    かと言って、方程式を立てられるわけでもない。
    その子の頭の中は、ぐちゃぐちゃになっていました。

    方程式を教えたところで、子どもの立てる方程式は、
    70-25÷5=x
    といったものになりがちです。
    xを使う意味がありません。
    わからないものをわからないままxとおき、関係を表す式をたてる。
    方程式のそうした構造は、子どもには理解しづらいのです。

    小学校でも、6年生になれば少しだけ「文字を使った式」の学習は行うのですが、
    x-40=120 とか、x×38+5=81
    といったレベルの易しいものだけです。
    文章題からその式を立てさせる場合は、本当に構造の易しいものに、しかも最大限の補助をして、ようやく式が立てられるというレベルです。
    ここまで易しいと、方程式にする意味がないので、小学生には不評です。
    なんで、この単元のときだけは、120+40という式をたてたらいけないんだろう?
    なぜ、x-40=120 というわかりにくい式をわざわざ立てるのだろう?
    子どもたちは首を傾げ、その単元が終われば、もう文字を使った式のことは忘れ、2度と方程式は立てません。
    方程式のことが気に入り、以後ずっと使う子は、特別に数学センスのある子だけです。

    小6で学習する「文字を使った式」という単元の目的は、文字を使った式に少し慣れるというだけのことなのでしょう。
    中学で学習することのちょっとした予告編だよと子どもには伝えています。
    中学生になったときに、「そういえば、昔、これに似たことを少しだけやった」という記憶があれば、それでいい。
    それで、小学校から中学への橋渡しになる。
    その程度のことだと思うのです。

    小学生に本格的に方程式を教える場合は、その子の発達段階をよく見極めて教える必要があります。
    また、方程式の学習の前に、まずは正負の数の学習が必要です。
    負の数がわかっていないと、方程式は、解けるものと解けないものが出てしまいます。
    さらに、逆算との違いをこんこんと解き、出来るようになるまで常に補助していく必要があります。
    方程式は、逆算ではありません。
    式の両辺に何かをたす、ひく、かける、割る、という作業を行うことで、式を解きほぐしていく。
    xについて解くとはそういうことだいうことを、理解できるまで解説し続ける必要があります。
    逆算して求めているのではないのだ。
    xについて解いているのだ。
    この大きな転換は、中学生でも理解できない子は理解できないのです。
    作業手順として暗記するだけで、意味はわかっていない子は中学生でも多いのです。

    もしも小学生に方程式を学ばせたいのなら、低学年の頃から算数は先取り学習をし、何でも早め早めに学ばせ、その子に数学的才能があると確信できた場合に、その子の肉親が、信念をもって教え通す。
    小学生だけの解き方という「雑音」が入らない状況を作り、毎日教え続ける。
    それくらいの覚悟がいることだと思います。


    小学生の間は方程式は絶対に理解できない。
    一方、中学生になれば、誰でも方程式は理解できる。

    そのように単純なことではありません。
    個人差、ということをここでもう一度考える必要があります。
    小学生でも、方程式を理解できる子も存在します。
    一方、本当は、中学生になっても、方程式を理解できる発達段階に至っていない子も多いのです。
    方程式の計算は、手順として覚えます。
    学校で学習する内容ですし、周囲の皆がそれに従ってやっているのですから、本人も作業手順は覚えるのです。
    何で中学に入ったらこのやり方に変わったのかはわからないけれど、逆らっても仕方ない。
    移項すると符号が変わる理由はよくわからないけれど、それはそういうもの、皆がそれでやっているのだから仕方ない、覚えるだけ、と諦めて解いていきます。

    しかし、そういう子たちは、文章題を読んで、方程式を自ら立てることは、できません。
    何を要求されているのか、わからないのだと思います。
    その子たちは、内心、
    急にどうしたの?
    何で文字を使って式を立てなければいけない?
    何でそんなことをしなければならないの?
    と思っているのかもしれません。

    そして、小学生と同様に、
    「わからない数値は、わからないのだから、そんなものを式の途中に使うことはできない」
    「式というのは、答えを出すために立てるものだ。関係を表す式とか訳のわからないことを言われても、意味がわからない」
    と思っているのかもしれません。

    あるいは、
    「自分は、小学生のときから文章題は苦手だった。文章題は、自分は解けない。でも、計算はできる。基本はできるから、それでいいでしょう?はい、それで終わり」
    と心に決めてしまって、まともに問題を読むこともしない子も多いと思います。

    ここの壁は厚いです。

    しかも、中1の2学期には、その先に、もっと恐ろしい「関数」が待っています。
    y=3x だなんて、xもyも結局定まらない。
    比例だの何だと言っているが、何のために何を勉強しているのか、本当にわからない。
    これは何に使うの?
    何の役に立つの?
    数学の根本がわからない子は、関数がわからないことが多いのです。
    関数がなぜ存在しているのか、何のためにこんなことを大事そうに学ぶのか、意味がわからないのです。
    本質が全く理解できないのです。
    小6でも「比例・反比例」は学習しているのですが、そのときも、何のために何をしているのか全くわからず、困惑したままその単元の学習が終わっていく子は多いです。
    むしろ、算数・数学は意味がわかったことは一度もないし、意味を考えたことも一度もない、言われた作業を覚えた手順でやるだけさ、という子のほうが抵抗感は少ないのかもしれません。
    しかし、言われた作業を覚えた手順でこなすだけにしては、関数は複雑です。
    文章題への利用のあたりで、ブラックアウトとなりがちです。


    2学期に成績が下がって。
    中1の3学期になって重い腰を上げて塾にやってくる。
    作業手順を覚えるだけの勉強をやめられない子は、そのままかもしれません。
    しかし、その中に原石が存在することも、私は知っています。
    考えるとは、何をどうすることであるか。
    作業手順の暗記ではない数学の勉強とは、どういうことか。
    表面上は普通のテキストを普通に解いていくだけの授業の中にある、数学的な「対話」。
    本質的な「理解」。
    そうしたものがあれば、時間がかかっても、必ず成績は上向いていきます。
    数学力がついていきます。

      


  • Posted by セギ at 13:49Comments(0)算数・数学

    2019年12月31日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。解と係数の関係。その2。


    数Ⅱ「複素数」の「解と係数の関係」の続きです。

    問題 2次方程式 x2-(a-1)x-2a=0 の解の差の平方が17のとき、aの値を求めよ。

    こういうサラッと1行で終わる問題、怖いですね。
    何の手がかりもないと感じるので、何をどう解いていいか、わからない。
    高校数学、特に模試などで0点を取る人がいるのも、このように何をどうして良いのか全くわからない問題が並んでいるからでしょう。

    しかし、中学までは、逆に、問題文が何行もある問題が苦手な人が多かったと思います。
    文字を読むことそのものがあまり好きではない人は、ついつい問題文を読み飛ばし、大事な情報を読まないで解いたりして失敗することも多かったのではないでしょうか。
    以前、下のような反比例の問題を生徒と解いていたときのことです。

    問題 A町からB町まで行くのに、1時間に3km進むと4時間かかります。かかる時間は、1時間に進む道のりに反比例します。
    (1) 1時間に進む道のり xkm と、かかる時間 y 時間との関係を式に表しなさい。

    問題文に「反比例します」と書いてありますし、比例定数は3×4=12であることも明白です。
    文章題としても、これくらいコンパクトな内容ならば、読み通すのも難しくありません。
    それなのに、何分経っても考え込んでいて、手が動かない。
    まさかと思いながらも、その子のテキストの大問の問題番号の横を指さして、
    「ここ、読んだ?」
    と訊くと、首を横に振りました。
    (1)から読み、その上の問題文を読んでいなかったのでした。

    大問のところに書いてある文は、国語の場合などは特に、「以下の文章を読んで後の問いに答えなさい」といった、読んでも読まなくても変わりはないことしか書いてない場合があるのも事実です。
    そのため、大問のところの文字は読まない癖がついている子は案外多いようです。
    大問の問題番号の付近の文字は読まない。
    (1) の後からしか読まない。
    そんなことが習慣になっているのです。

    「・・・いや、問題番号の横に、A町とかB町とか、3kmとか4時間とか、記号や数字が書いてあるのを目の端に感じたら、それは読みましょう。それは大事な情報ですよ。それを読まなかったら解けないですよ」
    そう説明したのですが、問題文を読まない癖というのは、小学校の低学年から長い年月をかけて熟成されてしまった癖なので、1度そんな癖がついてしまったら、以後長くその子の足枷になる可能性があります。

    読まないから解けない。
    問題文を読めば、解ける。
    その当たり前のことに気づいた子から順番に成績が上がっていきます。
    読解力があれば、数学はできる。
    国語ができれば、数学もできる。

    しかし、それも万能ではありません。
    勿論、基本的な読解力もない状態では、どの科目も成績が伸びていくのは難しいです。
    しかし、国語ができれば、必ず数学もできると言えるか?
    それが言えるのは、高校入学までではないでしょうか。
    高校数学は、問題文の文字情報が極端に減っていきます。
    読解力よりも、純粋に数学力が問われるようになっていきます。
    少なくとも、今まではそうでした。
    来年度から実施される予定の大学入試共通テストがそれをかき乱すのかどうかは、まだ、今のところよくわかりません。
    文章がやたらと長いだけの粗悪な文章題が、純粋に数学が得意な子の進路を阻むことがなければ良いのですが。

    「新傾向問題」と称する、数学なのにやたらと文章や図表による説明の長い問題は、急に世に出てきたものではありません。
    そんな「新傾向問題」は、戦後の長い教育史の中で、度々現れては効果が疑問視されて潰れてきました。
    都立高校入試も、20年ほど前は、そんな「新傾向」の文章題が出題されていたのです。
    やたらと長い文章と図や表を読んで、方程式を立てたり、規則性を見抜いたり、確率を求めたりする問題でした。
    今も、都立入試の大問2にその気配は少し残っていますが、悪問だった「新傾向」は大きく改訂され、文章は短くなり、質は高くなり、高校数学に確かにつながる数学力を試す良問となっています。

    数学の「新傾向問題」は、実施されて数年を経ると、こんな問題では数学力は問えないという批判が沸点に達し、中止になる。
    その繰り返しです。
    子どもの読解力が心配なのはわかりますが、それは他の科目で問うことができますので、数学でやらなくても良いのです。


    そんなこんなで、さて、もう一度上の問題を見直しましょう。
    新傾向でも何でもない、従来からの問題です。

    問題 2次方程式 x2-(a-1)x-2a=0 の解の差の平方が17のとき、aの値を求めよ。

    「解の差の平方」のあたりは多少読解力が問われますが、その他の情報としては、これは2次方程式の問題であるらしい、というだけです。
    問題文を読んでも、どう解くのかピンとこない。
    そうした問題のほうが、高校数学らしい問題だと感じます。
    読解力ではなく純粋に数学力の勝負になってくるのが高校数学といえるかもしれません。

    問題集を解いていてこの問題を目にするのならば、ここは「解と係数の関係」のページだから、解と係数の関係を使うのだろうと考えることもできます。
    しかし、こういう問題が実力テストや模試に出ている場合、何の単元の何に関する問題で何を利用したらいいかわからない高校生は多いと思います。
    その結果、答案を1行も書き出せない・・・。
    数学の答案は、1行目の書き出しが一番難しいですから。
    発想の原点が書かれているのが1行目なのですから。

    2次方程式が与えられて、解がどうのこうのと言われたら、とりあえず「判別式」か「解と係数の関係」が使えるのではないか?
    そう発想できるように、頭の引き出しにいつも使える形で定理を入れておく必要があります。
    結局、定理がすぐに使える状態で頭に入っているかどうかです。

    では、解と係数の関係だろうと判断し、この問題を解いてみましょう。
    この2次方程式の2つの解をα、βとします。
    解と係数の関係より、
    α+β=a-1 ・・・①
    αβ=-2a ・・・②
    また、「解の差の平方が17」なのですから、
    (α-β)2=17 ・・・③
    です。
    このように、作れる式をまずは作れるだけ作ってみます。
    文字が3通り、式が3本作れました。
    この連立方程式は、解けますね。

    解いてみましょう。
    ③より、
    α2-2αβ+β2=17
    (α+β)2-4αβ=17
    これに①、②を代入して、
    (a-1)2-4・(-2a)=17
    a2-2a+1+8a=17
    a2+6a-16=0
    (a+8)(a-2)=0
    a=-8、2
    これが解答となります。


    問題 2次方程式 4x2-2x+a=0 の解がsinθ、cosθであるとき、定数aの値を求めよ。

    さて、三角比が登場しました。
    三角比を見ると動揺が走り、ノートに直角三角形を描き出す人もいるかもしれませんが、この問題は、そのような三角比の最初の定義に戻る必要はないのです。
    ここでは、単にsinθ、cosθというのはある数値なのだと理解しておけば大丈夫です。
    その2つの数値が、与えられた2次方程式の2つの解です。
    ところで、今回、x2の係数が4ですので、そこにも注意します。
    解と係数の関係は、
    2次方程式 ax2+bx+c=0 の2つの解をα、βとすると、
    α+β=-b/a 、αβ=c/a です。
    x2の係数の a=1 のときは、α+β=-b、αβ=c となりますが、この問題では a=4 であることに注意が必要です。

    解と係数の関係より、
    sinθ+cosθ=1/2 ・・・①
    sinθ・cosθ=a/4 ・・・②
    とりあえず、2本の式は立ちました。
    ても、これだとわからない値がaを含めて3種類なのに、式は2本。
    これでは、解けないですね。
    もう1本、式が必要です。
    ここで、三角比の相互関係の公式を思い出せれば、この問題は解けます。
    sin2θ+cos2θ=1 という式がありました。(2は指数です)

    よし、解きましょう。
    ①を2乗して、
    (sinθ+cosθ)2=1/4
    sin2θ+2sinθ・cosθ+cos2θ=1/4
    sin2θ+cos2θ+2sinθ・cosθ=1/4
    三角比の相互関係の公式より、
    1+2sinθ・cosθ=1/4
    2sinθ・cosθ=-3/4
    ②を代入して、
    2・a/4=-3/4
    2a=-3
    a=-3/2
    これで答えが出ました。

    ああ、やはり、純粋に数学的な問題のほうが、良い問題が多いなあ・・・。
    読めと言われれば新傾向の文章題でも何でも読みますが、どうせ読むのなら、香り高い文学作品とか、エッジの効いた評論とか、そういうものを読みたいです。
    お正月は、そういうものを読んで過ごそうかなあ。
    というわけで、皆さまも良いお年を。

      


  • Posted by セギ at 13:19Comments(0)算数・数学

    2019年12月23日

    算数から高校数学へ。データの分析。アクティブラーニング的に。


    「データの分析」は、小学校から高校まで一貫して学習する数学の大きな単元です。

    計算ができるだけではダメ。
    未来を生きる子どもたちは、数値を分析し、読み取る力が必要だ。

    そうした意図のもと、小学生から「棒グラフ」「折れ線グラフ」「整理のしかた」「平均値・単位量あたり」「資料のちらばりと柱状グラフ」と学習を進めていきます。
    中学では、「度数分布表と柱状グラフ」「有効数字」「標本調査」。
    高校になると「四分位数と箱ひげ図」「分散と標準偏差」「相関係数」さらに「期待値」「確率偏差」と学習が進みます。

    この単元のそうした趣旨も理想もわかるのですが、実際に問題を目にすると、なかなか厄介だなと感じます。
    まずは、小6向けの内容で、アクティブラーニングの可能性を考えてみましょう。


    問題 AとBの2つのふくろには、以下の重さの10個ずつのミカンが入っています。
    Aのふくろ
    80g、85g、94g、95g、96g、96g、98g、99g、103g、110g
    Bのふくろ
    84g、87g、87g、88g、100g、100g、101g、102g、102g、103g

    2つのふくろのミカンは同じ値段です。あなたはどちらのふくろのミカンを買いますか。理由も答えなさい。


    ・・・鮮度や皮のつやはどうなんですか?
    産地は同じなんですか?
    私は、皮がむきやすそうなミカンが好きなので、実物を見て買いたいです。
    いや、ミカンはあまり好きじゃないから、どちらも買わない・・・。
    そもそも、こんなどうでもいいことで悩む時間が無駄だ。どうせ大差ないから、どっちだっていいよ。

    このように活発な意見が出る教室は、ある意味健全な教室です。
    ただ、そうした意見がいつまでも強い主張を繰り返し、その先に進まない場合は、授業は失敗です。
    こうした意見が出ても、では、鮮度や産地は同じとしよう、今回は真剣に考えて、どちらかを選ぶとしようという前提を周知徹底できるのがアクティブラーニングの基本。
    先生、ご苦労様です。

    学習の目的から外れた意見を除外することができたとして、しかし、アクティブラーニングで苦しいのは、生徒からその先の意見が全く出ないことです。
    あるいは、1つの正論が席巻し、それ以外の意見は出ないこと。

    小6「資料のまとめ方」の冒頭でこのアクティブラーニングを行った場合、生徒から出てくる答は、ただ1つに集まって終わる可能性があります。
    すなわち、ミカンの重さの合計で比べる。
    あるいは、平均値を求める。
    今回、ミカンはどちらも10個なので、合計でも平均でも同じことです。
    秀才たちは異口同音にそれを主張するでしょうし、それは、1つの正しい答です。
    正しい1つの意見が場を席巻し、はあそうですかと大多数は黙っている授業・・・。
    アクティブラーニングの1つの末路です。


    Aのふくろの合計は、956g。平均値95.6g。
    Bのふくろの合計は、954g。平均値95.4g。
    だから、合計や平均値が重いAのふくろのほうを買う。

    しかし、それは正解の1つに過ぎないのです。
    小6の学習目標は、実は平均値の活用ではありません。
    平均は、小5で既に学習済みです。

    では、小6の学習では何を目指すのか?
    それ以外の見方で、AのふくろとBのふくろを比べることが目標です。
    この単元は「資料の散らばり」に注目することが学習の目標なのです。
    アクティブラーニングは、生徒たちに話し合いをさせれば良いというものではなく、学習目標に沿った深い学びが得られるように、議論を誘導する必要があります。
    目標があるのです。
    「だったら、それをさっさと説明してくれ。覚えるから」
    という子に、それじゃ深い学びじゃないでしょう?というのが、アクティブラーニングなのです。
    簡単なことじゃないです。


    もう一度、AとBと2つのふくろのミカンの重さを見比べてみてください。
    実際に買うとしたら?

    私なら、Bを買います。
    なぜか?
    100g以上の大きいミカンが6個も入っていて、おいしそうだからです。

    ・・・え?
    そんな漠然とした主観的な答が、算数・数学で通用するの?
    そういうことを答えて良かったの?
    そんなのは、一番最初に除外された、つやはどうなのかとか産地はどこなのかと同じ種類のことじゃないの?

    違うのです。
    データの見方として、それは「あり」なのです。

    「平均値」は、データを分析するための1つの重要な観点です。
    しかし、平均値がそのデータの全てを説明するわけではありません。


    2つのふくろのみかんの重さを再度見てみましょう。

    Aのふくろ
    80g、85g、94g、95g、96g、96g、98g、99g、103g、110g
    Bのふくろ
    84g、87g、87g、88g、100g、100g、101g、102g、102g、103g

    平均値では、Aのふくろのほうが確かに重いです。
    しかし、10個を重い順、あるいは軽い順に並べた真ん中の値、すなわち「中央値(メディアン)」で見た場合。
    Aは96g。
    Bは100g。
    Bのふくろのほうが、中央値は大きいのです。

    なぜ、平均値と中央値にそのような差が生じるのか?
    それは、資料の散らばり具合によるものです。
    Aは、まず、最小値も最大値も大きい。
    最大値と最小値の差を「範囲(レンジ)」と言いますが、110-80=30(g) が、Aの範囲。
    103-84=19(g) が、Bの範囲です。

    ここで、散らばり具合をわかりやすくするために、度数分布表を作ってみます。

    Aのふくろは、
    階級(g)         度数
    80以上85未満    1
    85   90       1
    90   95       2
    95  100       4
    100 105       1
    105 110       1

    Bのふくろは、
    階級(g)         度数
    80以上85未満    1
    85   90       3
    90   95       0
    95  100       0
    100 105       6
    105 110       0

    ここから柱状グラフを描けば、さらに一目瞭然でしょう。
    Aは広い範囲で、きれいな山を描いて資料が分散されています。
    一方Bは、範囲が狭い上に、その中でも大きいものと小さいものに大きく割れているのが見てとれます。


    ここで、中学で学習する内容をちょっと補足します。
    資料の性質を示す値を「代表値」と呼びます。
    「平均値」も「中央値」も代表値です。
    さらに「最頻値(モード)」と呼ばれるものがあります。
    その資料の中で、最も多く出てくる値です。
    度数分布表にした場合には、その階級の真ん中の値「階級値」で考えます。
    Aのふくろの最頻値は、97.5g。
    Bのふくろの最頻値は、102.5g。
    Bのほうが大きいです。

    小学校の算数や中学の数学はここまでですが、高校数学になると、ここからさらに四分位数を求め、箱ひげ図を描きます。
    四分位数というのは、データを小さい順に並べたときに、4等分する位置にあるデータをQ1(第1四分位数)、Q2(第2四分位数=中央値)、Q3(第3四分位数)としていくものです。
    柱状グラフでも散らばり具合は一目瞭然ですが、柱状グラフは場所を取ります。
    もっと多数のデータを比較する場合には、スペースの問題で、柱状グラフを描けないこともあります。
    そのために、四分位数と箱ひげ図があります。
    それを見るだけで、データのおおよその傾向を読み取ることができるのです。

    Aのふくろは、
    Q1=94g、Q2=96g、Q3=99g
    Bのふくろは、
    Q1=87g、Q2=100g、Q3=102g

    ここで気づくのです。
    最小値と最大値の差、すなわち範囲だけを見たときは、Aのほうが範囲が広いデータです。
    しかし、Q3-Q1の値、すなわち「四分位範囲」を見てみると、
    Aのふくろは、99-94=5。
    Bのふくろは、102-87=15。
    Bのふくろのほうが、別の意味で散らばっているデータだということが読み取れます。
    さらにAの平均値95.6gと、Bの平均値95.4gを考慮に入れた場合、Aのふくろは平均値と中央値に大きな差はなく、バランスのとれた散らばりである一方、Bのふくろは、平均と中央値との差が大きく、バランスを欠いた散らばりであることが見てとれます。

    それらの値を箱と線分で表したのが、箱ひげ図です。
    箱ひげ図の形状から、柱状グラフの形状を推理することができます。
    狭いスペースで多くのデータの散らばりを比較できます。
    箱ひげ図についての詳細は、過去ページをご参照ください。
    https://seghi.tamaliver.jp/e449491.html


    繰り返しになりますが、データの特徴を説明する数値を「代表値」といいます。
    ただ、「代表値」という用語は中学の数学で学ぶもので、小学生にその用語で説明することはありません。
    こんな用語を教えると、それを暗記することが大事なんだと勘違いして学習がブレる子が現れますから、用語は教えないほうが良さそうです。

    平均値の他に、中央値(メジアン)、最頻値(モード)。
    そうした代表値からデータをどう読み取るか。
    小6「資料のまとめ方」という単元の学習目標は、そうした用語は教えないけれど、データの散らばりとその整理の仕方、そしてそこから読み取れる特徴を考えることなのです。

    小6では、まずは数直線の上に、全てのデータを点として打ち込み、ちらばり具合を見ます。
    次に度数分布表を作ります。
    上にも描いた、〇〇g以上〇〇g未満が何個というものをまとめた階級別の表のことです。
    なお、小6では、「度数分布表」という用語は教えません。
    「階級」「階級値」といった用語も教えません。
    資料を整理した「表」と呼ぶだけです。
    相手は小学生。
    95g以上100g未満という階級に、100gは入るのか入らないのかの判断も誤るレベルです。
    わかっているつもりでも、ついうっかり。
    用語を覚えている余裕はないのです。
    難しい用語を教えると、それを覚えることに必死になって、学習のピントがずれてしまいますから。
    用語を教えず、度数分布表を作ることだけに専念してもらっても、ミスは起こります。
    表の個数の合計と本当の合計とが一致しないことがしばしば起こるのが小学生です。

    どのデータを入れ忘れたの?
    ちゃんと指差しながら順番に「正」の字を書いていった?
    え?階級ごとに個数をそれぞれ数えた?
    それは不正確になりがちだよー。
    え?それくらい、できる?
    そんな意地を張って、データの整理が不正確になるようなこと、大人はしないですよ。
    子どもっぽいなあ・・・。
    まあ、本当に子どもだからしょうがないけど。
    ・・・という学習レベルなのです。
    個々のデータの取り扱いの基本も、ここで学びます。

    さらに、小6では、柱状グラフを作ります。
    「柱状グラフ(ヒストグラム)」という用語だけは、教えます。

    さらに、中央値や最頻値も、概念として学びます。
    ただし、そうした用語は使いません。
    柱状グラフから、
    「もっとも個数が多いのは、何g以上何g未満の範囲ですか?」
    「重さの小さいみかんから順番に並べたときに、ちょうど真ん中の重さのみかんは何g以上何g未満の範囲に入りますか」
    といった問題を解くだけです。

    ・・・問われたことには答えられるけれど、一体何を学んでいるのか、目的がよくわからない・・・。
    あまりにも遠回りにものごとを問いかけるので、データの読み解き方を学んでいると気づかない場合もあるかもしれません。
    だから、学習の総まとめとして、冒頭の問題をアクティブラーニングするのは「あり」ではないかと思います。

    AのふくろとBのふくろと、どちらのふくろを買うか?
    大きいミカンが沢山入っているBのふくろが良いという「最頻値」を重視した意見。
    でも、最大のミカンはAのふくろに入っているから、Aのふくろのほうがいいんじゃないかという「最大値」を重視した意見。
    真ん中の値はBのほうが大きいからBにするという「中央値」を重視した意見。
    Bのふくろのほうが、一番大きいミカンと一番小さいミカンとの差が小さいから、家族で平等に食べらるんじゃないかという「範囲」を重視した意見。
    やっぱり平均が大きいほうがお得だからAにするという意見。

    根拠さえ明確で論理的であるなら、どの答も正解なのです。
    多様な解答、学んだことを活かした解答が多くの生徒から出たなら、学習は成功。
    これが、アクティブラーニング。


    こういう授業を想像し、面白そうだなあ、自分もこういう授業なら楽しく参加できたのに、と思う方もいらっしゃると思います。
    確かに、楽しい面もあります。
    字面だけの暗記事項ではなく、生きた知識が身につき、深い理解が得られます。
    でも、この授業に毎回積極的に参加していくのは、大変です。
    生徒にも先生にも強いストレスがかかる授業です。

    特に、冒頭のような予習的なアクティブラーニングを行う場合。
    これから学ぶことを生徒から引き出そうとするアクティブラーニングは、先生にとっても生徒にとっても難行苦行です。

    小5で「平均」について学習したのです。
    だから、そのことを思い出して、平均によって2つのデータを比較する。
    それが、ただ1つの正解。
    そう思っていると、それではない他の考え方はないかと要求される。
    一瞬、頭が真っ白になる子もいるでしょう。
    それまでの学習をきちんと身につけていればいるほど、それを否定されるのは、つらいでしょう。

    先生は言います。
    小5で学習した「平均」にこだわらず、もっと自由に考えてみなさい。

    ・・・はあ?
    習ったことに基づいて、正しい意見を言って、何が悪いの?
    自由って何?

    真面目に努力しているが頭の硬い子にとって、こんなストレスフルな問いかけはないでしょう。
    頭の硬い子は絶句してしまうかもしれません。
    その一方で、これから学習することになる「範囲」「中央値」「最頻値」という観点の意見を言えた子は称賛されるでしょう。
    これから学習する内容を使って意見を言える子は賞賛される・・・。
    自力でそれを発想したのなら凄いですが、本当に自力で発想したとは限りません。
    予習している子もいると思います。
    予習したことを、まるで自分の意見みたいに発表すると、うーんアクティブですね、と褒められる・・・。
    予習していながらしていないふりで、先生の意図に沿った意見を言った子が褒められる茶番劇・・・。
    そういうものになる可能性もあるのが、アクティブラーニングです。

    ただ、度数分布表やヒストグラムについて予習していても、あるいは皆が学習した上で総まとめとして上のアクティブラーニングを行うとしても、先生の望むような多様な意見を出せる子は少ないかもしれません。
    学習した通りの練習問題には答えられても、こうしたアクティブラーニングにその知識を活用するのは、本人の能力が高くないとなかなか難しいのです。
    ヒストグラムに関する練習問題で、繰り返し「真ん中の値はどれですか?」「最も多い値はどれですか?」と尋ねられていても、それが重要なことだと気づかない。
    データを読み取るときに、それを活用するのだと気づかない。
    子どもの頭は、ものごとを統合するのがまだ難しく、「それはそれ、これはこれ」になりがちです。
    勉強したことと、それを実際に活用することとが、なかなか結びつかないのです。
    勉強したことは勉強したこととして、問われたことには「勘」で答える。
    小学生には、そういう子が案外多いように感じます。

    カラーテストも「勘」で解き、それでそこそこの点数を取ってしまいます。
    それは、記号問題だから勘が通用し、記述式なら勘は通用しないというレベルのことではありません。
    小学生の場合、文章題の立式も勘で行い、それでそこそこ正解してしまう「成功体験」を低学年で積んでしまう子が多いのです。
    そのまま、高学年になり、勘では通用しない単元になっても、勘で解くことをやめられません。
    文章題は正解できなくなっても、「この単元はたまたま苦手なだけ」ということにしてしまいがちです。
    「単位量当たり」「速さ」「割合」といった単元がたまたま苦手なだけということに本人はしていますし、保護者もそのように位置づけてしまうかもしれません。
    しかし、それは、もしかしたら、そもそも物を考える習慣がない、考えて問題を解く習慣がないということを示している可能性があります。

    だからこそ、アクティブラーニングの必要性が叫ばれているのですが、これもまた難しい問題をはらんでいます。
    文章題すら「勘」で解く子たちは、アクティブラーニングも「勘」でこなそうとするでしょう。
    考えろと言われても、それが何をどうすることなのかわからない子が、教室に多い。
    そうした中で行うアクティブラーニング。
    深い学びを得られるのは、考えることを知っている子たちだけ。
    考えるということを知らない子たちは、置いてきぼりです。
    結果、何を学んでいるのかすら把握できない子も増えていきます。

    国立大学の附属中学などでは、もう何十年も前から、こうしたアクティブラーニングの授業を行っています。
    そこで勉強についていけなくなった子が、
    「授業で何をやっているのかわからない。勉強のできる人何人かと先生が話し合っているだけ」
    と評するのは、そうした理由によるところが大きいと思います。

    繰り返しますが、アクティブラーニングは、上手くいけば、その効果は絶大なのです。
    ものを考えるということがどんなに楽しいことか。
    教科書に載っている無味乾燥に見えることが、どれほど生きた知識であるか。
    学校では教えてもらえないことの価値を声高に叫ぶ意味はわかります。
    でも、その前に、学校で教えてもらえることの価値をまず知ってほしい。

    「中央値」「最頻値」「最大値」「範囲」といった、学習内容としては無味乾燥なものが、実はみかんのふくろ1つ買うのでも使えるものだということ。
    算数・数学は実生活と関係のあるものなのだということ。
    私たちは、どのようにデータを見たらよいか、その観点を学んでいるのだということ。
    そういうことへの理解を深めるためのアクティブラーニング。
    学んだことが、実感と結びつく。
    そうした高い理想を、できるだけ多数の生徒が享受できることを願ってやみません。

    アクティブラーニングの授業が、来年度の小学校の新しい学習指導要領から、ついに本格始動します。

      


  • Posted by セギ at 12:16Comments(0)算数・数学

    2019年12月11日

    勉強が苦手な子の1つの傾向。



    高校生と「分詞」の学習をしていたときのことです。
    まずは、中学の復習でもある、分詞の限定用法の学習をしました。
    名詞を修飾する用法です。
    現在分詞と過去分詞のどちらを用いるか、その使い分けが重要です。

    そこから先が高校の「分詞」の学習。
    分詞の叙述用法に進みました。
    SVCやSVOCのCに分詞を用いる用法です。
    ここでも現在分詞と過去分詞の使い分けが課題です。
    SVCの場合は、Sが動作主ならばCは現在分詞。
    Sが動作される側ならばCは過去分詞。
    SVOCの場合は、Oが動作主ならばCは現在分詞。
    Oが動作される側ならばCは過去分詞。
    「動作主」という言葉は厳密には古文で使用する用語ですが、便利なので私は英語の授業で使っています。
    文法が得意な子にとっては、明瞭でわかりやすいルールです。
    英語はこういう大きいルールが広く適用されるので学びやすいのです。

    しかし、その子は文法が苦手でした。
    説明を聞くだけで理解するのは難しいので、何度もルールを復唱してもらい、その後、練習問題を解きました。

    次の( )内の語を適切な形に直しなさい。
    He kept (knock) on the door until I opened it.

    その子の答えは knocked でした。
    「・・・・え?何で?」
    文法を正確に復唱できるまで何度も練習したのに、何で?
    「door はノックされるから・・・・」
    「・・・・え?」
    限定用法の話はさっき終わり、叙述用法だよと言ったのに、何でその話に戻るんだろう?
    door は、直前・直後の名詞ではないから、分詞に修飾される名詞ではありません。
    「・・・・knock の直前の単語は kept だし、knock の直後の単語は on だよ。door は随分離れている。関係ないよ」
    「あ・・・」

    文法が苦手な子に英文法の授業をしていると、上のようなことが起こります。
    教えたことが上手く伝わっていきません。
    上の例は、相手が何をどう誤解したのか明確だったので改善の可能性がありましたが、普段はもっと不可解なミスも多いです。
    ミスの原因を生徒が言語化できない場合が多く、なぜそこを間違えるのか、教える側として理解しにくい場合がしばしばあります。
    こちらから一方的に解説するだけの授業では、途中で気が逸れて、聞いている顔で実は聞いていないということはあると思います。
    まだらにしか聞いていないので、関係のないことが本人の頭の中でつながってしまうのです。
    だから、今学んでいることは何であるか、本人に復唱してもらい、確認をしています。
    その上で、やはり、間違える・・・。
    どうしてそんなことが起こるのだろう・・・?


    もう一度その子の学校の教科書に戻り、文法を確認してから教科書の練習問題を解くと、それは全部正解できました。
    限定用法だけでなく、叙述用法も全て正解です。
    「教科書の問題は正解できるね」
    「これは、答を覚えているから・・・・」
    「え・・・・?答を覚えている?」
    「復習したっていう意味ですよ」
    「・・・・私は何回解いても、問題の答なんか覚えないけど?」
    「・・・・・?」
    「何でそんな意味のないことを覚えるの?」
    文法は覚えないのに、何で答を覚えるの?(''Д'')

    愕然として、私は悟りました。
    文法が苦手な子は、そういう勉強をしてしまうのか・・・・。

    なぜ英語が得意にならないのか、その一端が垣間見えた気がしたのです。
    いや、英語に限らず、なぜ勉強が得意にならないか。
    努力をしているのは伝わってくるのに、なぜ結果が出ないのか。
    その一端が見えた気がしました。
    理屈をどれだけ教わっても、それを復唱しても、問題を解く際にその理屈を活用できないのです。
    それはそれ、これはこれ。
    問題を解くときは、本人の中で別の解き方で解いてしまいます。
    多くは勘で解いたり、昔学習した別の文法を使ってしまったり。
    だから、最初に解くときは大半の問題を間違えてしまいます。
    それから正しい答を覚えます。
    目の前の1問1問の答を覚えること。
    それが、勉強。
    つまり、根幹のルールなどの抽象化したものを理解し活用することが苦手で、全て、個々の具体にしか対応できないのではないかと感じます。


    それは、小学生に受験算数を教えていても感じることです。
    集団指導塾に通い、受験算数だけうちの教室で補習をしている子には、その集団指導塾のテキストで復習することから学習を始めます。
    復習する様子を見ていると、受験算数が苦手な子も、テキストの基本問題は自力で解くことができるのです。
    しかし、テキストの基本問題とほとんど同じ構造の月例テストの問題は正解できません。
    ほとんど同じ構造で、難度も同じで、同じ考え方で解く問題なのに、なぜ解けないのだろう?
    月例テストなんて、8割は基本問題なのに。

    理由は明らかです。
    個々の問題の式と答を暗記しているだけで、理解していないのです。
    「式と答を覚えること」=「勉強」になっていて、それ以外の勉強ができないのです。


    受験算数の場合、自力で解き方を発見できるセンスのある子や、思考力のある子もいます。
    発達段階の個人差の大きい時期ですから。
    算数の問題を考えることが好きな子、自力で図を描いたり整理したりすることができる子たちです。
    そうした子たちには、補習というよりもっと自由に力を伸ばす授業をします。
    「〇〇算の解き方」を1つ1つ暗記する必要は、本当はないのです。
    線分図の描き方と面積図の描き方、そしてその活用の仕方を学べば、受験算数の解き方はそんなに幾通りもありません。
    相当算も食塩水も売買損益も差集め算もニュートン算も、根底にあるものは、全て同じです。
    思考力のある子は、そうした統合や抽象化が可能です。

    しかし、小学生の段階では、解き方の抽象化はできない子も多いです。
    その場合、「〇〇算の解き方」を1つ1つ覚えていくことから始めます。
    それでも、「解き方・考え方」を覚えるのなら、そのことで思考力を養っていくことができます。
    最終的には統合も可能です。
    しかし、子どもの中には、
    テキストの問題1の式は、4×5÷2=10 
    問題2の式は、5×10÷2=25 
    と、式と答を覚えているだけの子もいます。

    ・・・何の意味があるの?(''_'')

    そう思うのですが、本人にしてみると、覚えてしまうのだから仕方ない、ということのようです。
    小学生の柔らかい脳は、見たものをすぐに覚えてしまうことができますから。
    解き方を理解することと、問題の式と答を覚えてしまうこととの違いがわからないのかもしれません。

    では、式の暗記などできないくらいに基本問題を大量に解けば、その中から本人がエッセンスを抽出し、解き方を脳内に取り込むことができるのではないか?
    そうした発想から、宿題を大量に出す塾もあるのですが、算数が苦手な子たちは、問題を解くのが遅いです。
    問題文を読むのも、立式するのも、計算するのも時間がかかります。
    本当はもっと速く解けるけれど、沢山問題を解くと疲れるので、自らスピードを調節し、だらだら解くことが習慣化している子もいるかもしれません。
    スピードを上げたら、沢山問題を解かねばならない。
    沢山勉強させられて、損だ。
    そのような損得計算をしている子もいるように思います。
    そうして、メインテキストの基本問題だけをねっとりと時間をかけて解き、式と答を覚えてしまいます。


    私の教室で、英語が得意な子たちは、90分の授業時間の中で、問題のぎっしり詰まった40ページほどの文法テキストを1冊仕上げて帰っていきます。
    書きません。
    問題を見て、即答しています。
    さすがに40ページを全て解くわけではなく、その子の理解度を見ながら、とびとびに解きます。
    それでも、20ページほどは演習するでしょう。
    四択問題も。
    空所補充問題も。
    乱文整序問題も。

    一方、英語が苦手な子たちの演習スピードは、そういうわけにはいきません。
    書かずに即答という授業形態がまず無理で、解いた問題の答が手元に残らないと復習できないから不安だと言いますので、書いて解かねばなりません。
    最初にいろいろ説明しなければなりませんし、間違えているとさらに説明する時間も長くなります。
    その上で演習スピード自体も遅いので、90分の中で結局1ページしか解けないこともあります。
    そしてその1ページの問題の答えを覚えることが、その子にとっての復習なのだとしたら・・・・。
    20ページと1ページ。
    教室で20ページ解く子が、問題の答えを覚えているかといったら、覚えているはずがありません。
    いちいち答えを覚えていられるような量ではありません。
    余程印象的な問題が含まれていたら別でしょうが、翌週同じ問題を解いても、同じだと気づかず解き終わるかもしれません。
    学習した文法にしたがってサクサク解いているだけだからです。
    何度解いても正解ですが、それは答を覚えているからではないのです。

    受験算数が得意な子たちは、個々の問題の解き方をカチッと暗記しているわけではないので、図の描き方に無駄な要素もあります。
    例えば、水そうに直方体の重りを沈めていく問題。
    水面には波が立っているはずだからと、さざ波を立てた水槽の断面図を描いたりします。
    水面は、水槽のふちよりも薄く描き、濃淡のある図を描くこともあります。
    そのせいで、せっかく描いた図が役に立たないこともあります。
    私がさざ波を濃い直線に描き直すこともときに必要です。
    しかし、「これは一種の面積図なんですよ」と言うだけで、その子の脳が動き出します。
    それ以上の解き方を手取り足取り教える必要がないのです。
    算数・数学の問題を解く上では必要のないこだわりは、いつか本人が捨てるでしょう。
    思考力は本物で、これは誰にも奪えないし、本人も捨てようがない。


    個々の問題の答だけを故意に覚えようとしているわけではない。
    復習すると自然に答を覚えてしまうだけだ。

    苦手な勉強をそれでも一所懸命やっている子たちは、そのように言うかもしれません。
    それでも、「その勉強のやり方は変えなさい」と言わざるをえません。
    その勉強では、類題で正答できないのですから。
    個々の問題の答は覚えても、もっと重要なことを覚えていないのです。
    その問題を解く中で抽出し理解するべきことを把握できていません。
    答を覚えてしまうくらいに数少ない問題をねっとり見つめ続けることが本当に理解すべきことの把握につながっていないのです。

    有効なやり方は正反対のものでしょう。
    教科書の問題の答なんかいちいち覚えていないけれど、文法は覚えた。
    式も答も覚えていないけれど、解き方は理解した。
    だから、その問題は何度解いても正答できる。
    類題も正答できる。
    テストの問題も正答できる。
    入試問題も正答できる。
    勉強はそういうふうにやっていってほしいです。

    生徒たちに最も教えたいのは、そういう勉強のやり方です。

      


  • Posted by セギ at 12:39Comments(0)算数・数学英語

    2019年12月08日

    数A「不定方程式」のさまざまな解き方。アクティブラーニング的に。


    今回は、少し戻って、数Aの「不定方程式」について考えてみましょう。
    こんな問題です。

    問題 130x+31y=1 の整数解を求めよ。

    不定方程式は、具体的なxとyの値を1組見つければ、そこから解いていくことができます。
    基本の解き方は、このブログの過去ページ、「数A不定方程式」を参照してください。
    https://seghi.tamaliver.jp/e461561.html

    以降は、不定方程式の基本の解き方は理解していることを前提の説明となります。
    基本の考え方を丁寧に説明するわけではありませんので、根本が曖昧な場合は、上の該当ページから順次、不定方程式のページをご覧ください。

    さて、この方程式が成立するxとyの値を1組見つけましょう。
    簡単なものなら暗算で求めることができますが、上の方程式は係数が大きいので、暗算ではなかなか解にたどりつきません。
    こんなとき、どう求めたら良いでしょうか。

    ここで最もシンプルな解き方が、互除法を利用する解き方です。
    これは、全ての高校で学習する解き方です。

    130=31・4+6 より 6=130-31・4
    31=6・5+1   より 1=31-6・5

    これを利用して、上の方程式と同じ構造の式を1本作っていきます。
    1=31-6・5
    =31-(130-31・4)・5
    =31-130・5+31・20
    =130・(-5)+31・21

    130・(-5)+31・21=1 という式を得ることができました。

    与えられた方程式とこの式の辺々を引きます。

      130x    +31y =1
    -)130・(-5)+31・21=1
      130(x+5)+31(y-21)=0

    この先は、いつも通りの解き方です。
    130(x+5)=-31(y-21) 
    130と31は互いに素ですから、x+5は、31の倍数でなければ、この式は成立しません。
    x+5=31k(kは整数)
    よって、
    x=31k-5
    y=-130k+21 (kは整数)

    繰り返しますが、この答案を読んでいて、「え?なぜ?」と思う方は、基本の解き方が曖昧になっているかもしれません。
    該当ページに戻ってご確認ください。


    さて、解の値の1組を暗算で求められないときの解き方は、このように互助法を利用するのが一般的ですが、これしか求め方がないわけではありません。
    問題の解き方は1つではないのです。
    他の解き方を考えたり、他の人の解き方を見て、どうやって求めているのか論理の流れを理解したりするのも面白い勉強です。
    回り道な解き方には首を傾げたり。
    ハッとするようなスマートな解き方に感動し、自分もその解き方を以後取り入れたり。
    アクティブラーニングです。
    今回は、この問題の他の解き方の例をいくつか見ていきましょう。


    1つには、130という係数をもう少し小さくし、暗算しやすくする方法があります。
    もう一度、上の問題を確認しましょう。

    問題 130x+31y=1

    この130という係数が大き過ぎて、暗算に向きません。
    まずは、31に揃えることを考えてみます。
    130=31・4+6 ですから、
    (31・4+6)x+31y=1
    ここでいったん展開し、31でくくります。
    31・4x+6x+31y=1
    31(4x+y)+6x=1
    4x+y を1つの数とみなして、この方程式が成立する整数を考えます。
    31と6という係数ならば、その和が1になる数を見つけるのは比較的容易です。
    4x+y=1、x=-5 のとき、この方程式は成立します。
    そこで、x=-5を、4x+y=1に代入すると、
    x=-5、y=21
    これで、1組の整数解を見つけることができました。
    あとは普通の不定方程式の解き方と同じです。
      130x   +31y=1
    -)130・(-5)+31・21=1
      130(x+5)+31(y-21)=0
    130(x+5)=-31(y-21)
    130と31は互いに素だから、
    x=31k-5
    y=-130k+21 (kは整数)

    先程と同じ解になりました。


    最後に、飛び道具的に登場するのが、合同式による解法です。
    合同式は発展的内容で、高校によっては学習しないこともあります。
    中高一貫校でも、都立自校作成校でも、数Aを最初に学習する段階では、学習しない高校が増えてきました。
    しかし、理解できれば悪魔的に物事が簡単になるのが合同式です。
    合同式の考え方については、過去ページ
    https://seghi.tamaliver.jp/e460234.html
    を参考にしてください。

    基本の考え方は、ある自然数で割った余りが同じ数同士は合同である、ということ。
    これを利用して、上の問題を解きます。

    問題 130x+31y=1

    ここで、31y≡0 (mod31) です。

    31yは、31の倍数です。
    つまり、31yを31で割ったら、余りは0です。
    だから、他の、余りが0の数と合同です。
    それを上のように、31y≡0 (mod31) と書き表します。

    これを上の方程式に代入すると、
    130x≡1 (mod31) となります。

    「はあ?何?何?」となる人が多いかもしれません。
    31で割った余りに着目すると、左辺の余りは、31yの部分の余りは0なので、130xを31で割った余りだけを考えれば良いのです。
    一方右辺は、1なので、31で割った余りは1です。
    よって、
    130x≡1 (mod31) となります。

    ここで、130xをもう少し整理できないでしょうか?
    130xを31で割ってみましょう。
    130x=31・4x+6x です。
    31・4x は31の倍数で、この部分の余りは0ですから、余りとして着目されるのは6xの部分のみです。
    よって、
    130x≡6x (mod31) となります。
    右辺は変わらず1ですから、
    6x≡1 (mod31) です。

    ところで、合同式は、
    a≡b、のとき、a+c≡b+c、 a-c≡b-c、 ac≡bc (a、b、cは整数)
    という性質があることが証明されています。
    その証明は、式の変形と代入で証明するタイプのもので、実感を伴うものではありません。
    数学が嫌いな子は、その証明を見ても納得も感動もせず、嫌な顔をすることのほうが多いです。

    定理の証明がそういうものであるのは、高校数学では本当に多いです。
    小学校で学習する、三角形の面積の公式のように、証明がそのまま解き方の意味である、というものではありません。
    数学が好きな人は、証明の筋道を確認し、ああ、本当に証明されている、だから使っていいとなると、あっけらかんと使用します。
    しかし、数学が嫌いな人は、そういう証明の筋道を追うことが心の負担です。
    本当に証明されているのかどうか、読んでいてよくわからないのかもしれません。
    証明がよくわからないことに心の負担が増し、定理を丸暗記して使うことにも抵抗があり、その定理を上手く使用できないということがあるようです。

    解き方の丸暗記はやめよう、意味を理解しよう、と今まで頑張ってきたけれど、もう意味がわかりません。
    疲れました・・・。
    今までありがとうございました・・・。
    みたいな表情を浮かべる生徒に対し「待て、待て、待て。待ちなさい」と私は必死に声をかけることになります。
    大丈夫、ゆっくり見ていけばわかるから。
    必ずわかるから。
    わかって、納得できれば、そんな証明は忘れていいんだから。
    定理を証明しろという問題はテストには出ないから。
    こんな定理を自力で証明したのは数学者で、ある意味ちょっとどうかしている人たちだから、気にしなくていいのです。

    ここでは証明は省略します。
    興味のある方は、検索するか、高校数Aの教科書・参考書をご覧ください。

    戻りましょう。
    6x≡1
    これをxについて解きたいのですが、x≡1/6 というわけにはいきません。
    31で割った余りに着目しているのに、分数が出てきたらおかしなことになります。
    合同式の性質に、両辺を同じ数で割っても成立する、というものはないのです。
    そこで、31で割った余りが見やすいように、いったん5倍します。
    余りが見やすくなれば何でもいいのですが、今回は5倍が妥当でしょう。
    30x≡5
    30=31・1-1 ですから、30≡-1 です。
    よって、30x≡-x
    すなわち、-x≡5
    ここで、両辺に-1をかけて、
    x≡-5 (mod31)
    つまり、xは、31で割ると5不足する数なのです。
    よって、x=31k-5 (kは整数) と表すことができます。

    これを問題の不定方程式に代入します。
    130x+31y=1 に代入して、
    130(31k-5)+31y=1
    130・31k-130・5+31y=1
    yについて解きます。
    31y=-130・31k+650+1
    31y=-130・31k+651
    y=-130k+21

    よって、
    x=31k-5
    y=-130k+21 (kは整数)
      
    解説を加えながら解いていったので、かなり長くなりましたが、この合同式を利用した解き方は、答案としては一番短いのです。
    慣れれば、おそろしく簡単に解を求めることができるのが、合同式による解法です。
    発展的な内容になればなるほど、答案はシンプル。
    数学はかくも美しいのです。

      


  • Posted by セギ at 15:46Comments(0)算数・数学

    2019年12月01日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。解と係数の関係。


    今回は、「解と係数の関係」。
    これは、数Ⅰで学習済みの内容です。
    それに虚数解を加えたのが今回の学習内容です。

    解と係数の関係とは?
    2次方程式 ax2+bx+c=0 の2つの解をα、βとすると、
    α+β=-b/a 、αβ=c/a

    これが解と係数の関係です。
    説明しましょう。

    α、βを解に持つ2次方程式の1つは、
    (x-α)(x-β)=0 と表すことができます。
    これを展開すると、
    x2-αx-βx+αβ=0
    x2-(α+β)x+αβ=0 ・・・①
    となります。
    一方、ax2+bx+c=0 の両辺をaで割ると、
    x2+b/ax+c/a=0 ・・・②
    ①と②は同じ方程式ですから、係数を比較すると、
    α+β=-b/a 、αβ=c/a

    この説明では、α、βを解に持つ2次方程式の1つは、(x-α)(x-β)=0 と表すことができる。
    というところが少し難しいところかもしれません。

    (x-2)(x-3)=0
    という2次方程式を解けと言われたら、
    x=2、3
    という解になります。
    逆に、解がx=2、3 である2次方程式を復元するなら、
    (x-2)(x-3)=0は、その1つです。
    「1つ」というのは、x2の係数は1とは限りませんから、上の式の両辺を何倍かした方程式は全て、x=2、3 を解に持ちます。
    ですから、x=2、3 を解にもつ方程式は無数に存在するけれど、とにかく、(x-2)(x-3)=0 はその1つです。
    同じように、解がx=α、β である2次方程式の1つは、
    (x-α)(x-β)=0 です。
    ここがわかれば、その後は特に難しいことはないと思います。
    符号処理で少し混乱する人がいるかな?というくらいでしょう。


    (x-2)(x-3)=0
    のような、因数分解を用いた2次方程式の解法は、中3で学習する内容です。
    解くことはできても、なぜそれで解けるのか、本質を理解していない人は案外多いところです。
    本質を理解していない人は、例えば、
    x(x-2)=0
    のように少し目先が変わると、正解できません。
    x=0 という解を発見できず、x=2 のみ答えて不正解となってしまうことが多いのです。

    (x-2)(x-3)=0 
    これは、(x-2)と(x-3)との積が0だということです。
    かけ算の答えが0になるとき、少なくとも一方は0です。
    だから、x-2=0、または x-3=0
    よって、x=2、または x=3
    これが、因数分解による解き方の意味です。
    だから、
    x(x-2)=0 のときは、
    x=0 または、x-2=0 となり、
    x=0、または x=2 となります。


    2次方程式の解と係数に関する問題を実際に解いてみましょう。

    問題 2数 2+√5i 、2-√5i を解とするxの2次方程式を求めよ。

    もう一度確認しますが、α、βを解とするxの2次方程式の1つは、x2-(α+β)x+αβ=0 です。
    ですから、α+βとαβ、すなわち、2つの解の和と積を求めれば、2次方程式は楽に復元できます。
    上の問題で2数の和は、
    (2+√5i)+(2-√5i)=4
    2数の積は、(2+√5i)(2-√5i)=4-5i2=4-5・(-1)=4+5=9
    よって、求める2次方程式は、
    x2-4x+9=0です。


    問題 連立方程式 x+y=-4、xy=6 を解け。

    急に応用になって、え?どういうこと?と思いますね。
    この学習の流れでないならば、普通に代入法で解くことを思いつくでしょう。
    まずはそれでやってみましょう。

    x+y=-4 より y=-x-4
    これをxy=6 に代入して、
    x(-x-4)=6
    -x2-4x-6=0
    x2+4x+6=0
    解の公式を用いて、
    ;x=-2±√4-6
     =-2±√-2
     =-2±√2 i
    x=-2+√2 i をx+y=-4 に代入して、
    -2+√2 i +y=-4
    y=-4+2-√2 i
     =-2-√2 i
    また、x=-2-√2 i をx+y=-4 に代入して、
    -2-√2 i+y=-4
    y=-4+2+√2 i
     =-2+√2 i
    よって、(x、y)=(-2+√2i、-2-√2i)、(-2-√2i、-2+√2i)

    これで構わないわけですが、与えられたのがxとyの和と積であることを利用する解き方もあります。
    αとβが解である2次方程式の1つは、
    x2-(α+β)+αβ=0 でした。
    和と積がわかっていれば、その2数を解とする2次方程式はすぐに作れるということです。
    では、x と y の和と積がわかっている今回、その2数を解とする2次方程式はすぐに作れるんじゃないでしょうか。
    x と y が今回はαとβにあたるのです。
    だから、xやyとは違う文字の2次方程式にしましょう。
    t を用いてみます。
    t2-(x+y)t+xy=0 
    という式の解は、t=x、y 
    となる仕組みですね。
    よって、
    +4t+6=0
    t=-2±√4-6
     =-2±√2 i
    xとyはこの方程式の2つの解で、どちらがどちらであると特定できるものではありません。
    したがって、
    (x、y)=(-2+√2 i、-2-√2 i)、(-2-√2i、-2+√2i)

    どちらの解き方でも良いのですが、こちらのほうが早く解けます。
    いすれ高校でもアクティブラーニングが本格的に導入されます。
    教科書に載っている解き方を丸暗記して解くのではなく、何通りもの解き方を理解し、最善の解き方を判断していくことが重要です。



      


  • Posted by セギ at 17:44Comments(0)算数・数学

    2019年11月24日

    数学の語句補充問題は難しい。


    数学の語句補充問題というのは、現在、中学の数学のテストで必ず出される問題となっています。
    どの問題がどの領域の問題であるかを問題に明示しなければならなくなり、「知識・理解」を問う問題として、数学の語句補充問題が作られるようになりました。
    これを苦手とする子は多いです。

    例えば、こんな問題です。

    問題 以下の空所にあてはまる語句を答えよ。
    y=ax+b の形で表すことができる関数を(1)という。(1) のグラフは(2)となる。また、aをグラフの(3)、bを(4)と呼ぶ。
    yの増加量÷xの増加量で表されるものを(5)といい、(1)においては、aの値が(5)を表す。

    正解は、
    (1) 1次関数 (2) 直線 (3) 傾き (4) 切片 (5) 変化の割合
    となります。

    語句の定義に関するこうした問題は、類題をいくつか解けば、何とか穴埋めできると思います。
    しかし、何の準備もなくいきなりこの問題を解こうとすると、かなり難しいことは、実際に解いてみると実感できるのではないでしょうか。

    上の問題では、(2)直線 という答えが、一般の感覚ではもっとも難しいと思います。
    そんなことを問われているとは、正解を見るまで想像もしていなかった・・・。
    正解を見ると、まあそうだなと納得するが、自力で穴埋めできる気がしない・・・。
    数学の問題を解くのが好きな人でも、そう感じるかもしれません。
    また、中学生では、「傾き」と「変化の割合」をどう使いわけるのかわからず、答えが逆になってしまう子が多いです。
    こうした問題の対策としては、数学の教科書や参考書の、語句の定義に関する文を繰り返し読んでおくこと。
    このような問題をテスト前に解いて慣れておくこと。
    それである程度は対応できます。

    上のような語句の定義に関する問題はまだ答えを絞り込みやすいのです。
    この種の問題としては良問と言えます。
    数学的な考え方の語句補充になると、さらに難度が上がります。
    例えば、こんな問題。

    問題 以下の空所に当てはまる語句を答えよ。
    2元1次方程式の(1)は直線のグラフになる。
    つまり、2元1次方程式のグラフの交点とは(2)である。
    (3)の解は2つの2元1次方程式の(2)であるから、交点の座標は(3)を解くことで求めることができる。

    言いたいことはわかるのですが、当てはまる語句は色々と候補が浮かび、1つに定まらない・・・。
    そこを空所にした出題者の意図がよくわからない。
    そういうことが起こりがちです。

    これの模範解答は、
    (1)解を座標とする点の集まり (2)共通の解 (3)連立方程式

    ・・・いや、わからないわ、これは・・・。
    正解を見れば、まあそれはそうだと思うものの、自力で答えを書き込むのは難しいです。
    空所補充問題の正答が日本語として3文節以上というのは、悪問の始まりです。


    2次方程式の因数分解による解法の考え方を説明する空所補充問題を見たこともあります。

    問題 次の☐に当てはまる、語句または文字・数字を答えよ。
    (x-a)(x-b)=0 であるとき、
    ☐-a=0 または☐-b=0 であるから、x=a または x=b である。

    この2か所の空所を、
    a-a=0 またはb-b=0 であるから、x=a または x=b である。
    と埋めている子がいました。
    答案を見て、うーん、これは本当は意味がわかっているのかもしれない。
    でも、もしかしたら何もわかっていないのかもしれない。
    答案の見た目では、それがわからない・・・。
    どう評していいものかと困惑しました。
    ちなみに、正解は2か所とも「x」が入ります。
    正直、問題にも悪いところがある、と感じました。
    これが入試問題だったら異論が噴出し、「別解あり」、あるいは「問題無効」の措置が取られたかもしれません。

    数学の先生が悪いわけではありません。
    こういう「知識・理解」に関する空所補充問題を定期テストに出題するよう指導しているのは文科省です。
    ただ、どういう形で出題するかは個々の先生の裁量に任されているはずなので、こういうところで変に独自性を示すのはやめて、語句の定義に関する、ありがちで穏当な問題を出題してくれることを願うばかりです。
    基本的な知識の定着を確認するのが目的の出題だと思いますので、奇をてらう必要はないのです。
    三角形の合同条件を書かせたり。
    数学用語や定理の名称を空所補充させたり。
    そういうことは大賛成です。
    あるいは、数学的な考え方に関するこうした語句補充問題は、せめて選択肢を示してくれないかなと思います。


    とはいえ、数学用語の理解・数学的な考え方の理解をテストで試すのは、こういう形が便利なのかもしれません。
    解き方だけ丸暗記して、数学的な意味はまったく理解していない子に、その勉強ではダメだということを自覚してもらうには良いきっかけではあります。

    高校の定期テストでは、このような語句補充問題は出題されません。
    問題文をどう読み取るか、記述答案をどう書くかで、数学的な知識・理解は十分に測ることができるからです。
    例えば、こんな問題。

    問題 曲線 y=f(x) の接線の傾きはx2に比例する。また、この曲線は、点(3,2)、(6,1)を通る。この曲線を表す式を求めよ。

    この問題の意味を読み取れるということは、微分と接線の傾き、あるいは微分と積分との関係が理解できているということです。
    あるとき、この問題の意味がわからない、と質問を受けました。
    「・・・x2 に比例するって何ですか?」
    「中学3年のときにやったでしょう。2乗に比例する関数。y=ax2。あれのことです」
    「直線ということですか?」
    「いや、直線になるのは1次関数です。2乗に比例する関数は放物線です」
    「傾きが放物線?傾きは直線じゃないんですか?」
    「うん。接線は直線ですが、接線の傾きの変化は放物線になることもあります。この問題では2乗に比例するんですね」
    「2乗に比例するなんてことが、ありますか?」
    「・・・ありますよ」

    例として、y=2x2 という関数で、
    x   1 2  3  4 ・・・
    x2  1 4  9 16 ・・・
    y   2 8 18 32 ・・・
    このような表をざっと書き、x2が2倍、3倍、・・・になると、yも2倍、3倍、・・・になることを確認すると、その子に驚愕の表情が浮かびました。
    「本当だ。2乗に比例している」
    「はい。そうです。これが2乗に比例する関数です」

    微分・積分は問題なくマスターしている秀才が、なぜ「2乗に比例する関数」を知らないのだろう・・・。
    内心驚愕していたのは私のほうですが、そんなこともたまには起こります。
    用語の理解というのは、繰り返し確認していかないと、思わぬ盲点が存在するのかもしれません。
    その日の授業の帰りぎわ、
    「今日の授業は、2乗に比例する関数のところが一番わかりやすかったです」
    と感想を述べて去っていきました。

      


  • Posted by セギ at 15:36Comments(1)算数・数学

    2019年11月22日

    高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。その2。



    「複素数」の学習、今回は2回目です。
    今回は、2次方程式の解に関する問題から。

    問題 次の2次方程式を解け。
    6x2-2x+1=0

    因数分解できないので、解の公式を使って解きます。
    xの係数が偶数なので、2本目の解の公式が有効ですね。
    x=1±√1-6
     =1±√-5
     =1±√5 i

    虚数単位を使うと、このように、全ての2次方程式に解が存在します。


    問題 次の方程式の実数解を求めよ。
    (2+i)x2+(3+i)x-2(1+i)=0

    これは、係数が虚数です。
    このまま強引に解の公式を利用する方法もあるのですが、ここはシンプルに、実部と虚部に分けて考えると楽に解けます。

    (2+i)x2+(3+i)x-2(1+i)=0
    2x2+ix2+3x+ix-2-2i=0
    (2x2+3x-2)+(x2+x-2)i=0

    虚数a+bi=0 のとき、a=0、かつb=0 ですから、
    2x2+3x-2=0 かつ x2+x-2=0 
    となります。
    ですから、これを連立方程式としてその解を求めれば良いですね。
    2x2+3x-2=0
    (x+2)(2x-1)=0
    x=-2、1/2・・・①
    x2+x-2=0
    (x+2)(x-1)=0
    x=-2、1・・・②
    ①かつ②が解となるので、
    x=-2

    xを基準にまとめるのか、iを基準にまとめるのか、途中でよくわからなくなる人がいます。
    今は実部と虚部に分けて整理しようしているので、iの有無で分けていくのです。

    ここらへんになると、やっていること自体は特に難しくない計算問題でも、気持ちで負けてしまう高校生が現れます。
    精神的に支えていくことも私の仕事になります。
    数学が嫌いな子の多くは、中学の数学も完全に身についているわけではありません。
    「中学の数学くらいわかりますよっ」
    と主張するのですが、2次方程式の解の公式をスラスラ活用できるかというと、それは怪しかったりします。
    「公式くらい、わかってますよっ。でも、僕は、引き算が苦手なんですよっ」
    と言われて、言葉を失ったこともあります。
    ・・・・そうか。
    じゃあ、ゆっくりやろう。
    そう声をかけても良いのですが、そんな優しさはむしろ相手を傷つけてしまいそうでした。
    何より本人が、自分の言った言葉に自分で傷ついて、涙目になっていたのです。


    問題 次の2次方程式の解を判別せよ。
    1/3x2-1/2x+1/5=0

    解の判別に関する問題は、数Ⅰ「2次関数」の章で学習しました。
    ただし、その頃は虚数解というものはなく、「実数解なし」という判別をしていました。
    そこをバージョンアップしていきます。

    解を判別するには、判別式を用います。
    判別式とは何か?
    2次方程式 ax2+bx+c=0 のとき、
    解の公式は、x=(-b±√b2-4ac)/2a です。
    この√ の部分がもし0ならば、解は x=-b/2a の1つだけとなります。
    これがすなわち重解です。
    √ の中身が正の数ならば、異なる2つ実数解が求められます。
    このように、√ の中身で解の個数を判別できるので、√ の中身の部分を「判別式」と言うのでした。
    すなわち、判別式D=b2-4ac
    また、xの係数が偶数のときの解の公式の√ の中身を用いることも可能です。
    判別式D/4=b'2-acとなります。

    まとめますと、
    D>0 のとき、異なる2つの実数解
    D=0 のとき、重解
    D<0 のとき、異なる2つの虚数解
    今後は、このように判別していくことになります。

    さて、上の問題は、
    1/3x2-1/2x+1/5=0
    という見た目です。
    これでは計算しにくいので、係数が整数になるように整理しましょう。
    方程式ですから、両辺を何倍かしても、関係は変わりません。
    3と2と5の最小公倍数は30ですから、両辺を30倍すると、分母を払うことができます。
    10x2-15x+6=0
    よって、
    判別式D=152-4・10・6=225-240=-15<0
    解は 異なる2つの虚数解です。

    しかし、単純に解を判別するだけの問題は、退屈ですね。
    少し応用的なものも解きたくなります。
    例えば、こんな問題です。

    問題 2次方程式 x2+(k+1)x+k+2=0 が異なる2つの虚数解をもつようなkの値の範囲を定めよ。

    判別式を使うんだなあということはピンとくると思います。
    使ってみましょう。
    D=(k+1)2-4・1(k+2)
     =k2+2k+1-4k-8
     =k2-2k-7
    異なる2つの虚数解をもつのですから、D<0 です。
    よって、
    k2-2k-7<0
    これは2次不等式です。
    まず2次方程式に直して計算します。
    k2-2k-7=0 とすると、
    解の公式を用いて、
    k=1±√1+7
     =1±2√2
    よって、上の2次不等式の解は、
    1-2√2<k<1+2√2
    これが最終解答です。

    途中まではわかっても、「2次不等式」のところで詰まってしまう高校生もいます。
    数Ⅰの内容があまり身についていない高校生は、2次不等式の解き方を忘れてしまっているのです。
    そもそも、その前の段階の「判別式」を数Ⅰで学習したことすら曖昧になっている子もいます。
    学校では、数Ⅰでやった内容はざっと復習するだけです。
    それだって随分親切な授業です。
    しかし、完全に忘れてしまっている子にとっては、せっかくやってくれる「ざっと復習」も、その授業スピードでは、速すぎて理解できないようです。
    数Ⅱで大きく崩れ、数学の授業についていけなくなる子が多い原因の1つは、このように、数Ⅰの内容が身についていないことにあります。

    もっとも、高校2年の秋ともなりますと、数学が苦手な生徒への配慮のある高校も多いです。
    授業スピードはゆるめないものの、定期テストは易しくなる高校が多いのです。
    数学の単位が取れないと、卒業できないですから。
    中高一貫の進学校なのに計算ドリルみたいなテストだったりします。
    そうしたテストをつくづくと眺め、結局数学の最終学年でこんなテストになるのなら、中等部のときにあんなに異様な分量と難度のテストで生徒を苦しめて数学嫌いにさせなければよいのに、と嘆息することもあります。
    公立中学から普通の都立高校に進学していたら、この子もセンター試験くらいは対応できる数学力がついたのではないかと思ってしまうことも多いです。
    どの進路が子どもを伸ばすかは、1人1人違う、と感じます。

    2次不等式の解き方を忘れてしまった方は、ここに、2次不等式の基本を説明してあるページがありますので、ご参照ください。
    https://seghi.tamaliver.jp/e445206.html

      


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