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2022年03月28日

2022年度から高校数ⅠAは新課程。「期待値」の学習が加わります。

2022年度から高校数ⅠAは新課程。「期待値」の学習が加わります。

2022年度から、高校1年生の数ⅠAが新課程になります。
ただ、数ⅠAに関しては、単元名こそ変更されるものの、いくつか細かい学習内容の追加があるのみで、それほどの大移動はない印象です。

来年度から、数B「ベクトル」が消え、数Cに移行されるのは衝撃的変更ですが。
文系の生徒は、「ベクトル」を学習せずに高校課程を修了するのか・・・。
まあ、過去にも、文系の生徒は複素数平面を学習しなくなったり、理系生徒でも「行列」を高校で学習しなくなったりといった驚愕の変更はありましたが。
一方、学習内容で新たに追加されたものは、すべて統計関係のものであるのが、時代を感じさせます。
データの整理は、コンピュータがやってくれる。
人間は、そのデータを分析する能力が必要。
それは、文系の生徒でも。
そういう明確な指向が見えている改革です。

で、数A「場合の数と確率」に新たに加わった「期待値」の学習。
これは、旧課程では、数B「確率分布と統計的な推測」の学習内容だったのが下りてきた形です。

ただ、旧課程では、この単元を実際には数Bで学習しない学校が多かったのです。
数Bは、大きな単元が3つありました。
「数列」と「ベクトル」は学習するが、「確率分布」はやらない。
単位数(=週あたりの授業時数)から考えて、そんなことをやる時間がない。
そういう高校が多かったのです。
だから、期待値を学ばずに大人になった人も結構います。

「確率分布」を学校で学習しないので、センター試験も共通テストも、数Bの選択問題は、自動的に「数列」と「ベクトル」しか選べない。
どちらも、物凄く苦手なのに・・・。
そういう追い込まれ方をした受験生も多かったと思います。
「確率分布」のほうが問題が素直で易しいとささやかれてはいたのですが、学校で学習しなかった大きな単元を自学しようとする受験生はさすがにあまりいませんでした。
大学に入れば、社会科学系の学部は統計学が必修のことが多いのに、生徒の多くは確率分布の基礎を学んでいない。
そういう矛盾もありました。
今回、その補正が行われた形です。
さて、今回の改訂で、文科省の望む通り、すべての高校が「確率分布と統計的な推測」も数Bで学習するようになるのか?
現場には現場の論理があり、そんなに思うようには動かないのかもしれません。
それは来年度以降に判明すること。
今回は、まずは数ⅠAの改定です。

期待値。

これは、さらに前の旧旧課程では数A「確率」で普通に学習する内容だったので、それが復活しただけとみなすこともできます。
実際、そんなに難しい内容ではないです。

期待値とは何か?

1回の試行の結果期待される数値の大きさ。
確率変数のすべての値に確率の重みをつけた加重平均。

これが期待値の定義です。
・・・何を言っているのかわからない・・・。
そんな感想も予想されますが、このような定義とは裏腹に、具体的に考えればとても簡単です。

例えば、当たれば賞金がもらえるくじを想定してみましょう。
そのくじは、1枚100円。
1等10,000円があたる確率は、1/1000。
2等1,000円があたる確率は、1/100。
3等100円があたる確率は、1/10。

このくじの期待値は?
10000×1/1000+1000×1/100+100×1/10
=10+10+10
=30

よって期待値は30円。
このくじを1枚買ったときに、実際に戻ってくるお金の平均は、30円。
このくじを買って、戻ってくると期待できる金額は、30円。
それが期待値です。
何か結構あたりそうな確率のくじなのに、それでも、実際に買ったら損をする可能性が高いなあとわかります。


これは、上の式だけでピンとくる人が多いとは思いますが、一度、より丁寧に考えてみましょう。
このくじが、全部で1000枚販売されるとします。
すると、確率から考えて、10,000円のあたりはその中で1枚。
1000円のあたりはその中で10枚。
100円のあたりはその中で100枚です。
あたり金額は総額で、
10000×1+1000×10+100×100
=10000+10000+10000
=30000
くじは全部で1000枚ですから、あたり金額の平均は、
30000÷1000=30
よって30円。

これを、いったん総額を出すのではなく計算したのが上の式で、それが期待値の公式となっています。


では、実際の問題を解いてみましょう。

問題 目の数が2、2、4、4、5、6である特製のさいころが1個ある。このさいころを繰り返し2回投げて、出た目の数の和を5で割った余りをXとする。確率変数Xの期待値E(X)を求めよ。

急にややこしくなりましたね。
こういうのは、表にして整理すると楽です。
1回目のさいころの目をa、2回目のさいころの目をbとすると、目の出方は6×6で36通り。
目の2と2や4と4は、それぞれ別の目として把握し、表に書いていきます。
6×6のマスに、a+bを5で割ったあまりを書き込んでいき、すべてのXの出方を把握していきます。
Xは5で割った余りですから、0から4までとなります。
36通りのうち、0は5通り。
1は10通り。
2は5通り。
3は8通り。
4は8通り出てきます。
よって、それぞれの確率は、
X=0の確率は、5/36
X=1の確率は、10/36
X=2の確率は、5/36
X=3の確率は、8/36
X=4の確率は、8/36

このあたり、小学校から折り目正しい学習をしてきて、「約分しないと気持ち悪い」という人がいますが、今後の計算を考えれば、ここは約分しないほうが楽ですね。

求める期待値
E(X)=0×5/36+1×10/36+2×5/36+3×8/36+4×8/36
=1/36(10+10+24+32)
=76/36
=19/9

最終解答は勿論約分します。




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    Posted by セギ at 11:55│Comments(2)算数・数学
    この記事へのコメント
    文系の生徒も数Cは必須です。共通テストにも出題されます。よってベクトルは引き続き文理関わらず学習しますよ…
    Posted by くを at 2023年08月14日 18:34
    コメントありがとうございます。
    そうですね。
    国立大学文系なら、数学Cも必須となります。
    旧過程では、進路に関係なく、文系クラスでも数学ⅡBまでは全員が学習するカリキュラムの高校が多かったのですが、今後は、私立文系ならば、数学Cは選択しないでしょう。
    数学Bも選択もしなくなることが増えていくのかもしれません。
    Posted by セギセギ at 2023年11月17日 11:14
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