たまりば

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2020年09月18日

禁断の公式。


毎年のように、中3の男子の間で流行する「公式」があります。
集団指導塾の上位クラスに通っている友達あたりから教わるのでしょうか。
気がつくと使うようになっていて、そのせいで誤答が増え、私に使用を禁止される解き方です。

そうした子は、例えば、こんな誤答をします。

(2-√7)2
=-5-4√7

ノートにこれしか書いてないので、逆にピンとくるのです。
これは、あの解き方を誤用したのだな?

そんな禁断の「公式」とは、どんな公式か?
種明かしをすれば、何でもないものです。
(√a+√b)2
=(a+b)+2√ab

例えば、
(√2+√3)2
=5+2√6

1行で答が出るので、字を書くのが嫌いな子や、そういうのがカッコいいと感じる子に好評の解き方です。
この程度のことなのに、毎年ブームが起こり、男子生徒の多くがこれにカブれます。

もともとは、普通の乗法公式です。
(a+b)2=a2+2ab+b2

これが、aもbも平方根なら、平方根の中身の数字を単純に足すだけなので、(a2+b2)を先にやって、1行で済ましちゃいなよ、という解き方です。
公式とすら呼べないしろものです。
とにかく、どうでもいい。
くだらない、とすら私は思うのですが、なぜか男子の多くはこれにハマります。
男女を区別するのは今どきもう古い、ジェンダーを強化するな、というのは私もそうだと思うのですが、現実には、学習上の好みの違いは存在します。
この解き方に無駄にハマる女子を私は見たことがないのです。
使っている子もいるのかもしれませんが、使っていても確実に正答するので、使っていることを私に悟られないのが女子、ということはあるのかもしれません。
こういう解き方をすると計算ミスをしそうな女子は、最初から使わないのでしょう。
おのれの計算力を顧みず、使って失敗し、私に使用を禁止されるのが、男子。
そういう違いがあるように思います。

(√2+√3)2 のように、両方とも平方根であるなら、この解き方は魅力的です。
しかし、片方整数である場合、無駄な暗算が必要になります。
(2-√7)2 の場合は、2は2乗して4にし、それに√7の2乗の7を足さなければなりません。
=11-4√7
これを一瞬で行うことができ、精度100%であるなら、私は文句を言いません。
しかし、一度暗算した計算結果を使って、さらに次の暗算をするという二重の暗算は、精度が落ちます。
無駄に時間もかかります。
上の誤答例のように、暗算に混乱したあげく、2-7をしてしまうような精度なら、使わないほうがいいのです。
公式は、それを使うから計算が簡単になったり精度が上がったりするのでなければ意味がありません。
ケアレスミスが増えるだけの解き方など、公式ではありません。

「こんなくだらないことで誤答して、5点、5点と点を失って、それでどうやって得点を固めるの?
正答できるかもしれませんが、できないかもしれませんよね?
そんな精度のテクニックを取り込んで、それで高校に落ちたら、どうするの?
解けない問題があるのは仕方ないんですよ。
でも、こんなことで点を失ってしまうのは、私は本当に嫌なんですよ。
努力して努力して、応用問題を解けるようになっても、こんなことで点を失ったら、何も変わりませんよ。
同じ5点なんですよ?」

1回叱責すると、受験生ならば、それで治る場合が多いです。
中高一貫校の生徒は、受験が目前ではないので、この叱責ができませんし、治らない場合が多いのですが。


計算ミス・ケアレスミスに関しては、これは無理だ、これは完全には治らないだろうという場合もあるのです。

以前も書きましたが、1つには、数学の問題を解いていても、精神的にフワフワし、他のことを同時に考えているタイプの子。
目の前の数学の問題に集中することができず、問題を解きながら、常に他のことを考えているのです。
なぜ、そうなるのか、本人にもわからないし、制御することもできない様子です。
例えば、問題の解き方がわかって、計算をしながら、私に、
「今日は、何ページまでやるの?」
と質問してきたりします。
なぜ、計算しながら、そんなことを質問してくるの?
なぜ、計算に集中できないの?
そして、案の定、計算ミスをするのです。
話し相手が傍にいるからそうなるので、独りで勉強しているときには集中するのかというと、そんなことはないのです。
独りなら独りでも、問題を解きながら他のことを考えているのは同じです。
目の前の1つのことに集中することができない。
常に気が散ってしまう。
そういう性分なのでしょう。

もう1つは、数学への苦手意識が強く、過度に緊張している子です。
ミスすればするほど、不安な表情になり、さらにミスが増えていきます。
小さなことで簡単にパニックに陥ります。
問題の読み取り間違いや式の書き間違い、符号や指数の書き漏らしがとにかく多いです。
数学の問題を解いているときの精神状態が悪いのです。
あがり症の人が大舞台に立つときのような精神状態になっているのだと想像されます。
数学の問題を冷静に考えられる精神状態ではないので、テストは信じられないようなミスを連発します。

以上の2つは、心の問題が大きいので、そう簡単には治りません。
こういうケアレスミスが簡単に治ると思っているほうがおかしいとすら思います。
本人が自分の心の状態を自覚し、ミスの多さと一生つきあっていく覚悟を持つ必要があります。


しかし、そうではなく、計算のやり方や、式の書き方次第で治せるケアレスミスもあります。
上の、禁断の「公式」を使用しないことなどはその筆頭です。
正答できるかもしれない。
でも、失敗するかもしれない。
精度は人によるでしょうが、成功率70%であっても、そんなものは使用しないほうがいいでしょう。

しかし、成功率50%であっても、その解き方のほうを選んでしまう中学生もいます。
丁寧に書いていくのが嫌なのだと思います。
字を書くことが、あまり得意ではないのかもしれません。
読みやすく粒の揃った字を水平にササッと書いていくことができない子は案外多いです。
字の大小がそろわず、だんだん大きくしかも斜めになっていき、解答スペースや計算スペースがなくなってしまう子もいます。
粒のそろった字を素早く書いていくことは、授業を受けていて板書を書き写すときなどにも必要な技術なのですが、そういうことが上手くできない。
1文字1文字、字を書くのに時間がかかる。
精神的なストレスもかかる。
だから、1行でも答案を減らしたい。
楽したい。
そういうことも影響しているかもしれません。


とはいえ、私もそんなに丁寧に何もかも書けとは言いません。
意味もなくくどい書き方をする必要はないのです。
例えば、「正負の数」の学習が終わった中1ならば、もう符号は省略して書いていって良いのに、異様にくどくどとした符号の書き方が癖になって、なかなか治らない子もいます。
-3-(-7)×(-2)
といった計算問題を解く際に、
=-3+(+7)×(-2)
=-3+(-14)
=-17
と、丁寧に丁寧に書いています。
別に間違っているわけではないですが、そんなのは、
-3-(-7)×(-2)
=-3-14
=-17
で、いいのです。
符号の決定と絶対値の決定を分割して行っていくことで、計算は正確になり、かつ短時間で行うことができます。
上のようにくどくどと何行も書いたあげくに途中で符号を書き間違えている答案を見ると、がっかりします。
何行も書いていくことで、符号の書き間違いのリスクが高くなっているだけなのです。


「1次方程式」を学習すると、これも最初に学習した丁寧な解き方から脱却できず、
7x+5=2x-15
7x-2x=-15-5
5x=-20
x=-4
といった、丁寧な丁寧な答案を書く子もいます。
間違っていないからそれでも構わないのですが、上の2行目は書かなくても大丈夫です。

7x+5=2x-15
5x=-20
x=-4

という計算は、精度を保ちながら行うことができます。
しかし、計算ミス・符号ミスの多い子の中に、以下のような省略の仕方をする子がいます。

7x+5=2x-15
7x-2x=-15-5
x=-4

3行目を省略するのです。
見る度に、ぎょっとする答案です。
なぜ、2行目をわざわざ書くのに、3行目を省略するの?
加法してさらに両辺を何かで割るという二重の暗算をしたら、精度が下がって当然です。
符号ミスも多くなります。

一番上で書いた、禁断の「公式」も、平方根以外のもので使用した場合、2乗して、さらにたし算をするという二重の暗算がネックとなり、精度が下がるのでした。
大抵の人間は、二重の暗算を100%の精度では行うことはできません。
大体はできるかもしれない。
でも、間違えるかもしれない。
その程度の精度しか保てないのが普通です。
しかし、この二重暗算、やってしまう子は多いです。
移項を暗算するのは、一度の暗算ですから、移項に関する符号処理が理解できていない子を除けば、ほぼ100%の精度で行うことができます。
しかし、移項の処理を最初に学習したときから一度も省略したことがなく、もう書かないと計算できなくなっている子もいます。
それでいて、その次に二重の無理な暗算をします。
答案を見る度びっくりするのですが、こんな書き方が癖になっていて、もう直せない子もいます。

繰り返しますが、1つの暗算なら精度を保つことができても、暗算した結果を使ってさらに暗算を重ねると、普通の人間は精度が下がります。
目に見える形のもので暗算することは、暗算の精度に必要なことなのです。
そのことが理解できていない子が、不用意に二重暗算をし、自ら計算精度を下げています。


こんな暗算ミスも多いです。
これは「文字式の計算」。
例えば、こんな問題です。
ちょっと見にくいと思いますが、分数式です。
まずは丁寧な計算から。

4x+2 /3 - 7x-5 /2
=2(4x+2)-3(7x-5) /6
=8x+4-21x+15 /6
=-13x+19 /6

このように丁寧に通分していけば、精度を保てます。
しかし、ここで、一気に通分しながら分子もそれぞれ計算する子が多いです。
そして、後ろの分数の前にある負の符号を処理できず、計算ミスをします。

4x+2 / 3 - 7x-5 / 2
=8x+4-21x-15 / 6
=-13x-11 / 6

私は、こんな計算ミスをもう何十年も見ています。
ああ、この子もそうか、と思いながら。
通分しながら分子もかけ算した結果を書いていくという作業だけなら何とかできても、そこに後ろの分数は符号が変わるという条件まで加わると、正確に処理できなくなるのです。
人間の精度なんて、そんなものです。

そんなミスを繰り返しても、自分の精度の限界を把握できず、同じことをいつまでもやってしまう子は、数学の成績がなかなか上がりません。
それはそうです。
穴の空いたバケツで水を汲んでいるようなものですから。
解くことのできる問題が増えても、計算ミスも増えていたら、正答は増えません。


これまで、数学の成績が急上昇していった子の例を思い出すと、もともとうちの塾に来る前から計算の精度は高く、計算ミスのことをとやかく言う必要のなかった子が多いのが事実です。
考え方がよく身についていなかったり、数理の根本について何が誤解があったりして、しばらく妄言を繰り返したりはしますが、数か月後、ロケット並みの上昇をしていきました。

その他に、これは年齢的なことがあったのだと思いますが、入塾当時はおそろしいほど計算ミスをしていたけれど、中3から高1くらいの時期に、まるで脳がきゅっとしぼられたように計算精度が上がり、数学の成績が高めに安定していった子もいました。
これは、本人の脳の発達によるものだろうと推測されます。

そうして、少数ですが、私が直しなさいと言ったことは全て直し、計算過程を改善することで計算精度を上げ、正答率を高めていった子たちがいました。


同じ計算ミスを繰り返す子に尋ねたことがあります。
やり方をどう直せばいいのか、わからないの?
それとも、無理な暗算でも自分はできると思い、自分のやり方をどうしてもつらぬきたいの?
有名中高一貫校に通っている生徒でした。
理解力はあるのに、計算ミスばかりしていて、毎度毎度テストで落第点を取り、学校の補習を受けていました。
しかし、理解力があるというのはやはり物凄いことで、答など期待していなかった私の問いに、その子は答えました。

理解はしている。
直そうと思っている。
でも、実際に問題を解くときには、そのことを忘れてしまう・・・。

計算ミスをしやすい計算過程を直せない子の、直せない理由として、これ以上の説得力のある言葉を、私は聞いたことがありません。
そうなんですよね。
理解できないわけでもなく、反抗したいわけでもなく、ただ、直せないだけなんです・・・。
多分、皆、そうなんです。


先日も、高校生が、2次関数の平方完成で、こんなミスをしていました。

y=1/2x2+2x-6
=1/2(x+1)2-1/2-6
=1/2(x+1)2-13/6

・・・x2の係数が1ではないときは、いきなり平方完成するなと、もう何回言ったかわからないのに・・・。

y=1/2x2+2x-6
=1/2(x2+4x)-6
=1/2(x+2)2-2-6
=1/2(x+2)2-8

と、一度、1/2で単純にくくってからのほうが、平方完成は精度が上がるのです。
こうしたほうが頭が楽で、正確で、結局速いのです。
何度も何度もそう説明しているのに・・・。

理解できないわけではない。
反抗したいわけでもない。
ただ直せないだけ。
わかっているけれど、直せない。

きっとそうなのです。
例えば私が急に草野球のピッチャーをやることになって、投球フォームをあれこれ直せと言われたら。
言われていることは多分理解できるし、反抗したいわけではないけれど、きっと直せない・・・。
そういうことは、誰にでもあります。
そのとき、私はどのように声をかけてほしいだろう・・・。


私は、同じようなミスを何十年も見ています。
ああ、この子もそうか、と思いながら。
けれど、それでこの仕事をむなしいと思うことがないことの1つに、あの子の教えてくれた言葉があるような気がします。
そして、それを乗り越えて成績を上げていった子たちの記憶が、さらに私を支えてくれているのです。

  


  • Posted by セギ at 12:13Comments(0)算数・数学

    2020年09月15日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。円の方程式。その1。


    さて、今回は、円の方程式です。

    まず、「円の方程式」ということの意味がわからず、ポカンとする高校生がいます。

    これは、1つには、中2で最初に学習した、直線の方程式の意味が、実はよくわかっていないことが根本の原因ではないかと思います。
    直線は、x座標とy座標とが同じ関係を持った点の集合です。
    直線の方程式は、そのx座標とy座標の関係を表す式です。
    例えば、直線y=3x+5 ならば、この直線上の全ての点のx座標とy座標には、y=3x+5 という関係があります。

    直線に限ったことではありません。
    曲線でもそれは同じです。
    中3や高1で学習した放物線もそうです。
    1つの放物線上の点のx座標とy座標には共通の関係があります。
    例えば、y=2(x-1)2+3 という放物線ならば、その放物線上の全ての点のx座標とy座標に、この式の関係が成り立ちます。
    そうした関係を持つ点の集合が、y=2(x-1)2+3 という放物線です。

    そして、円もそうです。
    円が閉じているからなのか、何のことかよくわからず、
    「え?円盤の内側のことですか?」
    という質問を受けたことがあるのですが、そうではなく、円周を描いている、曲線のことです。
    その曲線を表す式が、円の方程式です。

    この誤解は、わからないでもありません。
    小学生の頃から、「円の面積」というと、円周で囲まれた、円の内側の面積のことでした。
    それが「円」そのものだと思っても、おかしくありません。
    「円」が円周を形成する曲線そのものであるなら、そんなものに「面積」は存在しないのですから。
    「円」の定義が、揺れているのですね。

    さて、「円の方程式」とは何であるか、意味がわかったところで、では、確認しましょう。

    中心が(a , b)、半径が r の円の方程式は、
    (x-a)2+(y-b)2=r2
    特に、中心が原点、半径が r の円の方程式は、
    x2+y2=r2

    この式の証明は、特に難しくありません。
    上の図を見てください。
    中心が、C(a , b)、半径 r の円があります。
    この円周上の任意の点をP(x , y)とすると、PC=r であることから、2点間の距離の公式を使って、
    √(x-a)2+(y-b)2=r
    と表されます。
    この両辺を2乗すると、
    (x-a)2+(y-b)2=r2
    これは、円周上のどの点の座標(x , y) についても成り立ちますから、これが、中心C(a , b)、半径 r の円の方程式です。
    これを、円の方程式の標準形といいます。

    この式に、中心O(0 , 0)を代入すると、
    (x-0)2+(y-0)2=r2
    よって、
    x2+y2=r2
    これが、中心が原点、半径がrの円の方程式です。


    では、ちょっと練習してみましょう。

    問題1 中心が(1 , 2)、半径が3の円の方程式を求めよ。

    これは、公式に代入するだけです。
    (x-1)2+(y-2)2=9
    これで答です。


    問題2 2点(1 , 2)、(3 , -2)を直径の両端とする円の方程式を求めよ。

    ちょっと難しくなりました。
    中心の座標と半径を自分で求めなければなりません。
    この2点が直径の両端ならば、この2点の中点が、円の中心です。
    まず、それを求めましょう。
    (1 , 2)、(3 , -2)の中点の座標は、(2 , 0)です。
    では、半径は?
    中心と、この2点のどちらかとの距離です。
    (1 , 2)、(2 , 0)の距離を求めましょう。
    √(1-2)2+(2-0)2
    =√1+4
    =√5
    これらを、円の方程式の公式に代入して、
    (x-2)2+y2=5


    問題3 中心が(1 , 2)で、点(2 , -1)を通る円の方程式を求めよ。

    また少し難しくなりました。
    中心はわかっているので、あとは円の半径がわかればいいですね。
    円の半径は、(1 , 2)、(2 , -1) の距離ですから、
    √(1-2)2+(2+1)2
    =√1+9
    =√10
    よって、
    (x-1)2+(y-2)2=10


    問題4 中心が(-2 , -√3)で、y軸に接する円の方程式を求めよ。

    ここまでは比較的順調にきた人も、ここで詰まってしまうことがあります。
    わかりにくいときは、実際に座標平面上にそういう円を描いてみるのが一番です。
    中心は、第3象限にあります。
    中心がそこで、y軸に接する円を描いてみましょう。
    その円の半径は2であることが、見てとれると思います。
    中心のx座標が-2だからです。
    よって、
    (x+2)2+(y+√3)2=4


    問題5 中心が(√3 , 2)で、x軸に接する円の方程式を求めよ。

    これも、実際に座標平面上にそうい円を描いてみるとわかります。
    中心は、第1象限。
    x軸に接する円を描いてみましょう。
    その円の半径は、2であることが見てとれます。
    中心のy座標が2だからです。
    よって、
    (x-√3)2+(y-2)2=4


    こうした練習問題を、最初の1問は機嫌良く解く子が、2問目からもう応用になったと感じるからか、暗く辛そうな表情を浮かべることがあります。
    小学校の頃ならば、上の問題1レベルのような、例題とそっくりな問題だけをたくさん練習します。
    それ以外の問題は教科書に存在しないことすらあります。
    中学校ならば、上の問題1レベルの問題を10問くらい解き、同じページの最後のほうに1~2問、問題2レベルのものがあります。

    しかし、高校は、助走は短く、あっという間に離陸します。
    基本の練習だから大丈夫だろうと解き始めても、例題と全く同じ解き方の問題は1問しかありません。
    いや、1問もないことすらあります。
    自分で解き方を考えなければならない。
    そのことに、気持ちがついていかない子がいます。

    問題4、問題5は、中心のx座標やy座標に注目して円の半径を読み取る問題です。
    こうしたことが、中学生の頃から、うまく理解できない子もいます。
    「円を描いてみるとわかります」
    先ほどはそのように書きましたが、自分で円を描いても、私が描いた円を見ても、何も思いつかない子も、一定数存在します。
    自力で発想できないだけでなく、一度解説されたときに、そういう考え方があると理解し記憶することもできない様子で、毎回、そのような問題で詰まるのです。

    高校生になって突然そうなるわけはないので、中学生の頃から、座標平面上の図形の問題は苦手だったと思います。
    座標平面上の三角形の底辺や高さの読み取りに苦労していたと思うのです。
    座標平面の見方の何かが身についていないのです。
    「2点間の距離を読み取ればいいよね」
    といった説明に眉を寄せることが多く、そのあたりのことが理解できていないのだろうと思われます。
    座標平面上で水平な位置の2点の距離は、x座標の差を読み取ればよいことが理解できない子もいます。
    x軸上に落として考えればよいでしょうとヒントを出しても理解できません。

    座標平面を描き、y軸と接する円を描き、半径を赤くペンで描き、同じ長さをx軸上になぞって示して、こことここは同じ長さだねと解説すると、何とか理解した様子は見せます。
    しかし、しばらく経つと、また何も読み取れなくなります。
    完全にリセットされてしまいます。
    結局、それは理解していなかったということなのだと思いますが。

    x座標とy座標の読み取りがときどき逆転することがあるのも、そうした子たちです。
    最初に覚えるときに、何かを誤解をしてしまったのかもしれません。
    点の座標の根本の何かが理解できていないのかもしれません。

    直線x=1 はy軸と平行な直線です、といった説明も苦手な様子で、頭を抱え、苦しそうにします。
    y軸と平行なら、y=1でなければならないと思うようです。
    何かもっと簡単に頭の中で整理し直したいのに、そうならないことに苦しんでいる様子が見られます。

    ・・・いや、これ以上は簡単にならないです。
    このまま、受け入れてください。
    そのように願うのみです。


    ところで、放物線の方程式は、y=a(x-p)2+q という、平方完成した形の式の他に、y=ax2+bx+c という形の式もありました。
    問題の形式によって、それらを使いわけました。
    あるいは、問題では、y=ax2+bx+c の形の式が与えられ、それを平方完成することも多かったです。

    円の方程式も、そのような一般形があります。
    x2+y2+ℓx+my+n=0
    これが、円の方程式の一般形です。

    この形が問題で与えられたら、標準形に直すことで、その円の中心や半径を求めることができます。
    やってみましょう。


    問題 円x2+y2-2x-6y+5=0 の中心の座標と半径を求めよ。

    x と y、それぞれに、平方完成をすれば求めることができます。
    最初なので、丁寧にやってみます。
    (x2-2x)+(y-6y)=-5
    それぞれ平方完成し、式にはもともとないのに加えてしまった定数項を右辺にも加えることで辻褄を合わせましょう。
    (x-1)2+(y-3)2=-5+1+9
    (x-1)2+(y-3)2=5
    よって、円の中心(1 , 3)、半径√5


    考え方はそんなに難しくないので、あとは、ケアレスミス・計算ミスに気をつけるだけです。
    とはいえ、ここまでくると、1年前に学習した高校1年の数学内容など1つも覚えていない、1つ前の単元どころか、先週学習した内容ももう忘れている、という人が増えてきます。
    周囲は全て霧。
    足元の細い道だけが見えている。
    後ろは、おそらく崖崩れが起きていて、戻れない。
    前方に何があるのかも、わからない。
    このような精神状態で問題を解いているためでしょうか、比較的簡単に思われるこうした問題でも、符号ミス、計算ミス、円の方程式の右辺は半径の2乗であることを忘れているミスなど、多様なミスを繰り返し、正解に至ることが難しい人が出てきます。
    この問題だけならば、落ち着いて解けば正解が出せるはずなのに、もう何を解いても正解に至らない・・・。
    何を解いても正解にならないので、気持ちがどんどん暗くなる・・・。
    精度の低さが、本人の心をむしばんでいきます。

    理解度と精度は、別のことですが、理解があやふやであれば精度が下がります。
    同時に、精度の低さが、精神的な不安を招き、さらに精度を下げていくこともあります。
    全問不正解のとき、それが全てケアレスミスが原因だとしても、
    「いや、自分は理解しているから大丈夫」
    とは思えないでしょう。
    数学が苦手な高校生の多くはそのような精神状態かもしれません。
    理解できないわけではない。
    ただ、計算が合わない。
    正答に至らない。

    そして、理解しているとはいっても、先週学習した問題を、例題も解説もなくすっと出され、さあ解いてと言われたときに、何をどうしていいか、わからない・・・。
    どうしてこんなに頭をすりぬけていってしまうのか。
    理解したつもりだったが何も覚えていないのは、なぜなのか・・・。

    理解と記憶は、また別のものだからです。

    理解すること。
    記憶すること。
    精度を保つこと。

    それは、別べつのことですが、根は同じところにあります。
    改善していくには、反復することです。
    1回目に学習するときよりも、2回目に学習するときのほうが、まだ少し気持ちが落ち着き、わかることが増えます。
    正答も増えていきます。
    諦める前にどうか反復してください。
    数学が受験にどうしても必要な人は、夢を諦める前に、まだできることがあるはずです。

      


  • Posted by セギ at 14:07Comments(0)算数・数学

    2020年09月10日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。三角形の面積。


    さて、今回は、座標平面上の三角形の面積の求め方です。
    例えば、こんな問題。

    問題 点O(0,0)、B(8,2)、C(3,5)を頂点とする三角形OABの面積を求めよ。

    これも、実際に座標平面にこの三角形を描いて考えるとわかりやすいと思います。

    高校生に自力で考えてもらうと、発想が中学生に戻り、中1で学習した解き方をする子が大半です。
    すなわち、この三角形を取り囲むように、三角形の頂点が周上にある長方形を描き、その長方形から、余計な直角三角形を3つ引いて、△OABの面積を求める方法です。
    間違った方法ではありません。
    まずは、それで解いてみましょう。

    △OABを囲むように長方形を作ると、縦5、横8の長方形となります。
    そこから、不要な三角形を3つ分の面積を引きます。
    5・8-1/2・3・5-1/2・5・3-1/2・8・2
    =40-23
    =17

    △OABの面積は、17です。

    しかし、せっかく、2点間の距離の求め方や点と直線との距離の求め方を学習したのですから、それを利用した解き方を考えてみましょう。
    この△OABを、底辺AB、頂点Oの三角形とみなします。
    まずは、底辺の長さを求めましょう。
    点A(8,2)とB(3,5)の距離ですから、2点の距離の公式に代入すると、
    AB=√(8-3)2+(2-5)2
    =√25+9
    =√34

    底辺をABとみなしたら、この三角形の高さは、点Oと直線ABとの距離となります。
    そのため、まず直線ABの式を求めましょう。
    2点(8,2)、(3,5)を通る直線ですから、2点を通る直線を求める公式に代入して、
    y-2=-3/5(x-8)
    両辺を5倍して、
    5y-10=-3(x-8)
    5y-10=-3x+24
    3x+5y-34=0

    この直線と、点O(0,0)との距離ですから、点と直線との距離の公式に代入して、
    距離d=|-34|/ √9+25
    =34/√34

    よって、
    △OAB=1/2・√34・34/√34
    =17

    上と同じ面積を求めることができました。

    しかし、この求め方、高度な考え方を利用しているわりに、むしろ、中1で学習した求め方よりも計算が面倒くさくなっている気がします。
    ご安心ください。
    これも、公式があります。

    点0(0,0)、A(x1,y2)、B(x2,y2)のとき、
    △OAB=1/2|x1y2-x2y1|

    この公式に代入してみましょう。
    △OAB=1/2|8・5-2・3|
    =1/2|40-6|
    =1/2・34
    =17

    ・・・わあ、簡単だあ。

    では、この公式を証明しましょう。
    底辺を線分ABと見るのは、上の解き方と同じです。
    まず、底辺を求めましょう。
    AB=√(x2-x1)2+(y2-y1)2 となります。
    次に、この三角形の高さ、すなわち、点0とABとの距離dを求めます。
    そのために、直線ABの式を求めると、
    y-y1=y2-y1 / x2-x1 (x-x1)
    これを整理します。
    両辺をx2-x1 倍して、
    (y-y1)(x2-x1)=(y2-y1)(x-x1)
    全て左辺に移項して、
    (y-y1)(x2-x1)-(y2-y1)(x-x1)=0
    展開して、整理すると、
    -(y2-y1)x+(x2-x1)y-x2y1+x1y1+x1y2-x1y1=0
    (y2-y1)x-(x2-x1)y-(x1y2-x2y1)=0
    よって、点0(0,0)との距離は、
    d=|0-0-(x1y2-x2y1)| / √(y2-y1)2+(x2-x1)2
    ところで、この分母√(y2-y1)2+(x2-x1)2=ABであ。
    よって、d=|x1y2-x2y1| / AB
    したがって、
    △OAB=1/2・AB・d
    =1/2・AB・|x1y2-x2y1| / AB
    =1/2|x1y2-x2y1|


    原点を通る三角形の面積は、この公式で簡単に求めることができます。
    それでは、こんな問題はどうでしょうか。

    問題 点(3,4)、(-4,1)、(2,-5)を頂点とする三角形の面積を求めよ。

    原点を通っていない・・・。
    では、上の公式は使えないでしょうか?
    いいえ。
    ちょっと工夫すれば使えます。

    原点を通る三角形になるよう、3点を平行移動させればよいのです。
    どれでもいいのですが、今回は、点(2,-5)を原点に移動してみましょう。
    (2,-5)が、(0,0)に移動するのですから、x軸方向に-2、y軸方向に+5だけ平行移動することになります。
    それにあわせて他の点も移動すれば、全体に平行移動したことになりますから、もとの三角形と面積は等しいです。
    (3,4)は、(1,9)に。
    (-4,1)は、(-6,6)に。
    よって、求める三角形は、点(0,0)、(1,9)、(-6,6)を頂点とする三角形と面積は等しいです。
    これを公式に代入すると、
    1/2|1・6-9・(-6)|
    =1/2|6+54|
    =30
    これが求める面積となります。

      


  • Posted by セギ at 13:19Comments(0)算数・数学

    2020年09月03日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。点と直線の距離。



    今回は、点と直線との距離を求める問題です。

    問題 点(1,2) から直線 3x+4y=5 までの距離を求めよ。

    そもそも、「点と直線との距離」とは何か、その確認からしましょう。
    中学生が作図問題を解いている様子を見ていると、ああ、わかっていないかもしれないなあと感じることがあるのが、点と直線との距離です。
    与えられた点と直線との距離を示す線分を描けといった問題に上手く対応できないのです。
    それの応用である、与えられた点を中心とし、与えられた直線と接する円を描けといった問題にも困惑することになります。

    数学で「距離」というのは「最短距離」のことです。
    点と直線との最短距離とは何か?
    その点からその直線に垂線を下したときの、その点と垂線の足との距離が最短距離です。
    ちなみに、垂線の足とは、垂線と直線の交点のことです。

    ・・・このように、説明しても説明しても、そこにまた数学用語が出てきて、それをまた説明しなければならないということが、数学の授業
    では起こりがちです。
    テストのために暗記するけれど、テストが終わったら忘れる。
    そのような学習習慣の子が幾何が苦手な原因の1つが、用語の意味がわからないことです。
    重要なことを覚えていないのです。
    だから、説明を聞いても、その説明が理解できない、という状況に簡単に陥ります。

    用語がごついだけで、言っていることはとても単純なことです。
    点から直線には、多くの線が引けますが、その中で一番短い線は?
    その点からその直線に垂直に引いた線ですよね?
    それが最短距離です。
    そのことを、点と直線との距離と呼びます。

    しかし、上のような不正確な表現は、許されません。
    上の説明は、図を示しながら、ニュアンスで理解してもらおうとしている説明です。
    この説明が通じればよいですが、もし通じなければ、相手を混乱させるだけです。

    勝手な用語を使うと全く通じないことがあります。
    もう何年も前になりますが、中3の生徒が図形問題を解いている途中で、
    「この棒の長さが」
    と言い出して、ぎょっとしたことがあります。
    ・・・棒?
    棒って何のこと?
    虚をつかれて、本当に何のことかわからなかったのですが、それは「線分」のことでした。

    別の子で、これは代数の学習でしたが、式の計算のところで、
    「この式をほぐしていいですか?」
    と質問するので、困惑したこともあります。
    式をほぐす?
    それは、何をどうすること?
    ・・・その子が言っていたのは、式を展開することでした。
    ニュアンスで説明するのは、本人はよく理解できても、他人に通じない可能性が高いのです。

    上の私の説明も、幾何の専門家からすれば、線分を棒と呼ぶほどの暴挙を寄せ集めた説明です。
    1つ1つ、正確に定義された言葉を使うことで、相手に正確に伝わります。
    だから、数学は定義が極めて重要です。


    問題の意味が正確にわかったところで、さて、どう解きましょう。
    もう一度、問題を読んでみます。

    問題 点(1,2) から直線 3x+4y=5 までの距離を求めよ。

    よくわからなかったら、グラフを描いてみると助けになると思いますが、そろそろ、実際にグラフを描かなくても、頭の中のイメージだけで何とかなりそうな気がします。
    とにかく直線 3x+4y=5 がある。
    その直線外の点(1,2) がある。
    その点から直線に垂線を引く。
    その点とその垂線の足との距離が、求める距離です。

    これまで学習したことを利用して求められそうな気がします。
    点(1,2)を、点Pとしましょう。
    与えられた直線 3x+4y=5 を対称の軸として、点Pと対称な点をQ(a,b)とおきます。
    直線 3x+4y=5 と、直線PQは、垂直です。
    線分PQの中点は、直線 3x+4y=5 を通ります。
    こうしたことを利用して、何とか求めることができそうな気がします。
    Qの座標がわかれば、線分PQの長さがわかります。
    それを1/2にしたものが、点Pと直線との距離でしょう。
    その指針で、解いてみましょう。

    まず、与えられた直線の傾きを求めます。
    3x+4y=5 をyについて解くと、
    4y=-3x+5
    y=-3/4x+5/4

    この直線の傾きは、-3/4であることがわかりました。
    では、それと垂直な直線PQの傾きは、4/3です。
    垂直な2直線の傾きの積は、-1だからです。

    直線PQの傾きは、P(1,2)、Q(a , b) を、変化の割合の公式に代入すると、
    b-2 / a-1 です。
    よって、
    b-2 / a-1=4/3
    これを整理すると、
    4(a-1)=3(b-2)
    これは、両辺が分数のときに、互いの分母×分子は等しいことを利用しました。
    4a-4=3b-6
    4a-3b=-2 ・・・①

    式が1本出来ました。
    もう1本式があれば、Q(a , b) を求めることができます。

    線分PQの中点が、対称の軸を通ることを利用しましょう。
    線分PQの中点の座標は、(a+1 / 2 , b+2 / 2)。
    これが直線3x+4y=5を通るから、
    3( a+1 / 2) +4(b+2 / 2)=5
    各辺を2倍して、
    3(a+1)+4(b+2)=10
    これを整理して、
    3a+3+4b+8=10
    3a+4b=-1 ・・・②

    ①、②を連立して、aとbを求めましょう。
    ①×4+②×3 をすると、
    25a=-11
    a=-11/25 ・・・③

    ③を②に代入して、
    3・(-11/25)+4b=-1
    -33+100b=-25
    100b=8
    b=2/25

    よって、Q(-11/25 , 2/25)

    P(1,2)、Q(-11/25 , 2/25)より、PQ間の距離を求めることができます。
    2点の距離を求める公式に代入して、
    √(-11/25-1)2+(2/25-2)2
    =√(-36/25)2+(48/25)2
    =√1296+2304 / 252
    =√3600 / 252
    =60/25
    =12/5

    PQ間の距離が12/5ですので、点Pと対称の軸との距離は、その1/2ですから、
    12/5×1/2
    =6/5

    できました。


    とはいえ、計算が面倒でしたね。

    ・・・これ、公式があったんじゃない?
    そのようなツッコミもあるかと思います。
    はい。
    これは公式に代入して、もっと簡単に答を出せる問題なのです。
    まずは公式を確認しましょう。

    直線 ax+by+c=0 と、この直線外の点(x1,y1)との距離dは、
    d=|ax1+by1+c| / √a2+b2

    このブログの表示では、もう何のことやらさっぱりわからないかもしれません。
    お手元の教科書・参考書で確認されるか、上の画像をご覧ください。
    公式そのものは、そんなに特殊なものではなく、どこの高校でも必ず学習する基本公式です。

    これに代入すると、上の問題は、点(1,2)から直線3x+4y-5=0 までの距離となりますから、
    |3・1+4・2-5| / √9+16
    =|6|/ √25
    =6/5

    と簡単に求めることができます。

    ただ、数学が苦手な子は、そもそも絶対値記号のことを忘れていたり、
    「3・1+4・2+5ではないのは、なぜですか?」
    と質問し、そこの思い込みからなかなか抜け出せないことがあります。

    3x+4y-5=0 と移項したからですよと説明すればわかってくれる場合は比較的簡単ですが、
    「絶対値は正の数なのだから、-5というのはおかしい。+5でなければおかしい」
    という論理のねじれや歪みが生じている場合は、説得は簡単ではありません。
    数学の問題を解いていて、このような論理のねじれや歪みを起こしやすい人がいます。
    絶対値の基本に戻り、|-2|=2といった、絶対値記号の内側は負の数でも構わないことを確認し、誤解を解いていく必要があります。
    自力では、こうした誤解からなかなか脱出できません。
    個別指導の強みはそこです。
    どんな妄言でもよいので、妄言は妄言のまま声に出してくれると、解決への道が開かれます。

    さて、では、この公式の証明を始めましょう。
    直線 ℓ : ax+by+c=0 と、この直線外の点P(x1, y1) がある。
    Pから ℓ に引いた垂線と ℓ との交点をH(x2, y2) とすると、
    PH=√(x2-x1)2+(y2-y1)2 ・・・①
    また H は直線 ℓ 上の点だから、
    ax2+by2+c=0 ・・・②
    ここで、
    (ⅰ) ab≠0 のとき、
    ℓ の傾きは、-a / bであるから、直線PHの傾きは、b/a
    よって、
    y2-y1 / x2-x1=b / a
    これを整理すると、
    y2-y1=b / a ・ x2-x1
    y2-y1 / b=x2-x1 / a
    この値をtとおく。
    すなわち、
    x2-x1 / a=t、 y2-y1 / b=t、
    これを変形して、
    x2-x1=at 、 y2-y1=bt
    x2=at+x1 、 y2=bt+y1 ・・・③
    これを②に代入して、
    a(at+x1)+b(bt+y1)+c=0
    これをtについて解くと、
    a2t+ax1+b2t+by1+c=0
    t(a2+b2)=-ax1-by1-c
    t=-ax1-by1-c / a2+b2 ・・・④
    ③、④を①に代入すると、
    PH=√a2t2+b2t2
    =√(a2+b2)t2
    =√(a2+b2)t2・(ax1+by1+c)2 / (a2+b2)2
    =√(ax1+by1+c)2 / (a2+b2)
    =|ax1+by1+c| / √a2+b2 ・・・⑤

    (ⅱ)a=0、b≠0のとき、
    y=-c/b
    PH=|y1+c /  b|
    =|by1+c|/ |b|
    ⑤の式からもこれと同じ式が得られる。
    またa≠0、b=0のときも、同様のことがいえる。
    よって、aかbのいずれか1つが0のときも、PHは⑤の式であらわされる。

    したがって、(ⅰ)(ⅱ)より、
    PH=|ax1+by1+c| / √a2+b2

    公式の証明を理解したら、あとは活用するだけです。
    この公式は、使う機会がとても多い公式ですので、早めに覚えて活用しましょう。


      


  • Posted by セギ at 11:29Comments(0)算数・数学

    2020年08月26日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その6。恒等式の利用。


    今回は、こんな問題を。

    問題 2直線 2x+y-5=0、3x-2y-11=0 の交点と、点(1,-2) を通る直線の方程式を求めよ。

    ・・・あれ?
    簡単すぎる・・・?
    こういう問題は、以前に学習しましたよね。

    では、まず、その解き方から。

    2点の座標がわかれば、直線の方程式は求められます。
    1点は、問題で示されている点(1,-2)。
    あと1点は、2直線の交点。
    まず、これを求めましょう。
    2直線の方程式を連立して解きます。
    2x+y-5=0   ・・・①
    3x-2y-11=0 ・・・②

    ①×2+②
      4x+2y-10=0
    +)3x-2y-11=0
     7x  -21=0
         7x=21
          x=3 ・・・③

    ③を①に代入して、
    6+y-5=0
       y=-1

    よって、交点の座標は(3,-1) です。

    すなわち、求める直線は、点(1,-2) , (3,-1) を通りますから、2点を通る直線を求める公式に代入して、
    y+2=1/2(x-1)
    y=1/2x-1/2-4/2
    y=1/2x-5/2

    これが答となります。


    この解き方で構わないのですが、後に、2円の共有点と他の1点を通る円の方程式などを求める際に利用する解き方があります。
    こちらのほうが汎用性が高いです。
    ただし、これからの数学の多くはそうですが、汎用性の高い考え方は、難しいです。
    できるだけわかりやすく説明したいと思いますが。
    まずは、答案を見てみてください。

    2直線、2x+y-5=0、3x-2y-11=0 の交点を通る直線の方程式は、
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0 ・・・① と表される。
    この直線が、点(1 , 2) を通るから、
    k(2-2-5)+(3+4-11)=0
    -5k-4=0
    -5k=4
    k=-4/5
    これを①に代入して、
    -4/5(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    -4(2x+y-5)+5(3x-2y-11)=0
    -8x-4y+20+15x-10y-55=0
    7x-14y-35=0
    x-2y-5=0

    これが答です。


    ・・・はあ?
    何それ?
    何をしたの?
    そのkって何?

    そのような声が、絶叫レベルで聞こえてきそうな気がします。

    上の答案は、冒頭の2行が謎に満ちていると感じる人が多いでしょう。

    2直線、2x+y-5=0、3x-2y-11=0の交点を通る直線の方程式は、
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0 と表される。

    ・・・何それ?
    何で、2直線の交点を通る直線の方程式が、そんなもので表されるの?

    問題は、そこですよね。

    これは、kについての恒等式なんです。
    kの値が何であっても、この式は成立するということなのです。

    ・・・どういうこと?

    それでは、kの値が何であってもこの式が成立するための条件を考えてみましょう。
    k(2x+y-5)の部分の、(2x+y-5)の値が0でなければ、そんなものは成立しません。
    この( )の中が、例えば1であったり、2であったり、何か0以外の数字になってしまったら、kの値によって、左辺=0 が成立することもあれば成立しないこともある、となってしまいます。
    kの値が何であってもこの式が成立するためには、kの係数は0である必要があります。
    だから、2x+y-5=0 です。
    また、それだけでは、必ず左辺=0 とはなりません。
    後半の( )の中身、3x-2y-11=0 も同時に満たさなければ、左辺=0 とはなりません。

    ということは、どういうことか?
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式が常に成り立つということは、2x+y-5=0、かつ、3x-2y-11=0 だということです。

    2x+y-5=0、かつ、3x-2y-11=0
    そのときの x と y の値は、この2つの式を連立して解いた解ということです。
    それは、この2直線の交点の座標ですよね?
    だから、
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式が表す直線は、2直線の交点の x 座標と y 座標の値のときは、k の値が何であっても、必ず成立するのです。
    すなわち、この直線は、k の値は謎のままであっても、2直線の交点の x 座標と y 座標の関係は満たします。
    つまり、この直線は、2直線の交点を必ず通るのです。
    わさわざ計算して交点の座標を求めなくても、その交点を通る直線を表すことができるのが、この解き方の利点です。

    それでもまだもやもやするという人のために、一応確認しておきましょうか?
    冒頭の求め方で、2直線の交点の座標は出してありました。
    交点は、点(3,-1) でしたね。
    この値を、この k を用いた式に代入してみましょう。
    k(6-1-5)+(9+2-11)=0
    0・k+0=0
    確かに、これなら、kが何であっても、成立します。
    2直線の交点(3,-1) の値を代入すると、kが何であってもこの式は成立します。
    つまり、この直線は、kの値が何であっても、必ず点(3,-1) は通るのです。

    ただし、このままでは、kが定まっていません。
    2直線の交点は必ず通るけれど、傾きもy切片も定まりません。
    2直線の交点のところでピン留めされた直線が、360度、ぐるぐる回るイメージを抱いてください。
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式が表しているのは、そういう、ぐるぐる回る無数の直線なのです。

    このkが定まるとき、その直線は1つに定まります。
    回転をやめ、定まった傾きとy切片をもった直線の式となります。

    では、どうやってkを求めましょう?
    問題を見直してみましょう。

    問題 2直線 2x+y-5=0、3x-2y-11=0 の交点と点(1,-2) を通る直線の方程式を求めよ。

    求める直線は、点(1,-2) を通るのです。
    ならば、求める直線は、
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式で表されるうえに、さらに、x=1 のときy=-2 という条件を満たすということです。
    そのとき、kの値はただ1つに定まります。
    代入してみましょう。
    k(2-2-5)+(3+4-11)=0
    これをkについて解きます。
    -5k-4=0
    -5k=4
    k=-4/5

    2直線の交点を通る直線は、360度回転して無数に存在するけれど、k=-4/5であるとき、点(1,-2) を通ります。
    では、このkの値を、k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0 の式に代入すれば、求める式になるでしょう。
    代入しましょう。
    -4/5(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    これを整理しましょう。
    両辺を5倍して、
    -4(2x+y-5)+5(3x-2y-11)=0
    展開すると、
    -8x-4y+20+15x-10y-55=0
    7x-14y-35=0
    x-2y-5=0

    これが、求める直線です。
    一番上の求め方では、y=1/2x-5/2となりました。
    形が違うだけで、同じ式です。
    確かめましょうか。
    x-2y-5=0 を、yについて解いてみましょう。
    -2y=-x+5
    y=1/2x-5/2
    やはり、同じ式ですね。


    なぜkを用いるのかが理解できたところで、細かい疑問が浮かぶ人もいるかもしれせん。
    k(2x+y-5)+(3x-2y-11)=0
    という式は、なぜ、2x+y-5のほうにkをかけたのか?
    3x-2y-11のほうにkをかけてはいけないのか?

    どちらでも、大丈夫です。
    同じ結果が出ます。
    同じ交点を通る直線の式を表しているのですから。

    でも、不安な人もいるかもしれません。
    試してみましょう。

    k(3x-2y-11)+(2x+y-5)=0 
    これが点(1,-2)を通るから、
    k(3+4-11)+(2-2-5)=0
    -4k-5=0
    -4k=5
    k=-5/4 

    kの値が違うっ、と慌てないで。
    この段階では違う値が出ます。

    このkを、k(3x-2y-11)+(2x+y-5)=0 に代入します。
    -5/4(3x-2y-11)+(2x+y-5)=0
    -5(3x-2y-11)+4(2x+y-5)=0
    -15x+10y+55+8x+4y-20=0
    -7x+14y+35=0
    x-2y-5=0

    無事に、同じ式となりました。
    大丈夫です。
    どちらでも、好きなほうの直線をk倍してください。


      


  • Posted by セギ at 10:51Comments(0)算数・数学

    2020年08月18日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その5。


    さて、今回は、こんな問題です。

    問題 直線y=3xに関して、直線y=x+2と対称な直線の方程式を求めよ。

    前回は、対称の軸である直線1本と、与えられた点から、その直線に関して対称な点の座標を求める問題でした。
    今回は、対称の軸である直線が1本あるのは同じですが、与えられたのは、点ではなく、もう1本の直線です。
    その直線と対称な関係の直線の式を求めるのです。

    これも、グラフを描いて、具体的に考えたほうがわかりやすいでしょう。
    対称の軸は、y=3x。
    そして、もう1本、与えられた直線 y=x+2 も描きましょう。
    前回説明した通り、大体で大丈夫です。
    その直線と対称の関係にある、もう1本の直線も、大体のイメージでよいので描いてみましょう。
    線対称ですので、対称の軸との交点は一致しているでしょう。
    上の画像の、黒い直線が、対称の軸である y=3x。
    青い直線が、与えられた直線 y=x+2。
    赤い直線が、おおよそのイメージで描いた、求めたい直線です。

    どうすれば、この赤い直線の式を求めることができるでしょうか?
    まずは、画像で板書したのとは異なる、基本的な求め方を解説します。

    直線の式は、2点の座標がわかれば求めることができます。
    だから、赤い直線上の2点の座標を求めることが目標となります。

    対称の関係があるので、黒い直線と青い直線との交点を、赤い直線も通ります。
    まずは、その座標を求めましょう。
    y=3x と y=x+2 とを連立すれば、求めることができます。
    3x=x+2
    2x=2
    x=1
    これをy=3xに代入して、
    y=3
    よって、交点の座標は(1,3)。
    赤い直線も、この交点を通ります。

    残る1点は?
    y=x+2 上の任意の点と対称な点の座標を求めたらどうでしょうか?
    y=x+2 上の点であれば、どんな点でもいいのです。
    それと対称な点が、必ず求めたい赤い直線上にあるでしょう。

    どんな点にしましょうか?
    そこで、悩んで、いつまでも答が出ない人がたまにいるのですが、本当にどうでもいいのです。
    xの値を適当に決めましょう。
    今回は、0にしてみましょうか。
    本当に、何でもいいんです。
    x=0のとき、y=0+2=2となります。
    すなわち、点(0,2) は、直線y=x+2上の点です。

    これと対称な点は?
    前回、対称な点の求め方を学習しました。
    今、求めた点をP(0 , 2)とし、求めたい対称な点をQ(p , q)とおきましょう。
    点Pと点Qを結んだ直線PQは、対称の軸y=3xと垂直に交わります。
    すなわち、傾きの積は、-1です。
    (q-2)/(p-0)・3=-1
    これを変形しておきましょう。
    3(q-2)=-p
    3q-6=-p
    p+3q=6 ・・・①

    点P(0 , 2)と点Q(p , q)の中点(p/2 , q+2 /2)は、対称の軸を通りますから、
    y=3x に代入して、
    q+2 /2=3・p/2
    q+2=3p
    -3p+q=-2・・・②

    ①と②を連立すれば、点Q(p , q)の座標を求めることができます。

    ①×3+② 
       3p+9q=18
    +)-3p+ q=-2
        10q=16
    よって、q=8/5
    これを①に代入して、
    p+24/5=30/5
    p=6/5

    よって、Q(6/5,8/5)とわかりました。
    求めたい赤い直線は、点(1,3)、(6/5,8/5)を通ります。
    2点を通る直線を求める公式に代入して、一気に求めることができますが、今、傾きの分母も分子も分数になるので、先に傾きを計算しておきましょうか。
    xの増加量は、6/5-1=1/5
    yの増加量は、8/5-3=-7/5
    よって、傾きは、-7/5÷1/5=-7
    点(1,3)を通り、傾き-7の直線は、
    y-3=-7(x-1)
    y=-7x+7+3
    y=-7x+10

    これが求める直線です。

    学習の順序として、まずこの求め方を理解するのが順当ですが、この単元で少し後に学習する「軌跡」の考え方をこの段階で少し利用するなら、以下のような求め方もあります。
    おそらく、軌跡を学習した後では、むしろその求め方のほうがピンとくると思います。


    もう一度、問題に戻りましょう。

    問題 直線y=3xに関して、直線y=x+2と対称な直線の方程式を求めよ。

    ここで、y=x+2上の点をP(a , b)、それと対称な求める直線上の点をQ(x , y)とします。
    PとQは逆のほうが良かったなあと画像の板書を撮影した後で気づきましたが、まあ、そんなのは大したことではありません。

    この点Q(x , y)の x と y の関係を表す式を求めることができれば、それが求める直線の式となるのです。

    ・・・はあ?

    まだ軌跡を学習していない生徒にこの説明をすると、たいていポカンとした顔をします。
    よく意味がわからない・・・。
    そういう顔です。
    軌跡を学習した後でも、この説明の意味がわからず、だから軌跡に関する問題を解けない子もいます。

    点Q(x , y)は、求めたい直線上の点です。
    直線上(曲線でもそうですが)の点のx座標とy座標には固有の関係があり、その関係を表したものが、その直線の式です。
    1つの直線上のどの点も、x座標とy座標との関係は同じです。
    同じ関係を持っている点の集合が直線ということです。
    その、x座標とy座標との関係を表した式が、その直線の式です。

    この説明が最初にされたのは、中2の「1次関数」の中での、「連立方程式とグラフ」の学習のときです。
    理解できないままで終わる人、理解したような気はするが、どうせ大した内容ではないと忘れ去った人が多いところです。
    しかし、これが理解できないと、関数の応用問題はほとんど解けないのです。
    一番大切なことを、理解していない・・・。
    そのため、関数が作業手順の丸暗記のまま終わってしまうのは、とても残念なことです。

    直線上の点のx座標とy座標には、全てその直線の式の関係があります。
    例えば、y=2x+1 という式なら、その直線上の全ての点のx座標とy座標には、y=2x+1の関係があります。
    逆に、その直線上のある点のx座標とy座標との関係を求めることができれば、それがその直線の式なのです。

    だから、目標は、点Q(x , y)の、x と y の関係を求めることです。

    どうやって?
    x と y に関する式を立てればよいでしよう。

    ・・・いや、だから、それが答で、それがわからないんでしょう?
    そんなツッコミが聞こえてきそうです。

    確かに。
    いきなり x と y との関係を表す式は立てられません。
    でも、点P(a , b)があります。
    a と b と x と y に関する式なら、何か立てられそうな気がしませんか?
    わからない文字が4つある場合、式が3本あれば、x と y だけが残る式を作ることができます。

    まず、一番簡単で、しかし、案外気がつかない人もいるのが、a と b に関する式です。
    点P(a , b) は、与えられた直線 y=x+2 上の点です。
    だから、y=x+2 の関係を満たします。
    すなわち、
    b=a+2 ・・・①
    これで1本。
    あと2本です。

    直線PQは、対称の軸 y=3x と垂直に交わります。
    すなわち、傾きの積は-1です。
    直線PQの傾きは、どう表せるでしょうか。
    座標は、P(a , b)、Q(x , y)ですから、変化の割合の公式に当てはめると、
    y-b / x-a です。
    傾きの積が-1であることを表す式は、
    y-b / x-a ・ 3=-1
    これを変形し、整理しましょう。
    3(y-b)=-(x-a)
    3y-3b=-x+a
    -a-3b=-x-3y
    a+3b=x+3y ・・・②
    これで2本目。
    あと1本です。

    線分PQの中点は、対称の軸y=3x上の点です。
    PQの中点の座標は、(x+a / 2 , y+b / 2)。
    これがy=3xを通るから、
    y+b / 2=3(x+a / 2)
    これを整理します。
    y+b=3(x+a)
    y+b=3x+3a
    -3a+b=3x-y ・・・③

    これで、式が3本たちました。
    この3本の式を上手く組み合わせて、x と y だけの式にすれば、それが答です。

    どうすれば良いか?
    ここでの発想も、慣れるまでは「えっ?」と思う人もいるようです。
    b=a+2 ・・・① の式は、x も y も含んでいないので、一番使い道がないダメな式のようですが、一番の骨格をなす式なのです。
    この式の a と b を、x と y だけで表すことができれば、a と b は消え、x と y だけの式になるのです。
    a を、x と y だけで表す。
    b を、x と y だけで表す。
    そして、①の式に代入する。
    そうした指針で考えていきましょう。

    ①の使い道は最後。
    ならば、②と③だけで、それをやればよいのです。
    a を、x と y だけで表す。
    つまり、b を消去すればよいのです。

    a+3b=x+3y ・・・②
    -3a+b=3x-y ・・・③

    この2本の式で、b を消去します。
    これも中2で学習した、連立方程式が基本です。
    加減法で、消去できますね。
    ②-③×3
        a+3b= x+3y
    -) -9a+3b=9x-3y
      10a  =-8x+6y
         a=-4/5x+3/5y ・・・④

    次に、a を消去した式を作りましょう。
    ②×3+③
       3a+9b=3x+9y
    +) -3a+ b=3x-y
         10b=6x+8y
          b=3/5x+4/5y ・・・⑤

    できました。
    この2本の式を①に代入すれば、a と b を消去した、x と y だけの式ができます。
    ④、⑤を①に代入して、
    3/5x+4/5y=-4/5x+3/5y+2
    3x+4y=-4x+3y+10
    y=-7x+10

    できました。

    ところで、前回までの直線の式に関する問題に関して、ベクトルを用いた解き方をコメントで書いてくださった方がいらっしゃいました。
    数B「ベクトル」を学習すると、直線と方程式や図形と方程式に関する問題も、一般の図形問題も、ものすごく簡単に解くことができるようになります。
    この数Ⅱ「図形と方程式」を学習している段階では、高校2年生は数B「ベクトル」を学習していない場合が多いので、その解説はしないのですが。

    ただ、「ベクトル」を学習しても、こうした座標平面上の問題で楽に使いこなせるようになる人はそんなに多くないかもしれません。
    問題集の解説を読んでも、何にもわからない。
    意味がわからない。
    何を根拠にどう解いているのか、一切わからない。
    そうなってしまうことがあります。

    ベクトルの最初のほうは、中学理科でやった力の向きと大きさみたいなものかな、何だ簡単だと思ったのに、気がついたら、とんでもないことになっている。
    気がついたら、飛躍している。
    ベクトル方程式なんて、定義から理解不能。
    説明を聞いているだけで、死相が表れる。
    そんな高校生もいます。
    使えると、凄いんです。
    上のような、面倒くさい計算過程の必要な問題が、簡素な手順で解けるんです。

    でも、今はまだ、ベクトルは使わずに、地道に解いていきましょう。
     
      


  • Posted by セギ at 11:16Comments(0)算数・数学

    2020年08月13日

    高校数Ⅰ対称式の計算。



    今回は対称式の話。
    対称式とは、文字式で、文字の値を入れ替えても式全体の値が変わらないものをいいます。
    例えば、x2+y2などがそうです。

    対称式の問題は、多くの単元に登場します。
    平方根と対称式。
    三角比と対称式。
    虚数と対称式。
    新しい事柄を学習する度に、それとからめて対称式の値に関する問題を演習します。
    しかし、対称式の問題を苦手とする高校生は多いです。

    対称式の計算は、発展的なテキストでは中学3年から登場します。
    例えば、こんな問題です。

    問題 x+y=3、xy=2であるとき、x2+y2の値を求めよ。

    x2+y2
    =(x+y)2-2xy
    =32-2・2
    =9-4
    =5

    上の式の1行目から2行目への転換がわからないという子は案外多いのです。
    無いものを足して、その後同じものを引いて辻褄を合わせる、その考え方が難しいのだろうと私は思っていました。

    実際、この考え方を利用する2次関数の平方完成でも最初は苦労する子がいます。
    例えば、2次関数 y=x2+4x+7 を、
    y=(x2+4x)+7
    =(x+2)2-4+7
    =(x+2)2+3 
    と平方完成する際にも、最初は何をやっているのか理解できず、かなり補助が必要な子はいます。

    しかし、習得まで時間がかかることはありますが、2次関数の平方完成に関しては最後まで理解できないということは少なく、大抵の高校1年生ができるようになる作業です。
    平方完成に関する練習問題は豊富にあるので、自力でできるようになるまで練習できるから、ということもありますが、それだけでなく、対称式の値に関する問題ほどの激しい抵抗感を示さずに理解するのです。

    この2つは、わかりやすさという点で、何が違うのでしょう?
    不思議です。
    つまずきやすい理由がわかっていれば、事前にそこを強調し、
    「そこに石がある。そこにつまずくから注意して」
    と促していけるのです。
    しかし、教える者からは平らな道に見えるところでつまずく子がいるように感じることがあります。
    平らな道なのにそこでつまずく子が多いことだけは現象としてわかっているのです。
    なぜなのかはわかりません。
    目を凝らしても、つまずく石は見えない。
    教えることの難しさの1つです。

    これは以前、中学3年生に理科を教えたときのこと。
    「塩化銅水溶液が青く見えるのは、あるイオンが原因です。そのイオン名を答えなさい」
    という問題を解いたときのことです。
    正解は銅イオンです。
    その子の誤答は「水素イオン」でした。
    しかし、その子は納得しませんでした。
    「水素イオンじゃないんですか?水素イオンは必ずあるって学校で言われた」
    「・・・・水素イオンは水溶液中にあるけど、青く見える原因ではないですよ」
    「酸性は青いって学校で言われた」
    「うん?どういうこと?」
    「・・・・銅イオンが青いのは、覚えなければならないことですか?」
    「まあ、そうですね」
    「何だよ、いちいち覚えるのかよ。学校では、理科は暗記するなと言われた」
    「・・・・うん?」
    その子の言うことは一言一言の飛躍が激しく、あっという間に怒り出していました。

    彼の中で、いくつかの知識が頭の中で癒着し、妙なつながり方をしているようでした。
    水溶液の中には水素イオンがある。
    水素イオンがあるものは酸性。
    酸性は青い。
    最後の「酸性は青い」が特に謎なのですが、とにかくこの論法でいくと、塩化銅水溶液を青く見せているものの正体は水素イオンということになってしまうのでした。
    この誤解を解くのはかなり大変でした。

    「わからない」というのは、論理を追えないことではないのかもしれません。
    少し複雑な論理だから途中で迷子になっているのだろうとこちらは思い、ゆっくり説明したり繰り返したりしても、生徒の理解が進まないときがあります。
    「どこからわからない?」と質問します。
    板書の1行ずつを示しながら、あるいは、論理を細かく段階に区切りながら、「ここまではわかる?」と確認しようとします。
    どこからわからないのか、どこから説明すればいいのか。
    しかし、こうした指示に反応してくれず、生徒が何か別のことをずっと言い続けることがあります。
    論理の癒着がその子の中で起きている場合に、そうなることが多いようです。
    他人にはその論理は追えません。
    でも、その子は論理的なことのつもりで話しているので、私が怪訝な顔をすればするほど、むしろ私を説得しようとします。


    対称式の問題でも、ある日、そんなことが起こりました。

    問題 x+y=3、xy=2のとき、x2+y2の値を求めよ。

    x2+y2
    =(x+y)2-2xy
    =32-2・2
    =9-4
    =5

    「それ、最初に入れたらダメ?」
    この問題を解説していたとき、そう質問されたのです。
    最初に入れる・・・・?
    「最初に入れるって、どういうこと?」
    「最初に2乗したらだめ?」
    「うん?どういうこと?式を言ってみて」
    具体的な式を言ってくれれば、最初に入れる、最初に2乗するとは何をすることなのか、わかるかもしれません。
    しかし、それには答えてくれず、何かをずっと説明しているのですが、よく意味がわからないのです。

    授業はここで膠着するか?
    でも、この件に関して、以前に、私は大人のための教室で、重要なヒントを得ていました。

    x2+y2
    =(x+y)2
    =32
    =9

    私はそう板書して、その子に問いかけました。
    「こういうこと?」
    その子の顔がパッと輝きました。
    「そう!そういうこと」
    「・・・うーん。これは間違っています。どこが間違っているか、わかりますか?」
    「えっ?」

    その子は、何を誤解していたのか?
    x2+y2=(x+y)2
    だと思っていたのです。
    x2+y2
    =(x+y)2
    =32
    =9
    と、最初に数字を入れて2乗すれば済むことなのに、なんでまわりくどい計算をしなければならないのかと、それを訴えていたのでした。

    x2+2xy+y2=(x+y)2 です。
    因数分解の公式ですから、当然わかっている内容です。
    それでも、万が一忘れているといけないので、それは赤字で板書もしていました。
    しかし、当人は、x2+y2=(x+y)2 
    だと思いこんでいたのです。
    人は、思いこみが強いとき、それを否定する情報が目の前にあっても無視するそうです。
    確証バイアスと呼ばれる状態です。
    x2+y2=(x+y)2 
    とすれば済むことを、なぜまわりくどい変な解き方をしなければならないのかと不思議に思い、正しい解き方が理解できなかったのでした。

    x2+2xy+y2=(x+y)2
    という因数分解の公式は知っているのです。
    しかし、同時に、
    x2+y2=(x+y)2
    だとも思っている。
    知識が二重構造になっていて、上の2つのことが頭の中に同時に存在しています。
    それはそれ、これはこれ、として存在しているのです。
    乗法公式を学習する前、例えば文字式を学習し始めたばかりの中学1年生に解かせたら、
    (x+y)2=x2+y2
    としてしまうと思います。
    そうしてしまう感覚が、乗法公式を学習した後も残ってしまうのだと思います。

    (x+y)2=x2+y2 ではありません。
    数字を代入してみるとわかります。
    (3+2)2=52=25 です。
    32+22=9+4=13 
    とは異なります。
    しかし、そう説明しても、
    それは、最初に(  )の中の3と2を足してしまうからそうなるので、別々に計算すれば、違う結果になるのでは?
    そのような主張を聞いたこともあります。

    ルールに従っている限り、どこからやっても同じ結果になる。
    それが数理の根本です。

    いや、そうではないことがあった気がする。
    自分はそうではなかった場合を経験している。
    変だなあと思ったけれど、まあ仕方ないと諦めた気がする。
    数学に対して、こうした根本の不安定さや不信感がある子は、案外多いのだと思います。
    原因は本人の計算ミスだろうと想像できるのですが、本人の実感としては、ちゃんと計算したのにそうなったのだ、という記憶が濃いようです。

    このことは、大人のための数学教室で私が教わったことでした。
    大人のための数学教室では、2次式ではなく、
    x3+y3=(x+y)3
    という思い込みがもとで、3次式の解と係数の関係に関する問題が理解できない場面があり、長いやりとりの末、この誤解が発見されました。
    そうではないことも知っている。
    しかし、そうだとも思っている。
    あるいは、そのときだけふっとそう思ってしまう。
    そのときだけは、そう思い込んでしまっていた。
    そういうことが数学への理解を妨げ、不信感を募らせるようです。

    しかし、2次関数の平方完成では、そのような誤解が顔を出しません。
    x2+6x+7
    =(x+3)2-9+7
    =(x+3)2-2
    という作業は誰でも比較的すんなりと理解できるのです。
    xと数字なら大丈夫だが、xとyだと誤解が顔を出す。
    同じことなのですが、違うように見えるようです。

    xと数字なら、xが主体で、数字は添え物的な見方になるが、xとyだと、対等の印象があり、見え方がまた違ってくるのでしょうか。
    そうした見え方の偏りも、数学のわかりにくさの正体なのかもしれません。

    x2+y2
    =(x+y)2-2xy

    この解き方の理解を妨げるものの正体。

    それは、この解き方の難しさにあるのではなく、本人が何か間違った思い込みをしているため、正しい理解が妨げられている。
    つまり、間違った思い込みが解消されれば、この問題は解けるようになるのです。

    難しいから、わからないのかなあ・・・・。
    教える側が勝手にそう思い込んで諦めてしまうことの多くの中に、こうした単純な障壁さえ取り除けば簡単に理解できることがあるのかもしれません。



      


  • Posted by セギ at 08:41Comments(0)算数・数学

    2020年08月09日

    中学数学1年。文字式のルールを理解していますか。


    中1の生徒と「文字式」の予習をしていて、不思議な誤答に出会うようになりました。

    例えば、a+3a=3a2 としてしまうのです。

    「・・・えーと、何でそこをかけ算したの?」
    「・・・」

    「文字式」は、中1で、「正負の数」の次に学習する単元です。
    学習の冒頭で、3×a=3a と表すといった、乗法の記号の省略を学びます。
    そのせいで、全てかけ算に見えてしまうようになったのかもしれません。
    a+3a が、a×(+3a)と見えているのだと思います。

    「正負の数」を学習する際、加法の+の記号の省略を学びます。
    (+3)+(+7)=+10 といちいち書かず、
    3+7=10 と書く。
    (+3)+(-7) は、
    3-7 と、書きます。

    そして、次の「文字式」という単元で、今度は×の記号の省略を学びます。
    しかし、省略せよといいながら、教科書でも参考書でも、説明のために再び丁寧に書いてあることも多いです。
    それで、混乱する子もいるのかもしれません。
    結局、そのときどきの都合で、省略されたりされなかったりしているから、わからなくなっていくのでしょうか。

    問題 a×(-7) を×の記号を使わないで表しなさい。
    こういう問題を、a-7 と誤答してしまうのを見ることもあります。
    本人の中では、a-7=a×(-7) なのでしょう。
    このミスと、a+3a=3a2 とは同じ根をもつものだと感じます。


    式の中の、1つ1つの項を把握できていないのでしょうか?
    ただ、以下のような問題は正答できるのです。

    問題 以下の式の項を答えなさい。
    -3+7-8

    項は、-3、+7、-8
    完璧に正答できます。
    文字式の場合も同様です。

    3a2-2a-1の項を答えなさい。

    3a2、-2a、-1。

    問題なく正解できるのです。
    そして、そのことと、a+3a=3a2 が、普通に同居しているのです。

    1つ1つの項が見えるようになれば、「正負の数」も「文字式」も、問題なく計算できるようになっていく。
    そう思ってきました。
    しかし、各項が把握できるようになり、a+3aは、aという項と、+3aという項なのだと見えているから、むしろ、それをかけ算してしまう・・・。
    昔は見られなかったミスです。
    今年になって、初めて、このようなミスを見るようになりました。
    しかも、複数の生徒が同時多発的に同じミスをしています。
    a+3a のように見るからに「たし算」であるものを「かけ算」することなど、昔は誰も発想しませんでした。
    新しい数学の学習は、誤解されやすい何か危険なものをはらんでいるのでしょうか。


    今年は、学習が後れている分、じっくりと数学を学べているのではないか?
    そのように思っていたのですが、むしろ、
    (+3)+(+7)=+10
    といった、書かなくてもいい符号をわざわざ書いている式を長期間見ることになった中1が多いです。
    そのことも影響しているのかもしれません。
    気がつくと、2月頃から予習を初めて、もう半年も「正負の数」をやっている・・・。
    (+3)×(+7)=+21
    なんていう式を、気がつくと半年も見ています・・・。
    それをさらにくどくどと記述させる問題がテストに出るので、省略できる符号は必ず省略した式を書いていくことを徹底できません。
    省略できる符号は、必ず省略して書く。
    絶対に省略できない符号は、必ず書く。
    「正負の数」の学習が終わった段階で、そうなっているのが目標ですが、いつまでもいつまでも「正負の数」の学習の途中です。
    同時に「文字式」の予習も行っています。
    そのせいで、a+3a の+の符号は、絶対に省略できないから書いてあるのだということが、理解できなくなっているということもあるのかもしれません。

    a+3aは、a+(+3a) と、a×(+3a) と、両方の可能性があると思っている・・・。

    結局、一度でスッキリする説明はなかなかうまくできず、多くの問題を解きながら、それは違う、それは正解、と実践を踏んで、その子の頭の中に正しい概念が作られていくのを待つしかないようです。

    ただ、光も見えています。

    数と文字とをかけるときは、数から先に書く。
    例 a×(-7)=-7a

    こうした細則は、わかりにくいようで、実はすべての例外を排除していくために設けられたルールです。

    「数と文字とをかけるときは、数から先に書くのが文字式のルールでしたよね。 a×(-7) は、-7a と書きます。 a-7という書き方はしません。a-7のときは、(+a)+(-7)という意味です。そして、a+3aは、(+a)+(+3a)という意味です」
    と説明すると、一瞬霧が晴れたような顔になることがあります。

    細則にてらして説明すると、理解してくれるようなのです。
    それは一瞬のことで、また混乱が始まったりもするのですが。

      


  • Posted by セギ at 15:53Comments(0)算数・数学

    2020年07月30日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その4。




    問題 直線 y=2x+1に関して、点A(3,2)と対称な点Bの座標を求めよ。

    さて、応用問題に入ってきました。

    解き方がすぐにピンときたなら必要ありませんが、わからないときは、グラフを描いて考えるのが得策です。
    グラフを描くのが苦手で、時間がかかり、かつ間違ったグラフを描いてしまいがちな人もいると思います。
    しかし、そこでひるんでグラフを描くのをやめてしまうと、この先の問題を自力で解くのはかなり難しくなります。
    グラフは描き慣れれば速く描けるようになりますし、正しく描けるようにもなります。
    練習あるのみです。

    高校生がグラフを描くのを見たとき、これまでで一番驚いたのは、普通の横罫線のノートに、定規で x 軸と y 軸を引いてから、そこに5ミリおきに目盛りを書き込み、それから、これまた定規を使って直線を引いた子を見たときです。
    「高校生は、グラフはフリーハンドで描きましょう。センター試験では、定規の使用は禁止されています。学校のテストも、定規は使用できないでしょう?」
    と声をかけると、それは知っていて、石のように固い表情になりました。
    フリーハンドでは上手く描けない。
    見た目が汚い。
    だから、自分のノートでは定規を使いたいというのです。

    不器用でありながら、潔癖。
    テストのときは定規を使ってはいけないと知っているが、自分のノートくらいはきれいに描きたい。
    そういう思いが強いようでした。
    「問題を解くための参考にするだけのグラフをそんなに丁寧に描いたら、1題解くのに30分くらいかかりませんか」
    そう声をかけても、固い表情のままでした。
    「テストのときには定規を使えないんですから、普段から使わない練習をしていないと、テストのときに余計な心の負担や緊張が生まれませんか」
    そう説得しても、ダメでした。

    しかし、しばらくして、同じ単元を復習したときに、グラフをフリーハンドで描くようになっていました。
    どういう気持ちの変化があったのかは、わかりません。
    学校で何か言われたか。
    友達から助言されたか。


    中学までは、直線のグラフは、方眼紙に定規を使って描きます。
    格子点から1ミリずれていたら、減点、あるいはバツといった厳しい採点基準があります。
    あれも、鬱陶しい話です。
    定規を格子点の真上に当ててしまう子は、そのまま直線を引いてしまい、必ずズレます。
    ペンの幅というものを考えていないのです。
    置き方が適当だと、さらにズレます。
    そういう子たちには、定規の使い方の指導をする必要があります。

    小学校では、筆算のときに引く横線は定規を使え、分数の横線も定規を使え、と訳のわからない要求をする先生もいるようです。
    首を傾げざるを得ない指導ですが、そういう指導をしないと、ぐにゃぐにゃと曲がった線を描き、筆算がどんどん斜めになっていき、計算ミスをしてしまう子がいるのも事実。
    そのための指導なのだとは思います。
    定規ばっかり使っているから、いつまでもきれいな直線が引けないのだ、とも言えますが。
    三鷹の学校の先生でそういう人がいるという話を聞いたことがないのは幸いですが、以前、筆算の横線に必ず定規を使う小学生の女の子に出会ったことはあります。
    まだ小学生なので、使いたいものは使えばいいやとほおっておいたら、そのうち使わなくなりました。


    なぜ高校数学では、グラフは定規を使わずに描くのか?
    正確な理由はわかりません。
    あまり勉強が得意ではない生徒の通う高校の数Ⅰの宿題プリントが方眼紙だったのを見たこともあります。
    そこに定規でグラフを描く宿題でした。
    方眼紙と定規を使わないとグラフを描けない子もいる。
    それも事実だろうと思います。

    ただ、放物線は、定規では描けません。
    この先の数Ⅱで学習するその他の曲線になったらもっとそうです。
    問題を解くのに特に必要としない正確さや手間を省くには、フリーハンドで目盛なしのグラフを描くのが便利です。
    曲線はフリーハンドなのに、一緒に描く直線だけ定規というのも、変に直線だけ目立って不格好です。
    全部フリーハンドでいいんじゃないんでしょうか。

    大体でいいのが、フリーハンドの利点です。
    この図は大体の図です。
    概念図です。
    フリーハンドは、そういう合図なのだと思います。


    なぜ高校数学では、グラフは定規を使わずに描くのか?
    ネットで少し調べてみましたが、
    「グラフは定規を使わずに描くものだ」
    「直線や円くらいはフリーハンドで正確に描け」
    といった上から目線の書き方のものが多く、うわー、数学好きの悪いところ丸出しだなあと、恥ずかしくなってしまいました。
    理屈を好むわりに、自分が確信している大元のところを問われると、高圧的になる。
    ダメダメ、そういうのは。

    いずれ、パソコンやタブレットで問題を解くのが常態になれば、フリーハンドで直線を引くことそのものがありえない時代もくるかもしれません。
    共通テスト試行試験では、太郎と花子がパソコンソフトで放物線を動かしている問題が出題されました。
    今は、そういう時代です。
    2点を決定すれば、画面に直線が描かれます。
    中心と半径を決定すれば、画面に円が描かれます。
    そうした時代に、フリーハンドで直線や円を正確に描くことは、なお要求される能力なのかどうか。
    要求されるかもしれない。
    要求されないかもしれない。
    そうしたことを改めて考えてもよいのではないかと思います。

    しかし、現状、高校の数学のテストで定規の使用は許されていません。
    テストは、パソコン画面ではなく、紙で行われます。
    定規を使わずにグラフを描く練習は必要です。
    その辺は現実的な対応をしましょう。

    問題に戻りましょう。

    問題 直線 y=2x+1に関して、点A(3,2)と対称な点Bの座標を求めよ。

    グラフを描きましょう。
    x軸とy軸をまず描きます。
    目盛は入れません。
    そこに、y切片が1で、右上がりの直線をささっと描きます。
    適当でいいんです。
    その座標平面に、点A(3,2)を打ち込みます。
    パッと感覚的に、この点は直線の右下にあるなとわかればそれでよいのです。
    わからなければ、計算します。
    この直線上で、x=3のとき、y=5です。
    (3,2)は、(3,5)より下の位置にあります。
    これも、神経質な人は、正確に(3,2)の点を打とうとして、グラフとのバランスが取れず、ああ、グラフが間違っていたんだと癇癪を起こしたように全部消して最初からやり直したりする人がいます。
    (3,2)は、座標平面の第1象限に入っていれば、大丈夫です。
    ちょっと歪んでいるのは、心の目で補正しましょう。
    それも耐えられないなら、x軸、y軸を描くのを止めるという手もあります。
    右上がりの直線だけを描く。
    それでも大丈夫です。

    次に、この点Aと対称な点Bを大体のイメージで良いですから、座標平面上に打ち込んでみます。
    「線対称」は、小学6年生で最初に学習する内容です。
    線対称というのは、どういう性質があったでしょうか?
    線対称のとき、対応する点と点とを結ぶ線分は、対称の軸と垂直に交わる。
    線対称のとき、対応する点と対称の軸との距離は等しい。

    6年生の段階で、はっきりとこれらのことを学んでいるのですが、忘れている人も多いと思います。
    このことを利用し、
    「図の中で、垂直に交わっている直線はどれとどれですか?」
    「図の中で長さの等しい線分はどれとどれですか?
    といった問題を解いたはずですが、個々の問題の解き方だけ覚え、根本のルールは記憶から消えている人もいるかもしれません。

    小学生のときも、中学1年でも、まるでドリルのように繰り返し解いた問題。
    そこで終わってしまうので、小6や中1の頃は、
    「だから何なの?当たり前じゃん」
    という印象だった問題。
    いよいよ、この知識が結実するのです。
    繰り返し解いたドリルのような問題は、根本のルールを理解し、脳の奥深くに浸透させ、やがて高校数学で使うためにあったのです。

    求めたい点Bの座標を(p,q)としましょう。
    このpとqの値を求めれば良いわけです。
    直線ABの傾きは、q-2/p-3 と表されます。
    直線の傾きは、変化の割合と等しく、yの増加量/xの増加量 だからです。
    この直線ABは、対称の軸である、y=2x+1 と垂直に交わりますから、傾きの積は-1です。
    よって、2・q-2/p-3=-1
    これを変形して、pとqの関係を表す式を1本導いておきましょう。
    両辺に p-3 をかけて、
    2(q-2)=-(p-3)
    2q-4=-p+3
    p+2q=7 ・・・①

    pとqの値を求めるには、もう1本、pとqに関する式があれば良いです。
    線対称の性質には、もう1つ、対称の点から対称の軸までの距離は等しいというものがありました。
    言い換えれば、2点の中点は対称の軸上にあります。
    点A(3,2)と点B(p,q)の中点の座標は、(p+3 /2,q+2 /2)。
    これは対称の軸上の点ですから、このx座標とy座標は、y=2x+1 の関係を満たします。
    よって、
    q+2 / 2=2(p+3 / 2)+1
    これを整理すると、
    q+2 / 2=p+3+1
    q+2=2p+8
    -2p+q=6 ・・・②

    この①、②を連立して解くと、
    p=-1、q=4
    よって点Bの座標は(-1,4) です。


    応用問題とはいえ、まだ易しい。
    そんなに複雑な問題ではないはずなのですが、この問題、以前、大人のための数学教室で解いたときは、かなり難渋しました。
    解説を終えて、
    「質問はありますか」
    と問いかけたところ、
    「何をやっているのか全くわからない」
    という感想を参加者の方が口にしたのです。

    何をやっているのか、全くわからない?
    え?
    何で?

    後になって振り返ると、分岐点は、①の式を作るときにありました。
    垂直に交わるのだから、傾きの積は-1になりますよね?
    と、
    q-2 / p-3 ・2=-1
    という式を板書したときに、質問があったのです。
    「それ、直線ABの傾きは、-1/2 である、という式にしていいですか?」
    つまり、q-2 / p-3 =-1/2 という式にしたいと言うのです。
    私は、内心、何でわざわざそうするのだろう?
    と微かな違和感を抱きました。

    なぜ、そんなアレンジをするのか?
    これから式を整理するのだから、わざわざ直線ABの傾きは-1/2であることを暗算した上での式など立てなくても良いのだが?

    しかし、参加者の方が書きたいと言った式は、間違った式ではありません。
    その式にして良いかと問われて、ダメという理由はないのです。
    「あ。いいですよ」
    と、私は軽く受け流したのですが、後から考えれば、ここが分岐点だったのです。

    どういうことだったのか?
    参加者の方は、そのとき、p、qに関する式を作ろうとしていたのではなく、直線ABの式を求めようとしていたのです。
    直線ABの式を求めようとしているのに、解説がその方向にいかず、pとqの式を整理したりしている。
    何のために何をやっているのか、全くわからない・・・。

    その誤解がようやく解けてから、私は、参加者に尋ねました。
    「何で直線ABの式を求めようと思ったんですか?」
    「今まで、ずっと直線の式を求めていたから」
    「・・・・なるほど」

    この問題は、点Bの座標を求める問題です。
    B(p,q) と定めたら、後は p と q に関する式を2本作って連立方程式にすればいい、という解き方の流れが、私には見えていました。
    しかし、教わる側は、その流れが見えていなかったのです。

    解説はしたつもりでした。
    点B(p,q) としましょう。
    この p と q の値を求めれば良いですよね?と。

    しかし、初めて見る問題の解説を聞きながらノートも取るという状態では、解説のなかの何が重要で、どれがキーワードであるのかの判断を誤ることがあるのだと思います。

    大人のための教室は、このようにいつも示唆的でした。
    数学の問題を解説していて、これは誤解の余地などないはずだと私が思っていることも、誤解の余地はあるのだということを教えてもらいました。
    数学が苦手な子どもの多くは、何がわからないのかを語る言葉を持ちません。
    日常会話ではおしゃべりな子も、論理的なことを正確に語るのは難しいことも多いです。
    「どこがわからない?」
    という質問は、その字面通りの質問なのですが、どんなに柔らかい口調で尋ねてもなお、
    「なんでこれがわからないんだ?」
    と責められているように感じることがあるようです。
    もともと言葉で説明するのが苦手な子どもが、さらに責められていると感じたら、黙り込んでしまうのも当然なのかもしれません。

    板書を1行ずつ指差しながら、
    「ここはわかる?ここはわかる?何行目がわからない?」
    と、私は、わからなくなっている行を明確にしようとするのですが、こちらのそういう意図を理解してくれず、黙り込んでしまう子もいます。
    「まあ、いいや。次いこう、次」
    と、勝手に諦める子もいます。

    生徒がどこでつまずいているのかを知りたい。
    何がわからないのかを知りたい。
    何を誤解しているのかを知りたい。
    それがわかれば、解決策はある・・・。



    直線の式に関するさまざまな公式など、直線の式を求めることをずっとやっていると、応用問題でも、絶対に直線の式を求めるものだと思い込んでしまう・・・。

    わからない原因が、そんなところにあったとは。

    板書に書いてあること・テキストに書いてあることと、何か少しでも違うことを生徒がやろうとしているとき、生徒の頭の中で何か異変が起きている可能性を考えること。
    微かな違和感を大切にすること。
    それを改めて感じた出来事でした。

    ところで、上の問題ですが、では、直線の式を求めてはいけないのか?
    いえ、いけないことはありません。
    そうやって解く方法もありえます。

    もう一度問題に戻って考えてみましょう。

    問題 直線y=2x+1に関して、点A(3,2)と対称な点Bの座標を求めよ。

    線対称の性質から、直線y=2x+1と直線ABとは垂直に交わります。
    それを利用して、直線ABの式を求めてみましょう。
    傾きは-1/2で、点A(3,2)を通る直線ですから、公式に代入して、
    y-2=-1/2(x-3)
    これを整理して、
    y=-1/2x+3/2+2
    y=-1/2x+7/2
    次に、直線ABと、y=2x+1の交点を求めましょう。
    2本の式を連立して、
    -1/2x+7/2=2x+1
    これをxについて解きます。
    -x+7=4x+2
    -5x=-5
    x=1
    これをy=2x+1に代入して、
    y=2・1+1
     =3
    よって、2本の直線の交点の座標は、(1,3)。

    さて、ここからどうするか?
    点Aとこの交点との距離は、この交点と点Bとの距離と等しいです。
    すなわち、点Aからこの交点への移動は、この交点から点Bへの移動と等しくなります。
    点A(3,2)から交点(1,3)へは、x軸方向に-2、y軸方向に1だけ移動しています。
    よって、交点の座標を同じだけ移動させると、
    x座標は、1-2=-1。
    y座標は、3+1=4。
    よって、点B(-1,4)

    あれ?
    この解き方のほうがわかりやすいし、解きやすい。
    そう思うでしょうか?

    いいえ。
    必要のない直線の式をわざわざ求める、遠回りな解き方です。
    また、この解き方は、中点の座標が分数になったりすると、計算がかなり面倒くさくなりそうです。
    さらに、今後のさらなる応用問題の解き方とのつながりがありません。

    けれど、直線の式を求めることしか発想できないならば、とにかく直線の式を求めて、そこからその先を考える。
    そういう試行錯誤が見られるという意味で、高校生が自力でこのように発想して解いたのなら素晴らしいと思います。
    数学の応用問題を解けるようになるには、自力で問題を解いた経験を増やしていくことが何よりの糧になります。
    いつも解答解説を見て解いている人が、テストのときだけ自力で問題を解くのは不可能です。
    自力で解法を発見することが大切です。

    けれど、それはそれとして、模範解答を読み、その解き方の良さに気づき、取り入れるとさらに力がつきます。
    特に、ABの中点の座標が直線を通ることを用いる解き方は、汎用性があります。
    この先の学習のために身につけておきたい解き方です。

    高校3年生には、同じ入試問題を解くのでも、どう解けば時間を短縮できるのか、どの解き方が計算ミスが少なく楽なのかという方針で授業を進めるようになります。
    基礎学力はあるので、普通の解き方ならもう説明は不要な子には、どうブラッシュアップしていくかがその先の課題です。

    例えば、反復試行の確率と条件付き確率の混合問題などで、
    「私もこれを自分で解いたとき、うっかり数値をそのまま代入しちゃって、計算がウザくてウザくて大変だったんだけど、ここは数値をいったん文字にして式を整理すると、すぐにスッキリするよね」
    といった解説をすると、
    「ははあー。文明開化の音がしますね」
    といった反応がある子には、手応えを感じます。
    解き方は1つではない。
    より洗練された解き方は、どういうものか?
    それを模索していくのも、数学の楽しみの1つだと思います。


      


  • Posted by セギ at 13:44Comments(0)算数・数学

    2020年07月23日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その3


    高校数Ⅱ「図形と方程式」の学習の続きです。
    前回学習した、直線の方程式に関する公式は次のものでした。

    傾きがmで、点(x1,y1)を通る直線の方程式は、
    y-y1=m(x-x1)

    また、2点(x1,y1)、(x2,y2)を通る直線の方程式は、
    y-y1=y2-y1/x2-x1 (x-x1)

    平行な2直線は、傾きが等しい。
    垂直な2直線は、傾きの積が-1。

    今回は、それの応用編です。

    問題 直線2x+y+2=0 に平行で、点(1,2)を通る直線の式を求めよ。

    まず与えられた式を、y=・・・・の形に直して傾きを求め、その上で、点(1,2)を代入して解くという方法を思いつけたら、それはそれでよいのです。
    ただ、これを瞬時に解く公式もあります。

    点(x1,y1)を通り、直線 ax+by+c=0 に平行な直線の方程式は、
    a(x-x1)+b(y-y1)=0 です。

    ax+by+c=0 という式の形に最初は戸惑う人もいるかもしれません。
    中学時代は、直線の式は、y=・・・・の形でなければダメと言われましたが、高校では、右辺が0になる式も用います。
    この後、この形のほうが利用しやすい別の事柄があるからなのです。
    a、b、cは具体的な数字が入ります。
    上の公式は、ax+by+c=0 をy=・・・に変形してみれば理解できます。
    ax+by+c=0
    by=-ax-c
    y=-a/b・x-c/b
    よって、この直線の傾きは、-a/b です。
    前回学習した公式を利用すると、傾きが-a/bで、点(x1,y1)を通る直線は、
    y-y1=-a/b(x-x1)
    両辺をb倍して、
    b(y-y1)=-a(x-x1)
    左辺に移項して、
    a(x-x1)+b(y-y1)=0
    これが、上の公式です。

    この公式を用いると、上の問題は瞬時に解けます。
    直線2x+y+2=0に平行で、点(1,2)を通る直線だから、
    2(x-1)+(y-2)=0
    このまま答えとするのではなく、整理します。
    2x-2+y-2=0
    2x+y-4=0
    これが上の問題の解答です。

    この公式とセットで覚えるとお得な公式は、

    直線ax+by+c=0に垂直で、点(x1,y1)を通る直線は、
    b(x-x1)-a(y-y1)=0

    この公式も、上のような変形の仕方で導くことができます。興味がありましたら、上と同じようにしてやってみてください。
    これらの公式は覚えにくいです。
    別にこんな公式を覚えなくても、まず傾きを求める解き方でも解けます。
    ただ、困るのは、この先、問題集の解説で、この公式を当然のように使い、特に説明も加えていないものがあることです。
    何で急にこんな式が立っているのか、わからない・・・。
    そうならないために、こういう公式もあると頭の隅に置いておきましょう。
    自分では使わなくても良いので、問題集の解説を読んで意味がわからなかったとき、
    「あれ?あの公式を使っているのかな?」
    と考えることができれば、学習が先に進みます。

    こうした公式のメリットは、問題を解く時間を短縮できることです。
    直線の式1本求めるのに、まず傾きを求める解き方では、2分~3分かかります。
    この公式を使えば、30秒もかからないのです。
    逆に言えば、それ以外には特にメリットはないので、どうしても覚えられなかったら、覚えなくても大丈夫です。

    高校生としては、このあたりの内容でどうしても覚えてほしいのは、冒頭に書いた4つの内容。
    これらは使う機会が多いので、いちいち中学生の解き方で時間をかけていると、テストでは時間が足りなくなります。
    それ以上の公式は、使う機会も限られているので、本人の覚える力に応じてで構わないと思います。


    問題 直線ax-6y-5=0が直線2x-3y+6=0に平行であるとき、定数aの値を求めよ。

    これも、傾きを求めれば解ける問題です。
    それぞれの直線を、y=・・・・の形に変形し、傾きを比較すれば、定数aを求めることができます。
    やってみましょう。

    ax-6y-5=0より
    -6y=-ax+5
    y=a/6x-5/6
    よって、この直線の傾きはa/6です。
    2x-3y+6=0
    -3y=-2x-6
    y=2/3y+2
    よって、この直線の傾きは2/3です。
    この2直線は平行なので、傾きは等しいですから、
    a/6=2/3
    a=2/3 ×6
    a=4

    これにも、公式があります。

    2直線a1x+b1y+c1=0、 a2x+b2y+c2=0 が、
    平行なとき、a1b2-a2b1=0
    垂直なとき、a1a2+b1b2=0

    上の問題にこの公式を用いると、
    a・(-3)-2(-6)=0
    -3a+12=0
    -3a=-12
    a=4

    与式をいちいちy=・・・の形に変形せずにすぐに式を立てることができます。
    覚える余力のある人は、覚えておくと良い公式です。

    なぜこの公式が成り立つのか、考えてみましょう。
    直線a1x+b1y+c1=0 の傾きを求めましょう。
    b1y=-a1-c1
    y=-a1/b1-c1/b1
    よって、傾きは、-a1/b1
    また、a2x+b2y+c2=0 は、
    b2y=-a2x-c2
    y=-a2/b2-c2/b2
    よって、傾きは、-a2/b2

    この2直線が平行なとき、傾きは等しいので、
    -a1/b1=-a2/b2
    a1/b1=a2/b2
    両辺に b1b2 をかけて、
    a1b2=a2b1
    a1b2-a2b1=0
    となります。
    この2直線が垂直なとき、傾きの積は-1ですから、
    -a1/b1・-a2/b2=-1
    両辺に b1b2 をかけて、
    a1a2=-b1b2
    a1a2+b1b2=0
    となります。


      


  • Posted by セギ at 18:17Comments(1)算数・数学

    2020年07月17日

    アクティブラーニング時代の定期テスト。


    さて、中学校の定期テストがそろそろ返却され始めていますが、予想通り、新傾向の問題に苦戦している様子が見られます。
    中学の新学習指導要領施行は来年度からですが、既に移行期間に入り、昨年度あたりから、思考力や記述力を試す新傾向の問題が増えてきています。
    さらにその傾向が目立ってきたのが今回のテストでしたが、作る側も解く側も、まだ不慣れで、多少疑問な点もあるのが実情です。

    例えば、こんな問題。

    問題 +5mが、海面から5m高いことを表しているとき、-5mは、海面からどのようであることを表すか。

    正解 海面から5m低い。


    これは、問題の大筋としては新傾向でも何でもないのですが、疑問だったのは、「5m低い」と書いただけでは、バツという採点基準だったこと。
    △ではなく、バツでした。

    勿論、「海面から」という基準を示すことは大切なことなのですが、それを必ず書くよう解答者に促すのなら、問題文の書き方がちょっと違うと思うのです。
    「海面からどのようであることを表すか」と設問の中で既に「海面から」と書いてしまっている場合、解答はそれを省略してよいのです。
    国語の記述問題では許容されていることです。
    「海面から」と必ず生徒が書かねばならないように問題を作るならば、

    問題 +5mが、海面から5m高いことを表しているとき、-5mは、何を表しているか。

    とするべきです。
    そうした問題文の作り方の基本が守られていないので、解答者に無理な要求をする結果となっています。
    この場合、「5m低い」も正解とするべき案件です。

    こういうのは、問題を作る数学の先生が、記述式の問題を作ることにまだ慣れていないことが原因のミスでしょう。
    数学の先生も、国語の記述問題に多く触れて、記述式問題の作法を学んだほうがいいかもしれません。
    大変な時代になりました。

    入試などなら、「5m低い」と書いた人全員が正答とされるでしょう。



    問題 (-15)-(-10) を、加法として計算する式に改めなさい。

    これは、比較的わかりやすい問題と感じました。
    (-15)-(-10)
    =(-15)+(+10)

    とすればよいのだとわかるのですが、ここでも採点基準に問題が生じました。

    (-15)-(-10)
    =-15+10

    とした生徒は、バツ。
    △ですらなく、バツ。
    うーん・・・?

    ( )を外してはいけないなんて、問題に書いてないですよね?
    だったら、別に、-15+10でも、十分に加法に直していますよね?
    え?
    このテストは、アルバイトが採点しているの?
    だんだんと、不安になってきました。
    結局、こういうことがあるから、大学入試共通テストで記述問題が出題されないことになったんです。
    画一的な採点基準で採点すると、理解している子が得点できない変な結果になることがあるのです。

    ただ、私がこの問題を解くのなら、
    (-15)-(-10)
    =(-15)+(+10)
    という模範解答通りの答案を書くとは思います。
    相手の出題意図がわかりますから、いやというほどその意図に沿って、「私は、わかってまーす」とアピールする答案を作成します。
    そういう点では、私はあざといので。
    しかし、実際にこれを解くのは中1ですから、そういうのはまだわからないと思います。
    小学校のカラーテストしか経験したことのない子たちですから。


    問題 -15+6-10+20 を、-15、+6、-10、+20とそれぞれを項と見て計算するのは、どのような良い点があるか。数学的な用語を用いて説明しなさい。

    一番の難問はこれでした。
    「え?どういうこと?」とペンが止まった子が大多数ではないかと思います。

    模範解答は、こんな感じでしょう。

    それぞれを項とし、この式を各項の加法と見るなら、
    -15+6-10+20
    は、交換法則を用いて、
    =-15-10+6+20
    となり、さらに、結合法則を用いて、
    =(-15-10)+(+6+20)
    =-25+26
    と、同符号の計算を先に行うことで、
    =1
    と計算することができる。

    「良い点」とはそれであり、使うべき数学用語は、「交換法則」と「結合法則」です。
    数字と数字の間にある「+」「-」を、「たし算」「ひき算」の意味でとらえるのではなく、-15、-10、+6、+20と、個々の数についている+・-の符号であるととらえることは、算数から数学への大転換の根幹をなすことの1つです。
    これによって、「ひき算」は存在しなくなり、各項の加法と見て計算するようになります。
    加法なので、交換法則も結合法則も利用できます。
    これは、とても重要なことです。

    こういう出題は、しかし、中学生の立場からすると、どうなんだろうなあと思わないでもありません。

    こういう記述問題が全く解けない子には、大きく2つのタイプがあると思います。
    まずは、根本的に数学が苦手な子の場合です。

    -15+6-10+20
    =-15-10+6+20
    と、交換法則を用いて項の順番を変えることは、そういう子が自ら発案することではありません。
    普通の中学1年生は、まだ小学生の尻尾を引きずっていますから、ほおっておけば、
    -15+6-10+20
    =-9-10+20
    =-19+20
    =1
    と、前から順番に計算してしまいます。
    それを、
    「同符号から先に計算しなさい。そのほうが楽でミスが少ないから」
    と教え込んでいるのが実情です。
    何度教えても、時間が経つとまた前から順番に計算してしまうので、さらに助言を繰り返し、何とか同符号から先に計算することを徹底させるだけでもひと仕事です。

    なぜ、そこまで繰り返さないと、そんなことすら定着しないのか?
    彼らは、同符号から先に計算することを、良いことだとは感じていないからだと思います。
    同符号から先に計算しても、前から順番に計算しても、計算ミスをしてしまうのは同じことで、ちっとも楽でも正確でもないからです。
    計算前に順番を変えるといった手間は、むしろ心の負担なのかもしれません。
    何でも前から順番に計算するほうが、覚えることや判断することが少なくて頭が楽だ、と思っている可能性もあります。

    「いや、同符号の計算なら絶対値のたし算になるでしょう?
    たし算のほうが楽ですよ。
    異符号の計算は、絶対値のひき算です。
    ひき算って面倒くさいですよね。
    ミスも多くなりますよ」
    と、私が説得しても、あまり表情に変化が見られない子は多いです。
    たし算でも、ひき算でも、計算ミスをしますから。
    そもそも、計算自体が苦手なんですから。

    それぞれを項と見て計算するのは、どのような良い点があるか?
    ・・・良い点なんて、別にない。
    良いと思ったことなんてない。
    ただ、そうしろと言われたから、そうしているだけ・・・。

    そういう子たちが失点してしまうのは、仕方ないかなとも思うのです。


    一方、-15、-10、+6、+20と、それぞれを項と見ていくことの本質を理解している子でも、こうした記述問題には答えられない子もいると思います。
    問いかけが漠然としているので、何をどう答えていいのか、わからない。
    良いとか悪いとか、そういう観点で数学の問題を見たことがない。
    それぞれを項と見ていくことは、当然のことだと思う。
    それは、良いとか悪いとか、そういう観点のことだろうか?
    いったい、この問題は、何を答えさせたいのだろう?
    自分は、何につきあわされているのだろう?
    そんな感想の子がいても当然ですし、その子が数学が出来ないとは限らないのです。
    今は苦労しても、高校数学で抜群の才能を発揮する可能性もあります。


    なぜ、このような記述問題が出題されたのでしょうか。
    前から順番に計算するよりも、各項の加法と見立て、同符号から先に計算するほうが良い件について、アクティブラーニングが行われたのではないか?
    教室全体で、あるいはグループに分かれて話し合い、項と見立てて計算することの良さ、同符号から先に計算することの良さについて議論がされたのではないか?
    それがあっての出題なのではないと想像されます。
    わざわざ1時間なり2時間なりかけて話しあったことの意味を問う出題なのでしょう。
    「それだけの授業時間をかけたことはテストに出る」
    ということがあざとくピンとくる子ならば、この問題への備えはしたと思います。
    しかし、子どもは、そんな判断はせず、もっとのほほんと授業を受けていることが多いです。

    項と見て計算することの良さについて、テストに出します。

    その一言があったほうが、初心者の生徒たちには良かったかもしれません。
    記述問題を作る数学の先生も、それを解く生徒たちも、初めてのことで、まだまだ不慣れ。
    それを補助する塾も、「何だこれ?」と毎回首をひねることが、まだしばらく続くと思います。
    それでも、この試みが良い方向に向かいますように。
    そう願わずにいられません。

      


  • Posted by セギ at 14:51Comments(1)算数・数学

    2020年07月08日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その2。垂直に交わる直線。


    数Ⅱ「図形と方程式」。今回は、直線の方程式の求め方の2回目です。
    ある直線と平行な直線、あるいは垂直な直線の求め方。

    問題を見てみましょう。

    問題
    (1)直線 y=2x+1 に平行で、点(-2,3)を通る直線を求めよ。
    (2)直線 y=-1/3 x +1 に垂直で、点(1,-2)を通る直線を求めよ。

    まずは(1)から。
    ある直線と平行な直線の求め方は、中2でも学習しています。
    平行だということは、傾きが等しいということ。
    だから、求める直線の傾きも、2です。
    そして、点(-2,3)を通るのですから、前回学習した直線の式、
    y-y1=m(x-x1) に代入して、
    y-3=2(x+2)
    y=2x+4+3
    y=2x+7

    これが答です。

    では、(2)はどうでしょうか?
    ある直線と垂直な直線。
    これも、私立中学や、進学塾の学力上位クラスでは、中学生で学習している内容です。
    もとの直線の傾きと、垂直な直線の傾きとの積は、-1。
    それを利用すれば、求める直線の傾きは、3です。
    あとは、直線の公式を利用し、
    y+2=3(x-1)
    y=3x-3-2
    y=3x-5

    これが答となります。

    ところで、解き方自体は簡単でしたが、もとの直線の傾きと、垂直な直線の傾きとの積は、なぜ-1なのでしょう?
    これは、中学で発展的な学習をしてきた人でも、案外答えられないのです。
    とにかく、-1になるんだ。
    そう教えられて、それを使ってきた。
    理由なんか説明されなかった。
    そのように主張する人もいるかもしれません。

    事実、そうだったのかもしれません。
    しかし、理由も説明されたのに、それを忘れているだけかもしれません。
    簡単そうに思えることでも、理由を説明するとなると結構大変なことが数学にはあります。
    説明するほうも大変ですが、理解するほうも大変です。

    前回説明した、「分数のわり算はなぜ逆数のかけ算で計算できるのか」という件もそうでした。
    今回の件も、そういうものの1種だと思います。

    なぜ2直線が垂直に交わるとき、2直線の傾きの積は-1なのか、説明します。

    上の図を見てください。
    今、垂直な2直線を、
    y=m1x+n1
    y=m2x+n2
    とおきます。

    それぞれの直線を原点を通るように平行移動すると、式はそれぞれ、
    y=m1x
    y=m2x
    となります。
    この2直線も、垂直に交わります。

    それぞれの直線上で、x座標が1の点をM、Nとすると、それぞれの座標は、
    M(1,m1)1、N(1,m2) となります。
    点Mは、y=m1x上の点なので、x座標が1のとき、y座標はm1。
    同様に、点Nの座標は(1,m2)となるのです。

    2直線は垂直に交わっていますから、△OMNは、上の図のように∠MONが90度の直角三角形です。
    三平方の定理より、
    OM2+ON2=MN2 となります。

    では、それぞれの辺の長さはどう求めましょう?
    2点間の距離の求め方は、この前やりましたね。
    O(0,0)とM(1,m1)との距離は、
    √(0-1)2+(0-m1)2 ですから、
    OM2=1+m1の2乗 となります。
    同様に、
    ON2=1+m2の2乗
    MN2=(0-0)2+(m1-m2)2=(m1-m2)2

    これらを、OM2+ON2=MN2 に代入して、
    (1+m1の2乗)+(1+m2の2乗)=(m1-m2)2
    これを展開すると、
    m1の2乗+m2の2乗+2=m1の2乗-2m1m2+m2の2乗
    移項して整理すると、
    2m1m2=-2
    m1m2=-1
    よって、2直線の傾きの積は、-1である。

    どうでしょうか?

    ・・・これも、1つ1つ段階を踏んで論理的なので、途中で、
    「もういいから、垂直な2直線の傾きの積は-1と覚えます」
    とため息をつく人もいるかもしれません。
    簡単そうに見えることでも、証明は結構難しく、理解するのが大変なことはあります。

    証明自体がエキサイティングで、証明を理解することで数学の面白さに目覚める!
    ・・・それならよいのですが、こうした証明は、そんなふうではないことが多いです。
    もっと面白いかと思っていたのに、テンションだだ下がり・・・。

    何とかショーアップして、この手の証明をエキサイティングなものにし、生徒が数学の面白さに目覚めるようにしたらよいのでは?
    それが講師の能力というものなのでは?
    ・・・それもわかります。
    その一方、そんなふうにいちいち「濃い味」のものに調理してスプーンで口の中に入れてあげないと味がわからないのなら、自立した学習者になるのは難しいのではないかとも思うのです。
    面白さは自力で発見できるようであってほしい。
    その狭間で、悩む日々です。

    ただ、理解できたこと自体の快感はあると思います。
    難しいけれど、理解できた。
    霧が晴れた。
    納得できたから、この定理を使おう。
    そのほうが、意味もわからずただ使うだけよりも、精神的に安定した状態で数学の問題に向き合えると思うのです。


      


  • Posted by セギ at 13:49Comments(1)算数・数学

    2020年07月05日

    分数のわり算はなぜ逆数をかけるのか。


    昔のアニメに『おもひでポロポロ』というのがありました。
    27歳の女性が、小5だった頃の自分のことを思い出しながら田舎を訪れ、そこで暮らすことを決意する。
    そういうストーリーでした。

    そのアニメの中で重要なエピソードの1つが、「分数のわり算」。
    分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算に直すのか?
    なぜそれで答が出るのか?
    小5のヒロインは、それがどうしても納得できず、お姉さんに質問しますが、「そういうものなの!」と決めつけられ、むしろバカにされ、うるさがられます。
    どうやら、小学校でも説明されていないことになっているようでした。
    少し不器用なヒロインの性格を浮き彫りにするエピソードなのだと思います。

    これは、このエピソードを作った人、すなわち原作者の実感なのだと思うのです。
    けれど、私は、分数のわり算がなぜ逆数のかけ算になるのか、小学校で教わりました。
    教科書にも載っていた記憶があります。
    私自身が教える立場になったときにも、理由を教えています。
    今も、小学校の教科書に載っています。
    だから、このアニメのそこのところを見る度に、ストーリーの本筋と関係ないとわかっていても、何だかちょっとモヤモヤするのです。
    算数や数学が悪者にされているようで・・・。

    分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算で計算できるのか。
    この説明は、しかし、ちょっと面倒くさいのです。
    小学生が理解するには難しい、段階を踏んで論理的な説明です。
    順を踏んで、AならばBで、BならばCで、CならばDだから、結論として、AならばDである、というタイプの論理です。
    一言で説明できることや、ひと目でわかることでないと理解しづらい、という子には向いていないかもしれません。

    分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算で計算できるのか。
    私が理由を説明している間、多くの小学生は、不安そうな表情を浮かべます。
    難しくて、よくわからない。
    この説明、早く終わらないかな、という顔です。
    そして、まとめとして計算のやり方を説明すると、ほっと安堵の表情に変わります。
    何だ、簡単だ。
    逆数のかけ算にするだけなんだ。
    良かった、良かった。

    その瞬間に、それまでの長い説明は吹っ飛んで、記憶から削除されるのかもしれません。
    こうしたことは、他にも沢山あると思います。
    中学生になった後も、そうです。

    3-(-2)=3+2 
    のように、負の数を引くことが、正の数を足すことに書き換えられるのは、なぜなのか。

    (-3)×(-2)=6
    のように、負の数×負の数は、なぜ、正の数になるのか。

    理由は説明されているはずです。
    でも、よく理解できなかった。
    そして、忘れた。
    理由を説明されたという事実も忘れた。
    そういうことは沢山あると思います。


    分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算で計算できるのか?

    代表的な考え方は2つあります。
    まず、1つは、文章題から具体的に図を描いて考えていく方法。
    分数を分数でわるというのは、具体的には、どんな場合でしょうか。
    例えば、こんな問題を考えてみるのです。

    問題 2/3dLで、3/4㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dLで何㎡の壁を塗ることができますか。

    この説明が子どもにほとんど理解されない理由が、もうこれでわかった・・・。
    そんな諦めの気持ちを抱く人もいるかと思います。
    この文章題を解く式を自力で正しく立てられる小学生が、まずかなり限定されるのです。
    「単位量あたり」の問題は、小学生には鬼門の1つです。

    とりあえず、分数では難しすぎるので、整数で考えてみましょうか。

    問題 3dLで7㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dLでは何㎡の壁を塗ることができますか。

    ・・・いいえ、これでも難しいのです。
    生徒が困った顔をしているので、理由を訊くと、
    「わりきれないと思う・・」
    と言い出す子が多いのです。
    「いや、割り切れなくても、いいでしょう。答は分数になってもいいのですから」
    と説明すると、驚いた顔をします。
    答えが分数になる可能性を全く考えていず、普段は整数と小数だけで計算すると決めている子が多いのです。

    問題 4dLで2㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dLでは何㎡の壁を塗ることができますか。

    これなら、割り切れるから大丈夫でしょうか?
    いいえ。
    生徒の2人に1人は、間違った式を立てます。
    式 4÷2=2 答2㎡

    ・・・いや、違います。
    正しい式は、2÷4です。

    何で4÷2という式を立ててしまうのかというと、「わり算は、文章の中の大きい数を小さい数で割ればいい」というとんでもないルールを低学年の頃に発見して、以後、それで文章題をやり過ごしている子が多いからなのです。
    低学年の頃、最初にわり算を学習したときは確かにそうだったのでしょう。
    小数も分数もまだ学習していないので、答を整数にするためには、大きい数÷小さい数の式しかない。
    問題を作る側のそうした都合を、自分のルールに取り込んでしまっている子が多いのです。
    そんなルールで文章題を解いているために、問題文を読まない習慣がつき、高学年になると、正しい式を立てることができなくなるのです。

    問題 2dLで4㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dLでは何㎡の壁を塗ることができますか。

    これなら、安心。
    4÷2 という式を立てられる子が多いでしょう。
    整数で考えたときに立てた式は数字が分数になっても同じ構造のはず。
    では、一番上の問題は?

    問題 2/3dLで、3/4㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dLで何㎡の壁を塗ることができますか。

    式は、3/4÷2/3 ですよね?
    単位量あたりの数値を出すときは、その単位の数値で割るんですよ。
    1dLあたりを求めたいなら、dLのついている数値で割るんです。
    これなら、安心。

    ・・・いえ、何も安心ではないでしょう。
    もう既に、この段階で、子どもの気持ちはついてきていないです。
    この式を実感できる子は、ほとんどいない。
    こんな理解できない式を使ってそれから分数のわり算を逆数のかけ算で解く意味を説明されても、モヤモヤしてしまう・・・。

    それでも、何とかここまで理解してくれた子に向けて、説明を続けます。
    まず、縦1m、横1mの正方形の壁の図を描きます。
    それを横に4つに区切って、下から3つ分まで薄く色を塗ってみましょう。
    3/4㎡の壁に塗られたペンキの図をこれで描けました。
    これが、2/3dLで塗った分です。
    これを1dL分にいきなりするのは難しい。
    でも、まずは、1/3dL分ではどれだけ塗れるか考えて、それから1dL分に直すことならできそうです。
    さきほどの、3/4㎡の薄く色を塗った壁を今度は縦に2つに切り分けましょう。
    今回は縦に切るのがコツです。
    そのほうが切り分けやすいですから。
    図から、1/3dLで塗れる壁は、3/8㎡であることが見てとれます。
    では、1dLで塗れる壁は?
    3/8㎡の3つ分であることが、これも図から見て取れます。
    つまり、9/8㎡です。

    これを途中式を加えて書き記していくと、
    3/4÷2/3
    =3/4÷2×3
    =3/(4×2)×3
    =(3×3)/(4×2)
    =9/8

    文字で一般化しましょう。
    a/b÷c/d
    =a/(b×c)×d
    =(a×d)/(b×c)

    おや?
    これは、a/b×d/c=(a×d)/(b×c)と同じです。
    つまり、分数のわり算は、÷の後ろの数を逆数にしたかけ算と計算方法は同じなのです。

    これが、分数のわり算が、逆数のかけ算で計算できる理由の説明の1つです。
    ネットだから説明しにくかった、ということもありますが、実際に図を見せたり、もっと見やすい分数の式を書いて説明しても、やっぱりわかりにくいのです。
    しかも、これは、結果として同じ計算になりますね、というだけです。
    なぜ逆数にするのかその理由を知りたいという気持ちに真正面から答えるものではないような気もします。
    例えば「三角形の面積を求めるときは、平行四辺形の面積を求めて2で割る」というような、真正面からの理由ではありません。
    その意識のズレも「理由を説明してもらえなかった・・・」という気持ちを引きずる子がいる原因なのかもしれません。


    分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算で計算できるのか?
    説明の仕方は、もう1つあります。
    これは、分数×整数と、分数÷整数の計算の仕方はしっかり身について、それに対しては疑問はないという前提で説明が始まります。

    分数×整数の計算は、大丈夫でしょうか?
    2/5×3=(2×3)/5=6/5
    これも、基本は面積の図を描いて説明します。
    1×1の正方形をまず描き、それを横に5つに分けます。
    1つ分が、1/5です。
    下から2つ分に薄く色を塗りましょう。
    それが、2/5です。
    2/5×3は、2/5が3個あるということ。
    同じ図を横に3個書き並べます。
    3個分に薄く色を塗ります。
    1/5が何個分でしょうか?
    6個分ですね。
    だから、答えは、6/5です。

    一般化すると、分数×整数は、分母はそのまま、分子に整数をかければ答になります。


    分数÷整数の計算はどうでしょうか?
    2/5÷3は、どう計算しましょう。
    これも、面積の図を描いて考えます。
    1×1の正方形を描き、それを横に5つに分けます。
    1つ分が1/5です。
    下から2つ分に薄く色を塗りましょう。
    それが、2/5です。
    それを3つに分けます。
    図を縦に3つに切り分けましょう。
    横に5つに分け、縦に3つに分けたことになります。
    1つ分は、15に分けた1つ分だということが、図から見てとれます。
    すなわち、1つ分は、1/15です。
    2/5を3つに分けた1つ分は?
    1/15が2つ分であることが図から見てとれます。
    だから、2/5÷3=2/15です。

    一般化すると、分数÷整数は、分母にその整数をかけて、分子はそのままでよいことがわかります。

    さらに、ここで、確認しておくことがもう1つ。
    わり算の性質です。
    わり算は、わられる数とわる数の両方に同じ数をかけても、または、同じ数でわっても、商は同じになるのでした。
    例えば、
    0.8÷0.2=4 です。
    筆算で、小数点を移動して計算するのは、わり算のこの性質を利用していたのでした。
    8÷2=4 と商は同じだということを利用しているのです。
    わられる数とわる数を10倍しても、商は変わらないのです。
    別に10倍でなくても、何倍でも商は同じです。
    8÷2=4 のわられる数をそれぞれ3倍して、
    24÷6としても、商は4です。
    また、8÷2のわられる数とわる数のそれぞれを2で割って、
    4÷1としても、商は4です。

    分数×整数、分数÷整数、さらにわり算の性質。
    この3つを利用して、分数÷分数の計算をやってみましょう。

    3/4÷2/3

    わる数が分数なので、このままでは計算できませんが、わる数を整数にすれば、分数÷整数にできます。
    では、どうすれば、わる数を整数にできるでしょうか。
    わる数の分母を払う、すなわち、2/3を3倍すればよいのです。
    わる数だけ3倍するわけにはいきませんが、わられる数も3倍するなら、商は同じままです。

    だから、(3/4 ×3)÷(2/3 ×3) とします。
    =(3×3)/4 ÷2
    分数÷整数をするのですから、分母に×2をすればよいです。
    =(3×3)/(4×2)

    これは、3/4×3/2=(3×3)/(4×2)と同じですね。

    だから、分数のわり算は、逆数のかけ算に直して計算できるのです。

    こちらのほうが、面積の図を描くよりもわかりやすいと言われることがあります。
    しかし、分数÷分数の説明をするまでに遠い道のりを経なくてはならないということでは、同じです。
    しかも、なぜ逆数のかけ算になるのかを真正面から説明したわけではありません。
    そのせいか、記憶にも残りにくいようです。


    分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算になるのか?
    ・・・もういいから、やり方だけ覚えます。
    そんな声も聞こえてきそうですが、今年はアクティブラーニング元年。
    やり方だけ覚えるのではなく、理由を考え、説明できることが大切です。
    意味がわかっていないことの上に学習を積み上げていくと、中学のいつか、あるいは高校のいつか、全崩壊します。
    何をやってよくて、何をやったらダメなのか。
    自分の中に根拠がないまま、とぼとぼと歩く数学学習の道は、暗く長いです。
    1つ1つの霧を晴らしていきましょう。


      


  • Posted by セギ at 16:47Comments(0)算数・数学

    2020年07月03日

    数は音声では聞き取りにくいのです。


    ある年、中3の生徒の英語の1学期の期末テストの得点が普段より10点ほど下がったことがありました。
    見ると、リスニングでかなり失点していました。
    しかし、普段はリスニングが苦手な子ではなかったのです。
    英検3級のリスニング過去問は、毎回ほぼ満点を取ることができていました。
    話を聞くと、内容に特徴があったことがわかりました。

    場面は空港。
    飛行機の出発時刻とゲート番号が列挙されたアナウンスを聴き取るものだったそうです。
    中学生向けですから、英文はゆっくり読まれたと思います。
    それでも、時刻や番号が列挙されると混乱し、数字を聴き取り間違えてしまったのです。

    数字は、視覚での情報伝達力は極めて高いのですが、音声で伝えられると把握しにくい傾向があります。
    日本語での口頭の場合も、数字は他の単語よりも聴き取りにくいです。
    まして英語で数字を聴き取るのは、難しくて当然です。

    私個人は、小学生の頃に珠算教室に通い、「読み上げ算」を練習していますので、日本語による数字の聴き取りは比較的得意なほうだとは思っています。
    今も塾での算数・数学の宿題の答えあわせは、生徒が口頭で数字や式を読み上げ、正解かどうか私が判断することが多いです。
    これが逆に、私が正解を口頭で述べ、生徒が自分で丸付けをすることにしたら、正しく聞き取れず、間違っているのに丸をつけてしまう子がいるだろうと予想されます。
    とはいえ、生徒の読み上げる数字はスピードが速すぎるうえに語尾が不明瞭なことがあります。
    もしもそのスピードと不明瞭さで私が数字を読み上げたら、あなたは聴き取れないでしょう、と思うこともあります。
    数字を読み上げるときは、ゆっくりはっきり言わないと正確に伝わらないということが、年齢的にまだ理解できないから仕方ないのです。
    速く読み上げることが頭の良さの証明だという誤解もあるかもしれません。
    ただ、こういうことは、注意しても、「別にいいじゃん。聴き取れないのは、そっちの責任じゃん」という反発心を起こさせる小言の類に聞こえそうで、私も余程速い場合以外は注意しないのですが。
    同じ生徒が、私が正しい式をゆっくり読み上げても、上手く聴き取れないことがあります。
    そんなときが良い機会です。
    私がホワイトボードに式を書いていくと、その子は、当然理解できます。
    そうした経験を重ねることで、数字は、音声で早口に読み上げても伝わらないということを実感してくれるようです。
    ゆっくりはっきり読み上げることを徐々に学んでいくのです。
    それは客観性や社会性の獲得ということでもあると思います。

    例えば電話番号を早口でペラペラペラっと伝えられたら、誰でも「はあ?」と思いますよね。
    相手の社会性を、むしろ疑う事態です。
    数字は、はっきり、ゆっくり読む。
    そして、互いに確認しあう必要があります。


    日本語でも難しいのですから、英語のリスニングで数字にまつわる問題が出題されると、非常に難度が上がります。
    社会人向けの英語検定なら、そうした出題は当然でしょう。
    ビジネスに数字はつきものですから。
    しかし、英語を学び始めたばかりの子にとって、数字の聴き取りはハードルが高いです。

    何年か前、都立高校の英語リスニング問題で、電話番号の問題が出題されたときも、その問題だけ正答率が低かったのです。
    男女の会話で、間違い電話の受け答えを聴いて、問いに答える問題でした。
    間違い電話をするくらいですから、番号は部分的に数字が入れ替わっているものでした。
    間違った番号と正しい番号と両方を英語で言われ、正しい電話番号を以下から選べ、と言われても、それは混乱しますよね。

    男「もしもし、〇〇さんのお宅ですか」
    女「いいえ、違います。何番におかけですか」
    男「そちらは、いちさんはちよんのごさんはちいちではありませんか」
    女「いいえ、うちは、いちさんはちよんのごはちさんいちです」
    男「ああ、間違いました。すみません」
    女「どういたしまして」
    聴き取りにくさをあえて日本語で表記すれば、こんな感じでしょうか。


    中1の最初の定期テストの場合、そもそもリスニング問題に上手く対応できない可能性もあります。
    これも何年か前、英語のリスニング問題を塾の授業中に最初に行ったときのこと。
    CDには日本語でくどいほどの説明があるし、例題とその解説もあるから大丈夫だと思っていたら、いざ第1問が始まると、
    「え?何をするんですか?」
    と声を上げた子がいて、慌ててCDを止めたことがあります。
    最初に説明したつもりだったのですが、その子にとっては、十分な説明ではなかったのでしょう。
    CDの説明をよく聴いてその通りにしなさい、という指示を出さなかったのがまずかったのだと思います。
    いや、そもそもリスニングテストというものが英語にはあるのだという話から始めるべきだったのかもしれません。
    初めてのことに対する抵抗感と不器用さに関して、現代の子は突出していることがありますから、中1の最初の定期テストのリスニングは白紙答案になってしまわないかと心配です。
    何をどうすれば良いのか、全くわからなかった。
    白紙答案を見せて屈託なくそう言う子が現れる可能性は毎年あります。

    「学校で、定期テストにリスニング問題が出るという話はありましたか」
    中1の生徒にそう問いかけても、首をかしげています。
    「・・・いや、たぶん出題されるので、そのつもりでいてね?」
    リスニングは色々な出題形式があるから、日本語の説明をよく聴いてね。
    選択肢があるとは限らないですよ。
    聴き取った英文を書くのかもしれません。
    とにかく、その場でパニックを起こさないでね。
    色々とくどいほど話すのですが、それでも心配は尽きません。

    そんな状況なのに、英語で数字を読み上げて書き取る問題が出題されたらどうしましょう。
    日本語で出題しても難しい問題を英語で出されても・・・。
    そういうのは、英語力以外の何かが付加された課題です。
    でも、やっぱりそれは、英語力かなあ。
    上手く対応できますように。
    そう願うこの頃です。


      


  • Posted by セギ at 14:33Comments(0)算数・数学英語

    2020年06月30日

    小学校算数。点対称の図形。



    「対称な図形」は、小学校6年生で学習する単元です。
    教科書によるのですが、この単元が6年生の教科書の冒頭にあり、しかも、学校が休校のため、これを独学するのが宿題だった子も多かったようです。
    なお、三鷹市で採択されている教科書では、最初の単元が「ならべ方・組み合わせ方」でした。
    樹形図の描き方は、手取り足取りで教えないと中学生でもなかなか定着しないのに大丈夫なのかしらと、これも心配でした。
    そして、登校が始まったらあっという間に1つの単元が終了し、カラーテストを受けることとなり、苦労した子も今年は多いようです。

    さて、まずは、線対称。
    折り紙のように真ん中で折り重ねたとき、ぴったりと重なる図形が、線対称な図形です。
    方眼紙に線対称な図形の半分が描かれていて、残り半分を完成させる問題が典型題です。
    対称の軸が方眼紙上に垂直または水平に引かれている場合は、易しいです。
    これは、理解できない子はほとんどいません。

    ところが、上の図1のように、対称の軸が斜めになると、少し混乱する子が現れます。
    完成図を正しくイメージすることができないのです。
    頭の中に誤ったイメージが浮かびやすく、それが邪魔になる様子です。

    例題などで最初に練習した問題の対象の軸が垂直方向だったため、対応する点や線分はすべて水平移動だと思い込んでしまう場合があります。
    上の図1でいえば、矢印の先端部分の線分が、水平移動だと思い込むのです。
    「・・・方眼紙から飛び出すけど、いいですか」
    という質問をするので、え?と思い、その子がどういう誤解をしているのか気づくことがあります。
    図1で、水平方向の線分は、対称移動すると垂直方向の線分になります。
    それをイメージできないのです。

    図形のイメージ力は個人差が大きいです。
    頭の中に描くイメージだけで図を完成させられる子もいます。
    しかし、本人のイメージ力が弱い、あるいは誤謬が多い場合は、想像するだけでは図を完成させることができません。
    その場合は、理屈で図を完成させればよいのです。
    それは「逃げ」ではありません。
    線対称の図形の性質を正しく使用して作図するのですから、それもまた数学的な態度です。

    では、線対称な図形の性質とは何か?
    ①対応する辺の長さは等しい。
    ②対応する角の大きさは等しい。
    ③対応する点を結んだ線分は、対称の軸と垂直に交わる。
    ④対応する点と対称の軸との距離は等しい。

    これらの性質を利用し、図中に描かれている点を対称移動することで、残り半分を描いていきます。
    上の図1でいえば、一番上の「矢印のてっぺんの点」は、対称の軸上にある点なので、移動せず、そのままです。
    いや、完成図が「矢印」になるとわかっている時点で正しいイメージができているのですが、それは説明のための方便としてお許しください。
    てっぺんから「左に5」だけ移動した位置にある点を正しく打ち込めるかが、最初の鍵です。
    対称の軸が方眼紙に垂直だろうが斜めだろうが、対応する点を水平に移動させる間違ったイメージが邪魔をします。
    その最初の点を打ち間違えたら、もう残りはぐちゃぐちゃです。

    方眼紙に描く場合でも、定規をあてるとかなり楽になります。
    理想は三角定規ですが、おそらく道具袋の奥にあり、探すのが大変でしょうから、普通の定規で大丈夫です。
    短い定規は、ペンケースに常に入れておくと便利です。
    その定規を、対称の軸と垂直の位置におきます。
    大体で構いません。
    対称移動する方向さえ見えてくればよいのです。
    矢印のてっぺんから「左に5」の位置にある点は、どこに移動するか?
    予想外に下のほうに移動するのだと、定規を使うことでイメージできます。
    距離は?
    対応する点と対称の軸との距離はそれぞれ等しいのだから、大体このあたりの点?
    では、正確には?
    対応する辺の長さは等しいのだから、てっぺんの点から下に5の位置?
    これで正確な点の位置が判断できます。

    この点を1つ打ち、てっぺんの点と結べば、残りのイメージは正確に描ける子が多いです。
    ああ、こういう向きだったのかあ。
    わかったー。
    感動の声を上げて、残りは自力で描きあげていきます。

    しかし、イメージ力には個人差があり、それでもその先をイメージできない子も中にはいます。
    その場合は、次の点も、上と同じ作業を繰り返し、定規をあてて、対称移動した先のおおよその位置を特定していきます。


    線対称の場合は、上の作業で大多数の子が描けるようになりますが、点対称の場合は、もっと苦闘する場合があります。
    図2を見てください。
    描かれている半分は図1と同じですが、完成される図は「矢印」ではありません。
    「矢印を描く」という固定観念にしばられ、完成イメージを思い描けない子が多いです。
    点対称の図を描いているつもりでも、途中から線対称の「矢印」を描き始めてしまうのです。
    正しい点を打っているのに、矢印にならないことに混乱してしまう子もいます。
    完成させるべき図は矢印ではないのに、矢印を描こうとして苦闘するのです。

    図2の問題は、大人の人でも苦戦される方がいらっしゃると思います。
    何の手がかりもなく、上の図2を見ただけで点対称の図形の完成図をイメージできる人のほうがむしろ少ないでしょう。
    それは特別なイメージ力を持っている方だと思います。
    しかし、そんな特別な才能を持っていなくても、点対称の図形を完成させることはできます。

    こちらも、点対称の図形の性質を使えば、正しく作図できます。
    では、点対称な図形の性質とは何か?

    ①対応する辺の長さは等しい。
    ②対応する角の大きさは等しい。
    ③対応する点を結んだ線分は、対称の中心を通る。
    ④対応する点と対称の中心との距離は等しい。

    つまり、これも、定規を使用すれば、正しい位置に対応する点を打っていくことが可能です。
    まず、移動したい点と対称の中心を直線で結びます。
    その直線上のどこかに、対応する点があります。
    対応すると点と対称の中心との距離は等しいです。

    どの点から始めても大丈夫ですが、点Oに近いところから始めたほうが混乱を避けられると思います。
    まず、点Oから上に2の位置にある点から移動しましょう。
    その点と点Oとを結んだ直線は、方眼の垂直方向の直線です。
    距離は、点Oから2。
    よって、点Oから下に2の位置にこの点は移動します。

    ここからは何通りかのやり方がありますが、移動した点から次の点に移動するほうが楽かもしれません。
    最初に注目した点から、次の点は、左に2、上に2だけ移動した位置にあります。
    点対称は180度回転するのですから、移動後の点から右に2、下に2だけ移動したのが次の点です。
    点を打ったら、すぐに前の点と結び、線分を明らかにしておきましょう。
    点だけ先に全部打って後で結ぼうとすると、間違った点どうしを結んでしまい、混乱を助長させてしまう可能性があるのです。
    移動前の点と移動後の点に定規を当て、ちゃんと対称の中心を通っているかも確認します。
    この繰り返しで点を移動していくと、徐々に図形が見えてきます。
    完成図のおおよそがイメージできるようになったら、上の作業を省略し、自分の力で次の点を打っていっても大丈夫でしょう。
    ときどき定規を当て、対応する点を結んだ線分が対称の中心を通っているか確認すれば、さらに間違いないです。
    そのようにして完成した図が、下の図となります。


      


  • Posted by セギ at 13:24Comments(0)算数・数学

    2020年06月21日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。



    今回の学習内容は、数Ⅱ「図形と方程式」の中の、直線の方程式です。

    直線の方程式の求め方は、中学2年の「1次関数」で学習しています。
    例えば、こんな問題。

    問題 点(6,-1)を通り、傾きが-1/2の直線を求めよ。

    まずは、中学生の解き方で解いてみましょう。
    直線の式は、1次関数です。
    1次関数の一般式は、y=ax+b。
    このaとbには具体的な数字が入り、個々の直線の式を表します。
    aは傾き。bは切片。
    今は傾きが-1/2とわかっていますので、a=-1/2です。
    これを一般式に代入して。
    y=-1/2x+b。
    ところで、点(6,-1)はこの直線上の点なのですから、この点のx座標とy座標は、上の式の関係を満たします。
    x=6、y=-1 を代入して、上の式が成り立つということです。
    では代入しましょう。
    -1=-1/2・6+b
    -3+b=-1
    b=2
    よって、求める直線の式は、 y=-1/2x+2 です。

    数学が苦手な子は、こういう問題の作業手順だけ覚える傾向があり、しかも、1つ1つ手順を踏まず、一気に全部代入して解く子も多いです。
    最初は意味がわかったうえでそうするのでしょうが、意味はたちまち後退し、単なる作業手順になります。
    「1次関数」が範囲の定期テストが終わってひと月も経てば、こんな基本問題も、どうやって解くのか曖昧になります。
    復習しようと自分のノートを見直しても、何もかも一気に代入した、
    -1=-3+b
    という式が唐突に書いてあるだけなので、何をどうしたのか、自分でもわからなくなってしまいます。

    また、応用問題を解くときに、上の問題と同じ考え方で、点の座標がわかれば直線の式を求められるという発想を持つことができず、座標平面と図形の問題は歯が立たない子も多くいます。
    手順だけになってしまい、意味がわかっていないからなのでしょう。
    「意味がわかるようにノートをとっておくといいよ」
    「代入は一気にやらず、まずy=-1/2x+bの式を立てて、それから点の座標を代入すると、後で意味がわかるよ」
    と繰り返し助言しますが、聞いてくれない子もいます。
    説明を聞いた直後なので、そのときは意味がわかるから大丈夫と思うのでしょう。
    今はわかっても、明日はわからないかもしれないのに。
    記憶なんて、すぐに消えてしまいます。
    単なる操作は、意味を伴っていなければ記憶に残ることは少ないのです。

    意味がわかるように答案を作っていくこと。
    数学の記述答案で必要とされているのは、とりあえず、それです。
    どういう考え方で、何の定理や公式を用いて、どう解いているのかを示しながら解いていく。
    中学の間はそれがなくてもある程度許されますが、高校数学になると記述答案としての体裁が整っているかが答案として重要となります。
    数学の答案なのに日本語が多くなり、「何で式と答えだけじゃダメなんだろう?」と不満を感じる子もいると思います。
    しかし、1週間も経てば、自分の立てた式の意味さえ自分でわからなくなるのが高校数学の答案です。
    塾の宿題の答えあわせでも、
    「どうやって解いたの?」
    と質問すると、絶句する高校生が多いのです。
    「・・・とにかく、答案を1行目から読んでみて」
    と声をかけても、絶句しています。
    書いた本人が全く意味がわからないので、読み上げることもできない。
    そんな状態の様子です。

    そんな状態なのに、答案を読む採点者に、「式の意味はおまえが判読しろ」、「そして採点しろ」、「部分点くらいよこせ」、と言っても、無理です。
    ヒントをください。
    どういう考え方でその式を立てたのか、式の前に1行でいいから説明をください。
    そうすれば、たとえ誤答だとしても、全くの勘違いによる式なのか、代入ミスなのか、判断することができます。
    採点者が求めているのは、そういうことです。
    そして、それが記述答案の根本です。

    記述答案を書かねばならないと納得しても、今度は、ルールがわからない、ここはどう書くの、ここはどうするの、と不安になり、1行も書けない子がいますが、絶対の形式があるわけではありません。
    大切なのは、読む人の立場になって書くこと。
    それは、結局、時間が経過した後の自分が読んでも意味がわかるということ。
    ルールは、究極、それです。


    さて、問題に戻りましょう。
    問題 点(6,-1)を通り、傾き-1/2の直線の式を求めよ。

    高校数Ⅱは、これを一気に解く公式を学びます。
    点(x1,y1)を通り、傾きがmの直線の式は、
    y-y1=m(x-x1)

    この公式の証明は簡単です。
    求める直線の式を、
    y=mx+n ・・・➀
    と表します。
    この直線は、点(x1,y1)を通るのですから、
    y1=mx1+n ・・・➁
    が成り立ちます。
    ➀-➁をすると、
    y-y1=(mx+n)-(mx1+n)
    y-y1=mx-mx1
    y-y1=m(x-x1)
    これが公式です。

    点(6,-1)を通り、傾き-1/2の直線だから、
    y-(-1)=-1/2(x-6)
    y+1=-1/2x+3
    y=-1/2x+2

    これで、公式のバージョンアップが行われたことになります。
    しかし、これがなかなか厄介で、中学時代の解き方を手放せない子が現れます。
    作業手順だけ丸暗記するタイプの子なら、この新しい公式も丸暗記して使えば良いようなものですが、なかなかそう簡単にはいきません。
    何度も忘れては覚え直すことを繰り返してようやく作業手順を覚えた中学生の解き方を、そう簡単には手放せないのでしょう。
    高校の公式を使えば秒殺の問題を、何だかあれこれ迷い、思い出しながら解いているので、何をしているのかなあとノートを覗くと、中学の解き方で解いている。
    そういう光景に何度も遭遇しました。

    本人にバージョンアップしたい気持ちがないわけではないのです。
    でも、覚えられない。
    中学の頃は、この直線の式の求め方だけで学校の授業は1~2時間使ったし、学校のワークもそれだけで2ページくらいぎっしり問題があって沢山練習できました。
    高校の授業は、新しい公式がさっと出てきて、スッとすぐに次の公式に進んでしまいます。
    高校から配られている問題集も、この公式の練習問題は小問が5~6問程度です。
    定着しないうちにスルスルと先に進んでしまいます。

    定期テスト前にまとめて丸暗記しよう、あるいは、中学の解き方でも答は出るからいいじゃん、と思って先に進んでいくと、しかし、えらい目にあいます。
    その先、問題が複雑になったときに、学校の問題集の解説を読んでも、意味がわからないのです。
    何でこんな式が唐突に立てられているのか、意味がわからない。
    解説が3行くらいすっ飛んでいるような気がする。
    記述答案は意味がわかるように書けって言ったくせに、模範答案であるはずの問題集の解答解説の意味がわからないってどういうこと?

    ・・・・公式を覚えていないからなのです。

    応用問題の中で、基本公式の意味を逐一解説することはありません。
    点(6,-1)を通るから。
    丁寧な解説でも、それくらいの1行しか書いてありません。
    それで記述答案としては十分です。
    それで意味がわからないのは、公式を覚えていないからなのです。
    解説を読んでも意味がわからない場合の大半は、本人が公式や定理を覚えていないことに原因があります。

    高校数Ⅱはこれから、怒涛の公式ラッシュが始まります。
    数学が苦手だけれど、大学受験のために数Ⅱのマスターがどうしても必要な場合、独りで勉強するのが苦しいのはこの点です。
    公式の解説だけなら、塾に行かなくても、ネットに沢山解説が上がっていますし、動画もあります。
    しかし、いざ自分で問題に取り組むと、その問題集の解答解説を読んでも意味がわからないことが多いのです。
    模試の問題も、解説を読んでも意味がわからない。
    使っている公式が何なのか、わからないからなのです。

    どの公式を覚えていないから、その状態なのか。
    どこからつまずいているのか。
    それすら、自分では、わからないのです。
    そうして、今度こそ、意味をしっかり理解しようとしても、意味がわからない。
    今まで、意味を無視してきたのですから、高校数学になって急に意味を読みとろうとしても、理解するための基盤がないのです。

    数Ⅱ「図形と方程式」がわからない高校生の多くは、中学の図形分野だけでなく関数でもつまずいている場合が多いです。
    そうした場合は、点の座標と直線の式との関係など、根本が理解できていない可能性があります。
    なぜ点の座標を直線の式に代入できるのか、その根本がわかっていない子は沢山います。


    今回、公式はもう1本。
    点(x1,y1),(x2,y2)を通る直線の式は。
    y-y1=y1-y2/x1-x2 (x-x1)

    これは、上の y-y1=m(x-x1) という公式の傾きの部分を、
    y1-y2/x1-x2 としたものです。

    中学で学習した直線の公式 y=ax+b のaは、直線の傾きでした。
    直線の場合、傾きは、「変化の割合」と等しいのでした。
    「変化の割合」は、 yの増加量 / xの増加量 で求めることができました。
    だから、直線の傾きは、y1-y2/x1-x2 です。


    この説明がすんなり理解できない場合、中2「1次関数」で忘れていることが多いと思います。
    やり方や作業手順だけ覚えているが、意味を忘れている・・・。
    そのような状態であるため、高校数学の公式の意味や説明が理解できないのです。

    本当は、そうなる前、出来れば中学生のうちに、数学の学習姿勢を変えてほしかった。
    でも、それが出来ないまま、高校2年になってしまったなら。
    何もかもがわからない状態であると、気づいたのなら。
    戻りましょう。
    答の多くは、中学数学にあります。

      


  • Posted by セギ at 14:19Comments(0)算数・数学

    2020年06月14日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。座標平面上の点の座標と内分・外分。


    数Ⅱ「図形と方程式」、今回は2回目です。
    前回は、数直線上の内分点、外分点の座標の求め方を学習しました。
    今回は、座標平面上の線分の内分点・外分点の座標の求め方です。
    まずは上の左の図を見てください。
    座標平面上に点A(x1,y1)、点B(x2,y2)があります。
    この2点を結んだ線分ABをm:nに内分する点Pの座標を考えます。

    斜めになっているけど、何とかして線分ABの長さを求めて、それを内分するのかな?
    三平方の定理を使えば、長さは求められるから・・・。

    そういう考え方もわからなくはありませんが、もっと簡単に求めることができます。
    これ、まずはx座標のことだけ考えましょう。
    点A、Bのx座標をx軸に記してみます。
    それぞれの点から真下に点を下ろしていくイメージです。
    上の図の赤で記したものがそれです。
    赤で示した3本の点線は全て平行です。
    したがって、平行線と線分の比から、線分AB上でm:nだったものは、x軸上でもm:nであることがわかります。
    つまり、求めたい点Pのx座標は、点AとBのx座標を内分の公式に当てはめて求めることができます。
    すなわち、点Pのx座標は、


    nx1+mx2
    m+n

    となります。

    同様に、点Aと点Bのy座標をy軸上に記して考えるなら、点Pのy座標は、AとBのy座標を内分の公式に当てはめれば求めることができます。
    点Pのy座標は


    ny1+my2
    m+n

    となります。

    以上の説明でわかりにくいところがある場合、以前に学習したことが曖昧になっている可能性があります。
    おそらく、「平行線と線分の比」のことを忘れているのではないかと思うのです。
    中3「相似」の単元で学習している定理です。
    高校で図形に関係した問題がよくわからない人は、中3の「相似」をマスターできていない場合が多いです。
    平行線と線分の比。
    三角形の相似条件。
    中点連結定理。
    角の二等分線の定理。
    三角形の辺の比と面積の比。
    これらの基本の定理を復習すると、少なくとも、問題集の解答解説を読んでも意味がわからない・・・ということが今までよりは減ってくると思います。


    問題 4点A(-2,0),B(-3,-2),C(0,-1),Dを頂点とする平行四辺形ABCDがある。頂点Dの座標を求めよ。

    座標平面について初めて学習する中学1年生の数学でも、これと同じ問題は存在します。
    中1では、点Bから点Aへの座標上の移動を読みとり、同じように点Cから点Dへ移動していることからDの座標を求めます。
    点Bから点Aへは、x軸の正の方向に1、y軸の正の方向に2だけ移動しています。
    したがって、点Cから点Dへも同じだけ移動します。
    点C(0,-1)をx軸の正の方向に1、y軸の正の方向に2だけ移動すると、(1,1)。
    よって、D(1,1)です。

    その求め方でも構わないのですが、対角線の中点の座標を利用して求める方法もあります。
    この平行四辺形の対角線はACとBDです。
    そして、平行四辺形の対角線は、それぞれの中点で交わります。
    これは、中2「三角形と四角形」の単元で学習した、平行四辺形に関する定理です。
    この定理を利用します。
    A(-2,0),C(0,-1)の中点の座標はx座標、y座標をそれぞれ足して2で割れば良いのですから、(-1,-1/2)となります。
    対角線BDの中点も同じ座標です。
    中点の座標の求め方も既習ですが、内分の公式で解いても構いません。
    これを利用して、方程式を立てます。

    D(x,y)とすると、
    -3+x /2=-1 
    -3+x=-2
    x=1

    -2+y /2=-1/2
    -2+y=-1
    y=1

    よってD(1,1) となります。

    ここまで書いていて、自分でもただし書きが多い、と感じます。
    ただし書きが多くなるのが、この「図形と方程式」という単元の特徴です。
    中学・高校の数学でこれまで学習したことを忘れていると、そこでいちいちつまずくことになるのがこの単元です。
    覚えてはすぐ忘れる学習を繰り返してきた人が、高校2年で数学が全くわからなくなる最大の理由はそれです。
    中学で学習したことも含め、これまで学習したすべてを使わないと理解できないし問題を解けない。
    そういうことが多いのです。

    次に学習する重心の座標も、そうです。

    三角形の重心。
    三角形には外心・内心・重心・垂心・傍心の5種類の点が存在します。
    それを三角形の五心と呼びます。
    中3数学でも発展的なテキストには載っていますし、高校数Aの「図形の性質」でも学習する内容です。
    外心は、三角形の外接円の中心。
    内心は、三角形の内接円の中心。
    重心は?

    三角形の頂点と対辺の中点を結ぶ線分を中線という。
    三角形の3つの中線は1点で交わる。
    この点を三角形の重心という。

    これが、重心の定義です。
    また、重心は、各中線を2:1に内分します。
    これも非常に重要です。
    中3か数Aのテキストに戻って復習すると、理解が深まると思います。

    今回学習するのは、重心の座標の求め方です。
    A(x1,y1),B(x2,y2),C(x3,y3)の三角形ABCの重心の座標は?
    まず、頂点Aから辺BCに中線を引きましょう。
    頂点Aと、BCの中点Mとを結んだ線分です。
    Mの座標は、(x2+x3 / 2 , y2+y3 / 2)。
    重心Gは、線分AMを2:1に内分する点ですから、内分点の公式にあてはめ、整理すると、

    G(x1+x2+x3 / 3 , y1+y2+y3 / 3)

    となります。

    問題 △ABCの頂点A、Bの座標はそれぞれ(4,-4),(-1,4)で、重心Gの座標は(-1,2)である。頂点Cの座標を求めよ。

    C(x,y)とします。
    公式にあてはめると、x座標に関しては、
    4-1+x / 3=-1
    3+x=-3
    x=-6

    y座標に関しては、
    -4+4+y / 3=2
    y=6

    よって、C(-6,6) です。


    繰り返しますが、図形問題が苦手という人は、それまでに学習した定理が身についていないために問題を解けないのです。
    説明されれば定理を思い出せるというのでは自力で発想することはできません。
    まして、説明されても「そんな定理ありましたか?」とポカンとしてしまうのでは、問題を解けるわけがないのです。

    センスも勿論あります。
    二等辺三角形を横たえた途端に、それが直角三角形に見えてしまう。
    正方形を斜めにすると、それがひし形にしか見えなくなってしまう。
    見取り図が平面のままに見え、立体的に把握することができない。
    三角形が線分で分割されていると、もとの三角形を認識できない。
    そうした、視覚的な課題を抱えている場合は、そうではない場合と比べれば、図形問題を解くまでに解決すべき課題が多いです。
    しかし、努力で解決できることもまた多いのです。
    図形問題が苦手な人は、図形問題を自力で解いた経験があまりないまま高校生になってしまっています。
    中学の図形問題を解いたことがないのに、高校の図形問題が解けない、解けない、と苦しんでいます。
    中学の図形に戻って復習すれば、スッキリします。

    「図形は苦手だから、捨てます」
    文系の生徒の場合、そういう決断をしてしまう人もいます。
    大学入試共通テストでは、数Aは3つの単元のうち2つを選択すればいいから、図形は捨てて、「確率」と「整数の性質」で受験します。
    そういう人は多いです。
    本当に図形が苦手で、何の望みもないのならそれでもいいのですが、「確率」も「整数の性質」も、数学センスが必要です。
    決まりきった定理を使うだけの図形問題よりも、「確率」や「整数の性質」のほうが発想力が必要で、攻略が難しく、半分も得点できない場合があります。
    特に「整数の性質」は、むしろ私はこの単元が得意な生徒に会ったことがほとんどないのですが、図形と異なり、苦手を自覚していない人が多いのです。
    「確率が苦手」「図形が苦手」という声は聴きますが、「整数の性質が苦手」という声は聞きません。
    しかし、現実には、最も得点が低いのは「整数の性質」で、ほとんど0点に近いのです。
    図形で半分得点することのほうが、むしろ可能なのではないか?
    少なくとも、図形問題を選択することが視野に入っていたほうが良いのではないか。
    そう思うことも多いのです。
    しかし、その決断をするには、図形アレルギーとでもいうものからは脱却しておく必要があります。
    普通に図形問題に対処できるようになっていないと、やはり「図形は苦手」という呪縛からは逃れられないようなのです。


      


  • Posted by セギ at 17:32Comments(0)算数・数学

    2020年06月07日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。数直線上の点の座標と内分・外分。



    さて、数Ⅱ「図形と方程式」。
    公式まみれの数Ⅱがいよいよ本格的に始まります。
    1つ1つの公式が全て大切で次につながるものですので、理解し、整理し、活用していきましょう。

    まずは数直線上の点の話から始まります。
    今回扱うのは数直線です。
    x軸とy軸がある座標平面ではありません。
    まずはそこからです。
    数直線上にも座標は存在します。
    数直線とはすなわちx軸のことで、それしか存在しないので、x座標しかないのだと思ってください。
    数直線上の3の位置に点Pが存在する場合、P(3)と書きます。

    次に、数直線上の2点間の距離について考えます。
    これは、中学生の頃にも学習しています。
    座標の大きいほうの点の座標から、小さいほうの点の座標を引けば、距離が出ます。

    例題 2点A(3)、B(-5)間の距離を求めよ。

    3-(-5)=3+5=8

    よって、距離は8です。

    よくあるミスが、
    3-5=-2
    距離は絶対値だから、答は2、としてしまうミスです。
    頭の中で思考が2回ねじれているのですが、ねじれていることに本人はなかなか気づかないので、一度このミスにはまってしまうと、解説や説得がほとんど無効状態になってしまうことがあります。
    数字にマイナスがついていると、それで混乱してしまうのか、1回しかマイナスを書かない癖は、中1「正負の数」を学習した当初から始まり、永遠に解決のつかない課題となりがちです。
    3から-5を引くのですから、3-(-5)が正しいのです。

    うっかり、3-5という式を立てて、結果が-2なったときに、気づくことも可能です。
    しかし、
    「距離が-2になるのはおかしいよね?」
    と問いかけても、
    「それは、3-5のところで符号を処理したから大丈夫」
    と不合理なことを主張し、異論は認めない、という状態になる子もいます。
    数直線を描き、
    「-5と3との距離は、どう見たって2じゃないよね?8だよね?」
    と示すと、ようやく理解してくれます。

    どうか、符号を無視せずに「引く」ということを強く意識してください。
    大きい数から小さい数を「引く」のです。
    7と5との距離なら、7-5=2 と正解できると思います。
    負の数になっても、それは同じこと。
    3と-5との距離は、3-(-5)=8 です。
    符号を一切省略せずに「引く」のです。
    それで正しい距離が出ます。

    3と-5との距離は、計算をするまでもなく8である、と認識できると本当は楽なのです。
    頭の中に数直線のイメージがあると、3と-5との距離は、計算するまでもなく、8です。
    原点からそれぞれの距離は3と5だから、2点間の距離は8だと、頭の中の数直線でわかるのです。
    この先、数Bで学習する「ベクトル」で、ベクトルの成分を求めていくときにも、
    A(-2,3)、B(4,-1)だから、ベクトルAB=(6,-4)
    と、見ただけで書いていくことができます。
    どちらからどちらを引いた、ではなく、x成分は-2から4に移動したのだから6だ、と見たまま書いていけるのです。
    y成分は、3から-1に移動したのだから、-4。
    頭の中の数直線で方向と距離を読み取っています。

    しかし、頭の中に数直線のイメージが存在しないと、この話は通じません。
    何を言っているのか全くわからない、という顔をされます。
    この断絶は、暗く深く、越えられないものなのかもしれません。
    頭の中の数直線は、中学に入学し数学を学び始めたときにイメージしていないと、高校2年になって急にイメージできるようにはならないようです。
    数学はすべて公式を丸暗記して数字を操作しているだけで、どんなイメージとも結びついていない。
    数学が苦手な子には、そういう子が多いです。

    話を戻して。
    3と-5との距離は、3-(-5)=8
    大きい数から小さい数を引くと、距離を求めることができます。
    符号を省略したりしなければ、必ず正しい距離が出ます。


    ところで、これは、最初から絶対値を利用する方法もあります。
    |-5-3|=|-8|=8
    |3-(-5)|=|8|=8
    これなら、2数の大小を確認せずに済みます。
    どちらの数からどちらの数を引いても同じです。
    同じ答えが出てきます。
    文字と数字、あるいは文字と文字との大小がわからないときは、これを用いることになりますので、こちらのほうが汎用性が高いといえます。
    大切なことは、必ず引くこと。
    その数についている負の符号を勝手に省略しないこと。
    その数の負の符号を、引き算のマイナスに使いまわさないこと。
    ちゃんと符号をつけて、そして引くこと。
    それさえ守れば、どちらの点の座標から先に書いても、距離は正しく求めることができます。


    続いて、内分点・外分点。

    まずは内分の定義から。
    下の図をご覧ください。

    A(1)   P(3)   B(7)

    線分ABの間に点Pがあります。
    点Pは、ABを内側で分けている点と見ることができます。
    このような点を内分点といいます。
    上の図では、AP=2、PB=4です。
    点Pは、ABを2:4、すなわち1:2に内分しています。

    A(1)  B(3)   P(9)

    この図はどうでしょうか?
    点PはABの外側にあります。
    このような点Pを外分点といいます。
    「分けていないのに外分というのは、納得がいかない」
    生徒から、このように言われることがあるのですが、内分とセットで外分という言葉を使っていると思って、そこのところは納得してください。
    上の図では、AP=8、BP=6です。
    このような場合、点Pは、ABを8:6、すなわち4:3に外分するといいます。

     P(2)  A(4)  B(8)

    この図は、点PがABの左側にあります。
    これも外分です。
    AP=2、PB=6 です。
    点Pは、ABを2:6、すなわち1:3に外分しています。

    外分点が線分の右にくるか左にくるかは、4:3や1:3といった比のどちらの数字が大きいかによります。
    初めて外分を学ぶと、上手く外分できず、結局全て内分してしまうことがありますので、できるようになるまで練習しましょう。
    最初の数字が大きい外分は、出発点から到達点を越えてグンと進んでから、相手の点に戻るようにすると外分できます。
    最初の数字が小さい外分は、まず出発点から、到達点とは反対方向に行ってから、到達点のほうにどんと進むと、外分できます。

    さて、内分・外分がわかったところで、内分点・外分点の座標の求め方に進みます。
    まずは内分点。
    公式は、これです。

    点A(a)、B(b)をm:nに内分する点の座標は、


    na+mb
    m+n

    です。
    これは、必ず覚えるべき公式です。
    今後もこの単元で出てきますし、忘れた頃、数Bの「ベクトル」の学習でも多用します。
    なぜこれで求められるのか証明を理解しておくと、万一公式を忘れた場合に自力で復元できます。
    A(a)、B(b)をm:nに内分する点をP(x)とします。

    A(a) P(x)  B(b)

    図を参照にしながら、比例式を立ててみましょう。
    (x-a):(b-x)=m:n
    となります。
    比例式は、内項の積=外項の積 ですから、
    m(b-x)=n(x-a) と変形できます。
    これを整理していきましょう。
    mb-mx=nx-na
    xの項を左辺に集めましょう。
    -mx-nx=-na-mb
    (-m-n)x=-na-mb
    x=(-na-mb)/(-m-n)
    分母・分子に-1をかけて、符号を整理しましょう。
    x=(na+mb)/(m+n)

    公式の通りになりましたね。

    次は外分点の座標の公式です。


    -na+mb
    m-n

    これが外分点の座標の公式です。
    証明しましょう。
    まずは点PがABの右にある場合。

    A(a)  B(b)   P(x)

    この位置関係ですね。
    比例式にすると、
    (x-a):(x-b)=m:n
    m(x-b)=n(x-a)
    mx-mb=nx-na
    mx-nx=-na+mb
    (m-n)x=-na+mb
    x=(-na+mb)/(m-n)

    点PがABの左にある場合はどうでしょうか?

    P(x)  A(a)  B(b)

    この位置関係です。
    (a-x):(b-x)=m:n
    m(b-x)=n(a-x)
    mb-mx=na-nx
    -mx+nx=na-mb
    (-m+n)x=na-mb
    x=(na-mb)/(-m+n)
    x=(-na+mb)/(m-n)

    やはり公式の通りになりました。
    点PがABの右にあっても左にあっても、外分点の座標は同じ公式で求められることがわかりました。
    あとは、この公式を正確に活用するだけです。
      


  • Posted by セギ at 15:29Comments(0)算数・数学

    2020年05月31日

    中1「正負の数」。加減と数直線。


    中1「正負の数」は、数学の学習の中で、もっとも簡単なようでいて、教えるのは最も難しいものの1つです。
    基本の基本になるほど、それを「わからない」という子に説明するのは困難を極めます。
    一応わかったのだろうと安心するのは禁物です。
    「正負の数」の単元の終わりに復習すると、
    (+1)+(+3)=-2
    といった答案を目にし、愕然とすることがあります。

    何で?
    それは、小学校1年生で学習した、1+3ですよ?
    答は4に決まっていますよ。
    なぜ、中学に入ったら-2になると思うの?
    なるわけないでしょう?

    といった「常識の押し付け」は、しかし、教える者と教わる者、両者にとって不幸です。

    それは、「正負の数」の体系が、その子の中に形成されていないということなのです。
    数学の学習が、やり方の丸暗記に終始しているのです。
    そして、やり方をちょっと間違ったために、そんな答になるのです。

    ・・・やばい、この子は全然わかっていない。
    根本的には何も理解していない。
    これは、最初からやり直しだ。

    教える者がそう判断しても、しかし、幾度やり直したところで同じ結果になるのかもしれません。
    「そんな答になるわけないでしょう!」
    と、大人が驚くのを見る度、子どもは委縮し、理解できていないことを隠そう、わかっているふりをしよう、とさらに必死にやり方だけ暗記し、表面上は正しい操作ができるようになるだけということも多いからです。


    学校や塾の教え方が悪いんじゃないのか?

    ある意味、そうなのかもしれません。
    しかし、弁解するなら、そうとばかりも言えない面もあるのです。
    やり方だけを説明しているわけではないからです。
    意味を丁寧に説明しても、その部分は聞き流し、やり方だけ暗記してしまう子が多いのです。

    順を追って説明しましょう。

    「正負の数」は、まず、正負の数の意味から学習が始まります。
    正の数と負の数が存在することは、大半の子が理解できます。
    寒暖計の目盛りの-10℃など、負の数の存在は、幼い頃から目にしていますから。
    そういうものが存在することは知っているのです。

    しかし、次の段階で早くもつまずく子が現れます。
    あることがらを、正負の数を用いて言い表す問題です。

    問題 次のことがらを正の数を用いて表せ。
    (1)-20㎏の増量
    (2)-30万円の収入
    (3)-1万人の減少
    (4)-4分の遅れ

    正解は、
    (1)+20㎏の減量
    (2)+30万円の支出
    (3)+1万人の増加
    (4)+4分の進み

    言葉遊びのようですが、後に正負の数の減法を理解するための全てがここに詰まっています。
    この言い換えが理解できないと、正負の数の減法の符号の操作は、理解できないのです。
    しかし、この問題の意味どころか、その重要性すら理解できずに通りすぎていく子は多いです。

    そうした子の誤答の例としては、
    (1)+20
    (2)+30
    (3)+1万
    (4)+4
    と、符号を+に変えただけで、単位もついていなければその後に続く言葉も書いていない場合が、まず多いのです。
    問題の意味を全く理解していません。

    「いや。その後に続く言葉も含めて、このことがら全体を正の数で言い表すんですよ」
    と説明しても、書き直したものは以下のような誤答という子が多いです。
    (1)+20㎏の増量
    (2)+30万円の収入
    (3)+1万人の減少
    (4)+4分の遅れ
    後ろにつく言葉を言い換えていないのです。

    「-20㎏の増量と、+20㎏の増量は、意味が反対だと思わない?それじゃ、同じことを言い表したことにならないよね?」
    「え?同じことを表すの?」
    「・・・そうですよ」

    何だと思っていたの?

    やり方しか暗記しない子の多くは、また、問題文をほぼ読まないという、もう1つの習慣を持っていることに思い至り、絶望の度合いを深めたりもするのですが、それを補助するのが私の役目です。
    中学入学は良い機会。
    悪い学習の癖を改め、やり方の暗記ではない学習、問題文を正確に読んで理解して解く学習習慣を身につけましょう。
    そう思って補助します。

    ところが、ここでまた「やり方だけ暗記する」という悪い習慣を発動する子が多いのです。
    -20㎏の増量は、+20㎏の減量と言い換えればいいらしい。
    ははあ、数字の符号を反対にして、言葉を反対にすればいいだけか。
    そのように「やり方」を把握し、それでさっさと処理する子が現れます。
    そのようにして正解は出せるのですが、意味はわかっていません。
    こんなことを、なぜ学習したのか?
    なぜこんな問題が出題されるのか?
    それは、全く理解していません。

    意味を理解すると、これは面白いのです。
    -20㎏の増量は、20㎏の減量。
    確かにそうだなあ。
    じゃあ、体重が1㎏増えたときは、「-1㎏減りました」って言えばいいんだ。
    1万円赤字のときは、「-1万円の黒字です」って言うんだ。
    面白い。
    ひねくれた言い方で、面白い。
    そうした言い換えを面白く感じ、頭に沁みていくなら、それが頭の中の数理の体系に静かに組み込まれていくのです。


    さて、とりあえず、このことは置いておいて。
    「正負の数の加法」すなわち、たし算の学習に進みましょう。

    正負の数のたし算の考え方の基本は、数直線上の移動です。
    正の数は、原点よりも右に移動した点。
    負の数は、原点よりも左に移動した点。

    (1) (+3)+(+5)
    これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、さらに右へ5移動することを意味します。
    右へ3移動し、さらに5移動。
    だから、答は、+8。

    (2) (+3)+(-5)
    これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、左に5移動することを意味します。
    右に3移動した後、左に5移動。
    結局、原点から左に2だけ移動したことになります。
    だから、答は、-2。

    (3) (-3)+(+5)
    これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、右に5移動することを意味します。
    左に3移動した後、右に5。
    だから、答は、+2。

    (4) (-3)+(-5)
    これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、さらに左に5移動することを意味します。
    左に3移動後、さらに左に5。
    だから、答えは、-8。


    これを理解できない子は、ほとんどいません。
    教科書や問題集に書かれた数直線上にペン先を立てて、一所懸命右へ左へと移動させて、答を導いていきます。

    そして、これが加法の本質であり、私は今もそれを頭の中でやっています。
    頭の中の数直線で数を移動させています。
    いちいち数直線を描いたり、数直線の目盛りを数えたりはしないだけで、頭の中に数直線のイメージは常にあります。
    やり方だけ暗記する子は、おそらく、頭の中に数直線のイメージがないのだと思うのです。

    なぜ、頭の中に数直線のイメージがないのか?
    次の学習段階で、この計算方法のルールをまとめてしまうことも一因かと思います。
    (+3)+(+5)=+8
    (+3)+(-5)=-2
    (-3)+(+5)=+2
    (-3)+(-5)=-8

    これからわかるルールは?
    同符号のたし算の答は、その符号で、絶対値の和。
    異符号のたし算の答は、絶対値の大きいほうの符号で、絶対値の差。

    このルールの整理は、頭の中の数直線上の移動を円滑にするための補助に過ぎないのですが、これが学習のメインになってしまう子が大半です。
    このルールを丸暗記し、そのルール通りの操作で以後は計算します。
    そのため、
    (+3)+(+5)=-2
    といった、ありえないミスをする子が出てきます。
    ルールを丸暗記して操作しているだけで実感はないので、そんな答の異常性には気づかないのです。
    やり方だけ暗記している子にとっては、正の数どうしのたし算すら、実感を伴うものではありません。


    さて、次に正負の数の減法に入ります。
    (1) (+3)-(+5)
    さきほど出てきた「言葉遊び」がここで生きてきます。
    「+5をひく」ことは、「-5をたす」ことと同じです。
    よって、
    (+3)-(+5)
    =(+3)+(-5)
    =-2

    (2) (-3)-(-5)
    「-5をひく」ことは、「+5をたす」ことと同じです。
    よって、
    (-3)-(-5)
    =(-3)+(+5)
    =+2

    正負の数の減法は、すべて加法に置きかえて計算できます。
    この世にひき算は存在しない。
    全て、たし算なのだ。
    そのように意識を切り替えるのです。

    理解していれば、何も問題はないのです。
    しかし、丸暗記で済ませている子にとっては、そろそろ重荷が増してきています。
    上のような符号の操作も、丸暗記で済ますしかないのです。
    -+は、+-に書き換える。
    --は、++に書き換える。
    というように。

    だから、ミスが絶えません。
    (+3)-(+5)
    =(+3)-(-5)
    =(+3)+(+5)
    =+8
    という謎の二度手間の誤答をこれまで幾度も見てきました。
    (-3)-(-5)
    =(-3)+(-5)
    =-8
    というミスも極めて多いです。
    全て丸暗記による操作ミスです。
    意味がわかっていたら、こんな誤答はしないのです。


    練習を重ねて、丸暗記で操作できるようになっても、「正負の数」の学習は、さらにここから難度を上げていきます。
    ( )を外す操作がここに加わるのです。
    +3は3のことなので、いちいち+は書かない。
    -は省略できないので、-を書く。
    +(-3)などは、-3 と表記する。
    このようなルールで( )を外すようになると、それまで必死に丸暗記したことがまた崩れ始め、混乱を起こす子は多いです。

    (+3)-(+5)
    =3-5
    =-2
    これで正しいのですが、

    (+3)-(+5)
    =3+5
    =8
    と誤答する子に、「なぜ?」と問いかけても、意味を考えて解いていませんから、理由はないのです。
    操作をちょっと間違えただけなのです。

    慣れてしまえば、( )なんかないほうが見やすくて楽だ。
    しかし、それはこの計算に習熟している大人の感覚。
    中学1年生にとって、このあたりの計算は、全力の800m走並みの負荷がかかる難度であり、「たかが正負の数」ではないのです。


    練習を重ねて、どうにか加減だけはできるようになっても、次は乗除の計算です。
    符号のルールをまた丸暗記しなければなりません。
    さらに加減乗除混合の四則計算に入ります。
    もう、符号はぐちゃぐちゃです。


    数学は、丸暗記で済ますには限界があります。
    意味を理解しなければ、先はありません。
    「正負の数」という単元で、何よりも学んでほしいのは、このことです。
    意味を理解して学んでください。
    頭の中に常に数直線をイメージし、実感で計算してください。


      


  • Posted by セギ at 15:35Comments(0)算数・数学

    2020年05月25日

    高校数Ⅰ「因数分解」の難問。



    高校数学には、普通の高校では授業では扱わない発展的な公式があります。
    あるいは扱っても「こんなのも一応あります」と紹介される程度で定期テストには出ないのです。
    その高校の先生の考え方によるのでしょう。
    高校1年の段階では、これは必要ない。
    文系・理系にコースが分かれた後、理系クラスだけの数ⅠA演習といった授業では扱う学校もあります。
    あるいは、高校1年の最初に、もう全部教えてしまう学校もあります。

    今回は、そんな公式の話。
    例えば、こんな問題です。

    問題 次の式を因数分解せよ。
    x3+y3-6xy+8

    うん?
    一見単純そうですね?

    x3+y3-6xy+8
    =(x+y)(x2-xy+y2)-6xy+8

    ・・・・あれ?この先、進まない。
    では、xで括ってみましょうか。

    x3+y3-6xy+8
    =x(x2-6y)+y3+8
    =x(x2-6y)+(y+2)(y2-2y+4)

    ・・・・あれ?やっぱり共通因数が見つからない。
    うーん?

    さらに頑張ってみましょう。
    最後の8は、2の3乗とみることができます。
    3乗の項が3つある・・・。
    これは、やはり、3乗の公式にからんだ何かが使える気がします。

    3乗の公式について、もう少し考えてみましょうか。
    高校で学習する3乗の公式に、こういうものがあります。
    (a+b)3=a3+3a2b+3ab2+b3
    これは、左辺と右辺をひっくり返してから部分的に移項することで、
    a3+b3=(a+b)3-3a2b-3ab2
    と変形することができます。
    これを利用してみましょう。

    x3+y3-6xy+8
    =(x+y)3-3x2y-3xy2-2・3xy+8
    順番を入れ替えながら、共通因数でくくってみましょう。

    =(x+y)3+23-3xy(x+y+2)

    ここで、x+y=A と心のなかで見立てながら、しかし、もう中学生ではないので、Aは使わずにくくっていきましょう。
    今度は、a3+b3=(a+b)(a2-ab+b2) という公式を使います。

    =(x+y+2){(x+y)2-2(x+y)+4}-3xy(x+y+2)

    共通因数 x+y+2 が見えました!
    くくります。
    ついでに{ }の中は適宜計算し整理します。

    =(x+y+2)(x2+2xy+y2-2x-2y+4-3xy)
    =(x+y+2)(x2+y2+4-xy-2y-2x)

    できたー!
    でも、大変だった・・・。

    こんなの自力で発想できない・・・。
    そんな声が聞こえてきます。
    確かに。

    実は、これ、発展的な公式を利用すれば、1行で因数分解は完成するのです。
    考え方は上と同じで、それを公式として固定化しているものがあるのです。


    その前に、まず基本的な因数分解の公式を確認します。
    因数分解の公式は、中学3年生で学習するものは、以下の通りです。
    a2+2ab+b2=(a+b)2
    a2-2ab+b2=(a-b)2
    x2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)
    a2-b2=(a+b)(a-b)

    高校1年、つまり数Ⅰで新しく学習するものは、

    acx2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)

    いわゆる「たすきがけ」の公式です。

    さらに、本当は数Ⅱの学習内容とされているけれど、一緒に学習してしまおうということで、多くの高校は、以下の公式も高校1年で学習します。

    x3+y3=(x+y)(x2-xy+y2)
    x3-y3=(x-y)(x2+xy+y2)
    x3+3x2y+3xy2+y3=(x+y)3
    x3-3x2y+3xy2-y3=(x-y)3

    しかし、因数分解の公式は、他にもあります。
    発展的な重要公式として有名なのは、以下の2つ。

    a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca=(a+b+c)2

    a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)

    問題に戻りましょう。
    x3+y3-6xy+8

    これは、上の公式の、
    a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)
    を利用できます。
    公式のaが上の問題でxにあたります。
    bがy。
    cが2。
    だから、-3abcは、-6xy。
    この公式を利用すれば簡単に因数分解できるのです。

    x3+y3-6xy+8
    =(x+y+2)(x2+y2+4-xy-2y-2x)

    できたー。
    公式を知っていると、早いですね。


    では、こんな問題はどうでしょうか?

    問題 次の式を因数分解せよ。
    (x-y)3+(z-y)3-(x-2y+z)3

    これも、先ほど使ったのと同じ公式を利用できそうです。
    3番目の(  )の前のマイナスは、その(  )自体に-の符号がついているのだと思えば良いです。
    負の数の3乗は、負の数です。

    でも、公式は、左辺に-3abcがあるけれど、この問題は、3乗の項が3つあるだけ・・・。
    そこも、頭を柔らかく。
    a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca) は、
    a3+b3+c3=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)+3abc
    と変形できます。
    そして、この形が案外使いまわしが効くのです。

    とはいえ、最後の+3abcの部分がはみ出すので、因数分解は完成しないのでは?
    本当にこれを利用して良いのかな?
    ちょっと不安になってしまいます。
    特に後半の長い(   )の部分を書いていくのは大変そうで、これで解けないのならやりたくない作業です。
    しかし、ここでためらい、やらずに済ませてしまうと、この問題は解けません。
    無駄に思えても思考錯誤は必要。
    他に策があるわけでもないのなら、思いついた策を試してみることが大切。
    やってみましょう。

    (x-y)3+(z-y)3-(x-2y+z)3
    ={(x-y)+(z-y)-(x-2y+z)}(・・・・・・・
    =(x-y+z-y-x+2y-z)(・・・・・・・

    ここまで書いて、気づくのです。
    最初の( )は、計算すると0になる!
    0に何をかけても0なので、公式の( )(     )の部分は全部0になって消えます。
    だから、+3abcの部分だけが残るのです。
    3番目の( )の前にマイナスがついていることに気をつけて、+3abcの部分を書いていくと、

    =-3(x-y)(z-y)(x-2y+z)
    =3(x-y)(y-z)(x-2y+z)

    できたっ!
    こうなると、単に公式を知っているかどうかだけではなく、その公式を利用するかどうか決断を迫られるところにちょっとワクワクしますし、ごちゃごちゃした部分が一気に消える爽快感もあって好きなタイプの問題です。

    発展的な公式に関するお話でした。
    覚えて使ってください。



      


  • Posted by セギ at 15:33Comments(0)算数・数学