2024年11月10日
高校数Ⅱ「軌跡」。文字が何を表しているのかで混乱する。
今回は、数Ⅱ「軌跡」の問題を解いてみましょう。
問題 直線 3x+2y-6=0 と点A (4 , 5) がある。点Qがこの直線上を動くとき、線分AQを 3:2 に内分する点Pの軌跡を求めよ。
軌跡に関する問題としては、基本問題です。
ところが、x、y の使い方や代入を間違えて、奇妙な混乱を起こす子も珍しくありません。
例えば、こんな答案。
書き出しはこんなふうでした。
P (x , y)、Q (X , Y)
・・・相変わらず、答案がカタコトで、日本語による説明がありません。
おそらく、
点Pの座標を (x , y)、点Qの座標を (X , Y) とおく。
という意味なのだと思いますが、こういうところの書き方、幾度助言しても、直らない子は永久レベルで直らないです。
せめて、
P (x , y)、Q (X , Y) とおく。
くらいは書いてほしいのですが、数学の答案に日本語は絶対に書かないと決めてしまっているかのように書かないのです。
とはいえ、今回はその話ではないので、ここはスルー。
むしろ気になったのは、点Qの座標を (X , Y) とおいた点でした。
これ、今でも、そのようにしている参考書や問題集がありますが、生徒の誤解を招きやすいので、私は授業時に、大文字のX、Yは使わないように言っています。
高校の先生たちも、使わない場合が多いです。
これのせいで混乱する生徒が多いことを肌で感じているからです。
大文字のX、Yは使わず、点Qの座標は (a , b) などにしなさい、といくら助言をしても、生徒が宿題を解くのは、塾の授業日の前日か当日、という場合が多いので、すっかり忘れて、テキストの例題解説が (X , Y) なら、そのまま使ってしまう場合があります。
修正テープで消させて直させないと定着しないレベルです。
そのときも、そんなことが原因の混乱が、その後、起こっていました。
その子の答案は。
P (x , y)、Q (X , Y)
3x+2y-6=0
x=(8+3X) / 5 , y=(10+3Y) / 5
3×(8+3X) / 5+2×(10+3y) / 5-6=0
24+9x+20+6y-30=0
9x+6y+14=0
・・・何だこれ?
そして、こういうカタコトの答案を書く子に、その式の意味を尋ねても、明確な答は返ってこないことが多いのです。
計算メモは、時間が経てば、自分で書いたことの意味も自分でわからなくなります。
何をどうしてそうなっているのかを答案に書きなさい、と言っているのですが、数学が苦手な子は、徹頭徹尾、数学答案と呼べるものは書きません。
別に反抗したいわけではなく、その場になると忘れてしまうらしいのです。
問題を解くのに夢中になって、ついついいつもの癖で、カタコトの計算メモになってしまうようです。
小学生の頃から延々とそのように書いてきたことを、今回も書いてしまう。
そういうことなのだと思います。
さて、そうなると、このよくわからない誤答の分析をしていかなければなりません。
何をどう間違えると、こういうことになるのか?
数学答案らしい語句を補いながら、その子と一緒に考えました。
1行目は、
点Pの座標を(x , y)、点Qの座標を(X , Y)とおくと、
という意味でしょう。
では、2行目の、
3x+2y-6=0
は、どういう意味なのでしょうか。
この2行目の式は、問題文にある直線そのままなのですが、これを何のつもりで書いているのかが、微妙です。
ただ、問題文の式を書き写しただけなのか?
・・・いや、これは、本当は、
点Qは、この直線上の点なのだから、
3X+2Y-6=0 ・・・①
と書くべきところを、何の説明もなく、文字の使い方も間違えてしまっている式なのではないか?
そもそも大文字と小文字を使い分ける意味がわからないので、すぐに小文字に直してしまったのではないか?
関数の式なら、小文字の x と y を使うのが普通だという誤解も加わって・・・。
だから、点Qは(a , b) としたほうがいいのです。
これなら、さすがに間違いようがないのです。
点Qの座標を直線の式に代入して、
3a+2b-6=0・・・①
という答案を書くほうが誤解が少ないのです。
これは、問題文にある直線の式ではなく、a と b との関係を表した式なのだとひと目でわかるようになります。
さて、誤答をさらに見ていきましょう。
P(x , y)、Q(X , Y)
3x+2y-6=0
x=(8+3X) / 5 , y=(10+3Y) / 5
3×(8+3X) / 5+2×(10+3Y) / 5-6=0
24+9x+20+6y-30=0
9x+6y+14=0
・・・この3行目は、何なのか?
見にくくなっていますが、この右辺は分数です。
勝手に暗算もしているので、ますますわかりにくくなっていますが、内分点の座標を表しているのでしょう。
答案の最初から正しく書くならば、
点Pの座標を(x , y)、点Qの座標を(a , b)とおくと、
点Qは、3x+2y-6=0 上の点であるから、
3a+2b-6=0・・・①
また、点Pは、AQを 3:2 に内分することから、
x=(2・4+3a) / (3+2)
=(8+3a) / 5
y=(2・5+3b) / (3+2)
=(10+3b) / 5
実際には、分数の分子・分母の( )は不要ですが、見やすいように、( )をつけました。
では、誤答の4行目、
3×(8+3X) / 5+2×(10+3Y) / 5-6=0
は、何をしているのでしょうか。
文字の使い方を間違えているので、
3x+2y-6=0
という、問題文にある直線の式に、今求めた、点Pの x 座標と y 座標の値をそのまま代入したのでしょう。
点Pの座標を点Qを通る直線の式に代入して、どうなるというのか?
しかし、そういうことは、もう解いている本人にもわからないのだと思います。
点P (x , y)、点Q (X , Y) としているから、混線したのでしょう。
点Q(a , b) の a と b との関係を表す式を、
3a+2b-6=0・・・①
と立ててあれば、さすがに、ここの a に、x の値を代入しようとは考えないでしょう。
だから、点Qの座標に使う文字は、x や y とは全く違う文字にすることをお勧めします。
軌跡を求めたい点Pの座標のみが (x , y) で、他の点は、他の文字を使う。
それが、安全な解き方です。
①の式は、a と b の式なので、先ほど求めた内分点に関する式を、a や b について解いてから代入しなければならないのだと気づくことができます。
やってみましょう。
x=(8+3a) / 5 より、
8+3a=5x
3a=5x-8
a=(5x-8) / 3・・・②
y=(10+3b) / 5 より、
10+3b=5y
3b=5y-10
b=(5y-10) / 3・・・③
②・③を①に代入して、
3・(5x-8) / 3+2・(5y-10) / 3-6=0
(5x-8)+2/3・(5y-10)-6=0
3(5x-8)+2(5y-10)-18=0
15x-24+10y-20-18=0
15x+10y-62=0
よって、点Pの軌跡は、
直線 15x+10y-62=0
これが正解です。
このあたりの計算、今回は丁寧に書きましたが、1行目の次は「よって」と書き込んで、もう最終行でも構いません。
途中のこういう計算は、提出しない計算用紙に書いてもいいのです。
高校数学の答案は、こうした計算過程は採点対象ではありません。
正直に言えば、採点する人は、そうした途中は読みません。
1行目がしっかり書いてあることを確認すれば、次はその計算の結果の行に目を移します。
それが間違っているときには、どこから計算ミスをしているのか目を戻し、そこまでで赤線を引きます。
文字式の整理や方程式を解いた途中が書いてあってもなくても、得点は変わりません。
中学数学ならばそこを丁寧に書くのがメインですが、高校数学ですので、既にそれは「出来て当たり前」の領域です。
採点対象ではないのです。
だからこそ、1行目は暗算せずに、意味のわかる式をしっかり書きます。
あとは、適宜、自分の計算力にあわせて計算過程は省略して構いません。
こうした数学答案の機微を理解しない子は多いです。
1行目から暗算した式を書いてしまう。
そして、その後の計算過程こそが「数学答案」だと本人は思っています。
そこを省略すると、本人の思う「数学答案」には、もう何も残りませんから、気持ちはわかりますが、採点者は、そこは見ないのです。
ただ、計算過程は省略してもいいけれど省略しなくてもいいので、その点は構いません。
いくらでも丁寧に書いたらいいと思います。
問題なのは、1行目から、意味のうすれる暗算をしてしまうこと。
上の誤答でも、内分点を表すのに、分母の 3+2 を暗算して 5 としていました。
それが絶対にダメだとは言いませんが、何をしているのか、意味が伝わりにくくなるだけなので、そんなのは無駄な暗算です。
内分点の場合は、分母を 3+2 としっかり書くことで、分子をスムーズかつ正確に書いていくこともできます。
でも、3+2と書かず、いきなり5と書いてしまうような無駄な暗算を式の1行目からやってしまう子は多いです。
1行目は、意味のわかる式を丁寧に書き、以後は本人の計算力にあわせて省略してもいいということが、伝わらない。
いや、伝わっていても、実際に解くときには、いつもの癖で1行目から暗算した意味のわからない式を書いてしまいます。
そして、
「どうやって解いたのですか?」
と問われると、自分でも意味がわからず、絶句するのです。
とはいえ、今回言いたいことは、それではなく、点Pの軌跡を求める問題では、点P以外の座標に、X、Yは使わないほうがいいということ。
混乱の種ですから。
点Q の座標を (a , b) とすれば解けるのになあ・・・。
そう思っていたのですが、ある日、私のその考えを超えていく生徒が現れました。
点Qの座標を (a , b) とし、
3a+2b-6=0・・・①
という式も書いているのに、その a と b に、x と y の値を代入していたのです。
そのような代入で、a と b との式が、さらに複雑な a と b の式になった後、その a と b を、最後に x と y に書き換えて、それで最終解答としていました。
・・・なぜ?
「a と b は、本当は x と y だから」
というのが、その子の答でした。
一度そう思い込むと修正は難しく、正しい解き方の解説をしても、固まったまま、ホワイトボードを凝視していました。
数学が苦手な子に多いのですが、
「それはそれ、これはこれ」
という、矛盾した内容が頭の中に共存することがあります。
a と b は、決して点Pの x と y ではない。
でも、そのことがわからない・・・。
問題文の直線の式に代入して、x と y を a と b に書き換えたのだから、戻してもいいだろうと本人は思っていたのでした。
問題文の直線の式の x と y の関係と、求めたい点Pの x と y との関係とは違いますよ?
そんなことを説明すればするほど、その子の固まり具合は深まり、絶句していました。
それは、例えば、
(a+b)^2=a^2+2ab+b^2
という乗法公式を知らないわけではないし、そういう計算問題なら正解できるのに、
a^2+b^2=(a+b)^2
だということも普通に信じている・・・。
そういう子が多いこととも関係があるのだろうと思います。
点Pの x 座標と y 座標の関係を表す式は、点Pを含む直線や曲線の式なのである、という中学数学でわかっていてほしいことが理解できていない子は多いです。
根本の理解がなく、表面的な解き方だけを覚えてきたので、何をしても良くて、何をしたらダメなのか、よくわかっていないのだと思うのです。
軌跡の問題の解き方は何となく知っている。
手順は何となくわかる。
でも、何でそうやれば解けるのか、根本が理解できていない・・・。
説明を聞いても、高校数学の説明は、もう、よくわからない・・・。
中学数学を理解していないのですから、そうなります。
その子の理解のレベルにあわせて、かみくだいて、中学数学に戻って解説をすることの必要性を痛感するこの頃です。
a と b を x と y に直してもいいと思っていた子は、それでも、とりあえず、それをしたらダメなのだという第一歩は踏みました。
a と b の関係を表す式は、点Qの式。
x と y の関係を表す式は、点Pの式。
でも、a と x、b と y の関係を表す式が別にあれば、それを代入して、a と b だけの式を、x と y の式に生まれ変わらせることができる。
そういう構造が理解できれば、軌跡の問題は、あとは式を立てて解くだけです。
問題 直線 3x+2y-6=0 と点A (4 , 5) がある。点Qがこの直線上を動くとき、線分AQを 3:2 に内分する点Pの軌跡を求めよ。
軌跡に関する問題としては、基本問題です。
ところが、x、y の使い方や代入を間違えて、奇妙な混乱を起こす子も珍しくありません。
例えば、こんな答案。
書き出しはこんなふうでした。
P (x , y)、Q (X , Y)
・・・相変わらず、答案がカタコトで、日本語による説明がありません。
おそらく、
点Pの座標を (x , y)、点Qの座標を (X , Y) とおく。
という意味なのだと思いますが、こういうところの書き方、幾度助言しても、直らない子は永久レベルで直らないです。
せめて、
P (x , y)、Q (X , Y) とおく。
くらいは書いてほしいのですが、数学の答案に日本語は絶対に書かないと決めてしまっているかのように書かないのです。
とはいえ、今回はその話ではないので、ここはスルー。
むしろ気になったのは、点Qの座標を (X , Y) とおいた点でした。
これ、今でも、そのようにしている参考書や問題集がありますが、生徒の誤解を招きやすいので、私は授業時に、大文字のX、Yは使わないように言っています。
高校の先生たちも、使わない場合が多いです。
これのせいで混乱する生徒が多いことを肌で感じているからです。
大文字のX、Yは使わず、点Qの座標は (a , b) などにしなさい、といくら助言をしても、生徒が宿題を解くのは、塾の授業日の前日か当日、という場合が多いので、すっかり忘れて、テキストの例題解説が (X , Y) なら、そのまま使ってしまう場合があります。
修正テープで消させて直させないと定着しないレベルです。
そのときも、そんなことが原因の混乱が、その後、起こっていました。
その子の答案は。
P (x , y)、Q (X , Y)
3x+2y-6=0
x=(8+3X) / 5 , y=(10+3Y) / 5
3×(8+3X) / 5+2×(10+3y) / 5-6=0
24+9x+20+6y-30=0
9x+6y+14=0
・・・何だこれ?
そして、こういうカタコトの答案を書く子に、その式の意味を尋ねても、明確な答は返ってこないことが多いのです。
計算メモは、時間が経てば、自分で書いたことの意味も自分でわからなくなります。
何をどうしてそうなっているのかを答案に書きなさい、と言っているのですが、数学が苦手な子は、徹頭徹尾、数学答案と呼べるものは書きません。
別に反抗したいわけではなく、その場になると忘れてしまうらしいのです。
問題を解くのに夢中になって、ついついいつもの癖で、カタコトの計算メモになってしまうようです。
小学生の頃から延々とそのように書いてきたことを、今回も書いてしまう。
そういうことなのだと思います。
さて、そうなると、このよくわからない誤答の分析をしていかなければなりません。
何をどう間違えると、こういうことになるのか?
数学答案らしい語句を補いながら、その子と一緒に考えました。
1行目は、
点Pの座標を(x , y)、点Qの座標を(X , Y)とおくと、
という意味でしょう。
では、2行目の、
3x+2y-6=0
は、どういう意味なのでしょうか。
この2行目の式は、問題文にある直線そのままなのですが、これを何のつもりで書いているのかが、微妙です。
ただ、問題文の式を書き写しただけなのか?
・・・いや、これは、本当は、
点Qは、この直線上の点なのだから、
3X+2Y-6=0 ・・・①
と書くべきところを、何の説明もなく、文字の使い方も間違えてしまっている式なのではないか?
そもそも大文字と小文字を使い分ける意味がわからないので、すぐに小文字に直してしまったのではないか?
関数の式なら、小文字の x と y を使うのが普通だという誤解も加わって・・・。
だから、点Qは(a , b) としたほうがいいのです。
これなら、さすがに間違いようがないのです。
点Qの座標を直線の式に代入して、
3a+2b-6=0・・・①
という答案を書くほうが誤解が少ないのです。
これは、問題文にある直線の式ではなく、a と b との関係を表した式なのだとひと目でわかるようになります。
さて、誤答をさらに見ていきましょう。
P(x , y)、Q(X , Y)
3x+2y-6=0
x=(8+3X) / 5 , y=(10+3Y) / 5
3×(8+3X) / 5+2×(10+3Y) / 5-6=0
24+9x+20+6y-30=0
9x+6y+14=0
・・・この3行目は、何なのか?
見にくくなっていますが、この右辺は分数です。
勝手に暗算もしているので、ますますわかりにくくなっていますが、内分点の座標を表しているのでしょう。
答案の最初から正しく書くならば、
点Pの座標を(x , y)、点Qの座標を(a , b)とおくと、
点Qは、3x+2y-6=0 上の点であるから、
3a+2b-6=0・・・①
また、点Pは、AQを 3:2 に内分することから、
x=(2・4+3a) / (3+2)
=(8+3a) / 5
y=(2・5+3b) / (3+2)
=(10+3b) / 5
実際には、分数の分子・分母の( )は不要ですが、見やすいように、( )をつけました。
では、誤答の4行目、
3×(8+3X) / 5+2×(10+3Y) / 5-6=0
は、何をしているのでしょうか。
文字の使い方を間違えているので、
3x+2y-6=0
という、問題文にある直線の式に、今求めた、点Pの x 座標と y 座標の値をそのまま代入したのでしょう。
点Pの座標を点Qを通る直線の式に代入して、どうなるというのか?
しかし、そういうことは、もう解いている本人にもわからないのだと思います。
点P (x , y)、点Q (X , Y) としているから、混線したのでしょう。
点Q(a , b) の a と b との関係を表す式を、
3a+2b-6=0・・・①
と立ててあれば、さすがに、ここの a に、x の値を代入しようとは考えないでしょう。
だから、点Qの座標に使う文字は、x や y とは全く違う文字にすることをお勧めします。
軌跡を求めたい点Pの座標のみが (x , y) で、他の点は、他の文字を使う。
それが、安全な解き方です。
①の式は、a と b の式なので、先ほど求めた内分点に関する式を、a や b について解いてから代入しなければならないのだと気づくことができます。
やってみましょう。
x=(8+3a) / 5 より、
8+3a=5x
3a=5x-8
a=(5x-8) / 3・・・②
y=(10+3b) / 5 より、
10+3b=5y
3b=5y-10
b=(5y-10) / 3・・・③
②・③を①に代入して、
3・(5x-8) / 3+2・(5y-10) / 3-6=0
(5x-8)+2/3・(5y-10)-6=0
3(5x-8)+2(5y-10)-18=0
15x-24+10y-20-18=0
15x+10y-62=0
よって、点Pの軌跡は、
直線 15x+10y-62=0
これが正解です。
このあたりの計算、今回は丁寧に書きましたが、1行目の次は「よって」と書き込んで、もう最終行でも構いません。
途中のこういう計算は、提出しない計算用紙に書いてもいいのです。
高校数学の答案は、こうした計算過程は採点対象ではありません。
正直に言えば、採点する人は、そうした途中は読みません。
1行目がしっかり書いてあることを確認すれば、次はその計算の結果の行に目を移します。
それが間違っているときには、どこから計算ミスをしているのか目を戻し、そこまでで赤線を引きます。
文字式の整理や方程式を解いた途中が書いてあってもなくても、得点は変わりません。
中学数学ならばそこを丁寧に書くのがメインですが、高校数学ですので、既にそれは「出来て当たり前」の領域です。
採点対象ではないのです。
だからこそ、1行目は暗算せずに、意味のわかる式をしっかり書きます。
あとは、適宜、自分の計算力にあわせて計算過程は省略して構いません。
こうした数学答案の機微を理解しない子は多いです。
1行目から暗算した式を書いてしまう。
そして、その後の計算過程こそが「数学答案」だと本人は思っています。
そこを省略すると、本人の思う「数学答案」には、もう何も残りませんから、気持ちはわかりますが、採点者は、そこは見ないのです。
ただ、計算過程は省略してもいいけれど省略しなくてもいいので、その点は構いません。
いくらでも丁寧に書いたらいいと思います。
問題なのは、1行目から、意味のうすれる暗算をしてしまうこと。
上の誤答でも、内分点を表すのに、分母の 3+2 を暗算して 5 としていました。
それが絶対にダメだとは言いませんが、何をしているのか、意味が伝わりにくくなるだけなので、そんなのは無駄な暗算です。
内分点の場合は、分母を 3+2 としっかり書くことで、分子をスムーズかつ正確に書いていくこともできます。
でも、3+2と書かず、いきなり5と書いてしまうような無駄な暗算を式の1行目からやってしまう子は多いです。
1行目は、意味のわかる式を丁寧に書き、以後は本人の計算力にあわせて省略してもいいということが、伝わらない。
いや、伝わっていても、実際に解くときには、いつもの癖で1行目から暗算した意味のわからない式を書いてしまいます。
そして、
「どうやって解いたのですか?」
と問われると、自分でも意味がわからず、絶句するのです。
とはいえ、今回言いたいことは、それではなく、点Pの軌跡を求める問題では、点P以外の座標に、X、Yは使わないほうがいいということ。
混乱の種ですから。
点Q の座標を (a , b) とすれば解けるのになあ・・・。
そう思っていたのですが、ある日、私のその考えを超えていく生徒が現れました。
点Qの座標を (a , b) とし、
3a+2b-6=0・・・①
という式も書いているのに、その a と b に、x と y の値を代入していたのです。
そのような代入で、a と b との式が、さらに複雑な a と b の式になった後、その a と b を、最後に x と y に書き換えて、それで最終解答としていました。
・・・なぜ?
「a と b は、本当は x と y だから」
というのが、その子の答でした。
一度そう思い込むと修正は難しく、正しい解き方の解説をしても、固まったまま、ホワイトボードを凝視していました。
数学が苦手な子に多いのですが、
「それはそれ、これはこれ」
という、矛盾した内容が頭の中に共存することがあります。
a と b は、決して点Pの x と y ではない。
でも、そのことがわからない・・・。
問題文の直線の式に代入して、x と y を a と b に書き換えたのだから、戻してもいいだろうと本人は思っていたのでした。
問題文の直線の式の x と y の関係と、求めたい点Pの x と y との関係とは違いますよ?
そんなことを説明すればするほど、その子の固まり具合は深まり、絶句していました。
それは、例えば、
(a+b)^2=a^2+2ab+b^2
という乗法公式を知らないわけではないし、そういう計算問題なら正解できるのに、
a^2+b^2=(a+b)^2
だということも普通に信じている・・・。
そういう子が多いこととも関係があるのだろうと思います。
点Pの x 座標と y 座標の関係を表す式は、点Pを含む直線や曲線の式なのである、という中学数学でわかっていてほしいことが理解できていない子は多いです。
根本の理解がなく、表面的な解き方だけを覚えてきたので、何をしても良くて、何をしたらダメなのか、よくわかっていないのだと思うのです。
軌跡の問題の解き方は何となく知っている。
手順は何となくわかる。
でも、何でそうやれば解けるのか、根本が理解できていない・・・。
説明を聞いても、高校数学の説明は、もう、よくわからない・・・。
中学数学を理解していないのですから、そうなります。
その子の理解のレベルにあわせて、かみくだいて、中学数学に戻って解説をすることの必要性を痛感するこの頃です。
a と b を x と y に直してもいいと思っていた子は、それでも、とりあえず、それをしたらダメなのだという第一歩は踏みました。
a と b の関係を表す式は、点Qの式。
x と y の関係を表す式は、点Pの式。
でも、a と x、b と y の関係を表す式が別にあれば、それを代入して、a と b だけの式を、x と y の式に生まれ変わらせることができる。
そういう構造が理解できれば、軌跡の問題は、あとは式を立てて解くだけです。
Posted by セギ at 13:03│Comments(0)
│算数・数学
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