たまりば

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2024年07月11日

中学数学。方程式の解き方の根拠。


数学のテストは、計算だけできればそれでいいわけではなく、なぜそのように解くことができるのか、根拠も問われます。

例えば、中1で学習する、1次方程式の場合、単なる計算問題としては。

問題 次の方程式を解け。
3x-5=4

これは簡単ですね。
3x-5=4
  3x=9
   x=3

はい。正解です。

ところが、定期テストでは、これをただ解く問題だけでなく、どのように解いているのか根拠を問う問題がかなりの頻度で出題されます。

問題 以下の( )にあてはまる数を答えよ。
3x-5=4
両辺に(①)を加えて。
  3x=9
両辺を(②)で割って。
   x=3

これに全く答えられない子がいます。
方程式を解くことはできるのですが、上のような問題には答えられないのです。
そもそも、この問題が何を要求しているのか理解できない様子で、ポカンとしてしまいます。


次のような問題になると、もっと正答率が下がます。

問題
3x-5=4・・・①
  3x=9 ・・・②
   x=3 ・・・③

上の①から②の間、②から③の間に使われた等式の性質を以下のア~エから選び、それぞれ記号で答えなさい。
ア. A=Bのとき、A+C=B+C
イ. A=Bのとき、A-C=B-C
ウ. A=Bのとき、AC=BC
エ. A=Bのとき、A / C=B / C (ただしC ≠ 0)


何を問われているのか、意味がわからない・・・。
そういう子たちがいます。

けれど、その子たちは、方程式を解くことはできるのです。
もっと複雑な方程式でも、解くことはできます。
でも、上のような形式の問題は、正答できないのです。

算数もそうなのですが、数学は、ただ計算ができればそれでいいわけではなく、なぜそのように解くのか、なぜそのように解けるのか、根拠や意味を理解することが大切です。
だから、解き方の根拠を問う問題も定期テストに出題されます。
しかし、そのことを理解せず、解き方を覚えるだけで済ませようとする子は多いです。
解き方を覚えればいいと思いこんでいるので、根拠を問う問題を目にすると、何を答えればいいのかわからないのです。

わからない、というだけでなく、そうした問題に対する反感や抵抗感も強いように感じます。
小学生の頃から、
「やり方だけ教えて」
「やり方だけ知りたい」
ということで算数の勉強を済ませてきた子たちにとっては、それが「正義」です。
正解さえ出していれば責められることはなかったのですから、それでいいと思っていても当然です。
この勉強のやり方で間違いない。
そう思って、中学生になったのです。
それでいいと思っていたら、「方程式の解き方の根拠」という、訳のわからない課題にぶつかってしまいます。
そりゃあ、フリーズしますよね。

繰り返し書いてきていることですが、やり方だけ覚えようとする子は、そのほうが合理的だと誤解しています。
根拠まで理解しようとすると、脳のメモリを余計にくってしまって、重い。
やり方だけ覚えて、テストが終われば忘れてしまったほうが、頭が楽。
本人が意識していなくても、そのような学習習慣が身についてしまっている子は多いです。
そして、解き方の根拠に戻ろうとしても、もう理解できなくなってしまっている場合もあります。
高校数学まで進んで、やり方は覚えきれないし、意味もわからないとなった場合、戻るのは大変な苦労が必要です。
中学1年なら、やり直しは可能。
ここから、根拠を理解する学習を始めましょう。
とはいえ、小学校の6年間で蓄積された学習習慣の打破は、それなりに難しいのですが。


3x-5=4
  3x=9
   x=3

と簡単に書かれている方程式の答案。
実際に解くだけならば、答案としてはこれで十分なのですが、ここには多くの根拠が隠されています。
まず、なぜ、
3x-5=4
  3x=9
となるのでしょうか?

「移項したから」
と答えられる子は、移項という数学用語を使えるだけ賢い子ではあるのですが、ではなぜ移項は可能なのか?
なぜ、左辺の-5は、右辺に移項されると+5になるのか?
そこを説明できるか、できないかが、大きな分岐点です。
「移項するときは符号を変える」
というやり方だけ覚えているのか、それとも、意味がわかっているのか?

3x-5   =4
両辺に5を加えて、
3x-5+5=4+5
     3x=9
   
いちいち書き記さないだけで、実際は、このような作業が行われています。
使われているのは、上の等式の性質のうち、
ア. A=Bのとき、A+C=B+C
です。
等式は、左辺と右辺が等しいという関係を表した式。
左辺と右辺に、それぞれ同じものを加えても、等しい関係は変わらないのです。
その性質を利用して、両辺に5を加えると、-5+5=0となります。
方程式を解くのに邪魔だった左辺の-5を消すことができるのです。

続けて、
3x=9
両辺を3で割って、
 x=3
ここで使われている等式の性質は、
エ. A=Bのとき、A / C=B / C (ただしC ≠ 0)
です。
左辺と右辺を同じもので割っても、等しい関係は変わらない。
その性質を利用しています。

しかし、このような解説を、恐ろしいくらいに理解できない子たちもいます。
それは学力が低いためとは限らないのです。
方程式の解き方自体はスラスラと身につけます。
かなり複雑な、( )を含んでいたり、係数が分数な方程式も。
ところが、上のような根拠を問う問題になると、凝固したようになり、全く話が通じなくなります。
「聞いてますか?」
「わかりますか?」
「どこがわからないですか?」
と繰り返し問いかけても、全く反応がなく、呆然としてしまうのです。

何がわからないのかを説明することもできず、ただ黙り込む。
だから、こちらとしては推測するしかないのですが、考えられることは、上のように、方程式の解き方の根拠を問う問題は、その子の考える「算数・数学の問題」の概念から大きく外れているのではないか?
彼らにとって、そうした問題は、宇宙人の話す宇宙語よりも異様であり、理解の範疇を超えている。
何を問われているのか、全く意味がわからない。
彼らにとっては、やり方を覚えることが算数・数学の学習であり、根拠を問う問題など、算数・数学の問題ではないのでしょう。
その間違った固定観念を打破しないと、上のような問題を理解することができないままかもしれません。


正攻法の説明を繰り返しても全く話が通じないときに、最後の手段を講じることがあります。

「この問題は、テストに出ます。
中学の定期テストはそういうもの。
小学校の算数とは違います」

テストに出るぞ。
テストに出るぞ。
テストに出るぞ。

どう考えても、教育的ではありません。
しっかりと意味を伝えることをまず優先するべきです。
しかし、相手の固定観念があまりにも強く、このままでは膠着状態が続く。
テストが近づいている。
そうしたときに、この最後の手段を講じます。

テストに出るぞ。

このあまりにも打算的な言葉が、意味が通じず凝固していた子には響くことがあるのです。
「やり方だけ覚えればいい」という考え方と、「テストに出るぞ」という考え方は親和性が高いからでしょう。
明らかに表情が変わります。

彼らは、計算のやり方の根拠を問う問題などテストに出るわけがないという、これも間違った固定観念に凝り固まり、そのせいで理解する気がそもそもなかったのかもしれません。
しかし、これがテストに出るのなら、このタイプの問題の「解き方」も覚えなければならないのです。
でも、こういう問題の解き方って・・・?
それは、結局、計算のやり方の意味を理解することになるのです。
正攻法では不可能だった、根拠を考える学習が、この形で可能になることがあります。

もう一度、上の問題を。

問題
3x-5=4・・・①
  3x=9 ・・・②
   x=3 ・・・③

上の①から②の間、②から③の間に使われた等式の性質を以下のア~エから選び、記号で答えなさい。
ア. A=Bのとき、A+C=B+C
イ. A=Bのとき、A-C=B-C
ウ. A=Bのとき、AC=BC
エ. A=Bのとき、A / C=B / C (ただしC ≠ 0)


「①から②の間に、等式の性質のどれを利用しているんでしょう?」
「・・・イ?」
「あー・・・、-5を消したのだから、ひき算だと思った?
いや、そうじゃないんですよ。
3x-5+5=4+5
というふうに計算しているんです。だから?」
「・・・エ?」
「・・・何で?」

このような会話を交わすことも多いです。
方程式を解くだけならできる子が、こんなにも理解していないのだと、こうした会話を通してわかります。
その子の中の数学に関する底知れない深淵が垣間見えるようです。
その深淵は、その子が、小学校の6年間で作ってきた深淵。
下手をすると、深淵が広がり、乗っている板1枚の下には何もない状態になってしまいます。
実際、高校数学を学習していて、そのような状態の子もいます。
深淵は知識で埋めていく作業が必要です。
やり方だけ覚えてやり過ごしてきたためにできてしまった深淵は、こんな1問だけで埋まるわけではありませんが、一助にはなります。

学年が上がれば、太郎さんと花子さんが、問題の解き方について、べらべらと1ページ以上も会話する問題も定期テストに出ます。
言うまでもなく、大学入試共通テスト型の問題です。
それは、学校によっては、中学の定期テストから始まります。
意味がわからなければ、太郎さんと花子さんの会話の空欄は埋まりません。

  


  • Posted by セギ at 11:55Comments(0)算数・数学