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2024年03月12日

中1数学「正負の数の乗法」。旅人は東を目指す。

中1数学「正負の数の乗法」。旅人は東を目指す。

さて、今回は正負の数の乗法。かけ算です。

(+2)×(+3)=+6
(+2)×(-3)=-6
(-2)×(+3)=-6
(-2)×(-3)=+6

こうしたかけ算の符合のルールは、作業手順の暗記で済ますタイプの子にとっても、比較的覚えやすいもののようで、かけ算で符号ミスをする子は少ないです。
ただ、問題は、こうしたかけ算のルールを学んだあと、正負の数の加減に戻ると、符号のルールがぐちゃぐちゃになってしまうことです。

たとえば、こんなミス。
(-2)+(+3)=-1
(-2)+(-3)=+5

(負の数)+(正の数)=(負の数)
(負の数)+(負の数)=(正の数)
と、間違ったルールで計算してしまうのです。
明らかに、かけ算の符合ルールに引きずられた誤答です。
作業手順の暗記で済ますタイプの子たちは、ここでつまずきます。

「違うんですよ。加減の符合ルールと乗除の符合ルールは異なります。混乱しやすいので、符号のルールを暗記するのではなく、加減は、数直線をイメージしましょう。数直線。わかります?」
「・・・わかります」

数直線をイメージして解く正負の数の加減は、このブログ内の該当ページをご参照いただけますと幸いです。
正負の数の加減の符合のルールは、なぜそのルールなのか。
数直線をイメージすれば、それは当たり前のことで、むしろ、ルールを覚えて解くようなことではないのです。

とはいえ、その後練習しても、改善は見られないことがあります。
「・・・数直線をイメージして解くということが、本当にわかっていますか?」
「・・・わかりません」

おお・・・。
わからない、と認めるまでの時間の長さよ。
本人の中で色々な葛藤があるのでしょう。

わかっていなければ前に戻ってやっていきます。
そのような中で、正負の数の乗除については、符号ルールをさらっと説明して、ルールだけ覚えろ、というわけにはいきません。
こちらも、何かしっかりとした根拠が必要です。
しかし、
(正の数)×(正の数)=(正の数)
(負の数)×(正の数)=(負の数)
は意味がわかる気がするものの、
(正の数)×(負の数)=(負の数)
(負の数)×(負の数)=(正の数)
とは、どういうことなのでしょうか?
何だか、実感は伴っていない気がしませんか。

(負の数)+(負の数)=(負の数)
なのに、
(負の数)×(負の数)=(正の数)
となるのはなぜか?

この疑問には、答えておく必要があります。

以降の説明は、別に私のオリジナルではなく、数学関係の本によく載っている解説です。

冒頭の数直線の図を見てください。
数直線上を、変な奴が歩こうとしていますね。
この人は、数直線上を歩く旅人です。
この旅人の速さと距離で考えていきます。

まずは、速さについて、ざっくりとおさらい。
一番簡単な、
時速×時間=道のり
で、解説しましょう。
時速4㎞の人が、2時間歩いたら、道のりは何㎞でしょうか。
4×2=8 で、8㎞
これは、大丈夫でしょうか。
時速4㎞というのは、1時間に4㎞進むことのできる速さだということ。
それが、2時間分なのだから、
4×2=8 で、道のりは8㎞ 
となります。
速さ×時間=道のり
という公式は、そういう意味のものです。

さて、これを利用しましょう。
今回は、正負の数のかけ算なので、速さに方向がともないます。
この旅人は、今、数直線上の原点にいて、東へ、すなわちプラスの方向に1時間で2㎞進むとします。
その速さを、時速+2㎞と表します。
では、+2時間後には、どこにいるでしょうか?
(+2)×(+2)=+4
原点から東へ、すなわちプラス方向に4㎞の地点にいます。

また、この旅人は、現在は、原点にいます。
プラスの方向に時速2㎞で歩き続けている旅人です。
では、2時間前には、どこにいたでしょうか?
原点より西、すなわちマイナス方向に4㎞のところにいなかったでしょうか?
いましたよね?
2時間前とは、-2時間のことです。
すなわち、
(+2)×(-2)=-4

さて、ここで方向転換。
別の旅人が登場します。
上の図とは反対方向に顔を向けている旅人だと想像してください。
新しい人物は、東から西へ、すなわちマイナス方向に旅をしているのです。
1時間で2㎞進みます。
この速さを、時速-2㎞と表します。
この人は、2時間後、すなわち+2時間後に、どこにいるでしょうか?
原点から西へ、すなわちマイナス方向に4㎞のところにいますよね?
すなわち、
(-2)×(+2)=-4

さらに、この新しい旅人は、2時間前にはどこにいたでしょうか?
原点より東に4㎞のところにいたのではないでしょうか。
すなわち、
(-2)×(-2)=+4

数直線上の旅人は、確かに、このように移動します。

以上をまとめると、
(+2)×(+2)=+4
(+2)×(-2)=-4
(-2)×(+2)=-4
(-2)×(-2)=+4

すなわち、
(正の数)×(正の数)=(正の数)
(正の数)×(負の数)=(負の数)
(負の数)×(正の数)=(負の数)
(負の数)×(負の数)=(正の数)
は、計算上の虚構ではなく、現実にそうであることが理解できます。

ルールをただ丸暗記する。
作業手順を暗記してこなす。
それに慣れ切っていて、他のやり方を知らない・・・。

中学数学の最初に、その悪習慣から離脱できれば、道は開けます。




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    Posted by セギ at 12:23│Comments(0)算数・数学
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