2024年10月19日
高校数学B 数学的帰納法と不等式の証明。
今回は、数B「数列」の単元の終わりのほうにある、数学的帰納法の話です。
こんな問題です。
問題
nが2以上の自然数のとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1)
( )は、見やすいようにつけました。( )の部分が、右辺の分母です。
さて、この問題、数学的帰納法を用いる不等式の証明問題としては基本問題ですが、わからない子は本当にわからない、という状態に陥りがちです。
わからないことを自覚しているのなら、理解してわかるようになればいいのですが、何か誤解し、自分が誤解していることに気づかない、ということも多くなってきます。
ある子の答案。
1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1) ・・・①
【1】n=2
1+1/2>2・2 / (2+1)
3/2>4/3
成り立つ。
【2】n=k
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1)
n=k+1
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
2k / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
①は成り立つ。
・・・この子は、何を書いているのだろう?
呆然と答案を見る私に、その子は、
「ちょっと書き方が違うんですけど」
と、あたかも、それが若干のスタイルの違いであるかのように言い訳したのですが、そんなレベルのことではないのです。
そして、本人がそれに気づいていないことが、この課題の根深さを物語っているのでした。
これは、教科書の例題などの模範解答を模倣しようとして、その根本にある理屈を理解していないために起きている、数学答案の形骸化です。
答案の冒頭から見ていきましょう。
このブログでも、繰り返し書いてきたことですが、まだ証明していない式を、あたかも事実であるかのようにするっと答案に書くことはできません。
不等式を解く計算問題ならば、その不等式が成り立つのは事実なのですが、証明問題は、その不等式が本当に成り立つのかどうかは現時点で不明であり、それをこれから示していくのです。
それなのに、1行目でいきなり、
「1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1) ・・・①」
と書いてしまうのは、数学が苦手な子に多い傾向です。
「1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1) ・・・① を証明する。」
と書くのならばいいのですが、その2つがどう意味が異なるのか、解説しても伝わらない・・・。
幾度解説しても、どうしても、上のような書き方が改まらない・・・。
数学が苦手な高校生との授業で、しばしば起こる断絶です。
これも幾度も書いてきたことですが、彼らは、
「数学の答案にそんなに日本語を書く必要はない」
という間違った認識を持っています。
高校数学の答案、まして証明問題ならば、式より日本語のほうが多いこともあって当然、という常識が伝わらないのです。
数学は式だけ書くもの、と固く信じて疑わない。
次に、
【1】n=2
1+1/2>2・2 / (2+1)
3/2>4/3
成り立つ。
の部分。
これも、答案の書き方としては、かなりまずいのです。
本人はわかってやっているのだと思うのですが、読む者に、それが伝わらないのです。
不等号の使い方自体は間違っていないのですが。
模範解答としては、
【1】n=2のとき
左辺=1+1/2=3/2
右辺=2・2 / (2+1)=4/3
よって、左辺>右辺となり、①は成り立つ。
こう書けば、何のために何をしているのかがよく伝わるのですが、こういう答案を「解説」と誤解し、自分が実際に書くものだと思っていない子は多いです。
それを単なる「スタイルの問題」と思っているところが、根深い。
客観性ということが、まだあまり理解できていないのではないか、と思うこともあります。
自分がわかるんだから、他人もわかって当然、と思ってしまう。
わからない他人は、意地悪な人なので、相手にする必要はない、とまで思ってしまっているかな?
さすがに、それはないでしょうか。
そして、スタイルの問題でも何でもなく、完全に誤答なのが、以下の部分です。
【2】n=k
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1)
n=k+1
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
2k / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
成り立つ。
最初の2行は、かろうじてわかるのです。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1) が成り立つと仮定すると、
と、ここでも日本語を書き加える必要はあるのですが。
問題は、その後。
n=k+1
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
これは、何なのだろう・・・。
これ、答案の下から2行目と同じ式です。
本当に言いたいことは、確かにこれなのです。
証明したいことをするっと書いてしまっているだけなのか?
それとも、何か誤解しているのか?
ここが核心です。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1) が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
これが当然そうなると、思い込んでいるだけなのではないだろうか?
n=kのときに成り立つのだから、n=k+1のときも当然成り立つのだと、信じ込んでいないだろうか?
でも、本当にそうなの?
それを証明しようとしているのではないの?
そんなことが当然言えるのなら、そもそもこんな証明は不要なのに、頭の中で、つながるべきではない部分が癒着してしまっているのではないか?
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1) が成り立つと仮定したときに言えることは、そんなことではありません。
この不等式が成り立つと仮定して、そこからいえることは、両辺に1/(k+1) を加えた式です。
それは不等式のルールです。
不等式の両辺に同じものを加えても、その不等式は成立します。
だから、答案として書くべきことは。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k/(k+1) が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k +1/(k+1) > 2k/(k+1) +1/(k+1)
です。
仮定した式の両辺に、1/(k+1) を加えました。
これなら、言えます。
でも、本当に証明したい不等式の右辺と、今書いた不等式の右辺は、違うものですね。
ここが、数学的帰納法を用いた不等式の証明の核心です。
本当に証明したい不等式は、A>C なのだとして、
でも、仮定から言えることは、A>Bでしかないのだとしたら、どうしたらいいのか?
BとCの大きさ比べをしたらいいのです。
B>C を言うことが、もしできたら、
A>B はもともと言えるのですから、
A>B>C
というふうに、不等式を連結することが可能です。
それはすなわち、途中のBを抜いて、
A>C だということです。
これが、数学的帰納法を用いた不等式の証明の基本構造です。
ところが、学校の授業を受けた場合に。
あるいは、独学で教科書の例題や問題集の解答解説を読んだ場合に、
BとCが式としても似通っているので、見間違う、ということが起こるようなのです。
BとCを同一視してしまうのです。
そこから、
あ、A>C って、すぐに書いていいんだ、という誤解が生まれるようなのです。
そうだよねー。
n=k のときに成り立つんだから、そりゃあ、n=k+1のときも成り立つよねー。
と、そういうことについては、なぜか全く疑義を挟まない思考傾向もあって、完全な誤解がそこに生じるのだと想像されます。
n=k のときに成り立つからといって、n=k+1 のときに成り立つとは限らないから、証明しようとしているんです。
実際には成り立つんですけど、それは証明してから言うことであって、何の根拠もないのに言っていいことではないのです。
しかし、こういう理屈は、一旦誤解してしまった子には、ほぼ理解不能のようなのです。
私の書く板書を呆然と見つめ、全く言葉を発しません。
何1つ理解できない様子を示します。
それは、自分がそれまで正しいと思っていたことを全否定されていることでもありますので、理解するのは難しいことなのでしょう。
何をどう考え直せばいいのかすら、わからない。
自分が、学校の授業で理解したことを、間違っていると言うのだろうか?
学校では、そう教わったのに!
いやいやいや、学校でも、そんなことは、教わっていません。
あなたが、何が誤解したのです。
何か見間違えたのです。
早く、それに気づいてほしいのです。
あるいは、どこまでも自分の答案にこだわり、自分の答案のどこを少しだけ直せば正解になるのかと、そんなことを考えてしまうこともあるようです。
いや、根本的に間違っている答案なので、根本的に改めてほしいのです。
A>B>C から A>C を示そうとしているという大筋を理解していない限り、何をどう書いても、間違いなのです。
さて、模範解答を続けます。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k/(k+1) が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k +1/(k+1) > 2k/(k+1) +1/(k+1) ・・・②
すなわち、さきほど解説したA>B>Cでいえば、この式の左辺がAで、右辺がBです。
では、本当に証明したいCは、何か?
2(k+1) / (k+1+1)
ですね。
だから、B>Cであることを示すために、ここで引き算をします。
これは、数Ⅱ「式と証明」で学習した、不等式の証明の基本的なやり方でした。
B-C>0 であることを示すことができれば、B>C です。
すなわち、
2k/(k+1)+1/(k+1)-2(k+1) / (k+1+1)
さあ、これを計算していきましょう。
=(2k+1) / (k+1)-2(k+1) / (k+2)
通分します。
=(2k+1)(k+2)-2(k+1)^2 / (k+1)(k+2)
分子を展開して整理します。
=2k^2+5k+2-2k^2-4k-2 / (k+1)(k+2)
=k / (k+1)(k+2)>0
k≧2ですから、分子も分母も正の数となり、確かに0より大きいですね。
よって、
2k/(k+1)+1/(k+1) > 2(k+1) / (k+1+1) ・・・③
②、③より、言いたかったA>Cが言えました。
さて、もう一度初めから、答案として整理すると、
1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1) ・・・① を証明する。
【1】n=2のとき
左辺=1+1/2=3/2
右辺=2・2 / (2+1)=4/3
よって、左辺>右辺となり、①は成り立つ。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k/(k+1)が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k +1/(k+1) > 2k/(k+1) +1/(k+1) ・・・②
ここで、
2k/(k+1)+1/(k+1)-2(k+1) / (k+1+1)
=(2k+1) / (k+1)-2(k+1) / (k+2)
=(2k+1)(k+2)-2(k+1)^2 / (k+1)(k+2)
=2k^2+5k+2-2k^2-4k-2 / (k+1)(k+2)
=k / (k+1)(k+2)>0
よって、
2k/(k+1)+1/(k+1) > 2(k+1) / (k+1+1) ・・・③
②、③より、
1+1/2+1/3+・・・+1/k +1/(k+1) > 2(k+1) / (k+1+1)
すなわち、n=k+1 のときも、①は成り立つ。
【1】【2】より、2以上のすべての自然数において、①は成り立つ。
となります。
こんな問題です。
問題
nが2以上の自然数のとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1)
( )は、見やすいようにつけました。( )の部分が、右辺の分母です。
さて、この問題、数学的帰納法を用いる不等式の証明問題としては基本問題ですが、わからない子は本当にわからない、という状態に陥りがちです。
わからないことを自覚しているのなら、理解してわかるようになればいいのですが、何か誤解し、自分が誤解していることに気づかない、ということも多くなってきます。
ある子の答案。
1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1) ・・・①
【1】n=2
1+1/2>2・2 / (2+1)
3/2>4/3
成り立つ。
【2】n=k
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1)
n=k+1
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
2k / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
①は成り立つ。
・・・この子は、何を書いているのだろう?
呆然と答案を見る私に、その子は、
「ちょっと書き方が違うんですけど」
と、あたかも、それが若干のスタイルの違いであるかのように言い訳したのですが、そんなレベルのことではないのです。
そして、本人がそれに気づいていないことが、この課題の根深さを物語っているのでした。
これは、教科書の例題などの模範解答を模倣しようとして、その根本にある理屈を理解していないために起きている、数学答案の形骸化です。
答案の冒頭から見ていきましょう。
このブログでも、繰り返し書いてきたことですが、まだ証明していない式を、あたかも事実であるかのようにするっと答案に書くことはできません。
不等式を解く計算問題ならば、その不等式が成り立つのは事実なのですが、証明問題は、その不等式が本当に成り立つのかどうかは現時点で不明であり、それをこれから示していくのです。
それなのに、1行目でいきなり、
「1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1) ・・・①」
と書いてしまうのは、数学が苦手な子に多い傾向です。
「1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1) ・・・① を証明する。」
と書くのならばいいのですが、その2つがどう意味が異なるのか、解説しても伝わらない・・・。
幾度解説しても、どうしても、上のような書き方が改まらない・・・。
数学が苦手な高校生との授業で、しばしば起こる断絶です。
これも幾度も書いてきたことですが、彼らは、
「数学の答案にそんなに日本語を書く必要はない」
という間違った認識を持っています。
高校数学の答案、まして証明問題ならば、式より日本語のほうが多いこともあって当然、という常識が伝わらないのです。
数学は式だけ書くもの、と固く信じて疑わない。
次に、
【1】n=2
1+1/2>2・2 / (2+1)
3/2>4/3
成り立つ。
の部分。
これも、答案の書き方としては、かなりまずいのです。
本人はわかってやっているのだと思うのですが、読む者に、それが伝わらないのです。
不等号の使い方自体は間違っていないのですが。
模範解答としては、
【1】n=2のとき
左辺=1+1/2=3/2
右辺=2・2 / (2+1)=4/3
よって、左辺>右辺となり、①は成り立つ。
こう書けば、何のために何をしているのかがよく伝わるのですが、こういう答案を「解説」と誤解し、自分が実際に書くものだと思っていない子は多いです。
それを単なる「スタイルの問題」と思っているところが、根深い。
客観性ということが、まだあまり理解できていないのではないか、と思うこともあります。
自分がわかるんだから、他人もわかって当然、と思ってしまう。
わからない他人は、意地悪な人なので、相手にする必要はない、とまで思ってしまっているかな?
さすがに、それはないでしょうか。
そして、スタイルの問題でも何でもなく、完全に誤答なのが、以下の部分です。
【2】n=k
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1)
n=k+1
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
2k / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
成り立つ。
最初の2行は、かろうじてわかるのです。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1) が成り立つと仮定すると、
と、ここでも日本語を書き加える必要はあるのですが。
問題は、その後。
n=k+1
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
これは、何なのだろう・・・。
これ、答案の下から2行目と同じ式です。
本当に言いたいことは、確かにこれなのです。
証明したいことをするっと書いてしまっているだけなのか?
それとも、何か誤解しているのか?
ここが核心です。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1) が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k+1 / (k+1)>2(k+1) / (k+1+1)
これが当然そうなると、思い込んでいるだけなのではないだろうか?
n=kのときに成り立つのだから、n=k+1のときも当然成り立つのだと、信じ込んでいないだろうか?
でも、本当にそうなの?
それを証明しようとしているのではないの?
そんなことが当然言えるのなら、そもそもこんな証明は不要なのに、頭の中で、つながるべきではない部分が癒着してしまっているのではないか?
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k / (k+1) が成り立つと仮定したときに言えることは、そんなことではありません。
この不等式が成り立つと仮定して、そこからいえることは、両辺に1/(k+1) を加えた式です。
それは不等式のルールです。
不等式の両辺に同じものを加えても、その不等式は成立します。
だから、答案として書くべきことは。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k/(k+1) が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k +1/(k+1) > 2k/(k+1) +1/(k+1)
です。
仮定した式の両辺に、1/(k+1) を加えました。
これなら、言えます。
でも、本当に証明したい不等式の右辺と、今書いた不等式の右辺は、違うものですね。
ここが、数学的帰納法を用いた不等式の証明の核心です。
本当に証明したい不等式は、A>C なのだとして、
でも、仮定から言えることは、A>Bでしかないのだとしたら、どうしたらいいのか?
BとCの大きさ比べをしたらいいのです。
B>C を言うことが、もしできたら、
A>B はもともと言えるのですから、
A>B>C
というふうに、不等式を連結することが可能です。
それはすなわち、途中のBを抜いて、
A>C だということです。
これが、数学的帰納法を用いた不等式の証明の基本構造です。
ところが、学校の授業を受けた場合に。
あるいは、独学で教科書の例題や問題集の解答解説を読んだ場合に、
BとCが式としても似通っているので、見間違う、ということが起こるようなのです。
BとCを同一視してしまうのです。
そこから、
あ、A>C って、すぐに書いていいんだ、という誤解が生まれるようなのです。
そうだよねー。
n=k のときに成り立つんだから、そりゃあ、n=k+1のときも成り立つよねー。
と、そういうことについては、なぜか全く疑義を挟まない思考傾向もあって、完全な誤解がそこに生じるのだと想像されます。
n=k のときに成り立つからといって、n=k+1 のときに成り立つとは限らないから、証明しようとしているんです。
実際には成り立つんですけど、それは証明してから言うことであって、何の根拠もないのに言っていいことではないのです。
しかし、こういう理屈は、一旦誤解してしまった子には、ほぼ理解不能のようなのです。
私の書く板書を呆然と見つめ、全く言葉を発しません。
何1つ理解できない様子を示します。
それは、自分がそれまで正しいと思っていたことを全否定されていることでもありますので、理解するのは難しいことなのでしょう。
何をどう考え直せばいいのかすら、わからない。
自分が、学校の授業で理解したことを、間違っていると言うのだろうか?
学校では、そう教わったのに!
いやいやいや、学校でも、そんなことは、教わっていません。
あなたが、何が誤解したのです。
何か見間違えたのです。
早く、それに気づいてほしいのです。
あるいは、どこまでも自分の答案にこだわり、自分の答案のどこを少しだけ直せば正解になるのかと、そんなことを考えてしまうこともあるようです。
いや、根本的に間違っている答案なので、根本的に改めてほしいのです。
A>B>C から A>C を示そうとしているという大筋を理解していない限り、何をどう書いても、間違いなのです。
さて、模範解答を続けます。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k/(k+1) が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k +1/(k+1) > 2k/(k+1) +1/(k+1) ・・・②
すなわち、さきほど解説したA>B>Cでいえば、この式の左辺がAで、右辺がBです。
では、本当に証明したいCは、何か?
2(k+1) / (k+1+1)
ですね。
だから、B>Cであることを示すために、ここで引き算をします。
これは、数Ⅱ「式と証明」で学習した、不等式の証明の基本的なやり方でした。
B-C>0 であることを示すことができれば、B>C です。
すなわち、
2k/(k+1)+1/(k+1)-2(k+1) / (k+1+1)
さあ、これを計算していきましょう。
=(2k+1) / (k+1)-2(k+1) / (k+2)
通分します。
=(2k+1)(k+2)-2(k+1)^2 / (k+1)(k+2)
分子を展開して整理します。
=2k^2+5k+2-2k^2-4k-2 / (k+1)(k+2)
=k / (k+1)(k+2)>0
k≧2ですから、分子も分母も正の数となり、確かに0より大きいですね。
よって、
2k/(k+1)+1/(k+1) > 2(k+1) / (k+1+1) ・・・③
②、③より、言いたかったA>Cが言えました。
さて、もう一度初めから、答案として整理すると、
1+1/2+1/3+・・・+1/n>2n / (n+1) ・・・① を証明する。
【1】n=2のとき
左辺=1+1/2=3/2
右辺=2・2 / (2+1)=4/3
よって、左辺>右辺となり、①は成り立つ。
【2】n=kのとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k>2k/(k+1)が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
1+1/2+1/3+・・・+1/k +1/(k+1) > 2k/(k+1) +1/(k+1) ・・・②
ここで、
2k/(k+1)+1/(k+1)-2(k+1) / (k+1+1)
=(2k+1) / (k+1)-2(k+1) / (k+2)
=(2k+1)(k+2)-2(k+1)^2 / (k+1)(k+2)
=2k^2+5k+2-2k^2-4k-2 / (k+1)(k+2)
=k / (k+1)(k+2)>0
よって、
2k/(k+1)+1/(k+1) > 2(k+1) / (k+1+1) ・・・③
②、③より、
1+1/2+1/3+・・・+1/k +1/(k+1) > 2(k+1) / (k+1+1)
すなわち、n=k+1 のときも、①は成り立つ。
【1】【2】より、2以上のすべての自然数において、①は成り立つ。
となります。
Posted by セギ at 15:39│Comments(0)
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