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2019年11月06日

高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。

r高校数Ⅱ「式と証明」。複素数。


今回は、いよいよ「複素数」の学習の始まりです。
その前に、いったん「2次方程式」に話を戻して考えてみましょう。

例 x2+2x+5=0 を解きなさい。

解いてみます。
因数分解はできないようなので、解の公式を使いましょう。
x=-1±√1-5
 =-1±√-4
√の中が負の数になってしまいました。( 一一)
2乗して負の数になる数なんてありません。
だから、この2次方程式は、「解なし」となります。

これが、今までの解き方でした。
実数の範囲では、これで仕方ないのですが、しかし「解なし」というのは少し残念な感じがあります。
解のない方程式があるなんて、美しくないな。
これの解があることにしたらどうでしょうか?
だって、少なくとも数字の上では書き表すことができるのですから。
これが、複素数の出発点です。

ピラミッドを作っていた時代から、その数はあるのではないかと問いかけられては否定されてきました。
複素数の歴史を紐解くと、デカルト、オイラー、ガウスといった数学界のビッグ・ネームが次々と登場します。
興味がある方は検索して調べてみてもよいと思いますが、複素数を知るのが初めての状態ですと異次元の数学世界が広がっていますので、驚かれるかもしれません。

物凄くかいつまんで説明しますと、実数というのは、1本の数直線上のどこかに存在する点として表すことができます。
有理数も無理数も、1本の数直線上に存在します。
しかし、虚数は、実数の数直線上には存在しません。
では、どこに存在するのか?
実数の数直線を含む平面上に存在します。
その平面が、複素数平面です。
この瞬間に、数は、1次元から2次元に拡張されたのです。
複素数は「2元数」ともいいます。
でも、このお話が始まるのは、まだはるか先。
複素数平面について学ぶのは、数Ⅲです。
数Ⅱでは、まずその基礎を学びます。

では、複素数の定義を見てみましょう。
まずは虚数単位から。
2乗すると-1になる数を i とし、虚数単位と呼ぶ。
すなわち、 
i2=-1
また、a>0のとき、
√-a=√a i , -√-a=-√ai とする。

そして、複素数の定義。
a+bi (ただし、a、bは実数。iは虚数単位)
の形で表される数を複素数といい、aを実部、bを虚部という。
b=0のとき、すなわちa+0・i=aで、実数aを表す。
b‡0のとき、すなわち実数でない複素数を虚数という。
また、a=0のとき、すなわち0+bi=bi を純虚数という。

以上が、虚数と複素数に関する定義です。
これ以上は噛み砕ける内容ではないので、1行1行噛みしめて意味を理解してください。
全て定義ですので、「なぜ?」という質問は存在するはずがありません。
その定義を受け入れるだけです。
これから始まる話は、全てこの定義を前提としますよ、というルールのようなものです。
こんなルールは受け入れられない、自分は違うルールでやっていく、というわけにはいかないのです。

これまで、数の集合は実数の輪を最大のものとして閉じていました。
ベン図にするとわかりやすいです。
まず自然数の集合がありました。
1、2、3、・・・・といった正の整数です。
それを含んで、その外側に、整数の集合がありました。
負の整数や0が自然数の外側に加わったひと回り大きな輪ですね。
さらにそれを含んで有理数の集合がありました。
整数で表すことができない小数や分数が外側に加わったひと回り大きな輪です。
さらにその外側に実数の輪があります。
実数の輪の内側で、有理数の輪の外側に位置するのが無理数です。
無理数は、有理数ではない数。
すなわち分数で現すことができない数です。
円周率や√2などが無理数でした。
有理数と無理数とをあわせて、実数と呼びました。
実数の大きな集合の輪。
今、その周りに複素数の大きな輪が描かれました。
実数は、複素数の一部です。
上の複素数の定義の a+bi で、b=0 の場合が実数ですね。

ベン図でイメージすると上のようになることを、複素数平面で考えると、実数は1本の数直線上に全て存在し、虚部が0ではない数、すなわち虚数は、その直線以外の平面上に存在しているのです。

さて、ここまで理解できれば、あとは計算です。
複素数の計算ルールは、i2=-1 を守ること。
あとは実数のルール、特に文字式・方程式のルールに似ていますので、大きな抵抗はないと思います。
実部は実部同士、虚部は虚部同士で足し算できます。
実部×虚部は可能です。
虚部×虚部も可能です。

(a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i
(a+bi)(c+di)=ac+adi+bci+bdi2
         =(ac-bd)+(ad+bc)i
ただし、a、b、c、dは実数。


問題 (3-5i)(7+2i) を計算せよ。
=21+6i-35i-10i2
=21-29i-10・(-1)
=21-29i+10
=31-29i

慣れてくれば計算過程は適宜省略し、与式の次は答えでも構いません。
符号ミスを起こしやすい人は、最初は丁寧に解いていったほうが無難でしょう。


問題 x=(-1+√5i)/2、 y=(-1-√5i)/2 のとき、x3+y3+x2y+xy2 の値を求めよ。

これは、様ざまな単元の計算問題で繰り返し出てきた、対称式に関する問題です。
逐一代入しても答えは出るのですが、面倒で時間がかかります。
まず、xとyの和と積を求めるのが定石でした。

x+y=(-1+√5i-1-√5i)/2
   =-2/2
   =-1
xy=(-1+√5i)(-1-√5i)/4
  =(1-5i2)/4
  =(1+5)/4
  =6/4
  =3/2
よって、
x3+y3+x2y+xy2
=(x+y)3-3xy(x+y)+x2y+xy2
=(x+y)3-3xy(x+y)+xy(x+y)
=(x+y)3-2xy(x+y)
=(-1)3-2・(-1)・3/2
=-1+3
=2
これは、対称式の計算のときによく使う、
x3+y3=(x+y)3-3xy(x+y)
という公式を利用した解き方です。

あるいは、先に、
x2+y2=(x+y)2-2xy=(-1)2-2・/32=1-3=-2
を求めているのなら、
x3+y3+x2y+xy2
=(x+y)(x2-xy+y2)+x2y+xy2
=(x+y)(x2-xy+y2)+xy(x+y)
=(x+y)(x2-xy+y2+xy)
=(x+y)(x2+y2)
=-1・(-2)
=2
という求め方も可能です。
これも公式を利用しています。
x3+y3=(x+y)(x2-xy+y2)
という公式です。

新しい単元に入っても、既習の公式を覚えていないと実際の問題は解けません。
解答・解説を読んでも、何でそういう変形をしているのか、意味がわかりません。
とにかく、公式は全部頭に入れておきましょう。

ところで、-1+√5i と-1-√5i は、和や積で虚数部分が消えて、その後の計算が随分楽になりましたね。
虚部が異符号なのが良かったですね。
こういう数を「互いに共役な複素数」と言います。
「a+bi と a-bi を互いに共役な複素数という」というのが定義です。


問題 -27の平方根を求めよ。
-27の平方根は、±√-27 です。
±√-27 =±√27i=±3√3i

2乗して負の数になる数の中にも、正の虚数と負の虚数がある・・・。
そのことで混乱する人もいるようです。
つながるべきではないところがつながって、頭の中がメビウスの輪になっていないでしょうか?
虚数にも正負があって、別に構わないです。
「だって、負の数は2乗したら正の数になってしまうから、-27にはならないじゃないですか?」
・・・うん?
i2がある限り、その数は負の数になりますよ。
落ち着いて、落ち着いて。


問題 √-24・√-18 を計算せよ。

√-24・√-18
=√24i・√18i
=2√6・2√3・i2
=2・2・3√2・(-1)
=-12√2

これをいきなり1つの√ でくくり、
√-24・√-18
=√-24・(-18)
=√24・18
=12√2
としてはいけないのです。
a<0、b<0 のとき、√a・√b=√ab ではありません。
それは、実数のときだけのルールです。
虚数ではそれはできません。
必ず、最初に i を使って書き直してから計算していきます。

なぜできないか?
だって、上のように計算していいのなら、
-12√2=12√2 となってしまい、矛盾します。
これは背理法で証明できることだと推測できますね。



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