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2022年01月13日

高校英語。否定文。do not と don't の違い。

高校英語。否定文。do not と dont の違い。

さて、高校英語。本日は「否定」です。
否定といえば、まずは否定文。
否定語 not を入れることで、文を否定することができます。

be動詞の文ならば、例えば、
I am a student.
が、肯定文。
否定文は、
I am not a student.
be動詞の後に否定語を置きます。

次に一般動詞の文。
I play tennis.
この否定文は、
I do not play tennis.
短縮形は、
I don't play tennis.


ところで、do not とdon't は、どう違うのでしょうか。

もう随分前になりますが、大手の個別指導塾で働いていた頃、担当していた中学生にそれを質問されたことがありました。
「do not と don't って、何が違うんですか?」
その子は、正直、そんなに成績の良い子ではありませんでした。
重要なことは覚えないのに、そういう細かいことを、沢山質問する子でした。
質問するのが大好きなのでした。
しかし、質問するだけで満足し、説明されたことを記憶する様子は見られません。
とにかく質問して答えてもらうのが大好き。
あるいは、保護者の方に、沢山質問しなさいと言われていたのかもしれません。
「ゆとりの時代」に多かったタイプの生徒です。
テスト勉強も要点を外したトンチンカンなものになりがちで、成績はふるいませんでした。

私は答えました。
「ああ・・・。同じですよ。問題の空所の数を考えて、do not かdon't か、どちらにするか判断しましょう」

すると、授業をしている隣りのブースから、くすくすと笑い声が聞こえてきました。
隣りのブースで授業をしている講師と生徒と両方が笑っているのでした。
どう考えても、タイミング的に、私の発言を受けてのことでした。
「・・・なあ、そういう人、いるだろう?」
「ほんとですね」
そういった話し声が、次に聞こえてきましたから。

・・・へえ。
私の教えたことを笑ったわけだね?

do not と don't の違いも理解していない講師がいる。
僕らは知っているけれどねー。
そういう嘲笑の笑いでした。

普通に授業を終えて、私は、何気なく隣りのブースから出てきた講師の顔を確認しました。
おそらく学生アルバイトと思われる、若い男性講師でした。
その日の配置表を見て、その講師と生徒の名前も確認しました。
それで何をするということもありませんが、まあ確認のために。

確かに、do not と don't は、違います。
言い方が少し変われば、ニュアンスが異なるのは当然です。
この場合、do not のほうが、意味が強い。
do not と、わざわざ分けて発音するのですから、その部分が強調され、意味が明瞭に伝わります。
それだけ、意味は強くなります。

I don't like baseball.
なら、野球に興味がないくらいのニュアンスですが、
I do not like baseball.
は、「好きではない」どころの話ではなく、これはほぼ「嫌い」です。
それくらい、ニュアンスは違ってきます。

しかし、当時の私はそれを中学生に教えることに抵抗がありました。
私が教えていたのは、こちらが気を緩めていると、たちまち、
I am not like baseball.
という英文を作ってしまう、英語が苦手な中学生でした。
それでいて、do not と don't はどう違うのかといった質問をするのをやめられない子でした。

will とbe going to は、どう違うの?
can と be able to は、どう違うの?

どう違うの?
どう違うの?

そうした質問を繰り返すのに、その翌週、ただ空所に is going to を入れれば良いだけの問題が解けない・・・。
「えへへへ」
と頭をかいてみせますが、また授業中には、
「must と have to はどう違うの?」
と新しく、どう違うのかを訊いてくるのでした。

・・・聞いても、覚えないでしょう、あなたは・・・。
クイズ番組を見ているようなものなのでしょう?
答の発表の前にCMに入ると気になるけど、いざCM明けに答が発表されれば、もう興味ないでしょう?
番組が終わったら、クイズの答は、全部忘れているでしょう?
そういうのは、勉強とは言わないんですよ・・・。


しかし、それでは私が正しいのか?
いいえ。
確かに私は間違っていたのです。
違うものは違うのですから、「同じだ」とは言わないほうがいい。
もしも保護者の方に、
「子どもの知的好奇心を大切にして教えてあげてください」
と言われれば、それはもう本当にその通りなのですし。

しかし、保護者の方は、同時にきわめて現実的です。
学ぶ喜びを教えあげてほしい。
知的好奇心を大切にしてほしい。
その気持ちがないわけではないと思いますが、受験が近づけば、うちの子の定期テストの得点がなぜこの点なのか?
うちの子の成績はなぜこうなのか?
どうすれば、テストの点が上がるのか?
そこに重心が傾いていきますし、受験産業はまさにそこに応えていく産業です。

基本を理解したうえで、さらにその先のこととして、do not と don't のニュアンスの違いを理解するのが語学です。
両方同時に学べる余裕のある子なら、それでいい。
しかし、基本を身につけるだけでいっぱいいっぱいの子は、とにかく、否定文の作り方の基本を理解してほしい。
そこに集中してほしい。
質問だけして、その内容は覚えない。
特に強調して解説した重要なことも覚えない。
とにかく何も覚えない。
それでは、困るのです。
質問が沢山できるから、個別指導は好き。
でも、成績はなかなか上がらない・・・。

do not と don't のニュアンスの違いを余談として聞いたことで英語に興味をもつようになり、英語が好きになり、英語の成績も上がる・・・。
そのような理想的ななりゆきには、なかなか進まない子でした。

そうは言っても、do not と don't は同じだと教えるのは間違っていました。
笑われても仕方ありません。
それ以後は、そういう質問を受けたときには、
「うーん、本当は細かいニュアンスの違いはあるんだけど、今はそんなことより、どちらでも正しく使えるようになろうね」
と話すようにしています。


ところで、私のことを笑った学生講師はその後、どうなったのかというと。
その後も、隣りのブースになることが多く、関心を持って耳を澄ませていると、大学で学びたての知識を中学生や高校生に教えて悦に入る傾向のある学生アルバイトであることがわかりました。
・・・その知識、中学生には必要ないなあ・・・。
正直、そう思うことが多かったのですが、生徒の中学生はそれを面白く聞いているようでしたし、
「へえ、すげえ」
「先生、かっけー」
などと持ち上げている様子でした。
上手くいっているのなら、それを私がとやかく言う必要はないのでした。


ある日、教務に呼ばれ、私は、その学生アルバイト講師が担当していた授業を引き継ぐことになりました。
その学生アルバイト講師が、留学するので講師をやめたというのです。
あの講師の後なら、英語関係の余談が豊富なタイプの人がいいだろうに。

とはいえ、拒否する理由も特にないので、それまで担当していた生徒から離れ、その学生講師が担当していた生徒の授業に入ることになりました。
同じ時間帯の同じ授業。
明らかに、あの日の、私を笑ったあの中学生でした。
本人がそのことに気づいたら、向こうから断ってくるだろうから、私は知らない顔で授業をするだけです。
おそらく1回きりの生徒。
一期一会。
少しでも意味のあるよう、大切な授業にしよう。
私は、当時使っていた、生徒の実力を確認するためのプリントをその生徒にも解いてもらいました。
その中の1題。

問題 次の英文を指示に従い書き換えなさい。
I bought some books yesterday. (否定文に)
→ I (  ) buy any books yesterday.

その生徒の答えはこうでした。

I bought some books yesterday. (否定文に)
→ I (not) buy any books yesterday.

・・・マジか・・・。
その他にも、時制ミス、単数複数のミス、スペルミスなど、随所にミスがあり、その子の得点は、私がそれまで教えていた質問好き中学生よりもさらに低いものでした。
「・・・きみ、高校の第一志望は?都立?私立?」
「私立です」
まだ多くの私立が高校からの生徒を受け入れていた頃で、その個別指導塾は、私立が第一志望の生徒も通っていました。
「私立は、文法問題も沢山出るから、こういうタイプの問題でしっかり得点することが必要だよ」
「えっ。そうなんですか?」
「受験したい高校の過去問をざっとでいいから眺めておくといいよ。まだ解かなくてもいいよ。でも、ざっと眺めて、どういう問題が出るか知っておくと、その方向で受験勉強をすれば、無駄がないでしょう?」
「・・・」

don't と、do not のニュアンスの違いを知っているのも大切なこと。
でも、空所が1つなら、ここは didn't を入れようよ・・・。
そういうことができないのに、自分は英語のことを色々知っている、英語が得意だ、英語が好きだと思っていても、得意な英語をもっと学べる高校にも大学にも進学できないよ。

そうは言いませんでした。
生徒が悪いわけではありません。
多分、講師にあわせていただけなのです。
おそらく、自分の英語力の低さを隠すためにも、むしろ過剰に、自信家の講師に話を合わせていたということはあり得ることだと思いました。

1回だけと思っていたその授業は、結局、私が担当することになりました。
今も使っている英語上達のメソッドが、そろそろ固まりつつある頃でした。
・・・と言うほど、大それたことではありません。
とにかく、演習が大切。
市販の問題集では、英文法の問題の数が少なすぎます。
特に中学生向けの問題集は、各単元が4ページほどで終わってしまう場合がほとんどです。
それでは、身につかない子のほうが多いのに。
その生徒にあわせたレベルの問題をいくらでも提示し、ミスの原因を常に観察し、指導し続けるのが私の仕事です。
長文読解もまた同じです。
問題は無尽蔵に用意する。
解いていく中で、その子の長文の読み方の弱点を指摘し、正解をどう導きだすのか解説する。
英語の成績は、それで必ず上がります。

結局、その生徒には、大学に合格するまで授業をしました。
英語を専攻するわけではない学部学科に、しかし、入試では英語を最強の得点源として合格しました。




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