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2018年11月04日

数A「整数の性質」公倍数と公約数。

数A「整数の性質」公倍数と公約数。


今回も「整数の性質」、公倍数・公約数の学習です。
公倍数・公約数は、小学校5年生で最初に学習します。
分母の異なる分数のたし算・ひき算を学習する前に、通分・約分ができるよう、まず学習するのが公倍数・公約数です。

現在、学校では使うことがほとんどない略称に、G・C・DとL・C・Mというものがあります。
G・C・Dは、the Greatest Common Divisor すなわち、最大公約数。
L・C・Mは、the Least Common Multiple すなわち、最小公倍数。

連除法も、現在の小中学校では学習しません。
連除法とは以下のようなものです。

例 72と108の最大公約数と最小公倍数を求めなさい。

ここで、2つの数に共通する因数で割っていきます。

3)72 108
3)24  36
2) 8  12
2) 4   6
   2   3

共通する因数がなくなるまで割り進めたら、共通する因数を全てかけます。
3・3・2・2=36
これが最大公約数です。
さらに、共通する因数と、残った2数の因数とを全てかけていきます。
すなわち、3・3・2・2・3・2=216
L字の形にかけていくので、上のL・C・Mの「L」で覚えたりしたものです。
これが最小公倍数です。

今の小中学生は、この解き方を知らない子が多いです。
中学受験をした子や私立小学校の子はこの解き方を習っていますが、公立の小中学校では学習しません。
じゃあ、どうやって最大公約数を求めるのか?
地道に、108と72の両方を割ることのできる数は最大で何かなと考えていくのです。
思いつかないときは、両方とも全ての約数を書きだして、共通する最大のものを調べます。
なかなか答えが出てこない場合は、かなりの苦行です。
最大公約数の定義通りの作業ですので、学習効果の意味はあるのですが、学習能率は低いです。
小学生の場合、かけ算・わり算の得意・苦手が如実に現れてしまう単元です。
72は何で割れるかを暗算できず、いちいち筆算し、108は何で割れるかを暗算できず、またいちいち筆算する。
かけ算・わり算が苦手だと、そういうことになってしまいます。
そういうことのわずらわしさを実感して、2桁×1桁の暗算や、3桁÷1桁の暗算ができるようになると大きな進歩ですが。

さて、高校数Aの「公倍数・公約数」の問題とは?

問題 35/18、50/63 のいずれに掛けても積が自然数となるような有理数のうち最小のものを求めよ。

この問題、「積が自然数となる有理数」という言い方で混乱が起こりやすいようです。
内容自体は、中学受験の受験算数で小学生もこの問題を解きますので、そんなに難しいわけではありません。
しかし、用語がネックとなることがあるようです。
「自然数」「有理数」あるいは「実数」という言葉が問題文中に出てくると、何のことだったっけとなるようなのです。
そういう定義をあまり気にしない子は、案外楽にこういう問題を解いたりもしますが。

「自然数」とは、1、2、3、4、・・・と無限に続く正の整数のこと。
最も自然発生しやすい数の概念です。
原始人は、森で見つけた獲物の数を仲間に伝えるために自然数を発見したかもしれませんね。

その後、人類の歴史の中で負の数や0が発見されていきます。
そうして生まれたのが「整数」。
「整数」は、0と負の整数と自然数を含みます。
「0は整数なんですか?」と質問されることが多いのですが、0は整数です。

小数や分数という考え方も同時に生まれたでしょう。
ものごとは整数で表されることばかりではありません。
分数という概念が生まれます。
分数で表すことができる数が「有理数」です。

「分数」と「整数」を区別する人がいますが、整数は全て分数で表すことができます。
例えば、2=2/1です。
ですから、整数は分数に含まれます。
このように、数は拡張される度に以前の数の概念を含み込んでいきます。
それは、数が発見された歴史と一致しているでしょう。

そういう「含み込んでいく」という概念が理解しづらいのかもしれません。
整数と自然数は別のもので、1つもかぶっていないと誤解してしまう。
整数と有理数は別のもので、1つもかぶっていないと誤解してしまう。
そういう誤解が問題の読み解きを難しくしてしまうことがあるのかもしれません。

「分数」と「小数」はきっちり区別されるという誤解も、そういう考え方でしょう。
それは表記法が異なるだけ。
「分数」と「小数」を区別する考え方にあまり意味はありません。
同じ数を分数でも小数でも表すことができるのですから、その区別は無意味です。
存在する数そのものをどう分類していくかが重要です。

さて、ここで問題となるのは、分数で表すことができない数はどうなるのかということ。
小数で表そうとしても永遠に循環もせずに不規則に数字が続いていく数。
これが「無理数」です。

そんな数あるの?
と、これだけ聞くと不思議に感じるかもしれませんが、そんなに特別な数ではありません。
√2、√3など、根号を使ってしか表せない数が無理数ですね。
他に、円周率π(パイ)がそうです。
こうやって具体例を聞くと、無理数なんて名前のわりによくある数だなと感じると思います。

有理数と無理数は、1つもかぶっていません。
これは、はっきり二分されます。
有理数でなければ無理数。
そして、有理数と無理数を合わせた数を「実数」と言います。
実数の中に、有理数も無理数も含まれます。

ここでまた何か誤解があり、「無理数は実数じゃない!」と言い張る高校生に困惑したこともありますが、無理数は実数です。
どちらも現実にこの世に存在している数です。
「実数」と「無理数」の語感が馴染まないことからくる誤解なのだろうと思いますが、「有理」の反対は「無理」であり、「実」と対比される概念ではありません。

では、「実数」と対立する概念は何か?
それが「虚数」です。
虚数を学ぶと、「実数」や「有理数」という言葉も頭の中に定位置をもって整理されるのかもしれません。

さて、話を戻して、上の問いは、どう解いていくのか。
求めるものは、35/18、50/63 のいずれに掛けても自然数となる有理数のうち最小のもの。
有理数ですから、分数で表すことができます。
この有理数をb/aと表すことにしましょう。
35/18×b/a
50/63×b/a
の答えが自然数になるということは、約分されて分母が1になるということです。
ということは、bと分母の18や63を約分して、分母が1になれば良い。
つまり、bは18と63の公倍数であれば良いのです。
ただし、「最小のもの」という指示が問題文にありますので、公倍数の中で最小のものでしょう。
すなわち、bは、18と63の最小公倍数である126。
また、aについては、約分して分母が1になることを優先するなら、最初からaが1であれば面倒がないような気がしますが、これも「最小のもの」という指示があるため、分母aはできるだけ大きい数であるほうが、有理数b/aは小さい数となります。
ということは、aは35や50と約分して1になる数のうちで最大のものであれば良い。
すなわち、aは35と50の最大公約数。
よって、答えは、126/5となります。

小学生ならば、b/aではなく、☐/△で良いのですが、とにかく、そのように、問題をわかりやすい形に自分で直してみるのが秘訣です。
それをせず、問題文を睨んで頭の中で全部やろうとする子は、受験算数にしろ数学にしろ、あまり得意にならずに終わってしまう可能性が高いのです。

手を使うこと。
自分なりの工夫で整理すること。
試行錯誤すること。

そういうことが一切できず、問題をパッと見て解ける問題は解ける。
それ以外は、わからない。
考えろと言われても、考え方がわからない。
手を使えと言われても、使い方がわからない。
工夫しろと言われても、どう工夫するのかわからない。
そういう子は多いです。

そういう子のノートを見ますと、
35/18×b/a
50/63×b/a
といった考えるヒントは、私が板書しても書かなかったりします。
式だけ書けば良いと思い、こういうものは不要と考えてしまうのでしょうか。
工夫の具体例が頭の中に材料としてなければ、工夫の仕方は1つも発想できないと思います。

小学生は、算数の問題は答えだけ書けば良いと誤解している子が多いです。
(式) という欄が解答用紙にない限り、式も書かなくて良いと思っています。
式さえ不要と思っている子が、考え方の工夫など落書きレベルのものと思っていても不思議はありません。
不要と思っているものを自力で書くことはできないでしょう。

不要と思っているものが、実は答えよりも式よりも大切かもしれません。
そこに発想の根元があります。
きれいなノートを残すことが勉強の目的ではありません。
算数・数学のノートには落書があって当然なのです。
落書きはいずれ洗練されていきます。
無からは何も生まれません。
とにかく、ノートに、問題を解くための落書きを書いてみましょう。
その書き方がわからない?
書き方は、人それぞれです。
自分がわかれば良いのですから。

・・・それすらも何も浮かんでこないなら。
せめて、先生や友達の書いている「落書き」をノートに写しておきましょう。
「落書き」の書き方のヒントがそこに詰まっています。
そして、同じ問題を解き直すときや類題を解くときに、自分も真似して落書きを書いてみましょう。
全てはそこから始まります。




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