たまりば

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2019年11月24日

数学の語句補充問題は難しい。


数学の語句補充問題というのは、現在、中学の数学のテストで必ず出される問題となっています。
どの問題がどの領域の問題であるかを問題に明示しなければならなくなり、「知識・理解」を問う問題として、数学の語句補充問題が作られるようになりました。
これを苦手とする子は多いです。

例えば、こんな問題です。

問題 以下の空所にあてはまる語句を答えよ。
y=ax+b の形で表すことができる関数を(1)という。(1) のグラフは(2)となる。また、aをグラフの(3)、bを(4)と呼ぶ。
yの増加量÷xの増加量で表されるものを(5)といい、(1)においては、aの値が(5)を表す。

正解は、
(1) 1次関数 (2) 直線 (3) 傾き (4) 切片 (5) 変化の割合
となります。

語句の定義に関するこうした問題は、類題をいくつか解けば、何とか穴埋めできると思います。
しかし、何の準備もなくいきなりこの問題を解こうとすると、かなり難しいことは、実際に解いてみると実感できるのではないでしょうか。

上の問題では、(2)直線 という答えが、一般の感覚ではもっとも難しいと思います。
そんなことを問われているとは、正解を見るまで想像もしていなかった・・・。
正解を見ると、まあそうだなと納得するが、自力で穴埋めできる気がしない・・・。
数学の問題を解くのが好きな人でも、そう感じるかもしれません。
また、中学生では、「傾き」と「変化の割合」をどう使いわけるのかわからず、答えが逆になってしまう子が多いです。
こうした問題の対策としては、数学の教科書や参考書の、語句の定義に関する文を繰り返し読んでおくこと。
このような問題をテスト前に解いて慣れておくこと。
それである程度は対応できます。

上のような語句の定義に関する問題はまだ答えを絞り込みやすいのです。
この種の問題としては良問と言えます。
数学的な考え方の語句補充になると、さらに難度が上がります。
例えば、こんな問題。

問題 以下の空所に当てはまる語句を答えよ。
2元1次方程式の(1)は直線のグラフになる。
つまり、2元1次方程式のグラフの交点とは(2)である。
(3)の解は2つの2元1次方程式の(2)であるから、交点の座標は(3)を解くことで求めることができる。

言いたいことはわかるのですが、当てはまる語句は色々と候補が浮かび、1つに定まらない・・・。
そこを空所にした出題者の意図がよくわからない。
そういうことが起こりがちです。

これの模範解答は、
(1)解を座標とする点の集まり (2)共通の解 (3)連立方程式

・・・いや、わからないわ、これは・・・。
正解を見れば、まあそれはそうだと思うものの、自力で答えを書き込むのは難しいです。
空所補充問題の正答が日本語として3文節以上というのは、悪問の始まりです。


2次方程式の因数分解による解法の考え方を説明する空所補充問題を見たこともあります。

問題 次の☐に当てはまる、語句または文字・数字を答えよ。
(x-a)(x-b)=0 であるとき、
☐-a=0 または☐-b=0 であるから、x=a または x=b である。

この2か所の空所を、
a-a=0 またはb-b=0 であるから、x=a または x=b である。
と埋めている子がいました。
答案を見て、うーん、これは本当は意味がわかっているのかもしれない。
でも、もしかしたら何もわかっていないのかもしれない。
答案の見た目では、それがわからない・・・。
どう評していいものかと困惑しました。
ちなみに、正解は2か所とも「x」が入ります。
正直、問題にも悪いところがある、と感じました。
これが入試問題だったら異論が噴出し、「別解あり」、あるいは「問題無効」の措置が取られたかもしれません。

数学の先生が悪いわけではありません。
こういう「知識・理解」に関する空所補充問題を定期テストに出題するよう指導しているのは文科省です。
ただ、どういう形で出題するかは個々の先生の裁量に任されているはずなので、こういうところで変に独自性を示すのはやめて、語句の定義に関する、ありがちで穏当な問題を出題してくれることを願うばかりです。
基本的な知識の定着を確認するのが目的の出題だと思いますので、奇をてらう必要はないのです。
三角形の合同条件を書かせたり。
数学用語や定理の名称を空所補充させたり。
そういうことは大賛成です。
あるいは、数学的な考え方に関するこうした語句補充問題は、せめて選択肢を示してくれないかなと思います。


とはいえ、数学用語の理解・数学的な考え方の理解をテストで試すのは、こういう形が便利なのかもしれません。
解き方だけ丸暗記して、数学的な意味はまったく理解していない子に、その勉強ではダメだということを自覚してもらうには良いきっかけではあります。

高校の定期テストでは、このような語句補充問題は出題されません。
問題文をどう読み取るか、記述答案をどう書くかで、数学的な知識・理解は十分に測ることができるからです。
例えば、こんな問題。

問題 曲線 y=f(x) の接線の傾きはx2に比例する。また、この曲線は、点(3,2)、(6,1)を通る。この曲線を表す式を求めよ。

この問題の意味を読み取れるということは、微分と接線の傾き、あるいは微分と積分との関係が理解できているということです。
あるとき、この問題の意味がわからない、と質問を受けました。
「・・・x2 に比例するって何ですか?」
「中学3年のときにやったでしょう。2乗に比例する関数。y=ax2。あれのことです」
「直線ということですか?」
「いや、直線になるのは1次関数です。2乗に比例する関数は放物線です」
「傾きが放物線?傾きは直線じゃないんですか?」
「うん。接線は直線ですが、接線の傾きの変化は放物線になることもあります。この問題では2乗に比例するんですね」
「2乗に比例するなんてことが、ありますか?」
「・・・ありますよ」

例として、y=2x2 という関数で、
x   1 2  3  4 ・・・
x2  1 4  9 16 ・・・
y   2 8 18 32 ・・・
このような表をざっと書き、x2が2倍、3倍、・・・になると、yも2倍、3倍、・・・になることを確認すると、その子に驚愕の表情が浮かびました。
「本当だ。2乗に比例している」
「はい。そうです。これが2乗に比例する関数です」

微分・積分は問題なくマスターしている秀才が、なぜ「2乗に比例する関数」を知らないのだろう・・・。
内心驚愕していたのは私のほうですが、そんなこともたまには起こります。
用語の理解というのは、繰り返し確認していかないと、思わぬ盲点が存在するのかもしれません。
その日の授業の帰りぎわ、
「今日の授業は、2乗に比例する関数のところが一番わかりやすかったです」
と感想を述べて去っていきました。

  


  • Posted by セギ at 15:36Comments(1)算数・数学