たまりば

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2020年07月05日

分数のわり算はなぜ逆数をかけるのか。


昔のアニメに『おもひでポロポロ』というのがありました。
27歳の女性が、小5だった頃の自分のことを思い出しながら田舎を訪れ、そこで暮らすことを決意する。
そういうストーリーでした。

そのアニメの中で重要なエピソードの1つが、「分数のわり算」。
分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算に直すのか?
なぜそれで答が出るのか?
小5のヒロインは、それがどうしても納得できず、お姉さんに質問しますが、「そういうものなの!」と決めつけられ、むしろバカにされ、うるさがられます。
どうやら、小学校でも説明されていないことになっているようでした。
少し不器用なヒロインの性格を浮き彫りにするエピソードなのだと思います。

これは、このエピソードを作った人、すなわち原作者の実感なのだと思うのですが、本当にそうだったのでしょうか?
私は、分数のわり算がなぜ逆数のかけ算になるのか、小学校で教わりました。
教科書にも載っていた記憶があります。
私自身が教える立場になったときにも、理由を教えています。
今も、小学校の教科書に載っています。
だから、このアニメのそこのところを見る度に、ストーリーの本筋と関係ないとわかっていても、何だかちょっとモヤモヤするのです。
算数や数学が悪者にされているようで・・・。

分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算で計算できるのか。
この説明は、しかし、ちょっと面倒くさいのです。
小学生が理解するには難しい、段階を踏んで論理的な説明です。
順を踏んで、AならばBで、BならばCで、CならばDだから、結論として、AならばDである、というタイプの論理です。
一言で説明できることや、ひと目でわかることでないと理解しづらい、という子には向いていないかもしれません。

分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算で計算できるのか。
私が理由を説明している間、多くの小学生は、不安そうな表情を浮かべます。
難しくて、よくわからない。
この説明、早く終わらないかな、という顔です。
そして、まとめとして計算のやり方を説明すると、ほっと安堵の表情に変わります。
何だ、簡単だ。
逆数のかけ算にするだけなんだ。
良かった、良かった。

その瞬間に、それまでの長い説明は吹っ飛んで、記憶から削除されるのかもしれません。
こうしたことは、他にも沢山あると思います。
中学生になった後も、そうです。

3-(-2)=3+2 
のように、負の数を引くことが、正の数を足すことに書き換えられるのは、なぜなのか。

(-3)×(-2)=6
のように、負の数×負の数は、なぜ、正の数になるのか。

理由は説明されているはずです。
でも、よく理解できなかった。
そして、忘れた。
理由を説明されたという事実も忘れた。
そういうことは沢山あると思います。


分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算で計算できるのか?

代表的な考え方は2つあります。
まず、1つは、文章題から具体的に図を描いて考えていく方法。
分数を分数でわるというのは、具体的には、どんな場合でしょうか。
例えば、こんな問題を考えてみるのです。

問題 2/3dlで、3/4㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dlで何㎡の壁を塗ることができますか。

この説明が子どもにほとんど理解されない理由が、もうこれでわかった・・・。
そんな諦めの気持ちを抱く人もいるかと思います。
この文章題を解く式を自力で正しく立てられる小学生が、まずかなり限定されるのです。
「単位量あたり」の問題は、小学生には鬼門の1つです。

とりあえず、分数では難しすぎるので、整数で考えてみましょうか。

問題 3dlで7㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dlでは何㎡の壁を塗ることができますか。

・・・いいえ、これでも難しいのです。
生徒が本当に困った顔をしているので、理由を訊くと、
「わりきれないと思う・・」
と言い出す子が多いのです。
「いや、割り切れなくても、いいでしょう。答は分数になってもいいのですから」
と説明すると、驚いた顔をします。
答えが分数になる可能性を全く考えていず、普段は整数と小数だけで計算すると決めている子が多いのです。

問題 4dlで2㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dlでは何㎡の壁を塗ることができますか。

これなら、割り切れるから大丈夫でしょうか?
いいえ。
生徒の2人に1人は、間違った式を立てます。
式 4÷2=2 答2㎡

・・・いや、違います。
正しい式は、2÷4です。

何で4÷2という式を立ててしまうのかというと、「わり算は、文章の中の大きい数を小さい数で割ればいい」というとんでもないルールを低学年の頃に発見して、以後、それで文章題をやり過ごしている子が多いからなのです。
低学年の頃、最初にわり算を学習したときは確かにそうだったのでしょう。
小数も分数もまだ学習していないので、答を整数にするためには、大きい数÷小さい数の式しかない。
問題を作る側のそうした都合を、自分のルールに取り込んでしまっている子が多いのです。
そんなルールで文章題を解いているために、問題文を読まない習慣がつき、高学年になると、正しい式を立てることができなくなるのです。

問題 2dlで4㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dlでは何㎡の壁を塗ることができますか。

これなら、安心。
4÷2 という式を立てられる子が多いでしょう。
整数で考えたときに立てた式は数字が分数になっても同じ構造のはず。
では、一番上の問題は?

問題 2/3dlで、3/4㎡の壁を塗ることのできるペンキがあります。このペンキは、1dlで何㎡の壁を塗ることができますか。

式は、3/4÷2/3 ですよね?
単位量あたりの数値を出すときは、その単位の数値で割るんですよ。
1dlあたりを求めたいなら、dlのついている数値で割るんです。
これなら、安心。

・・・いえ、何も安心ではないでしょう。
もう既に、この段階で、子どもの気持ちはついてきていないです。
この式を実感できる子は、ほとんどいない。
こんな理解できない式を使ってそれから分数のわり算を逆数のかけ算で解く意味を説明されても、モヤモヤしてしまう・・・。

それでも、何とかここまで理解してくれた子に向けて、説明を続けます。
まず、縦1m、横1mの正方形の壁の図を描きます。
それを横に4つに区切って、下から3つ分まで薄く色を塗ってみましょう。
3/4㎡の壁に塗られたペンキの図をこれで描けました。
これが、2/3dlで塗った分です。
これを1dl分にいきなりするのは難しい。
でも、まずは、1/3dl分ではどれだけ塗れるか考えて、それから1dl分に直すことならできそうです。
さきほどの、3/4㎡の薄く色を塗った壁を今度は縦に2つに切り分けましょう。
今回は縦に切るのがコツです。
そのほうが切り分けやすいですから。
図から、1/3dlで塗れる壁は、3/8㎡であることが見てとれます。
では、1dlで塗れる壁は?
3/8㎡の3つ分であることが、これも図から見て取れます。
つまり、9/8㎡です。

これを途中式を加えて書き記していくと、
3/4÷2/3
=3/4÷2×3
=3/(4×2)×3
=(3×3)/(4×2)
=9/8

文字で一般化しましょう。
a/b÷c/d
=a/(b×c)×d
=(a×d)/(b×c)

おや?
これは、a/b×d/c=(a×d)/(b×c)と同じです。
つまり、分数のわり算は、÷の後ろの数を逆数にしたかけ算と計算方法は同じなのです。

これが、分数のわり算が、逆数のかけ算で計算できる理由の説明の1つです。
ネットだから説明しにくかった、ということもありますが、実際に図を見せたり、もっと見やすい分数の式を書いて説明しても、やっぱりわかりにくいのです。
しかも、これは、結果として同じ計算になりますね、というだけです。
なぜ逆数にするのかその理由を知りたいという気持ちに真正面から答えるものではないような気もします。
例えば「三角形の面積を求めるときは、平行四辺形の面積を求めて2で割る」というような、真正面からの理由ではありません。
その意識のズレも「理由を説明してもらえなかった・・・」という気持ちを引きずる子がいる原因なのかもしれません。


分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算で計算できるのか?
説明の仕方は、もう1つあります。
これは、分数×整数と、分数÷整数の計算の仕方はしっかり身について、それに対しては疑問はないという前提で説明が始まります。

分数×整数の計算は、大丈夫でしょうか?
2/5×3=(2×3)/5=6/5
これも、基本は面積の図を描いて説明します。
1×1の正方形をまず描き、それを横に5つに分けます。
1つ分が、1/5です。
下から2つ分に薄く色を塗りましょう。
それが、2/5です。
2/5×3は、2/5が3個あるということ。
同じ図を横に3個書き並べます。
3個分に薄く色を塗ります。
1/5が何個分でしょうか?
6個分ですね。
だから、答えは、6/5です。

一般化すると、分数×整数は、分母はそのまま、分子に整数をかければ答になります。


分数÷整数の計算はどうでしょうか?
2/5÷3は、どう計算しましょう。
これも、面積の図を描いて考えます。
1×1の正方形を描き、それを横に5つに分けます。
1つ分が1/5です。
下から2つ分に薄く色を塗りましょう。
それが、2/5です。
それを3つに分けます。
図を縦に3つに切り分けましょう。
横に5つに分け、縦に3つに分けたことになります。
1つ分は、15に分けた1つ分だということが、図から見てとれます。
すなわち、1つ分は、1/15です。
2/5を3つに分けた1つ分は?
1/15が2つ分であることが図から見てとれます。
だから、2/5÷3=2/15です。

一般化すると、分数÷整数は、分母のその整数をかけて、分子はそのままでよいことがわかります。

さらに、ここで、確認しておくことがもう1つ。
わり算の性質です。
わり算は、わられる数とわる数の両方に同じ数をかけても、または、同じ数でわっても、商は同じになるのでした。
例えば、
0.8÷0.2=4 です。
筆算で、小数点を移動して計算するのは、わり算のこの性質を利用していたのでした。
8÷2=4 と商は同じだということを利用しているのです。
わられる数とわる数を10倍しても、商は変わらないのです。
別に10倍でなくても、何倍でも商は同じです。
8÷2=4 のわられる数をそれぞれ3倍して、
24÷6としても、商は4です。
また、8÷2のわられる数とわる数のそれぞれを2で割って、
4÷1としても、商は4です。

分数×整数、分数÷整数、さらにわり算の性質。
この3つを利用して、分数÷分数の計算をやってみましょう。

3/4÷2/3

わる数が分数なので、このままでは計算できませんが、わる数を整数にすれば、分数÷整数にできます。
では、どうすれば、わる数を整数にできるでしょうか。
わる数の分母を払う、すなわち、2/3を3倍すればよいのです。
わる数だけ3倍するわけにはいきませんが、わられる数も3倍するなら、商は同じままです。

だから、(3/4 ×3)÷(2/3 ×3) とします。
=(3×3)/4 ÷2
分数÷整数をするのですから、分母に×2をすればよいです。
=(3×3)/(4×2)

これは、3/4×3/2=(3×3)/(4×2)と同じですね。

だから、分数のわり算は、逆数のかけ算に直して計算できるのです。

こちらのほうが、面積の図を描くよりもわかりやすいと言われることがあります。
しかし、分数÷分数の説明をするまでに遠い道のりを経なくてはならないということでは、同じです。
しかも、なぜ逆数のかけ算になるのかを真正面から説明したわけではありません。
そのせいか、記憶にも残りにくいようです。


分数のわり算は、なぜ逆数のかけ算になるのか?
・・・もういいから、やり方だけ覚えます。
そんな声も聞こえてきそうですが、今年はアクティブラーニング元年。
やり方だけ覚えるのではなく、理由を考え、説明できることが大切です。
意味がわかっていないことの上に学習を積み上げていくと、中学のいつか、あるいは高校のいつか、全崩壊します。
何をやってよくて、何をやったらダメなのか。
自分の中に根拠がないまま、とぼとぼと歩く数学学習の道は、暗く長いです。
1つ1つの霧を晴らしていきましょう。


  


  • Posted by セギ at 16:47Comments(0)算数・数学

    2020年07月03日

    数は音声では聞き取りにくいのです。


    ある年、中3の生徒の英語の1学期の期末テストの得点が普段より10点ほど下がったことがありました。
    見ると、リスニングでかなり失点していました。
    しかし、普段はリスニングが苦手な子ではなかったのです。
    英検3級のリスニング過去問は、毎回ほぼ満点を取ることができていました。
    話を聞くと、内容に特徴があったことがわかりました。

    場面は空港。
    飛行機の出発時刻とゲート番号が列挙されたアナウンスを聴き取るものだったそうです。
    中学生向けですから、英文はゆっくり読まれたと思います。
    それでも、時刻や番号が列挙されると混乱し、数字を聴き取り間違えてしまったのです。

    数字は、視覚での情報伝達力は極めて高いのですが、音声で伝えられると把握しにくい傾向があります。
    日本語での口頭の場合も、数字は他の単語よりも聴き取りにくいです。
    まして英語で数字を聴き取るのは、難しくて当然です。

    私個人は、小学生の頃に珠算教室に通い、「読み上げ算」を練習していますので、日本語による数字の聴き取りは比較的得意なほうだとは思っています。
    今も塾での算数・数学の宿題の答えあわせは、生徒が口頭で数字や式を読み上げ、正解かどうか私が判断することが多いです。
    これが逆に、私が正解を口頭で述べ、生徒が自分で丸付けをすることにしたら、正しく聞き取れず、間違っているのに丸をつけてしまう子がいるだろうと予想されます。
    とはいえ、生徒の読み上げる数字はスピードが速すぎるうえに語尾が不明瞭なことがあります。
    もしもそのスピードと不明瞭さで私が数字を読み上げたら、あなたは聴き取れないでしょう、と思うこともあります。
    数字を読み上げるときは、ゆっくりはっきり言わないと正確に伝わらないということが、年齢的にまだ理解できないから仕方ないのです。
    速く読み上げることが頭の良さの証明だという誤解もあるかもしれません。
    ただ、こういうことは、注意しても、「別にいいじゃん。聴き取れないのは、そっちの責任じゃん」という反発心を起こさせる小言の類に聞こえそうで、私も余程速い場合以外は注意しないのですが。
    同じ生徒が、私が正しい式をゆっくり読み上げても、上手く聴き取れないことがあります。
    そんなときが良い機会です。
    私がホワイトボードに式を書いていくと、その子は、当然理解できます。
    そうした経験を重ねることで、数字は、音声で早口に読み上げても伝わらないということを実感してくれるようです。
    ゆっくりはっきり読み上げることを徐々に学んでいくのです。
    それは客観性や社会性の獲得ということでもあると思います。

    例えば電話番号を早口でペラペラペラっと伝えられたら、誰でも「はあ?」と思いますよね。
    相手の社会性を、むしろ疑う事態です。
    数字は、はっきり、ゆっくり読む。
    そして、互いに確認しあう必要があります。


    日本語でも難しいのですから、英語のリスニングで数字にまつわる問題が出題されると、非常に難度が上がります。
    社会人向けの英語検定なら、そうした出題は当然でしょう。
    ビジネスに数字はつきものですから。
    しかし、英語を学び始めたばかりの子にとって、数字の聴き取りはハードルが高いです。

    何年か前、都立高校の英語リスニング問題で、電話番号の問題が出題されたときも、その問題だけ正答率が低かったのです。
    男女の会話で、間違い電話の受け答えを聴いて、問いに答える問題でした。
    間違い電話をするくらいですから、番号は部分的に数字が入れ替わっているものでした。
    間違った番号と正しい番号と両方を英語で言われ、正しい電話番号を以下から選べ、と言われても、それは混乱しますよね。

    男「もしもし、〇〇さんのお宅ですか」
    女「いいえ、違います。何番におかけですか」
    男「そちらは、いちさんはちよんのごさんはちいちではありませんか」
    女「いいえ、うちは、いちさんはちよんのごはちさんいちです」
    男「ああ、間違いました。すみません」
    女「どういたしまして」
    聴き取りにくさをあえて日本語で表記すれば、こんな感じでしょうか。


    中1の最初の定期テストの場合、そもそもリスニング問題に上手く対応できない可能性もあります。
    これも何年か前、英語のリスニング問題を塾の授業中に最初に行ったときのこと。
    CDには日本語でくどいほどの説明があるし、例題とその解説もあるから大丈夫だと思っていたら、いざ第1問が始まると、
    「え?何をするんですか?」
    と声を上げた子がいて、慌ててCDを止めたことがあります。
    最初に説明したつもりだったのですが、その子にとっては、十分な説明ではなかったのでしょう。
    CDの説明をよく聴いてその通りにしなさい、という指示を出さなかったのがまずかったのだと思います。
    いや、そもそもリスニングテストというものが英語にはあるのだという話から始めるべきだったのかもしれません。
    初めてのことに対する抵抗感と不器用さに関して、現代の子は突出していることがありますから、中1の最初の定期テストのリスニングは白紙答案になってしまわないかと心配です。
    何をどうすれば良いのか、全くわからなかった。
    白紙答案を見せて屈託なくそう言う子が現れる可能性は毎年あります。

    「学校で、定期テストにリスニング問題が出るという話はありましたか」
    中1の生徒にそう問いかけても、首をかしげています。
    「・・・いや、たぶん出題されるので、そのつもりでいてね?」
    リスニングは色々な出題形式があるから、日本語の説明をよく聴いてね。
    選択肢があるとは限らないですよ。
    聴き取った英文を書くのかもしれません。
    とにかく、その場でパニックを起こさないでね。
    色々とくどいほど話すのですが、それでも心配は尽きません。

    そんな状況なのに、英語で数字を読み上げて書き取る問題が出題されたらどうしましょう。
    日本語で出題しても難しい問題を英語で出されても・・・。
    そういうのは、英語力以外の何かが付加された課題です。
    でも、やっぱりそれは、英語力かなあ。
    上手く対応できますように。
    そう願うこの頃です。


      


  • Posted by セギ at 14:33Comments(0)算数・数学英語

    2020年06月30日

    小学校算数。点対称の図形。



    「対称な図形」は、小学校6年生で学習する単元です。
    教科書によるのですが、この単元が6年生の教科書の冒頭にあり、しかも、学校が休校のため、これを独学するのが宿題だった子も多かったようです。
    なお、三鷹市以外で採択されている教科書では、最初の単元が「ならべ方・組み合わせ方」のものもありました。
    樹形図の描き方は、手取り足取りで教えないと中学生でもなかなか定着しないのに大丈夫なのかしらと、これも心配でした。
    そして、登校が始まったらあっという間に1つの単元が終了し、カラーテストを受けることとなり、苦労した子も今年は多いようです。

    さて、まずは、線対称。
    折り紙のように真ん中で折り重ねたとき、ぴったりと重なる図形が、線対称な図形です。
    方眼紙に線対称な図形の半分が描かれていて、残り半分を完成させる問題が典型題です。
    対称の軸が方眼紙上に垂直または水平に引かれている場合は、易しいです。
    これは、理解できない子はほとんどいません。

    ところが、上の図1のように、対称の軸が斜めになると、少し混乱する子が現れます。
    完成図を正しくイメージすることができないのです。
    頭の中に誤ったイメージが浮かびやすく、それが邪魔になる様子です。

    例題などで最初に練習した問題の対象の軸が垂直方向だったため、対応する点や線分はすべて水平移動だと思い込んでしまう場合があります。
    上の図1でいえば、矢印の先端部分の線分が、水平移動だと思い込むのです。
    「・・・方眼紙から飛び出すけど、いいですか」
    という質問をするので、え?と思い、その子がどういう誤解をしているのか気づくことがあります。
    図1で、水平方向の線分は、対称移動すると垂直方向の線分になります。
    それをイメージできないのです。

    図形のイメージ力は個人差が大きいです。
    頭の中に描くイメージだけで図を完成させられる子もいます。
    しかし、本人のイメージ力が弱い、あるいは誤謬が多い場合は、想像するだけでは図を完成させることができません。
    その場合は、理屈で図を完成させればよいのです。
    それは「逃げ」ではありません。
    線対称の図形の性質を正しく使用して作図するのですから、それもまた数学的な態度です。

    では、線対称な図形の性質とは何か?
    ①対応する辺の長さは等しい。
    ②対応する角の大きさは等しい。
    ③対応する点を結んだ線分は、対称の軸と垂直に交わる。
    ④対応する点と対称の軸との距離は等しい。

    これらの性質を利用し、図中に描かれている点を対称移動することで、残り半分を描いていきます。
    上の図1でいえば、一番上の「矢印のてっぺんの点」は、対称の軸上にある点なので、移動せず、そのままです。
    いや、完成図が「矢印」になるとわかっている時点で正しいイメージができているのですが、それは説明のための方便としてお許しください。
    てっぺんから「左に5」だけ移動した位置にある点を正しく打ち込めるかが、最初の鍵です。
    対称の軸が方眼紙に垂直だろうが斜めだろうが、対応する点を水平に移動させる間違ったイメージが邪魔をします。
    その最初の点を打ち間違えたら、もう残りはぐちゃぐちゃです。

    方眼紙に描く場合でも、定規をあてるとかなり楽になります。
    理想は三角定規ですが、おそらく道具袋の奥にあり、探すのが大変でしょうから、普通の定規で大丈夫です。
    短い定規は、ペンケースに常に入れておくと便利です。
    その定規を、対称の軸と垂直の位置におきます。
    大体で構いません。
    対称移動する方向さえ見えてくればよいのです。
    矢印のてっぺんから「左に5」の位置にある点は、どこに移動するか?
    予想外に下のほうに移動するのだと、定規を使うことでイメージできます。
    距離は?
    対応する点と対称の軸との距離はそれぞれ等しいのだから、大体このあたりの点?
    では、正確には?
    対応する辺の長さは等しいのだから、てっぺんの点から下に5の位置?
    これで正確な点の位置が判断できます。

    この点を1つ打ち、てっぺんの点と結べば、残りのイメージは正確に描ける子が多いです。
    ああ、こういう向きだったのかあ。
    わかったー。
    感動の声を上げて、残りは自力で描きあげていきます。

    しかし、イメージ力には個人差があり、それでもその先をイメージできない子も中にはいます。
    その場合は、次の点も、上と同じ作業を繰り返し、定規をあてて、対称移動した先のおおよその位置を特定していきます。


    線対称の場合は、上の作業で大多数の子が描けるようになりますが、点対称の場合は、もっと苦闘する場合があります。
    図2を見てください。
    描かれている半分は図1と同じですが、完成される図は「矢印」ではありません。
    「矢印を描く」という固定観念にしばられ、完成イメージを思い描けない子が多いです。
    点対称の図を描いているつもりでも、途中から線対称の「矢印」を描き始めてしまうのです。
    正しい点を打っているのに、矢印にならないことに混乱してしまう子もいます。
    完成させるべき図は矢印ではないのに、矢印を描こうとして苦闘するのです。

    図2の問題は、大人の人でも苦戦される方がいらっしゃると思います。
    何の手がかりもなく、上の図2を見ただけで点対称の図形の完成図をイメージできる人のほうがむしろ少ないでしょう。
    それは特別なイメージ力を持っている方だと思います。
    しかし、そんな特別な才能を持っていなくても、点対称の図形を完成させることはできます。

    こちらも、点対称の図形の性質を使えば、正しく作図できます。
    では、点対称な図形の性質とは何か?

    ①対応する辺の長さは等しい。
    ②対応する角の大きさは等しい。
    ③対応する点を結んだ線分は、対称の中心を通る。
    ④対応する点と対称の中心との距離は等しい。

    つまり、これも、定規を使用すれば、正しい位置に対応する点を打っていくことが可能です。
    まず、移動したい点と対称の中心を直線で結びます。
    その直線上のどこかに、対応する点があります。
    対応すると点と対称の中心との距離は等しいです。

    どの点から始めても大丈夫ですが、点Oに近いところから始めたほうが混乱を避けられると思います。
    まず、点Oから上に2の位置にある点から移動しましょう。
    その点と点Oとを結んだ直線は、方眼の垂直方向の直線です。
    距離は、点Oから2。
    よって、点Oから下に2の位置にこの点は移動します。

    ここからは何通りかのやり方がありますが、移動した点から次の点に移動するほうが楽かもしれません。
    最初に注目した点から、次の点は、左に2、上に2だけ移動した位置にあります。
    点対称は180度回転するのですから、移動後の点から右に2、下に2だけ移動したのが次の点です。
    点を打ったら、すぐに前の点と結び、線分を明らかにしておきましょう。
    点だけ先に全部打って後で結ぼうとすると、間違った点どうしを結んでしまい、混乱を助長させてしまう可能性があるのです。
    移動前の点と移動後の点に定規を当て、ちゃんと対称の中心を通っているかも確認します。
    この繰り返しで点を移動していくと、徐々に図形が見えてきます。
    完成図のおおよそがイメージできるようになったら、上の作業を省略し、自分の力で次の点を打っていっても大丈夫でしょう。
    ときどき定規を当て、対応する点を結んだ線分が対称の中心を通っているか確認すれば、さらに間違いないです。
    そのようにして完成した図が、下の図となります。


      


  • Posted by セギ at 13:24Comments(0)算数・数学

    2020年06月21日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。



    今回の学習内容は、数Ⅱ「図形と方程式」の中の、直線の方程式です。

    直線の方程式の求め方は、中学2年の「1次関数」で学習しています。
    例えば、こんな問題。

    問題 点(6,-1)を通り、傾きが-1/2の直線を求めよ。

    まずは、中学生の解き方で解いてみましょう。
    直線の式は、1次関数です。
    1次関数の一般式は、y=ax+b。
    このaとbには具体的な数字が入り、個々の直線の式を表します。
    aは傾き。bは切片。
    今は傾きが-1/2とわかっていますので、a=-1/2です。
    これを一般式に代入して。
    y=-1/2x+b。
    ところで、点(6,-1)はこの直線上の点なのですから、この点のx座標とy座標は、上の式の関係を満たします。
    x=6、y=-1 を代入して、上の式が成り立つということです。
    では代入しましょう。
    -1=-1/2・6+b
    -3+b=-1
    b=2
    よって、求める直線の式は、 y=-1/2x+2 です。

    数学が苦手な子は、こういう問題の作業手順だけ覚える傾向があり、しかも、1つ1つ手順を踏まず、一気に全部代入して解く子も多いです。
    最初は意味がわかったうえでそうするのでしょうが、意味はたちまち後退し、単なる作業手順になります。
    「1次関数」が範囲の定期テストが終わってひと月も経てば、こんな基本問題も、どうやって解くのか曖昧になります。
    復習しようと自分のノートを見直しても、何もかも一気に代入した、
    -1=-3+b
    という式が唐突に書いてあるだけなので、何をどうしたのか、自分でもわからなくなってしまいます。

    また、応用問題を解くときに、上の問題と同じ考え方で、点の座標がわかれば直線の式を求められるという発想を持つことができず、座標平面と図形の問題は歯が立たない子も多くいます。
    手順だけになってしまい、意味がわかっていないからなのでしょう。
    「意味がわかるようにノートをとっておくといいよ」
    「代入は一気にやらず、まずy=-1/2x+bの式を立てて、それから点の座標を代入すると、後で意味がわかるよ」
    と繰り返し助言しますが、聞いてくれない子もいます。
    説明を聞いた直後なので、そのときは意味がわかるから大丈夫と思うのでしょう。
    今はわかっても、明日はわからないかもしれないのに。
    記憶なんて、すぐに消えてしまいます。
    単なる操作は、意味を伴っていなければ記憶に残ることは少ないのです。

    意味がわかるように答案を作っていくこと。
    数学の記述答案で必要とされているのは、とりあえず、それです。
    どういう考え方で、何の定理や公式を用いて、どう解いているのかを示しながら解いていく。
    中学の間はそれがなくてもある程度許されますが、高校数学になると記述答案としての体裁が整っているかが答案として重要となります。
    数学の答案なのに日本語が多くなり、「何で式と答えだけじゃダメなんだろう?」と不満を感じる子もいると思います。
    しかし、1週間も経てば、自分の立てた式の意味さえ自分でわからなくなるのが高校数学の答案です。
    塾の宿題の答えあわせでも、
    「どうやって解いたの?」
    と質問すると、絶句する高校生が多いのです。
    「・・・とにかく、答案を1行目から読んでみて」
    と声をかけても、絶句しています。
    書いた本人が全く意味がわからないので、読み上げることもできない。
    そんな状態の様子です。

    そんな状態なのに、答案を読む採点者に、「式の意味はおまえが判読しろ」、「そして採点しろ」、「部分点くらいよこせ」、と言っても、無理です。
    ヒントをください。
    どういう考え方でその式を立てたのか、式の前に1行でいいから説明をください。
    そうすれば、たとえ誤答だとしても、全くの勘違いによる式なのか、代入ミスなのか、判断することができます。
    採点者が求めているのは、そういうことです。
    そして、それが記述答案の根本です。

    記述答案を書かねばならないと納得しても、今度は、ルールがわからない、ここはどう書くの、ここはどうするの、と不安になり、1行も書けない子がいますが、絶対の形式があるわけではありません。
    大切なのは、読む人の立場になって書くこと。
    それは、結局、時間が経過した後の自分が読んでも意味がわかるということ。
    ルールは、究極、それです。


    さて、問題に戻りましょう。
    問題 点(6,-1)を通り、傾き-1/2の直線の式を求めよ。

    高校数Ⅱは、これを一気に解く公式を学びます。
    点(x1,y1)を通り、傾きがmの直線の式は、
    y-y1=m(x-x1)

    この公式の証明は簡単です。
    求める直線の式を、
    y=mx+n ・・・➀
    と表します。
    この直線は、点(x1,y1)を通るのですから、
    y1=mx1+n ・・・➁
    が成り立ちます。
    ➀-➁をすると、
    y-y1=(mx+n)-(mx1+n)
    y-y1=mx-mx1
    y-y1=m(x-x1)
    これが公式です。

    点(6,-1)を通り、傾き-1/2の直線だから、
    y-(-1)=-1/2(x-6)
    y+1=-1/2x+3
    y=-1/2x+2

    これで、公式のバージョンアップが行われたことになります。
    しかし、これがなかなか厄介で、中学時代の解き方を手放せない子が現れます。
    作業手順だけ丸暗記するタイプの子なら、この新しい公式も丸暗記して使えば良いようなものですが、なかなかそう簡単にはいきません。
    何度も忘れては覚え直すことを繰り返してようやく作業手順を覚えた中学生の解き方を、そう簡単には手放せないのでしょう。
    高校の公式を使えば秒殺の問題を、何だかあれこれ迷い、思い出しながら解いているので、何をしているのかなあとノートを覗くと、中学の解き方で解いている。
    そういう光景に何度も遭遇しました。

    本人にバージョンアップしたい気持ちがないわけではないのです。
    でも、覚えられない。
    中学の頃は、この直線の式の求め方だけで学校の授業は1~2時間使ったし、学校のワークもそれだけで2ページくらいぎっしり問題があって沢山練習できました。
    高校の授業は、新しい公式がさっと出てきて、スッとすぐに次の公式に進んでしまいます。
    高校から配られている問題集も、この公式の練習問題は小問が5~6問程度です。
    定着しないうちにスルスルと先に進んでしまいます。

    定期テスト前にまとめて丸暗記しよう、あるいは、中学の解き方でも答は出るからいいじゃん、と思って先に進んでいくと、しかし、えらい目にあいます。
    その先、問題が複雑になったときに、学校の問題集の解説を読んでも、意味がわからないのです。
    何でこんな式が唐突に立てられているのか、意味がわからない。
    解説が3行くらいすっ飛んでいるような気がする。
    記述答案は意味がわかるように書けって言ったくせに、模範答案であるはずの問題集の解答解説の意味がわからないってどういうこと?

    ・・・・公式を覚えていないからなのです。

    応用問題の中で、基本公式の意味を逐一解説することはありません。
    点(6,-1)を通るから。
    丁寧な解説でも、それくらいの1行しか書いてありません。
    それで記述答案としては十分です。
    それで意味がわからないのは、公式を覚えていないからなのです。
    解説を読んでも意味がわからない場合の大半は、本人が公式や定理を覚えていないことに原因があります。

    高校数Ⅱはこれから、怒涛の公式ラッシュが始まります。
    数学が苦手だけれど、大学受験のために数Ⅱのマスターがどうしても必要な場合、独りで勉強するのが苦しいのはこの点です。
    公式の解説だけなら、塾に行かなくても、ネットに沢山解説が上がっていますし、動画もあります。
    しかし、いざ自分で問題に取り組むと、その問題集の解答解説を読んでも意味がわからないことが多いのです。
    模試の問題も、解説を読んでも意味がわからない。
    使っている公式が何なのか、わからないからなのです。

    どの公式を覚えていないから、その状態なのか。
    どこからつまずいているのか。
    それすら、自分では、わからないのです。
    そうして、今度こそ、意味をしっかり理解しようとしても、意味がわからない。
    今まで、意味を無視してきたのですから、高校数学になって急に意味を読みとろうとしても、理解するための基盤がないのです。

    数Ⅱ「図形と方程式」がわからない高校生の多くは、中学の図形分野だけでなく関数でもつまずいている場合が多いです。
    そうした場合は、点の座標と直線の式との関係など、根本が理解できていない可能性があります。
    なぜ点の座標を直線の式に代入できるのか、その根本がわかっていない子は沢山います。


    今回、公式はもう1本。
    点(x1,y1),(x2,y2)を通る直線の式は。
    y-y1=y1-y2/x1-x2 (x-x1)

    これは、上の y-y1=m(x-x1) という公式の傾きの部分を、
    y1-y2/x1-x2 としたものです。

    中学で学習した直線の公式 y=ax+b のaは、直線の傾きでした。
    直線の場合、傾きは、「変化の割合」と等しいのでした。
    「変化の割合」は、 yの増加量 / xの増加量 で求めることができました。
    だから、直線の傾きは、y1-y2/x1-x2 です。


    この説明がすんなり理解できない場合、中2「1次関数」で忘れていることが多いと思います。
    やり方や作業手順だけ覚えているが、意味を忘れている・・・。
    そのような状態であるため、高校数学の公式の意味や説明が理解できないのです。

    本当は、そうなる前、出来れば中学生のうちに、数学の学習姿勢を変えてほしかった。
    でも、それが出来ないまま、高校2年になってしまったなら。
    何もかもがわからない状態であると、気づいたのなら。
    戻りましょう。
    答の多くは、中学数学にあります。

      


  • Posted by セギ at 14:19Comments(0)算数・数学

    2020年06月14日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。座標平面上の点の座標と内分・外分。


    数Ⅱ「図形と方程式」、今回は2回目です。
    前回は、数直線上の内分点、外分点の座標の求め方を学習しました。
    今回は、座標平面上の線分の内分点・外分点の座標の求め方です。
    まずは上の左の図を見てください。
    座標平面上に点A(x1,y1)、点B(x2,y2)があります。
    この2点を結んだ線分ABをm:nに内分する点Pの座標を考えます。

    斜めになっているけど、何とかして線分ABの長さを求めて、それを内分するのかな?
    三平方の定理を使えば、長さは求められるから・・・。

    そういう考え方もわからなくはありませんが、もっと簡単に求めることができます。
    これ、まずはx座標のことだけ考えましょう。
    点A、Bのx座標をx軸に記してみます。
    それぞれの点から真下に点を下ろしていくイメージです。
    上の図の赤で記したものがそれです。
    赤で示した3本の点線は全て平行です。
    したがって、平行線と線分の比から、線分AB上でm:nだったものは、x軸上でもm:nであることがわかります。
    つまり、求めたい点Pのx座標は、点AとBのx座標を内分の公式に当てはめて求めることができます。
    すなわち、点Pのx座標は、


    nx1+mx2
    m+n

    となります。

    同様に、点Aと点Bのy座標をy軸上に記して考えるなら、点Pのy座標は、AとBのy座標を内分の公式に当てはめれば求めることができます。
    点Pのy座標は


    ny1+my2
    m+n

    となります。

    以上の説明でわかりにくいところがある場合、以前に学習したことが曖昧になっている可能性があります。
    おそらく、「平行線と線分の比」のことを忘れているのではないかと思うのです。
    中3「相似」の単元で学習している定理です。
    高校で図形に関係した問題がよくわからない人は、中3の「相似」をマスターできていない場合が多いです。
    平行線と線分の比。
    三角形の相似条件。
    中点連結定理。
    角の二等分線の定理。
    三角形の辺の比と面積の比。
    これらの基本の定理を復習すると、少なくとも、問題集の解答解説を読んでも意味がわからない・・・ということが今までよりは減ってくると思います。


    問題 4点A(-2,0),B(-3,-2),C(0,-1),Dを頂点とする平行四辺形ABCDがある。頂点Dの座標を求めよ。

    座標平面について初めて学習する中学1年生の数学でも、これと同じ問題は存在します。
    中1では、点Bから点Aへの座標上の移動を読みとり、同じように点Cから点Dへ移動していることからDの座標を求めます。
    点Bから点Aへは、x軸の正の方向に1、y軸の正の方向に2だけ移動しています。
    したがって、点Cから点Dへも同じだけ移動します。
    点C(0,-1)をx軸の正の方向に1、y軸の正の方向に2だけ移動すると、(1,1)。
    よって、D(1,1)です。

    その求め方でも構わないのですが、対角線の中点の座標を利用して求める方法もあります。
    この平行四辺形の対角線はACとBDです。
    そして、平行四辺形の対角線は、それぞれの中点で交わります。
    これは、中2「三角形と四角形」の単元で学習した、平行四辺形に関する定理です。
    この定理を利用します。
    A(-2,0),C(0,-1)の中点の座標はx座標、y座標をそれぞれ足して2で割れば良いのですから、(-1,-1/2)となります。
    対角線BDの中点も同じ座標です。
    中点の座標の求め方も既習ですが、内分の公式で解いても構いません。
    これを利用して、方程式を立てます。

    D(x,y)とすると、
    -3+x /2=-1 
    -3+x=-2
    x=1

    -2+y /2=-1/2
    -2+y=-1
    y=1

    よってD(1,1) となります。

    ここまで書いていて、自分でもただし書きが多い、と感じます。
    ただし書きが多くなるのが、この「図形と方程式」という単元の特徴です。
    中学・高校の数学でこれまで学習したことを忘れていると、そこでいちいちつまずくことになるのがこの単元です。
    覚えてはすぐ忘れる学習を繰り返してきた人が、高校2年で数学が全くわからなくなる最大の理由はそれです。
    中学で学習したことも含め、これまで学習したすべてを使わないと理解できないし問題を解けない。
    そういうことが多いのです。

    次に学習する重心の座標も、そうです。

    三角形の重心。
    三角形には外心・内心・重心・垂心・傍心の5種類の点が存在します。
    それを三角形の五心と呼びます。
    中3数学でも発展的なテキストには載っていますし、高校数Aの「図形の性質」でも学習する内容です。
    外心は、三角形の外接円の中心。
    内心は、三角形の内接円の中心。
    重心は?

    三角形の頂点と対辺の中点を結ぶ線分を中線という。
    三角形の3つの中線は1点で交わる。
    この点を三角形の重心という。

    これが、重心の定義です。
    また、重心は、各中線を2:1に内分します。
    これも非常に重要です。
    中3か数Aのテキストに戻って復習すると、理解が深まると思います。

    今回学習するのは、重心の座標の求め方です。
    A(x1,y1),B(x2,y2),C(x3,y3)の三角形ABCの重心の座標は?
    まず、頂点Aから辺BCに中線を引きましょう。
    頂点Aと、BCの中点Mとを結んだ線分です。
    Mの座標は、(x2+x3 / 2 , y2+y3 / 2)。
    重心Gは、線分AMを2:1に内分する点ですから、内分点の公式にあてはめ、整理すると、

    G(x1+x2+x3 / 3 , y1+y2+y3 / 3)

    となります。

    問題 △ABCの頂点A、Bの座標はそれぞれ(4,-4),(-1,4)で、重心Gの座標は(-1,2)である。頂点Cの座標を求めよ。

    C(x,y)とします。
    公式にあてはめると、x座標に関しては、
    4-1+x / 3=-1
    3+x=-3
    x=-6

    y座標に関しては、
    -4+4+y / 3=2
    y=6

    よって、C(-6,6) です。


    繰り返しますが、図形問題が苦手という人は、それまでに学習した定理が身についていないために問題を解けないのです。
    説明されれば定理を思い出せるというのでは自力で発想することはできません。
    まして、説明されても「そんな定理ありましたか?」とポカンとしてしまうのでは、問題を解けるわけがないのです。

    センスも勿論あります。
    二等辺三角形を横たえた途端に、それが直角三角形に見えてしまう。
    正方形を斜めにすると、それがひし形にしか見えなくなってしまう。
    見取り図が平面のままに見え、立体的に把握することができない。
    三角形が線分で分割されていると、もとの三角形を認識できない。
    そうした、視覚的な課題を抱えている場合は、そうではない場合と比べれば、図形問題を解くまでに解決すべき課題が多いです。
    しかし、努力で解決できることもまた多いのです。
    図形問題が苦手な人は、図形問題を自力で解いた経験があまりないまま高校生になってしまっています。
    中学の図形問題を解いたことがないのに、高校の図形問題が解けない、解けない、と苦しんでいます。
    中学の図形に戻って復習すれば、スッキリします。

    「図形は苦手だから、捨てます」
    文系の生徒の場合、そういう決断をしてしまう人もいます。
    大学入試共通テストでは、数Aは3つの単元のうち2つを選択すればいいから、図形は捨てて、「確率」と「整数の性質」で受験します。
    そういう人は多いです。
    本当に図形が苦手で、何の望みもないのならそれでもいいのですが、「確率」も「整数の性質」も、数学センスが必要です。
    決まりきった定理を使うだけの図形問題よりも、「確率」や「整数の性質」のほうが発想力が必要で、攻略が難しく、半分も得点できない場合があります。
    特に「整数の性質」は、むしろ私はこの単元が得意な生徒に会ったことがほとんどないのですが、図形と異なり、苦手を自覚していない人が多いのです。
    「確率が苦手」「図形が苦手」という声は聴きますが、「整数の性質が苦手」という声は聞きません。
    しかし、現実には、最も得点が低いのは「整数の性質」で、ほとんど0点に近いのです。
    図形で半分得点することのほうが、むしろ可能なのではないか?
    少なくとも、図形問題を選択することが視野に入っていたほうが良いのではないか。
    そう思うことも多いのです。
    しかし、その決断をするには、図形アレルギーとでもいうものからは脱却しておく必要があります。
    普通に図形問題に対処できるようになっていないと、やはり「図形は苦手」という呪縛からは逃れられないようなのです。


      


  • Posted by セギ at 17:32Comments(0)算数・数学

    2020年06月07日

    高校数Ⅱ「図形と方程式」。数直線上の点の座標と内分・外分。



    さて、数Ⅱ「図形と方程式」。
    公式まみれの数Ⅱがいよいよ本格的に始まります。
    1つ1つの公式が全て大切で次につながるものですので、理解し、整理し、活用していきましょう。

    まずは数直線上の点の話から始まります。
    今回扱うのは数直線です。
    x軸とy軸がある座標平面ではありません。
    まずはそこからです。
    数直線上にも座標は存在します。
    数直線とはすなわちx軸のことで、それしか存在しないので、x座標しかないのだと思ってください。
    数直線上の3の位置に点Pが存在する場合、P(3)と書きます。

    次に、数直線上の2点間の距離について考えます。
    これは、中学生の頃にも学習しています。
    座標の大きいほうの点の座標から、小さいほうの点の座標を引けば、距離が出ます。

    例題 2点A(3)、B(-5)間の距離を求めよ。

    3-(-5)=3+5=8

    よって、距離は8です。

    よくあるミスが、
    3-5=-2
    距離は絶対値だから、答は2、としてしまうミスです。
    頭の中で思考が2回ねじれているのですが、ねじれていることに本人はなかなか気づかないので、一度このミスにはまってしまうと、解説や説得がほとんど無効状態になってしまうことがあります。
    数字にマイナスがついていると、それで混乱してしまうのか、1回しかマイナスを書かない癖は、中1「正負の数」を学習した当初から始まり、永遠に解決のつかない課題となりがちです。
    3から-5を引くのですから、3-(-5)が正しいのです。

    うっかり、3-5という式を立てて、結果が-2なったときに、気づくことも可能です。
    しかし、
    「距離が-2になるのはおかしいよね?」
    と問いかけても、
    「それは、3-5のところで符号を処理したから大丈夫」
    と不合理なことを主張し、異論は認めない、という状態になる子もいます。
    数直線を描き、
    「-5と3との距離は、どう見たって2じゃないよね?8だよね?」
    と示すと、ようやく理解してくれます。

    どうか、符号を無視せずに「引く」ということを強く意識してください。
    大きい数から小さい数を「引く」のです。
    7と5との距離なら、7-5=2 と正解できると思います。
    負の数になっても、それは同じこと。
    3と-5との距離は、3-(-5)=8 です。
    符号を一切省略せずに「引く」のです。
    それで正しい距離が出ます。

    3と-5との距離は、計算をするまでもなく8である、と認識できると本当は楽なのです。
    頭の中に数直線のイメージがあると、3と-5との距離は、計算するまでもなく、8です。
    原点からそれぞれの距離は3と5だから、2点間の距離は8だと、頭の中の数直線でわかるのです。
    この先、数Bで学習する「ベクトル」で、ベクトルの成分を求めていくときにも、
    A(-2,3)、B(4,-1)だから、ベクトルAB=(6,-4)
    と、見ただけで書いていくことができます。
    どちらからどちらを引いた、ではなく、x成分は-2から4に移動したのだから6だ、と見たまま書いていけるのです。
    y成分は、3から-1に移動したのだから、-4。
    頭の中の数直線で方向と距離を読み取っています。

    しかし、頭の中に数直線のイメージが存在しないと、この話は通じません。
    何を言っているのか全くわからない、という顔をされます。
    この断絶は、暗く深く、越えられないものなのかもしれません。
    頭の中の数直線は、中学に入学し数学を学び始めたときにイメージしていないと、高校2年になって急にイメージできるようにはならないようです。
    数学はすべて公式を丸暗記して数字を操作しているだけで、どんなイメージとも結びついていない。
    数学が苦手な子には、そういう子が多いです。

    話を戻して。
    3と-5との距離は、3-(-5)=8
    大きい数から小さい数を引くと、距離を求めることができます。
    符号を省略したりしなければ、必ず正しい距離が出ます。


    ところで、これは、最初から絶対値を利用する方法もあります。
    |-5-3|=|-8|=8
    |3-(-5)|=|8|=8
    これなら、2数の大小を確認せずに済みます。
    どちらの数からどちらの数を引いても同じです。
    同じ答えが出てきます。
    文字と数字、あるいは文字と文字との大小がわからないときは、これを用いることになりますので、こちらのほうが汎用性が高いといえます。
    大切なことは、必ず引くこと。
    その数についている負の符号を勝手に省略しないこと。
    その数の負の符号を、引き算のマイナスに使いまわさないこと。
    ちゃんと符号をつけて、そして引くこと。
    それさえ守れば、どちらの点の座標から先に書いても、距離は正しく求めることができます。


    続いて、内分点・外分点。

    まずは内分の定義から。
    下の図をご覧ください。

    A(1)   P(3)   B(7)

    線分ABの間に点Pがあります。
    点Pは、ABを内側で分けている点と見ることができます。
    このような点を内分点といいます。
    上の図では、AP=2、PB=4です。
    点Pは、ABを2:4、すなわち1:2に内分しています。

    A(1)  B(3)   P(9)

    この図はどうでしょうか?
    点PはABの外側にあります。
    このような点Pを外分点といいます。
    「分けていないのに外分というのは、納得がいかない」
    生徒から、このように言われることがあるのですが、内分とセットで外分という言葉を使っていると思って、そこのところは納得してください。
    上の図では、AP=8、BP=6です。
    このような場合、点Pは、ABを8:6、すなわち4:3に外分するといいます。

     P(2)  A(4)  B(8)

    この図は、点PがABの左側にあります。
    これも外分です。
    AP=2、PB=6 です。
    点Pは、ABを2:6、すなわち1:3に外分しています。

    外分点が線分の右にくるか左にくるかは、4:3や1:3といった比のどちらの数字が大きいかによります。
    初めて外分を学ぶと、上手く外分できず、結局全て内分してしまうことがありますので、できるようになるまで練習しましょう。
    最初の数字が大きい外分は、出発点から到達点を越えてグンと進んでから、相手の点に戻るようにすると外分できます。
    最初の数字が小さい外分は、まず出発点から、到達点とは反対方向に行ってから、到達点のほうにどんと進むと、外分できます。

    さて、内分・外分がわかったところで、内分点・外分点の座標の求め方に進みます。
    まずは内分点。
    公式は、これです。

    点A(a)、B(b)をm:nに内分する点の座標は、


    na+mb
    m+n

    です。
    これは、必ず覚えるべき公式です。
    今後もこの単元で出てきますし、忘れた頃、数Bの「ベクトル」の学習でも多用します。
    なぜこれで求められるのか証明を理解しておくと、万一公式を忘れた場合に自力で復元できます。
    A(a)、B(b)をm:nに内分する点をP(x)とします。

    A(a) P(x)  B(b)

    図を参照にしながら、比例式を立ててみましょう。
    (x-a):(b-x)=m:n
    となります。
    比例式は、内項の積=外項の積 ですから、
    m(b-x)=n(x-a) と変形できます。
    これを整理していきましょう。
    mb-mx=nx-na
    xの項を左辺に集めましょう。
    -mx-nx=-na-mb
    (-m-n)x=-na-mb
    x=(-na-mb)/(-m-n)
    分母・分子に-1をかけて、符号を整理しましょう。
    x=(na+mb)/(m+n)

    公式の通りになりましたね。

    次は外分点の座標の公式です。


    -na+mb
    m-n

    これが外分点の座標の公式です。
    証明しましょう。
    まずは点PがABの右にある場合。

    A(a)  B(b)   P(x)

    この位置関係ですね。
    比例式にすると、
    (x-a):(x-b)=m:n
    m(x-b)=n(x-a)
    mx-mb=nx-na
    mx-nx=-na+mb
    (m-n)x=-na+mb
    x=(-na+mb)/(m-n)

    点PがABの左にある場合はどうでしょうか?

    P(x)  A(a)  B(b)

    この位置関係です。
    (a-x):(b-x)=m:n
    m(b-x)=n(a-x)
    mb-mx=na-nx
    -mx+nx=na-mb
    (-m+n)x=na-mb
    x=(na-mb)/(-m+n)
    x=(-na+mb)/(m-n)

    やはり公式の通りになりました。
    点PがABの右にあっても左にあっても、外分点の座標は同じ公式で求められることがわかりました。
    あとは、この公式を正確に活用するだけです。
      


  • Posted by セギ at 15:29Comments(0)算数・数学

    2020年05月31日

    中1「正負の数」。加減と数直線。


    中1「正負の数」は、数学の学習の中で、もっとも簡単なようでいて、教えるのは最も難しいものの1つです。
    基本の基本になるほど、それを「わからない」という子に説明するのは困難を極めます。
    一応わかったのだろうと安心するのは禁物です。
    「正負の数」の単元の終わりに復習すると、
    (+1)+(+3)=-2
    といった答案を目にし、愕然とすることがあります。

    何で?
    それは、小学校1年生で学習した、1+3ですよ?
    答は4に決まっていますよ。
    なぜ、中学に入ったら-2になると思うの?
    なるわけないでしょう?

    といった「常識の押し付け」は、しかし、教える者と教わる者、両者にとって不幸です。

    それは、「正負の数」の体系が、その子の中に形成されていないということなのです。
    数学の学習が、やり方の丸暗記に終始しているのです。
    そして、やり方をちょっと間違ったために、そんな答になるのです。

    ・・・やばい、この子は全然わかっていない。
    根本的には何も理解していない。
    これは、最初からやり直しだ。

    教える者がそう判断しても、しかし、幾度やり直したところで同じ結果になるのかもしれません。
    「そんな答になるわけないでしょう!」
    と、大人が驚くのを見る度、子どもは委縮し、理解できていないことを隠そう、わかっているふりをしよう、とさらに必死にやり方だけ暗記し、表面上は正しい操作ができるようになるだけということも多いからです。


    学校や塾の教え方が悪いんじゃないのか?

    ある意味、そうなのかもしれません。
    しかし、弁解するなら、そうとばかりも言えない面もあるのです。
    やり方だけを説明しているわけではないからです。
    意味を丁寧に説明しても、その部分は聞き流し、やり方だけ暗記してしまう子が多いのです。

    順を追って説明しましょう。

    「正負の数」は、まず、正負の数の意味から学習が始まります。
    正の数と負の数が存在することは、大半の子が理解できます。
    寒暖計の目盛りの-10℃など、負の数の存在は、幼い頃から目にしていますから。
    そういうものが存在することは知っているのです。

    しかし、次の段階で早くもつまずく子が現れます。
    あることがらを、正負の数を用いて言い表す問題です。

    問題 次のことがらを正の数を用いて表せ。
    (1)-20㎏の増量
    (2)-30万円の収入
    (3)-1万人の減少
    (4)-4分の遅れ

    正解は、
    (1)+20㎏の減量
    (2)+30万円の支出
    (3)+1万人の増加
    (4)+4分の進み

    言葉遊びのようですが、後に正負の数の減法を理解するための全てがここに詰まっています。
    この言い換えが理解できないと、正負の数の減法の符号の操作は、理解できないのです。
    しかし、この問題の意味どころか、その重要性すら理解できずに通りすぎていく子は多いです。

    そうした子の誤答の例としては、
    (1)+20
    (2)+30
    (3)+1万
    (4)+4
    と、符号を+に変えただけで、単位もついていなければその後に続く言葉も書いていない場合が、まず多いのです。
    問題の意味を全く理解していません。

    「いや。その後に続く言葉も含めて、このことがら全体を正の数で言い表すんですよ」
    と説明しても、書き直したものは以下のような誤答という子が多いです。
    (1)+20㎏の増量
    (2)+30万円の収入
    (3)+1万人の減少
    (4)+4分の遅れ
    後ろにつく言葉を言い換えていないのです。

    「-20㎏の増量と、+20㎏の増量は、意味が反対だと思わない?それじゃ、同じことを言い表したことにならないよね?」
    「え?同じことを表すの?」
    「・・・そうですよ」

    何だと思っていたの?

    やり方しか暗記しない子の多くは、また、問題文をほぼ読まないという、もう1つの習慣を持っていることに思い至り、絶望の度合いを深めたりもするのですが、それを補助するのが私の役目です。
    中学入学は良い機会。
    悪い学習の癖を改め、やり方の暗記ではない学習、問題文を正確に読んで理解して解く学習習慣を身につけましょう。
    そう思って補助します。

    ところが、ここでまた「やり方だけ暗記する」という悪い習慣を発動する子が多いのです。
    -20㎏の増量は、+20㎏の減量と言い換えればいいらしい。
    ははあ、数字の符号を反対にして、言葉を反対にすればいいだけか。
    そのように「やり方」を把握し、それでさっさと処理する子が現れます。
    そのようにして正解は出せるのですが、意味はわかっていません。
    こんなことを、なぜ学習したのか?
    なぜこんな問題が出題されるのか?
    それは、全く理解していません。

    意味を理解すると、これは面白いのです。
    -20㎏の増量は、20㎏の減量。
    確かにそうだなあ。
    じゃあ、体重が1㎏増えたときは、「-1㎏減りました」って言えばいいんだ。
    1万円赤字のときは、「-1万円の黒字です」って言うんだ。
    面白い。
    ひねくれた言い方で、面白い。
    そうした言い換えを面白く感じ、頭に沁みていくなら、それが頭の中の数理の体系に静かに組み込まれていくのです。


    さて、とりあえず、このことは置いておいて。
    「正負の数の加法」すなわち、たし算の学習に進みましょう。

    正負の数のたし算の考え方の基本は、数直線上の移動です。
    正の数は、原点よりも右に移動した点。
    負の数は、原点よりも左に移動した点。

    (1) (+3)+(+5)
    これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、さらに右へ5移動することを意味します。
    右へ3移動し、さらに5移動。
    だから、答は、+8。

    (2) (+3)+(-5)
    これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、左に5移動することを意味します。
    右に3移動した後、左に5移動。
    結局、原点から左に2だけ移動したことになります。
    だから、答は、-2。

    (3) (-3)+(+5)
    これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、右に5移動することを意味します。
    左に3移動した後、右に5。
    だから、答は、+2。

    (4) (-3)+(-5)
    これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、さらに左に5移動することを意味します。
    左に3移動後、さらに左に5。
    だから、答えは、-8。


    これを理解できない子は、ほとんどいません。
    教科書や問題集に書かれた数直線上にペン先を立てて、一所懸命右へ左へと移動させて、答を導いていきます。

    そして、これが加法の本質であり、私は今もそれを頭の中でやっています。
    頭の中の数直線で数を移動させています。
    いちいち数直線を描いたり、数直線の目盛りを数えたりはしないだけで、頭の中に数直線のイメージは常にあります。
    やり方だけ暗記する子は、おそらく、頭の中に数直線のイメージがないのだと思うのです。

    なぜ、頭の中に数直線のイメージがないのか?
    次の学習段階で、この計算方法のルールをまとめてしまうことも一因かと思います。
    (+3)+(+5)=+8
    (+3)+(-5)=-2
    (-3)+(+5)=+2
    (-3)+(-5)=-8

    これからわかるルールは?
    同符号のたし算の答は、その符号で、絶対値の和。
    異符号のたし算の答は、絶対値の大きいほうの符号で、絶対値の差。

    このルールの整理は、頭の中の数直線上の移動を円滑にするための補助に過ぎないのですが、これが学習のメインになってしまう子が大半です。
    このルールを丸暗記し、そのルール通りの操作で以後は計算します。
    そのため、
    (+3)+(+5)=-2
    といった、ありえないミスをする子が出てきます。
    ルールを丸暗記して操作しているだけで実感はないので、そんな答の異常性には気づかないのです。
    やり方だけ暗記している子にとっては、正の数どうしのたし算すら、実感を伴うものではありません。


    さて、次に正負の数の減法に入ります。
    (1) (+3)-(+5)
    さきほど出てきた「言葉遊び」がここで生きてきます。
    「+5をひく」ことは、「-5をたす」ことと同じです。
    よって、
    (+3)-(+5)
    =(+3)+(-5)
    =-2

    (2) (-3)-(-5)
    「-5をひく」ことは、「+5をたす」ことと同じです。
    よって、
    (-3)-(-5)
    =(-3)+(+5)
    =+2

    正負の数の減法は、すべて加法に置きかえて計算できます。
    この世にひき算は存在しない。
    全て、たし算なのだ。
    そのように意識を切り替えるのです。

    理解していれば、何も問題はないのです。
    しかし、丸暗記で済ませている子にとっては、そろそろ重荷が増してきています。
    上のような符号の操作も、丸暗記で済ますしかないのです。
    -+は、+-に書き換える。
    --は、++に書き換える。
    というように。

    だから、ミスが絶えません。
    (+3)-(+5)
    =(+3)-(-5)
    =(+3)+(+5)
    =+8
    という謎の二度手間の誤答をこれまで幾度も見てきました。
    (-3)-(-5)
    =(-3)+(-5)
    =-8
    というミスも極めて多いです。
    全て丸暗記による操作ミスです。
    意味がわかっていたら、こんな誤答はしないのです。


    練習を重ねて、丸暗記で操作できるようになっても、「正負の数」の学習は、さらにここから難度を上げていきます。
    ( )を外す操作がここに加わるのです。
    +3は3のことなので、いちいち+は書かない。
    -は省略できないので、-を書く。
    +(-3)などは、-3 と表記する。
    このようなルールで( )を外すようになると、それまで必死に丸暗記したことがまた崩れ始め、混乱を起こす子は多いです。

    (+3)-(+5)
    =3-5
    =-2
    これで正しいのですが、

    (+3)-(+5)
    =3+5
    =8
    と誤答する子に、「なぜ?」と問いかけても、意味を考えて解いていませんから、理由はないのです。
    操作をちょっと間違えただけなのです。

    慣れてしまえば、( )なんかないほうが見やすくて楽だ。
    しかし、それはこの計算に習熟している大人の感覚。
    中学1年生にとって、このあたりの計算は、全力の800m走並みの負荷がかかる難度であり、「たかが正負の数」ではないのです。


    練習を重ねて、どうにか加減だけはできるようになっても、次は乗除の計算です。
    符号のルールをまた丸暗記しなければなりません。
    さらに加減乗除混合の四則計算に入ります。
    もう、符号はぐちゃぐちゃです。


    数学は、丸暗記で済ますには限界があります。
    意味を理解しなければ、先はありません。
    「正負の数」という単元で、何よりも学んでほしいのは、このことです。
    意味を理解して学んでください。
    頭の中に常に数直線をイメージし、実感で計算してください。


      


  • Posted by セギ at 15:35Comments(0)算数・数学

    2020年05月25日

    高校数Ⅰ「因数分解」の難問。



    高校数学には、普通の高校では授業では扱わない発展的な公式があります。
    あるいは扱っても「こんなのも一応あります」と紹介される程度で定期テストには出ないのです。
    その高校の先生の考え方によるのでしょう。
    高校1年の段階では、これは必要ない。
    文系・理系にコースが分かれた後、理系クラスだけの数ⅠA演習といった授業では扱う学校もあります。
    あるいは、高校1年の最初に、もう全部教えてしまう学校もあります。

    今回は、そんな公式の話。
    例えば、こんな問題です。

    問題 次の式を因数分解せよ。
    x3+y3-6xy+8

    うん?
    一見単純そうですね?

    x3+y3-6xy+8
    =(x+y)(x2-xy+y2)-6xy+8

    ・・・・あれ?この先、進まない。
    では、xで括ってみましょうか。

    x3+y3-6xy+8
    =x(x2-6y)+y3+8
    =x(x2-6y)+(y+2)(y2-2y+4)

    ・・・・あれ?やっぱり共通因数が見つからない。
    うーん?

    さらに頑張ってみましょう。
    最後の8は、2の3乗とみることができます。
    3乗の項が3つある・・・。
    これは、やはり、3乗の公式にからんだ何かが使える気がします。

    3乗の公式について、もう少し考えてみましょうか。
    高校で学習する3乗の公式に、こういうものがあります。
    (a+b)3=a3+3a2b+3ab2+b3
    これは、左辺と右辺をひっくり返してから部分的に移項することで、
    a3+b3=(a+b)3-3a2b-3ab2
    と変形することができます。
    これを利用してみましょう。

    x3+y3-6xy+8
    =(x+y)3-3x2y-3xy2-2・3xy+8
    順番を入れ替えながら、共通因数でくくってみましょう。

    =(x+y)3+23-3xy(x+y+2)

    ここで、x+y=A と心のなかで見立てながら、しかし、もう中学生ではないので、Aは使わずにくくっていきましょう。
    今度は、a3+b3=(a+b)(a2-ab+b2) という公式を使います。

    =(x+y+2){(x+y)2-2(x+y)+4}-3xy(x+y+2)

    共通因数 x+y+2 が見えました!
    くくります。
    ついでに{ }の中は適宜計算し整理します。

    =(x+y+2)(x2+2xy+y2-2x-2y+4-3xy)
    =(x+y+2)(x2+y2+4-xy-2y-2x)

    できたー!
    でも、大変だった・・・。

    こんなの自力で発想できない・・・。
    そんな声が聞こえてきます。
    確かに。

    実は、これ、発展的な公式を利用すれば、1行で因数分解は完成するのです。
    考え方は上と同じで、それを公式として固定化しているものがあるのです。


    その前に、まず基本的な因数分解の公式を確認します。
    因数分解の公式は、中学3年生で学習するものは、以下の通りです。
    a2+2ab+b2=(a+b)2
    a2-2ab+b2=(a-b)2
    x2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)
    a2-b2=(a+b)(a-b)

    高校1年、つまり数Ⅰで新しく学習するものは、

    acx2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)

    いわゆる「たすきがけ」の公式です。

    さらに、本当は数Ⅱの学習内容とされているけれど、一緒に学習してしまおうということで、多くの高校は、以下の公式も高校1年で学習します。

    x3+y3=(x+y)(x2-xy+y2)
    x3-y3=(x-y)(x2+xy+y2)
    x3+3x2y+3xy2+y3=(x+y)3
    x3-3x2y+3xy2-y3=(x-y)3

    しかし、因数分解の公式は、他にもあります。
    発展的な重要公式として有名なのは、以下の2つ。

    a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca=(a+b+c)2

    a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)

    問題に戻りましょう。
    x3+y3-6xy+8

    これは、上の公式の、
    a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)
    を利用できます。
    公式のaが上の問題でxにあたります。
    bがy。
    cが2。
    だから、-3abcは、-6xy。
    この公式を利用すれば簡単に因数分解できるのです。

    x3+y3-6xy+8
    =(x+y+2)(x2+y2+4-xy-2y-2x)

    できたー。
    公式を知っていると、早いですね。


    では、こんな問題はどうでしょうか?

    問題 次の式を因数分解せよ。
    (x-y)3+(z-y)3-(x-2y+z)3

    これも、先ほど使ったのと同じ公式を利用できそうです。
    3番目の(  )の前のマイナスは、その(  )自体に-の符号がついているのだと思えば良いです。
    負の数の3乗は、負の数です。

    でも、公式は、左辺に-3abcがあるけれど、この問題は、3乗の項が3つあるだけ・・・。
    そこも、頭を柔らかく。
    a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca) は、
    a3+b3+c3=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)+3abc
    と変形できます。
    そして、この形が案外使いまわしが効くのです。

    とはいえ、最後の+3abcの部分がはみ出すので、因数分解は完成しないのでは?
    本当にこれを利用して良いのかな?
    ちょっと不安になってしまいます。
    特に後半の長い(   )の部分を書いていくのは大変そうで、これで解けないのならやりたくない作業です。
    しかし、ここでためらい、やらずに済ませてしまうと、この問題は解けません。
    無駄に思えても思考錯誤は必要。
    他に策があるわけでもないのなら、思いついた策を試してみることが大切。
    やってみましょう。

    (x-y)3+(z-y)3-(x-2y+z)3
    ={(x-y)+(z-y)-(x-2y+z)}(・・・・・・・
    =(x-y+z-y-x+2y-z)(・・・・・・・

    ここまで書いて、気づくのです。
    最初の( )は、計算すると0になる!
    0に何をかけても0なので、公式の( )(     )の部分は全部0になって消えます。
    だから、+3abcの部分だけが残るのです。
    3番目の( )の前にマイナスがついていることに気をつけて、+3abcの部分を書いていくと、

    =-3(x-y)(z-y)(x-2y+z)
    =3(x-y)(y-z)(x-2y+z)

    できたっ!
    こうなると、単に公式を知っているかどうかだけではなく、その公式を利用するかどうか決断を迫られるところにちょっとワクワクしますし、ごちゃごちゃした部分が一気に消える爽快感もあって好きなタイプの問題です。

    発展的な公式に関するお話でした。
    覚えて使ってください。



      


  • Posted by セギ at 15:33Comments(0)算数・数学

    2020年05月20日

    高校数学。開平法。平方根のおよその大きさが必要なときに。




    数学の問題を解いていて、平方根のおよその値が必要なときがあります。
    そんなとき、どうしましょう?
    今回は、そんな問題について考えてみましょう。


    問題 √19 の整数部分をa、小数部分をbとするとき、a2+b2の値を求めよ。

    これは、aの値がわからないと解けないです。
    √19って、整数部分はいくつなんだろう?
    √2=1.41421356・・・・
    など、語呂合わせで覚えている数は、せいぜい√5までの人が大半だと思います。
    √19って、どれくらいでしょう?

    実は、これは中学3年生で学んでいるのです。
    まず、整数に直せる平方根との大小を比べます。
    √16<√19<√25
    ですね。
    これを、√18<√19<√20
    と書いてしまう人がいますが、そういうことではなく、整数に直せる平方根でなければ意味がありません。
    また、一番値の近いものを書くことも必要です。
    √4<√19<√36
    では、意味がありません。

    √16<√19<√25
    これを整数に直すと、
    4<√19<5
    よって、√19は、4と5の間にある数、つまり、4.・・・と表される数とわかります。
    ゆえに、整数部分 a=4です。
    さて、bは、無限に続いていく小数なのにどうするのでしょう?
    心配いりません。
    b=√19-4 と表せば良いのです。

    この問題が解けない中学3年生は、この発想を持てないことが多いです。
    「b=√19-4 なんて書き方で、いいの?」
    と不安そうに言います。
    あるいは、
    「そんなの自分で思いつかない」
    と落ち込んでしまう子もいます。

    数学者ではないので、こんなことをゼロから自力で発想できなくてもいいです。
    この解き方をテクニックとして自分のものとしておけば大丈夫です。
    「自分には数学の才能がない」「勉強しても意味がない」と落ち込む必要はありません。
    2つの値の和がわかっているとき、一方は他方の数を用いて差で表すことができる。
    こうしたことをテクニックとして学び、以後、他の問題で活用できれば良いのです。

    さて、問題に戻って、
    a2+b2
    の求め方は大丈夫でしょうか?

    これくらい単純なら、このままの形で代入してもスピードも精度も変わりません。
    a2+b2
    =42+(√19-4)2
    =16+19-8√19+16
    =51-8√19

    これでも良いですが、もっと複雑な問題になったときのために、対称式を利用した解き方も思いだしておきましょう。

    a2+b2
    =(a+b)2-2ab
    ここで、a+bというのは、何のことはない、√19そのものです。
    =√192-2・4(√19-4)
    =19-8√19+32
    =51-8√19

    同じ答えになります。

    「答えに√19が残っていいの?」
    と質問した子がかつていました。
    「え?どういうこと?」
    「√19が残ったらダメなんじゃないの?」

    答に平方根が残ったらダメだなんて問題には書いてないのですが、そうした謎の思い込みに苦しむ子もいます。
    何は良くて、何はダメなのか、学年が上がるにつれ、そうしたことで悩む子が増えてきます。
    本質を理解していないのに解き方だけ丸暗記して表面をとりつくろってきたツケが、いよいよ回ってきたのだと感じます。
    本人の頭の中に数理の体系が存在しないので、自分で判断できないのです。
    おそらく小学校の算数の頃から、いちいち理解するのが面倒くさいので、やり方の丸暗記で済ませてきた。
    そのまま中学生・高校生になり、気がつくと、理解したくても理解できなくなっていた。
    案外頭の回転が速く、楽できる方法をついつい探してしまう子にこのタイプが多いのです。


    平方根のおよその大きさが必要な問題には、連立不等式もあります。
    問題 以下の連立不等式の解の範囲を求めよ。
    x2-x-8>0   ・・・①
    8x2-19x-27<0 ・・・②

    計算過程は今回は省略します。
    ①より
    x<1-√33 /2 , 1+√33 /2<x 
    ②より
    -1<x<27/8

    ここまで順調に解いて、数直線上にそれぞれの範囲を記していく際に、あれ?と思います。
    1-√33 /2 と-1って、どちらが大きいの?
    1+√33 /2 と27/8って、どちらが大きいの?
    それがわからないと、数直線上に記すことができません。

    まずは、1-√33 /2 と-1を比べましょう。
    両方を2倍して、
    1-√33 と-2。
    両方から1を引いて、
    -√33 と-3
    それぞれを2乗すると、
    33と9。
    負の数は、絶対値が大きいほうが小さい数ですから、
    -√33<-3
    よって、1-√33 /2<-1

    しかし、このように丁寧に計算していくスペースが答案用紙や計算用紙に存在しない、ということが数学のテストの場合、起こります。
    そもそも、数学の解答スペースの使い方が下手な子は、高校数学の問題を解いていて、途中でスペースがなくなってしまいます。
    解答スペースの上から2㎝ほども下がったあたりから、1㎝四方ほどの大きな字で答案を書き出し、書くスペースがなくなり、その問題は解けなくなって終了、という子がかつていました。
    それは極端な例ですが、こんなどうでもいい計算に解答スペースをあまり使いたくないものです。
    この程度のことは、暗算できれば何よりです。
    √33は、5<√33<6。
    大体6として、1-6は-5。
    それを2で割るから、1-√33 /2は、約-2.5。
    だから、-1よりは小さい。

    一方、1+√33 /2と27/8の大小は?
    √33は6より少し小さい数。
    だから、1+√33は7より少し小さい数。
    1+√33 /2は、3.5より少し小さい数。
    一方、27/8は、27÷8だから、3.3・・・。
    あれ、あまり差がないなあ。
    これで1+√33 /2のほうが大きいとするのは危険です。
    やはり、こういうときは、しっかり計算するしかありません。
    両方を2倍して、
    1+√33と27/4
    両方から1を引いて、
    √33と23/4
    両方を2乗して、
    33と529/16
    529/16=33+1/16
    うわ、27/8のほうが大きかったのですね。

    それぞれを数直線に記して、重なっている部分がこの連立不等式の解ですから、
    1+√33 /2<x<27/8。

    あー、大変だった。


    それでも、大小の判断だけならこれで何とかなるのですが、一番厄介なのが、数Ⅰ「データの分析」です。
    標準偏差は、平方根になります。
    高校の定期テストや入試問題で、それを何のヒントもなく小数を用いた表記に直させるようなことはありませんが、問題集などで自分で問題を解いている際に、模範解答で平方根がスルッと小数に直っているのを見て、「何で?」と思ったことはありませんか?
    小数第2位まで、平然と小数に直しているけれど、どういうこと?
    どうやるの?

    やり方は3つあります。
    まず1つ目は、「平方根表」を使用する方法。
    三角比の表と似たような見た目の「平方根表」というものがあります。
    中3向けの問題集の巻末などに載っています。
    例えば、「体系問題集・代数2」など。
    その表で読み取ります。
    大学入試共通テストは、今のところ、問題がそれを必要としている場合は「平方根表」を添付してくれるようです。

    2つ目。
    電卓を使用する。
    √ のボタンのついている電卓なら、すぐに平方根の値が出てきます。
    √ のボタンのない電卓でも、それなりの値段の電卓、あるいはスマホの電卓アプリならば、平方根を計算するやり方があります。
    多少複雑なボタン操作になりますので、説明書をよく読んで使用しましょう。
    ただし、テスト中は電卓・スマホは使用できない場合がほとんどですね。

    3つ目。
    「開平法」で筆算する。
    平方根は、筆算で小数に直すことができます。
    一番上の画像がその計算です。

    上の画像は、√13 を計算したものです。
    まず、13より少し小さい平方数(何かの2乗の数)を考えます。
    3×3=9ですね。
    その3を、√13の横に書き、平方数の9を13の下に書いて、引きます。
    引いた答えは、4となります。
    これに小数点以下の2桁分を加え、400とします。
    3は、真下にも3を書き、足します。
    3+3=6 となります。
    この6が十の位となります。
    次に、6☐×☐の答えが、400より少し小さくなる数を探します。
    ☐は6ですね。
    66×6=396を400の下に書いて、引きます。
    答えは4です。
    66の下に、見つけた6を書いて、足します。
    72となります。
    これを繰り返し、見つけた数を順番に√13の上に書いていくと、それが√13を小数に直した数となります。

    これを開平法、あるいは開平計算と言います。
    なぜ、こんな方法で計算できるのか?
    大体のイメージを説明しましょう。
    √xという数を開平法で計算するとします。
    まず、2乗してxより少し小さくなる数を見つけ、それをaとし、
    √x=a+b
    と表すとします。
    上の√13の例で言えば、x=13、a=3 です。
    √x=a+b を2乗しましょう。
    x=(a+b)2
    x=a2+2ab+b2
    移項します。
    x-a2=2ab+b2
        =b(2a+b)
    次に、x-a2の値より少し小さくなるb(2a+b)を満たすbを探します。
    上の図で、bは0.6です。
    2a+b=6.6、そして、b(2a+b)=3.96です。
    以下、これの繰り返しで割り進めていきます。

    正確な証明ではありませんので、今の説明で、パッとひらめくものがあればそれで良し、わからなかったら、もうそれはそれでいいというくらいに気楽に受け取ってください。
    開平法は、必ず身につけなければならないというものではありません。
    こんな方法もありますよ、というお話でした。
      


  • Posted by セギ at 11:25Comments(0)算数・数学

    2020年05月15日

    確証バイアスと計算ミス。



    ソーシャルディスタンスは2m。
    スーパーでもドラッグストアでも、レジの行列は一定の間隔で並ぶための線が床に貼られています。
    しかし、そのことに気づかず、すぐ後ろに並ぶ人がたまにいて、困惑することがあります。
    そんなとき、ちょっと後ろを振り返り、そのまま、さらに床に目を落とすと、床に貼られたテープに気づき、下がってくれる人もいます。
    知らない人との会話そのものにリスクがあるので、声を出す気にはなれません。
    こうした視線の動きで気づいてほしい。
    そう思うのですが、なかには全く気づいてくれない人もいます。

    先日、駅前の書店で買い物したときも、行列でやはりテープを無視して私のすぐ後ろに立った人がいました。
    その後、それぞれ別のレジで支払いを済ませたので、書店を出るのもほぼ同時になりました。
    ビルの3階にあるその書店から降りるエスカレーターで、その人は、わざわざ歩いてきて私のすぐ後ろに立ちました。
    私がちょっと歩いて距離を保とうとしても、またその人も数歩歩いて距離を詰めてくるのです。
    私の前には、別の人が立っていました。
    これ以上私が進んだら、今度は私が前の人に近づき過ぎてしまう・・・。
    普段なら特に何ということもない行動ですが、こういう時期にそれをやられると・・・。

    こうした人は、自分が間違った行動をとっていることに気づいていない可能性が高いのです。
    まさか、わざとやっているわけではないでしょうから。
    本人にもリスクのある行動です。
    私がもしも感染者だったら、どうするつもりなんだろう?

    むしろ、その人は、自分は正しいことをしていると思っていたかもしれません。
    行列は詰めて並ぶものだし、エスカレーターは後ろの人に迷惑をかけないようにどんどん歩くものだ。
    そう信じ込み、今の時期はそれが必ずしも正しいわけではないと気づいていなかったのだと思います。


    他人の振り見て我が振り直せ。
    「自分は間違っていない」と思い込んでいることはないか?
    自分のほうが間違っていることを示す情報が目の前にあるのに、気づいていないということはないだろうか?
    そんなふうに考えてみました。

    「確証バイアス」という言葉があります。
    自分が正しいことを証明する情報は目に入ってきやすいが、それを反証する情報は目に入りにくい。
    意識してのことではなく、本当に目に入らず、無視するそうなのです。

    だから、自分が間違っていても、間違っていると気づくのは難しい。
    確証バイアスは、学習面でも大きな課題です。


    数学の授業中、計算ミスをしているので、
    「そこ、間違っているんじゃない?」
    と柔らかく問いかけても、
    「間違ってません!」
    と即答する子が、かつていました。
    その子に、間違っていることを納得させるのには、他の子よりも時間がかかりました。
    計算ミスの箇所を指さしても、なかなかピンとこない様子でした。
    正しい答えを私が言ってもまだ「え?」と疑い深い顔をし、そこでようやく考え始め、1分ほども考えて、ようやく気づくのでした。

    滅多にミスをしない子なら、そのように自信家なのもわからなくはないのです。
    しかし、その子は、むしろ普通よりもミスの多い子でした。
    計算ミスの他にも、毎週のように何かしら忘れ物をしてくるので、授業がスケジュール通りにいかないこともありました。
    計算ミスが多いこと。
    忘れ物が多いこと。
    そうしたことを自覚していてもおかしくないのですが、本人は全く認めず、それを指摘するときょとんとした顔をしました。
    ありもしないことを指摘された、といった表情です。
    単にすっとぼけているだけなのか?
    うすうす気づいているのだが、認めたくなくて、知らない顔をしているのか?

    これがどうも、本当に気づいていないようなのでした。
    計算ミスが多いことも。
    忘れ物が多いことも。
    そして、自覚がないので対策も立てませんから、ミスが減ることもないのでした。

    これも確証バイアスの一種だったのかもしれません。
    自分がミスした事実は意識しないのです。
    ミスをしたことをすぐに忘れます。
    一方、他人のミスはよく目につき、記憶するようでした。
    他人はミスが多いなあと感じる。
    自分が10回ミスをしてもすぐに忘れるが、他人が1回ミスをしたことは、非常に印象深く記憶する。
    他人はよくミスをする、と感じる。
    他人と比べれば自分はそんなにミスをするほうではない。
    ミスをしやすい人ほど、案外本当にそう思ってしまうようなのです。

    しかし、それは事実とは異なります。
    学校で、家庭で、それを指摘されることはあったでしょう。
    あなたは、よくミスをするよ。
    あなたは、ミスが多いよ。
    自分の思う真実と、複数の他人が指摘する事実とが明らかに異なるのです。
    信念が脅かされます。
    「間違ってません!」
    という叩き返すような断定は、そういうところから発していたのかもしれません。

    計算ミスを防ぐには、計算ミスをしやすい事実を認め、どこで計算ミスをしやすいかを自覚し、対策しなければなりません。
    符号ミスをする。
    0と6をいい加減に書いて見間違う。
    かけ算やわり算の筆算をまっすぐに書いていくことができず、桁がズレる。
    7の段など、特定の九九を間違える。
    数字や文字を書き間違う。
    無理な暗算をする。
    そうした、自分がミスをする傾向と原因を把握し、意識し、そこに差し掛かったらスピードを落として慎重に事を運び、また、そこを重点的に見直すことが必要となります。
    1度はミスをしても、2度と同じミスをしないよう努力する。
    自分が何をミスしたかを記憶していることが、それを助けます。
    そうやって慎重にやっていても、睡眠不足だったり、疲れがたまっていたり、他に気になることがあって精神的に安定していなかったりすると、ミスは出ます。

    人はミスをするものです。
    それすらも認められない間は、ミスは減りません。

    「間違ってません!」
    と即答する子は、もう高校生になっていました。

    ある日、その子の定期テストの答案を見た後、改めて、私は問いかけました。
    「あなたは普通よりも計算ミスが多いし忘れ物が多いと私は思う。あなたはどう思う?」
    その子は、顔を歪めて否定しようとしましたが、その後、黙ってしまいました。
    「計算ミスが多いことを自覚しないと、その対策もできないですよ」
    「そんなことを認めたら・・・・」
    「うん?認めたらどうなるの・・・・?」
    「・・・・」
    返事はありませんでした。

    でも、私の指摘は、そのときその子に届いたのだと思います。
    認めることはできないけれど、その事実が自分の外側に存在することは自覚したのだと思います。
    それ以降、計算ミスを指摘すると、静かに見直すようになりました。
    計算ミスは、そう簡単には減りませんでした。
    しかし、忘れ物は目に見えて減りました。



      


  • Posted by セギ at 12:26Comments(0)算数・数学

    2020年05月08日

    イコールの意味に気づいていますか。


    例えば、こんな計算問題を小学生が解くとき。

    25+(15-3)×2+18÷3-2

    四則計算の問題です。
    計算の順序は理解できているのに、答案が以下のようになってしまう子がいます。

    25+(15-3)×2+18÷3-2=12×2=24+25=49+6=55-2=53

    答 53

    大人が見るとかなり異様な式なのですが、その異様さが、小学生にはわからないようなのです。
    25+(15-3)×2+18÷3-2
    という式の、どこを先に計算するかというと、まずは( )の中です。
    ( )の中は、12。
    その12×2を次に計算します。
    だから、
    25+(15-3)×2+18÷3-2=12×2
    と書いてしまうのです。
    12×2の計算の結果は、24。
    その24と、最初の25をたします。
    だから、
    25+(15-3)×2+18÷3-2=12×2=24+25=49
    と書いているのです。
    その次にやるのはわり算。
    18÷3=6
    だから、49+6。
    この調子で、最終解答が出るまで式は続いています。

    「・・・イコールという記号は、その記号の左側と右側が等しいという意味です。等しくないものをイコールで結んだらダメなんですよ」
    そのように声をかけるのですが、こうした式を書いてしまう小学生は、大抵きょとんとした顔をします。
    このセンセイ、何を言っているんだろう?という顔です。
    算数のカラーテストでは90点以上の子でも、こんな計算過程の子はいます。
    そして、私が直しなさいと言えば、その場では直しますが、しばらく経って四則計算をすると、また同じことをやってしまいます。

    25+(15-3)×2+18÷3-2
    12×2=24
    25+24=49
    18÷3=6
    49+6=55
    55-2=53
    答 53

    小学生が上のような書き方をしているのなら、目くじらを立てることはありません。
    それがわかりやすいのなら、それでもいいのです。
    しかし、
    25+(15-3)×2+18÷3-2=12×2=24+25=49
    は、見ていて気持ち悪い。
    こんな間違った式を見ていたくない。
    やめてくれ。
    頼むからやめてくれ、と思います。
    その気持ち悪さが、小学生には伝わりません。

    なぜ、このような式を書いてしまうのでしょう?
    もしかしたら、彼らは、=(イコール)という記号の意味を理解していないのではないかと思うのです。
    イコールは、日本語では「等号」と呼ばれる記号です。
    左辺と右辺の値が等しいことを表す記号です。
    25+(15-3)×2+18÷3-2と、12×2は等しくありません。
    12×2と、24+25は、等しくありません。
    それを等号で結ぶことはできません。
    彼らは、それを理解していないのだと思うのです。

    彼らにとって、=(イコール)の意味は、「さあ計算しまーす」程度の意味なのではないかと想像します。
    12×2を計算しまーす。
    24+25を計算しまーす。
    その程度の意味で等号をとらえているのではないかと思います。
    =を「は」と読むことも多少は影響しているのでしょうか。
    等号の左側と右側が等しいとか等しくないとか、そんなことはどうでもいいらしいのです。
    計算過程を書いているだけなので、文句を言う人の気持ちがむしろわからない。
    そんなふうなのではないかと想像します。


    しかし、中学生になれば、多くの子が以下のように答案を書いていくようになります。

    25+(15-3)×2+18÷3-2
    =25+12×2+6-2
    =25+24+6-2
    =53

    まだ計算しない部分も含め、式を全部書いていきます。
    イコールの前後は常に等しい。
    気持ちのよい式です。
    また、この式のほうが見やすく、計算しやすいのです。
    次は何をすればよいか、いちいち最初の式に戻って考えずに済みます。
    計算過程を横に横に書いていかず、下に下に書いていることも案外重要です。
    目が左右に散って書き写し間違うのを避けることができます。
    上下を見比べるだけで済むので、確かめも簡単です。
    式として正しく、かつ合理的です。

    しかし、小学生にとっては、計算しない部分を書いていくことは、むしろ不合理に思えるのかもしれせん。
    多くの小学生は、手を使って字を書くことに何かとてつもない精神的負担があるのか、余計な文字は1文字でも書くのを惜しみます。
    計算しない部分をあえて書いていくことなど、ありえないのかもしれません。
    「計算しない部分も書いていけば、等しくなるでしょう?等しいときだけイコールで結ぶんですよ」
    と、ルールを説明しても、そのルールを厳密に守る気持ちにはなかなかなれないようです。
    そんなくだらないルールを守っていたら、余計な文字を書かねばならない。
    そんな無駄なことはできない。
    彼らは、そう思っているのかもしれません。

    そもそも、=は、等しいという意味だなんて、そんなの聞いたことがない。
    =は、計算しますよー、という意味だよ。
    だって、=は、イコールなんて読まないもん。
    計算の結果「は」いくつなのかを書いていくだけの記号だもん。
    そんな気持ちでいるのだろうかと想像します。

    想像の域を出ないのは、こうした間違いをおかす小学生が、なぜそうするのかを語ることは皆無だからです。
    何か一言でもそのように計算式を書いている理由を語ってほしいと思うこともありますが、彼らはただ黙りこみ、言われたときには直し、しかし、次のときにはまた同じ間違いをおかします。
    わかっているけれど、忘れてしまうのか。
    納得できていないから、また同じ間違いをおかすのか。


    繰り返しますが、中学生になると、一応は、下に下に式を書いていけるようになる子が大半です。
    教科書にそう書いてあるし、学校の先生もそうしろと命じるので、中学の数学はそう書くものなのだと何となく理解するからでしょうか。
    小学校の算数と中学の数学はスタイルが違う。
    中学の数学は、こう書くものなのだ。
    そのように理解しているのかもしれません。

    書き方が直ったのは良いのですが、上のような「単なるスタイルの問題」として理解していると、その先がやや不安です。
    なぜなら等号の本質を理解していない中学生が陥りやすい誤りがあるのです。

    順をおって説明します。
    中学生は、中1の初めにまず「正負の数」を学習します。
    その中で、正負の数の四則演算を学びます。

    次の単元は、「文字式」です。
    1/2a+2/3+3/4a+5/6
    などの、係数や定数項が分数の式の計算も学習します。

    1/2a+2/3+3/4a+5/6
    =2/4a+3/4a+4/6+5/6
    =5/4a+9/6
    =5/4a+3/2

    と、通分して計算していくことは、大抵の中1は出来るようになります。

    続いて、「方程式」の単元に進みます。
    ここで、まず等式の性質について学び、その後、それによって方程式を解く方法を学びます。
    係数が分数の方程式は、全体を何倍かして解きます。

    1/2x=3/4x-8
    両辺を4倍して、
     2x=3x-32
    -x=-32
     x=32

    これも、自力で解けるようになる子が大半です。

    順調に学習が進んでいるように見えます。
    しかし、この学習の後、夏休みなどに1学期の復習をすると、先ほどの文字式の問題を以下のように解く子が現れます。

    1/2a+2/3+3/4a+5/6
    =6a+8+9a+10
    =15a+18

    式全体を12倍して、分母を払ってしまうのです。

    「いや。文字式は、全体を何倍かしたらダメです。勝手に12倍したら、12倍した値になるじゃありませんか。それは、等しくない。そんなときには、=は使えない」
    そのように説明しても、小学生の頃、四則計算のときに等しくないものをイコールで結んだときのようにきょとんとした顔をするだけの子は多いのです。

    文字式と方程式の区別がつかない。
    どんなときに全体を何倍かして良くて、どんなときにはダメなのか、わからない。
    数学が苦手な子に共通のこの悩みは、中学3年になっても尾を引くことが多いです。

    原因の多くは、等号の本質を理解していないことにあります。
    等号がわかっていないのです。
    だから、文字式と方程式の区別がつきません。

    文字式は、与えられた式に=がついていません。
    その式を計算していくときには、自分で=をつけてその先を続けます。
    勝手に何倍かして、その式の値を変えることはできません。
    一方、方程式は、真ん中に=があって、最初から左辺と右辺があります。
    それは関係を表す式だから、両辺を何倍かしても、関係は変わりません。

    文字式と方程式は、見た目だけではっきり区別がつくのです。

    そのように説明しても、
    「わからない・・・」
    と首を横に振る子もいます。
    小学生の頃、横に=をつけて、式を横に横に書いていたことがここでネックになっているのかもしれません。
    文字式と方程式との見た目の違いがよくわからないようなのです。


    違いの本質は、等号にあり。
    等しくないものに=を使ってはいけない。
    左辺と右辺を平等に何倍かするのなら等号は成立するが、勝手に等号の後だけ何倍かしてはいけない。
    そうした説明が理解しきれない子は、中2になっても中3になっても、文字式の計算のときに、全体を何倍かしてしまうのです。


    「等号の意味」のように、ものごとの基本中の基本で本質的な概念は、小学生の頃に言語化されないまま数理の体系として頭の奥まで染みていくのが理想です。
    算数・数学が得意な子は、説明されなくても、それを理解しています。
    言語化されないまま、数理の体系が頭の中で形成されていくのです。
    しかし、ただ「やり方」だけ暗記し、意味や本質を理解しない子も一定数います。

    なぜ、意味や本質が理解できないのか?
    数理の体系が頭の中に構築される子と、何が違うのか?
    学び方のどこに差があるのか?
    全てその子の頭の中で起こっていることなので、外からは見えにくいのです。
    カラーテストは良い点が続き、表面的には何も問題はないように見える子が、数理の体系を全く理解していないということがあり得るのです。

    意味や本質をそもそも理解できない子も、いるかもしれません。
    しかし、理解しようとしない子も多いのではないかと思います。
    意味や本質の理解は、彼らにとっては「容量」的に重いのです。
    「脳のメモリ」をやたらと喰ってしまいます。
    容量を軽くするには、やり方だけ覚えること。
    そのほうが脳に負担がかからない。
    そのような判断を無意識にしているのではないでしょうか。
    やり方だけ覚え、テストが終われば消去してしまえばいい。
    それが要領の良い学習だと、本人が、というよりその子の脳が、誤解している・・・。
    そうではない学習ができないほどそれは習慣化し、ぱっと覚えるがすぐに忘れ、深い理解はない。
    何もかもが軽い・・・。

    概念のレベルのことは、本人の脳が本質に向かって動きださないと、深い理解に至らないのです。

    では、どうしたらよいのか?
    こんなときにいつも思い出すのは、ヘレン・ケラーを教えたサリバン先生のことです。
    サリバン先生は、ヘレンにまず指で文字を作ることを教えました。
    目が見えず耳が聞こえなくても、指で作られた文字を触って理解することができます。
    自ら指文字を作り、意思を伝えることも。
    しかし、ヘレンは、指文字が物を指し示すことを理解しませんでした。
    ものには全て名前があることも、この世には言葉があることも知らなかったので、教えられる指文字は、ただそれをなぞるだけのゲームに過ぎませんでした。

    では、永久にそのままだったのか?
    そうではなかったことを、私たちは知っています。
    「ウォーター」の意味を突然理解したヘレンの奇跡。
    それは、ヘレンに繰り返し繰り返し指文字を教え続けたサリバン先生が起こした奇跡です。

    脳は、本人の望む通りには動きません。
    でも、繰り返し繰り返し同じ情報を与え続けたときに、本人の意思とは関係なく、脳が本質に向かって思考し始めることはあると思います。

    イコールは、等号の前と後ろが等しいという意味です。
    表面をなぞるだけでは当たり前すぎて何も伝わってこないこの情報が、いつか脳の奥深くに到達し、その子の中に数理の体系を生み出すことを、私は夢見ます。


      


  • Posted by セギ at 21:35Comments(0)算数・数学

    2020年05月02日

    高校数Ⅱ「式と証明」。3次方程式の解と係数の関係。



    今回で、数Ⅱの第1章「式と証明」もついに最終回です。
    こんな問題を解きましょう。

    問題 3次方程式 x3-x2+2x-3=0 の3つの解をα、β、γとするとき、次の3つの数を解とする3次方程式を求めよ。
    (1)2α, 2β, 2γ
    (2)αβ, βγ, γα
    (3)α+β, β+γ, γ+α
    (4)α2, β2, γ2

    これは3次方程式の解と係数の関係の問題です。
    α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)はギリシャ文字で、これへの違和感から問題を過度に難しく感じる人もいます。
    また、αとa、βとB、γと数字の6などを見間違えるミスもおこりがちです。
    自分の描いた文字や、テキストに書いてある数値を、普段からなぜか見間違うことの多い人は、特に注意が必要です。

    では、まず2次方程式の解と係数の関係の復習をしておきましょう。
    2次方程式 ax2+bx+c=0 の2つの解をα、βとすると、
    α+β=-b/a , αβ=c/a

    そんなのありましたね。
    それの3次方程式バージョンが今回の問題です。

    3次方程式の解と係数の関係について確認しましょう。
    3次方程式 ax3+bx2+cx+d=0 の3つの解をα、β、γとします。
    すると、3次方程式は以下のように表すこともできます。
    a(x-α)(x-β)(x-γ)=0

    x3の係数がaですので、( )の外側にaを置くことで係数の辻褄を合わせています。
    この左辺を展開しましょう。
    =a(x-α)(x2-γx-βx+βγ)
    =a(x3-γx2-βx2+βγx-αx2+γαx+αβx-αβγ)
    =ax3-aγx2-aβx2+aβγx-aαx2+aγαx+aαβx-aαβγ

    xについて降べきの順に整理しましょう。
    =ax3-a(α+β+γ)x2+a(αβ+βγ+γα)x-aαβγ

    これが、一番上の ax3+bx2+cx+d=0 と同じ方程式なのですから、それぞれの係数を比較すると、
    -a(α+β+γ)=b すなわち、α+β+γ=-b/a
    a(αβ+βγ+γα)=c すなわち、αβ+βγ+γα=c/a
    -aαβγ=d すなわち、αβγ=-d/a

    まとめますと、
    α+β+γ=-b/a
    αβ+βγ+γα=c/a
    αβγ=-d/a
    これが、3次方程式の解と係数の関係です。

    さて、これを利用すると、与えられた3次方程式は、x3-x2+2x-3=0 ですから、
    α+β+γ=1
    αβ+βγ+γα=2
    αβγ=3 
    となります。
    これらを用いて、以下の3つの数を解に持つ新しい3次方程式を作るのです。

    (1)2α、2β、2γ の3つを解に持つ3次方程式は?

    x3の係数はとりあえず1としておきましょう。
    出来上がった方程式が分数を含むごちゃごちゃした式になった場合は、全体を何倍かして整えれば大丈夫ですから。
    そうすると、この3次方程式は、
    x3-(2α+2β+2γ)x2+(4αβ+4βγ+4γα)x-8αβγ=0 となります。
    x2の係数を求めましょう。
    2α+2β+2γ
    =2(α+β+γ)
    =2・1
    =2
    よって、x2の係数は-2です。

    次に、xの係数を求めましょう。
    4αβ+4βγ+4γα
    =4(αβ+βγ+γα)
    =4・2
    =8

    次に、定数項を求めましょう。
    -8αβγ
    =-8・3
    =-24

    よって、求める3次方程式は、x3-2x2+8x-24=0 です。


    (2)αβ , βγ , γα の3つを解にもつ3次方程式の1つは、
    x3-(αβ+βγ+γα)x2+(αβ・βγ+βγ・γα+γα・αβ)x-αβ・βγ・γα=0 です。

    x2の係数を求めましょう。
    αβ+βγ+γα=2
    よって、x2の係数は-2です。

    次にxの係数を求めましょう。
    αβ・βγ+βγ・γα+γα・αβ
    =αβγ(β+γ+α)
    =αβγ(α+β+γ)
    =3・1
    =3

    定数項を求めましょう。
    -αβ・βγ・γα
    =-α2β2γ2
    =-(αβγ)2
    =-32
    =-9

    よって、求める方程式は、x3-2x2+3x-9=0 です。


    (3)α+β , β+γ , γ+α の3つを解にもつ3次方程式の1つは、
    x3-(α+β+β+γ+γ+α)x2+{(α+β)(β+γ)+(β+γ)(γ+α)+(γ+α)(α+β)}x-(α+β)(β+γ)(γ+α)=0 です。

    x2の係数を求めましょう。
    α+β+β+γ+γ+α
    =2α+2β+2γ
    =2(α+β+γ)
    =2・1
    =2
    よって、x2の係数は-2です。

    次にxの係数を求めましょう。
    (α+β)(β+γ)+(β+γ)(γ+α)+(γ+α)(α+β)
    これをこのまま展開すると、かなり複雑なことになります。
    ここでちょっと工夫します。
    α+β+γ=1 ですから、
    α+β=1-γ
    β+γ=1-α
    γ+α=1-β
    これらを代入します。
    (1-γ)(1-α)+(1-α)(1-β)+(1-β)(1-γ)
    =1-α-γ+γα+1-β-α+αβ+1-γ-β+βγ
    =-2α-2β-2γ+αβ+βγ+γα+3
    =-2(α+β+γ)+(αβ+βγ+γα)+3
    =-2・1+2+3
    =3
    この工夫の仕方は、覚えておきましょう。
    なかなか自力では発想できませんから。

    次に定数項を求めます。
    -(α+β)(β+γ)(γ+α)
    =-(1-γ)(1-α)(1-β)
    =-(1-γ)(1-β-α+αβ)
    =-(1-β-α+αβ-γ+βγ+γα-αβγ)
    =-1+β+α-αβ+γ-βγ-γα+αβγ
    =-1+(α+β+γ)-(αβ+βγ+γα)+αβγ
    =-1+1-2+3
    =1

    よって、求める方程式は、x3-2x2+3x+1=0 です。


    (4)α2 , β2 , γ2 の3つを解に持つ3次方程式の1つは、
    x3-(α2+β2+γ2)x2+(α2β2+β2γ2+γ2α2)x-α2β2γ2=0 です。

    x2の係数を求めましょう。
    α2+β2+γ2
    =(α+β+γ)2-2αβ-2βγ-2γα
    =(α+β+γ)2-2(αβ+βγ+γα)
    =12-2・2
    =1-4
    =-3
    よってx2の係数は-3。

    xの係数を求めましょう。
    α2β2+β2γ2+γ2α2
    =(αβ+βγ+γα)2-2αβ・βγ-2βγ・γα-2γα・αβ
    =(αβ+βγ+γα)2-2αβγ(α+β+γ)
    =22-2・3・1
    =4-6
    =-2

    定数項を求めましょう。
    -α2β2γ2
    =-(αβγ)2
    =-32
    =-9

    よって、求める方程式は、x3-3x2-2x-9=0 です。

      


  • Posted by セギ at 12:29Comments(0)算数・数学

    2020年04月26日

    平方根について。




    「平方根」は、中学3年生で初めて学習します。
    そして、ほぼ毎年、平方根が全く呑み込めない子が現れます。

    x2=aであるとき、xをaの平方根という。

    この定義は、確かにわかりにくいです。
    字面を目で追っても意味が伝わってこない。
    それは私も共感できるのです。
    だから、まずは具体例で説明します。

    6を2乗すると36になります。
    そして、-6も2乗すると36になります。
    言い方を少し変えると、2乗すると36になる数は、6と-6です。

    ここが実は重要で、上のように言い方を逆にしただけで、理解できなくなる子がいます。
    日本語の助詞の働きを読み取ったり聞き取ったりできない子が一定数いるのかもしれません。
    単語の羅列でしか言葉を理解していないので、語句と語句の関係を把握するのが苦手な様子です。
    だから、ちょっと語順を変えて、原因と結果が逆になっている文になると理解しづらく、眉を寄せたり、頭を抱えたりします。
    「6を2乗すると36になる」
    は理解できるのですが、
    「2乗すると36になる数は、6と-6」
    はすんなりとは飲み込めないのです。
    かなり苦しそうです。

    それでも、何とか理解するのを待ちます。
    2乗すると36になる数は、6と-6。
    36の平方根は、6と-6。
    2乗するとaになる数が、aの平方根。
    4の平方根は、±2。
    9の平方根は、±3。
    ここまで丁寧に説明すると、新しい学習内容にちょっと抵抗を示しながらでも、一応理解できるという子が多いです。


    では、2の平方根は?
    △×△=2 となるときの△にあたる数です。
    え?
    そんな数ある?
    1.5くらい?
    1.4くらい?
    はい。
    大体1.4くらいの数です。
    1.4×1.4=1.96
    1.41×1.41=1.9881
    1.414×1.414=1.999396
    どんどん2に近づいてはくるのですが、しかし、小数で表している限り、どこまでいっても2乗して正確に2なることはありません。
    2乗して2になる数は、小数で表すことはできないのです。
    これを√ という記号を用いて表すことにします。
    2乗してaになる数を±√a と表す。
    つまり、aの平方根が±√a です。
    2の平方根は、±√2 。
    √2 を2乗すると2になるということ。
    -√2 も2乗すると2になります。
    新しい記号である√ に、かなりの抵抗があり、話はさらに難しくなってきました。

    √2を2乗すると2。
    -√2を2乗すると2。
    つまり、2の平方根は±√2。
    前後をあえて逆にして、その行ったり来たりが本人の頭の中で上手くいっているか確認します。
    何とか大丈夫そうです。


    ここでようやく問題練習に入りますが、それでも、大きくつまずく子もいます。
    問題を解き始めると、理解していたはずのことが一気に崩れ、混乱が起こるのです。

    問題 √36 を整数に直しなさい。

    √36=6 です。
    わかっている者にとっては、これの何が難しいのか、むしろそれが逆にわからないくらいにシンプルな問題なのですが、これがわからない子は案外多いのです。
    √36 というのは、36の平方根のうち、正の数ということ。
    2乗して36になる数のうちの正のほうの数は、6です。
    そう説明しても、意味がその子に伝わっている様子が見られません。

    では、答えは何だと思う?
    何を誤解しているのか確認しようとして問うと、そういうのは別にないと言うのです。
    ただ、わからない。
    √36 という書き方がわからない。
    何を言っているのかわからない。
    そう言うのです。

    √4=2 です。
    -√9=-3 です。
    いくつかの具体例から共通のルールを本人が見つけることがあるかもしれないと、ボードにありったけ書いていっても、やはりわからないというのです。

    本来、√36なんて書き方はしなくてもいいのです。
    36の平方根は±6だから。
    整数になるのだから、√ を使わなくてもいいのです。
    この問題は、整理する前の形をあえて書いているだけですよ。
    そう説明しても、表情に変化はなく、目に光は宿りません。

    授業が膠着状態に入り、生徒から、ようやく自分の考えが述べられることもあります。
    「√36は、2乗したら36なんだから、36だと思う」
    「・・・・え?いや、√36 は、2乗したら36になるので、まだ36にはなってないんですよ。2乗する前の段階、1乗の段階だから、6なんです」
    「ちょっと何言ってるかわからない」
    ( ;∀;)

    平方根が理解できないのは、数学的なことが理解できないというよりも、本人の国語力・言語能力に負うところが大きいと思います。
    説明が理解できない。
    説明されている言葉が理解できない。
    平方根の壁は、言葉の壁だと感じます。


    もっとわかりやすく説明する方法はないだろうかと、数学に関する本を書店で探したことがあります。
    「平方根が子どもにとってわかりにくいのは、それが身近にあるものだと知らないからです」
    なんて書いてあったりします。
    だから、数学の授業の初めに、平方根を使った実例を説明すればいいと言うのです。
    ほほお?
    興味をもって読み進めると、その実例は、コピー用紙などの紙の規格。
    A4、B5といった規格は、どのサイズも縦と横の比が√2:1になっているという話が説明されていました。

    いやいやいや。(-_-)

    中学生でA4・B5の紙のサイズの話をして通じる子は、平方根の話も1度で通じると思います。
    そういう話を目を輝かせて聴く子は、そういうエピソードがなくても平方根は理解できるのです。
    「A4とか知らない」
    平方根が理解できない子の多くは、その一言でおしまいです。

    一般に、理解の遅い子は、世の中のことや身の回りのことへの関心が薄い傾向があります。
    音楽・アニメ・ゲームなどのサブカルチャーやスポーツなど、特定のことには興味があるのだと思いますが、現実のものごとへの関心は低く、興味を持って耳を傾けてくれることはあまり期待できないのです。

    ルーズリーフを使っている子に、
    「その袋にB5って書いてあるでしょう?それが紙の規格なんですよ。ノートの片面のサイズがB5です」
    そう説明すれば目を輝かせるかというと、
    「袋なんか見ない」
    それで話は終わってしまいます。

    そこで、紙の規格について1から説明したところで、それは本人にとって関心のあるエピソードではありません。
    平方根の説明だけでもわからないのに、紙の規格という謎の知識が加わって、さらに負担が増すのです。
    紙の規格が身近な知識になるのはコピーを取る必要が生じる大学生以降で、中学生にとってはほとんど関係ないことですから、知らないのは責められないです。
    中学生に紙の規格の話をするのは徒労感が強いです。
    平方根を教えるには、平方根で教えるしかないのです。
    だから、毎年、理解したとは到底思えない状態で初回の授業が終わります。

    それでは、平方根はマスターできないままで終わるのか?
    案外そうでもないのが不思議なところです。

    1週間後の授業では、あれほどの混乱が嘘のように収まっていることが多いのです。
    学校の授業で理解したのでしょうか?
    いえ、学校の授業がわからなかったから、塾で平方根について質問し、その説明も理解できなかったのです。
    でも、1週間後、理解できているように見えるのです。
    家で教わった?
    友達に教わった?
    そんな気配もありません。
    理解の遅い子は、私に忖度しません。
    「平方根がわかるようになったね」
    と褒めたとき、それが学校の授業のおかげや友達のおかげであるなら、
    「学校の授業でわかった」
    「友達に教わった」
    と言います。
    なぜか、そこははっきりさせておくべきだと感じる子が多いようです。
    褒められて、ただ黙っているのは、なぜ理解できるようになったのか、自分でもよくわからないからだろうと思います。

    1つ考えられること。
    これは、脳の働きなのではないか。
    脳というのは不思議なもので、睡眠をとると情報が整理され安定するらしいのです。
    だから、勉強したら、その後よく寝ることが大切。
    その場では咀嚼できなかった多くの情報。
    しかし、一晩寝たら、何がわからなかったのか不思議なくらいに理解し、安定する。
    そういうことなのではないか?
    結局、平方根を理解するために必要なことは、説明を聞くだけ聞いたらよく寝ることかもしれません。

    そんなわけで、紙の規格の話は、平方根がわからない中学生にはあまり効果がないのですが、この話自体は大人には興味深い点もあると思いますので、ここで説明します。

    紙には規格があります。
    一番大きいサイズがA0。
    縦と横の辺の比が√2:1の、約1㎡の紙です。
    これを半分に切ったサイズがA1。これも辺の比は、√2:1です。
    さらに半分に切ったのがA2。これも辺の比は、√2:1。
    このように、半分、半分、半分と切り分けていっても、どれも辺の比は、√2:1となります。
    つまり、全て相似な長方形の紙となるのです。

    これは、他の比ではうまくいかないのです。
    例えば、縦と横の比を3:2としてみましょう。
    半分に切ったとき、縦と横の比は、1.5:2=3:4。
    縦長に向きを直すと4:3。
    もう3:2にはなりません。
    1回切っただけで、もう元の紙と相似な長方形ではなくなるのです。
    √2:1の場合。
    半分に切ったとき、縦と横の比は、√2/ 2:1=√2:2=1:√2。
    縦長に向きを直すと、無事に√2:1の相似の長方形になります。
    √2だからこそできる技です。
    こりゃ凄いですね。ヽ(^。^)ノ

    A版の他にもう1つB版という規格があります。
    全く別の規格なのかというと関係性があります。
    A4の対角線の長さが、B4の長いほうの辺の長さなのです。

    A4の辺の長さを仮に√2、1としてみましょう。
    対角線の長さは、三平方の定理により、√3 と計算できます。
    その√3が、B4の長いほうの辺の長さなのです。
    ということは、A4とB4の辺の比は、√2:√3。
    すなわち相似比が√2:√3 ということです。
    面積比は、相似比の2乗ですから、2:3。
    B4は、A4の1.5倍の大きさの紙であることがわかります。
    うーん。いろんなことが美しい。
    それも、平方根があるからこそです。
    ヽ(^。^)ノ
      


  • Posted by セギ at 11:55Comments(0)算数・数学

    2020年04月20日

    2桁×2桁を暗算する方法。



    2桁×2桁のかけ算を暗算でできたらいいのになあと思ったことがあるでしょうか。

    ただ、暗算というのは、本人が思うよりもずっと時間がかかるのです。
    頭を使ってものを考えているとき、時間の流れはとても速いのです。
    だから、暗算すればほとんど時間がかからないような錯覚を本人は抱いていても、客観的に見ていると、何をいつまでもぼんやりしているのだろうと不可解なほどの時間が流れています。
    しかも、計算ミスする子の多くは、暗算で失敗する子たちです。
    答案を見ると、わざと1行とばしに計算過程を書いているの?という書き方の子が、数学で基本問題を失点する子には多いのです。
    「数学のテストはいつも時間が足りない」
    と本人は言うのですが、時間が足りない原因の1つは無理な暗算に時間がかかっていることです。
    明らかに、書いたほうが速い。
    比較的丁寧に書いている私は、無理な暗算をしているその子と同じ問題を解いても半分の時間で解き終わります。

    全ての暗算をやめろと言っているわけではありません。
    無駄な行は書かなくていい、と常々話しています。

    例えば、中学数学の初期の頃は、教科書も参考書も、こんなふうに計算過程を書いてあります。

    -1+4-2+5
    =-1-2+4+5
    =-(1+2)+(4+5)
    =-3+9
    =6

    これは解説のために丁寧に書いているので、本来、2行目と3行目は不要です。

    -1+4-2+5
    =-3+9
    =6

    これで十分安全に計算していけます。
    教科書は、解き方を説明しているので、実際の答案がそうでなければならないということではないのです。
    実際に計算するなら、上のように3行で書いていくのが、安全で無理がありません。

    しかし、暗算に固執する子は、
    -1+4-2+5
    =6
    と書きたがります。

    それが瞬時になされ、精度も極めて高いのなら、私も文句は言いません。
    けれど、私が上のように3行書いている間に、うんうんうなって暗算して、結局、私より答を書くのが遅くなり、しかもしばしば計算ミスをするのなら、暗算はしないでほしい。
    しっかり書いていくことでスピードと精度を保ちましょう。


    方程式も同様です。
    例えば、

    5x+2=2x-7
    5x-2x=-7-2
      3x=-9
       x=-3

    教科書に書いてあるこの模範解答のうち、2行目は不要です。
    移項しながら計算することくらいは、無理なくできます。

    5x+2=2x-7
      3x=-9
       x=-3

    これで十分安全に計算できます。

    ところが、これも暗算したがる子は、
    5x+2=2x-7
       x=3
    などと誤答してしまいます。
    移項して、たし算して、それからわり算してと、いくつもの作業を一度に行うために、結局、符号にまで意識が回らないのです。
    よくあるミスです。


    暗算撲滅、全部筆算しろ、と言っているのではありません。
    ある程度の暗算は必要です。
    分数の約分をするときにもわり算の筆算が必要という計算力の子もいます。
    それでは困ってしまいます。
    42÷2の商が、筆算しないとわからない。
    42÷3を、筆算しないとできない。
    そもそも、42が3で割り切れることに気づかない。
    それでは、困ります。

    目安としては、×1桁、÷1桁の計算は、暗算でできること。
    2桁+2桁、2桁-2桁の計算は、暗算でできること。
    それくらいの計算力があり、あとは頭を使うよりも手を使って式を書いていけば、それなりにスピードと精度を保って計算できます。


    そんなわけで、暗算に対しては消極的、というより懐疑的な私ですが、今は時間のあるときです。
    頭の体操のつもりで、ちょっと2桁×2桁の暗算の練習でもしてみましょうか?
    実際に使うかどうかは、また別の話として。


    まずはその仕組みから。
    十の位がa、一の位がbである整数と、十の位がx、一の位がyである整数をかけるとします。
    文字式で表すと、(10a+b)(10x+y) と表すことができます。
    これを展開すると、
    100ax+10ay+10bx+by
    となります。
    これを筆算のように書いてみると、

      ab
    x xy
    axby
     ay
     bx

    と表すことができます。
    ここで、3行目の ax や by は、実際に計算した積のことであり、文字そのものではありません。

    例えば、36×27 は、

      36
    × 27
     642  ・・・2×3=6 の横に、6×7=42 を書いたもの。
     21   ・・・3×7=21 を書いたもの。
     12   ・・・2×6=12 を書いたもの。
     972

    となります。

    この構造をしっかり理解していると暗算が可能です。
      36
    × 27

    まずは6×7=42 の2が一の位にくることは確定です。

      36
    × 27
       2

    次に、先ほどの6×7=42 の4と、互いの十の位と一の位とをたすきにかけた答えの一の位の数とを足したものが、答えの十の位となります。
    上の例で言えば、3×7=21の1と、6×2=12の2です。
    4+1+2=7
    これて、十の位は7だとわかります。

      36
    × 27
      72

    先程の十の位を出すためのたし算に繰り上がりの数があったら忘れずにメモをしておきますが、今回はありませんでした。
    次は、互いの十の位どうしをかけた数3×2=6の6と、互いの十の位と一の位とをたすきにかけた答えの十の位を足します。
    6+2+1=9
    これは2桁になったらそのまま、千の位から書いていきます。
    今回は、百の位におさまりましたね。
    先程の繰り上がりがあったら、それもたします。


      36
    × 27
     972

    これが答えです。

    慣れないうちは大変ですが、慣れれば機械的作業ですから、暗算が可能です。
    こんな苦労をするくらいなら普通の筆算のほうがいいと私は思いますが。
    ただ、この方式で筆算する、という手もあります。

      36
    × 27
     642
     21
     12 
     972

    まずはかけ算に集中し、最後にまとめてたし算するので、途中の繰り上がりに頭を使わなくて済みます。
    日本式の筆算は、繰り上がりを意識しながら、かけ算とたし算を同時にこなさなくてはならず、そこでミスする子が多いのです。

    とはいえ、周囲が普通の筆算をしているのに1人だけこの方式でかけ算するというのは、もしも混乱したときに補助してくれる人が存在しません。
    リスクが高いです。
    間違えたときに、何を間違えたのか指摘したり補助したりしてくれる先生も友達もいないことを覚悟しなくてはなりません。


    ずっと前にこのブログに書きましたが、アメリカ式のひき算と日本式のひき算との間で苦労していた子に授業したことがあります。
    アメリカ人のお父さんと日本人のお母さんとの間に生まれた子でした。
    小学校の途中まではアメリカに住んでいて、アメリカ式のひき算を学習したのですが、途中から日本で暮らすようになりました。
    インターナショナルスクールに通えば問題なかったのでしょうが、両親の強い希望で日本の公立学校に転入したため、日本式のひき算を途中からやらねばならなくなりました。

    ところで、アメリカ式のひき算とはどのようなものか?
    アメリカ式とはいっても、アメリカ全土で同じようにやっているのかどうかは未確認なのですが、その子がやろうとしている計算は、日本のひき算とは異なるものでした。
    例えば、14-7 の計算。
    日本では、まず一の位の計算をする際、4から7は引けないので、十の位から10を下ろして、14-7=7 とします。
    その計算をさらに詳しく語るならば、下ろしてきた10から7を引いて、10-7=3。
    その3と、もともと一の位にあった4をたして、3+4=7 です。

    ところが、その子の引き算は、
    4から7が引けないことを確認したら、まず7-4=3 をします。
    日本では禁じ手である、下から上をひく計算をするのです。
    これで、ひけない分、つまり不足分が3であることがわかります。
    その不足分は、十の位から10を下ろしてきて引きます。
    10-3=7 です。
    したがって、14-7=7 です。
    日本は、引いてから足します。
    アメリカ、引いて、さらに引くのです。

    それぞれ理屈は正しいので、どちらかのやり方を貫き通せば何も問題ないのですが、その子はアメリカではアメリカ式、しかし、日本に帰ってからは日本式で教えられ、ごちゃごちゃになってしまったようです。
    14-7=13
    といった誤答が多く見られました。
    いったん癖になってしまうと、こういう基本的なことはなかなか治りません。
    長期に渡る丹念な指導が必要でした。

    多少複雑でも、1つのやり方で通したほうが、結局は合理的。
    結論はそうなってしまうかもしれません。
    上で説明した、2桁×2桁の暗算も、そんなやり方もできる、ということにとどめておいたほうがいいのだろうと思います。

      


  • Posted by セギ at 15:39Comments(0)算数・数学

    2020年04月12日

    高校数Ⅱ「式と証明」。高次方程式と ω。



    今回も「因数定理・高次方程式」に関する問題です。

    問題 方程式 x4-3x3+ax2+bx-4=0 がx=1、2を解にもつとき、定数a、bの値と他の解を求めよ。

    中3の「2次方程式」の頃から、このタイプの問題はよく出題されていますね。
    その頃と解き方も同じです。
    x=1、2が解なのですから、もとの方程式にx=1とx=2を代入できます。
    やってみましょう。

    x=1 を代入して、
    1-3+a+b-4=0
    整理しましょう。
    a+b=6 ・・・➀
    x=2を代入して、
    16-24+4x+2b-4=0
    整理すると、
    4a+2b=12
    両辺を2で割って、
    2a+b=6 ・・・➁
    文字はaとbの2種類。式は2本。
    これは連立方程式として解けます。
    ➁-➀
     a=0 ・・・➂
    ➂を➀に代入して
    b=6

    ここで問題を見直します。
    何を求めるんでしたっけ?
    他の解も求めるのですね。

    では、a、bの値をもとの方程式に代入します。
    x4-3x3+6x-4=0
    この4次方程式を解きます。
    x=1、2は既にわかっていますので、それを利用して組立除法をしましょう。

    1 -3   0   6 -4  |1
       1  -2 -2  4
    1 -2 -2 4  0   |2
       2   0 -4
    1  0 -2   0

    よって、与式は、
    (x-1)(x-2)(x2-2)=0 と因数分解できます。
    x2-2=0 の場合、
      x2=2
       x=±√2 です。
    したがって、この問題の解答は、a=0、b=6、他の解 x=±√2 となります。


    問題 実数係数の方程式x3+ax2+bx+6=0がx=1+√2 i を解にもつとき、定数a、bの値と他の解を求めよ。

    あれ?文字が2つなのに、与えられた解が1つしかない?
    しかも、解が複素数なので、計算がごちゃごちゃしそうです。
    ここで登場するのが、「共役な複素数」です。
    複素数を最初に学習したときに出てきた言葉でした。
    複素数a+√b i と共役な複素数は、a-√b i です。
    これは定義ですので、「なぜ?」という質問は不要です。
    「共役の複素数」と呼ぶと決めただけのことなので、それ以上の理由はありません。
    と説明すると不審そうな顔をする高校生もいるのですが、それはおそらく「共役」という言葉が耳慣れず、その言葉の意味を説明してほしくて質問しているのかもしれません。
    どのへんが共役なのかというと、
    x=a+√b i が解である方程式は、x=a-√b i も解なのです。

    これを本格的に証明しようとすると、いろいろと面倒くさいことになるのですが、感覚的には理解しやすいことだと思います。
    2次方程式の解の公式を思い出してください。
    x=-b±√b2-4ac /2
    この解の公式を眺めていると、ルートの前の符号が+と-の2つの解が同時に得られますね。
    共役な2つの解が同時に得られるのです。
    証明せよと言われない限り、そういう把握で十分です。

    上の問題に戻りましょう。
    x=1+√2 i が解のとき、それと共役なx=1-√2 i も解です。
    したがって、上の方程式の左辺は、
    {x-(1+√2i)}{x-(1-√2i)}(x+p)
    と因数分解できます。
    前半の2つの{ }を展開して1つの( )にまとめてみましょう。
    複素数ではない、簡単な式に整理できるんです。
    {x-(1+√2i)}{x-(1-√2i)}
    =x2-(1+√2i+1-√2i)x+(1+√2i)(1-√2i)
    =x2-2x+1-√22i2
    =x2-2x+1+2
    =x2-2x+3
    よって、上の方程式の左辺は、
    (x2-2x+3)(x+p)
    となります。
    展開しましょう。
    x3+px2-2x2-2px+3x+3p
    xについて降べきの順に整理しましょう。
    =x3+(p-2)x2+(-2p+3)x+3p
    これがもとの方程式の左辺と等しいのですから、
    x3+ax2+bx+6=x3+(p-2)x2+(-2p+3)x+3p
    係数を比較して、
    a=p-2 ・・・➀
    b=-2p+3 ・・・➁
    6=3p ・・・➂
    という3本の式が得られます。
    文字が3種類、式が3本。
    連立方程式として解くことができます。
    ➂より p=2
    これを➀に代入して、a=0
    ➁に代入して、b=-1
    他の解も求めなければなりませんが、今回は、もとの式に代入して組立除法で解き直す必要はありません。
    もとの方程式の左辺は、途中で p を用いた因数分解をしてありましたので、
    (x2-2x+3)(x+p)=0
    ということです。
    では、解の1つはx=-p、すなわち、x=-2です。
    忘れてはいけないのは、最初に見つけた共役な複素数もxの解であること。
    よって、この問題の解答は、
    a=0、b=-1、他の解x=1-√2i、-2 となります。


    問題 x3=1の虚数解の一つをωとするとき、ω12+ω6+1、ω10+ω5+1の値を求めよ。

    これも高次方程式に関する問題の一種です。
    しかし、高校生には非常に評判が悪いのが、このωに関する問題です。
    あまりにも唐突に出てきて、違和感が強すぎる。
    意味がわからない、ということのようです。
    そもそも、読み方すらわからない、という声さえ聞きます。

    ωは「オメガ」と読みます。
    ギリシャ文字です。
    数学にギリシャ文字が出てくることに違和感があり迷惑でたまらないという高校生もたまにいるのですが、数学の発祥はギリシャですから、まあそう嫌がらずに。
    普段使わない文字なので、その違和感は理解できますが。
    覚えることが1つ加わって、ハードルが高くなってしまうのは事実です。
    書き慣れていないので、書きにくいですし。
    ωは小文字で、大文字はΩです。
    Ωは、「オームの法則」で有名な、電気抵抗の単位を表す記号です。
    この説明をすると、高校生の顔が微妙に和らいだりします。
    Ωは許容範囲なのでしょう。
    要するに、慣れの問題なのだと思います。

    さて、x3=1 の虚数解の1つがωです。
    すなわち、ωは1の3乗根、あるいは立方根という言い方もします。
    ωという文字で表していますが、i を用いて表すことも可能です。
    試しに、3次方程式として、普通に解いてみましょう。

    x3=1
    x3-1=0
    因数分解の公式を使えます。
    (x-1)(x2+x+1)=0
    x2+x+1=0 のとき、
    x=-1±√1-4 /2
    x=-1±√3i /2
    共役な2つの複素数の解が得られました。

    え?それのどっちがωなの?
    と高校生に質問されることがあるんですが、結論としては「それはどっちでもいい」となります。
    ここも高校生には理解しづらいところのようです。
    どっちでもいいわけないだろうと思うらしいのです。
    でも、本当にどっちでもいいのです。
    この問題は、ωの値を求めることではないのですから。
    上の問題では、x3=1の複素数の解の1つをωとする、としてあるだけです。
    どちらと限定していません。
    それは、どちらでも同じ結果が得られるからです。

    ω=-1+√3i /2 としてみましょう。
    ω2=(-1+√3i /2)2
      =1-2√3i+√32i2 /4
      =1-2√3i-3 /4
      =-2-2√3i /4
      =-1-√3i /2
    お?
    ω2は、ωと共役の複素数、-1-√3i /2 となりました

    今度は、ω=-1-√3i /2 としてみましょう。
    ω2=(-1-√3i /2)2
      =1+2√3i+√32i2 /4
      =1+2√3i-3 /4
      =-2+2√3i /4
      =-1+√3i /2
    あ。
    やはり、ω2は、ωと共役の複素数、-1+√3i /2 となりました。
    つまり、ωが1の3乗根ならば、ω2も1の3乗根なのですね。

    なぜω2にそんなこだわって説明しているか?
    上のx3=1に戻って考えましょう。
    x3-1=0
    (x-1)(x2+x+1)=0
    でした。
    x-1=0 のとき、x=1。
    これは、整数解です。
    もう1つの( )の中身、すなわち、X2+x+1=0 が成り立つときのxが、x3=1の虚数解ωです。
    すなわち、x=ωを代入すると、
    ω2+ω+1=0
    そして、問題を解くときによく使うのが、この ω2+ω+1=0 なんです。
    しかも、ωがどちらの虚数解でも、結果に影響しないのです。

    ここまでのところをまとめますと、ωは1の3乗根ですから、
    ω3=1 です。
    そして、
    ω2+ω+1=0
    この2つのことを使って、問題を解いていきます。
    上の問題で求めよと言われたのは、まず、ω12+ω6+1の値でした。
    ω3=1ですから、
    ω12+ω6+1
    =(ω3)4+(ω3)2+1
    =1+1+1
    =3

    次のω10+ω5+1は?
    ω10+ω5+1
    =(ω3)3・ω+ω3・ω2+1
    =ω+ω2+1
    =0

    ωがどちらの虚数解であるかは、やはり何も影響しないです。
    ωに関する問題は、知識を利用するだけなので、わかってみれば得点源です
    もしも
    忘れたら、x3=1 を自分で解き直せば、ω2+ω+1=0の式は復元できます。
    ヽ(^。^)ノ
      


  • Posted by セギ at 13:54Comments(0)算数・数学

    2020年04月05日

    「これだけで大丈夫」という勉強法は危ない。


    以前勤めていた塾が、英語講師のアルバイトを新たに募集したことがありました。
    私は人事に口をはさむ立場ではなかったのですが、筆記試験の採点はしましたし、意見をきかれることもありました。

    その日、面接を終えて戻ってきた副学院長が、少し困った顔で私に言いました。
    「はりきっている人でねえ、古いノートを机の上に広げて、自分が教わった塾の英語の先生がすばらしい人で、大学受験なんて中学の文法だけで十分なんだ、と独特の授業をしたと言うんだよね。そういう授業を自分もしたい、と言うんだけど」
    私は、面接の前に行われた英語の筆記試験の採点をしていました。
    筆記試験は、高校1年生対象の学力テスト問題でした。
    その応募者の得点は、60点台。
    この人を採用するか、どうか。

    「どう思う?」
    と訊かれて、私は、採点した答案を副学院長に渡しました。
    「中学の文法だけで十分、というより、中学の英語しか理解していないです。高校レベルの問題は、すべて間違えています」

    その人は、不採用になりました。
    大学入試は、確かに、文法問題の出題割合は低いです。
    中学の英文法だけで、あとは色々な受験テクニックを駆使して、長文の大意を何とか読み取れば、大学入試でギリギリ合格点を取ることは可能かもしれません。
    しかし、中学の文法だけで大学に入っても、それは、高校生の学力がないまま大学生になるという意味でしかありません。
    私は、その子と一度も顔をあわせませんでしたが、不採用という事実から、何かを理解してくれていたら良いと思います。


    これだけやれば大丈夫、といった勉強法は、ときに魅力的に映ります。
    国語や英語の読解問題で、本文を読まないで解く方法を教える講師さえいます。
    でも、それは、文章を読む能力がないまま大人になるということです。
    そんなことをすばらしいことと信じて、それ以上の勉強をすることをやめてしまったら、そこで行き止まりです。

    洪水のように押し寄せてくる、甘い情報。
    自分だけが楽な方法を知らず、損をしているような気がしてくる。
    それを、はっきりと、否定できること。
    そんなのは、嘘だ、と見切れること。

    「効率の良い効果的な勉強」と、「楽な勉強」は違います。
    楽なほうに流れたら、目先の合格だけは手に入ることがあるとしても、その先がありません。
    生徒に身につけてほしいのは、本物の学力であり、無限に伸びていける勉強法です。


    英語だけの話ではありません。
    数学にも、そういうことは起こります。

    文系の高校3年生で、センター試験対策として数ⅠAの授業を受けている生徒がいました。
    数Ⅰ「2次関数」のなかの、2次方程式の解の正負に関する問題を解いていたときのことです。
    「f(x)=ax2+2ax+10 がx軸と正の位置で2か所交わっているとき、aの値の範囲を求めよ」といった問題でした。
    数Ⅰならば、判別式・軸の方程式・f(0)の値の正負、の3つの要素で解きます。
    しかし、数Ⅱでは、同じ問題を、判別式・解と係数との関係、で解くことも可能です。
    センター試験の数ⅠAとは言うけれど、数Ⅱの解き方で解いてもいいんですよと話すと、その子は不可解な反応をしました。
    「数Ⅱは勉強していない」
    というのです。
    学習したけれどわからなかった、というのではないのです。
    そもそも、高校の授業で、数ⅡBは学習しなかった。
    文系選択の子は、高校2年の数学でも、数ⅡBの内容を教わらず、数ⅠAの復習をしていたというのです。

    ・・・え?
    それは、許されているの?
    数ⅡBの単位は、高校卒業に必須の単位じゃありませんでしたか? 
    彼女は首を横に振りました。
    そういうことは、よくわからない。
    でも、数ⅡBはやっていない。
    去年は、数ⅠAの復習をしていた、というのです。

    ・・・数ⅡBという名称の授業は書類上は存在し、単位を取得しているが、そこで学んだ内容は、数ⅠAの復習だった。
    どうも、そういうことのようなのでした。

    私立のカリキュラムは、数Ⅱや数Bではなく、「幾何」「代数」、あるいは、中学の頃から「数学α」「数学β」などと称していて、そもそも、文科省の正規の科目名と対応していないことが多いです。
    しかし、書類上は、文科省の指定する教科名になっているでしょう。
    私立は、中学3年の段階で高校1年の数学内容に入っているのは普通のこと。
    その一方で、高校2年になっても、高校2年の数学を教えない学校がある・・・。

    文系選択の子に、数ⅡBを教えない。
    その代わり、英語など、その子の大学受験に必要な技能を伸ばせるだけ伸ばすというカリキュラムで、進学実績を上げる。
    そういうカリキュラムの組み方は、合理的なのかもしれません。
    生徒側も、大歓迎でしょう。
    しかし、結局、数ⅡBの、とにかく計算・計算・公式・公式・計算・計算という経験を経ていず、数ⅠAがマックスに難しいという体感でしたから、その子は学力の天井が低い、という印象は否定しがたかったのです。


    そもそも、数ⅡBの内容は文系の子にも本当は必要です。
    大学まで視線を伸ばすと、それを感じます。
    文系の多くの学科で、統計学は必修です。
    現在、多くの高校で数B「確率偏差」を選択しないため、標準正規分布の読み取り方を大学で初めて教わる子が多いと思いますが、それでも、数ⅡBで「数列」や「積分法」を学習していれば、理解しやすいはずです。

    数B「確率偏差」が必修ではなく選択単元になっていることも、世の中の流れから考えれば少しおかしなことです。
    今年度からの小学校の新課程では、「データの分析」は以前よりも学習量の多い単元になっています。
    以前は教えなった「度数分布表」という用語も、「代表値」としての「中央値」「最頻値」という用語も、中学から小6の学習内容に下りてきました。
    分布を数直線上に点で表すことも、以前はそのやり方に名前はなかったのに、「ドットプロット」という用語が教科書に登場しています。
    覚えることが多くて大変・・・。
    さらに言えば「データの活用」として、「PPDACサイクル」なんてことも小6で教えるようになりました。

    PPDACサイクル。

    Problem(問題の発見)
    Plan(計画の立案)
    Data(データの収集)
    Analysis(データの分析)
    Conclusion(結論)

    ・・・こんなことを小6に教えようとしているのです。
    結局、子どもが相手ですから、扱われているのは「忘れものを減らす方法を考える」といった課題で、一番多い忘れものは何なのか、何曜日に忘れものが多いのか、などの分析をさせた後、結論としては「前日に準備をする」が模範解答という、大人が見ると何だそれという学習ではありますが。
    それは、データを分析しないと得られない結論なの?
    コントの台本みたいだけど、大丈夫なの?
    そう言いたい気持ちも少しあります。


    内容はともかく、データの分析と活用に関して、昔よりも学習のボリュームが増え、より大事な単元として扱われるようになってきているのです。
    これから、中学・高校の新課程でも、同じ方向の修正がされ、確率偏差や標準正規分布が必修になる日も近いでしょう。
    データが読めないと国際競争で勝てない。
    数学教育は、国家的重要事です。

    そのように言われている一方、現場は、真逆の反応をしつつあるようにも感じます。
    文系の子は、数ⅡBを高校で教わっても消化不良で終わっている子が多いのが実情です。
    だから、文系の子に数ⅡBを教えない高校を一方的に責めるわけにもいきません。
    数学があまり得意ではない生徒は、高校生になると、数学に関して「店じまい」を始めてしまいます。
    数学はもう全くわからないし、大学入試にも使わないから、定期テストは赤点を取らなければいい、単位が取れればいいと本人は判断しているようです。
    いえ、それほど明確に思い定めているわけではないにしろ、学習姿勢はそのようです。
    そうした子の多い文系クラスで、大半が理解できないような内容の授業を行えば、定期テストの結果も悪く、数学のせいでその子の内申が低くなります。
    大学の推薦入試もAO入試も、内申が重視されます。
    数学の成績がその子の足を引っ張ってはいけない・・・。
    数学が苦手な子には、できるだけ数学の授業を学校では受けさせないほうが、内申が上がります。
    高校3年の文系クラスでも、センター試験対策を目的とした「数学演習」といった授業を選択できる高校が以前は多かったのですが、そういうもののない高校が増えてきました。
    文系の子に学校の正規科目として数学を選択させると、それでその子の内申が下がるから選択させない、勉強させない、という考え方もあるのでしょうか。
    それは、うがった見方に過ぎるかもしれませんが。

    しかし、今後、ますます大学入試を内申重視にすると、当然、そういう弊害が起こってきます。
    内申を高くするための科目選択、という視点が生まれてきます。
    苦手なことだから補強するのではなく、苦手なことは、徹底して避ける。
    そういうやり方が肯定される可能性があります。

    数年前に評判になったビリギャルで有名な塾も、生徒に数学は選択させず、文系でしかも入試科目数の少ない私立大学を狙わせる、という戦略をとっていたと聞きます。
    有名大学でも、学科によっては、英語と小論文だけで合格できるところもあります。
    戦略としては理解できますが、それでいいのか?とも感じます。

    大学、あるいは実社会は、昔よりも数学的能力を重視し、数学のできる人材を求めています。
    文科省の定める教育課程もその方向です。
    しかし、高校の実態は、数学が苦手な生徒には数学を学ばせない傾向が生まれつつある・・・。
    このひずみ、このままにしておいて大丈夫なんでしょうか?

    得意なことでの一点突破が利口なやり方。
    これだけで大丈夫。
    英語は中学英語で大丈夫。
    数学は、必要ない。

    それは、本当に合理的なことなんでしょうか。
    近視眼的で不合理なことをやらかしているだけのようにも感じるのです。

    英語も数学も、本当に得意になれたら、それが一番です。
    本当に得意になれたら、受験も、その先も、可能性が広がります。
    目先の「これだけで大丈夫」に飛びつく前に、その先に何があるか、考えてほしい。
    その選択の先に何が待っているか、考えてほしい。
    そう思うのです。

      


  • Posted by セギ at 14:36Comments(0)算数・数学英語

    2020年03月31日

    伝えることの難しさ。


    小学生に算数の授業をしていたときのことです。
    こんな問題を解いていました。

    問題 青い色紙が45まい、赤い色紙が60まいあります。これらの色紙を、それぞれ同じ数ずつあまりがないように子どもに分けようと思います。子どもが何人のとき分けることができますか。

    公約数に関する文章題です。
    45と60の公約数を求めればよいですね。
    公約数は、1、3、5、15。
    だから、答は、1人、3人、5人、15人 です。

    この問題は、解答欄が4つあり、「  人、  人、  人、  人」となっていました。
    答が4つあることを教えてくれている親切な問題だと私は感じていました。

    ところが、ある生徒が、この問題にこういう答を書きました。
    「5人、5人、  人、  人」

    ・・・え?
    どういうこと?

    「・・・どういう解き方をしましたか?説明してください」
    そう問いかけましたが、しかし、その子は押し黙ったまま、何も答えませんでした。
    自分の答は間違いなのだなと気づくと、それに関して説明をしない子・できない子は多いのです。
    無理もない、とも思います。

    以前に見たことのある種類の誤答なら、誤解の原因も見当をつけやすいのですが、このミスは初めて見ました。
    45枚の青い色紙と60枚の赤い色紙を、5人と5人に分ける・・・。
    45枚を5人に分け、60枚を別の5人に分ける、ということなのだろうか?
    上の問題文は、そのように誤読する可能性がどこかにあるものなのだろうか?
    そう思って問題文を読み返すと、確かに読み取りにくいところがないわけではないのでした。

    「青い色紙が45まい、赤い色紙が60まいあります。これらの色紙を、それぞれ同じ数ずつあまりがないように子どもに分けようと思います」

    「それぞれ同じ数ずつ」の「同じ」は、何がどれと同じなのか?
    「それぞれ同じ」とは、どういう意味だろう?
    わからないといえば、わからない・・・。
    算数の文章題は大体こういう構造のものという蓄積で問題文を読んでいる私とは、読解の仕方が異なる子どもがいても当然です。


    とはいえ、近年、言葉が通じにくい子に以前よりも多く出会うようになったと感じます。
    例えば、宿題の答えあわせをするとき。
    「では、宿題の答えあわせをしましょう。1番の(1)は?」
    と声をかけても、反応が返ってこない子もいます。
    この指示では、自分が何をすればよいか、わからないようなのです。

    「では、宿題の答えあわせをしましょう。答を言ってください。一番の(1)の答えは何ですか?」
    このように問いかければ、反応があります。

    コンピュータみたいなのです。
    正確にコマンドを伝えないと、反応しない。

    さらに言えば、
    「宿題の答えあわせをしましょう。赤ペンを用意してください。正解ならば、丸をつけてください」
    このように声をかけないと、赤ペンを用意しない子もいます。
    答えあわせなのだから赤ペンを用意しよう、とは考えないようです。

    ところが。
    同じ子が、答が間違っていると、消しゴムでその答を消して正解に書き直し、赤丸をつけたりします。
    それは、コマンドにない、自己判断です。
    私は一切指示していないことなのです。
    つまり、実は、コマンド以外のことを自発的に行うこともできるのです。
    コンピュータとの決定的な違いはそこです。
    誤答を消して、書き直し、赤丸をつける。
    そのことについては行動は迅速で、自己判断で処理を行っています。

    誤答を書き直して赤丸をつける行為の是非については、また別に書きたいと思います。
    是非も何も、そんなのはダメに決まっていますが、今回の話とは異なる話なのです。
    変な話ですが、正確なコマンドをしないと反応が返ってこないと思っていた子が、自分の誤答をスッと直して赤丸をつけるのを見ると、この子には自己判断の能力がある、何かを考えている、と感じとることができるのです。
    コンピュータにはない精神の存在を感じる、とでも言いますか。

    正確なコマンドをしないと反応が返ってこないタイプの子は、学力を低く見られがちです。
    理解力が乏しいように見えます。
    そんなの大体わかるだろう?が通じない。
    常識で考えなさいよ、が通じない。
    受け止め方に幅がないのは知力が乏しいせいではないか、と思われてしまいがちです。
    ただ、そうとばかりも言えないのではないかと、その精神の存在を垣間見ると感じます。
    勝手に答えを書き直し赤丸をつけるということは、何かを考えているということ。
    ただ、それが表面に見えてこないのです。
    無口で、無反応です。

    新しく学習する内容の解説をした後、
    「わかりますか?」
    と問いかけても反応のない子にも、たまに出会います。
    「わかりました?」
    ・・・無反応。
    「何か質問はありますか?」
    ・・・無反応。
    「どこが、わからないですか?」
    ・・・無反応。
    「もう一度訊きます。わかりますか?わかりませんか?返事をしてもらわないと、あなたがわかったのかわからないのか、私にはわからないんですよ。わからないのならもう一度説明しますし、わかるのなら練習問題を解きます」
    「・・・わかる」

    数回の問答の末、何とか把握したことですが、どうやら、解説はもうわかったので、次の問題を勝手に読み進めていて、その問題について考えていたようなのでした。
    その間、私の問いかけに返事をしなければならないという意識はなかったのでした。
    悪意はないのです。
    ただ、他者の存在への認識が弱いのでしょう。
    自分は、自分が何を考えているかわかる。
    自分がわかるのだから、他人もわかるはずだ。
    自己と他者との境界が曖昧なのかもしれません。
    だから、返答の必要性が今ひとつ理解できていないのでしょう。
    返事をしないくらいのことで、なぜ、こんなに色々言われるのか?
    そのような心の動きが内心ではあるのではないかと想像されます。

    ただ、これも、説明すれば理解してくれる場合が多いのです。
    とにかく、悪意はなく、ただコミュニケーションにおいて気づいていないことが多いのです。
    根気強く問いかけ、返事をしないと授業が先に進まないことが理解できれば、改善されていきます。


    ある日。
    その子の数学の宿題ノートを見て、私は仰天しました。
    1次方程式の計算問題の宿題を解いたノートでした。

    9-(4x+1)=-5x+2    x=6

    ・・・何?この答案。

    符号ミスをしていることより何より、与えられた方程式の横に、x=6 だけ書いてあることにぎょっとしました。
    え?
    この子は、方程式の解き方を知らないの?

    方程式は、解いていく過程そのものが答案です。
    「以下の方程式を解きなさい」という問題で、計算過程を省略して最後の行だけ書くということはありえません。
    高校数学の応用問題の途中で方程式を用いた際に、
    9-(4x+1)=-5x+2 
    よって x=-6
    と計算過程を省略した答案を書くことはありますが、それは高校生になってからのことで、それでも「よって」くらいは書かないと違和感があります。

    やはり、方程式の解き方を知らないのだろうか?

    ・・・いえ。
    以前の授業で、その子が方程式をごく普通の解き方で解いているのを、私は見たことがありました。
    方程式の文章題の解説と演習をそれ以前に行っていたのです。
    ああ、この子は、方程式は解ける。
    そう判断しました。
    ただ、( )の前に-の符号がある際の処理が苦手の様子。
    計算練習をもっとやらないとまずい。
    そのように判断して出した宿題でした。

    何でこんな答案を書いてきたんだろう?
    全問解き直しをしてもらう間、私はその理由がわからず、ただショックを受けていました。
    なぜ、こんなに突然退化するのだろう?
    塾に通うようになった結果、方程式も解けなくなったなんて、こんなひどいことはない。

    方程式の解き直しが全問終わり、もう1ページ、易しい文章題の宿題の答えあわせを始めたときのこと。
    例によって、何をxとしたのか、その1行目が書いてありませんでした。
    それは、数学が苦手な中学生のほぼ全員がやってしまうことです。
    以前の授業で注意したのに・・・と考えて、あること気づき、私は声を上げそうになりました。

    ・・・・ああっ!

    私は以前の授業で、方程式の文章題に関して、こんな話をしました。
    採点する先生は、答案の4つの箇所を見ます。
    まず、1行目に、何をxとしたかを書いているか。
    次に、方程式を正しく立てているか。
    次に、x=・・・の計算結果が正しいか。
    最後に、最終解答が正しいか。
    その4か所を見て、得点を決定します。
    それが、採点の流れだよ。
    そういうメリハリを意識して文章題の答案を作っていくんだよ。
    そのように解説したのでした。

    その子は、その説明を、「方程式は、1行目のあとは、x=・・・が書いてあればいい」と聞き取ったのではないか?
    中学生の間は、方程式の計算過程を書いておくのが当たり前です。
    計算過程を書かなかったら、方程式を解いたことになりません。
    そんなところを省略する子などいないから、その話はしなかったけれど。
    いや、「当たり前」とか「普通は」とか、そういうことが通用するわけではないのでした・・・。
    正しいコマンドをしなければ、正しい反応は得られない。

    ・・・だとすれば、あの異様な答案は、私のせいなのでした。
    ( 一一)

    無表情に、文章題の宿題の全てに何をxとしたかを書き加えていくその子を見て、考え込んでしまいました。
    この子は、私に対して、どのような感想を抱いているだろう?
    「自分が言ったことなのに、その通りにしたら次の授業ではそれではダメだと言い出して、全問解き直しを命じる人」だろうか?
    これまでも、こういうことの繰り返しで、「先生」と呼ばれる人たちに不信感を抱くことがあったろうか。
    大人に不信感を抱くこともあっただろうか。
    参ったなあ・・・。

    近年、非行少年と呼ばれる子たちで、反社会的な考えや反抗心から犯罪を犯す子は、ごく少ないと聞きます。
    むしろ、理解力やコミュニケーション能力に課題があり、周囲の大人と人間関係を結べない子が、社会の隙間に落ちていくようにして犯罪を犯してしまう例が多いそうです。
    個別指導塾に来る子は手厚い庇護のもとにある子ですから、もとよりそのような心配はないのですが、このコミュニケーション能力で、貧困やネグレクトなどの課題が家庭にあったなら、どのようなことが起こり得るか、悲惨な想像をしてしまうことがあります。

    細心の注意を払っていかなければ。

    それと同時に、数回前に私が授業で説明したことをその子は覚えていたのだと思い至りました。
    幾度同じ説明をしても、左の耳から右の耳に通り抜けていく様子の子もいる中で、説明を聞いている。
    説明を覚えている。
    聞いている様子は感じられないけれど、聞いているのです。
    この子は、コミュニケーション能力のせいでものすごく損をしているけれど、潜在能力はかなり高いのではないか?
    答がわかったときに「わかった!」とも言わないし、嬉しそうな顔もしないから、わかっていないと思われて損をしてきたことも多いのではないか。

    誤解をされないような正しい説明をするのは私の仕事。
    これは私の能力が試されている私の課題なのだと思います。

      


  • Posted by セギ at 18:14Comments(0)算数・数学

    2020年03月29日

    高校数Ⅱ 組み立て除法と高次方程式。



    今回は、いよいよ「高次方程式の解法」です。
    剰余の定理、因数定理、組み立て除法など、色々と学んできたのは、このためでした。
    やっと、目的を果たすことができます。

    問題 x3+3x2-4=0 を解け。

    2次方程式は、(x-△)(x-☐)=0 の形にくくると解けました。
    (  )(  )でくくる、すなわち因数分解すれば良いのです。
    高次方程式もその仕組みは同じです。
    どうすれば、そのように因数分解できるのか?
    上の問題は、共通因数でくくれるわけでも、公式を利用できるわけでもなさそうです。

    そんなときに使うのが因数定理です。
    f(a)=0 となるaを見つけたら、
    f(x)=(x-a)(   )
    という形に因数分解できるのです。

    そのようになるaを探しましょう。
    それは、暗算でも構いませんが、ちょっと難しいなと感じたらメモを取りましょう。
    上の問題では、a=1 だとすぐ気づきます。
    x=1 を代入すると、
    1+3-4=0 です。
    この正式は、(x-1) という因数を持つことがわかりました。

    では、もう一方の( )には何が入るでしょうか。
    それは、x3+3x2-4 をx-1 で割った商が入ります。
    実際にわり算の筆算をしても良いのですが、手間がかかります。
    ここで役立つのが組立除法です。
    やってみましょう。

    1 3 0 -4   | 1
      1 4  4
    1 4 4  0

    よって、商は x2+4x+4 です。
    これで因数分解できました。
    (x-1)(x2+4x+4)=0

    後半の( )は、公式を利用して、さらに因数分解できます。
    (x-1)(x+2)2=0
    よって、
    x=1、-2  です。


    問題 x4-5x3+10x2-16=0 を解け。

    やはり、因数定理を利用し、因数分解していきます。
    xに代入してこの式の値が0になる数を探します。
    x=1 のとき、1-5+10-16 は0ではないからダメですね。
    x=-1 のとき、1+5+10-16=0
    あ、これだ。ヽ(^。^)ノ

    しかし、xに代入する値が負の数になると、暗算ミスが増える人がいます。
    x3=1 としてしまったり、x3=-1はわかっていたけれど、-5が負の数であることでさらに混乱し、-5x3=-5 としてしまったり。

    負の数がからんでくるとかなりの確率で符号ミスをしてしまう人は多いです。
    中3の受験期に直る人もいますが、もう一生直らないのかもしれないと感じるほどに符号ミスを繰り返す人もいます。
    高校2年生になっても、ネックは符号ミス・・・。
    解き方は理解しても、計算の結果は正解にならない。
    なぜなら途中で符号ミスをするから。
    そういう人は、多いです。

    「ケアレスミスはなくせる」
    と気軽に言う人もいますが、なくせるミスもあるが、一生残るミスもあるだろうと私は思います。
    ミスの原因を自覚すれば直せるという人もいますが、どんなに自覚しても直らないこともあります。

    私自身は、普段は計算精度にある程度の自信をもっていますが、「今日はダメだ」と感じる日もあります。
    どんな日にケアレスミスをしやすいのかというと、例えば、夏期講習などの長期休暇中の講習の後半の日。
    毎日7コマ連続授業。
    朝10時から休みなしで夜9時半まで授業をすることが何日も何日も続きますと、さすがに疲労がたまってきます。
    あるいは、目の前の計算に集中できない心配ごとのあるとき。
    てきめんに計算精度が落ちます。

    だから、疲労や心配ごとで混乱を起こしているときの私の脳の状態が、通常の脳の状態に近い人は、計算ミス・符号ミスが常態であっても、特別不思議なことではないと思います。

    疲労困憊し、計算ミスが増えている私に、
    「気をつけて。自分のミスの原因を自覚して」
    などと注意したところで、直りません。
    そんなことで直るわけがないのです。
    脳が精度を保てないのです。

    数学ではそのように混沌とした脳の状態の人が、例えば英語では三単現や名詞の単複、あるは冠詞の付け忘れなどのミスを全くしない、ということもあります。
    だから、それは、頭がいいとか悪いとか、そういう話ではないのです。
    英語においては精度を保てる人が、なぜ、数学では精度を保てないのか?
    数学の問題を解くときに、疲労困憊したような、あるいは他の悩みごとで混乱したような脳の状態になってしまうのは、なぜなのか?

    1つには、数学の問題を解くときの脳の使い方がよくないと想像されます。
    数学の問題を解くときに、おそらく他の何かを同時に考えています。
    脳をいつもよりもさらに部分的にしか使えない状態にしています。
    でも、なぜ、そのような状態になるのか、おそらく本人もわからない。
    気が散った混乱した状態でしか数学の問題を解けないのはなぜなのか、本人にもわからないのだと思うのです。

    自分はなぜ、マイナスの符号を見落とすのか。
    数字を書き間違えるのか。
    そんなのは、本人にもわからないのです。

    1つ言えるのは、その問題に向かうときの心の在り方が、その問題にふさわしくないのではないか?
    易しい問題だと感じると、なめてかかり、ミスをする。
    難しい問題だと感じると、混乱し、ミスをする。
    問題に対し、いちいち不安定な対応をし、すぐに感情が動く人は、ミスが多いと感じます。
    数学の問題は、易しい問題だろうが難しい問題だろうが、同じ出力で同じように淡々と解いていくのが理想です。


    話が今回も大きく逸れました。
    再度、問題を見直しましょう。

    問題 x4-5x3+10x2-16=0 を解け。

    因数定理を利用し、因数分解していきます。
    x=-1 のとき、1+5+10-16=0 です。
    では、組立除法をしましょう。

    1-5 10   0  -16  | -1
     -1  6 -16   16
    1-6 16 -16    0

    よって、
    (x+1)(x3-6x2+16x-16)=0

    次に、後半の( )をさらに因数分解しましょう。
    xに代入して0になる値を探します。
    1も-1もダメ。
    ではx=2 は?
    8-24+32-16=0
    これですね。

    1 -6  16  -16  | 2
       2  -8   16
    1 -4   8    0

    よって、
    (x+1)(x-2)(x2-4x+8)=0
    最後の( )はもう実数では因数分解できないです。
    では、2次方程式の解の公式で解きましょう。
    xの1次の係数が-4と偶数なので、2本目のほうの公式が使えます。
    x2-4x+8=0
           x=2±√4-8
           x=2±√4 i
           x=2±2 i
    よって、この方程式の解は、
    x=-1、2、2±2 i  です。


    問題 2x3-7x2+2=0

    さて、この方程式でxに代入して0になる値は?
    1も-1もダメ。
    2も-2もダメ。
    計算ミスしたかなあ?とやり直すけれど、やはりダメ。
    それで諦めてしまう高校生が多い問題です。

    0になる値の見つけ方は、±(定数項)/(最高次の項の係数) でした。
    つまり、探すのは整数だけではなく、分数もあり得るのです。
    x=-1/2 を代入してみましょう。
    2/8-7/4+2
    =1/4-7/4+8/4
    =0
    0になりました。

    では、組立除法を。

    2 -7  0   2  | -1/2
      -1  4  -2
    2 -8  4   0

    よって、
    2x3-7x2+2=0
    (x+1/2)(2x2-8x+4)=0
    このままにせず、後半の( )を2で割り、前半の( )に2をかけることで整えます。
    (2x+1)(x2-4x+2)=0

    このように因数分解した結果を見ると、なぜ、±(定数項)/(最高次の項の係数)なのか、漠然と感じとれるのではないかと思います。
    最高次の係数の2が大きく影響するのがわかります。
    因数分解したときに、どこかの( )は、(2x+△)という形になるでしょう。
    そのときのxの解は分母が2の分数の可能性が高いでしょう。

    さて、後半の( )は、解の公式で解きましょう。
    x2-4x+2=0
           x=2±√4-2
           x=2±√2
    よって、この方程式の解は、 x=-1/2, 2±√2 です。


    問題 (x+1)(x+2)(x+3)=5・6・7 を解け。

    この問題、左辺の( )は1ずつ増えているし、右辺の整数も1ずつ増えています。
    これはx=4 が解だなと気づきます。
    x+1が5にあたり、x+2が6にあたり、x+3が7にあたるのですね。

    だからといって、それだけ解答欄に書いておしまい、として良いのでしょうか?
    これは3次方程式です。
    3次方程式は、基本的には解は3つあります。
    残る2つの解を求めずに終わるわけにはいきません。
    これは、やはり、展開して整理しましょう。
    (x2+3x+2)(x+3)=210
    x3+3x2+3x2+9x+2x+6=210
    x3+6x2+11x-204=0

    さて、これが0になるxの値を見つけないといけないのですが、今回はx=4が解の1つであることは既に見つけてありますので、随分楽です。いきなり組立除法できます。

    1  6  11 -204  | 4
       4  40   204
    1 10  51     0

    よって、
    (x-4)(x2+10x+51)=0
    x2+10x+51=0 のとき
            x=-5±√25-51
            x=-5±√26 i
    よって、この方程式の解は、
    x=4, -5±√26 i  となります。
      


  • Posted by セギ at 15:13Comments(0)算数・数学

    2020年03月19日

    高校数Ⅱ「式と証明」。剰余の定理・因数定理の利用。



    今回も「剰余の定理・因数定理の利用」です。

    問題 整式 f(x)をx(x+1)で割ったときの余りが2x+1、x+2で割ったときの余りが7であるという。f(x)をx(x+1)(x+2)で割ったときの余りを求めよ。

    とりあえず、問題の通りに整式 f(x)を表してみましょう。
    f(x)=x(x+1)g(x)+2x+1 ・・・①
    と、まず表すことができます。
    f(x)が何次式なのかわからなので、商も何次式かわからないまま、とりあえずg(x)と置きました。

    また、こうも表すことができます。
    f(x)=(x+2)h(x)+7 ・・・②
    このh(x)も、何次式なのかわからないのでとりあえずおいた商です。

    さらに、この問題の答えとなる余りを含む式を立ててみましょう。
    f(x)=x(x+1)(x+2)i(x)+ax2+bx+c ・・・③
    f(x)が何次式かわからないので、商であるi(x)も何次式であるかはわかりません。
    しかし、x(x+1)(x+2)という3次式で割っていますので、余りはどんなに次数が高くても2次式です。
    このax2+bx+cを求めれば良いのです。

    剰余の定理を用いましょう。
    ①より、f(0)=1 です。

    f(x)=x(x+1)g(x)+2x+1 にx=0 を代入すると、
    f(0)=0・(0+1)・g(0)+2・0+1
    となり、前半部分は0に何をかけても0ですから、
    f(0)=1 となります。
    これが剰余の定理です。
    かけ算のつらなりのどこかが0になるような数を代入するのがコツです。

    これを③に代入すると、
    f(0)=c=1 ・・・④

    また同じく剰余の定理より、①より f(-1)=-1です。
    f(-1)=-1(-1+1)g(x)+2(-1)+1=-2+1=-1 ということです。
    この f(-1)=-1を③に代入すると、
    f(-1)=a-b+c=-1 ・・・⑤

    また、剰余の定理より、②より f(-2)=7 です。
    f(-2)=(-2+2)h(x)+7=7 ということです。
    これを③に代入すると、
    f(-2)=4a-2b+c=7 ・・・⑥

    さて、a、b、cと文字が3種類。
    式が、④、⑤、⑥の3本。
    これは連立方程式として解けます。
    中学生の間は、連立方程式の計算過程は答案にしっかり残さないとテストで減点されますが、高校生は、連立1次方程式は解くことができて当然なので、答案にはその過程は残さなくても大丈夫です。
    勿論、書いてもいいですが。
    ④、⑤、⑥より
    a=5、b=7、c=1
    よって余りは、
    5x2+7x+1
    これが答です。


    問題 f(x)をx2+6で割ったときの余りがx-5、x-1で割ったときの余りが3であるという。
    f(x)を(x2+6)(x-1)で割ったときの余りを求めよ。

    剰余の定理を用いたいと思って、(x2+6)を因数分解すると、(x+√6i)(x-√6i)となります。
    虚数が入ってきて面倒くさいことになりそうです。
    他にスマートな解き方はないでしょうか?

    あります。ヽ(^。^)ノ

    f(x)=(x2+6)g(x)+x-5 ・・・① とおく。
    ここまでは一緒です。
    ここで、その商であるg(x)=(x-1)h(x)+p とおきます。
    g(x)はf(x)とは異なる整式ですから、(x-1)で割ったときの余りは、まだわかりません。
    とりあえず余りはpと置いておくなら、この式は何も問題ないですね。
    何で f(x)ではない式をx-1で割るの?
    意味なくない?
    と思うかもしれませんが、しばしお待ちを。

    これを①に代入するのです。
    f(x)=(x2+6){(x-1)h(x)+p}+x-5

    ①のg(x)のところに先程の式をカポっと代入しています。
    この式を部分的に展開して整理してみましょう。
    f(x)=(x2+6)(x-1)h(x)+p(x2+6)+x-5

    式全体を眺めると、この、p(x2+6)+x-5 が、f(x)を(x2+6)(x-1)で割った余りであることがわかります。
    ここで問題より、f(x)をx-1で割った余りは3でした。
    すなわち、剰余の定理より、f(1)=3 ですから、
    f(1)=(1+6)(1-1)h(x)+p(1+6)+1-5
    すなわち、
    f(1)=7p-4=3 となります。
    これを解いて、
    p=1
    よって、
    p(x2+6)+x-5
    =x2+x+1
    余りは、x2+x+1 です。

    この解き方はスマートで、一番上の問題でも使えます。
    とはいえ、自力でこの解き方を発想するのは難しいかもしれません。
    こういう解き方があるという知識を頭にインプットするのが何よりです。

      


  • Posted by セギ at 11:19Comments(0)算数・数学

    2020年03月08日

    高校数Ⅱ「式と証明」。因数定理と高次方程式。



    今回学習するのは「因数定理」です。
    整式f(x)が、x-aで割り切れるための条件は、f(a)=0である。

    これが因数定理です。
    「x-aで割り切れる」ということは「x-aを因数にもつ」ということ。
    f(x)=(x-a)(   )
    という形に因数分解できるということです。

    前回、剰余の定理を学習しました。
    整式f(x)をx-aで割った余りは、f(a)である、というのが剰余の定理でした。
    それならば、f(a)=0のとき、余りは0です。
    したがって、f(a)は、x-aで割り切れます。
    これが因数定理です。
    3次以上の方程式を解くという学習目標に一歩ずつ近づいてきましたね。

    問題 f(x)=x3-7x+a が x-3 で割り切れるようにaの値を定めよ。

    x=3 を代入すれば良いですね。
    因数定理より、
    f(3)=33-7・3+a=0
    27-21+a=0
          a=-6

    問題 整式x3+6x2+13x+8がx+1を因数にもつかどうかを判定せよ。

    f(x)=x3+6x2+13x+8 とする。
    f(-1)=(-1)3+6・(-1)2+13・(-1)+8
        =-1+6-13+8
        =0
    よって、因数にもつ。

    さて、ここまで勉強して。
    では、3次以上の式を因数分解するには、因数定理を利用すれば良いですね。
    式の値が0になるxの値を見つければよいのです。
    その数をaとすれば、その整式はx-aを因数にもつ。
    すなわち、それで因数分解できます。

    問題 x3-6x2+11x-6 を因数分解せよ。

    xにどんな値を代入すれば、この式は0になるのか。
    試しに+1や-1を代入して、地道に解いていきます。
    丁寧に答案を書いていっても勿論良いですが、面倒くさいので、そのあたりは答案に残さなくて大丈夫です。
    こういう問題は、考え方の過程を問われるタイプの問題ではないのです。
    答えがあっていれば良いのです。
    x=1 とすると、
    与式は、1-6+11-6=0
    やった、もう見つかったー。ヽ(^。^)ノ

    x=1を代入すると0になるということは、与式はx-1を因数にもつ、すなわちx-1で割り切れるということです。
    因数分解するには、x-1で割り切ったときの商が必要ですね。
    その商がもう一つの( )の中身になります。
    そこで、前回学習した組立除法を用います。
    真面目に筆算しても答えは出ますが、組立除法は簡単に答えが出ます。

    1 -6  11 -6   |1
        1 -5  6
    1 -5   6  0

    よって、商はx2-5x+6
    すなわち、
    x3-6x2+11x-6
    =(x-1)(x2-5x+6)
    さて、後ろのほうの( )はさらに因数分解できそうです。
    これは中学3年生の学習内容の因数分解です。
    かけて6、たして-5になる数字を探すと、-2と-3ですから、
    =(x-1)(x-2)(x-3)
    これで因数分解できました。ヽ(^。^)ノ

    ところで、+1や-1なら簡単に見つかって楽勝ですが、問題によってはそうではない場合もあります。
    地道にやるにしても、何か目安はないものでしょうか?

    あります。

    整式f(x)で、f(a)=0となる有理数aの候補は、
    ±(定数項の約数)÷(最高次の係数の約数)
    に限られていることがわかっています。
    上の問題では、定数項は-6。
    したがってその約数は、符号を抜くと、1、2、3、6。
    最高次の係数は、1。
    よって、aの候補は、±1、±2、±3、±6だったことがわかります。
    実際のaは、上の答案の通り、1、2、3でした。
    +1や-1を試してダメだったときには、この考え方を使って、aの候補をさぐっていきます。

    ここで課題となるのが計算力です。
    高校生は、このあたりの解き方が理解できないわけではないのです。
    あるいは、最悪、理解できないまでも、作業手順としては飲み込みやすい内容です。
    しかし、計算力が足りない場合があります。
    例えば-1がaだったのに、代入して符号ミスし、
    「あれ?0にならないから、これは違うんだ」
    と思ってしまい、後は延々と探し続けるということが起こりやすいのです。
    負の数のかけ算やたし算になると、計算精度が下がる。
    これは、大きな課題です。

    計算のやり方が中学1年で教わったやり方と違っているために精度が下がっている人もいます。
    上の問題で言えば、
    1-6+11-6
    =12-12
    というように、正の数どうし、負の数どうしを先に足し、最後に異符号の計算をするのが定石です。
    そのほうが間違えにくいからです。
    ところが、中学1年の学習をしてからもう何年も経っている高校生は、その定石を忘れていることがあります。
    1-6+11-6
    =-5+11-6
    =+6-6
    =0
    と、1つずつ足している子は案外多いです。
    それでも答えは同じですが、足したり引いたりを繰り返している過程で計算ミスをしやすいのです。
    計算ミスの多い人は、計算ミスをしやすい方法で計算している場合があります。
    それを直すだけで、精度は上がります。

    もう1つ。
    計算が苦手なのに暗算に固執するのもリスクが高いです。
    少しメモを取って、目に見える形にすれば楽に速く計算できます。
    絶対に暗算しなくてはいけない、暗算ができないなんて恥ずかしい、といった謎の脅迫観念にとらわれて、メモもとらずにうんうんうなって暗算したあげくに誤答する子もいるのです。
    時間もかかるしミスも多いし、この子は何の苦役を選んでいるんだろうと不思議に思うのですが、
    「メモを取ろうよ」
    という助言を聞いてくれないことがあります。
    効率の良いやり方を選択し、しっかり正答しましょう。

    問題 2x3-5x2+7x-6 を因数分解せよ。

    これは、xに+1や-1を代入しても0になりません。
    定数項は-6、最高次の係数は2。
    +2、-2もダメ。
    +3を試してみますが、やはりダメ。
    -3でもダメ。
    まさかと思いながら、3/2を代入してみます。
    2・(3/2)3-5・(3/2)2+7・3/2-6
    =2・27/8-5・9/4+21/2-6
    =54/8-90/8+84/8-48/8
    =138/8-138/8
    =0
    うわあ、3/2だったー。((+_+))

    それでは組立除法を。


    2   -5   7  -6    | 3/2
         3  -3   6
    2   -2   4   0


    2x3-5x2+7x-6
    =(x-3/2)(2x2-2x+4)
    最初の( )を2倍し、後ろの( )は1/2倍することで整理しましょう。
    =(2x-3)(x2-x+2)
    後ろの( )は、一見因数分解できそうですが、よく見るともうできないですね。
    これが解答となります。

    こういう問題になると、
    「どうやってもaが見つからない」
    と投げ出してしまう高校生がいます。
    涙ぐんでしまう高校生すらいます。
    数学があまりにもわからな過ぎてメンタル崩壊。( ;∀;)

    そんな大げさに考えないで。
    aの候補には限りがあります。
    符号ミスや計算ミスをしないように落ち着いて1つ1つ調べていけば、必ず見つかります。
      


  • Posted by セギ at 13:20Comments(0)算数・数学