たまりば

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2024年02月18日

図形問題の攻略。

図形問題の攻略。

来年度からは、大学入試共通テストも新課程となり、数ⅠAに関しては、選択問題はなくなります。
全問必答です。
これまでは、数Aの3つの単現「場合の数と確率」「図形」「整数の性質」のそれぞれから出題される3問から2問を選択して答える形でした。
この3問からどの2問を選択するか?
結局、どの単元も苦手な人が多いのですが、一番苦手なのは図形だからと、図形を真っ先に除外する人が多かったように思います。
高校側も、特に私立中高一貫校は、中3内容の数学を学習している時期に、「チェバの定理」「メネラウスの定理」「方べきの定理」などを学習してしまうということもあって、数Aでは、「図形」の単元はやらない、あるいは、夏休みに自習することにして終わり、というところもありました。
だから、図形はそもそも嫌いだし、高校でもあまり学習しなかった、という人が多かったかもしれません。
しかし、新課程では、「整数の性質」は、「数学と人間の活動」という、漠然とした単元名に変わり、内容も薄くなり、共通テストの大問からは消えます。
一方、図形は、共通テスト数ⅠAで必須単元に格上げです。
これは、攻略しないとまずいです。

そうはいっても、図形が苦手な子が多いです。
なぜ多いのか?
小学生の頃から苦手な子も勿論いますが、やはり本格的には、中学数学で挫折する子が多いように思います。
それも、まずは、学習の入り口の段階で。

1つには、小学校で学習してきた図形と、中学で学習する図形が、かなり印象の異なるものであること。
だから、何を学習しているのか理解できない子が一定数現れます。
中学で学習する図形は、まず、基礎の基礎から学習が始まります。
つまり、用語と記号の定義から学習が始まるのですが、それへの違和感が強くて、混乱するようです。

「算数・数学は、何か式を立てて、計算して、答を出すもの」
という思い込みの強い子にとっては、図形問題というのは、三角形の面積を求めたり、角度を求めたりするものだという固定観念があります。
そういう固定観念の強い子にとって、中学の幾何の冒頭は、確かにわかりづらいでしょう。

直線とは何か。
線分とは何か。

2点A、Bを通る直線を、直線ABと呼ぶ。
直線は、どちらの方向にも無限に伸びる。
特定の点を使わずに、直線 ℓ と表すこともある。

そんなところから学習が始まるので、何の話なのかわからない・・・。
そこに、本人の多少ののみ込みの悪さが加わると、さらに大変です。

例えば、角の表し方。
△ABCの頂点Aのところの内角を、どう表すか?
∠A と表すことも可能ですが、3点を用いて表すならば、
∠BAC です。
∠CAB でも構いません。
これがなかなか身につかない子が、います。

Aのところの角なのだからでしょうが、どうしても、Aから始めてしまうのです。
∠ABC
と言ってしまいます。
「うーん、違います。角の表し方は、折れ線みたいなイメージで、まず、全然関係ないところの点を言って、そして、曲がり角の、つまり言いたいところの点を言って、それから、また全然関係ないところの点を言うと、その角を表せるんですよ」
「・・・?」
「わかります?」
「・・・」

これは、一度間違った思い込みをしますと、かなり尾を引くミスです。
角を正しく指摘できないのですから、その後の図形学習の遅れが大きくなります。
問題で指定している角がどこの角なのかわからない、という課題も生じます。


そもそも、問題が何を要求しているのかよくわからない、という場合もあります。
例えば、図が与えられていて、図中の角をどう表すかに関する問題。

問題 右図のア~ウの角を、図中のA~Hの記号を用いて表しなさい。

アの角は∠BAC、イの角は、∠EBA などと答えれば正解の問題です。
そこで、

∠ア 、∠イ

といった誤答をしてしまう子もいて、混乱に拍車をかけます。
「いや。違います。そういうことじゃないんです。そういう問題じゃないんですよ」

とはいえ、角を表す記号「∠」を使えているから、その点は、一歩前進しているのか?
角アを∠アと表して、何がいけないのか?
いやいやいや、でも、この問題の趣旨はそういうことではないんだけど。
問題文を読む習慣がないのかな?
うーん。
そもそも、数学なのにやたらとアルファベットが出てくることだけでも、実はストレスで、それで無意識に避けて誤答してしまうのだろうか?
教える側も、そんなふうにいろいろ考えて過ぎてナーバスになってしまったりもします。

△という記号も、慣れるまでは時間のかかる子もいます。
△ABCを、
「さんかくABC」
と読む子もいます。
「うっ。いや、それは、三角形ABCです。『形』をつけてください。そこは省略しないです」
そういえば、この子は、「×」の記号も「かけ」と省略して読むけど、何でなのかなあと、そんなことも思ったりします。
「±」も、おそらく、「ぷらまい」と読むようになるんだろうなあ。
何でちゃんと読まないのかなあ。
いや、伝わるからいいんだけど。
でも、さすがに「さんかく」はちょっとなあ・・・。

・・・と、学習の本質とは関係ないところで教える者も考え込んでしまったりもします。

正しい用語、正しい定義、正しい記号。
中1の最初の幾何は、土台を作っている段階なのです。
今後、語ることになる様ざまな定理。
そこで使うことになる用語に誤解があってはならない。
用語に対して共通認識がなければ、話が通じない。
しかし、教わる者にとっては、まだ入口にたったばかりで、先のことなどわかりません。
用語の定義などされても意味不明で、何のために何をしているのか全くわからないのでしょう。

前にも書きましたが、この土台を学校の独自テキストで学習すると、さらに違和感が強く、何を学習しているのか全くわからなくなる子が増えます。
生徒にしてみれば、感覚はまだ小学生。
面積や体積の計算をするのが図形問題、という感覚です。
それなのに、直線がどうの角がどうの、平行がどうの、垂直がどうのと延々やっているので、意味がわからない・・・。
だから、入口でつまずいてしまう子が多く現れます。

そうして、初めて学習する者にとっては意味のわからない定義と用語の確認の後、何が始まるのかというと、学習はいきなり飛躍します。
平行移動、対称移動、回転移動。
半分以上は小学校の復習なのですが、小学校で学習したことなど全部忘れている強者も多いので、どの線分とどの線分の長さが等しいとか、ここの角の大きさはどうなるかとか言われても、ついていけない・・・。
そして、そもそも、何で図形を移動させるのか、その根本がわからない・・・。
図形を移動させるって、どういうこと?
この学習は、何のために、何をやっているの?

このあたりで、もう図形は「意味のわからないもの」になってしまいます。

初めて学習することは、違和感が強いものです。
主観でものをとらえやすい子ほど、抵抗感が強くなります。
算数から数学への壁は厚く、高い。
結局、中1の図形内容は、何をやっているのか全くわからなかった・・・。
そんなこともあります。

でも、大丈夫です。
繰り返し学習していくなかで、違和感は徐々に薄らいでいきます。
最初はどうなることかと思った子も、中2の図形内容である「三角形」「四角形」を学習する頃には、角の呼び方がおかしいというような基本ミスはほぼなくなります。
焦らないこと。
そして、諦めないことです。

そして、本当の困難は、ここから始まるのです。
中2の図形内容は、定理が次々と登場します。
これを使えないと問題を解けないのですが、定理を覚えられないし活用できない子が多く現れます。

それは、高校まで尾を引きます。
例えば、
「二等辺三角形の頂角の二等分線は、底辺を垂直に二等分する」
という定理は、中2の数学内容ですが、図形が苦手な高校生でこの定理を使える子は少ないです。
高校レベルの図形問題の中で用いる定理のうち、中学で学習するものとしては、これと三平方の定理がツートップではないかと思うほど使用頻度が高いのですが、不可解なほど忘れている子が多いです。
使うべき定理を使えないから、図形問題が解けないのです。
「二等辺三角形の定理で、覚えているものを言ってみてください」
「2辺が等しい」
「それは、定義です。2辺が等しい三角形を二等辺三角形というんです。定理は、何か覚えていないですか?」
「あれだ。角で、何かあった」
「・・・なるほど」
要するに、嫌いだから勉強しない。
勉強しないから、覚えていない。
覚えていないから、問題が解けない。
問題が解けないから、嫌い。
そのスパイラルが起こっています。

センター試験の時代から今年の共通テストにおいても、図形問題は、他の単元に比べれば問題文を読解すべき要素が少なく、使う定理も想像がつくので、図形が得意な子にとっては得点源です。
共通テストの図形問題で使う定理は、多く見積もっても20程度。
どうせ、大半は、内心・外心・重心・垂心・傍心か、相似か、チェバかメネラウスか、方べき。
それに三角比の知識と、あとは、中学の図形の知識を使うだけ。
練習次第で習得できます。

とはいえ、もう1つ課題があります。
問題文に書いてある通りの図を描けない人が多いのです。
描く図が小さすぎて、問題が進むにしたがって、書き加えた線分が重なって、訳がわからなくなる。
平行線ではないものが、平行に見えてしまう。

そうした課題の解決法としては。
当たり前のことですが、もう少し大きい図を描きましょう。
最小でも5センチ四方の図を描くようにすれば、かなり見やすくなります。
大きい図を描く習慣を持つだけで変えていけることがあります。
あるいは、線がごちゃごちゃしてきたら、新たに図を描き直しましょう。
気軽に図を描くことができず、頭の中で処理しようとすると、図形問題は難しいです。
また、本当は鈍角三角形なのに鋭角三角形を描いているから、その先の辻褄が合わなくなる、ということもあります。
「それ、△ABCは鈍角三角形ですよ」
「・・・どうして、鈍角三角形だとわかるんですか?」
「問題に、cos∠BAC<0 と書いてあるからです」
「・・・!」

使うべき知識を使えないので、問題が見えないのです。
すべての知識を使えるようになればいいだけです。
身につけるべき知識の総量は明確です。
どこまでいっても、さらに限界を超えたような応用問題が出てくる他の単元と比べると、図形問題は穏当です。
苦手意識を持たないこと。
苦手意識を捨てること。
コツをつかめば学習しやすいのが、図形問題です。

諦めずに、挑戦し続けましょう。





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