2017年09月27日
2次不等式の解法。
今日は2次不等式の話。
例えば、こんな問題です。
問題 x2-3x+2≧0 を解け。
実際に解くときには簡略化して、作業手順だけの解き方になりますが、ここではじっくり考えてみましょう。
まずは左辺を2次関数とします。
y=x2-3x+2
この放物線はx軸とどのように交わるでしょうか。
y=0を代入してみましょう。
x2-3x+2=0
(x-1)(x-2)=0
x=1,2
よって、上の放物線は、x軸と点(1,0)、(2,0)で交わるとわかります。
x軸と2点で交わる下に凸の放物線をイメージしてください。
ここで、不等式x2-3x+2≧0に戻りましょう。
この不等式の解の範囲は、放物線で、x軸上とそれより上の部分ということになりますね。
ここで「え?」「え?」となってしまう高校生は多いです。
x2-3x+2の値というのは、yの値なのであるということが頭の中で上手く繋がらないのかもしれません。
y=x2-3x+2
としたのですから、x2-3x+2の値はyの値です。
したがって上の不等式は、放物線で y≧0の部分ということになります。
xについて解く練習ばかりしてきたせいか、x2-3x+2という式自体が何かの値を表しているということがピンとこない子は多いです。
それがyとイコールであることも、頭の中で上手くつながりません。
y=x2-3x+2
と書いてあるんだから、そうでしょう?
と説明しても、ポカンとしています。
「え?じゃあ、x≧0が解?」
と高校生に質問されて、ぎょっとしたりするのですが、そういうことではありません。
y≧0の部分のxの範囲が解です。
では、どの部分かというと、x軸で点(1,0)、(2,0)で交わっているのですから、x座標でいうと、1以下の部分と2以上の部分で、放物線はx軸上とそれより上となります。
よって、解は、
x≦1,2≦x
となります。
x軸上とそれより上の部分の放物線の各点のx座標が、この不等式の解です。
このことを理解してもらうためにはかなり根気よく説明しなければなりません。
ここでは、実際に放物線を用いて説明していないからわかりにくいという面もありますが、放物線を用い、わかりやすいテキストを見ながら解説しても、上手く理解できない子もいます。
「学校でやったけど、意味がわからなかった」
と相談を受けることが多い箇所です。
中学生のときに関数と座標平面について確かな感覚を養ってこなかった子は、放物線上のそれぞれの点にx座標とy座標があることが曖昧なのかもしれません。
x座標やy座標を活用するタイプの問題に弱い傾向があります。
放物線は点が上下に動いているように見えるので、上下の方向、すなわちy座標のことしか考えられなくなるのでしょうか。
放物線上の点には、x座標とy座標があります。
y≧0 である範囲の放物線上の点の、x座標が解なのです。
それをx軸上に落として説明しているテキストは多いです。
しかし、x座標で考えることができない子は多いです。
中学の間は、関数と方程式は、ほとんどつながりがありません。
唯一、中2の「1次関数」で、「連立方程式のグラフによる解法」という内容を扱います。
その際に、
「関数をやってたはずなのに、急に連立方程式の話になるから、意味わかんない」
と愚痴を言う中学生がいます。
「連立方程式なんて計算で解けばいいのに、それをグラフで何かぐちゃぐちゃやっているから、意味がわからない」
というのです。
その「グラフで何かぐちゃぐちゃ」が、実は大切な部分なのですが、問題を解くことに短絡的にはつながりません。
無駄に思えて無視してしまう子は多いです。
数学の各分野でそれを繰り返すうちに、頭の中に残っているのは個々の問題の解き方だけになってしまいます。
海の上に浮かんでいる島だけが見えていて、それが海底で全部つながっていることがわかっていない状態です。
本人の頭の中では、島どうしがつながっていませんから、全て不安定な浮島です。
より高度な内容が入ってきたときに、それでは処理できなくなります。
本当に大切なのは、島ではなく、海底を作る作業でしょう。
今回学習した2次不等式は、最初は理解してもそのうち作業手順だけになりがちなところです。
2次不等式を実際に解くときは、いちいちグラフは描きません。
不等号の向きだけで単純に処理していきます。
そのせいもあって、時間が経つと途中の考え方が頭の中から消えていきます。
海底が消え、浮島だけが残ってしまいます。
なぜそれで解けるのか、わからなくなります。
そうして、わからなくなっていることに、ある日突然、自分で気がつき、不安になります。
そうなってから、先生に質問します。
しかし、不安を感じながら聞く説明は、もう最初のときほど理解しやすいものではなくなっています。
海底を作る作業は、本当に難しい。
小学生の頃から、ある意味頭の回転が速く、作業を手順化して短絡的に結びつけることに慣れているタイプの子ほど、あっという間に海底が消えていくことがあります。
全ては海底でつながっていることを常に意識して問題を解いていきたいですね。
2017年09月25日
奥高尾、日影沢から大平林道からを歩きました。
2017年9月24日(日)、奥高尾を歩いてきました。
朝、どんより曇っていると、午後から晴れるという予報があっても奥多摩まで足を伸ばす気になれず、今日も奥高尾です。
秋の観光シーズンの始まりでしょう。
高尾駅北口のバス停はいつもより長い行列でした。
高尾駅北口のバス停はいつもより長い行列でした。
小仏行きのバスに乗車。8:52。
2台目のバスで座れることができました。
日影で下車し、支度をして出発。9:15。
金曜日の雨の名残りか、地面は湿っていました。
沢からの冷気も上がってきて、ヒンヤリして歩きやすい道です。
今は、ツリフネソウの花盛り。
上の画像がそれです。
ひと株だけ黄色い花のキツリフネがあるのを毎年楽しみにしていたのですが、林道の舗装工事の影響でなくなってしまったようです。
赤いツリフネソウはそこら中にあり、まるで雑草みたいだから、一緒にされちゃったのかなあ。
黄色い株は、日影沢ではここだけだったのに。
残念です。
林道の柵を越えると、高尾方面の見晴らしがよくなってきます。
伐採したところで地滑りが起きたのらしい山肌が見えました。
ふわあ。
雲が切れ、青空が見えてきました。
電波塔のそびえる明るい空に向かって歩いていきます。
この辺りはいつ歩いてもすがすがしい道です。
小仏城山。10:35。
休日の城山は例によって大賑わいです。
かき氷の旗もまだひらめいていますが、今日は、そんなに体温が上がらなかったので要らないかな。
山歩きに良い季節になってきました。
ツリフネソウが目当てで日影沢を登って来ましたが、さて、これからどこに行こう。
やはり南高尾山稜でしょうか。
名前の通り南面の道なので、この季節にはまだ暑いんですが。
ともかく、高尾方面へと木段を降りて行き、分岐のデッキまで来ました。
「南高尾方面、200m先、ハチの巣の落下の可能性あり。迂回してください」
という掲示があり、入り口に低くロープが張ってありました。
完全に侵入を禁止するのではない微妙な高さのロープです。
注意を促しているだけかな?
途中で問題のハチの巣を避けることができる迂回路があるのかな。
それとも、別の道に迂回しろということかな。
ちょっとわかりにくい情報の示し方ですね。
よくわからないので、もう少し高尾寄りに進んだところから入ろうかと思いましたが、その入り口はもともと狭いうえに丈の高い夏草が生えて、ちょっと入りづらい印象になっていました。
この道は、先ほどの道と合流するのですが、そこは果たしてハチの巣を回避した先なんだろうか。
どうも入っていく気になれず、一丁平へと進みました。
展望台は、今日も富士山は見えず。
雲がわいて、丹沢もよく見えません。
展望台から下っていくと、一丁平の園地。11:20。
切り株の1つに座って、山地図を開きました。
ここから南高尾に行く道があったんじゃなかったかなあ。
高尾の山地図の裏側の、高尾山周辺の詳細図を見ました。
ああ。ありました。
ここは歩いたことがない。
ちょっと興味が湧いてきて、そこを歩いてみることにしました。
一丁平の園地は、小学生が高尾に遠足に来たときにお昼ご飯を食べる場所に使われることが多いところです。
山の中にしては広く平らな場所で、そこに南に向かう明瞭な踏み跡がありました。
踏み跡をたどっていき、あずまやを左に見てさらに進んでいくと、突き当り。
ここは下るほうが正しいだろうと左に道をとりました。
道はどんどん細くなっていき夏草に覆われています。
チョウがたくさん舞っていました。
人が入ってきたので驚いてヒラヒラしています。
あ。ウラギンヒョウモンチョウ。
大きめのチョウですが、三鷹でも見たことがあります。
そして、真っ黒い大きなアゲハチョウ。
これは、高尾の麓のミュージアムで標本になっていたんじゃないかなあ。
レースのような美しいフォルムです。
夏草をかき分けて進んでいくと、ポンと開けて、再び道は広くなりました。
木段も整備されています。
向こうから登ってくる人も現れました。
例によって、甲州街道でバスを降りて登ってきた人たちでしょうか。
そう言えば、今月の『山と渓谷』の別冊付録は、関東近郊バス時刻表。
この昨年度版はとても重宝しました。
今年度版も活躍しそうです。
しかも、来月号は「高尾山」特集だとか。
「山と渓谷」が高尾を特集する?
どんな記事になるのか、今から楽しみです。
道は細くなったり広くなったりを繰り返しますが、雨上がりの湿った土でもそんなに苦労しないで下りていける程度には整備されています。
そして、鉄塔横の広い分岐に出ました。
地図で確認。
ここは大平林道ですね。
右に少し進むと、また分岐があり、「大垂水」の道しるべがありました。
ここから斜面の細い道を降りていくと、甲州街道に出られます。
以前、冬の日にここは歩いたことがあったなあ。
ところで、この大平林道自体はどんな感じの道なんだろう。
南高尾は、また晩秋や冬の日に歩いたら良いので、今日はこの大平林道を歩いてみようかな。
大平林道は、舗装はされていませんが、車が1台通れる道幅の平らな良い道でした。
一般車両は侵入禁止だそうで、結局、車には1台も出会いませんでした。
奥高尾主脈の少し下を巻いていく林道です。
尾根道よりもずっと回り道ですが、人がいない静かな道でした。
斜面をアサギマダラがふわふわと滑空していました。
この渡りチョウは、大きいし模様や色が特徴的なので、遠目にもすぐわかります。
居なくなったと思ったら、また別のアサギマダラ。
これからどこまで旅をするのかなあ。
今日はチョウに縁のある山歩きです。
南面の明るい林道は、誰もいなくても不気味さも寂しさもなく、ただ静かでした。
ところどころの岩肌から水があふれています。
尾根を歩いているときは気がつかないけれど、高尾は水があふれる山。
林道終点。12:15。
山肌から水がしみだし、地面は濡れていました。
そこから道は細くなり、最初に歩く予定だった南高尾山稜への下り道と合流するのでしょう。
「大垂水・東海自然歩道」と道しるべにはありました。
小仏城山から相模湖へ下る道ともつながっているんだなあ。
終点まできて納得したので、来た道を戻りました。
大平林道、楽しい。
水平で楽だし。( ^^)
一丁平から降りてきた分岐のところまで戻ってきました。
道しるべを確認すると、尾根にすぐに合流する「学習の道」は、今、工事中で侵入禁止との掲示がありました。
稲荷山尾根とは合流できるようです。
そちらに向かって、歩きだしました。
伐採工事中で、丸太が積み上げられていたり、重機が置いてあったりしますが、日曜日で工事はお休みの様子です。
たまに人がいて、相手の人も「お?こんなところを人が歩く?」と驚いたような顔をします。
( *´艸`)
高尾山が近づいてくると、ときどき林道は舗装されていました。
さらに進んでいくと、林道終点。
「この先行き止まり」の道しるべがありました。
左方向を示す道しるべに従い、細い道を上がっていきます。
木段で整備されていますが、かなり狭い道でした、
これ下りは嫌だろうなあと思いながら登っていくと、稲荷山尾根の登山道にぽんと出ました。
すぐ右手に木段の上りが見えています。
左手には、六号路琵琶滝コースへの道が。
ここは今日も侵入禁止でロープが張られてありました。
落石事故の点検、いつ終わるのかなあ。
落石事故の点検、いつ終わるのかなあ。
ベンチに座って休憩。13:55。
大平林道は、座って休憩するポイントがないのが唯一の難点。
ここでようやくお昼ご飯にしました。
上からどんどん人が下りてきます。
登ってくる人もどんどんいます。
稲荷山尾根は大賑わい。
先程の静けさとのギャップに驚くばかりです。
おにぎりを2つ食べ、ポットに詰めてきた冷たいお茶をのんびり飲んで、さて下山します。
2週間前も歩いた稲荷山尾根。
本当にこの道は歩きやすくなりました。
高尾山口。15:40。
2017年09月22日
2次方程式の解と係数。
2次方程式 ax2+bx+c=0 の2つの解をα、βとすると、
α+β=-b/a , αβ=c/a
これが「2次方程式の解と係数の関係」と呼ばれるものです。
非常に単純なことであるにも関わらず、全く理解できない子や、そのときは理解してもすぐ忘れてしまい活用できない子の多いところです。
何がいけないのだろうと考えるに、まず「α」「β」という文字遣いがいけないのでしょうか。
もっと親しみやすい文字だったら、もう少しとっつきやすいのかもしれません。
α(アルファ)やβ(ベータ)はギリシャ文字です。
数学では他にギリシャ文字のɤ(ガンマ)、ω(オメガ)、θ(シータ)、Σ(シグマ)などを良く使います。
「何でそんなの使うの!余計にわからなくなる」
と頭の硬いタイプの子は不平を言いいます。
でも、種類の異なる事柄を語る際には、アルファベットとは種類の異なる文字を使ったほうが、むしろわかりやすいと思います。
ギリシャ文字を使うのは、これが初めてのわけでもありません。
中学1年生から馴染んでいる円周率π(パイ)。
あれも、ギリシャ文字です。
なぜπにはあまり抵抗感を抱かないのでしょう。
こんな文字は使いたくないと怒りだす中学生は見たことがありません。
それは、πがあまりにも便利だから、その喜びに、他のことはどうでもよくなるからでしょうか。
×3.14の計算からこれで解法されるという喜びが、「πって見たことないけど何なの?」という違和感を凌駕するのでしょう。
結局、違和感や抵抗感は、本人の気持ちの問題なのでしょう。
それを数学嫌いの口実に使うのは、自分の将来を狭めるだけで、勿体ないです。
とは言え、テキストに突然ギリシャ文字が表れて、何の説明もなされないとなると、違和感があるのも事実。
仲間内の集まりと聞いていたのに突然知らない人が参加していて、誰も何にも説明してくれないような感じはするでしょうか。
だから、最初に出てきたときに、紹介してあげれば良いのでしょう。
ギリシャ文字のアルファとベータが今後は登場します。
aやbなどの英文字を使っているところに、それとは種類の違う数量を表したいときに使います。
アルファは、上からひと続きで書きます。
ベータの書き順は、下からひと続きです。
お見知りおきを。
これくらいの紹介をするだけで、案外すんなり受け入れてもらえるものなのかもしれません。
さて、本題に戻って。
解と係数の関係に関する問題を少し解いてみましょう。
問題 2x2+bx+c=0の2つの解が1と3であるとき、b、cの値を求めなさい。
これの地道な解き方としては、x=1、x=3をそれぞれ代入して、2本の式を作り、連立方程式として解く方法があります。
x=1を代入すると、
2+b+c=0 ・・・・①
x=3を代入すると、
18+3b+c=0 ・・・②
②-①をすると
16+2b=0
2b=-16
b=-8 ・・・③
③を①に代入して
2-8+c=0
c=6
よって、b=-8、c=6
しかし、以下のように解くこともできます。
x=1,3 である2次方程式の1つは、
(x-1)(x-3)=0 である。
これを展開して、
x2-4x+3=0
全体を2倍して、
2x2-8x+6=0
これは 2x2+bx+c=0 と同じものだから、係数を比較して、
b=-8、c=6
はるかに簡単に同じ答えが出てきました。
x=1,3 が、なんで (x-1)(x-3)=0 になるのかわからないという質問をときどき受けるのですが、これは、2次方程式を解く作業を逆転させていると考えてください。
(x-1)(x-3)=0
と因数分解された2次方程式の解は、x=1,3 ですね。
その逆を行っています。
ここまでくると、一番上で説明した解と係数の関係もわかってきたかと思います。
証明してみましょう。
2次方程式 ax2+bx+c=0 の2つの解をα、βとすると、
(x-α)(x-β)=0 が成り立つ。
これを展開して、
x2-αx-βx+αβ=0
x2-(α+β)x+αβ=0 ・・・・①
ここで、ax2+bx+c=0 の全体を1/a倍すると、
x2+b/ax+c/a=0 ・・・②
①と②は同じものであるから、係数を比較して、
α+β=-b/a 、αβ=c/a
これが、解と係数の関係です。
こんなの何に使うのかというと。
忘れた頃に応用問題でガンガン使うことになります。
どうぞ、お見知りおきを。
2017年09月13日
2次関数。放物線と直線の交点。
放物線と直線の交点に関する問題は、中3の「2乗に比例する関数」でまず学習します。
放物線の式と直線の式とを連立して解けば、交点の座標を求めることができます。
そんなに難しい内容ではないのですが、このことに対する理解は大きく3段階に分かれます。
どうしてそのようにして求められるのか、深く理解している子。
どうしてそのようにして求められるのかはあまり理解できないが、作業手順として覚えている子。
作業手順もなかなか覚えられない子。
作業手順として覚えているのなら正解は出せるのだからまだ良いのではないかという考え方もありますが、深い理解をしていない場合、この知識を座標平面上の図形などの応用問題に活かせないことが多いのです。
応用問題を解く際に、
「とにかく、今求められるものを求めてみよう。その値は絶対使うから」
などと声をかけても、何を求められるのかわからず、ぼんやりしてしまう子は、作業手順だけを覚えてきた子です。
「放物線と直線の式は問題に書いてあるでしょう?だから、交点の座標は求められるよね?」
「え?そうなんですか?」
「そうだよ」
「え?どうやって求めるんですか?」
「・・・・・」
基本問題の作業手順として覚えただけなので、他の場面では使えないのでしょう。
作業手順は、しばらく作業しないでいるとやり方を忘れてしまうのも欠点ですが、使い回しが効かないのが一番残念な点です。
放物線も直線も、それぞれ、同じ性質を持った点の集合です。
その性質とは、その点のx座標とy座標との関係が同じということです。
その関係を表しているのが放物線や直線の式です。
放物線y=2x2上の点は、どの点もそのx座標とy座標は、y=2x2という関係があります。
直線y=-x+3上の点は、どの点もそのx座標とy座標は、y=-x+3という関係があります。
だから、その放物線と直線との交点は、その2つの式の両方の関係を持っています。
2本の式を連立して解けば両方の性質を持っているxとyが出てきます。
交点の座標が求められるのは、そのためです。
こうした説明が深く入っていく様子がないのが、作業手順を覚えることに流れてしまう子の特徴です。
上の説明の何かがわからないということはない様子です。
しかし、上の説明の内容の重要性が理解できない。
深く入っていかない。
他のことと結びつかないのです。
ですから、
「次の放物線と直線の交点を求めなさい」
という基本問題ならば解けるのですが、応用問題の中でそのことを活かしていくことができないのです。
頭の回転は速いのに、何でそうなってしまうのかなあと不思議に感じる子は多いです。
小学生の頃から、「勉強することは作業手順を覚えること」という頭の働かせ方をしてきたのかなあと想像するのですが、確証はありません。
問題 放物線 y=kx2+2x+5 と直線 y=-2x+3 の共有点の個数を求めよ。
これは、高校数学Ⅰの2次関数の問題です。
共有点とは、交点ないし接点ということです。
上の放物線と直線の共通の性質を持っている点ということですから、2本の式を連立して解けばいいですね。
どちらもy= の形ですから、代入法を用いて、
kx2+2x+5=-2x+3
とします。
これは2次方程式ですね。
左辺に集めましょう。
kx2+4x+2=0
これの解が、放物線と直線の共有点のx座標です。
ですから、解が2つあれば、共有点は2個あります。
解が1つならば、共有点は1個です。
解がないならば、共有点はありません。
解の個数が、共有点の個数。
だったら、判別式が使えますね。
上の2次方程式の判別式をDとすると、
D/4=4-k・2=4-2k
4-2k>0とすると、
-2k>-4
k<2
よって、
k<2のとき、共有点2個
k=2のとき、共有点1個
k>2のとき、共有点はない。
これが上の問題の解答となります。
この問題、説明を聞いている間は理解できたはずなのに、時間が経つと、ふっとわからなくなる人がいます。
「あれ?判別式って、放物線とx軸の共有点の個数を判別するものなのに、何で放物線と直線の共有点の個数も判別式でわかるんだろう?直線は斜めになっているのに・・・」
ここでもう一度確認したいのは、判別式というのは「放物線とx軸との共有点の個数を判別するもの」という定義は誤りだということです。
そのために使うことはできるけれど、そのためのものではありません。
判別式は、2次方程式の解の個数を判別するものです。
上の問題では、まず放物線の式と直線の式とを連立して2次方程式を作りました。
その解の個数は、放物線と直線との式との共有点の個数を表します。
だから、判別式を利用して共有点の個数を判別できるのです。
この説明も、深く理解できる子もいれば、もうわからないから作業手順だけ覚えますという子もいます。
作業手順だけ覚えていくには、この先の内容は複雑過ぎるので、何とか少しでも理解を深めてほしいところです。
まだ理解できるはずのところで諦めてしまうと、この先は大変なんですよ。
( ;∀;)
2017年09月11日
倉岳山でゲリラ雷雨にあいました。2017年9月。
center>
2017年9月10日(日)、山梨県大月市の倉岳山を歩いてきました。
この前行ったのが、5年前の2012年11月。
ちょうど紅葉の盛りで、山中が黄色く染まっていました。
今回は、まだ夏の名残りの濃い山歩きです。
中央線鳥沢駅。9:25。
登山姿で電車を降りたのが私1人ということに軽いショックを受け、駅前広場のトイレが工事中で使用できないことにさら大きなショックを受けつつ、出発。
代替トイレの地図は出ていましたが、ちょっと遠いようなのでパスしました。
駅の出口は線路の北側でした。
まずは梁川駅に戻る方向に、甲州街道を歩いていきます。
5年前の記憶でも地図の記載でも、最初の踏切を右折したはずですが、その少し手前に「高畑山」の道しるべと高架下のトンネルがありました。
試しに行ってみることにしました。
トンネルは低く狭く、背をかがめて通過。
舗装はされていますが車の通らない道に出て、こちらの道のほうがストレスがありません。
先程と同じ方向に歩いていくと、ずっと前を歩いていた人と道の突き当たりで遭遇。
やはり、踏切を渡るよりもこちらのほうが近道のようです。
後は「高畑山・倉岳山」の道しるべの通りに歩いていきました。
道しるべがないときは道なりに進みます。
曲がるときには必ず道しるべがありました。
橋を渡り、大きな道路とは別れて、登り坂を行くと集落へ。
ここからの道は入り組んでいましたが、道しるべも豊富でした。
そして、道は柵に突き当たりました。10:00。
柵の右端は開閉でき、人が通れるようになっていました。
そこは貯水池周辺で、舗装はされていないものの車の通れる広い道がしばらく続きます。
陽当たりが良く、草いきれの中の暑い道をとぼとぼ歩いていくと、「熊出没注意」の看板があり、ここから登山道でした。
そこからはずっと沢沿いの木陰の道で、助かりました。
5年ぶりでも記憶に鮮明な、荒れた登山道です。
踏み跡はあるのですが、ここが正規の道なのかなあと不安になる道です。
沢にかかる鉄骨4本を並べた橋は、1本が少し離れてしまっていて、結果3本分の道となり、ちょっとストレスを感じました。
狭いなあ。
用心して通過しました。
あとは、飛び石で沢を越える箇所がありますが、飛び石1つで越えられる狭く浅い沢ばかりですので、特に問題はありません。
石仏の分岐。10:40。
ここからは斜面につけられた細い道を登っていきます。
夏の終わりだというのに、斜面に草が生えていません。
鹿が食べつくしたのでしょうか。
草のない斜面は地滑りしやすく、以前に来たときよりも道が狭く斜めに傾いているような気がします。
歩きにくい道を用心して歩いていくと、やがて少し道幅は広くなりました。
暑いのでぼんやり歩いていると、目の前の登山道をヘビがすっと通過。
斜面を下っていきました。
体長1メートル以上はある、白っぽい灰色のへびでした。
うわあ・・・・。
安定して歩いていけるようになると、仙人小屋跡。11:30。
昔、仙人と呼ばれた人が住んでいた小屋の、柱だったのかもしれない1つに座って休憩しました。
ここまで誰にも会っていません。
5年前は紅葉の季節ということもあって、前にも後ろにも登山者がいたことなど思い出しつつ、さて出発。
そこから斜面を直登ぎみに上がります。
アキレス腱がよく伸びる坂道を登っていきます。
斜面の上方に、本日初めての登山者の姿が見えました。
急坂に手こずりながら下りてきます。
この山、こんなにきつかったかなあ。
5年前とは季節も違うのですが。
そこから斜面を直登ぎみに上がります。
アキレス腱がよく伸びる坂道を登っていきます。
斜面の上方に、本日初めての登山者の姿が見えました。
急坂に手こずりながら下りてきます。
この山、こんなにきつかったかなあ。
5年前とは季節も違うのですが。
斜面を登りきると、尾根に出ましたが、まだ終わりではありませんでした。
ここから、尾根の登りが続きます。
これもなかなかの急登でした。
ようやく高畑山山頂。12:15。
山頂は賑やかな女の子たちの声が響いていました。
富士山は雲の中。
木陰にレジャーシートを敷いて、大休憩を取りました。
はあ暑かった。
おにぎりを食べていると、女の子たちが出発していきました。
先頭と最後尾に大人の男性がいたので、女子校の山岳部でしょうか。
ほぼお揃いの登山靴でしたし。
部員20人くらいかな。
さて、体温が下がったので、私も出発。12:40。
ここから尾根上を倉岳山へと縦走します。
まずは山頂直下の急な下り。
シモバシラの花が咲き始めていました。
そして色々なキノコ。
違う種類のものを見る度に写真を撮りながら降りていきました。
短いアップダウンを繰り返して、まずは天神山。13:20。
狭い山頂です。
そこからまた登り下りを繰り返し、最後に急な斜面を登っていくと、再び尾根に出ます。
その先が倉岳山山頂でした。13:55。
上の写真が山頂で撮影したものです。
まだ午後2時なのに、周囲が暗くなってきました。
ひらけた山頂なのに、まるで夕方のようです。
これはちょっとまずい。
休憩もそこそこに出発しました。
歩きだして間もなく、周囲の樹木に降りかかる静かな雨の音が聞こえてきました。
葉がさえぎるので、雨粒は落ちてきません。
このくらいなら大丈夫かなと思う間もなく、雨は大粒になり、滝のように降ってきました。
ゲリラ豪雨です。
物凄い雨量でした。
どうする?
雨具を着る?
この季節に雨具を着たって、中から蒸れてびしょ濡れになるのは変わりません。
ツェルトを出して、雨宿りする?
いっそレジャーシートのほうが横からの通気性がいいかもしれません。
そんなことを考えていると、耳元でかけているAMラジオに「ザザッ」と雑音が入りました。
雷だ!
やばいやばいやばい。( ゚Д゚)
まだ稜線がしばらく続きます。
逃げ場はありません。
ザックにカバーだけかけて、走り出しました。
後ろから雷鳴。
ラジオに雑音が走ってから少し間がありました。
まだ遠い。
豪雨は激しさを増し、登山道はたちまち沢となり土が流れ始めました。
稜線上の小さなピークに上がるときは緊張しました。
ラジオからは「ザザッ」という雑音が繰り返されます。
そこから雷鳴が聞こえるまでの時間で、雷は遠いことがわかります。
まだ大丈夫。
落ち着いて。
立野峠。14:20。
ここからようやく稜線を離れ、下りです。
良かった。助かった。
やがて雨も止んできました。
急な下りを下りきると、月尾根沢。
沢沿いに道がつけられています。
登山道に、丸まった状態でも体長10㎝をこえるカエルが何匹も出てきていました。
うおおっ。
沢が下流となり、広くなるにつれて、登山道の位置も沢より高くなり、道幅も広くなってきました。
だんだん、遊歩道のように歩きやすくなってきます。
木橋を1つ渡ると沢と離れ、しばらく行くと、民家の屋根が見えてきました。
やがて、樹木が途切れ、舗装された林道に出ました。
登山口に「登山者数を計測しています」というカウンターがありました。
チンと押して、9000番台であることを確認。
いつから数えての数字でしょう。
年間?
林道のアスファルトも雨に濡れていましたが、雨はもう止んでいました。
ゲリラ雷雨でいったんびしょ濡れになったウエアがもう乾き始めています。
さすが速乾素材です。
こういうことがあるから、山の道具とウエアは本物でないとなあ。
梁川駅。16:15。
私より少し早めに到着したらしい人たちが、ちょうどトイレで着替えを済ませ終わったタイミングのようでした。
「着替えないととても電車には乗れないわね」
と話しながら無人改札を抜けていきます。
お風呂に入れるあてのないコースでも着替えをちゃんと持っている。
用意がいいなあ。
感心しながら、生乾きのウエアのまま私は電車に乗りました。16:25。
わあ、東京行きの直通電車です。
最近の電車は冷房がそんなにきつくないので助かりました。
そうでなかったら、山の中では平気でも、電車の中で低体温症になったかもしれません。
やはり雨具は着るべきだったのか。
あの稜線上で?
どうすることが正解だったんでしょうね。
ともあれ無事で良かったです。
2017年09月06日
ヤゴ沢コースから景信山を歩いてきました。2017年9月。
2017年9月3日(日)、ヤゴ沢コースから景信山を歩いてきました。
高尾駅北口からバスに乗車。
2台同時発車でしたが、山歩きにはまだ暑いからか、立っている人はいませんでした。
終点「小仏」下車。9:10。
駐車場で支度をして、出発。
まずは舗装された林道を登っていきます。
景信山東尾根登山口を右に見て、さらに林道を進みます。
舗装が尽きるとすぐ右にヤゴ沢が見えてきました。
小さな滝のようになっています。
ヤゴ沢の左手、沢の右岸に広い登山道が整備されてあります。
ヤゴ沢の左手、沢の右岸に広い登山道が整備されてあります。
登山地図に載っていないのが不思議なくらいの良い道です。
丸太を何本か組んだ小さな橋は何回か渡りますが、飛び石などの危険箇所はありません。
まずは平坦な道を行きます。
沢の冷気を感じる谷底の道はシダが繁茂しています。
ミゾソバやミズヒキも咲いていました。
沢の冷気を感じる谷底の道はシダが繁茂しています。
ミゾソバやミズヒキも咲いていました。
高尾の谷には早い秋が来ているようです。
沢と別れると、道は少し傾斜が出てきました。
トクトクと溢れる清涼な水場を過ぎると、さらに傾斜は強くなります。
限界を越えると道は斜面を九十九折に登り始めました。
ここにも秋の花。
限界を越えると道は斜面を九十九折に登り始めました。
ここにも秋の花。
ヤマホトトギスかな。
ヤマジノホトトギスでしょうか。
樹間に青空が見えてきて、ふっと視界が開けると、景信山直下の四辻にぽんと出ました。
樹間に青空が見えてきて、ふっと視界が開けると、景信山直下の四辻にぽんと出ました。
道しるべの脇でひと息。10:20。
ここからは、景信山への急坂です。
少し前に来たときよりもさらに整備が進み、木段も作られていました。
これなら下りも楽そうです。
下の茶店のベンチは盛況。
そこから階段を数段登って上の茶店に行きます。
そこから階段を数段登って上の茶店に行きます。
2頭の大きな番犬が静かに水を飲む脇を通り、アザミの咲く木段を上がると、景信山山頂です。10:30。
ベンチの1つに座ると、テーブルにバッタが止まっていました。
空には多くのトンボが舞っています。
このトンボたちが街に降りる頃には本当に秋が来ますね。
まだ時間は早いですが、今日は足慣らしなので、もう戻ります。
下りは、やはりかなり歩きやすくなっていました。
たたらを踏んでしまうことなく降りていけます。
たたらを踏んでしまうことなく降りていけます。
四辻まで戻り、さて小仏城山へ。
ちょっと歩きにくい下り坂と平坦な道が繰り返されます。
最後に大きく下ると小仏峠。
最後に大きく下ると小仏峠。
そこから急な登り返しでひと汗かくと、相模湖の見渡せるベンチに出ます。
広く平坦な道がしばらく続きます。
秋の紅葉の頃のこの辺りは特に印象深いので奥高尾の中でも好きな道です。
木段を上がり、さらに木の根の段差の道を上がっていきます。
秋の紅葉の頃のこの辺りは特に印象深いので奥高尾の中でも好きな道です。
木段を上がり、さらに木の根の段差の道を上がっていきます。
浅間峠から縦走してくるときなどは絶望的に疲れを感じるあたりですが、今日はまだ歩いている距離が短いので、楽に登り切りました。
電波塔が見えてきて、小仏城山。11:45。
ちょうどお昼どきで、ここの茶店も大繁盛でした。
城山からはよく整備された木段の道です。
あれ?
赤いバイクが2台停まっている。
赤いバイクが2台停まっている。
近寄ってみると、消防署のバイクでした。
何かあったのかな。
さらに行くと、一丁平の展望台ベンチの周囲にロープが張られてありました。
「ハチ注意」の掲示も。
スズメバチがベンチの後ろの木に巣を作ったのでしょう。
幸いハチの姿はありませんでした。
以前、奥多摩を歩いていたときに、ふっと目の前を黄色く大きいハチが横切ったことがあります。
あの黄色は、何というかプラスチックみたいな質感で、びっくりしますね。
一丁平展望台。
やはり富士山は雲の中でした。
まだ疲れを感じないので、紅葉台にも登ることにしました。
緑が深く、木段の幅が少し狭くなっています。
紅葉台。12:45。
紅葉台。12:45。
この季節に紅葉台をわざわざ経由する人も少ないのか、ベンチは空いていました。
少し休憩。
さすがに高尾山は巻き、トイレ前の分岐を右へ。
少し休憩。
さすがに高尾山は巻き、トイレ前の分岐を右へ。
今日も6号路琵琶滝コースを下山しようとベンチまで行くと、「落石事故のため6号路は通行止め」という掲示がありました。
わあ、どの辺りで落石があったんだろう。
ベンチの先の木段は、工事現場にあるようなオレンジ色と黒で縞々に塗られた通行止めの柵が設置され、ロープが張られてありました。
暑いから、沢沿いの琵琶滝コースを歩きたかったのですが、これは仕方ないですね。
5号路で高尾山の直下まで戻り、稲荷山尾根を下ることにしました。
このコースに迂回する人が多いからか、人が多いです。
谷を挟んで左側からサイレンが聞こえてきました。
谷を挟んで左側からサイレンが聞こえてきました。
1号路を救急車が登っていくようです。
病人かなあ。
暑いからなあ。
セミの声の中、稲荷山尾根を下ります。
ミンミンゼミとツクツクホウシ。
くらくらするくらいに鳴いています。
高尾の尾根はまだ夏の名残が濃いですね。
高尾の尾根はまだ夏の名残が濃いですね。
広い登山道を追い抜いたり追い抜かれたりして、下山。14:20。
ケーブルカーの駅からは、
「下り乗客多数につき、ケーブルカーは折り返しすぐ発車いたします」
というアナウンスが流れていました。
高尾は今日も盛況でした。
はあ、暑かった。
2017年09月01日
判別式とは何か。

画像は、数年前に訪れた朝日連峰に咲いていたトモエシオガマ。
今年の夏は全く山に行けなかったですが、また何日もかかる大きな山を歩きたいなあ。
さて、本日は判別式の話です。
判別式は、2次方程式の解の公式の√ の中身の部分です。
すなわち、2次方程式 ax2+bx+c=0 の判別式Dは、
D=b2-4ac
bが偶数である場合は、もう1本の解の公式の√ の中身を使います。
4/D=(-b')2-ac
これらの判別式、何を判別するのかというと、この2次方程式の実数解の個数を判別します。
2次方程式の解の公式を確認しましょう。
x=-b±√b2-4ac /2a ですね。
もしも、√ の中身が0であるなら、この解は、
x=-b/2a±√0
=-b/2a
となってしまいます。
すなわち、これが重解。
解が1つの場合です。
√ の中身が負の数の場合はどうでしょうか。
2乗して負の数になる数は、実数の中には存在しません。
例えば、√-2 などの数は、実数には存在しませんね。
だから、この2次方程式の実数解はないということになります。
√ の中身が正の数の場合は、普通に、解は2個存在します。
このように、√ の中身が0か、0未満か、0より大きいかで、解の個数が判別できます。
そこで、√ の中身の部分を判別式と呼んでいるのです。
まとめると、
D>0のとき、実数解2個
D=0のとき、実数解1個
D<0のとき、実数解はない
実数解の個数なんて、方程式を解けばわかることなのに、こんなの何に使うんだろう。
判別式を初めて学習し、解の個数を判別するだけの基本問題を解いているとき、高校生は、そんなふうに感じてしまうことがあるようです。
ひどく無意味なことをやらされている気がするのでしょうね。
しかし、基礎訓練に意味を求めても仕方ないのです。
教えられたことを理解しているかどうかの確認をしているだけですから。
判別式は、2次方程式を解いている間は、さほど意味をなさないものです。
問題は、ここから。
2次関数と2次方程式との関係をまず考えてみましょう。
ax2+bx+c=0
という2次方程式は、
y=ax2+bx+c
という2次関数のy=0のとき、と考えることができます。
y=0とは、どんなときでしょうか。
それは、座標平面で言うなら、x軸上にあるとき、ということです。
すなわち、2次方程式 ax2+bx+c=0 の解とは、
2次関数 y=ax2+bx+c とx軸との交点のx座標であるということができます。
ここで、数学が苦手な高校生の反応は例によって、
「言っていることが全くわからない」
か、
「言っていることが当たり前すぎて、何にも刺さらない。だから、何?」
となりがちです。
そして、このことの重大さが理解できず、何となく通り過ぎた先に、これが大切なことだと認識できなかったために理解できなくなる多くのことが立ちはだかるのです。
もう一度書きます。
2次方程式 ax2+bx+c=0 の解とは、
2次関数 y=ax2+bx+c とx軸との交点のx座標です。
ここで、「え?」「え?」「え?」となってしまう人の中には、y=0の点はy軸上にあるという誤解をしている子もいます。
こういう誤解はしつこく本人を苦しめるようで、そのときは理解しても、また何度でも混乱が起こります。
一度間違えて覚えてしまったことはなかなか消えず、どちらが正しかったか、またわからなくなるようなのです。
その度、そういう誤解をしているのではないかと察して補足説明をしてあげると、その先に進むことができます。
「x軸との交点」とか「x座標」という言葉遣いがわかりづらくて苦手という子もいるようです。
これらは一度きちんと定義されていますので、この用語を使うからこそ内容が正確に伝達できるものなのですが、その定義をきちんと覚えなかった子にとっては、難しい用語ばかり使われるのでわからない、となるようです。
中学3年生に乗法公式の授業をしていたあるとき、その子が、
「先生、この式もほぐすんですが?」
と訊いてきたことがあります。
「ほぐす?」
「だから、ほら」
「・・・・ほぐすって?」
「ええと、どういうんでしたっけ」
「・・・・展開するということですか?」
「そうそう、それ」
「・・・・ほぐすでは、伝わらないですよ」
「えー。どうしてですか。感じが出ていませんか」
「ニュアンスで数学を語っても、他人には伝わりませんよ」
私は意地悪で理解しなかったのではなく、その子が何を言っているのか、本当にわからなかったのです。
自分だけが理解できる表現で伝えても、他人には伝わりません。
特に数学のように、緻密な内容を正確に伝えなければならないとき、自分だけが理解できる表現で伝えるのは無理があります。
だから正確に定義された用語が必要となります。
しかし、中高生は、まだ主観的な感覚から客観的な感覚へと脱却する途中にある子が多く、正確に定義された用語をむしろ嫌うのかもしれません。
先人が正確に定義した用語よりも、自分の感覚で作った表現のほうが好ましいのでしょうか。
これは英語の例になりますが、文法を学習していて、
「これは知覚動詞だから、SVOCのCは原形不定詞か分詞になるでしょう。だから、この四択問題は、原形が正解なんですよ」
といった説明をしていたところ、生徒が目を白黒させていたので、
「うん?わからない?どこからわからない?」
と質問しますと、
「いや、時間をかければわかるんですけど、『チカクドウシ』と聞くと、他の字が頭の中に浮かぶんです」
「・・・・どんな?」
「地殻変動の地殻とか・・・」
「・・・・今、地殻変動の話はしていないと思いますが」
「わかっているけど、浮かぶんです」
「・・・・・」
英語が得意な子には「これは知覚動詞だから」まで説明すれば一瞬で通じることが、苦手な子には「知覚動詞」という用語がむしろ障壁になることがあるのかもしれません。
用語の定義を覚えられない。
頭の中で漢字変換すらできず、混乱する。
それはわかるんですが、だからといって、書店などで売られている「こうすれば英文法がスラスラわかる」的な本に、
「僕は、この動詞を『感じる動詞』と呼ぶことにしています」
などと書いてあると、むしろ、あなたのくだらない造語を私に押し付けるのは勘弁してくれと思うのです。
そんな使いまわしの効かない言葉を覚えるくらいなら、まっすぐ「知覚動詞」という言葉を覚えるほうが近道です。
どの文法書にもその言葉は使ってあり、それで説明してあるのですから。
それがわかるほうが有益でしょう。
わかりやすく説明することとくだらない迎合とは別のことだと思うのです。
とっつきにくく感じるからといって正しい用語を全て馴染みやすい別の言葉に言い換えていたら、定義がブレて、正しい知識の伝達ができなくなる可能性があります。
「知覚動詞」と言うだけで、それが何を意味するか共通の認識が持てます。
だから、正確な説明ができます。
専門用語は無駄に使っているわけではなく、必要だから使っているということが、主観的な子たちにはなかなか理解できないことなのかもしれません。
必要性がわからないから、覚える気がしないという側面もあるのでしょう。
専門用語は使うけれど、意味がわかっていないようなら逐一定義に戻る。
そうやって授業をしています。
それも個別指導の良いところでしょう。