たまりば

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2023年10月04日

小数のわり算から読み取れる数学力。

小数のわり算から読み取れる数学力。

小学生の算数の習熟度を見る1つの目安に、小数のわり算があります。
もちろん、筆算の必要な小数のわり算です。
多くのご家庭では、子どもに算数のことを質問されてから教えます。
「子どもの勉強を見ること」=「わからないところを教える」
になりがちです。
そして、たいてい、子どもの質問は文章題です。
しかし、そもそも計算が上手くできていないということがありえます。
子どもは、計算問題については親に質問しません。
答が間違っていても、計算ミスをしただけだろうと、親も子どもも思ってしまいます。

文章題も心配だとは思いますが、まずは、子どもが計算している様子をじっくり見てあげてください。
とんでもないことが起きている可能性があります。

例題 11.985÷1.7 を計算しなさい。

ただ計算しなさいとだけ書いてある場合は、これは、割り切れるのでしょう。
割り切れるまで、割り進めます。

小数点を移動させることは、たいていの子どもは覚えています。
ただ、その意味は、理解していないかもしれません。
わり算は、わる数とわられる数の両方を10倍しても、商、すなわちわり算の答は変わりません。
例えば、
10÷5=2
100÷50=2
1000÷500=2
また、逆に、わる数とわられる数の両方を10分の1にしても、商は変わりません。
1÷0.5=2

こうした性質を利用して、わり算の筆算を行います。
11.985÷1.7の商と、119.85÷17の商は同じです。
そのことを利用して、わり算の筆算を行います。

ここまでは、まずクリアできたとして。

私が教えてきた生徒の中で、一番困った状態だった子は、筆算のわる数とわられる数を逆に書いてしまう子でした。
119.85÷17 の場合に、119.8を左端に書き、わり算の「がんだれ」のようなものの中に、17を書いてしまうのでした。

おそらく、わり算の筆算を最初に学習した頃は、正しく書くことができたのだと思うのです。
多分、ノートをきれいに書くことを優先してしまったのでしょう。
算数のノートは、左端から詰めて書いていきたい。
だったら、わる数から書いたほうがいい。
最初は、そうやって自分なりの工夫でやっていたことが、そのうちに、どちらをどちらに書くか、わからなくなってしまった・・・。
そういうことのようでした。

ノートを左端から詰めて書いていくことなんて、どうでもいいことなのに・・・。
式に書いてある順番通りに、わり算の「がんだれ」の中にわられる数を書いていくことを常に優先していたら、こんな混乱は起こらなかったのに。
本人の記憶では、わられる数のほうを左端に書くことになっていたはずのようで、それは間違いだと言われて混乱し、頭の中でその折り合いがつかない様子でした。
そのようなことも後々起こりえますから、子どもがわり算の筆算をしている様子は、ときどき見て、何か不自然なことをしていたら助言したほうがいいと思います。
算数・数学が後々苦手になる子ほど、不自然な「本人なりの工夫」をすることがあります。
優先するべきことが違うのです。

さて、筆算の準備は正しくできたとして。
次に、どこに商が立つかを理解できること。
1の中に、17は1つもない。
11の中に、17は、1つもない。
119の中に、17は、いくつかある。
よし、9の上に数字が立つぞ!

しかし、わり算の筆算の最大の課題は、商の数字がなかなか立てられないことでしょう。
スパンと一度で「7」が立つと気持ちいいですが、「9」から立て始めて、消して、「8」を立てて、消して、それで不安になって、「6」を立ててしまう不器用な子、案外多いです。
商の立て方が余程わからなかったのか、どのわり算でもまず「5」を立てて、そこから1ずつ上げたり下げたりして調整している小学生を見たこともあります。

必要なのは、17×1ケタのかけ算の暗算をする能力。
その技を伝達しなければなりません。

17×〇のかけ算の場合、7がかなり大きい数なので、繰り上がりで、上の桁に大きい数が上がってきます。
そのことを考えあわせていく力が必要となります。
そして、それができない子が、現実には多いのです。
17×いくつが、119に限りなく近くなるのか?
17×7=119 です。
これがスパンと暗算で求められると、わり算は速くなり、そして楽しくなります。

次に、正確にひき算をする能力。
今回は簡単ですが、くり下がりのあるひき算が難しいこともあります。
ミスをしやすいところです。

そして、もう一度、次のケタの商を立てましょう。
この作業を忘れていて、1回で終わらせてしまう子を見たこともあります。
わり算は一度で終わると誤解していて、その後、どうしたらいいのか、わからなくなってしまっていました。

さて、連続して商を立てるということは理解していたとして。
この問題は、難しいです。

      7. 
1.7 ) 11.985
    119

このひき算で、余りは、桁を無視すれば、85・・・。
ここで、8の上に「0」の商を立てられない子は、多いです。
8の中に17はないので、0を立てる。
そして、85の中に17はいくつかあるから、5の上に何か商を立てる。
そのことを理解していないのです。
理屈を理解していないので、注意されたときは「0」を立てるけれど、次のときにはまた忘れてしまう・・・。
作業手順で筆算しているだけで、意味を理解して筆算していないので、そういうことになってしまうのだと思うのです。
そうかと思うと、関係ないときに「0」を立てたりもします。
手順の簡略化にばかり意識がいっているので、おかしなことをやり始めます。
桁に関する感覚が育っていないのかもしれません。
「8の中に17はないので、0を立てる」
こうした作業を丁寧にやっていくことができない様子です。

8の上に0を立てて。
そして、85の中に17は5個あるので、5の上の5を立てる。
よし、答が出ました。
11.985÷1.7=7.05 です。


さて、さらに難しくなります。

例題 11.986÷1.7 の商を四捨五入して10分の1の位まで求めなさい。

これは、わり切れないわり算です。
「商を四捨五入して10分の1の位まで求めなさい」が重要。
計算力だけでなく「問題文を読む力」が問われることになります。
そもそも、そうした問題文の指示を読んでいないので、間違える子。
あるいは、読んでいるけれど、意味がわからない子。

どこで、筆算をやめたらいいのか?
「四捨五入して10分の1の位まで求めなさい」
とあるのですから、100分の1の位まで求めて、そこで四捨五入します。
そのことを、きちんと意味から理解している子は、2度と忘れないし、以後は自力で解いていけます。
しかし、作業手順で覚えようとする子は、しばらくやっていないとすぐ忘れます。
なぜ、この問題文の意味が理解できないのかは、大人にはそれこそ「理解不能」ということもあります。
なぜ、こんな簡単なことの意味が理解できないのか?

本当に理解できない場合は少ないです。
ただ、算数を「理解」する習慣がない子もいます。
低学年の頃から、作業手順の丸暗記で済ませてきたので、算数を「理解する」ということを、そもそもやったことがないし、どうすればいいのか、わからない。
今は、こういう子が多いように感じます。

なぜ、そうなってしまうのか?
なぜ、理解しないで、手順を覚える方向に逃げてしまうのか?
教えると、
「あ、わかったわかった」
と慌てて理解したふりをする子もいます。
しかし、作業手順を思い出しただけなのです。
そのまま、中学生になり、高校生になると、数学は全くわからなくなります。
高校数学の「作業手順」は、複雑です。
高校生になっても、作業手順でやっていけると思い込み、しかも複雑な作業を簡略化しようとするので、まるで小学生が高校数学を見よう見真似で解いているように見えてしまう子もいます。
仕方のないことですが、そうした子の答案は頓珍漢で、加点要素がありません。
そうした子も、理解力がないわけではない。
ただ、数学を理解する道筋が、高校生になっても見えていないのです。

何度も書きましたが、「理解」するのは、頭のメモリを沢山使ってしまいます。
そんなことは無駄なので、作業手順だけ覚えて、テストが終われば忘れてしまう子たちがいます。
また、ものを考えると、頭が重くなって、つらくなる子たちもいます。
脳細胞にダメージが与えられている、肉体的な痛みがある、と把握してしまうのです。
考えることが、肉体的な苦痛なのです。
だから、深く考えることができません。

小学校の算数は、手順だけ覚えたほうが楽かもしれません。
表面的には、理解しても、手順だけ覚えても、結果は変わりません。
手順だけ覚えたほうが楽だ。
頭のメモリもそんなに使わずに済む。
そうやって、低学年のうちに横道にそれてしまったのだろうと、私は想像します。

頭の回転がある意味速くて、小学校の算数をなめてしまった子。
あるいは、ものを考えるのが苦手で、わかったふりをするしかなくて、手順を覚えることで済ませてきた子。
どちらの場合もあるのだろうと思います。

ただ、何がどうであろうと考える方向に進む子もいます。
斜め読みでも立式できるような簡単な文章題でも、文字が書いてある限り、それをしっかり読まずにいられない子。
読まないで解くという発想がない。
「手順だけ覚える」と考えたことがない。
「わり算は、問題文の大きい数を小さい数でわればいい」といった、子どもが発見してしまいがちな誤った手順に対し、
「そんな薄気味悪いことはできない。意味のわからないことはできない」
と踏みとどまれる子も、また多いのです。

11.986÷1.7 の商を四捨五入して10分の1の位まで求めなさい。
この計算は、7.05・・・まで求め、5を四捨五入します。
答は、7.1です。


さて、次の問題。
問題 11.986÷1.7 の商を100分の1の位まで求め、あまりも答えなさい。

問題の意味が理解できても、ここで、あまりの小数点はどこでしょう?
計算を簡単にするために、小数点を移動して筆算しますが、実際の計算は、あくまでも、11.986÷1.7です。
あまりまで、10倍するわけにはいきません。
したがって、あまりに関しては、元の小数点が復活します。

答は、7.05あまり0.001 です。

小数のわり算は、奥深い。
計算している様子を見ているだけで、その子の課題が見えてきます。

小学生のうちに課題に気づくことは意味のあることです。
作業手順でない算数・数学の解き方とは、何をどうすることなのか?
生まれてから1度もやったことのないことに挑戦することになります。
考えるとは何をどうすることなのか?
それがわからない・・・。
何をどうすることかわかりかけても、頭が重くなってつらくて、脳細胞が潰れそうな気がするので、考えることをすぐやめてしまう・・・。

そうした課題が見えてきたときに、その子を支え、励ます力が必要になります。
一人では、多分、乗り越えられないと思うのです。





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