2011年08月05日
2乗の読み方
このページは、2025年に加筆しました。
さて、今日のテーマは、「2乗」の読み方。
これ、今でも「じじょう」と読む人がいますが、正しくは「にじょう」です。
「じじょう」は、「自乗」という意味で言っている人と、長男・次男とか、一郎・二郎とかの「じ」の読み方をそのまま移行させて「じじょう」と読む人がいるようです。
しかし、1970年頃、学会で、「2乗」と表記し、「にじょう」と読む、という合意が形成されたそうです。
それ以降、正しい読み方は、「にじょう」です。
長男・次男の「じ」という読みは、数学とは関係がありません。
2次関数を「じじかんすう」と読む人はいないですよね。
「2」の読みは、「に」です。
「自乗」という言い方は、やや問題があります。
3乗も4乗も広い意味では「自乗」となり、定義としてあいまいです。
文化庁が定める学術用語としても、「自乗」という言葉は存在しません。
「平方」ならいいのですが。
上の画像を見てください。
これは、今年度から発売の教科書準拠ワークの、とあるページです。
「2乗」に「にじょう」とルビが振られているのが見えるでしょうか。
昨年度までは、そんなことはなかったので、ちょっと驚きました。
学校で正しい読みを教えても、家庭で保護者の方が「じじょう」と教え直してしまうので、その阻止のためにとうとう読み仮名を振ることになったのでしょうか?
私自身は、中学生の頃、当時、おそらく30代だったと思われる、才気あふれる数学教師に教わったので、そのように統一されたという最新知識とともに正しい読みを教わりました。
30年くらい前、数学者の秋山仁氏が、NHKラジオの数学講座(たぶん、1996年の「数学入門」)で、やはりこの話にふれ、正しくは「にじょう」であると説明していました。
昨年度のNHK「3か月でマスターする数学」でも、第1回放送では、アナウンサーが「じじょう」と読んでいましたが、指導が入ったのか、以降の回は「にじょう」と読んでいましたね。
私は、昔も今も、常に「にじょう」と読んでいますが、以前は変な顔をする生徒もいました。
「にじょう」のほうが正しい読み方なのですよ、と一度は説明するのですが、そういう子たちは頑なに「じじょう」という読み方を変えないので、もういいや、と以後はスルーすることにしていました。
一度は「にじょう」に直っても、また「じじょう」という読みが復活する子もいました。
「何だ、その読み方は!」
と、お父さんに怒られたので、やっぱり「じじょう」と読むことにした、と私に話してくれた子もいました。
その頃のネットには、「にじょうという読み方は、間が抜けている」などの書き込みもありました。
しかし、この10年ほどで様子が変わりました。
公立中学の子は、「にじょう」と正しく読むようになりました。
中学の先生たちが、正しく「にじょう」と読んでいるからだろうと思います。
私立中学では、なおも「じじょう」という読み方が残っているところもありますが、それも少しずつ変わってきているのを感じます。
とはいえ、大人の社会では、なおも「じじょう」と読む勢力が強い。
俗語としての「自乗」はまだしばらく残っていくと思います。
自分が慣れ親しんだ「じじょう」という読み方を捨てなくてもよいと思うのです。
私たちの日常の言語は、文化庁にしばられるようなものではないのですし。
ただ、学校で正しく「にじょう」と教わったのに、大人に「それは、じじょうと読むんだ」と指摘される若い人がいたら、ちょっと気の毒。
もしそんなことがあったら、
「それは昔の読み方ですね」
と軽くかわすのが得策かと思います。
リットルは、「ℓ」ではなく、「L」と表記する。
pHは、「ペーハー」ではなく、「ピーエイチ」と読む。
そういうこととあわせて説明すれば、それ以上は何も言われないと思います。
Posted by セギ at 23:15│Comments(0)
│算数・数学
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。