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2024年06月10日

日本語に直しても英文の意味がわからない。

日本語に直しても英文の意味がわからない。

英単語はまずまず覚えているのに、実際に英語長文を読むと意味が取れない、という人もいます。
今回は、そういう話です。

例えば、こんな長文。
これは、動物が捕食者から身を守るためにどのようなやり方をしているか、という内容の説明文の一部です。
それぞれの動物によってやり方は違うということで、いくつか具体例が挙げられた中の1つを、ここに抜き出します。

Fishes use another form of camouflage called "counter- shading." The top of most fishes is a deeper shade than the underside. When they are seen from above, they merge with the dark water below them. And when they are seen from below, they merge with the sunlit water above them.

問 魚の体の特徴によるカムフラージュの仕組みを本文に即して具体的に2つ説明せよ。


1文に3つも4つもわからない単語があり、しかもそれが高校生としては知っておくべき基本単語の場合は、英文を自力で読むには単語力が足りないでしょう。
単語暗記が急務です。
しかし、そうではなく、1文につき1つの単語がわからないという程度ならば、英文を読みとっていくことは可能です。
普通にそれをやっていける人もいるのですが、わからない1つの単語でつまずき、英文全体がわからなくなる人もいます。
そこを改善していくのが、長文読解演習です。
わからない単語があるまま、それでも読み取って、答案を完成させていきます。


まずは第1文。
「意味のわからない単語は、ありますか」
「camouflage」
「それはもう日本語になっている単語ですし、設問にヒントがありますよ」
「・・・」
「カムフラージュです」
「・・・ああっ」

設問が日本語である場合、そこにヒントがあります。
しかし、それが、頭の中でつながらない。
あるいは、わからない英単語でも強引に音を把握すれば、実はもう日本語になっている単語なのに、気づかない。
こういう学習上の不器用さでつまずく場合があります。
多くの長文を読み、経験を積むことで習得しましょう。
経験を積めば、脳の中でさまざまな事象がつながりやすくなります。

「他に、わからない単語は、ありますか」
「counter- shading」
「ああ。それは、わからなくても別に構わない単語ですよ」
「えっ・・・」
「わからなくても文脈上問題のない単語です。ただの名称ですから。カウンター・シェイディングのままで、1文目を日本語にしてください」

Fishes use another form of camouflage called "counter- shading."

「魚は、カウンターシェイディングを呼んで、カムフラージュの別の形を・・・ええと・・・」
「・・・え?」

昭和の時代の、読んで訳して読んで訳してのリーダーの授業では、日本語として正しい順番に整えて訳さなければならず、英文のどこから訳せばいいのか順番がわからないので混乱する、ということがありました。
英語と日本語は順番が違うのに、即座に日本語の順番に直さなければならないから、生徒は英語がわからなくなる。
そのような分析や反省が英語教育界にあり、現在、生徒に口頭で英文を日本語に直させる場合、正しい日本語の順番であることを強要する先生は少ないと思います。
英語は前から順番に意味を把握すればいいのです。
筆記テストに和訳問題があるなら、そのようにまずは英語の順番通りに意味を取ってから、日本語として正しい順番に組み替えます。

しかし、要求されていないのに、生徒が勝手に組み替える、ということは今も起こります。
勝手に組み替えて、それが正しいのならばいいですが、組み替え方を間違えてしまいます。
組み替え方を理解していないのです。
とにかく後ろから訳せばいい、といった単純な誤解をしている場合もあります。
日本語と英語のそれぞれの語順のルール、つまり文法の知識がよく身についていないのだと思います。
英文が読めない原因の1つは、それです。
中学英語は構造が単純なので、即座に正しい日本語の順番に直せることが多いです。
その癖が残っていて、高校英語も、日本語の順番に直そうとし、しかし、1文が長く構造が複雑なため混乱してしまうのです。
日本語の順番に直さなくてもいい。
むしろ、それは英語がわからなくなる原因だからやめなさい、と助言を続けると、少しずつ改善されていきます。

前から順番に訳せと言われても、意味の切れ目がわからないから、どこで切って訳すのかわからない・・・。
そういうこともあるとは思います。
英文を意味のまとまりで区切って考えることができず、1文の中の目についた単語を適当に組み合わせて、想像で意味を補って、何とかまとめてしまう・・・。

意味のまとまりとは、文法的なまとまりです。
すなわち、S、V、O、C、Mです。
文の成分です。
英文の意味を取ることと文法知識とはつながっています。
文法がわかっていると、意味のまとまりの把握は楽になります。
上の文は、SVOの文です。

Fishes / use / another form of camouflage / called "counter- shading."
魚は / 使う / 別の形のカムフラージュを / 「カウンターシェイディング」と呼ばれる。
S    V     O                M

これを日本語らしい順番に整えるならば、
魚は、「カウンターシェイディング」と呼ばれる別の形のカムフラージュを使う。
となります。

学校の英語コミュニケーションの教科書の学習で、そうした完成した和訳だけを丸暗記する人がいますが、それは応用がききません。
なぜその和訳になるのか、そのシステムを理解することが大切です。

なお、最後のM(修飾語)の部分は、過去分詞の限定用法です。
カムフラージュという名詞を後ろから修飾しています。
使える知識として文法が身についていると、そういうことも即座にわかり、意味を理解するのに役立ちます。


「カウンターシェイディングって何ですか」
と、その子は、やはり、そこにこだわっていました。
「それは、名称ですから、カウンターシェイディングのままでよくないですか?」
「でも、それがわからないと・・・」
「具体的にどういうことがカウンターシェイディングなのかは、以下の文で説明されていますよ」
もちろん、カウンターシェイディングという言葉の意味がわかるなら、それは大きなヒントになりますが、わからなくても何とかなります。
そういうことを信じる気持ちが足りないのだと思います。
それは、そのようなやり方で自力で英文を読み通した経験が足りないことからくるのかもしれません。

1つの段落には、1つの内容が書かれています。
論を述べた文の次には、それをさらに詳しく説明した文か、具体例が書かれています。
段落1つ全体で1つの内容です。
だから、第1文の意味が曖昧にしかわからなくても、次の文で意味がわかれば、大丈夫です。
段落全体のどこかがわかれば、大丈夫なのです。
そうした英文の呼吸を知らないか、あるいは、教えられてもそのような構成になっていることを信じていない。
1文の意味がわからないと、もうダメだ、わからない、と思ってしまう・・・。
これも、経験不足からきていると思います。

第2文。
The top of most fishes is a deeper shade than the underside.

「日本語にしてみましょう。前から順番にね」
そう言うと、今度は前から順番に訳してくれました。
「大部分の魚のトップは、深い影だ。下の側より」
「うん。いいですね」
「どういう意味ですか」
「うん・・・」


英文が読めない原因。
①単語力がない
②文法的に前から順番に把握しないので、意味がゆがむ
③日本語に直しても、意味がわからない

この③が、英文が読めない最後の障壁となります。

「大部分の魚のてっぺんは、深い影だ。下の側より」

そう言われて、即座に何のことかわかる人と、わからない人がいます。
ピンとくるかこないか。
これは難しい問題です。
どこかなぞなぞめいたところがあります。
「上は大水、下は大火事なあに?答は、お風呂」
みたいな。
いや、このなぞなぞの例も、現代の子どもには意味がわからないでしょう。

サンマやサバなど、具体的な魚の姿をイメージして、なるほど、と思う人もいれば、何のことかさっぱりわからない、ということもありえます。
こういうのは、単純な英語力ではありません。
推察する力、イメージする力が問われます。
英語は、辞書的な直訳では不自然で、どういう意味なのかわからない、ということがあります。
直訳にこだわらず、意味の範囲をもっと広くとる柔軟性が必要です。

でも、十代にそういう柔軟性を求めるのは難しい面もあります。
私自身もそうでした。
高1のときのサイドリーダーはシェークスピアの戯曲をリライトしたものでした。
その「ハムレット」の中に、確か astonish という動詞が使われていました。
辞書を引くと、「たまげさせる」と書いてありました。
・・・たまげさせる?
私が高1のときですら、その訳はかなり古めかしいものでした。
何やら滑稽な語感がありました。
「たまげて」いたのは、オフィーリアでした。
ハムレットの恋人である悲劇の美女が?たまげたの?

意訳すれば良かったのですが、私は、そのまま訳し、まずいことに、その部分を授業中に発表することになりました。
「たまげたオフィーリアは、・・・」
教室に笑いが起こりました。
私が面白がって、わざとその訳をしたのだと思ってくれた人が多かったようで、
「面白いね」
と後から言ってもらえたりしましたが、いや、そういうことではなかったのです。
私は、真面目にその訳を選んだのです。
辞書にそう書いてあるのだから、その通りに訳さなければならないと思い込んでいたのです。
好意的に取ってもらえたのだから、いいですけれども。

辞書の訳にこだわっても仕方ないのです。
意味を変えたらダメですが、言葉は変えてもいいのです。
でも、高1の私には、まだそれがわかっていなかったのです。
そして、現代の多くの高校生もまた。


ともかく、第2文がわからなければ、わからないまま、次の文を読みましょう。

第3文。
When they are seen from above, they merge with the dark water below them.

「意味のわからない単語はありますか?」
「merge」
「うん。それの品詞は?」
「動詞?」
「はい。では、それは『mergeする』と訳して、日本語にしてみてください」
「彼らが上から見られるとき / 彼らはmergeする / 暗い水と / 彼らの下の」
「すばらしい!それでいいです」

前半の when 節のほうは、丸ごとするっと訳していました。
文法的な分析をしなくても節全体の訳がわかるときには、日本語の順番に直した訳でもいいのです。
そこらへんは、臨機応変で構いません。


第4文。
And when they are seen from below, they merge with the sunlit water above them.

「意味のわからない単語はありますか?」
「sunlit」
「うん。これは文末に語注がついていますね」
「ああ」
「『太陽に照らされて輝く』。では、この文を前から順番に訳すと?」
「そして彼らが下から見られるとき / 彼らはmergeする / 太陽に照らされて輝く水と / 彼らの上の」
「いいですね」
「どういう意味ですか?」
「うーん・・・」

さて、ここからが大変です。
繰り返しますが、ここからは、英語の学習ではないのですが、英語長文読解の学習ではあるのです。
書かれてある内容を理解すること。
読解力の問題となっていきます。

「この文章は、何についての文章でしたか?」
「カムフラージュ」
「そして、設問は?」
「問 魚の体の特徴によるカムフラージュの仕組みを本文に即して具体的に2つ説明せよ」
「そうですよね。設問がヒントになっていますよ。魚を具体的にイメージしてください。サンマとかサバとか。そうした魚を上から見ると、魚の下の暗い水とmergeする。魚を下から見ると、魚の上の太陽に照らされて輝く水とmergeする。そういうことで、魚はカムフラージュをしている」
「・・・」
「サンマとかサバは、わかりますか?切り身じゃない魚を見たことある?」
「あります」
「じゃあ、わかるよ」
「わかりません」
「うーん・・・。イメージしましょう。サバが海を泳いでいます。そのサバを上から見ると、サバは下の暗い水とmergeする。海を泳いでいるサバを下の海中から見ると、太陽に照らされて輝く水とmergeする。これが魚のカムフラージュ。捕食者に見つからない方法」
「・・・」

「わかりませんか?」
「わかりません」
「状況もイメージできないですか?」
「merge の意味がわかりません」
「うーん」

1単語がわからないと、それでもう、全部わからない。
これも、そういうことの一部なのかもしれません。
大体どういうことを言っているのか、うっすらわかるのだけれど、適切な日本語が浮かばない。
merge の意味さえわかれば解決するのに、と思ってしまう。

しかし、この問題、実は、merge の辞書的な意味がわかっても、解決しないのです。

「教えましょう。merge の意味は、『合併する』『混ぜ合わせる』です」
「・・・」

第3文。
「彼らが上から見られるとき、彼らは下の暗い水と合併する」
第4文。
「そして彼らが下から見られるとき、 彼らは 太陽に照らされて輝く水と合併する」

「意味は、わかりますか」
「何となく・・・」
「この直訳をそのまま書いても、答案として完全に正解にはならないです。だから、1単語の辞書的意味を知っているか知らないかは、絶対的なことではないんです。その英文の中でどういう意味か、理解しましょう。もっとふさわしい日本語があるはずです。文脈上の最適な表現が、あるはずなんです」
「・・・」
「合併するじゃないですよね。適切な言葉は何でしょうね」
「・・・」

英語長文が読めない。
意味がわからない。
その原因は、
①単語力がない
②文法的に前から順番に把握しないので、意味がねじれる
③日本語に直しても、意味がわからない

この③の理由は、辞書的な直訳がわかったとしても、それは結局どういうことなのか、日本語として意味を咀嚼することが上手くできないことに原因があります。
それは、本人の日本語能力と大きく連動しています。
本人の中にない言葉は、使えないのです。
聞けば意味はわかるのだとしても、自ら使うことはできない言葉は思い浮かばないし、答案に記すことはできないのです。

ここからは、本人の粘りも影響してきます。
最適な言葉は浮かばなくて、何とか答案を完成させようとする人もいます。

問 魚の体の特徴によるカムフラージュの仕組みを本文に即して具体的に2つ説明せよ。

答案の一例。
◎魚は上から見られると、下の濃い水の色と混ざる。
◎魚は下から見られると、太陽に照らされて輝く水の色と混ざる。

「・・・悪くないですよ。でも、魚の体の特徴について書いていないですね。それについては減点されます」
「ああ・・・」
「書き直しましょう」

修正した答案。
◎魚は上から見られると、魚の上は濃い色なので、下の濃い水の色と混ざる。
◎魚は下から見られると、魚の下は薄い色なので、太陽に照らされて輝く水の色と混ざる。

「・・・正解です。それでぎりぎり大丈夫ですよ」

模範解答は、
◎魚は上から見られると、上部の濃い体色によって、下の濃い水の色と同化する。
◎魚は下から見られると、下部の薄い体色によって、太陽に照らされて輝く水の色と同化する。

merge を「同化する」と訳しています。
これが最適解なのは、言うまでもありません。
しかし、「同化する」という言葉が、本人の中にないのなら、その言葉は使えません。
でも、多少稚拙でもいいから、何か同じことを表現すれば、正解になります。
少ない語彙で頑張るのは、英作文のときだけではありません。
日本語で記述するときも、同様です。

日本語で記述しようとするときにも、自由に言葉がつかえない、悔しさ。
上手くいかない不自由な感覚。
それで諦めるのではなく、だから頑張る、という気持ちになれば、語彙も増えていきます。
練習することで、自由になる。
それは、英語でも日本語でも同じだと思います。




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