たまりば

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2019年02月13日

算数・数学の文章題が読み解けない子。

算数・数学の文章題が読み解けない子。

国語が苦手なために、算数・数学の文章題を上手く解くことができない子の話は、以前にも書きました。
例えば、こういう文章題が読めないのでした。

問題 ある数を2乗するところを誤って2倍したため、計算の結果は19小さくなりました。ある数を求めなさい。

この問題の何が読み取れないのか?
「計算の結果」とは、2乗したもののことか2倍したもののことか、わからないと本人は言うのです。
誤って2倍したほうが計算の結果です。
誤って2倍したのだから、その誤った計算を実際にやっているのでしょう?
そう説明しても、
「そうかな?どこに書いてあるの?」
と首をひねり、自分はこの文からはそんなことは読み取れない、と言うのです。

それに関して、以前は、文章の読み方の癖として、目立つ動詞や名詞しか目に入っていないからなのではないか、という解釈をしました。
目につく単語を拾い読みするほうが速く読み取れるので、それが習慣になり、語句の関係が複雑な文は読解できなくなっているのではないか?
助詞・助動詞の働きが理解できず、語句の関係をつかめないので、正確な読解ができないのではないかと考えたのです。
その見方は必ずしも間違っていないと今も思っているのですが、最近、また新たな発見がありました。

別の、やはり国語が苦手な子が、以下の文章題を読み取れなかったのです

問題 色紙でつるを600羽折りました。赤い色紙のつるは全体の30%にあたります。赤いつるは何羽でしょう。

「割合」に関する文章題の中では、比較的易しい問題です。
600羽の30%なのだから、
600×0.3=180 で、答えは180羽ですね。

上の問題、
「600羽の30%なんだよ」
と私が解説すると、その子は、スラスラと式を立てることができるのです。
だから、割合の3用法は理解できています。
もとにする量×割合=比べられる量
そういう公式は理解しています。
しかし、文章から、その関係を読み解けないのです。

私が小学生に算数の「割合」を教えるようになった最初の頃から、文章中の何が「もとにする量」で何が「くらべられる量」なのか判断できない子は存在しました。
むしろ、小学生の過半数はそうではないかとも思います。
そうした場合に「もとにする量の、割合」という文章の構造を教えると理解できるようになる子は多いです。
文章中の割合を表す数値はどれであるかは、さすがに9割以上の子が識別できます。
むきだしの小数・分数、または%や何割何分何厘といった単位のついている数値が割合。
それでほぼ判断がつきますから。
上の文章題で言えば、「30%」が割合です。
その数字の前にひらがなの「の」があります。
助詞の「の」ですが、そんなことは説明しなくて大丈夫です。
その「の」の前に書いてあるものが「もとにする量」。
上の文章題で言えば、「全体」がもとにする量です。
全体の30%。
もとにする量の、割合。
文章題からそれを発見すること。
「割合」と「もとにする量」を発見できれば、そうでない数字が「くらべられる量」です。
「割合」が本当に苦手で、文章題で得点できる可能性がほとんどない子に対しては、この教え方は効果的です。

☐cmの1割5分は7cmです。

といった、1行の基本問題ならば、自力で立式できるようになります。
1割5分が「割合」。
「の」の前にあるのが☐だから、☐は「もとにする量」。
もとにする量を求めるのだから、式は、比べられる量÷割合。
だから、式は、7÷0.15 です。

しかし、上の問題は、そのやり方では解けない子がいます。
もう一度、上の問題を確認しましょう。

問題 色紙でつるを600羽折りました。赤い色紙のつるは全体の30%にあたります。赤いつるは何羽でしょう。

「全体の30%」という表現から、30%が「割合」。
その前に「の」があるから、そのさらに前の「全体」が「もとにする量」。
そこまでは読み取れるのです。
しかし、全体が何羽であるかを読み取れないので、式が立てられないのです。
全体が600羽であることを、この短い文章から読み取れないようです。
どういうことなのでしょう?


また別の問題。

問題 定員55人のバスに、140%の人が乗っています。このバスに乗っているのは何人でしょう?

この文章題は「もとにする量の、割合」という構造が崩れています。
140%が割合ということは識別できます。
しかし、その前に「の」がない。
だから、もとにする量が何であるかを読み取れない子がいます。
したがって、求めるものが「もとにする量」なのか「くらべられる量」なのかを識別できません。
ふーむ・・・。

「もとにする量の、割合」という構造になっていないのは事実だけれど、どう見ても「定員55人」が「もとにする量」なんだけれど、やっぱり、わかりませんか?
その子の返事は、「わからない」でした。
ふーむ・・・。


また別の問題。
問題 めぐみさんの学校では、今日は18人休みました。これは学校全体の4%にあたるそうです。今日出席しているのは何人でしょう。

この問題は少し複雑で、小学生にとっては応用問題です。
18人が4%にあたるのですから、「もとにする量」である学校全体の人数は、
18÷0.04=450 (人)
そのうち18人が休んでいるのだから、今日出席しているのは、
450-18=432 (人)
いきなり答えが出ず、2段階で計算していかなければならない問題は、難しいです。
そのように解くということを発想できない小学生が多いですから。
小学生の多くは、算数の問題は1本の式で答えが出るものと思い込んでいるのです。
だから、答えを出す式を立てようとウンウンうなったあげくに、ギブアップとなってしまいます。

応用問題ですから、解けなくても良いと思って出題してはいるのですが、それでも、4パーセントが「割合」で、「学校全体」が「もとにする量」で、18人が「くらべられる量」というところまでは分析してほしい。
そこまではできるはずだから、と思うのですが、なかなかうまくいきません。
「学校全体」が「もとにする量」までは何とか分析できるのですが、18人が何なのかわからないのです。

ふーむ・・・。


これらの問題を、なぜ子どもは読み解けないのか?
共通することは何なのでしょう。

問題1 ある数を2乗するところを誤って2倍したため、計算の結果は19小さくなりました。ある数を求めなさい。
問題2 色紙でつるを600羽折りました。赤い色紙のつるは全体の30%にあたります。赤いつるは何羽でしょう。
問題3 定員55人のバスに、140%の人が乗っています。このバスに乗っているのは何人でしょう?
問題4 めぐみさんの学校では、今日は18人休みました。これは学校全体の4%にあたるそうです。今日出席しているのは何人でしょう。

上のように別紙に問題を書き取って、じっと眺めているうちに、私はあることに気づきました。
これらの文章題は、全て、途中が読点、あるいは句点で、問題文が区切られています。
彼らは、読点、あるいは句点を越えた内容の関係性を把握できないのではないか?
読点の度、句点の度に、意味がリセットされて、その先はまた白紙のところから読むため、意味をつかめないのではないか?

問題1は「誤って2倍したため」という表現の後に読点があるので、本人の中でそこでリセットされてしまい、「計算の結果」が何の計算の結果なのかを読み取れないのではないでしょうか。
つまり、問題1をこのように書き変えれば、読み取れるのです。
「ある数を2乗するところを誤って2倍したため、誤って2倍した計算の結果は2乗したものよりも19小さくなりました。ある数を求めなさい」

同様に、
問題2 色紙でつるを600羽折りました。赤い色紙のつるは、折った600羽全体の30%にあたります。赤いつるは何羽でしょう。
問題3 定員55人のバスに、定員55人の140%の人が乗っています。このバスに乗っているのは何人でしょう?
問題4 めぐみさんの学校では、今日は18人休みました。今日休んだ18人は学校全体の4%にあたるそうです。今日出席しているのは何人でしょう。

このように問題を自分で書き直した際の私自身の感想は、
わかりやすいのかもしれないけれど、下手くそな文だな・・・。
くどいなあ。文章の呼吸というものが何もない・・・。

でも、ここまでくどくどと書かないと意味を取れない子が存在するのです。
すなわち、文章の呼吸を読み取れない子が存在します。


高校の国語教育改革が取沙汰されています。
高校の国語は、契約書や資料などを含む実用的な文章の読み取りに重点を置くものに変わり、文学作品の読解は選択科目になってしまうとのこと。
それに関して、例のAIによる大学受験や読解テストで有名になった学者が、現在、高校国語の全ての教科書で採択されている『山月記』などは教える意味がないといった発言をし、批判を浴びています。

現代の子どもの多くが、上のように読点や句点を越えた読み取りすらできない現状では、確かに、文学の鑑賞などよりも、基本的な文章が読み取れる学習のほうを強化すべきかもしれません。
教科書を読めない子どもたちがいることはどうにかしないといけません。

しかし、それで文学作品を教えることを否定するのはどうなのでしょう?
文学を理解することが、高い能力を持つ者だけの教養や贅沢になってしまうのは気持ち悪いという以上に、契約書や資料の読み取りに夢中になれる子どもなど果たして存在するのかという懸念があります。
文章を読むことがますます嫌いにならないでしょうか?
文字を読むことそのものが好きな私ですら、契約書を読み通すのは、ある種の苦行です。
つまらないです。
その中から面白さを探せ、それが勉強だなどと言われたら、さすがにちゃぶ台をひっくり返しますよ。
つまらないものは、どうしたってつまらないです。
必要だから読みますが、面白くはないです。
どこまでいっても、面白くなりようがないです。
無味乾燥な文章なのですから。
つまらないことを勉強するのは嫌です。
文学作品の読解は、文字を読むことが嫌いな子どもが、1つの作品との出会いで劇的に文章を読むことが好きになる、わずかな可能性を担っていると思うんです。


それにしても、なぜ、句読点を越えると意味がリセットされるような読み取りをする子どもが存在するのでしょう。
デジタル世代だから?
そんな乱暴な論を振り回している場合ではないので、その子に質問してみました。
「子どもの頃、読み聞かせとか、してもらった?」
その子の答えは、こうでした。
「してもらった!すごくしてもらった。だから絵本は好きなんだけど、他の本は好きじゃないんだよね」
「・・・・・・」

子どもを本好きにさせるのは容易なことではないと改めて思います。




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