たまりば

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2024年01月16日

共通テストで失敗したと感じたら。2024年1月。

共通テストで失敗したと感じたら。2024年1月。


さて、共通テストが終わりました。
共通テスト、あるいはその前のセンター試験の思い出といえば、生徒が英語で失敗したことです。
うちの塾で英語も数学も学習していた子と、数学のみだった子と、2人、時期は違いますが、それぞれ東京外語大に進学した子たちがいます。
どちらも、英語は得意だったのですが、なぜかセンター試験、あるいは共通テストの英語でしくじっていました。

・・・何で?

2日目の数学で起死回生の挽回を図り、二次試験も頑張って、無事に志望校に合格していきましたので、めでたしめでたし。
だから、あまり気にしなかったのですが、よく考えたら不思議な話でした。

模試でも、過去問を解いても、9割以上は得点していた子たちでした。
それが、なぜ、センター試験・共通テストで失敗したのか?
そして、なぜ、そんなに得意ではない数学で挽回したのか?

考えてみて、ようやく気づいたのは、その子たちは、共通テスト前の2週間ほど、苦手科目ばかり勉強していたのかもしれない、ということでした。
得意科目は、得意だから、もう大丈夫。
苦手科目のほうがどうしても気になる。
苦手科目で、どうしても、あと10点ほしい。
そして、苦手科目のほうが、科目数も多い・・・。
暗記教科は最後まで気になるし・・・。
そこで、ついつい、英語の学習が後回しになったのではないか・・・?

どれほど得意科目でも、2週間も放置したら勘が鈍ります。
スピードも、解析力も、微妙に下がって、何より、そのことに本人が動揺します。
語学は、継続以外に力を持続できる方法はないのです。

考えてみたら簡単なことでした。
注意を喚起し、声をかけるべきでした。
それに気づかなかったのは、私はそういう勉強のやり方はしないからでしょうか。
得意科目も苦手科目も、順番にまんべんなくやるタイプだったのです。
1週間の予定表を立て、1科目を1時間勉強したら、ノートに描いた棒グラフをひとマス分塗っていました。
何かの影響で、あまり勉強していない科目があれば、予定を立て直し、同じ時間になるように調整しました。
何でそういうふうにしていたのか?
これは性格的なことでしょう。
それで問題が生じなかったから・・・としか説明のしようがありません。

むしろ、そんなやり方のほうが、「何で?」と思われるのだろうと思いますし、そこまで厳密に学習時間を同じにしなくていいと思います。
そして、直前に苦手科目ばかりに時間をかける人の気持ちも、わかるのです。
得意科目は、もう93点が94点になるかどうかの話で、これ以上の伸びはないだろう。
でも、苦手科目なら、直前に頑張れば、あと10点、もしかしたら20点、伸びるかもしれない。
また、苦手というわけではなくても、暗記科目は、直前に時間をかけたい。
考えれば、その気持ちは、わかります。

でも、気づいてほしいのです。
得意科目は、長期間放置しておくと、93点が73点に下がってしまう可能性があることに。
特に、英語は。

とはいえ、この助言は、たとえ事前に行ったとしても、聞き入れてもらえる種類のものではないのかもしれません。
自分で失敗して、ようやく理解できることなのだと思うのです。

ただ、だからといって入試自体の失敗に結びつくものでもない。
希望は濃いのです。
本質的には得意科目なのですから、二次試験までに立て直し、得意科目にも力を入れれば、問題はありませんでした。
共通テストの得点なんて、合否判定では圧縮されます。
93点も、73点も、圧縮されれば大差ありません。
二次試験は科目数も減ります。
ここで、得意科目がどれほど得意科目であるか、披露してみせればいい。
そうやって、みんな合格していきました。


さて、一方、苦手科目は?
数学が苦手科目という人は多いです。
たとえ得意科目で失敗しても、それを挽回できるくらいに、数学は、得意ではなくても苦手ではないというところまでは仕上げたい。
とはいえ、数学の苦手を苦手でなくすのは、英語以上に難しいことです。
数学が苦手になるに決まっているコースを、本人が小学生の頃から見事に歩んでいる、という場合が多いからです。
しかも、本人自身の選択で。

小学校低学年で、算数は、理解するよりも暗記するようになってしまう子が多いのは、これまでも繰り返し書いてきました。
この単元は、かけ算。
こういう問題なら、わり算、というように解き方を覚えてしまうのです。
公式を覚えて、それに当てはめるだけ。
意味を考えないで、それをやってしまうのです。
問題文をろくに読まないで式を立てて解いてしまうようになります。
何の実感もなく。
小学校の低学年から。

そして、中学受験をします。
受験算数もまた、暗記、暗記、暗記。
典型題の解法の丸暗記。
それしか、勉強のやり方を知らないのです。
そのやり方では、受験算数は難しくて、苦手意識ばかりが募ります。

とはいえ、第一志望とはいかないものの、中学に合格する子が大多数です。
算数は苦手なままだったけれど、他の科目でカバーして、合格します。
さて、その後・・・。
この先も、数学が苦手になる一本道が待ち構えている場合があります。
これも、もう何度も書いてきました。

私立は、そもそも、学校の進度が速い。
中学1年生の1年間で、中1・中2の数学を終えます。
それも、「代数」「幾何」の2科目に分けて一気に進んでいきます。
学校の教科書は、文科省認定のものではなく、『体系数学』などの、ハイレベルなもの。
問題集も、『体系問題集・発展編』などの、ハイレベルなもの。
定期テストは、学年平均点が40点台。
数学は得点が低いのが当たり前となり、それに慣れてしまいます。
できなくて当然の科目になるのです。
問題集のレベルが本人に合っていないため、易しい問題ですら混乱して、わからなくなっていきます。
しかも、まずいことに、本人は受験がやっと終わって遊びたい気持ちが強いので、学習意欲が低い。
あっという間に数学がわからなくなります。

さらに、困難は続きます。
幾何の教科書が、学校の独自テキストの場合があり、これがわかりにくいのです。
素人がパソコンで編集しました、というようなレイアウトなので、つまらないし、見にくい。
実は、幾何は、普通のことを普通の順番で学習しているだけなのに、テキストが独自なため、何か特殊なことを学習しているように本人が誤解し、「だから普通の参考書などでは勉強できないので、もう仕方ない」と思ってしまう・・・。
幾何は勉強のやりようがないと思い込んで、捨ててしまいます。

しかし、私立中学側も、企業努力をしないわけではないので、上のような点はこの10年ほどでかなり改善されました。
幾何の学校独自テキストは、激減しました。
諸悪の根源だったので、これが何よりありがたい。
『体系数学』などの難解な教科書を採択する学校も随分減りました。
あるいは、使ったとしても、中学数学の内容までの学校が多いです。
高校数学は、文科省認定の数学の教科書を使用するのです。
問題集も、ごく普通です。
むしろ、都立高校で採択されているものよりも易しい問題集を採択している私立高校も多いです。
無理をしない。
無理をさせない。
数学に苦手意識を持たせない。

定期テスト問題も、易しくなりました。
私立の数学のテストは、正直言って、公立の数学のテストよりも簡単なことがあります。
結構有名な進学校で、ここに入れたら大喜びだろう私立の数学のテストがこんなに易しいのか・・・と驚くことがあります。
本当に基本中の基本問題、そして、応用問題ならこれが出ると予想される典型題が、丁寧に出題されています。

そうやって保護して保護して、数学ができるような気分にさせて、何とか大学受験に向かわせる。
必ずしも間違ってはいない。
良い教育姿勢だと思います。
10年前までの、大多数が数学が嫌いになるような数学スパルタ教育がされていた頃とは時代が変わりました。
過半数は、推薦入試か総合型選抜で大学に行くので、それで大丈夫なのですし。
一般受験をするにしても、大学入試問題も、数学は年々易化しています。
英語の爆発的難化とは対照的です。

しかし、そうであってすら、数学が苦手な子は存在します。
それは、小学生の頃から、本質を理解する学習をしてこなかった子たちです。
意味を考えない学習を、ずっとやってきた子たちです。

あまりにも算数がわからなくて、そうやってやり過ごすしかなかったからなのか。
理解しようと思えばできたのに、理解せずに覚えたほうが楽だと判断して、それが習い性になってしまったのか。

その結果。
中学数学になると。
数直線がわからない・・・。
座標平面がわからない・・・。
関数がわからない・・・。
意味を理解せずにやり方だけ覚えてきた子たちは、数学そのものにアクセスできないので、苦手が長引きます。

数直線上の2点間の距離を一目で把握できず、例えば、-2-(-4)といった式を立てて解くしかなく、それで符号ミスをしてしまい、距離が-2になっても、自分が間違えていることに気づかない子。
高校生になっても、y軸上の点のy座標はゼロだと思ってしまう子。
イコールの意味がわかっていないので、3/4x+6/5xといった、係数が分数の文字式全体を何倍かして分母を払ってしまう子。
y=-2x-4 のグラフは、感覚的に、途中から y がプラスになって大きくなっていきそうに思えて、グラフが直線だと言われても納得できず混乱する子。

数学オンチとでも呼ぶべき、そういう「感覚」のおかしさは、数学的な基盤がないことからくるのだろうと思うのです。
そして、その基盤は、本当は小学生の頃に言語化されないレベルで頭の中に蓄積されているものなのですが、学習のやり方が悪かったために、それが行われなかったのだと思います。

それを改善していくための対話。
そして、意識を改革していくための暗記ではない学習。
正しい情報の脳への刷り込み。
そうしたものが必要です。

数学が好きかどうかは別として、数学がわかるようになってください。
共通テストで、あなたを救うのが、予想もしなかった数学であることは、案外あるかもしれないのですから。






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