たまりば

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2012年12月19日

ひとりで解けた問題


私自身が小学生の頃の国語の教科書に『ひとりで解けた問題』という文章が載っていて、印象に残っています。
教科書の終わりのほうにあった読み物で、実際の授業では扱われないまま終わりました。
国語の教科書なのに、内容は算数の問題を解く話なので、扱わないのももっともだ、という内容なのですが、読んでいて、とても面白かった記憶があります。

大体、こんなふうな内容でした。
随分昔の話ですから、細部には記憶違いもあると思いますが。

主人公は、小学生の男の子。
ある日、弟から算数の問題を質問されますが、解くことができません。
しかし、「わからない」と言っては、兄の立場が揺らぎます。
そこで、「あとで教えてやる」とか何とかいって、時間を稼ぎます。

問題は、こんなふうなものでした。
「24個のキャンディを、姉が妹の2倍の個数をもらうように分けました。姉は何個もらいましたか」

受験算数としては、非常に易しい。
でも、昔も今も、小学校で習う文章題ではありません。
解き方を知っていれば簡単ですが、そうでないなら、思考力が必要になります。

兄は、必死に考えます。
まず、24個のキャンディを半分に分ける。それが姉の分。
24÷2=12
妹は、その半分。
12÷2=6
わかった。姉が12個で、妹が6個だ。

ところが、弟に教えるにあたって、決して間違えてはならない兄は、ここで検算をします。
姉が12個で、妹が6個。
12+6=18
あれ?何で24個に戻らないんだ?

行き詰った兄は、この問題を考え続けながら、散歩に出ます。
何度考えても、この考え方では、同じ式、同じ答え。
何が違うのか、わからないけれど、検算して戻らないのだから、違うことだけは、確実。

歩きながら、兄は、考え続けます。

混乱のあれこれが、たくさん描写されているのですが、そこはもう覚えていないので割愛します。

考えながら、兄は、地面に絵を描きます。
なぜ、姉は、妹の2倍のキャンディをもらうのだろう。
エプロンドレスを着た、2人の女の子の絵を描いて、考えこみます。

そして、思いつくのです。
そうだ。
姉は、ポケットを2つ持っているから、妹の2倍のキャンディをもらえたんだ。
そう考えて、姉のエプロンにポケットを2つ、妹のエプロンには、ポケットを1つ描きます。

ポケットは、全部で3つ。
だから、式は、
24÷3=8
8×2=16
姉が16個。妹が8個。
たして、24個。
やったー。絶対、これが正解だ。

素朴なこのお話、小学生の私は、なんだかとても気にいって、何回も読みました。
今読んでも、面白いかもしれません。

そして、今、勉強している子どもたちにも、この兄のようであってほしいと思っています。

この兄の危機感。
この問題が解けなかったら、兄としての立場を失う。
こういう危機感があるとき、人間は、想像以上の力が出せるのでしょう。
でも、本当は、その力は、いつでも出すことができる力です。
解けなくてもまあ仕方がない、と思っているから、解けないのですよね。

わからなかったら、図に描いてみる。
受験算数を体系的に学んでいるなら、線分図を描きますが、この兄の描いた、エプロンをつけた女の子の絵は、原始的ですが、とてもチャーミングでした。

諦めないで、歩きながらでも、考え続ける。
1問を、わかるまで、考える。
なんて貴重な経験なんだろう。
なんて贅沢な時間の使い方だろう。
この兄は、そんなに算数ができるとは思えない設定で、だから、最初は、ありがちな失敗をしているのですが、そういう子が自力で正解にたどりつくところが素敵です。

タイトルも大好きです。
『ひとりで解けた問題』
  


  • Posted by セギ at 22:59Comments(2)算数・数学