たまりば

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2022年10月14日

高校数学。2次方程式の解の正負に関する問題。

高校数学。2次方程式の解の正負に関する問題。

問題 2次方程式 x^2-2(a-3)x+4a=0 が異なる2つの負の解をもつような定数 a の値の範囲を定めよ。


ここからしばらく、この問題の解き方ではなく、こうした問題への違和感が強くて解くことができない子に関する話をします。
解き方だけを見たい人は、ずっと後ろに飛んでください。

数Ⅰ「2次関数」という単元では、係数に文字を含む2次関数の最大値・最小値に関する問題と、上の2次方程式の解の正負に関する問題がラスボス的な存在です。
定期テストの最後の問題が、この類題になるのは、目に見えています。
だから、「これがテストに出ますよ」と私は何度も強調して解説するのですが、数学があまり得意ではない生徒の反応は鈍いことが多いです。

定期テストが返ってくると、予想通りテストに出題されているのですが、手をつけていません。
「ほら、やっぱりテストに出たでしょう?」
そう声をかけた場合の反応も鈍いです。
返事がありません。

これについて、実は私も少し実感があるのです。
私も、高校1年の頃は、高校の数学に違和感がありました。
何だか、私の知っている数学とは違う・・・。
こういうのじゃない数学を勉強したい。
中学の数学は面白かったのになあ・・・。
そんな気持ちがありました。

今になって振り返ると、それはひとえに私の認識の甘さから来ていたことでした。
数学というものが、全くわかっていなかったのです。
x^2-2(a-3)x+4a=0
x についての2次方程式なのに、x 以外の文字が入っている。
そんなの、答が出るわけがない。
答が出ないなんて、数学じゃない。

中学を卒業したばかりで、数学に対する認識がその程度だったのです。
虚数を学べば、
「2乗して負の数になる数なんて、この世に存在しない。こんなのは間違っている」
そんなことを考え、そんなふうに考える自分は正しいと思っていました。

数学に対する認識が幼稚で甘かったのです。
しかし、これから学ぶことになるものがどういうものであるかわからなかったので、仕方ない面もあったと思います。
自分の中の違和感を払拭できませんでした。
こんな文字ばっかり使っていて答が1つに定まらない問題は、数学としては亜流というか傍流というか、自分の思う数学ではない。
自分の思う数学ではないので、こういう問題に価値はないから、学習する意味はない。
数学的には重要ではない。
こんなのは、数学ではない。
そんな勝手な判断をしていました。

高校は進学校でしたので、高校1年の最初から、授業のテキストは赤チャートでした。
教科書を使った記憶はほとんどなく、数学の授業といえば、東大卒と噂の数学教師が、ひたすら赤チャートの問題を解いていました。
その後ろ姿しか記憶にありません。
そして、数学の授業中はいつも寝ているクラスメートが、数学の定期テストは満点を取っていました。
何だかもう、数学が嫌いになる条件が整っていた気がします。
中学は今でいうアクティブラーニングの実験授業をしていた学校でしたので、針が左から右に大きく振り切ったようなもので、その違和感もすさまじかったのです。

でも、何よりも私自身に課題があったのだと思うのです。
頑固だったと思います。
「自分の思う数学はこういうもの」といった幻想を抱いていました。
それは、「自分が今まで学習してきた数学」という狭い範囲での経験からきている感覚によるもので、明らかに間違った感覚でした。
しかし、実感が根拠ですから、自分では確信していました。
だから、自分の思う数学と違うものは、価値のないものと思っていました。

2次方程式に他の文字が含まれていれば、含まれていない問題よりも、当然難しい。
けれど、難しいからダメだと思っていたわけではないのです。
私なりの考えがあって、「こういうのは数学ではない」と判断していました。
その判断は、明らかに、間違っていました。
それは、その先の数学を学べば、わかってくることでした。
でも、「その先」は、まだ学んでいないので、知ることができなかったのです。


数学が嫌いな子の中には、大なり小なりこうした感覚があるのではないかと思うのです。
私は高校で違和感を抱きましたが、それよりもずっと前の段階で違和感を抱く子たちもいるでしょう。

例えば、小学校の「ともなって変わる量」や「数量の関係を表す式」が、全くわからない子たちがいます。
□ とか △とかxとかyとか出てきて、1つに定まらなくて、何のために何をやっているのか、全くわからない。
これは何の意味があるの?
こんなの、意味ないでしょう?
そう思う子たちは、多いです。
小学生に、今学校で何をやっているか尋ねたときに、
「何かよくわからないことをやってる。何か本当に全然意味のわからないことをやってる」
と口を尖らせて主張する場合、大抵はこの単元です。
要するに、関数がわからないのです。
答が1つに定まらないものの意味が、わからない。
算数は数字だけの式を立てて計算するものだと思い込んでいるので、それ以外は認められないのです。

小学生で「文字を使った式」への抵抗感の強い子も多いです。
式に x を使う。
何でそんなものを使うのか、意味がわからない。
そんなものを使わず、そのわからない x を求める式を立てたらいいんじゃないの?
そう思う子どもは多いです。
意味がわからないので、「文字を使った式」の単元が終われば、そんなものは2度と使いません。

大人が思うよりもずっと、子どもは頑固で保守的で、自分がこれまで経験してきたことから物事を判断します。
狭い視野で、物事を判断してしまいます。
乏しい経験から判断するので、多くは間違っています。
子どもの柔軟さとは、自分は間違っていたと理解してからの回復力をさすのだと思います。
昨日までの自分など踏みつけて、新しい考え方で生きていく柔軟さが子どもにはあります。

小学生の頃、「ともなって変わる量」や「文字を使った式」への抵抗感が強かった子が、そのまま数学が苦手になるとは限らないのは、その回復力があるからでしょう。
子どもは発達の途中ですから、脳も日々発達しています。
小学生の頃には理解できなかったことも、中学生になると理解できるようになります。
数学に英文字を使うことも、抵抗感なく受け入れていく子のほうが多くなります。
そうした中でも個人差はあり、中学生になっても方程式の意味や関数の意味がわからない子がいるのも事実ですが。

小学校や中学校で、数学に特に違和感を抱くことなく過ごしてきても、高校数学で挫折することがあります。
それまで、数学のテストで高得点を取っていただけに、自分が悪いとは思えない。
数学が悪い。
数学の問題が悪い。
こんなのは、本当の数学でない。
そんな思いを抱きます。

私は、幸い、友人に恵まれました。
「2乗して負の数になることなんてないんだから、虚数なんて意味ないよね」
そう言ったとき、友人は、別にバカにするわけでもなく、少し考えてから、淡々と説明してくれました。
「2乗して負の数になる数があれば、2次方程式で『解がない』ということはなくなる。例外がなくなるので、そのほうがいいでしょう」
「・・・!」
二の句がつげない衝撃でした。
この世に存在しないものに向けて数学は突き進んでいく。
でも、それは本当に存在しないのか?
もしかしたら、あるんじゃないの、それは?
友人の言葉で、いきなり、私の頭は拡張しました。

x に関する2次方程式で、x 以外の文字が使われているくらいのことで、価値を否定している場合ではないことも、拡張した頭で理解できました。 
数学は、一般化を目指している。
拡張を目指している。
だから、どんどん抽象化する。
答が1つに定まらない?
いいでしょう、そんなことは。
場合分けすればいいんだから。
そういうのが、数学。
実は、そういうのこそが、数学。
そっちが、本流。
数字なんか1つも出てこない、文字ばっかりの式になっても、それは数学。
そう感じるようになると、赤チャートは、悪魔ではなく、まさに「指針」に変わりました。

高校数学は、文字だらけです。
英文字だけでなく、ギリシャ文字も沢山出てきます。
そういうものです。
数学とは、そういうものです。
そのように認識すれば、冒頭の問題の重要性がわかってくるかと思います。


さて、冒頭の問題に戻りましょう。

問題 2次方程式 x^2-2(a-3)x+4a=0 が異なる2つの負の解をもつような定数 a の値の範囲を定めよ。

この問題は、数Ⅰでも数Ⅱでも出てきます。
解き方は一部異なりますが、勿論、最終解答は同じです。

まずは、数Ⅰの解き方で考えてみます。

左辺を関数として考えます。
すなわち、f(x)=x^2-2(a-3)x+4a
これは、放物線です。
下に凸の放物線ですね。
与えられた2次方程式 x^2-2(a-3)x+4a=0 が異なる2つの負の解を持つということは、関数 y=f(x) は、x 軸の負のところで2か所交わるということです。
x 軸上の点は、y の値が0ですから、放物線と x 軸との交点の x 座標は、2次方程式 x^2-2(a-3)x+4a=0 の解です。

ただし、今の説明が理解できない子も一定数存在すると思います。
わからないからそういうものなのだと諦めて解き方を暗記するけれど、そんなものは定着しないので、定期テストが終わればすぐ忘れる。
その繰り返しで、数学がわからない・・・。
それは、おそらく、中学の関数がわかっていないのです。
「関数 y=-2x+5 と x 軸との交点の座標を求めなさい」
という問題も自力では解けない可能性があります。
冬休みなどの時期を選んで、中2・中3の関数を復習すると良いと思います。
まさかそんなところまでと思うところまでさかのぼって数学を復習すると、モヤモヤしていたことがクリアになります。

上の問題に戻ります。
さて、x軸の負の範囲で2か所交わる放物線を描いてみましょう。
そのような放物線の条件は、何でしょうか?

まずは、2次方程式 x^2-2(a-3)x+4a=0 の実数解が2つあるということ。
実数解の個数は、判別式でわかるのでした。
判別式は、解の公式の√ 部分の中身ですから、これが正の数ならば、解の公式に戻って考えれば、解が2個あることになります。
すなわち、与えられた2次方程式の判別式をDとすると、D>0。
D/4=(a-3)2-4a>0
はい。
ここでD/4を使います。
よく使うものですので、必ず覚えてください。
面倒くさいからDだけ覚えて済まそうとすると、学校の問題集の解答解説はD/4で解いてあるので、意味がわからないということが起こります。
自分はDで計算して、計算ミスをしているのだけれど、どこを間違えたのかわからない、ということも起こります。
数学以前のひどく不毛なところで時間ばかりかかって、学校の宿題が終わらない・・・。
そんなことになりますから、D/4は覚えましょう。
計算が簡単になりますから。
Dで計算すると、数字が大きくなって、計算ミスをしやすいのです。

というわけで、D/4>0より、
a^2-6a+9-4a>0
a^2-10a+9>0
(a-1)(a-9)>0
a<1 , 9<a ・・・①

しかし、この条件だけでは、放物線はx軸の正の位置で交わるかもしれません。
どうしましょうか?
とりあえず、放物線の軸が、x 軸の負の位置にあることが必要でしょう。
放物線の軸の方程式は?
これも覚えていない人が多いのですが、共通テストやその模試でよく使うことになるものですので、覚えましょう。
y=ax^2+bx+c の軸の方程式は、
x=-b/2a
です。
最悪、忘れたら、y=ax^2+bx+c を平方完成して、頂点の座標を求めれば出てきます。
y軸に平行で、頂点のx座標を通る直線が、放物線の軸の方程式です。

上の問題にこの公式をあてはめると、軸の方程式は、
x=2(a-3) / 2=a-3
これが、x軸の負の範囲にあればいいのですから、
a-3<0
a<3 ・・・②

しかし、これだけで、放物線は確実にx軸の負の範囲で2か所交わるでしょうか?
放物線が、だらしなくゆるく広がって、x軸の正の範囲で交わるということはないでしょうか?
ありえますね。
もっと、放物線をタイトに設定しなければ。
どうすればいいか?
放物線が、y軸と正の範囲で交わればいいです。
これなら、軸より右側の交点も、x軸の負の範囲になります。
ここらへんは、自分で実際に放物線を描いて確かめてみてください。

したがって、f(0)>0 です。
f(0)=4a>0
よってa>0 ・・・③

①、②、③の共通範囲を求めます。

ここで、数直線を実際に描いて考えているにも関わらず、いつも共通ではないほうの範囲を共通範囲と勘違いする人もいます。
この種の問題で常に間違えてしまう人は、連立2次不等式の計算問題で練習しましょう。

①、②、③より、
0<a<1
これが最終解答です。


さて、今のが数Ⅰの解き方。
数Ⅱになると、「解と係数の関係」というものを学習しますので、それを利用できます。
解と係数の関係とは、
2次方程式 ax^2+bx+c=0 の2つの実数解を α , β とすると、
α+β=-b /a  , αβ=c/a
というもので、これも共通テストでよく使います。
勿論、数Ⅰの問題も、これを使って解いても構いません。

同じ問題でも、数Ⅱの知識を使って解くなら、放物線を描く必要はなくなります。
まずは、実数解が2個あることが条件として必要なので、これは数Ⅰと同じ解き方です。

すなわち、与えられた2次方程式の判別式をDとすると、D>0。
D/4=(a-3)2-4a>0
a^2-6a+9-4a>0
a^2-10a+9>0
(a-1)(a-9)>0
a<1 , 9<a ・・・①

与えられた2次方程式 x^2-2(a-3)x+4a=0 の2つの実数解を α , β とすると、
今回、α<0、β<0なのですから、
解と係数の関係より、
α+β=2(a-3)<0
よって、a-3<0
a<3 ・・・②
また、
αβ=4a>0
a>0 ・・・③

上の数Ⅰの解き方と同じになりました。
①、②、③より、
0<a<1
これが最終解答です。




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