2024年09月21日
中学数学 方程式の文章題の式が上手く立てられない。
「方程式の利用」すなわち、文章題の立式が苦手な子は多いですが、その立式を見ていると、簡単なことを難しくしている場合があります。
問題 ある数に4を加えて2倍した数は、もとの数の4倍よりも2小さい。ある数を求めよ。
これは、書いてある通りに立式するだけなので、易しい問題のはずです。
それでも、苦手な子は苦手です。
まず、何をどうすればいいのか、何も思いつかない子がいます。
こういう問題を見ると、心が小学生に戻ってしまうようなのです。
方程式を学習したのだから、方程式を使えばいいのだという発想がない。
すなわち、ある数を x とする発想がないのです。
なぜ、これが定着しないのかは、非常に難しい課題です。
まず、本人が、文章題を解く必要はないと思い込んでいる場合。
あるいは、文章題は難しいから自分には解けないと思い込んでいる場合。
その自己評価の低さはどこからきているものなのか、そこから考える必要があるのかもしれません。
次に、文章題を解こうとは思っている子の場合。
けれど、ある数を x として解くのだということに気づかない。
どれだけ練習しても、新しい問題になると、気づかない。
全部忘れてしまう・・・。
我々は数学者ではないですし、そもそも、こんな易しい問題は現代の数学者が考えるレベルのものでもありません。
基礎は、「習う」ものなので、自力で苦労して発想しなくてもよいのです。
大昔の数学者が、これをゼロから発想するのは確かに大変だったろうと思うのですが、現代において、そんな必要はないのです。
このあたりは数学の基礎の基礎なので、道は拓かれ、舗装された大通りになっています。
そういう発想で解くのだ、という知識を得て、その通りに解いていけばいいだけです。
それなのに、大昔の数学者のように、これをゼロから発想しようとしているのではないのか?
そして、さすがに大昔の数学者のような才能はないので、何も思いつかないのではないか?
方程式を使うことをゼロから発想するのは、ニュートン並みの才能が必要です。
それは、さすがに・・・。
固まったようになっている生徒を見ると、そのように想像してしまうことがあります。
憶えるだけの勉強は確かにつまらない。
手順の記憶だけの勉強は、いずれ袋小路に突き当たります。
しかし、何もかもゼロから発想しろとも言っていないのです。
「ある数を x として式を立てる」
という発想は、学習して、頭の中にストックすればよいこと。
この発想は、他で応用できますから。
そのようにストックしたいくつもの武器を使って、初見の問題を解くのが、高校までの数学です。
これは、問題ごとに細かく手順を丸暗記するだけの勉強とは、質が違うことです。
ともかく、ある数を x としましょう。
ところが、それはわかっていても、実際に式を立てられない子もいます。
問題 ある数に4を加えて2倍した数は、もとの数の4倍よりも2小さい。ある数を求めよ。
一般的にこういう問題では文中にある「は」という助詞が=の合図です。
だから、「は」の前までが左辺です。
すなわち、「ある数に4を加えて2倍した数」が左辺。
ですから、
(x+4)×2。
文字式のルールに沿って書くと、
2(x+4)
しかし、これにも問題はあります。
小学生の頃に( )の使い方を正しく身につけていない子は、( )のついている式を解くことはかろうじてできても、自ら( )を使った式は立てられないことがあります。
注意されない限り、ほぼ必ず、書き忘れるのです。
x+4×2
という式を普通に書いてしまいます。
こう書いてしまうと、後の計算が違ってきてしまいます。
それは、文章題が苦手だから、ではなく、四則計算の基本が身についていないからです。
反省し、補強する点が違うのですが、そこが曖昧になっている子も多いです。
そこも何とかクリアしたとして。
さて、右辺を作りましょう。
それは、助詞「は」の後ろの部分。
「もとの数の4倍よりも2小さい」。
つまり、4x-2
左辺=右辺ですから、方程式は、
2(x+4)=4x-2
問題文の通りに、このように式を立てていけば、スムーズです。
しかし、四則演算のルールは身につけているのに、簡単なはずのこうした問題でもかなり苦戦する子もいます。
そういう子の立てる式は、こんなふうなことがあります。
問題 ある数に4を加えて2倍した数は、もとの数の4倍よりも2小さい。ある数を求めよ。
ある数を x とすると、
2(x+4)-4x=2
・・・うん?
この式、形は違うけれども、合っている・・・?
いいえ。
これは間違っています。
ある数に4を加えて2倍した数のほうが小さいのですから、あえてこの形で式を立てるのならば、
4x-2(x+4)=2
です。
面倒くさいですね。
大小を、文章から正確に読み取らないと、正しい式が立てられない・・・。
だから、文章題で正答できなくなります。
・・・いいえ!
こんな発想で立式しているから難しくなるのであって、この問題は、もっと簡単なんです。
どうしてこういう式を立ててしまうのでしょうか?
考えられることの1つは、小学校の算数をいまだに引きずっていて、中学の数学に上手く移行できていないのではないかということ。
小学校の算数の文章題は、問題文を読み取って関係をつかんだうえで、答えを求める式を立てます。
そのために問題にある「加える」「引く」を頭の中で「ひき算」「たし算」に転換する作業が必要になります。
逆算の発想で、問題文で加えているんだから引く式を立てなくちゃ、かけているから割る式を立てなくちゃ、と考えなくてはなりません。
小学生は、脳の発達過程の関係で、具体的なことしかわからないため、そういう解き方しかできないのです。
その癖がついてしまい、中学生になってもそのように考えてしまう・・・。
本人が、まだ、そのようにしか考えられないのなら、仕方ない面もあるのかもしれません。
まだ、方程式を学ぶべき発達段階ではない。
まだ、実質は、小学生。
それでも、中学の数学は、そのように解くものではないのだということを、できれば教えたいのです。
こういう発想がある。
こういう解き方がある。
もうそろそろ、あなたの頭脳は、それを理解できるようになっているんじゃない?
使おうとしないだけで、あなたの頭脳は、本当はもっと動くんじゃない?
方程式は等しい数量の関係を表す式。
そのように学習します。
ここで重要なのは「関係を表す」ではなく、「等しい数量」ということです。
問題文の中の、何かの数量を2通りの方法で表すこと。
そう考えたほうがシンプルです。
だから、
4x-2(x+4)=2
という式が間違っているわけではないけれど、
2(x+4)=4x-2
という式のほうが、シンプルで立てやすいのです。
「は」とあるなら等しいのだし、「小さい」と書いてあれば、引けばいい。
とても簡単です。
「あなた書いた方程式は何の数量を表しているの?」
と質問すると、黙りこんでしまう子は多いです。
どうせ間違っているから何か文句を言われているんだろうと勝手に察して黙ってしまう子が今は多いですが、
「いや、式自体は間違っていないんだけど」
と伝えても、やはり何も答えられない子が多いです。
何の数量を表そうとしたのかではなく、何かの関係を表そうとしているからだと思います。
それは、小学生の、答を求める式を立てる発想に近いと思うのです。
方程式は、もっと単純に立式できるんです。
問題 ある数に4を加えて2倍した数は、もとの数の4倍よりも2小さい。ある数を求めよ。
ある数を x とすると、
2(x+4)-4x=2
この間違った式を立ててしまった子に、
「何の数量を表しているのかがわかれば、この方程式は手直しできるよ」
と重ねて問いかけると、
「ある数」
という答が返ってきました。
頑張ったね。
何か答えられるだけ、素晴らしいのです。
黙り込んでスルーを目論む子もいます。
個別指導で黙り込んだら、効果は半減します。
講師と対話できる子は、伸びます。
でも、この式が表しているのは、「ある数」ではないのです。
2数の差、です。
2数の関係を表そうとして、大小が逆になってしまっているのです。
関係を表すのは難しいので、式が歪んでしまったのです。
数に関する問題では、何の数量を表しているのかは自覚しにくいのは事実です。
しかし、これが「速さ」に関する問題になって、
「あなたの式は、何の数量を表しているの?距離?時間?」
と質問しても、文章題が苦手な子は、答えられません。
食塩水の問題でも、
「あなたの式は何の数量を表しているの?食塩水の量?食塩の量?」
この問いかけにも、そんな質問をされるとは思わなかった、考えたことがないという表情をする子が多いのです。
式が何の数量を表しているかは非常に重要なことなのに、それを意識しないで立式しているから、式が途中で歪むのです。
方程式は何かの「関係」よりも、何かの「数量」そのものを表していることが多い。
左辺も右辺も同じ何かの数量を表している。
そうとらえたほうが、シンプルです。
問題 ある数に4を加えて2倍した数は、もとの数の4倍よりも2小さい。
ある数をxとすると、
2(x+4)=4x-2
この方程式が表している数量は、「ある数」ではありません。
「ある数に4を加えて2倍した数」です。
それが、「もとの数の4倍よりも2小さい」のです。
右辺では同じ数量を言われた通りに別の表現で表しているだけです。
2(x+4)-4x=2
と、間違った立式をしてしまう子は学力が低いわけではありません。
問題文を読み、大小関係を把握しようと努めているのです。
問題文を読解しようとする意志は、むしろ強い。
才能が眠っています。
ただ、才能の使い途を間違えています。
もう1つ心配なのは、立式の後の計算のことまで考えて、左辺に x を集めようとしている場合。
立式と計算を分けて考えることができず、立式のときに、もうその後の計算のしやすさを考えている場合です。
それが成功するほどの並外れて高い能力の子ならば、私も放置しておくのですが、実際には、余計なことを考える分だけ脳のキャパを奪われ、立式を失敗することのほうが多いです。
立式と実際の計算とを分割して考えることができないほどに思考が混沌としている場合が大半です。
問題 ある数に4を加えて2倍した数は、もとの数の4倍よりも2小さい。
ある数をxとすると、
2(x+4)+2=4x
という立式をする子もいます。
この式も間違ってはいません。
何でこの問題文からこの立式になるんだろう、何を複雑なことを考えているんだろう、とは思うのですが、式として間違ってはいないのです。
しかし、これも、
2(x+4)-2=4x
と、間違った式を立ててしまうリスクが高い。
大小関係を文章から読み取って立てる式は難しいのです。
そんなことをしなくても、問題に書いてある通りに、書いてある順番に書いてけば、正しい式になります。
「大きい」と書いてあればプラス、「小さい」と書いてあればマイナス。
問題に書かれていることと式のプラス・マイナスが一致します。
難しいことを考え過ぎるから、むしろ間違えるのです。
方程式は、難しいことをとても簡単にすることができるから、利用価値があるのです。
Posted by セギ at 11:47│Comments(0)
│算数・数学
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