たまりば

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2021年10月25日

高校数Ⅱ「三角関数」。加法定理。


さて、三角関数の学習。
今回は加法定理です。
加法定理とは、例えば、
sin(α+β)=sinα cosβ+cosα sinβ
といった公式のことです。
全部で6本あります。

突然登場するこの公式について、そもそも、なぜそんな公式を使う必要があるのかわからず、それで上手く使用できない人がいます。
そういう人は、
sin(α+β)=sinα+sinβ
になると思っていて、こんなに簡単に計算できる
ことをわざわざ難しい公式にしている理由がよく呑み込めない場合があるのです。

実際、数学が苦手な子に、
「sin(30°+60°)=sin30°+sin60° ではないんですよ」
と説明したところ、
「嘘っ。何で?」
と驚いていました。
その子が言うには、
「sin(30°+60°)=sin90° でしょう?だったら、sin(30°+60°)=sin30°+sin60° じゃないの?」
ということなのでした。

・・・え?
何、その理屈?

こういう、間違っているのに、その子の中では確信されている事柄というのがあります。
例えば、中学数学で、
(a+b)2=a2+b2
であると信じて疑わず、
(a+b)2=a2+2ab+b2
という乗法公式は、学習したときだけは使うけれど、テストが終われば忘れてしまう子とも重なります。

上の加法定理について、実際に確かめてみましょう。
sin (30°+60°)=sin90°
これは確かにそうです。
sin 90°=1 です。
一方、
sin 30°+sin 60°
=1/2+√3/2
です。
sin 90°は、sin 30°+sin 60° と等しくありません。

加法定理のほうに代入してみましょう。
sin30° cos60°+cos30° sin60°
=1/2・1/2+√3/2・√3/2
=1/4+3/4
=1
これは、sin 90°=1 と等しくなりますね。

sin(30°+60°)=sin30° cos60°+cos30° sin60°
なのです。

sin(30°+60°)=sin 90° と、( ) の中をたすのは構わない。
でも、( ) をそのまま展開してはいけない。

こういうところが、数学嫌いな子には理解しかねることのようです。
何をしてよくて、何をしたらダメなのか、わからない。

その根本には、「三角比」と「角の大きさ」との混同が影響しているのだと思います。
sin 30°や、sin 60°というのは、三角比です。
角の大きさではありません。
角の大きさならば、単純にたすことが可能です。
しかし、三角比と三角比は、単純にたすことはできません。
sin 30°という三角比とsin 60°という三角比をたしても、sin 90°という三角比と等しくはなりません。
そのイメージをもつことが大切です。

加法定理が覚えられない、というよりも覚える意欲を見せない子の中には、
「sin(α+β)=sin α+sin β で解けばいいのに、なぜ、覚えにくい公式があるんだろう。意味がわからない」
と誤解している子が、います。
まず、その誤解を解くことが必要です。


加法定理は、サイン・コサイン・タンジェントの3種類について、それぞれ和と差と、合計6本あります。
sin(α+β)=sinα cosβ+cosα sinβ
sin(α-β)=sinα cosβ-cosα sinβ
cos(α+β)=cosα cosβ-sinα sinβ
cos(α-β)=cosα cosβ+sinα sinβ
tan(α+β)=tanα+tanβ / 1-tanαtanβ
tan(α-β)=tanα-tanβ / 1+tanαtanβ

覚え方としては、私自身が高校生だった頃は、
「サイン・コス コス・サイン」
「コス・コス サイン・サイン」
「1まいタンタン、タンぷらタン」
といった覚え方をしました。

「咲いたコスモス、コスモス咲いた」
といった覚え方も有名ですね。

後のほうは、唱えるのに少し時間がかかってまだるっこしいので、私は、無機質な「サイン・コス コス・サイン」推奨派ですが、どちらでも、覚えやすいほうで覚えたらよいと思います。
どんな覚え方でもよいので、必ず覚えてください。
加法定理を覚えていないことは、この後の学習に、大変な負荷がかかります。
「まあ、テスト前になったら覚えますよ」
と悠長なことを言っている場合ではありません。
この後の公式に、加法定理はすぐ使います。
いちいち、教科書の別のページを開いて確認していては、学習に遅れが生じます。
また、「三角関数」全体がテスト範囲の場合、公式の数が多いです。
この後、大量の公式が一気に出てきます。
一夜漬けで覚えられる数ではありません。
端から覚えていかないと、必ず後悔します。

さて、では、加法定理の証明は?
なぜ、
sin(α+β)=sinα cosβ+cosα sinβ
なのでしょうか?

これが少し厄介なのです。
いきなりこの式を導くことはできません。
まずは、他の式を証明し、そこから式を変形してこの式を導くことになります。
しかも、数学が苦手な子にとって、その証明は決してわかりやすいものではありません。
小学校の三角形の面積の公式のように、見たまま、それはそうだろうなというようなものではないのです。
証明そのものが、わからない・・・。
しかも、覚えにくい・・・。
もう、加法定理なんて嫌だ・・・。
ここで、いよいよ本格的に三角関数への挫折感が深まっていきます。


まず証明するのは、上から4番目の公式。
cos(α-β)=cosα cosβ+sinα sinβ
です。
教科書でも参考書でも、どこにでも掲載されていますが、単位円上に2点、A(cosα , sinα)、B(cosβ , sinβ)をおくところから証明が始まります。
ここで、何で2点の座標がA(cos α , sin α)、B(cos β , sin β)と表されるのか、そこからわからないとなる場合が多く、加法定理の証明への道は、長く険しいのです。
私は今ここで単位円を描かずに説明していますが、描いたところでさほど理解は進みません。
図を描いて、線分OAとx軸の正の方向とのなす角をα、線分OBとx軸の正の方向とのなす角をβとしているので、A(cos α , sin α)、B(cos β , sin β)となるのですと説明しても、
「わからない、わからない、わからない・・・」
と耳をふさいでしまう子もいます。
数Ⅰ「三角比」の記憶が曖昧で、三角比とは単位円上の点の座標であることを忘れているのだと思います。
三角比は直角三角形の辺の比というところから脱却できていないのです。

三角比の定義は、
座標平面上で、x軸の正の部分を始線にとり、角θの動径と、原点を中心とする半径rの円との交点をP(x , y)とするとき、
sin θ=y/r
cos θ=x/r
tan θ=y/x

まず第1象限内の円周上に点Pをとり、点Pと原点を結び、さらに点Pからx軸に垂線を下ろして、直角三角形を描いて考えるならば、一番初歩の三角比の定義通りの辺の比がそのようになります。
よくわからない場合は、実際に自分で直角三角形を描いて確認してみてください。
自分で描くと、また少し違ってくると思います。
円の半径はどこでも同じ長さですから、描いた直角三角形の斜辺はrです。
底辺は、x、対辺はyとなります。
よって、
sine θ=y/r
cos θ=x/r
tan θ=y/x
と表せます。

それを利用し、全ての象限で三角比の定義はそうであると拡張したのが、「三角比の拡張」です。
このことによって、三角比は、直角三角形の辺の比ではなく、円周上の点の座標と定義し直されました。

ここで、半径が1の単位円であるなら、
sin θ=y/1=y
cos θ=x/1=x
つまり、x座標は、コサインの値、y座標は、サインの値なのです。

ということは、動径とx軸の正の方向とのなす角が α であるなら、その点のx座標はcos α、y座標はsin α と表すことができます。

だから、x軸の正の方向と、線分OA、OBのなす角がそれぞれα、β であるなら、
座標は、A(cos α , sin α)、B(cos β , sin β)となります。

「・・・わかりますか?」
「・・・・・」
「・・・わかりませんか?」
「・・・(うなずく)」

「・・・どこからわからないですか?」
「全部」
「・・・」

・・・苦手な関数と、嫌いな三角比が合体したら、そりゃあ、わからないかもしれません。

ここがわからない場合は、加法定理の証明を理解するのは諦めるという選択肢もあります。
証明を理解するのは諦める。
でも、加法定理を使用することは、諦めない。
覚えて使えばいいのです。
使うことだけなら、できます。

・・・そんなのダメじゃん!
理解もしていないのに、使うだけなんて、ダメじゃん!

確かに、そうです。
証明を理解して使用するのが、理想です。

問題は、生徒の様子、表情です。
全部わからない、と言う。
どういう意図でそのように言っているのか?

「証明を理解するのは、いったんやめますか?証明はわからなくても、定理を使うことはできるし、その練習をしましょうか」
そのように声をかけたとき、生徒が明らかにホッとしているのなら、もうそれでいいのではないかと思うのです。
理系に進むわけではないのは、既に確認しています。
経済学部などの社会科学系の学部は入試に数学が必要なことがありますよと話しても、ぼんやりして反応がない。
共通テストを受けるのかどうかも、わからないと言う。
本当にまだ未定であるのか、
「それじゃ数学をもっと頑張らないとダメじゃないの!」
と言われるのが嫌でごまかしているのか、それはわからないですが、本人の中で、明らかに数学に対して「店じまい」が始まっています。
その子の課題は、加法定理の証明が理解できないことではないのだと思うのです。

それに、証明を理解していないのに使っている公式は、加法定理だけではないのです。
例えば、円錐の体積の公式。
V=1/3πr2h
あれは、なぜ、1/3にするのでしょうか?
例えば、球の表面積の公式。
S=4πr2
あの4って何ですか?
球の体積の公式。
V=4/3πr3
4/3って、何の数字ですか?

どれも、中1で学習する公式です。
しかし、証明の解説を聞いたことはないはずです。
中学では、教わりません。
ただ暗記し、ただ使っているだけです。
「そうであることがわかっている」で済まされてしまう。
あるいは、錐体の体積の場合には、中が空洞な錐体に水を入れて、同じ底面積、同じ高さの柱体の容器に水を移して、ちょうど3倍分になることを先生がやってみせるのを見た人もいると思います。
しかし、それは、事実としてそうなるというだけで、証明ではありません。

証明を理解していないのに丸暗記して使っている公式は、今までもあったのです。
数学的に証明できないわけではありません。
中学生に理解できる内容ではないから、説明しないのです。

証明を理解できないのは、確かに1つの敗北です。
できれば、理解してほしい。
でも、どうしても理解できないのなら、それで諦めるのではなく、理解はできなくても、覚えて使ってください。

加法定理を十分使いこなせるようになり、その先の多くの定理も学習した後のある日。
気候もすがすがしく今日は頭の中がクリアだと感じたある日、もう一度見直したら、案外するっと理解できるかもしれません。
そんな日を待つことも必要だと思います。


「証明を理解するのは、いったんやめますか?証明はわからなくても、定理を使うことはできるし、その練習をしましょうか」
そのように声をかけたとき、その子が傷ついた表情を見せたのなら、まだ続ける意味があります。
見捨てられたと感じ、そのことに傷ついたのなら、本当は理解したいのでしょう。
そんなときには、続けて話します。
「だって、全部わからないって、そんなのおかしいじゃないですか?理解したい気持ちがあるのなら、協力してください。解説の1行1行を見て、どの行がわからないのか、それを教えてください」
そのように話すと、どこがわからないのか、初めて見直す気になり、協力して理解していこうと思ってくれる子は多いです。


加法定理の証明に戻りましょう。
単位円上に2点、A(cosα , sinα)、B(cosβ , sinβ)をおく。
ここまではとりあえず理解できるのならば、
2点ABの距離を2通りで表してみましょう。
まずは、2点間の距離の公式を用いると、
AB2=(cosβ-cosα)2+(sinβ-sinα)2 ・・・①

・・・2点間の距離の公式って、何ですか?

また、つまずきポイント登場です。
2点間の距離の公式。
これは、数Ⅱ「図形と方程式」で学習した内容です。
もともとは、中3「三平方の定理」でも学習しています。
モヤモヤする人は必ず復習してください。

また、AB2は、△OABに余弦定理を用いて表すこともできます。
AB2=1+1-2・1・1・cos(α-β) ・・・②

・・・余弦定理って何ですか?

さらにつまずきポイントが加わりました。
余弦定理は、数Ⅰ「三角比」で学習した、三角形の3辺の長さとコサインに関する定理です。

ともあれ、①、②より、
(cosβ-cosα)2+(sinβ-sinα)2=1+1-2・1・1・cos(α-β)
あとは式を整理し、変形していくだけです。
cos^2 β-2cosβcosα+cos^2 α+sin^2 β-2sinβsinα+sin^2 α=2-2cos(α-β)
(sin^2 α+cos^2 α)+(sin^2 β+cos^2 β)-2cosαcosβ-2sinαsinβ=2-2cos(α-β)
1+1-2cosαcosβ-2sinαsinβ=2-2cos(α-β)
2cos(α-β)=2cosαcosβ+2sinαsinβ
cos(α-β)=cosαcosβ+sinαsinβ

証明できました!
他の公式は、ここから導くことができます。

  


  • Posted by セギ at 11:05Comments(0)算数・数学