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2019年07月01日

高校数Ⅱ「式と証明」。二項定理の利用。

高校数Ⅱ「式と証明」。二項定理の利用。


前回と同じく「二項定理」の学習です。
二項定理は、例えば、(a+b)5などを展開していく際に用いる定理ですが、全て展開しなくても、必要な項の係数だけを求めることもできます。
例えば、こんな問題です。

例題 (x+2)6 を展開したときの、x3の係数を求めよ。

全て展開していくのだとしたら、二項定理を用いて、以下のようになります。
(x+2)6
=6C0x6+6C1x5・2+6C2x4・22+6C3x3・23+6C4x2・24+6C5x・25+6C6・26
=X6+12x5+30x4+160x3+240x2+192x+64

前回も解説した通り、xの6乗の項は、6個の(x+2)から全てxを選んでかけている項です。
それは1通りしかありませんので、係数は1です。
xの5乗の項は、6個の(x+2)から5個のxと1個の2を選んでかけている項です。
それは、xxxxx2を並べる順列と同じ個数だけ同類項があります。
同じものを含む順列の考え方を用いて、6C1=6。
係数としては、2も係数となりますので、6×2=12となります。
xの4乗の項は、6個の(x+2)から4個のxと2個の2を選んでかけている項。
それは、xxxx2・2を並べる順列と同じ個数だけあります。
同じものを含む順列の考え方を用いて、6C2=15。
2・2も係数となりますので、15×4=60。
この辺で法則が見えてきたと思います。

例えば、6C2の「6」は、(x+2)6の「6」です。
6C2の「2」は、(x+2)の2を「2個」選んでいることを示します。
それはxを6-2=4(個)選んでいるということでもあります。
では、問題のx3の係数はどう求めることができるでしょうか。
x3ということは、6個の(x+2)から、xを3個選んだということ。
それは、2のほうを6-3=3(個)選んだということです。
すなわちx・x・x・2・2・2の並べ方だけ、同類項が存在します。
6C3=(6・5・4)÷(3・2・1)=20。
2の3乗も係数となりますから、20×23=160。
答えは、160となります。

二項定理は、2項のうちの前の項、(x+2)で言えばxの項を初めは6回かける項、次はxを5回2を1回かける項というように、前の項を1個ずつ減らし、後の項を1個ずつ増やしていく形をとっています。
最後は、全て後の項、(x+2)で言えば2を6回かけて終わります。
二項定理の一般項は、nやrやn-rといった文字を用いるためか、それで混乱する高校生がいるのですが、全体の流れを把握することで一般項の意味を理解しましょう。

二項定理を利用する際、前の項の指数を1つずつ減らすと頭ではわかっているのに、途中から前の項の指数を逆に1ずつ増やしてしまうミスをする人は案外多いです。
また、単純に指数を「書きもらす」「書き間違える」「計算を間違える」を繰り返す人も多いです。
指数を1つ書きもらしたら、それ以降の計算は全て無駄になります。
指数の書きもらしは、高校生に極めて多いミスの1つです。


もう少し解いてみましょう。

例題 (2x-3y)7 を展開したときのx4y3の係数を求めよ。

基本の解き方は同じですが、xの項もyの項もそれぞれ1以外の係数がついているのに注意する必要があります。
それらも全て項全体の係数に含まれていきます。
x4y3の項ですから、7個の( )から、xを4回yを3回選んでかけた項ということでしょう。
すなわち、その項の出てくる回数は、7C3。
さらに、単純にx4y3ではなく、(2x)4・(-3y)3ということなのですから、xの係数である2の4乗、yの係数である(-3)の3乗も係数となります。
7C3・24・(-3)3
=(7・6・5)÷(3・2・1)×16×(-27)
=-15120

これが答えです。


さて、ここからは応用です。
考えてみましょう。

例題(3x2+x)8 を展開したときの x10の係数を求めよ。

この問題が今までのもとは違うのは、( )内のどちらの項にもxが含まれていることです。
どんなときにx10になるのでしょうか?
3x2の項を5回かけた場合?
でも、そのとき、もう一方のxの項も3回かけますから、xの指数は合計で13になり、問題の指示とはことなる項になってしまいます。

こうした問題では、まず、どちらの項を何回ずつかけたらx10の項になるのかを求める必要があります。

3x2をp回、xをq回かけた項がxの10乗の項であるとします。
全体で8乗、すなわち、8個の同じ( )から、どちらかの項を1つずつ選んでかけていくと個々の項が出てくるのですから、
p+q=8・・・① となります。
また、x10という結果になることを踏まえると、指数法則から、
2p+q=10・・・② となります。
(3x2)p・xqという項がx10の項となることから、その指数部分だけを見て②の式を立てています。
指数法則の理解が曖昧だと、ここは少し難しいところかもしれません。
指数法則の基本を振り返ってみましょう。
22×23は、2の何乗でしょうか?
22×23=(2・2)×(2・2・2)=25 です。
すなわち、積の場合は、指数同士をたすことになります。
また、(22)3は、2の何乗でしょうか?
(22)3=(2・2)×(2・2)×(2・2)=26 です。
すなわち、累乗の場合は、指数の積となります。
したがって、上の式のは、
(3x2)p・xq=3p・x2p・xq ですので、xの次数は、2p+qとなります。
①・②を連立して解くと、
p=2、q=6
よって、3x2を2回、xを6回かけた項がxの10乗の項であるとわかります。
あとは、二項定理にあてはめて、係数は、
8C6・32・16
=(8・7)÷(2・1)×9
=4・7・9
=252
これが答えです。

さらにこのような問題はどうでしょうか。

例題 (x2+1/x)10 を展開したときのx11の係数を求めよ。

後の項は分母にxがある分数です。
前の項との積は、約分されてxの次数が減ってしまいます。
x2をp回、1/xをq回かけるとすると、
p+q=10 ・・・① であるのは上の問題と変わりませんが、
xの指数はたし算ではなくなります。
約分されて減りますから、
2p-q=11 ・・・② となります。
(x2)p・(1/x)q を計算すると、分子はx2p、分母はxq ですから、分母にあるだけのxを約分することになります。
約分の結果、xの次数は 2p-q となります。
それが10だというのが、②の式です。
①、②を連立して、
3p=21、すなわちp=7、q=3 です。
x2を7回、1/xを3回かけた項がxの11乗となることがわかりました。
二項定理より、
10C3=(10・9・8)÷(3・2・1)=10・3・4=120
係数は120です。

二項定理だけでなく、指数法則の理解が必要なので、こうした問題は易しい教科書や問題集からは除外されていることがあります。
使っている指数法則自体は中学校で学んでいる内容なのですが、pだのqだのと抽象化されると「全くわからない」と言う高校生は多いです。
しかし、この先数Ⅱ「指数関数」を学習した後に受験勉強で解き直すと、少しは理解しやすくなるかもしれません。
いずれにせよ、大学入試はこのレベルです。
センター試験は基本問題ばかりとは言いますが、計算ドリルみたいな問題は出題されませんので、最低でもこのレベルとなります。




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    Posted by セギ at 11:53│Comments(0)算数・数学
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