たまりば

地域と私・始めの一歩塾 地域と私・始めの一歩塾三鷹市 三鷹市

2022年12月01日

算数・数学。比例配分のちょっとした難問。

算数・数学。比例配分のちょっとした難問。

今回は、比例配分に関するちょっとした難問を解いてみます。
こんな問題です。

問題
80枚の色紙を姉と妹で分けました。姉が10枚を友達にあげたので、姉と妹の色紙の枚数の比は3:2になりました。姉と妹は、はじめどのような比で色紙を分けましたか。

まずは小学生としての解き方から。
受験算数的に解くと。
これは、線分図を描くことを苦にしない子なら、何でもない問題です。
比例配分の場合、線分図は1本でも、2本描いても、間違いではありません。
「分配算」という定形の問題としてとらえれば、線分図は2本描きます。
今回は1本の線分図で考えてみましょう。
まず、全体が80枚であることを端から端までで示します。
姉が10枚を友達にあげたので、右でも左でも、どちらでもいいですから、10枚をとりのぞきます。
今回、姉が左側と考えるほうが自然なので、左から10枚取ると見やすいでしょう。
その残りを3:2に分けます。
③+②のあわせて⑤が、80-10=70(枚)であることが、見てとれます。
①にあたる量は、70÷5=14
③は、14×3=42
②は、14×2=28
ただし、③である姉は、本当は友達にあげた10枚分多く持っていたのですから、
姉は、42+10=52(枚)
妹は、28枚。
よって、はじめの比は、
52:28=13:7
答は、13:7 です。

このように解くならば、
「え?この問題の何が難しいの?」
と感じる人も多いと思うのですが、描けそうで描けないのが、線分図です。
どれだけ教えこんでも、何だか頭の奥まで沁みていっている気配がなく、型通りの問題を型通りに解くことにしか線分図を使えない子は受験生でも多いです。
線分の長さが何かの数量を表しているという根本を理解できていないのかもしれません。
あるいは、算数の問題を解くということは解き方の手順を覚えることだと思っているので、今までと少し見た目の違う問題は、手順がわからず、だから解けないということになってしまう子も多いです。
和差算などの定型の問題を定型の線分図を描いて解くことしかできないのです。
「線分図を描いて考えてみたら?」
と声をかけても、
「描き方がわからない」
という答が返ってきます。

そうした子たちは、線分図を描いたからこそ解けた、という体験がないのだと思うのです。
問題を解くだけでも難しいのに、線分図を描くという苦役まで加わっている・・・。
そのような感覚しかないのだと思います。

算数の問題は、自分で解き方を考えるもの。
その補助をしてくれるのか線分図です。
しかし、そうした発想のない子は多いです。
算数は、とにかく解き方を覚えるもの。
線分図も描き方を覚えるもの。
だから、見たことのない問題なんか解けるわけがない。
暗記、暗記、暗記。
作業手順の暗記。
そういうことになってしまっている受験生が実際には多いのです。
昔は中学受験を考えなかっただろう学力層の子が今は受験することが増えていますから、そういう実態になっています。

といっても、諦める必要はありません。
そのように努力している受験生を受け入れるための入試問題を作っている中学もあるので、それで合格できます。
見事に定型の基本問題が並んでいる入試問題。
これができないのは、努力不足。
暗記し反復練習した子なら、解ける。
そういう入試問題です。

そんな中学に入っても・・・と思う必要もないと思います。
同じ学力の子がそろっている中学でのびのび学習する中で、何かの拍子に数学が理解できるようになるという可能性もゼロではないからです。
そのような学校は、中学でも高校でも、学校が沢山の課題を出して、勉強の面倒を見てくれます。
それにそってこつこつ真面目に勉強していれば、それなりに何とかなる。
そういう私立は多いです。


ところで、中学受験をしない小学生でも、6年生になれば「比」は学習します。
上のような比例配分の問題も、公立小学校でも学習しますが、単元の最後の応用問題という扱いで、理解できないまま終わる子も多いところです。
これが理解できないと、中学で比を活用できないのに・・・。
そう思うのですが、小学校の算数で学びそこねてしまうのです。
今、上の問題を簡略化してみましょう。
「70枚の色紙を姉と妹に3:2に分けました。姉は何枚もらったでしょう」
という問題に変えてみます。
それでも解けない子はいます。
教科書に載っている例題の解き方、そして、勿論、中学・高校で活用するために私も推奨する解き方は、
70×3/5=42(枚)
です。
でも、この解き方ができないのです。
70÷3
といった、よくわからない式を立ててしまうことが多いです。
70×2/3
という式もよく見ます。

公立小学校でも、5年生で「割合」は学習していますから、
もとにする量×割合
という式は使えるはずなのですが、「割合」を理解できないまま忌避し、2度と使うつもりがない気でいる6年生は多いです。
「割合」は、一生使うんですよー。
中学でも高校でも、多くの単元で使うんですよー。
そういう私の声が、呪いに聞こえることもあるかと思います。

「3:2のうちの3ということは、5個に分けたうちの3個分。それは、全体の3/5ということですよね」
という説明がすっと頭に入る子と、よくわからないまま迎合してうなずく子と。
「全体の3/5ということは、全体×3/5ということです」
という説明がすっと頭に入る子と、全く理解できないまま、わかったふりをしてうなずく子と。

わからないときに、
「わからない!」
と声を上げることができれば、形勢は逆転するのに、それができない。
諦めて、丸暗記しようとする子がいます。
学校の授業では、ある意味仕方ないかもしれません。
理解できる子たちの邪魔になりますから。
冷たい視線を浴びるでしょう。
わかったふりをしているほうが安全。
それが習い性になり、個別指導でも、わかったふりをするのでしょうか。

「3:2のうちの3ということは、5個に分けたうちの3個分。それは、全体の3/5ということですよね」
という説明が理解できないとなると、これはもしかしたら分数の意味が理解できていないのではないかという疑いがあり、もし生徒に「わからない」と言われれば、ここからは私の闘いです。
本当に根本的なことほど、全く理解できていない子は存在します。
ほおっておけば、そのまま、中学生になり、高校生になります。
どういう説明をすれば、その子は理解できるのだろう?

一方、
「全体の3/5ということは、全体×3/5ということです」
この説明が理解できない子は、「割合」が理解できていない子です。
そして、それは仕方ない面もあります。
もとにする量×割合
という公式に、実は、意味はありません。
比べられる量÷もとにする量=割合
という公式を変形しただけだからです。
だから、子どもがそれを実感できないのは当然のことです。
何でかけ算なの?
そう思う子がいても当然です。

「速さ」の公式を、「速さの3公式」と呼ぶのに対し、「割合」の公式は「割合の3用法」と呼びます。
速さの3本の公式は、それぞれ意味を伴っていますが、「割合」の公式で意味があるのは、1本目だけです。
あとは、その1本を変形しただけの式。
運用上の式です。
だから、「割合の3用法」と呼びます。

もとにする量×割合=比べられる量
この式は、実感をともなうものではないので、理解できないことはそんなにおかしいことではありません。
大人は、それが実感だと誤解するほどにこの式を長年使い倒してきただけのことです。
本当に本当のところで、実感はありません。

70の2個分を求めるなら、70×2。
だから、
70の3/5を求めるときも、70×3/5。

この説明ですっと納得する子は、数学センスのある子です。
整数で言えることは、分数でも言えるんだー。
そういう仕組みになっているんだー。
システム、すげー。
算数・数学すげー、と感動できる子です。

「分数はまた話が別なんじゃないの?」
と思う子がいても仕方ありません。

70の3/5ということは、70を5つに分けた、その3個分。
70÷5×3
=70×1/5×3
=70×3/5

こういう説明が理解できる子は、さらに数学センスのある子です。
分数に関する式の操作は意味がわからない子のほうが多いです。

もう諦めて暗記して、実感がもてるようになるのを待つしかないのか?
理解できなくても、正しい解き方を暗記して、それを利用し続け、いつか実感になるのなら、それでもいいのかもしれません。
でも、理解できないまま、間違った解き方を繰り返し、それが頭に残って、永久に間違い続ける子もまた多いのです。


問題に戻りましょう。

問題
80枚の色紙を姉と妹で分けました。姉が10枚を友達にあげたので、姉と妹の色紙の枚数の比は3:2になりました。姉と妹は、はじめどのような比で色紙を分けましたか。

受験をしない小学生にとっては、これは、「比」の学習の中での最高難度の問題です。
線分図の描き方など、習ったことがありません。
さて、どう解くか?

それでも、問題の意味を深く理解できる子なら、解けるのです。
姉が友達にあげた10枚を除外して考えるという発想さえもてるならば。
姉と妹の色紙の枚数の比が3:2になっているとき、全体は、
80-10=70(枚)
あとは、比例配分で、姉は、
70×3/5=42
でも、姉は本当はもう10枚持っていたのだから、
42+10=52
一方、妹の枚数は、
70×2/5=28
でもいいし、
80-52=28
でも求められる。
よって、その比は、
52:28=13:7



最後に、これを中学生の1次方程式として解きましょう。
はじめの姉の枚数をx枚としましょう。
すると、妹は、(80-x)枚。
しかし、姉は友達に10枚あげましたから、今持っているのは、(x-10)枚。
これで比例式を立てます。
(x-10):(80-x)=3:2
内項の積=外項の積 であることを利用して、方程式に直します。
2(x-10)=3(80-x)
2x-20=240-3x
5x=260
x=52
よって、妹の枚数は、80-52=28(枚)
はじめの比は、
52:28=13:7

となります。
同じ答になりました。
中学1年生の1次方程式の文章題としても、これはある程度の難度の問題です。




  • 同じカテゴリー(算数・数学)の記事画像
    倍数とあまりに関する受験算数の問題を、高校数学で解く。
    数学で壁を越えられない子のやりがちなこと。
    通過算の難問。
    中1数学「正負の数の乗法」。旅人は東を目指す。
    考えて問題を解く習慣のない子。
    図形問題の攻略。
    同じカテゴリー(算数・数学)の記事
     倍数とあまりに関する受験算数の問題を、高校数学で解く。 (2024-04-23 12:18)
     数学で壁を越えられない子のやりがちなこと。 (2024-03-31 18:25)
     通過算の難問。 (2024-03-26 17:35)
     中1数学「正負の数の乗法」。旅人は東を目指す。 (2024-03-12 12:23)
     考えて問題を解く習慣のない子。 (2024-03-06 13:57)
     図形問題の攻略。 (2024-02-18 17:25)

    Posted by セギ at 14:45│Comments(0)算数・数学
    ※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
    上の画像に書かれている文字を入力して下さい
     
    <ご注意>
    書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

    削除
    算数・数学。比例配分のちょっとした難問。
      コメント(0)