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2021年06月27日

高校数Ⅱ「三角関数」特別な角の三角関数。

高校数Ⅱ「三角関数」特別な角の三角関数。

さて、三角関数の学習の3回目。
今回は特別な角の三角関数。
これは、「三角比」の学習のときに覚えたことを「三角関数」用にバージョンアップするだけです。
特別な角とは、三角定規の角とそのバリエーションです。
すなわち、30°、45°、60°です。

180°がπ。
度数法で30°は、弧度法では、π/6です。
だから、例えば、
sin π/6=sin30°=1/2
cos π/4=cos45°=1/√2
tan π/3=tan60°=√3

三角定規の角は、直角三角形をイメージして、サイン・コサイン・タンジェントの最初の定義通りに辺の比を考えればわかります。
暗記できるなら暗記したらよいですが、暗記しなくても、三角定規の三角形を頭の中にイメージするだけで、いつでも復元できます。
私自身は、sin45°=sinπ/4=1/√2、cos45°=cosπ/4=1/√2 はさすがに覚えてしまっていて、何もイメージせずに直接変換していますが、他は紛らわしいので、直角三角形をイメージして変換しています。
実際に図を描く必要はなく、頭の中で直角三角形をイメージするだけなので、1秒ほどで変換できます。
しかし、その1秒が惜しいと思う人は、すべて暗記したらいいと思います。
覚え間違いだけは、くれぐれも注意してください。
何となく覚えているつもりで、いつの間にか値が逆になってしまっていて、基本問題で失点してしまうのは、残念なことです。

・・・と、ここまで説明して、不安に感じていることが1つあります。
この説明は少なくとも「三角比」はマスターしている人への説明です。
しかし、現実の高校生は、「三角関数」を学習する頃には、「三角比」の基本を忘れている場合があるのです。
そういう意味では一気に学習するほうが効率的なので中高一貫校向けの教科書「体系数学」などは、三角比と三角関数の学習を合体させ、1つの単元として学習します。
都立高校でも、高校1年の3学期に「三角比」を学習し、高校2年の1学期に「三角関数」を学習するというように、カリキュラムの順番を組み替えて、生徒が基本を忘れてしまうのを回避しているところもあります。

このブログにもよく書くことですが、現代は、学力優秀な子も多い一方で、ものを覚えない子たちも多く存在します。
記憶の大半を「外付けのデバイス」に頼っている子たちです。
確かに、わからないことは調べたらいい。
検索したり、機械に問いかければ、すぐ答えてくれます。
そうしたこともあって、ものを覚えることに価値を感じていない人もいるかもしれません。
テスト前だけ、無理に記憶を詰め込むが、すぐに忘れる。
必要ない記憶だからと、消去する。
脳の空き容量は常に最大限に確保。
頭が軽くて清々する。

そうした人たちは、高校生になると、数学でどうしても苦戦します。
高校1年で学んだ知識がないのに、高校2年の数学を理解するのは、さすがに無理です。
理解できないまま、公式を丸暗記してやり過ごすことしかできなくなっていきます。
だから、年に何回かの校外模試では、テスト範囲が指定されていないため、数学の問題はほとんど解くことができません。
単純な計算問題だけは解くことができたりしますが、最近の模試は、そんな問題はないことが多いのです。
問題が何を要求しているのか、わからない。
何の単元の問題なのか、判断できない。
知識が頭の中に入っていないので、どうにもなりません。

「三角比」の知識のない人に、「三角関数」を理解するのは無理です。
「三角比」をわかっていることが前提で授業は進んでいきます。
学校の先生が加法定理を理解してもらおうと躍起になっているというのに、それを聞いている生徒は、
「角度のたし算?普通にたせばいいじゃん。こんな公式要らないだろ」
と内心思っている。
このすれ違いは深刻です。
単に角度をたすのではなく、角度の和のサインの値を求めようとしているのだと説明されると、
「サインって何だっけ?角度のことじゃないの?」
と思ってしまう・・・。

サインって何でしたっけ?

三角比とは何か?
まずは、直角三角形を整地しましょう。
∠θが左下。
直角が右下。
このように直角三角形を置きます。
この位置が、最初は一番理解しやすいです。
直角三角形の各辺には名前があります。
直角と向き合う辺が「斜辺」。
∠θと向き合う辺が「対辺」。
残る辺を「底辺」と呼びます。(「隣辺」と呼ぶこともあります)
そして、
sinθ=対辺/斜辺
cosθ=底辺/斜辺
tanθ=対辺/底辺
こうして、辺の名称で覚えるのが基本です。

しかし、それでもまだ覚えにくいですね。
アルファベットの筆記体のsを描くように分母からなぞるのがサイン。
cを描くようになぞるのがコサイン。
tを描くようになぞるのがタンジェント、と覚えます。
筆記体のSを知らない人は、Cを描くようになぞるのがコサインというのはブロック体でも同じなので、それで覚えましょう。
そうではないほうが、サインです。

最初はそのように三角形を「整地」して考えますが、慣れてくればサインとコサインの分母は常に斜辺だと気づきます。
サインは、斜辺から、∠θとは遠いほうに進む。
コサインは、斜辺から∠θのほうに進む。
そう理解すると、三角形がどんな向きになっていても、サインとコサインを瞬時に判断できるようになります。



このように、三角比の始まりは、直角三角形の辺の比です。
角度から辺の長さを求めることができるので、測量に非常に便利です。
しかし、直角三角形である限り、∠θは常に鋭角で、限定的です。
何とか鈍角でも三角比は使えないでしょうか?

はあ?
直角三角形に鈍角なんてあるわけないし!
そんな反応も予想できます。
それは当然そうなのですが、とにかく便利なので、使えるようにしたいのです。
その発想が原点です。
とにかく、1つのことが言えたら、それを一般化したいのです。
何事においても限定解除を求めていくのが、数学の基本方針です。

三角比の拡張は、単位円を描くことから始まります。
単位円とは、座標平面上に描いた、原点を中心とした半径1の円です。
この円周上を動く動点Pの座標を(x , y)とします。
中心と結んだ線分OPを動径と呼びます。
「動く半径」です。
Pを円周上のどこにとってもOPは円の半径ですから常に1です。
まずは今まで通り、第1象限の円周上に点Pをとってみます。
Pからx軸に垂線を下ろします。
そうすると、直角三角形を座標平面上に描くことができます。
斜辺は半径ですから、長さは1です。
P(x , y)ですから、この直角三角形の対辺の長さはy、底辺の長さはxとなります。
動径とx軸の正の方向との成す角をθとすると、
sinθ=y/1=y
cosθ=x/1=x
tanθ=y/x
となります。
これは便利です。
サインがy座標そのもの、コサインがx座標そのものになります。
このように、三角比を定義し直します。

原点Oを中心として半径rの円において、x軸の正の向きから左まわりに大きさθの角をとったとき定まる半径をOPとし、点Pの座標を(x , y)とする。このとき、
sinθ=y/r
cosθ=x/ r
tanθ=y/x と定める。
というのが、拡張した三角比の定義です。

実際には、r=1のとき、サインがy座標そのもの、コサインがx座標そのもの、タンジェントは直線OPの傾きそのものになり、とても便利なので、この単位円で話を進めていきます。

しかし、数学が苦手な子は、ここで混乱を起こすことがあります。
「単位円上の動点Pの座標を(x , y)とする」
というのは定義であるのに、
「どうしてそうなるんですか?」
「点Pが円周上にないときはどうするんですか?」
といった不要な質問で頭がいっぱいになって、理解できなくなる人がいます。

それは定義なんだから、疑義を挟むところではないんです。
そう定義することで後々便利なのです。
しかし、そう言っても、納得できない様子です。
xやyというのは、もっと使い方に別のルールがあって、そこで勝手に使ってはいけないのではないか?
そういう思い込みがあるのかもしれません。

あるいは、直角三角形の辺に注目し過ぎていて、重要なのは角度なのだということがうまく呑み込めないのかもしれません。
単位円をはみ出す直角三角形が頭の中にちらついて、説明がよく理解できないということがあるように思います。
直角三角形は、単位円からはみ出すことはありません。
なぜなら、ここで注目しているのは、直角三角形ではなく、x軸の正の方向と動径との作る角度だからです。
直角三角形のサイズは関係ないのです。
常に、単位円上に点Pがあるサイズで話を進めていくのです。
サイン・コサイン・タンジェントは、それぞれの角に固有の値であり、もう直角三角形の辺の比ではなくなるようにしたい。
そのための単位円であり、P(x , y)という定義なのです。


話を戻しましょう。
sinθ=y
cosθ=x
tanθ=y/x
このように定義し直したら、もう直角三角形から離れ、三角比は1人歩きできます。
座標平面の第2象限、すなわち、単位円の半円の左側に動径OPが来ても、同じ定義が使えます。
それで鈍角の三角比を求めることができます。
サインは、点Pのy座標そのもの。
コサインは、点Pのx座標そのもの。
タンジェントは、直線OPの傾き。
そう把握します。

しかし、点Pが第2象限にあるとき、反対向きの直角三角形を描き、その辺の比を求めようとしてサインとコサインがグチャグチャになってしまう人がいます。
うんうんうなりながら、反転している直角三角形と格闘しています。
でも、そういうことではないんです。
∠θはあくまでも、x軸の正の方向と動径OPとの成す角です。
考えるヒントとして反対向きの直角三角形を描いて解説するのは、第1象限の直角三角形とy軸に対して線対称であることを示すためです。
線対称だから、第1象限に置き換えて考えると楽ですよと説明しているだけなのですが、ノートに第2象限の直角三角形が残るせいか、そっちで求めるのだと誤解してしまう人がいます。

第2象限の三角比は、絶対値を第1象限の直角三角形で把握し、それにプラス・マイナスの符号をつけて求めていくと楽です。
拡張された定義から明らかですが、サインはyの値ですから、相変わらず正の数です。
コサインはxの値ですから、負の数。
タンジェントもxの値が負の数であることが影響し、負の数となります。

考えるヒントとして反対向きの直角三角形をイメージしたい人はすればよいのですが、それで混乱するのは無駄なことだと思います。
その結果、
「鈍角の三角比とは、左側の直角三角形の辺の比を求めること」
と思い込み、
「三角比とは直角三角形の辺の比である」
というところから意識を拡張できない子もいます。
三角形の面積を求める頃になって、
「直角三角形以外では、三角比は使えないですよっ」
と言い張る高校生と不毛な議論をした経験もあります。


実際の問題で考えてみましょう。
例えば、∠θ=120°=2/3 πのとき。
P(x , y)は、∠θ=60°=π/3 のときのPとy軸について線対称ですから、yの値、すなわちsinの値は同じです。
xの値、すなわちcosの値は負の数となります。
y/xであるtanの値も負の数となります。
∠θ=π/3のときは、特別な比の直角三角形をイメージして解くと、
sinθ=√3/2 , cosθ=1/2 , tanθ=√3/1=√3 ですから、
∠θ=2/3 πのときは、
sinθ=√3/2 , cosθ=-1/2 , tanθ=-√3 となります。

慣れてしまえば、いちいち単位円を描かなくても、頭の中で特別な比の直角三角形をイメージするだけで解けます。
上手くイメージできない間は、第1象限に直角三角形を描いて解いても良いでしょう。

さて、数Ⅰの基本学習としては、三角比は0°≦θ≦180° でした。
勿論、学校の先生の判断によっては、数Ⅰの学習時に、もう全円で学習した人もいると思いますが、数Ⅱ「三角関数」で、単位円は全円に拡張されるのが標準です。
考え方は同じです。
単位円は、下半分、第3象限も第4象限も描きます。

sinθ=y
cosθ=x
tanθ=y/x
という定義は変わりません。

そうすると、動径が第3象限にあるとき、
サインの値は負の数になります。
コサインの値も負の数。
したがって、タンジェントの値は正の数になります。

動径が第4象限にあるとき、
サインの値は負の数。
コサインの値は正の数。
タンジェントの値は負の数となります。

絶対値は、第1象限に角を置き換えて判断します。
動径が第3象限にある場合は、x軸の負の方向と動径とのなす鋭角で考えます。
符号は、sinはyの値なので負の数、cosはxの値なので、これも負の数、tanは正の数となります。

動径が第4象限にある場合は、x軸の正の方向となす鋭角で考えます。
符号は、sinはyの値なので負の数、cosはxの値なので正の数、tanは負の数となります。

そうすることで、どのような角の三角関数も求めることができます。

問題 θが次の値にとき、sinθ、cosθ、tanθの値を求めよ。
(1) 7/3 π  (2) -13/4 π  (3) 13/2 π (4) -7π

まずは(1)から。
2πで1周ですので、7/3 πは、動径が1周回ってプラスπ/3となります。
小学校の頃から分数が苦手だった子にはちょっと戸惑いがあるかもしれません。
練習すれば速くなる作業ですので、ひたすら練習あるのみです。
7/3=6/3+1/3 
ということが瞬時にわかれば、すっと書き換えていけます。
分数の操作に慣れれば、さほど考えなくても転換できるようになっていくのです。
動径は7/3 πもπ/3も同じ位置ですから、三角関数の値も同じです。
したがって、答は、
sinθ=√3/2、cosθ=1/2、tanθ=√3 です。

(2) -13/4 π

考え方はいろいろあります。
sin(-θ)=-sinθ
といった公式を覚えて活用しても勿論構わないのですが、
cos(-θ)=cosθ
と混ざりやすいので、私はあまり勧めていません。
この先、覚えなければならない公式が三角関数には大量にあります。
覚えなくて済むことまで覚えていたら、頭がパンクします。
しかも、「サインのときはこうで、コサインのときはこう」といった公式を、なぜか必ず逆に覚えてしまう人は案外多いのです。
どうして物事を逆に覚えてしまうのか?
本人に尋ねたところで、理由がわかるはずもありません。

私は、負の数のときは、負の数のまま、動径をいつもとは逆、すなわち時計回りに回しています。
-13/4=-12/4-1/4
時計回りに3π 回転すると、1周半。
その時点で、動径は第2象限と第3象限との境の x 軸上にあります。
さらに1/4 πだけ時計回りに動かすと、それは、3/4 πと同じ位置に動径があるということです。
したがって、
sinθ=1/√2、cosθ=-1/√2、tanθ=-1

(3) 13/2 π
13/2=12/2+1/2 です。
6πというのは、3回転ということですので、動径は、π/2 と同じ位置にあります。
π/2=90°
sinθ=y、cosθ=x、tanθ=y/x
という定義に従って解いていきます。
したがって、
sinθ=1、cosθ=0、tanθはない。
分母に0をおく、すなわち0で割ることは行わないことなので、そのような値はないとします。

(4) -7π
これも負の数なので、時計回りに回転させます。
-7π=-6π-π
時計回りに3周した後、さらに半周。
動径は、第2象限と第3象限との境の x 軸上です。
これも定義にしたがって、
sinθ=0、cosθ=-1、tanθ=0
となります。

あとは、こうした作業にとにかく慣れることです。

三角関数の本当の恐ろしさは、学習の後半、加法定理以降にあります。
まだ、学習は序盤です。
三角比も三角関数も、角度を表すものではありません。
思考の妨害となるのは、気がつくと三角関数は角度のことだと思ってしまっている、その思い違いです。
あるいは、直角三角形の辺の比という初歩から拡張できていない場合。
そうして、角度ではない、直角三角形の辺の比でもないと言われると、では何のことなのかわからない。
結局、作業手順と公式を丸暗記して、それで何とかやり過ごそうとする人もいるかもしれません。
確かに、この作業手順までなら覚えられるかもしれません。
しかし、作業手順の丸暗記で済まそうと思っている人にこの先待っているのは、悪夢です。
とても覚えきれません。
意味のわからない作業としては、この先は、複雑すぎます。

でも、意味がわかれば、何とかなります。
繰り返し繰り返し定義に戻って、意味を理解してください。






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