たまりば

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2023年10月25日

みたか太陽系ウォーク、コンプリートしました。2023年。


先週の金曜日から始まった、「みたか太陽系ウォーク2023」、昨年に続き、今年も参加しました。
昨年から、アプリを用いたウォーキングイベントになった、この太陽系ウォーク。
昨年に参加した方はご存じと思いますが、アプリの不具合が頻発し、目的地のGPSはなかなかアプリに反応せず、ウォーキングイベントというよりも障害物走に近い印象がありました。
それだけに、コンプリートの感慨はひとしおでしたが。

今年は、スタンプポイントが、98か所。
昨年は136か所だったと記憶しているので、かなり減って、シンプルになりました。
昨年は市内全域にスタンプポイントが広がり、どうやっても、一筆書きでコンプリートは不可能。
私は参加がほぼ10年ぶりで不慣れだったこともあって、三鷹市内を5周くらいした印象があります。
今年は、随分周りやすく計画されたポイント設置と感じました。

さて、10月20日(金)、イベント初日。
仕事終わりに、まず三鷹駅周辺を回ることにしました。
駅周辺は、微弱なフリーWi-Fiがそこら中からあふれて、スマホの動きが遅く、アプリの反応も遅いので、夜のほうがいい。
これは、昨年学んだ知恵です。
ところが、三鷹駅の真ん前でアプリを開いても、何の反応もない!
昨年から引き続き、削除もせずにスマホの第1面に鎮座する「ミイね!」アプリは、普段は観光案内、市内の商店街案内的なアプリです。
この時期だけは、太陽系アプリに変貌します。

どういうことだ?
「設定」を見て、「ガイド自動切替」がOFFになっていたので、試しにONにすると、たちまち「三鷹駅」その他2か所の反応が!
「設定」画面の3つのものはすべてONにしておかないと、アプリが普通に動かないのです。
うーん、これは昨年にはなかったことだ。

さて、初日は、「三鷹駅」の他、昨年苦戦した、
4.三鷹ヒロクリニック南口本院
5.第一ゼミナール駅前スタジオ教室
を早めにクリアすることに決めました。
この2か所は、どこにあるか、わかりにくいんです。
アプリ内のデジタル地図を最大に拡大しないと、場所を特定できない。
しかし、拡大しすぎているせいで、全体の地理把握がうまくできない。
三鷹駅の南西側の道は、意外に入り組んでいて、普段あの辺りを歩かない者にとっては、一瞬で方向感覚がおかしくなる妙な感じがあります。
なぜ、この道を直進したら、ここの交差点に出るんだろう?というような、ぐらっと来る感覚があるのです。
道が垂直に交わってはいないからですね。
それでも、クリニックは、昨年、ビルの外観を覚えたので、わりとすぐにクリア。
学習塾のほうは、結局、発見できないまま、電波だけは何とか拾うことができました。


10月21日(土)
さて、この日も、仕事終わりに、三鷹駅付近のポイントをまとめて集めていくことにしました。
三鷹中央通り商店街で、スタンプを順調にゲット。
途中で、さくら通りに移動。
さらに、
47.みたか井心亭
28.山本有三記念館
そこから、三鷹通りに移動しました。
これだけで大量にスタンプをゲット。
三鷹駅付近は、効率がいいです。

帰宅して、道路地図のコピーを取り、ポイントを書き込みながら戦略を練りました。
昨年度、国立天文台などの大沢方面から、新川のほうに大移動したのは、効率が悪いうえに大変でした。
道に迷ってしまったのも大きかったです。
坂の上り下りも多く、三鷹の地形の複雑さも実感しました。
三鷹も、河岸段丘があるんですね。
この2か所は行く日を分けたほうがいい。
明日は、新川方面を中心に。
そして、大沢方面は、また別の日に。


10月22日(日) 秋晴れ
絶好の太陽系ウオーキング日和です。
朝から出発。
三鷹通りを行きます。
まずは、大成高校付近のポイントを集め、さらに、三鷹図書館本館へ。
そこから、東八道路に出て、
84.元気創造プラザ へ。
こういう大きな施設は、電波も強く発信されているかと思うとそうでもなく、道路からはキャッチできませんでした。
裏手に回り、建物の入口にて、ようやく受信。
隣りの、
83.JA東京むさし三鷹緑化センター
も、道路からは受信できず。
敷地内に入っていき、ようやく受信できました。

さて、ここからは失敗できない新川エリア。
泣く泣くまた戻るのは嫌です。

ここで、問題発生。
94.wata 焼き菓子
が、見つからないのです。

地図を拡大し、杏林大学の東側、ファミリーマート三鷹杏林前店の近くにあるのは確認したのですが、その付近でアプリを立ち上げても、気配ゼロ。
ぐるぐる周囲を巡っても、お店が見当たらない・・・。
焼き菓子のお店が、路面店でないということは、あり得るのだろうか?
もしかしたら、デジタル地図が間違っているのだろうか・・・?
こういう場合、アプリを立ち上げたまま、10㎝ずつ移動するしかありません。
ほんの一瞬、アプリが反応して、すばやくつかまえました。
ああ、良かった。
これだけで、30分ほどかかりました。
ここは、「また来ればいいや」とはならない遠い場所なのです。
なお、これを書いている今(10月25日)、確認のためにデジタルマップを開いたら、
94.wata 焼き菓子
は、東八道路より北に位置することになっています。
いや、さすがにそこじゃないと思う・・・。
移動する店。
謎です。

さて、あとは、
98.セブンイレブン三鷹新川1丁目店 
まで順調にスタンプをゲットして行きました。
ここが、今年は唯一の「冥王星」エリアです。

さて、新川エリアにもれはないか、2度確認して、そこから、
78.東部図書館
に向かいました。
天神山通りは、わかりやすい一本道で、歩道も広く、農園などの緑も多くて快適な道でした。
うん、楽しい。

さて、東部図書館。
「お1人15冊まで」という図書館の掲示を二度見しました。
そんなに借りられるの?
子ども向けの絵本は、それくらい1度に借りたい人もいるのでしょう。
図書館前には木陰のベンチがあり、ここで昼食を取りました。
秋晴れの日曜日の図書館。
ときおり人が入ったり出たりするのもほどよい感じです。
いい雰囲気です。

さて、東八道路に出て、東へ。
目的地は、
80.花と緑の広場
ここは、東八道路からキャッチできましたが、良さそうな雰囲気だったので、入ってみました。
花がたくさん咲いている公園でした。
コスモスが風に揺れていました。

さて、そこから三鷹台駅方面へ。
ここも、そんなに気軽にまた来ようとはならない場所。
慎重に、スタンプ帳を確認。

さらに、井の頭公園駅付近へ移動。
ここは、私が学生時代に住んでいたアパートがあった町です。
71.栗原ストアー
は、毎日のように買い物をした店でした。
懐かしいなあ。
そして、今年は、なぜか記憶がクリアで、迷うことなく昔住んでいた場所を探しあてました。
感慨深く、建物を見上げました。
無論、建て替えられていますが。

そこから、井の頭公園へ。
46.三鷹の森ジブリ美術館
その通りをどんどん南下。
ここで難関は、
52.有限会社太田ふとん店
昨年もそうでしたが、大通りに面している店ではないので、どこにあるのかよくわからないのです。
付近をゆっくりと巡って、何とかキャッチ。

連雀通りへ曲がって西へ。
ここで、今年の最難関に遭遇。

57.日産東京販売株式会社三鷹店

こんなに大きな店舗の、しかも入口に立っても、アプリに反応がない!
向かいの小さなラーメン屋さんはアプリに表示されているのに。
5分待っても、反応がない。
周囲を回って、方角を変えてアプリを開いても、反応がない。
これは、元からOFFなのでは?

しかし、今年から、みたか太陽系ウォークのアプリには新たな機能が搭載されたのです。
店頭に貼られたポスターのQRコードからも、スタンプがゲットできるのでした。
おそらく、昨年度の参加者の要望から生まれたものなのでしょう。
反応が悪いとき、代替手段があるのはありがたいです。

よし、ここでQRコードを使おう。
と思ったら、画面が真っ黒で、カメラが起動しません。
今年度最悪の苦闘が始まりました。

アプリに反応がない。
QRコードも読み取れない。

これでは、スタンプをゲットできない。
コンプリートできない。
私が悪戦苦闘する間にやってきた人たちは、皆、やはりアプリを開いても反応しないようで、首を傾げていましたが、QRコードでさっとゲットして、次のポイントに移動していきました。
うらやましい。
なぜ、私のアプリだけ、画面が真っ黒で読み取れないのか?
そこで気持ちを落ち着かせて、「アプリ利用でお困りの方」をクリック。
「カメラが起動しない」
というページがあり、「アプリにカメラアクセスを許可していないことが原因と思われます」と書かれていました。
操作方法も。
その通りにしたら、カメラが起動しました。
そして、何とか、QRコードから、スタンプをゲット。
30分以上のタイムロスをしましたが、諦めなくて良かった。
頑張った、自分。
あとは、連雀通りを西へ移動しながら、順調にスタンプをゲットしていきました。


10月24日(火) 秋晴れ
本日はコンプリートを目指し、自転車で大沢方面へ。
山中通りを西へと進みながら、まだ回れていなかった箇所を順調にゲットしました。
そして、
95.国立天文台
いったん、東八道路に戻って、
96.西部図書館
さらに、
97.大沢の里古民家

大沢の里古民家は、野川沿いの遊歩道に面しているので、馴染みのある場所です。
しかし、昨年も反応が悪くて、苦戦した場所でした。
昨年は中に入り、建物の前でようやく反応したのです。
ところが、今年は、建物に通じる入口が閉じられていました。
火曜日は定休日なのかな?

アプリに反応はない。
建物の入口に掲示してあるのだろうポスターにQRコードが書いてあるとしても、そこに近づく方法がない。
これは・・・。
日産以上の大惨事が、ここにきて勃発か?

入口は閉じられていますが、迂回して、雁木坂を登っていく細い道があることを、以前に歩いて知っていました。
そこのどこかで、反応するかもしれない。
それしか、望みがありません。
アプリを立ち上げたまま、一歩ずつゆっくりと雁木坂を登っていきました。
全く反応がない・・・。
観光名所なので、いくつかの音声ガイドの目次が画面に現れます。
これらが妨害しているのかもしれません。
もう無理か?
そう思った一瞬、反応がありました。
竹林の中で、スタンプをゲットしました。

やった。
ついにコンプリートです。
このとき見上げた空が、一番上の画像です。

さて、いったん家に帰り、教室に行くついでに、三鷹ネットワーク大学へ。
10月24日(火)から、もう景品交換が始まりました。
これも、昨年は景品交換の開始が遅く、その前にスタンプ帳が消えるという惨事が起こった人がいたことをふまえての措置かもしれません。
私も心配なので、コンプリート当日、すぐに交換に行きました。

ケプラー賞 スタンプ30個以上 クリアファイル
林忠四郎賞 スタンプ50個以上 ハンドタオル
古在由秀賞 スタンプ80個以上 定規
コンプリート賞 ノート・記念シール

すべていただきました。
下が、その画像です。
今年のクリアファイルは、オレンジ色で、可愛いです。
画像では、裏側になっていますが、本当にきれいなオレンジ色です。
去年のクリアファイルも勿体なくてまだ使っていないけれど、今年のも、可愛くて使えないなあ。
ハンドタオルは、ミニタオルで、散歩中にポケットに入れておくのに便利なサイズ。
定規は、使い勝手はそんなに良くなさそうですが、デザインは好きです。
ノートは、去年と同じデザインですが、オレンジ色が濃くなっています。赤に近い。
記念シールは、来年の手帳の表紙に貼ろう!

今年も、本当に楽しかった。
あっけなく終わって、勿体なかったかもしれません。


  


  • Posted by セギ at 13:14Comments(0)講師日記

    2023年10月20日

    英語長文読解。具体例から論理を推理する。


    ホトトギス。都立野川公園にて。
    さて、辞書を引くことができない状態で英語長文読解問題を解かねばならない機会は多いです。
    入試に辞書持ち込みが許可されている大学も少数ながらありますが、いちいち辞書を引いていたら時間が足りないのが現実。
    学校の定期テストや英語検定となると、辞書は持ち込めませんし。
    自分の知っている単語だけで勝負していかなければなりません。
    どこまで頑張っても、わからない単語が1行に1個くらいあるのは覚悟の上。
    それでも英文の意味を取っていくことが必要となります。

    そもそも単語力がなくて、1行にわからない単語が3つも4つもある場合、それはさすがに読み取りは無理なので、単語を覚えましょう。
    それは、大前提です。
    単語の覚え方については、過去にも幾度となく書いてきましたが、毎日1時間、単語を覚える時間を作って、それを半年続けて、それでも何も効果がない、ということはありえないです。
    毎日1時間、半年続ける。
    それさえやれば、人生が変わります。
    多くの人は、それができないだけなのです。
    高校の英語の授業の、週1回の単語テストのために、前日か当日にちょろちょろっと単語暗記したことを、「努力している」と誤解している人は多いです。
    「やってるもん!」と口をとがらせます。
    しかし、私は、それは「何もやっていない」のカテゴリーに入れます。
    だって、それでは効果が表れないですから。
    単語暗記は、反復するしかないのです。
    覚えても、覚えても、覚えても、忘れていく。
    頑張っているのに、何で覚えられないのだろう?と自分をのろい、頭を抱え、涙を流して。
    それでも諦めずに頑張った人だけが、気がつくと違う地平に立っているのです。
    即効性など期待できません。
    まず、半年努力する。
    頑張りましょう。

    さて、そうやって、わからない単語は1行に1単語程度になったとして。
    それで、もう楽々と長文読解問題の正答率を上げていく人もいれば、それでも、何だか英文の意味が取れない・・・という人もいます。

    以下の文を読んでみましょう。
    まずは、文章全体の冒頭の1文です。

    Work expands so as to fill the time available for its completion.

    英文の冒頭を読むとき、読みにくいなあと感じるのは、話題の見当がつかないからです。
    それは、英文をかなり読み慣れてもそうなので、ここで諦めないことです。

    「わからない単語はありますか?」
    「あります・・・」
    「どれが?」
    「completion」
    「・・・complete の意味は?」
    「完成する」
    「では、それの名詞形ですよ。どういう意味になりますか?」
    「完成すること」
    「・・・はい。『完成』ですね」
    「ああ・・・」
    「あとは大丈夫?so as to の意味は?」
    「~するために」
    「うん。available の意味は?」
    「利用可能な」
    「うん。よく覚えていますね。では、1文目を訳してみて」
    「仕事は、その完成のために利用可能な時間を満たすために拡大する」
    「はい」
    「・・・どういう意味ですか?」
    「そうね・・・」

    日本語に直してはみたものの、意味がわからない・・・。
    英文には、そういうことがあります。
    まして、文章の冒頭となると、何が言いたいのか、本当にわからない、ということは当然あります。

    こういう、作者の「論」を述べている文は、このようにとかく抽象的で意味がわかりにくいのです。
    しかし、その後に具体例を述べて、わかりやすくしてくれているのが普通です。
    英文は、(そして、日本文もそうですが)、1段落に1つの内容しか述べないことになっています。
    だから、1つの段落のどこかで意味を理解できれば、そこから全てが氷解する、ということがあります。

    続く2文目。

    General recognition of this fact is shown in the proverbial phrase "It is the busiest man who has time to spare."

    「わからない単語はありますか?」
    「proverbial」
    「proverb の意味は?」
    「ことわざ?」
    「そうです。それの形容詞形ではないですか?『ことわざ的な』という意味では?」
    「ああ・・・」

    単語暗記をそれなりに頑張っても、英文の読めない子の1つの特徴として、派生語を把握できない、ということがあります。
    1文字違うと、もう把握できない。
    頭が固い、と言ってしまえばそれまでですが、派生語についての理解がないということもあるかもしれません。
    それは、品詞に対する知識がないことも、1つの原因かもしれません。
    同じ単語の動詞形、名詞形、形容詞形、副詞形というものがあっても当然だ。
    そのような認識で英文を読めば、理解できる単語は爆発的に増えます。

    「他にわからない単語は?」
    「ぷれーず?」
    「ぷ?phrase ですね」
    「ああ」

    その前のプロバービアルの読みに引きずられたのだろうとは思うのですが、ph は f の音、と把握できていると読むのが楽になります。
    スペルを覚えるためにローマ字読みを優先してきた「ペーパーテスト系の子」に、このように、もう既に日本語になっている英単語の存在に気づかない子がいます。
    これは、「フレーズ」。
    「句」という意味です。
    「あの歌の歌詞はいいフレーズが多いよね」
    などと、日本語でも使います。
    もう日本語になっている英単語は多いので、それを認識できると理解できる単語はさらに増えます。

    「では、訳してください」
    「この事実の一般的な認識は、ことわざ的なフレーズに示される。『それは、割く時間を持っている最も忙しい男だ』」
    「・・・意味、わかりますか?」
    「わかりません」

    "It is the busiest man who has time to spare."

    「it の中身は何ですかね?」
    「the proverbial phrase ?」
    「でも、この文はSVCですから、it =the busiest man の構造ですよね。だったら、it の中身は人間のはずです」
    「ああ・・・」
    「これは、強調構文なんですよ」
    「ああっ」
    「では、日本語にしてみて」
    「割く時間を持っているのは、もっとも忙しい男だ」
    「わかりますか?」
    「わかりません・・・」
    「では、続きを読んでみましょう」

    さらに具体例が続きます。

    Thus, an elderly lady of leisure can spend the entire day in writing and dispatching a postcard to her niece in London. An hour will be spent in finding the postcard, another in hunting for spectacles, half an hour in a search for the address, an hour and a quarter in composition, and twenty minutes in deciding whether or not to take an umbrella when going to the mailbox in the next street.

    お気づきの方も多いと思いますが、この文章、書かれたのが20世紀なので、今のジェンダー平等的な観点からいえば、言葉遣いに難があります。
    人間のことを man と呼ぶのは、今の英語ではありえない。
    悪い例に「おばあさん」と性別を指定するのもダメです。
    今、イギリスの新聞にこんなエッセイが掲載されたら炎上するでしょう。
    いや、そもそも掲載されないと思います。
    しかし、長文読解問題としては解く価値のある英文なので、遺憾ながら使用しています。
    具体例から、著者の「論」を推理する基本問題として、良い英文なんです。
    ちょっと古いともう価値がないと誤解する今どきの高校生をなだめながら。

    勿論、それと並行して、最新の大学入試過去問も使用していますが、Facebook やAmazon の経営者の言動がやたらと出てくるだけで、あまり読む価値のない文章もあります。
    新しい文章であることは間違いないのですが。
    アップデートしているイメージを保つため、そして生徒の興味を引くためには有効。
    1種の息抜き問題と言えるかもしれません。

    それはともかく。
    さて上の例は、言葉遣いも易しいので、上記の生徒も内容をよく読み取れました。
    「このおばあさんの行動を、簡単に述べてください。正確な訳でなくて構いませんから。ざっくりと」
    「おばあさんが、姪に、ハガキを送る」
    「うんうん」
    「まず、ハガキを探すのに1時間かけて」
    「はい」
    「眼鏡を探すのに、1時間。住所を探すのに30分。文章を書くのに、1時間15分。ポストに入れるために外出するのに傘を持っていくか決めるのに、20分」
    「素晴らしい。よく意味が読み取れています」

    Work expands so as to fill the time available for its completion.

    ここで、この冒頭の英文に戻りました。
    「仕事は、利用可能な時間を満たすために拡大する。この意味がわかりましたか?」
    「・・・わかりません」

    "It is the busiest man who has time to spare."

    「割く時間があるのは、もっとも忙しい人だ。この意味がわかりましたか?」
    「わかりません」

    ・・・うーん。

    ということで、その次の文を読んでみます。

    The total effort that would occupy a busy man for three minutes all told may in this fashion leave another person prostrate after a day of doubt, anxiety, and toil.

    さて、設問は、この文に下線が引かれてあり、これとほぼ同じ意味の英文を選ぶ4択問題になっていました。
    この英文を解釈するのは、単体では、難しいかもしれません。
    でも、今までのところを理解していれば、大体の意味は取れるので、正解できるのです。

    「さあ、この文で、第1段落が終わります。今まで著者が言っていたことを繰り返しているだけです」
    「わからないです」
    「・・・何が?」
    「all told とか、in this fashion とか、prostrate とか、toil とか、わからない・・・」
    「大丈夫ですよ。些末なところは無視しましょう。和訳しろと言われているわけじゃないんです。文意が取れればいいんです。大体どういう意味ですか?」
    「わからない・・・」

    細かいところがわからないと、不安になって、意味がとれない。
    高校生としては十分な単語力がもうついているのですが。

    ここからは、独学では難しい領域です。
    独学では、ここで全訳を見てしまい、何だそういう意味かと安心して、終わってしまうのです。
    all told 、in this fashion 、prostrate、toil の意味をそれで覚えるのなら、それもまた何か少しは意味があるでしょうが、大学受験にはそれでは間に合わない。
    それらの単語・熟語がわからなくても、設問には正解できる。
    そういう学力が必要なのです。
    それが実践力です。

    もう一度、英文を見てみましょう。
    The total effort that would occupy a busy man for three minutes all told may in this fashion leave another person prostrate after a day of doubt, anxiety, and toil.

    「訳せるところだけ、訳してみて。わからない部分は英語のままでいいし、無視してもいいよ」
    「・・・忙しい男に3分を占領させる全体の努力が、別の人は1日。疑って、疲れて」
    「素晴らしい!それで十分。つまり、どういう意味?」
    「・・・わからない・・・」
    「第1文に戻りましょう。『仕事は拡大する』。次の文は、『割く時間があるのは、もっとも忙しい人だ』。どういうことでしょうか?」
    「・・・わからない・・・」
    「どんな人と、どんな人が比較されていますか?」
    「忙しい人と、別の人」
    「別の人。例えば?」
    「おばあさん」
    「そうそう。忙しい人と、おばあさん。ここで例として出されている仕事の内容は?」
    「・・・ハガキを書くこと」
    「その仕事にかかる時間は?忙しい人は?」
    「3分」
    「おばあさんは?」
    「1日」
    「そう。つまり、仕事は、膨張する」
    「・・・わからない・・・」
    「大丈夫。もうわかっています。選択肢を読んでみて。答がわかったら、言って」

    選択肢を日本語に訳すと。
    1 . 暇な人は、1つの仕事を、さまざまに考慮して丁寧に行う。
    2 . 仕事は時間をかけただけの効果がある。
    3 . 同じ仕事が、人によってかかる時間が違う。
    4 . 忙しい人に仕事を頼むのは、その人をわずらわせることだ。

    「答は?」
    「3?」
    「はい、正解」
    「えー・・・。あ。ああ!そういうことか!」
    「はい。読解とは、そういうことなんですよ」

    下線を引いてある英文は、難しい文だから引いてあるのです。
    そして、重要だから、引いてあることも多いです。
    その2つを兼ね備えているこの設問の作り方は、惚れ惚れするようです。
    そして、下線部に多少わからない単語・熟語があっても、そこまで読み進めることができたのなら、正解できるのです。
    良問です。

    論でわからないことは、具体例で読み取る。
    少しくらいわからない単語があっても、わかる部分をしっかり読んでいく。
    つまりどういうことなのか、常に考えながら読んでいく。
    1つの段落には、1つのことしか書かれていない。
    その1つを読み取るだけでいいのですから。
    そういう読み方は、体得するまでには補助が必要です。
    そのように文章を読んだことのない子が、自力で体得するのは、相当に難しいと思います。

    「仕事は、忙しい奴に頼め」
    日本でも、そのようなことわざ的なものは存在しますね。
    暇な人間に、暇だからできるだろうと仕事を頼んでも、いつになっても出来上がらない。
    忙しい人のほうが、時間を捻出して、さっとやってくれる。
    仕事の質も高い。
    そういう考え方があります。
    高校生にはなじみのない考え方かもしれません。
    それを知るという意味でも、現代に通用する良問だと思います。

    私見を言えば。
    悪い例として出ている、姪に葉書を書き送るのが1日仕事になっているおばあさん。
    私は、何だかチャーミングだなあと思うのです。
    そして、忙しい人が3分で送信したメールは、受け取った姪は読み終わって返信したら消去するかもしれないけれど、おばあさんの1日仕事の葉書は、しばらくボードにピンで止めておき、後には文箱に保管すると思うのです。

    ラジオで聴いた好きなエピソードがあります。
    あるラジオパーソナリティが、久しぶりに帰省したら、新聞から顔を上げたおじいさんが言ったというのです。
    「恐ろしいことだよ。朝刊を読んでいると、もう夕刊が届くんだよ」

    タイパもいいですけれど、ゆったり時間を使うことの中にも、価値のあることがきっとある。
    そんなことも考えてしまうのです。
    私自身は、今年度、大学受験生が今までで最多の人数になり、タイトなスケジュールの中、過去問分析に時間を使い果たす日々なのですが。

      


  • Posted by セギ at 13:13Comments(0)英語

    2023年10月13日

    数Ⅱ「高次方程式」。ωの計算。


    画像はワレモコウ。都立野川公園で撮影しました。
    ようやく秋ですね。
    さて、今日は、ω の話。
    まずは問題から。

    問題 x^3=1の虚数解の1つを ω とするとき、以下の式の値を求めよ。
    (1) ω^12+ω^6+1
    (2) ω^10+ω^5+1
    (3) ω^7+ω^8

    高次方程式に関する問題の1種です。
    しかし、混乱する高校生が多いのが、この ω に関する問題です。
    あまりにも唐突に出てきて、違和感が強すぎる。
    意味がわからない、ということのようです。
    そもそも、読み方すらわからない、という声さえ聞きます。
    間違えて「シグマ」と読む子もいます。
    シグマは Σ。
    「数列」の学習で出てくる記号です。

    ω は「オメガ」と読みます。
    ギリシャ文字です。
    数学にギリシャ文字が出てくることに違和感があり、迷惑に感じる高校生もたまにいるようです。
    α、β 程度でも、慣れない様子で、a , b と読み間違えてしまう子もいます。
    覚えることが1つ加わって、ハードルが高くなってしまうようです。

    以前も書きましたが、
    「文字を沢山使っているのは、数学としては邪道。傍流の問題。計算問題こそが、数学の本流」
    という謎の思い込みの強い子もいます。
    おそらく、小学生の頃から、計算問題こそが算数・数学だという謎の思い込みをしていて、そして、計算は比較的得意だったのでしょう。
    自分が得意なものの価値が目減りしていくのは、確かにつらいですよね。
    文字が含まれると、答が1つにはっきり定まらないことがあるので、
    「こんなのは、数学じゃない。こんなのではない数学の問題を解きたい」
    という気持ちが強くなってしまう子もいます。
    しかし、数学は、高度なものになればなるほど、文字ばかりです。
    計算すら正しくできないのは論外だが、計算だけ出来ても仕方ない。
    そういうふうになっていきます。
    そこへの気持ちの切り替えがまず必要です。

    とはいえ、ギリシャ文字は、普段使わない文字なので、その違和感は理解できます。
    書き慣れていないので、書きにくいですし。
    ω は小文字で、大文字は Ω です。
    Ω は、「オームの法則」で有名な、電気抵抗の単位を表す記号です。
    この説明をすると、高校生の顔が微妙に和らいだりします。
    Ω は許容範囲なのでしょう。
    要するに、慣れの問題なのだと思います。

    さて、本題。
    x^3=1 の虚数解の1つが ω です。

    ところが、ω=1であるという誤解をして、上の問題を異様に簡単に解いている子がいました。
    (1) ω^12+ω^6+1=1+1+1=3
    (2) ω^10+ω^5+1=1+1+1=3
    (3) ω^7+ω^8=1+1=2

    というふうに単純に解いていました。
    これ、解き方は間違っているのですが、実は、答だけなら、(1)は正解です。
    そのことが、その子の誤解をさらに深めてしまったのかもしれません。
    たまたま答が当たっていたことで、
    「何だやっぱり自分のやり方で正しいんじゃないか」
    と自信をもってしまったのでしょう。
    わざわざ面倒なことをしなくても、ω=1を代入すれば正解が出ると誤解したのだと思います。
    そうするうちに、「虚数解」という言葉は吹き飛び、1の3乗根 ω=1、という誤解が固まったのでしょう。

    その子は、ものごとをひどく単純化してしまう癖がありました。
    複雑なものごとをまるっと丸めてしまうのです。
    そんなに簡単にできるのならば、最初から簡単に説明します。
    そうはいかないから、こうして複雑なままなのですよ?
    そう話すと、にこにこ笑ってやり過ごす。
    またその次には、まるっと丸めて、誤答。
    そういうことを繰り返してしまう子でした。

    しっかり教えたはずなのに。
    授業中は正解していたのに。
    学校でも授業を受けているはずなのに。
    宿題は、全て、ω=1で解いて、大半は不正解となっていました。

    多くのことを勝手にまるっと丸めてしまう子は、こういうことの繰り返しです。
    一歩進んで、三歩後退。
    そして、次の授業で二歩前進。
    さらに次の授業でやっと一歩前進。
    習得まで、他の子の3倍の時間と手間がかかります。


    ω は、1の3乗根のうちの、虚数解です。
    ω といういう文字で表していますが、虚数単位 i を用いて表すことも可能です。
    試しに、3次方程式として、解いてみましょう。

    x^3=1
    x^3-1=0
    因数分解の公式を使えます。
    (x-1)(x^2+x+1)=0
    x^2+x+1=0 のとき、
    x=-1±√1-4 /2
     =-1±√3i /2
    共役な2つの複素数の解が得られました。

    え?それのどっちが ω なの?
    と高校生に質問されることがあるんですが、結論としては「それはどっちでもいい」となります。
    ここも高校生には理解しづらいところのようです。
    どっちでもいいわけないだろうと思うらしいのです。
    でも、本当にどっちでもいいのです。
    解答に影響しないのです。
    上の問題では、x^3=1の複素数の解の1つを ω とする、としてあるだけです。
    どちらと限定していません。
    それは、どちらでも同じ結果が得られるからです。

    ω=-1+√3i /2 としてみましょう。
    ω^2=(-1+√3i /2)^2
      =1-2√3i+√3^2i^2 /4
      =1-2√3i-3 /4
      =-2-2√3i /4
      =-1-√3i /2
    お?
    ω^2 は、ω と共役の複素数、-1-√3i /2 となりました

    今度は、ω=-1-√3i /2 としてみましょう。
    ω^2=(-1-√3i /2)^2
      =1+2√3i+√3^2i^2 /4
      =1+2√3i-3 /4
      =-2+2√3i /4
      =-1+√3i /2
    あ。
    やはり、ω^2 は、ω と共役の複素数、-1+√3i /2 となりました。
    つまり、ω が1の3乗根ならば、ω^2 も1の3乗根なのです。

    なぜω^2 にそんなこだわって説明しているか?
    上のx^3=1に戻って考えましょう。
    x3-1=0
    (x-1)(x^2+x+1)=0
    でした。
    x-1=0 のとき、x=1。
    これは、1の3乗根の1つが1であることを表します。
    そして、もう1つの( )の中身、すなわち、X^2+x+1=0 の解 が、x^3=1の虚数解 ω です。
    すなわち、x=ω を代入すると、
    ω^2+ω+1=0
    この式は、ω^2 と ω を入れ替えても、関係は変わりません。
    どちらがどちらでも、同じことなのです。
    そして、上のような問題を解くときに、この式は使い道が多いのです。

    ここまでのところをまとめます。
    ω は1の3乗根ですから、
    ω^3=1 です。
    そして、
    ω^2+ω+1=0
    この2つのことを使って、問題を解いていきます。

    (1) ω^12+ω^6+1の値。
    ω^3=1ですから、
    ω^12+ω^6+1
    =(ω^3)^4+(ω^3)^2+1
    =1+1+1
    =3

    (2) ω^10+ω^5+1の値。
    ω^10+ω^5+1
    =(ω^3)^3・ω+ω^3・ω^2+1
    =ω+ω^2+1
    =0

    (3) ω^7+ω^8 の値。
    ω^7+ω^8
    =(ω^3)^2・ω+(ω^3)^2・ω^2
    =ω+ω^2

    うん?
    これは、これで終わり?
    いいえ。
    ω^2+ω+1=0 より
    ω^2+ω=-1
    よって、
    ω^7+ω^8=-1 
    です。

    ω がどちらの虚数解であるかは、やはり何も影響しませんでした。
    ω に関する問題は、このような知識を利用するだけの問題。
    わかってみれば得点源です
    もしもテスト中に忘れたら、x^3=1 を自分で解き直せば、ω^2+ω+1=0の式は復元できます。

      


  • Posted by セギ at 13:06Comments(0)算数・数学

    2023年10月04日

    小数のわり算から読み取れる数学力。


    小学生の算数の習熟度を見る1つの目安に、小数のわり算があります。
    もちろん、筆算の必要な小数のわり算です。
    多くのご家庭では、子どもに算数のことを質問されてから教えます。
    「子どもの勉強を見ること」=「わからないところを教える」
    になりがちです。
    そして、たいてい、子どもの質問は文章題です。
    しかし、そもそも計算が上手くできていないということがありえます。
    子どもは、計算問題については親に質問しません。
    答が間違っていても、計算ミスをしただけだろうと、親も子どもも思ってしまいます。

    文章題も心配だとは思いますが、まずは、子どもが計算している様子をじっくり見てあげてください。
    とんでもないことが起きている可能性があります。

    例題 11.985÷1.7 を計算しなさい。

    ただ計算しなさいとだけ書いてある場合は、これは、割り切れるのでしょう。
    割り切れるまで、割り進めます。

    小数点を移動させることは、たいていの子どもは覚えています。
    ただ、その意味は、理解していないかもしれません。
    わり算は、わる数とわられる数の両方を10倍しても、商、すなわちわり算の答は変わりません。
    例えば、
    10÷5=2
    100÷50=2
    1000÷500=2
    また、逆に、わる数とわられる数の両方を10分の1にしても、商は変わりません。
    1÷0.5=2

    こうした性質を利用して、わり算の筆算を行います。
    11.985÷1.7の商と、119.85÷17の商は同じです。
    そのことを利用して、わり算の筆算を行います。

    ここまでは、まずクリアできたとして。

    私が教えてきた生徒の中で、一番困った状態だった子は、筆算のわる数とわられる数を逆に書いてしまう子でした。
    119.85÷17 の場合に、119.8を左端に書き、わり算の「がんだれ」のようなものの中に、17を書いてしまうのでした。

    おそらく、わり算の筆算を最初に学習した頃は、正しく書くことができたのだと思うのです。
    多分、ノートをきれいに書くことを優先してしまったのでしょう。
    算数のノートは、左端から詰めて書いていきたい。
    だったら、わる数から書いたほうがいい。
    最初は、そうやって自分なりの工夫でやっていたことが、そのうちに、どちらをどちらに書くか、わからなくなってしまった・・・。
    そういうことのようでした。

    ノートを左端から詰めて書いていくことなんて、どうでもいいことなのに・・・。
    式に書いてある順番通りに、わり算の「がんだれ」の中にわられる数を書いていくことを常に優先していたら、こんな混乱は起こらなかったのに。
    本人の記憶では、わられる数のほうを左端に書くことになっていたはずのようで、それは間違いだと言われて混乱し、頭の中でその折り合いがつかない様子でした。
    そのようなことも後々起こりえますから、子どもがわり算の筆算をしている様子は、ときどき見て、何か不自然なことをしていたら助言したほうがいいと思います。
    算数・数学が後々苦手になる子ほど、不自然な「本人なりの工夫」をすることがあります。
    優先するべきことが違うのです。

    さて、筆算の準備は正しくできたとして。
    次に、どこに商が立つかを理解できること。
    1の中に、17は1つもない。
    11の中に、17は、1つもない。
    119の中に、17は、いくつかある。
    よし、9の上に数字が立つぞ!

    しかし、わり算の筆算の最大の課題は、商の数字がなかなか立てられないことでしょう。
    スパンと一度で「7」が立つと気持ちいいですが、「9」から立て始めて、消して、「8」を立てて、消して、それで不安になって、「6」を立ててしまう不器用な子、案外多いです。
    商の立て方が余程わからなかったのか、どのわり算でもまず「5」を立てて、そこから1ずつ上げたり下げたりして調整している小学生を見たこともあります。

    必要なのは、17×1ケタのかけ算の暗算をする能力。
    その技を伝達しなければなりません。

    17×〇のかけ算の場合、7がかなり大きい数なので、繰り上がりで、上の桁に大きい数が上がってきます。
    そのことを考えあわせていく力が必要となります。
    そして、それができない子が、現実には多いのです。
    17×いくつが、119に限りなく近くなるのか?
    17×7=119 です。
    これがスパンと暗算で求められると、わり算は速くなり、そして楽しくなります。

    次に、正確にひき算をする能力。
    今回は簡単ですが、くり下がりのあるひき算が難しいこともあります。
    ミスをしやすいところです。

    そして、もう一度、次のケタの商を立てましょう。
    この作業を忘れていて、1回で終わらせてしまう子を見たこともあります。
    わり算は一度で終わると誤解していて、その後、どうしたらいいのか、わからなくなってしまっていました。

    さて、連続して商を立てるということは理解していたとして。
    この問題は、難しいです。

          7. 
    1.7 ) 11.985
        119

    このひき算で、余りは、桁を無視すれば、85・・・。
    ここで、8の上に「0」の商を立てられない子は、多いです。
    8の中に17はないので、0を立てる。
    そして、85の中に17はいくつかあるから、5の上に何か商を立てる。
    そのことを理解していないのです。
    理屈を理解していないので、注意されたときは「0」を立てるけれど、次のときにはまた忘れてしまう・・・。
    作業手順で筆算しているだけで、意味を理解して筆算していないので、そういうことになってしまうのだと思うのです。
    そうかと思うと、関係ないときに「0」を立てたりもします。
    手順の簡略化にばかり意識がいっているので、おかしなことをやり始めます。
    桁に関する感覚が育っていないのかもしれません。
    「8の中に17はないので、0を立てる」
    こうした作業を丁寧にやっていくことができない様子です。

    8の上に0を立てて。
    そして、85の中に17は5個あるので、5の上の5を立てる。
    よし、答が出ました。
    11.985÷1.7=7.05 です。


    さて、さらに難しくなります。

    例題 11.986÷1.7 の商を四捨五入して10分の1の位まで求めなさい。

    これは、わり切れないわり算です。
    「商を四捨五入して10分の1の位まで求めなさい」が重要。
    計算力だけでなく「問題文を読む力」が問われることになります。
    そもそも、そうした問題文の指示を読んでいないので、間違える子。
    あるいは、読んでいるけれど、意味がわからない子。

    どこで、筆算をやめたらいいのか?
    「四捨五入して10分の1の位まで求めなさい」
    とあるのですから、100分の1の位まで求めて、そこで四捨五入します。
    そのことを、きちんと意味から理解している子は、2度と忘れないし、以後は自力で解いていけます。
    しかし、作業手順で覚えようとする子は、しばらくやっていないとすぐ忘れます。
    なぜ、この問題文の意味が理解できないのかは、大人にはそれこそ「理解不能」ということもあります。
    なぜ、こんな簡単なことの意味が理解できないのか?

    本当に理解できない場合は少ないです。
    ただ、算数を「理解」する習慣がない子もいます。
    低学年の頃から、作業手順の丸暗記で済ませてきたので、算数を「理解する」ということを、そもそもやったことがないし、どうすればいいのか、わからない。
    今は、こういう子が多いように感じます。

    なぜ、そうなってしまうのか?
    なぜ、理解しないで、手順を覚える方向に逃げてしまうのか?
    教えると、
    「あ、わかったわかった」
    と慌てて理解したふりをする子もいます。
    しかし、作業手順を思い出しただけなのです。
    そのまま、中学生になり、高校生になると、数学は全くわからなくなります。
    高校数学の「作業手順」は、複雑です。
    高校生になっても、作業手順でやっていけると思い込み、しかも複雑な作業を簡略化しようとするので、まるで小学生が高校数学を見よう見真似で解いているように見えてしまう子もいます。
    仕方のないことですが、そうした子の答案は頓珍漢で、加点要素がありません。
    そうした子も、理解力がないわけではない。
    ただ、数学を理解する道筋が、高校生になっても見えていないのです。

    何度も書きましたが、「理解」するのは、頭のメモリを沢山使ってしまいます。
    そんなことは無駄なので、作業手順だけ覚えて、テストが終われば忘れてしまう子たちがいます。
    また、ものを考えると、頭が重くなって、つらくなる子たちもいます。
    脳細胞にダメージが与えられている、肉体的な痛みがある、と把握してしまうのです。
    考えることが、肉体的な苦痛なのです。
    だから、深く考えることができません。

    小学校の算数は、手順だけ覚えたほうが楽かもしれません。
    表面的には、理解しても、手順だけ覚えても、結果は変わりません。
    手順だけ覚えたほうが楽だ。
    頭のメモリもそんなに使わずに済む。
    そうやって、低学年のうちに横道にそれてしまったのだろうと、私は想像します。

    頭の回転がある意味速くて、小学校の算数をなめてしまった子。
    あるいは、ものを考えるのが苦手で、わかったふりをするしかなくて、手順を覚えることで済ませてきた子。
    どちらの場合もあるのだろうと思います。

    ただ、何がどうであろうと考える方向に進む子もいます。
    斜め読みでも立式できるような簡単な文章題でも、文字が書いてある限り、それをしっかり読まずにいられない子。
    読まないで解くという発想がない。
    「手順だけ覚える」と考えたことがない。
    「わり算は、問題文の大きい数を小さい数でわればいい」といった、子どもが発見してしまいがちな誤った手順に対し、
    「そんな薄気味悪いことはできない。意味のわからないことはできない」
    と踏みとどまれる子も、また多いのです。

    11.986÷1.7 の商を四捨五入して10分の1の位まで求めなさい。
    この計算は、7.05・・・まで求め、5を四捨五入します。
    答は、7.1です。


    さて、次の問題。
    問題 11.986÷1.7 の商を100分の1の位まで求め、あまりも答えなさい。

    問題の意味が理解できても、ここで、あまりの小数点はどこでしょう?
    計算を簡単にするために、小数点を移動して筆算しますが、実際の計算は、あくまでも、11.986÷1.7です。
    あまりまで、10倍するわけにはいきません。
    したがって、あまりに関しては、元の小数点が復活します。

    答は、7.05あまり0.001 です。

    小数のわり算は、奥深い。
    計算している様子を見ているだけで、その子の課題が見えてきます。

    小学生のうちに課題に気づくことは意味のあることです。
    作業手順でない算数・数学の解き方とは、何をどうすることなのか?
    生まれてから1度もやったことのないことに挑戦することになります。
    考えるとは何をどうすることなのか?
    それがわからない・・・。
    何をどうすることかわかりかけても、頭が重くなってつらくて、脳細胞が潰れそうな気がするので、考えることをすぐやめてしまう・・・。

    そうした課題が見えてきたときに、その子を支え、励ます力が必要になります。
    一人では、多分、乗り越えられないと思うのです。


      


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