2024年01月24日
中1数学「正負の数」。正負の数の加法・減法。

もう4年前になりますが、中1の生徒の数学の宿題の答が、こんなふうだったことがあります。
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
=-2
当時は、コロナ禍が始まったばかり。
学校が突然休校になり、卒業式もなく小学校を卒業したその子は、中学に入学後も登校する機会は限られていました。
私も、リモート授業を導入した時期です。
生徒にとっては、とにかく、学習する機会が少ない。
中学の最初の学習を、自習しなければならない。
大変なハンデでした。
そうした数々の困難があったとはいえ、しかし、この宿題の出来は、ありえないんじゃないか?
これは、小学校の1年生で学習する
3+5
と同じなのに。
答は、当然、8なのに。
そう思う人もいるでしょう。
特に保護者の方ならば、この答案を見たら貧血を起こしそうになるかもしれません。
しかし、これは、そう珍しい現象ではありません。
学習の初期に、こうなってしまう中学生は、います。
そして、このまま、正負の数が全くわからなくなるのかというと、そういうことはありません。
ただ、そのままでは課題があるのも事実です。
中1「正負の数」は、数学の学習の中で、もっとも簡単なようでいて、教えるのは難しいものの1つです。
基本中の基本になるほど、それを「わからない」という子に説明するのは困難を極めます。
一応わかったのだろうと安心するのは禁物です。
「正負の数」の単元の終わりに復習すると、
(+3)+(+5)=-2
といった答案を再び目にし、愕然としました。
何で?
それは、小学校1年生で学習した、3+5よ?
答は8に決まっているでしょう。
なぜ、中学に入ったら-2になると思うの?
なるわけないでしょう?
といった「常識の押し付け」は、しかし、教える者と教わる者、両者にとって不幸です。
それは、「正負の数」の体系が、その子の中に形成されていないということなのです。
いや、むしろ、算数・数学の基盤が形成されていなかったのです。
算数の学習が、小学校の低学年からやり方の丸暗記に終始していたのかもしれません。
だから、その子にとっては、やり方をちょっと間違ったためにそんな答になっただけで、深い意味はないのでした。
そして、それは、小学校の低学年から延々と続いてきた学習習慣で、そう簡単には改められなかったのです。
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
=-2
ところで、この答案の2行目は、数学的には間違っていません。
そんなことをする必要がないのにそんなことをしているから、正答が出ないだけです。
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
は、正しい変換です。
「正負の数」は、まず、正負の数の意味から学習が始まります。
正の数と負の数が存在することは、大半の子が理解できます。
寒暖計の目盛りの-10℃など、負の数の存在は、幼い頃から目にしています。
そういうものが存在することは知っているのです。
しかし、次の段階で早くもつまずく子が現れます。
あることがらを、正負の数を用いて言い表す問題です。
問題 次のことがらを正の数を用いて表せ。
(1)-20㎏の増量
(2)-30万円の収入
(3)-1万人の減少
(4)-4分の遅れ
正解は、
(1)+20㎏の減量
(2)+30万円の支出
(3)+1万人の増加
(4)+4分の進み
言葉遊びのようですが、後に正負の数の減法を理解するための全てがここに詰まっています。
この言い換えが理解できないと、正負の数の減法の符号の操作は、理解できないのです。
しかし、この問題の重要性どころか、その意味すら理解できずに通りすぎていく子は多いです。
そうした子の誤答の例としては、
(1)+20
(2)+30
(3)+1万
(4)+4
と、符号を+に変えただけで、㎏といった単位もついていなければその後に続く言葉も書いていない場合があります。
問題の意味を理解していません。
「いや。そういうことではないんですよ。その後に続く言葉も含めて、このことがら全体を正の数で言い表すんですよ」
と説明しても、書き直したものは以下のような誤答ということもあります。
(1)+20㎏の増量
(2)+30万円の収入
(3)+1万人の減少
(4)+4分の遅れ
後ろにつく言葉を言い換えていないのです。
「-20㎏の増量と、+20㎏の増量は、意味が反対だと思わない?それでは、同じことを言い表したことにならないよね?」
「え?同じことを表すの?」
「・・・そうですよ」
・・・何だと思っていたの?
やり方だけ暗記する子の多くは、また、問題文をほぼ読まないという、もう1つの習慣を持っていることがあります。
さて、問題の指示する内容がわかったとして。
ここでまた「やり方だけ暗記する」という悪い習慣を発動する子がいます。
-20㎏の増量は、+20㎏の減量と言い換えれば正答らしい。
ははあ、数字の符号を反対にして、言葉を反対にすればいいだけか。
そのように「やり方」を把握し、それでさっさと処理する子が現れます。
正解は出せるのですが、意味はわかっていません。
こんなことを、なぜ学習したのか?
なぜこんな問題が出題されるのか?
それは、理解していません。
意味を理解すると、これは面白いのです。
-20㎏の増量は、+20㎏の減量。
確かにそうだなあ。
じゃあ、体重が1㎏増えたときは、「-1㎏減りました」って言えばいいんだ。
1万円赤字のときは、「-1万円の黒字です」って言うんだ。
面白い。
ひねくれた言い方で、面白い。
そうした言い換えを面白く感じ、頭に沁みていくなら、それが頭の中の数理の体系に静かに組み込まれていきます。
とはいえ、
「-5㎏の減量」=「+5㎏の増量」
ということが、理解しづらい様子の子もいます。
説明してもポカンとしてしまいます。
それは、すんなりイコールではないのではないか?
そうとは限らない、何か余白の部分のようなものがあるのではないか?
そう感じるのかもしれません。
これが、面白い、わかる、という子と。
意味がわからない子と。
その差は、確かに大きいのです。
このことが、正負の数の減法に大きく影響してきます。
でも、まずは、「正負の数の加法」、すなわち、たし算の学習に進みましょう。
正負の数のたし算の考え方の基本は、数直線上の移動です。
正の数は、原点よりも右に移動した点。
負の数は、原点よりも左に移動した点、で表される。
(+3)+(+5)
これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、さらに右へ5移動することを意味します。
右へ3移動し、さらに5移動。
だから、答は、+8。
(+3)+(-5)
これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、左に5移動することを意味します。
右に3移動した後、左に5移動。
結局、原点から左に2だけ移動したことになります。
だから、答は、-2。
(-3)+(+5)
これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、右に5移動することを意味します。
左に3移動した後、右に5。
だから、答は、+2。
(-3)+(-5)
これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、さらに左に5移動することを意味します。
左に3移動後、さらに左に5。
だから、答えは、-8。
これを理解できない子は、ほとんどいません。
教科書や問題集に書かれた数直線上にペン先を立てて、一所懸命右へ左へと移動させて、答を導いていきます。
そして、これが加法の本質であり、私は今もそれを頭の中でやっています。
頭の中の数直線で数を移動させています。
いちいち数直線を描いたり、数直線の目盛りを数えたりはしないだけで、頭の中に数直線のイメージは常にあります。
やり方だけ暗記する子は、おそらく、頭の中に数直線のイメージがないのだと思うのです。
なぜ、頭の中に数直線のイメージがないのか?
次の学習段階で、この計算方法のルールをまとめてしまうことも一因かもしれません。
(+3)+(+5)=+8
(+3)+(-5)=-2
(-3)+(+5)=+2
(-3)+(-5)=-8
これからわかるルールは?
同符号のたし算の答は、その符号で、絶対値の和。
異符号のたし算の答は、絶対値の大きいほうの符号で、絶対値の差。
このルールの整理は、頭の中の数直線上の移動を円滑にするための補助に過ぎないのですが、これが学習のメインになってしまう子も多いのです。
このルールを丸暗記し、そのルール通りの操作で以後は計算しようとします。
そして、まだこの段階では、大きな問題は起こらないのです。
さて、いよいよ正負の数の減法に入ります。
ひき算です。
(+3)-(+5)
さきほど出てきた「言葉遊び」がここで生きてきます。
「+5をひく」ことは、「-5をたす」ことと同じです。
よって、
(+3)-(+5)
=(+3)+(-5)
=-2
(-3)-(-5)
「-5をひく」ことは、「+5をたす」ことと同じです。
よって、
(-3)-(-5)
=(-3)+(+5)
=+2
正負の数の減法は、すべて加法に置きかえて計算します。
この世にひき算は存在しない。
全て、たし算なのだ。
そのように意識を切り替えるのです。
理解していれば、何も問題はないのです。
しかし、丸暗記で済ませている子にとっては、そろそろ重荷が増してきています。
上のような符号の操作も、丸暗記で済まそうとします。
-+は、+-に書き換える。
--は、++に書き換える。
というように。
だから、ミスが絶えません。
(+3)-(+5)
=(+3)-(-5)
=(+3)+(+5)
=+8
という謎の二度手間の誤答をする子もいます。
(-3)-(-5)
=(-3)+(-5)
=-8
というミスも多いです。
やり方を丸暗記しようとして暗記できずに起こった操作ミスです。
意味がわかっていたら、こんな誤答はしないのですが。
冒頭の宿題の誤答は、この時期に起こりやすいミスです。
減法を学んだ後で加法の復習をすると、全部、減法のように符号を変えるのだと勘違いしてしまうのです。
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
これ自体は確かにイコールで結ばれる正しい変換ですが、こんなことをする必要はありません。
もともと、与式が加法なのですから、そのままで計算できます。
でも、減法の記憶が強く、加法も減法のように符号を変えてしまったのでしょう。
ただの操作手順でやっているから、そういうミスが起こります。
こんな簡単な正負の数の計算で誤答していると、多くの大人はこれを見て驚いてしまいます。
でも、その驚きは不毛です。
誤答しているから驚いているだけではないかと思うのです。
単なる手順の丸暗記で解いていても、正答していれば、驚かない。
手順をミスしているから、驚く。
それだけのことかもしれないからです。
やり方だけ覚えて正しい答が出せればそれでいいのなら、そんなのは、大抵の子は、いずれ出来るようになります。
中3になっても、正負の数の計算でしくじる・・・という子は少数です。
やり方だけなら、いずれ身につきます。
4年前の子も、すぐにそんなミスはなくなりました。
ただ、意味を理解する学習は、その後も本当に大変でした。
意味がわかっていないまま、ただ手順を暗記しようとしていると感じる度に、それを阻止し、意味に戻りました。
それでも、本人は、作業手順を暗記するだけのほうが楽なので、どうしてもそちらのほうに行こうとしました。
先回りして、それを阻止する。
その繰り返しでした。
意味がわかっていないのに、正答だけ出ていても、それではダメです。
高校数学に進めば、確実に挫折します。
それは、
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
=-2
と誤答してしまう状態と、そんなに違わない、と私は思うのです。
数学は、丸暗記で済ませているといずれ限界がきます。
意味を理解しなければ、先はありません。
「正負の数」という単元で、何よりも学んでほしいのは、このことです。
意味を理解して学んでください。
頭の中に常に数直線をイメージし、実感で計算してください。
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
=-2
当時は、コロナ禍が始まったばかり。
学校が突然休校になり、卒業式もなく小学校を卒業したその子は、中学に入学後も登校する機会は限られていました。
私も、リモート授業を導入した時期です。
生徒にとっては、とにかく、学習する機会が少ない。
中学の最初の学習を、自習しなければならない。
大変なハンデでした。
そうした数々の困難があったとはいえ、しかし、この宿題の出来は、ありえないんじゃないか?
これは、小学校の1年生で学習する
3+5
と同じなのに。
答は、当然、8なのに。
そう思う人もいるでしょう。
特に保護者の方ならば、この答案を見たら貧血を起こしそうになるかもしれません。
しかし、これは、そう珍しい現象ではありません。
学習の初期に、こうなってしまう中学生は、います。
そして、このまま、正負の数が全くわからなくなるのかというと、そういうことはありません。
ただ、そのままでは課題があるのも事実です。
中1「正負の数」は、数学の学習の中で、もっとも簡単なようでいて、教えるのは難しいものの1つです。
基本中の基本になるほど、それを「わからない」という子に説明するのは困難を極めます。
一応わかったのだろうと安心するのは禁物です。
「正負の数」の単元の終わりに復習すると、
(+3)+(+5)=-2
といった答案を再び目にし、愕然としました。
何で?
それは、小学校1年生で学習した、3+5よ?
答は8に決まっているでしょう。
なぜ、中学に入ったら-2になると思うの?
なるわけないでしょう?
といった「常識の押し付け」は、しかし、教える者と教わる者、両者にとって不幸です。
それは、「正負の数」の体系が、その子の中に形成されていないということなのです。
いや、むしろ、算数・数学の基盤が形成されていなかったのです。
算数の学習が、小学校の低学年からやり方の丸暗記に終始していたのかもしれません。
だから、その子にとっては、やり方をちょっと間違ったためにそんな答になっただけで、深い意味はないのでした。
そして、それは、小学校の低学年から延々と続いてきた学習習慣で、そう簡単には改められなかったのです。
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
=-2
ところで、この答案の2行目は、数学的には間違っていません。
そんなことをする必要がないのにそんなことをしているから、正答が出ないだけです。
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
は、正しい変換です。
「正負の数」は、まず、正負の数の意味から学習が始まります。
正の数と負の数が存在することは、大半の子が理解できます。
寒暖計の目盛りの-10℃など、負の数の存在は、幼い頃から目にしています。
そういうものが存在することは知っているのです。
しかし、次の段階で早くもつまずく子が現れます。
あることがらを、正負の数を用いて言い表す問題です。
問題 次のことがらを正の数を用いて表せ。
(1)-20㎏の増量
(2)-30万円の収入
(3)-1万人の減少
(4)-4分の遅れ
正解は、
(1)+20㎏の減量
(2)+30万円の支出
(3)+1万人の増加
(4)+4分の進み
言葉遊びのようですが、後に正負の数の減法を理解するための全てがここに詰まっています。
この言い換えが理解できないと、正負の数の減法の符号の操作は、理解できないのです。
しかし、この問題の重要性どころか、その意味すら理解できずに通りすぎていく子は多いです。
そうした子の誤答の例としては、
(1)+20
(2)+30
(3)+1万
(4)+4
と、符号を+に変えただけで、㎏といった単位もついていなければその後に続く言葉も書いていない場合があります。
問題の意味を理解していません。
「いや。そういうことではないんですよ。その後に続く言葉も含めて、このことがら全体を正の数で言い表すんですよ」
と説明しても、書き直したものは以下のような誤答ということもあります。
(1)+20㎏の増量
(2)+30万円の収入
(3)+1万人の減少
(4)+4分の遅れ
後ろにつく言葉を言い換えていないのです。
「-20㎏の増量と、+20㎏の増量は、意味が反対だと思わない?それでは、同じことを言い表したことにならないよね?」
「え?同じことを表すの?」
「・・・そうですよ」
・・・何だと思っていたの?
やり方だけ暗記する子の多くは、また、問題文をほぼ読まないという、もう1つの習慣を持っていることがあります。
さて、問題の指示する内容がわかったとして。
ここでまた「やり方だけ暗記する」という悪い習慣を発動する子がいます。
-20㎏の増量は、+20㎏の減量と言い換えれば正答らしい。
ははあ、数字の符号を反対にして、言葉を反対にすればいいだけか。
そのように「やり方」を把握し、それでさっさと処理する子が現れます。
正解は出せるのですが、意味はわかっていません。
こんなことを、なぜ学習したのか?
なぜこんな問題が出題されるのか?
それは、理解していません。
意味を理解すると、これは面白いのです。
-20㎏の増量は、+20㎏の減量。
確かにそうだなあ。
じゃあ、体重が1㎏増えたときは、「-1㎏減りました」って言えばいいんだ。
1万円赤字のときは、「-1万円の黒字です」って言うんだ。
面白い。
ひねくれた言い方で、面白い。
そうした言い換えを面白く感じ、頭に沁みていくなら、それが頭の中の数理の体系に静かに組み込まれていきます。
とはいえ、
「-5㎏の減量」=「+5㎏の増量」
ということが、理解しづらい様子の子もいます。
説明してもポカンとしてしまいます。
それは、すんなりイコールではないのではないか?
そうとは限らない、何か余白の部分のようなものがあるのではないか?
そう感じるのかもしれません。
これが、面白い、わかる、という子と。
意味がわからない子と。
その差は、確かに大きいのです。
このことが、正負の数の減法に大きく影響してきます。
でも、まずは、「正負の数の加法」、すなわち、たし算の学習に進みましょう。
正負の数のたし算の考え方の基本は、数直線上の移動です。
正の数は、原点よりも右に移動した点。
負の数は、原点よりも左に移動した点、で表される。
(+3)+(+5)
これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、さらに右へ5移動することを意味します。
右へ3移動し、さらに5移動。
だから、答は、+8。
(+3)+(-5)
これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、左に5移動することを意味します。
右に3移動した後、左に5移動。
結局、原点から左に2だけ移動したことになります。
だから、答は、-2。
(-3)+(+5)
これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、右に5移動することを意味します。
左に3移動した後、右に5。
だから、答は、+2。
(-3)+(-5)
これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、さらに左に5移動することを意味します。
左に3移動後、さらに左に5。
だから、答えは、-8。
これを理解できない子は、ほとんどいません。
教科書や問題集に書かれた数直線上にペン先を立てて、一所懸命右へ左へと移動させて、答を導いていきます。
そして、これが加法の本質であり、私は今もそれを頭の中でやっています。
頭の中の数直線で数を移動させています。
いちいち数直線を描いたり、数直線の目盛りを数えたりはしないだけで、頭の中に数直線のイメージは常にあります。
やり方だけ暗記する子は、おそらく、頭の中に数直線のイメージがないのだと思うのです。
なぜ、頭の中に数直線のイメージがないのか?
次の学習段階で、この計算方法のルールをまとめてしまうことも一因かもしれません。
(+3)+(+5)=+8
(+3)+(-5)=-2
(-3)+(+5)=+2
(-3)+(-5)=-8
これからわかるルールは?
同符号のたし算の答は、その符号で、絶対値の和。
異符号のたし算の答は、絶対値の大きいほうの符号で、絶対値の差。
このルールの整理は、頭の中の数直線上の移動を円滑にするための補助に過ぎないのですが、これが学習のメインになってしまう子も多いのです。
このルールを丸暗記し、そのルール通りの操作で以後は計算しようとします。
そして、まだこの段階では、大きな問題は起こらないのです。
さて、いよいよ正負の数の減法に入ります。
ひき算です。
(+3)-(+5)
さきほど出てきた「言葉遊び」がここで生きてきます。
「+5をひく」ことは、「-5をたす」ことと同じです。
よって、
(+3)-(+5)
=(+3)+(-5)
=-2
(-3)-(-5)
「-5をひく」ことは、「+5をたす」ことと同じです。
よって、
(-3)-(-5)
=(-3)+(+5)
=+2
正負の数の減法は、すべて加法に置きかえて計算します。
この世にひき算は存在しない。
全て、たし算なのだ。
そのように意識を切り替えるのです。
理解していれば、何も問題はないのです。
しかし、丸暗記で済ませている子にとっては、そろそろ重荷が増してきています。
上のような符号の操作も、丸暗記で済まそうとします。
-+は、+-に書き換える。
--は、++に書き換える。
というように。
だから、ミスが絶えません。
(+3)-(+5)
=(+3)-(-5)
=(+3)+(+5)
=+8
という謎の二度手間の誤答をする子もいます。
(-3)-(-5)
=(-3)+(-5)
=-8
というミスも多いです。
やり方を丸暗記しようとして暗記できずに起こった操作ミスです。
意味がわかっていたら、こんな誤答はしないのですが。
冒頭の宿題の誤答は、この時期に起こりやすいミスです。
減法を学んだ後で加法の復習をすると、全部、減法のように符号を変えるのだと勘違いしてしまうのです。
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
これ自体は確かにイコールで結ばれる正しい変換ですが、こんなことをする必要はありません。
もともと、与式が加法なのですから、そのままで計算できます。
でも、減法の記憶が強く、加法も減法のように符号を変えてしまったのでしょう。
ただの操作手順でやっているから、そういうミスが起こります。
こんな簡単な正負の数の計算で誤答していると、多くの大人はこれを見て驚いてしまいます。
でも、その驚きは不毛です。
誤答しているから驚いているだけではないかと思うのです。
単なる手順の丸暗記で解いていても、正答していれば、驚かない。
手順をミスしているから、驚く。
それだけのことかもしれないからです。
やり方だけ覚えて正しい答が出せればそれでいいのなら、そんなのは、大抵の子は、いずれ出来るようになります。
中3になっても、正負の数の計算でしくじる・・・という子は少数です。
やり方だけなら、いずれ身につきます。
4年前の子も、すぐにそんなミスはなくなりました。
ただ、意味を理解する学習は、その後も本当に大変でした。
意味がわかっていないまま、ただ手順を暗記しようとしていると感じる度に、それを阻止し、意味に戻りました。
それでも、本人は、作業手順を暗記するだけのほうが楽なので、どうしてもそちらのほうに行こうとしました。
先回りして、それを阻止する。
その繰り返しでした。
意味がわかっていないのに、正答だけ出ていても、それではダメです。
高校数学に進めば、確実に挫折します。
それは、
(+3)+(+5)
=(+3)-(-5)
=-2
と誤答してしまう状態と、そんなに違わない、と私は思うのです。
数学は、丸暗記で済ませているといずれ限界がきます。
意味を理解しなければ、先はありません。
「正負の数」という単元で、何よりも学んでほしいのは、このことです。
意味を理解して学んでください。
頭の中に常に数直線をイメージし、実感で計算してください。
2024年01月16日
共通テストで失敗したと感じたら。2024年1月。

共通テスト、あるいはその前のセンター試験の思い出といえば、生徒が英語で失敗したことです。
うちの塾で英語も数学も学習していた子と、数学のみだった子と、2人、時期は違いますが、それぞれ東京外語大に進学した子たちがいます。
どちらも、英語は得意だったのですが、なぜかセンター試験、あるいは共通テストの英語でしくじっていました。
・・・何で?
2日目の数学で起死回生の挽回を図り、二次試験も頑張って、無事に志望校に合格していきましたので、めでたしめでたし。
だから、あまり気にしなかったのですが、よく考えたら不思議な話でした。
模試でも、過去問を解いても、9割以上は得点していた子たちでした。
それが、なぜ、センター試験・共通テストで失敗したのか?
そして、なぜ、そんなに得意ではない数学で挽回したのか?
考えてみて、ようやく気づいたのは、その子たちは、共通テスト前の2週間ほど、苦手科目ばかり勉強していたのかもしれない、ということでした。
得意科目は、得意だから、もう大丈夫。
苦手科目のほうがどうしても気になる。
苦手科目で、どうしても、あと10点ほしい。
そして、苦手科目のほうが、科目数も多い・・・。
暗記教科は最後まで気になるし・・・。
そこで、ついつい、英語の学習が後回しになったのではないか・・・?
どれほど得意科目でも、2週間も放置したら勘が鈍ります。
スピードも、解析力も、微妙に下がって、何より、そのことに本人が動揺します。
語学は、継続以外に力を持続できる方法はないのです。
考えてみたら簡単なことでした。
注意を喚起し、声をかけるべきでした。
それに気づかなかったのは、私はそういう勉強のやり方はしないからでしょうか。
得意科目も苦手科目も、順番にまんべんなくやるタイプだったのです。
1週間の予定表を立て、1科目を1時間勉強したら、ノートに描いた棒グラフをひとマス分塗っていました。
何かの影響で、あまり勉強していない科目があれば、予定を立て直し、同じ時間になるように調整しました。
何でそういうふうにしていたのか?
これは性格的なことでしょう。
それで問題が生じなかったから・・・としか説明のしようがありません。
むしろ、そんなやり方のほうが、「何で?」と思われるのだろうと思いますし、そこまで厳密に学習時間を同じにしなくていいと思います。
そして、直前に苦手科目ばかりに時間をかける人の気持ちも、わかるのです。
得意科目は、もう93点が94点になるかどうかの話で、これ以上の伸びはないだろう。
でも、苦手科目なら、直前に頑張れば、あと10点、もしかしたら20点、伸びるかもしれない。
また、苦手というわけではなくても、暗記科目は、直前に時間をかけたい。
考えれば、その気持ちは、わかります。
でも、気づいてほしいのです。
得意科目は、長期間放置しておくと、93点が73点に下がってしまう可能性があることに。
特に、英語は。
とはいえ、この助言は、たとえ事前に行ったとしても、聞き入れてもらえる種類のものではないのかもしれません。
自分で失敗して、ようやく理解できることなのだと思うのです。
ただ、だからといって入試自体の失敗に結びつくものでもない。
希望は濃いのです。
本質的には得意科目なのですから、二次試験までに立て直し、得意科目にも力を入れれば、問題はありませんでした。
共通テストの得点なんて、合否判定では圧縮されます。
93点も、73点も、圧縮されれば大差ありません。
二次試験は科目数も減ります。
ここで、得意科目がどれほど得意科目であるか、披露してみせればいい。
そうやって、みんな合格していきました。
さて、一方、苦手科目は?
数学が苦手科目という人は多いです。
たとえ得意科目で失敗しても、それを挽回できるくらいに、数学は、得意ではなくても苦手ではないというところまでは仕上げたい。
とはいえ、数学の苦手を苦手でなくすのは、英語以上に難しいことです。
数学が苦手になるに決まっているコースを、本人が小学生の頃から見事に歩んでいる、という場合が多いからです。
しかも、本人自身の選択で。
小学校低学年で、算数は、理解するよりも暗記するようになってしまう子が多いのは、これまでも繰り返し書いてきました。
この単元は、かけ算。
こういう問題なら、わり算、というように解き方を覚えてしまうのです。
公式を覚えて、それに当てはめるだけ。
意味を考えないで、それをやってしまうのです。
問題文をろくに読まないで式を立てて解いてしまうようになります。
何の実感もなく。
小学校の低学年から。
そして、中学受験をします。
受験算数もまた、暗記、暗記、暗記。
典型題の解法の丸暗記。
それしか、勉強のやり方を知らないのです。
そのやり方では、受験算数は難しくて、苦手意識ばかりが募ります。
とはいえ、第一志望とはいかないものの、中学に合格する子が大多数です。
算数は苦手なままだったけれど、他の科目でカバーして、合格します。
さて、その後・・・。
この先も、数学が苦手になる一本道が待ち構えている場合があります。
これも、もう何度も書いてきました。
私立は、そもそも、学校の進度が速い。
中学1年生の1年間で、中1・中2の数学を終えます。
それも、「代数」「幾何」の2科目に分けて一気に進んでいきます。
学校の教科書は、文科省認定のものではなく、『体系数学』などの、ハイレベルなもの。
問題集も、『体系問題集・発展編』などの、ハイレベルなもの。
定期テストは、学年平均点が40点台。
数学は得点が低いのが当たり前となり、それに慣れてしまいます。
できなくて当然の科目になるのです。
問題集のレベルが本人に合っていないため、易しい問題ですら混乱して、わからなくなっていきます。
しかも、まずいことに、本人は受験がやっと終わって遊びたい気持ちが強いので、学習意欲が低い。
あっという間に数学がわからなくなります。
さらに、困難は続きます。
幾何の教科書が、学校の独自テキストの場合があり、これがわかりにくいのです。
素人がパソコンで編集しました、というようなレイアウトなので、つまらないし、見にくい。
実は、幾何は、普通のことを普通の順番で学習しているだけなのに、テキストが独自なため、何か特殊なことを学習しているように本人が誤解し、「だから普通の参考書などでは勉強できないので、もう仕方ない」と思ってしまう・・・。
幾何は勉強のやりようがないと思い込んで、捨ててしまいます。
しかし、私立中学側も、企業努力をしないわけではないので、上のような点はこの10年ほどでかなり改善されました。
幾何の学校独自テキストは、激減しました。
諸悪の根源だったので、これが何よりありがたい。
『体系数学』などの難解な教科書を採択する学校も随分減りました。
あるいは、使ったとしても、中学数学の内容までの学校が多いです。
高校数学は、文科省認定の数学の教科書を使用するのです。
問題集も、ごく普通です。
むしろ、都立高校で採択されているものよりも易しい問題集を採択している私立高校も多いです。
無理をしない。
無理をさせない。
数学に苦手意識を持たせない。
定期テスト問題も、易しくなりました。
私立の数学のテストは、正直言って、公立の数学のテストよりも簡単なことがあります。
結構有名な進学校で、ここに入れたら大喜びだろう私立の数学のテストがこんなに易しいのか・・・と驚くことがあります。
本当に基本中の基本問題、そして、応用問題ならこれが出ると予想される典型題が、丁寧に出題されています。
そうやって保護して保護して、数学ができるような気分にさせて、何とか大学受験に向かわせる。
必ずしも間違ってはいない。
良い教育姿勢だと思います。
10年前までの、大多数が数学が嫌いになるような数学スパルタ教育がされていた頃とは時代が変わりました。
過半数は、推薦入試か総合型選抜で大学に行くので、それで大丈夫なのですし。
一般受験をするにしても、大学入試問題も、数学は年々易化しています。
英語の爆発的難化とは対照的です。
しかし、そうであってすら、数学が苦手な子は存在します。
それは、小学生の頃から、本質を理解する学習をしてこなかった子たちです。
意味を考えない学習を、ずっとやってきた子たちです。
あまりにも算数がわからなくて、そうやってやり過ごすしかなかったからなのか。
理解しようと思えばできたのに、理解せずに覚えたほうが楽だと判断して、それが習い性になってしまったのか。
その結果。
中学数学になると。
数直線がわからない・・・。
座標平面がわからない・・・。
関数がわからない・・・。
意味を理解せずにやり方だけ覚えてきた子たちは、数学そのものにアクセスできないので、苦手が長引きます。
数直線上の2点間の距離を一目で把握できず、例えば、-2-(-4)といった式を立てて解くしかなく、それで符号ミスをしてしまい、距離が-2になっても、自分が間違えていることに気づかない子。
高校生になっても、y軸上の点のy座標はゼロだと思ってしまう子。
イコールの意味がわかっていないので、3/4x+6/5xといった、係数が分数の文字式全体を何倍かして分母を払ってしまう子。
y=-2x-4 のグラフは、感覚的に、途中から y がプラスになって大きくなっていきそうに思えて、グラフが直線だと言われても納得できず混乱する子。
数学オンチとでも呼ぶべき、そういう「感覚」のおかしさは、数学的な基盤がないことからくるのだろうと思うのです。
そして、その基盤は、本当は小学生の頃に言語化されないレベルで頭の中に蓄積されているものなのですが、学習のやり方が悪かったために、それが行われなかったのだと思います。
それを改善していくための対話。
そして、意識を改革していくための暗記ではない学習。
正しい情報の脳への刷り込み。
そうしたものが必要です。
数学が好きかどうかは別として、数学がわかるようになってください。
共通テストで、あなたを救うのが、予想もしなかった数学であることは、案外あるかもしれないのですから。
2024年01月01日
冬休みなので難問を。正四面体を2色で塗る問題。

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
さて、冬休みなので、恒例のちょっとした難問を。
問題1 正四面体の各面を2色の絵の具で塗る方法は何通りあるか。ただし、正四面体を回転させて一致する塗り方は同じとみなす。また、使わない色があってもよく、隣り合う面が同じ色であってもよいものとする。
さて、自分で考えたい人は、ここでいったん閉じて、考えてみてください。
この問題。簡単そうに見えて、意外に難しいのです。
うーん?
4つの面に1から4の番号を振って、考えればいいのかな?
1つの面の塗り方は、2通り。
4つの面では、塗り方は、2×2×2×2=16(通り)?
でも、これでは、回転すると同じになる塗り方のことを考えていない・・・。
では、回転すると同じになるのは何通りあるのか、考えればいいのかな?
どの面を底面でとらえるかで、4通り?
じゃあ、4で割って、答は、4通り?
いや、円順列的なことも考えないとダメかな?
じゃあ、4で割って、さらに底面以外の3面を円順列で考えると、2!だから、
結局、8で割って、2通り?
え?
塗り方が、2通りしかないなんてことある?
具体的に考えたって、全部同じ色で塗る塗り方だけで、もう2通りなんだけど・・?
じゃあ、底面も含めての円順列で考えて、16通りを、3!で割る?
16÷(3×2×1)
え?
答が自然数にならないんですけど・・・?
この考え方の何がいけないのか?
どのように色を塗っているのかによって、回転すると同じになる塗り方は違ってくるのです。
だから、全部ひっくるめて、4×2!で割るとか、まして、3!で割るとかでは、正しい答は出ないのです。
さて、ここからは解決編。
面を基準に考えていたのでは、上のようにわからなくなります。
これは、色の塗り方を基準に場合分けすると、比較的簡単に解けます。
もっと簡単な解き方もあるかもしれませんが、わかりやすく場合分けする方法で解説します。
(1) 4つの面をすべて同じ色で塗る場合。
塗る色の選び方は2通り。
(2) 4つの面のうち、3つの面を同じ色で塗り、残る1面を別の色で塗る場合。
3面を塗る色の選び方は2通り。
残る1面の塗り方は、残る色に自動的に決定。
よって、2通り。
(3)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、残る2面を別の色で塗る場合。
これは、1通りしかありません。
2面対2面で対等だからです。
それはどの面を底面にして回転しても、同じ塗り方になります。
(4)4つの面のうち、1つの面を1色で塗り、残る3面を別の色で塗る場合。
これは、(2)と同じ塗り方なので、数える必要はありません。
よって、(1)~(4)より、
2+2+1=5
答は、5通り です。
さて、少し応用をやってみましょう。
問題2 正四面体の各面を3色の絵の具で塗る方法は何通りあるか。ただし、正四面体を回転させて一致する塗り方は同じとみなす。また、使わない色があってもよく、隣り合う面が同じ色であってもよいものとする。
さて、上の考え方ならば、もう簡単でしょうか。
以下は、解答です。
(1) 4つの面をすべて同じ色で塗る場合。
塗る色の選び方は、色の数だけありますから、
3通り。
(2) 4つの面のうち、3つの面を同じ色で塗り、残る1面を別の色で塗る場合。
3面を塗る色の選び方は3通り。
そのそれぞれに対し、残る1面の塗り方は、残る色の2通り。
よって、3×2=6 で
6通り。
(3)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、残る2面を別の色で塗る場合。
2面対2面で対等。
それはどの面を底面にしても、同じ塗り方になるのは、問題1と同じです。
あとは、2色の選び方です。
3色から2色を選ぶので、組み合わせの公式で考えて、
(3×2)÷(2×1)=3 で、
3通り。
(4)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、1つの面を別の1色、残る1つの面をさらに別の1色で塗る場合。
2面を塗る色の選び方は3通り。
そのそれぞれで、残る1面ずつの色の選び方は1通りに決まります。
これは、その2色の順番を考える必要はありません。
回転させれば同じ色の塗り方だからです。
よって、3通り。
この他に色の塗り方はありません。
よって、(1)~(4)より、
3+6+3+3=15
答は、15通り です。
さらに応用。
問題3 正四面体の各面を4色の絵の具で塗る方法は何通りあるか。ただし、正四面体を回転させて一致する塗り方は同じとみなす。また、使わない色があってもよく、隣り合う面が同じ色であってもよいものとする。
もう簡単だと思いますよね?
しかし、これは、落とし穴が待っています。
気をつけて。
以下が解答です。
(1) 4つの面をすべて同じ色で塗る場合。
塗る色の選び方は、色の数だけありますから、
4通り。
(2) 4つの面のうち、3つの面を同じ色で塗り、残る1面を別の色で塗る場合。
3面を塗る色の選び方は4通り。
そのそれぞれで、残る1面の塗り方は、残る色の3通り。
よって、4×3=12 で
12通り。
(3)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、残る2面を別の色で塗る場合。
2面対2面で対等。
それはどの面を底面にしても、同じ塗り方になるのは、問題1と同じです。
あとは、2色の選び方。
4色から2色を選ぶので、組み合わせの公式で考えて、
(4×3)÷(2×1)=6 で、
6通り。
(4)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、1つの面を別の1色、残る1つの面をさらに別の1色で塗る場合。
2面を塗る色の選び方は4通り。
残る2面の色の選び方は、残る3色から2色を選ぶので、3通り。
よって、4×3=12 で、
12通り。
(5)4つの面を、1色ずつ別の色で塗り分ける場合。
これは、1通り・・・?
・・・いいえ。
ここが、落とし穴です。
一番上の図を見てください。
雑に描いた図なので、汚くてすみません。
正四面体の展開図に、A、B、C、Dと書き込んであります。
それぞれが、A色、B色、C色、D色だと思ってください。
この展開図を組み立てます。
上に描いた、2枚の展開図。
組み立ててみると、この2枚は、色の配置が異なるのです。
どう回転させても、左の展開図の正四面体は、右の展開図の正四面体とは色の配置が異なるのです。
真ん中のA色を底面として考えるとわかりやすいと思います。
側面が、右回りにB色、C色、D色となっているものと、左回りにB色、C色、D色となっているものは、どの向きに回転させても、決して重なりません。
したがって、この塗り分け方は、2通り。
この他に色の塗り方はありません。
よって、(1)~(5)より、
4+12+6+12+2=36
答は、36通り です。
うん?
なぜ、問題3で左回り・右回り、と色分けを区別しなければならなかったことが、問題2では出てこなかったのか?
問題2では、2色に塗った面どうしを入れ替えた位置に回転させた場合に、左回りの配置が右回りの配置となって現れるので、考えなくて良かったからなのです。
3色での塗り分けならば、回転すれば同じ塗り方が現れます。
4色で塗り分けると、回転しても一致しない塗り方が現れるのです。
このあたりのことは、頭の中で正四面体を回転するイメージ力が必要になります。
わかりにくかったら、紙で正四面体を作って、具体的に色を塗り分けて回転させてみてください。
さて、これがわかれば、あとはもう何色でも大丈夫です。
例えば、10色の場合の塗り方は何通りあるでしょうか。
これも、上の解き方で計算できます。
答は、925通り です。
本年もよろしくお願い申し上げます。
さて、冬休みなので、恒例のちょっとした難問を。
問題1 正四面体の各面を2色の絵の具で塗る方法は何通りあるか。ただし、正四面体を回転させて一致する塗り方は同じとみなす。また、使わない色があってもよく、隣り合う面が同じ色であってもよいものとする。
さて、自分で考えたい人は、ここでいったん閉じて、考えてみてください。
この問題。簡単そうに見えて、意外に難しいのです。
うーん?
4つの面に1から4の番号を振って、考えればいいのかな?
1つの面の塗り方は、2通り。
4つの面では、塗り方は、2×2×2×2=16(通り)?
でも、これでは、回転すると同じになる塗り方のことを考えていない・・・。
では、回転すると同じになるのは何通りあるのか、考えればいいのかな?
どの面を底面でとらえるかで、4通り?
じゃあ、4で割って、答は、4通り?
いや、円順列的なことも考えないとダメかな?
じゃあ、4で割って、さらに底面以外の3面を円順列で考えると、2!だから、
結局、8で割って、2通り?
え?
塗り方が、2通りしかないなんてことある?
具体的に考えたって、全部同じ色で塗る塗り方だけで、もう2通りなんだけど・・?
じゃあ、底面も含めての円順列で考えて、16通りを、3!で割る?
16÷(3×2×1)
え?
答が自然数にならないんですけど・・・?
この考え方の何がいけないのか?
どのように色を塗っているのかによって、回転すると同じになる塗り方は違ってくるのです。
だから、全部ひっくるめて、4×2!で割るとか、まして、3!で割るとかでは、正しい答は出ないのです。
さて、ここからは解決編。
面を基準に考えていたのでは、上のようにわからなくなります。
これは、色の塗り方を基準に場合分けすると、比較的簡単に解けます。
もっと簡単な解き方もあるかもしれませんが、わかりやすく場合分けする方法で解説します。
(1) 4つの面をすべて同じ色で塗る場合。
塗る色の選び方は2通り。
(2) 4つの面のうち、3つの面を同じ色で塗り、残る1面を別の色で塗る場合。
3面を塗る色の選び方は2通り。
残る1面の塗り方は、残る色に自動的に決定。
よって、2通り。
(3)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、残る2面を別の色で塗る場合。
これは、1通りしかありません。
2面対2面で対等だからです。
それはどの面を底面にして回転しても、同じ塗り方になります。
(4)4つの面のうち、1つの面を1色で塗り、残る3面を別の色で塗る場合。
これは、(2)と同じ塗り方なので、数える必要はありません。
よって、(1)~(4)より、
2+2+1=5
答は、5通り です。
さて、少し応用をやってみましょう。
問題2 正四面体の各面を3色の絵の具で塗る方法は何通りあるか。ただし、正四面体を回転させて一致する塗り方は同じとみなす。また、使わない色があってもよく、隣り合う面が同じ色であってもよいものとする。
さて、上の考え方ならば、もう簡単でしょうか。
以下は、解答です。
(1) 4つの面をすべて同じ色で塗る場合。
塗る色の選び方は、色の数だけありますから、
3通り。
(2) 4つの面のうち、3つの面を同じ色で塗り、残る1面を別の色で塗る場合。
3面を塗る色の選び方は3通り。
そのそれぞれに対し、残る1面の塗り方は、残る色の2通り。
よって、3×2=6 で
6通り。
(3)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、残る2面を別の色で塗る場合。
2面対2面で対等。
それはどの面を底面にしても、同じ塗り方になるのは、問題1と同じです。
あとは、2色の選び方です。
3色から2色を選ぶので、組み合わせの公式で考えて、
(3×2)÷(2×1)=3 で、
3通り。
(4)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、1つの面を別の1色、残る1つの面をさらに別の1色で塗る場合。
2面を塗る色の選び方は3通り。
そのそれぞれで、残る1面ずつの色の選び方は1通りに決まります。
これは、その2色の順番を考える必要はありません。
回転させれば同じ色の塗り方だからです。
よって、3通り。
この他に色の塗り方はありません。
よって、(1)~(4)より、
3+6+3+3=15
答は、15通り です。
さらに応用。
問題3 正四面体の各面を4色の絵の具で塗る方法は何通りあるか。ただし、正四面体を回転させて一致する塗り方は同じとみなす。また、使わない色があってもよく、隣り合う面が同じ色であってもよいものとする。
もう簡単だと思いますよね?
しかし、これは、落とし穴が待っています。
気をつけて。
以下が解答です。
(1) 4つの面をすべて同じ色で塗る場合。
塗る色の選び方は、色の数だけありますから、
4通り。
(2) 4つの面のうち、3つの面を同じ色で塗り、残る1面を別の色で塗る場合。
3面を塗る色の選び方は4通り。
そのそれぞれで、残る1面の塗り方は、残る色の3通り。
よって、4×3=12 で
12通り。
(3)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、残る2面を別の色で塗る場合。
2面対2面で対等。
それはどの面を底面にしても、同じ塗り方になるのは、問題1と同じです。
あとは、2色の選び方。
4色から2色を選ぶので、組み合わせの公式で考えて、
(4×3)÷(2×1)=6 で、
6通り。
(4)4つの面のうち、2つの面を同じ色で塗り、1つの面を別の1色、残る1つの面をさらに別の1色で塗る場合。
2面を塗る色の選び方は4通り。
残る2面の色の選び方は、残る3色から2色を選ぶので、3通り。
よって、4×3=12 で、
12通り。
(5)4つの面を、1色ずつ別の色で塗り分ける場合。
これは、1通り・・・?
・・・いいえ。
ここが、落とし穴です。
一番上の図を見てください。
雑に描いた図なので、汚くてすみません。
正四面体の展開図に、A、B、C、Dと書き込んであります。
それぞれが、A色、B色、C色、D色だと思ってください。
この展開図を組み立てます。
上に描いた、2枚の展開図。
組み立ててみると、この2枚は、色の配置が異なるのです。
どう回転させても、左の展開図の正四面体は、右の展開図の正四面体とは色の配置が異なるのです。
真ん中のA色を底面として考えるとわかりやすいと思います。
側面が、右回りにB色、C色、D色となっているものと、左回りにB色、C色、D色となっているものは、どの向きに回転させても、決して重なりません。
したがって、この塗り分け方は、2通り。
この他に色の塗り方はありません。
よって、(1)~(5)より、
4+12+6+12+2=36
答は、36通り です。
うん?
なぜ、問題3で左回り・右回り、と色分けを区別しなければならなかったことが、問題2では出てこなかったのか?
問題2では、2色に塗った面どうしを入れ替えた位置に回転させた場合に、左回りの配置が右回りの配置となって現れるので、考えなくて良かったからなのです。
3色での塗り分けならば、回転すれば同じ塗り方が現れます。
4色で塗り分けると、回転しても一致しない塗り方が現れるのです。
このあたりのことは、頭の中で正四面体を回転するイメージ力が必要になります。
わかりにくかったら、紙で正四面体を作って、具体的に色を塗り分けて回転させてみてください。
さて、これがわかれば、あとはもう何色でも大丈夫です。
例えば、10色の場合の塗り方は何通りあるでしょうか。
これも、上の解き方で計算できます。
答は、925通り です。