たまりば

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2024年03月06日

考えて問題を解く習慣のない子。

考えて問題を解く習慣のない子。

画像は、ユキワリイチゲ。都立神代植物公園多様性センターにて。

さて、まずは、こんな問題から。
これは、受験算数の問題です。単元は、「倍数と約数」。

問題 5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数で、1000にもっとも近い数を求めなさい。

さて、これは、どう解きましょうか?
割り切れないし、あまりも一致していません。
倍数の問題の中では、難しい問題です。
「いきなり、1000にもっとも近い数を求めるのは難しいですね。1000に近くなくていいから、小さい数で、5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数を1つ、探してみましょうか」
と私が言う間もなく、その子は、即答しました。
「88!」

・・・88?

確かに、5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数です。

「・・・どうやって求めましたか?」
「5+3=8で、7+4=11で、8×11=88!」
「・・・・はい?」

・・・何だ、その求め方・・・。
そんな裏技、あるの?
聞いたことがないし、意味がわからない・・・。


この求め方は、正しいのでしょうか?
問題を少し変えてみましょう。
5で割ると4あまり、7で割ると2あまる数、だとしたら?
5+4=9
7+2=9
9×9=81
・・・いや、そんな数、5で割ると4あまる数でも、7で割ると2あまる数でもありません。
つまり、この求め方はでたらめです。
上の88は、偶然当てはまっただけなのでした。

あー、びっくりした。

「・・・もっと、地道に探しましょう。5と7なら、7のほうがすぐ大きくなって探しやすいので、7で割ると4あまる数を基準に、1つ1つ見ていきましょう。7で割ると4あまる数で、一番小さい数は?」
「11!」
「・・・うん。まあ、いいでしょう」
4もそうですが、今はそれは考えなくてもいいので、今回は、割愛。
「11は、5で割ると3あまる数ですか?」
「ちがうー」
「そうですね。では、11の次の、7で割ると4あまる数は?」
「18!」
「はい。そうですよね。そして、その18は、5で割ると3あまる数ですか?」
「あ。わかった!」
「・・・何が?」
「ぶー」

その子は、自分のノートに何やら計算を始めました。
しばらくして、
「わかった!答は、1800!」
「・・・どういう計算をしたんですか?」
「18×1000で1800!」
「・・・18×1000は、18000です。18000は、1000に近くないので、絶対正解じゃないですね」
「ぴっぽこぷー」


11の次の、7で割ると4あまる数は、18であると即答したのは、上出来でした。
実は、これを答えられない子も、中学受験生の中にいます。
かけ算の仕組み、割り算とあまりの仕組みが頭の中で構築されていない子は、11の次に7で割ると4あまる数が18であることがわからない。
このほうが、深刻です。

「18は、5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数ですね。見つけましたね。では、18の次の数で、5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数は、何でしょうか」
「ぺぽ?」
「あまりは、このままでいきたいので、これに加える分は、5で割っても、7で割っても割り切れるといいですよね」
「35!」
「はい。35って、何ですか」
「5と7の最小公倍数!」
「そうですね。それなら、5で割っても、7で割っても、35の分は割り切れるので、あまりにズレが生じませんね。18のときのままのあまりでいけます。では、18の次の数で、5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数は、いくつでしょうか」
「わかった!」
「計算する前に、式を言って」
「18×35!」
「何で、かけ算?」
「・・・」

もう一度、ゆっくりと説明しました。
「35なら、5で割っても、7で割っても、35の分は割り切れるので、あまりにズレが生じません。18のときのあまりでいけます。では、18の次の数で、5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数は、いくつでしょうか」
「18+35!」
「そう!計算して!」
「43!」
「繰り上がりミス」
「44?」
「違います」
「53!」
「そうそう。では、53の次に、5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数は、いくつでしょうか」
「53+35!」
「そう。それが?」
「88!」
「そうです」

18 , 53 , 88 , ・・・

「さて、これらの数は、どんな性質の数でしょうか。前の数に35ずつ足しているけれど、35の倍数ではないですね。では、何でしょうか」
「5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数!」
「それはそうなんですが、そこに戻ってもねえ。一歩先に進んだ性質を見つけられませんかね」
「ぶー」
「35で割ると?」
「35で割ると?」
「35で割ると?」
「18あまる数!」
「その通り!素晴らしい!5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数は、35で割ると18あまる数なんですね」
「へえ」

「さて、こういう性質の数。つまり、35で割ると18あまる数で、1000にもっとも近い数は、どうすれば、求めることができるでしょうか」
「イエス・アイ・ドゥー。ノー・アイ・ドーント」
「はい・・・?」
「35×1000!」
「・・・何でかけ算?」

授業はここで少し停滞。
私は、その子が通う集団指導塾のテキストを開きました。
「・・・やっぱり、載っていますよね。基本問題に。『8で割ると3あまる数のなかで、1000にもっとも近い数は何ですか』 この問題はもう解いたんでしょう?これと、考え方は同じですよ」
「・・・」
「基本問題は、ただ解いただけじゃ意味がないんですよ。それは、こなしているだけ。解いたという形だけ作っても、学力は伸びないのよ。そこから使えることを吸収しないと」
その子の目に少し何かのニュアンスが浮かびました。
「・・・1000÷35!」
「おお。いいですね。では、その割り算、やってください」
「こぽこぽー。1000÷35=28あまり20!」
「いいですね。つまり、1000は、35で割ると、20あまる数なんですよ」
「ぷー」
「では、1000に近い数で、35で割ると、18あまる数は、ずばり、いくつでしょうか?」
「・・・」
「・・・無理かな?わからない?」
ようやく、考える表情になりました。
「20-18=2」
「いいね。その2をどうするの?」
「1000-2」
「はい。では、最終解答は?」
「998!」
「正解!」


1問に、こんなに時間がかかるのか・・・と思う方もいらっしゃるでしょうが、解き方の手順をさっさと全部解説しても、別の問題を解く役には立たないのです。
実際、基本問題で解いたことをこの問題で使うという発想が、その子にはありませんでした。
いや、むしろ、考えて算数の問題を解くという発想そのものがない、というほうが正確のような気がしました。
与えられた数字を適当に組み合わせれば正解が出るのではないかと漠然と夢見ているような、そんな解き方をしていました。
適当に式を立てるのならば、割り算は面倒なので、かけ算の式を立ててしまうことが多い。
そこに、意味はないのだと思います。
ただの思いつきなのでしょう。

その子に限りません。
算数・数学の問題を解くときに、「考える」ということをしない子たちは、かなりの割合で存在します。
考えて問題を解いた経験がなく、考えるということが、何をどうすることなのかすら、よくわからないようです。
小学校の算数は、考えるまでもなく、問題を見ればぱっと式を思いつくので、それで済んでいるのでしょう。
小学校のカラーテストはそれでそこそこの点数が取れるので、そのことを反省したり改善したりする必要もないのです。
しかし、中学受験の勉強を始めると、大きな壁が立ちふさがります。
受験算数は、考えて問題を解く必要があります。
思いつきや手順の丸暗記では、上手くいきません。

「・・・今日、2ページ、終わる?」
その子は、私に尋ねました。
集団指導塾から出ている2ページの宿題をここでこなすことが、お母様から要求されている「ノルマ」なのかもしれない、とふと感じました。
「・・・こなすことだけ考えても、仕方ないですよ。ここで2ページ分の問題を全部教わりながら解いても、テストで類題は解けないと思います。実際、今までそうだったのでしょう?ただ問題をこなすだけでは、これから、成績は下がっていくことはあっても、上がることはないんです。それよりも、1題でも2題でも、本当に自分で考えて解けば、その問題の類題は、テストで正解できますよ。成績はそうやって上がっていくんです」
「ばぶー」

それは、不満まじりながら「イエス」の返事であるように、私には聞こえました。
全ては、一歩ずつ、です。



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