2023年11月24日
「覚える」ということが、何をどうすることか、わからない。

画像は、都立小金井公園のコスモス。
さて、一度で理解して以後二度と忘れない子。
何回解説してもほとんど覚えない子。
個別指導の特徴なのでしょうが、その中間という子は少なく、生徒はどちらかに偏ります。
英語が苦手、と漠然と言いますが、英語が苦手な子は、まず単語を覚えていない子が大半です。
そして、文法を覚えていません。
英語が苦手の子の多くは、覚えることが苦手な子たちです。
小学生の頃から、そして中学入学後も、英語がきわめて苦手な子たちの場合。
初めて英語を学び始めた段階で、曜日や月の名称、数字のスペルなどの基本を覚えられないことが多いです。
名詞を複数形にするルールも覚えられません。
人称代名詞も覚えられません。
3単現のルールも覚えられません。
一般動詞の疑問文の作り方を覚えず、何でも Are you ~?としてしまうことをやめられません。
とにかく、覚えない、覚えない、覚えない。
覚えれば済むのに、何でこうも覚えないのか?
本人は「覚えたくても覚えられないんだ」と言う場合が多いです。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
あるいは、中学英語はそこそこ出来た子たち。
英検3級は合格し、英検準2級も何とか合格します。
でも、その先には、永久に進めない子たちがいます。
高校で英語が急速に苦手になっていく子たちです。
もう何度も書いてきましたが、そうした子たちは、高校で学習する英単語を覚えないのです。
高校で学習する英文法も覚えません。
中学生の英語力のまま、高2になり、高3になり、大学受験を迎えます。
しかし、本人は、それなりに英語を勉強している気でいる場合が多いです。
なぜ、こうまで覚えられないのだろうか?
小学生の頃、九九を覚えられなくて苦労した。
今でも、七の段はちょっと厳しい・・・。
そういう子の場合は、わかります。
本当にものを覚えるのが苦手なのだと思うのです。
でも、九九はそこそこ問題なく覚えられたという場合は、記憶力のせいではないのではないか?
「覚える」ということが何をどうすることなのか、あまりよくわかっていないのではないか?
そう感じることがあるのです。
小学生の頃は、身につけなければならない知識もそんなに多くはないので、小学校の授業中や宿題で何度か練習しているうちに大抵覚えてしまいます。
その経験があるので、「覚える」というのは、そういうふうに苦もなく自然に覚えることを指すと、思い込んでいるのではないでしょうか。
覚えるためには、覚えるための作業と反復が必要になります。
それは、基本的に、つらくてつまらない作業です。
それをせず、自然に覚えられるものだと誤解しているため、「覚えられない」と言っている子もいるのではないかと思うのです。
もう1つは、覚えるときに脳にかかる負荷が嫌いな子。
頭が重くなって、つらくて嫌なので、ものを覚えるのが嫌いな子たちがいます。
覚えられないのではなく、つらいから、嫌で、避けているのです。
幾度も唱え、反復し、自分にテストを繰り返し、大脳に刻みつける作業。
そういうことはしたくない。
覚えるというのは、自然に頭に入ってくるものであってほしい。
でも、自然に頭に入ることだけを期待していても、中学・高校と学年が進むにつれ、学習量は爆発的に増えていきます。
自然に覚えるには、量が多いです。
だから、人工的に、意図的に、無理をして覚える作業が必要になるのです。
それをしないでいると、本人の生来の能力に応じて、中学で、あるいは高校で、停滞していくのです。
2~3度眺めるだけで覚えられるわけがないのです。
楽をして自然に覚えたい、という気持ちはわかるけれど、それは、無理な望みなのです。
金儲けをしたい人が、それができるかのような宣伝をしていることがありますが、罪深いことだと思います。
そんなものにお金を払っても、楽をして自然に覚えることは、結局できません。
だって、文科省だってそんなにバカじゃないんですから、そんな方法があるなら、学校の正規のカリキュラムに導入しますよ?
楽して自然に覚える方法は、ないんです。
覚えようと強く意識し、大脳に刻み込むように、覚える、覚える、覚える。
大脳に負荷がかかるように、覚える、覚える。
そうやって暗記するのだということを、あきらめて、悟ってください。
でも、好きなことなら楽しく覚えられます。
ゲームやアニメのキャラクターの名前。
好きなアイドルグループ全員の名前とメンバーカラー。
好きなアニメの全サブタイトル。
そういうことなら、いくらでも覚えられる。
それなら、生来の暗記力はあるはずです。
その能力を使って、好きではないことも、覚える。
必要なことだから、覚える。
そういうふうに意識を変えてほしいんです。
英語を好きになれれば良いけれど、ある程度英語ができるようにならない限り、好きにはなれないと思います。
まず、できるようになることが先です。
それには、好きじゃないけれど暗記する、つまらないけれど暗記する、そういう作業が必要です。
暗記したことが反映されて、英語がわかるようになれば、好きになります。
基本、自分が上手くできることには、人は良い感情を持ちますから。
暗記はしないけれど、英語を完全に捨ててしまっているのかというとそうでもなく、今学校で学習していることはそれなりに勉強する子は多いです。
学校の教科書の英語の本文の重要事項を解説すると、そういうことは熱心に聞いています。
けれど、テストで間違えるのは、習いたての文法事項ではありません。
空所補充問題や和文英訳問題で、以前に習っている単語のスペルを正しく書くことができなかったり。
名詞を複数形にすることや、冠詞を書くことを忘れたり。
今回のテスト範囲の文法事項をクリアできても、上に書いたようなところを間違えていたらテストでは逐一減点されますから、本人が達成感を味わえるような得点にはなりません。
本人なりに頑張っているつもりでも成績に変化がないので嫌気がさし、ますます学習意欲が下がっていく・・・。
英語という科目に起こりやすいことです。
本人の脳の癖なのかもしれませんが、新しいことを学習する度、古いことを頭の中から一掃する人もいます。
1つ覚えると、1つ忘れる。
何も積みあがっていかないのです。
新しいことを学習しても、それと同時に、英語学習の初期に習った時制の使い分けや、曜日や月名のスペルは永遠に必要な知識です。
しかし、脳にそんな容量はないと思い込んでいることも手伝い、びっくりするほどあっさりと記憶を捨てていくタイプの人がいます。
そして、せっかく学習した新しい内容も、定期テストが終わると、すっぱりと忘れていきます。
もともと脳は、不要な記憶をどんどん消していきます。
それにストップをかけ、「あ、これは消去したらダメな記憶なんだ」と脳に悟らせるには、反復です。
他人よりも記憶が消えるのが速いなと感じたら、自分の脳にストップをかけましょう。
本来、10代の記憶は、一生消えないものになるのです。
ストップをかけていないのは、本人の意思も入っていると思います。
テストが終わったら、後は要らない記憶と思い、忘れるままにしていないでしょうか。
本来、10代で得た知識の多くは、一生消えません。
そういう人は多いと思います。
今では役に立たない妙な記憶が残っている、そういう大人は多いと思います。
大人の人と話す機会があったら、
「中学や高校の頃に暗記したことで、今でも妙に覚えていること、ありますか」
と話を振ってみてください。
変な暗記事項を披露してくれる人は多いと思います。
徳川十五代の名前を全部言える人。
中国の王朝名を順番に言える人。
なかには、私のように「ソ連のコンビナート」という、本当にそれは何なんだという使えない記憶を披露してくれる人もいるかもしれません。
3日前の昼ご飯に何を食べたかはもう忘れたけれど、10代の頃に勉強した記憶は、消えない。
記憶とは、そういうものです。
10代のうちに、せめて英単語は最大限頭に入れておけば良かった・・・と後悔している大人は多いと思うのです。
あの頃ならば、今よりもずっと暗記は楽だった、と。
それでも、何歳になっても、それなりに、やりようはありますが。
脳は大容量です。
無制限に何でも記憶し、保存できます。
それを信じ、全てため込みましょう。
また、脳にどれほど負荷がかかっても、それで脳細胞がつぶれてダメになったりはしません。
負荷をかけると、むしろ頭は良くなります。
筋肉と同じです。
筋肉は、ダメージから回復した後のほうが強くなります。
だから、負荷をかけ、アイシングして、休む。
脳も同じです。
まず、脳に負荷をかける方向に自分の気持ちをもっていってください。
脳に負荷をかけた後、リラックスして、そしてよく寝る。
これを繰り返すことで、脳は強くなります。
そのように「覚えるぞ!」という意欲をもつことが第一。
そのうえで、英単語の暗記には、いくつかコツがあると思います。
例えば、よくある暗記のダメな例。
1日10個ずつ英単語を覚える。
次の日は、別の10個を覚える・・・。
しかし、そんなやり方では、翌日にはもう前日の10個は忘れています。
何1つ頭に残らないのですが、それを称して「単語暗記はやっている」、「でも、覚えられない」としてしまうのは、残念です。
それは、覚えられないやり方をわざわざ選んでいるのです。
ちょっと苦しくても、頑張って、1日100個覚える。
翌日も、同じ100個を覚える。
その翌日も、同じ100個を覚える。
覚えているかどうか、毎日自分にテストをして、覚えていなかったら覚え直す。
そうして、最低でも1週間、同じ100個を繰り返します。
翌週は、新しい単語を1日100個覚える。
ついでに、先週の100個のテストをして、覚えていなかったら覚え直す。
翌日、同じ100個を覚える。
ついでに、先週の100個のテストをして、覚えていなかったら覚え直す。
これを繰り返します。
あるいは、覚えるべき英単語が1つの例文や文章中にぎゅうぎゅうに詰まっているタイプの単語集を購入し、それの音声もスマホなどの機器にダウンロードしておきます。
これを繰り返し聴きます。
あるときは、文字を見ないで聴く。
あるときは、文字を見ながら聴く。
慣れてきたら、その音声にあわせて、文字は見ないでシャドーイング。
そして、また、文字を見ながら聴く。
毎日1時間、これをやり続けます。
上のやり方よりも効率は悪いのですが、長い目で見れば、いつの間にか知っている単語が増えています。
時間はかかりますが、比較的負荷の少ない方法です。
日本語と英語が交互に繰り返されるタイプの音声も、自分にテストをするのに向いています。
英語が先の場合は、日本語が流れる前に、自分で先に日本語を言う。
日本語が先の場合は、英語が流れる前に、自分で先に英語を言う。
そのように、常にテストを繰り返します。
聞き流すだけでは、ダメなのです。
日本人は、英語を音楽のように聞き流す習慣が脳についている場合が多く、意味などわからなくても平気なのです。
聞き流していたら、ある日突然、意味を伴って英語が聞こえてくる、ということはありません。
英語の抑揚がちょうどいい感じに脳から α 波でも出す様子で、心地よく眠くなることすらあります。
英語をBGMとして、快適に別のことを集中して考えたりもします。
だから、聞き流すだけでは、何も身につきません。
自分からアクションを起こすようにして聴かないと、音声教材は身につきません。
そして、回数も、「え?そんなに?」と驚くほどの回数を聴く必要があります。
2~3回では覚えられないのです。
100回聞いたら、そのうちの1つ2つは自然に覚えている単語があるかもしれないね、という程度です。
基本は、1,000回以上聴くことが必要です。
それくらいの反復が必要だと、知ってください。
それも、上の1日100単語ずつ意図的に覚えることと並行して行えば、1,000回までいかなくても、かなりの単語を覚えられます。
普通にしていれば覚えられないのは、誰でもそうです。
苦労して覚えることをしているかどうか、だと思うのです。
つらくても頑張ることが、必要なときも、あるのです。
その作業は、必ず実を結び、良い結果につながります。
初見の英文を普通に読むことができ、テストの得点も上がり、模試も苦痛ではなくなります。
英語が楽しくなります。