たまりば

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2023年01月22日

英検2級という壁。

英検2級という壁。

文部科学省が、2018年度から2022年度で目指すとした計画を覚えていますか。
中学3年までで英検3級、高校3年までで英検準2級程度の英語力を、5割以上の生徒が達成する、というものでした。
まだ、2022年度の結果は出ていませんが、
21年度の割合は、中3が47.0%。高3が46.1%。
まあ、近いところまではいっているけれど、達成せず、という結果です。

そして、達成されないまま、文科省は、2027年度までに達成を目指す英語力水準について、
中3までで英検3級、高校3年までで英検準2級を、6割以上とするそうです。
5割も達成できなかったのに・・・。
何か、英語ができない子で、そういう子がいるなあと連想してしまいます。
英検3級に合格しなかったから、次は英検準2級を受ける、というような。
無理はしないほうがいいと思うなあ・・・。

とはいえ、中3で英検3級は順当な目標ですが、高3で英検準2級はそもそも目標が低めです。
それでも、達成できないのです。
この先改善されるだろうかと考えても、希望的観測はもてません。
これは、英語の教育改革が良い効果をもたらしていないのもさることながら、結局、英語力は個人の問題に帰するところが大きいので、そのせいだから仕方ないんじゃないかなあと思うのです。

英語が出来る子は、特に留学経験などなくても、高校生の間に英検準1級に合格します。
一方、英語が苦手な子は、昔も今も英語がわかりません。
新しい傾向もありますが、昔ながらのことが今も続いているのでもあります。

学校で6年も、あるいは小学校から考えれば8年も英語を勉強しているのに、なぜ英語が身につかないのか?

この疑問の立て方にそもそも問題があります。
学校の授業だけで英語が身につくわけがないからです。
語学というのは、そういうものではありません。
学校は学ぶべき指針は示してくれます。
学ぶべき教材も提供してくれます。
しかし、個人のたゆまぬ努力がどうしても必要なのです。

何年英語を学習しても中学英語のレベルにとどまり、高校英語レベルに進歩しない子は、多いです。
その最大の原因は、単語力です。
中学で学習した単語はそこそこ覚えているのですが、高校で新出の単語を覚えられないのです。
それは、学校のせいだとは思えないんです。

高校生の多くは、高校レベルの単語が多く含まれている初見の英文を読めません。
書いてあることの意味がわからないのですから、正答できません。
そういう子の英語学習は、学校で毎週行われている単語テストは一夜漬け、あるいはテスト直前だけの即席漬けのことが多いです。
覚えてもすぐ忘れるので、単語力の蓄積がなく、中学生の単語力のまま、高2になり、高3になります。
高1の頃は、教科書に出てくる知らない単語は新出単語の場合がほとんどです。
しかし、高1での新出単語を覚えないまま高2、高3と進級してしまうので、教科書の中で、新出単語ではないのに意味のわからない単語が増えていきます。
高3の教科書は、1行の中でわからない単語が3つも4つもあるということになります。
勿論、大学入試の長文問題も。
英検2級の問題文も。

この症状はもっと早くに出る子もいます。
高校の入試問題の英語長文を読み通す英語力がない中学生たちです。
「ものを覚える」ということが本当に苦手な様子で、単語の意味を覚えるのに苦労していますし、また、忘れるのも早いです。
単語力の蓄積がなく、都立高校入試の普通の長文も、読み通すことができないのです。
様子をよく見ていますと、記憶力だけの問題ではなく、文字の解析力にも課題があるようで、似ている単語の区別がつかないのです。
単語がどれも同じように見えて、そして、どれも意味がわからない・・・。

語源を意識すれば英単語は覚えやすい。

それは事実です。
あるレベルの子たちには有効な情報ですが、そもそも語源が覚えられない、語呂合わせですら覚えられないという、記憶力がきわめて悪い子たちが存在するという事実を忘れてはいけません。
幼い頃からものを覚えるのが苦手で、ものを覚えようとすると頭が重くなってつらいので、脳を鍛えるということもしてこなかった子たちです。
英語が苦手な子の多くは、そういう子たちです。
低学力をなめたらダメです。
英語だけが苦手なわけじゃないんです。

そこそこもの覚えはよくて、中学英語くらいはどうにかこなしてきた子たちも、上記のように高校生になれば、爆発的に増えていく新出単語に対応できなくなります。
これは、性格的なものも影響します。
もの覚えが悪いわけではないので、中学受験や高校受験は、それなりに成功します。
そうして始まった楽しい高校生活。
学校から単語集が配られ、毎週単語テストが行われても、どこまで本気になれるか?
真面目に努力できる子もいますが、やっつけ仕事になってしまう子も多いです。
あるいは、単語テストは真面目に備えるとして、その後、繰り返しその単語を復習できるか?
それが英語を身につけるのには絶対に必要なことだと大人から説明されても、それでもその通りにはできない。
日々のことに追われて、1度覚えた単語も気がつくと忘れている。
そんな子のほうが普通です。
単語が覚えられない。
語彙が増えない。
永遠に中学英語のままです。

英検準2級ならば、それでも高校生の間に何とか取れる可能性はあり、そういう意味では文科省の掲げる目標もまるっきり現実離れしているとは思いませんが、本来は、高校卒業程度という設定である英検2級となると、壁は厚いです。
どうして、英語が身につかないのか?

高校の「英語コミュニケーション」の授業の形態は、昔とは違います。
例えばこんな授業です。
教科書本文を読む前に、まず本文の内容を音声で聴きます。
聴き取った内容に対して、まずは易しい四択問題のプリントを解きます。
次に本文を読み、読み取った内容に関する少し難しいプリントを解きます。
その答えあわせや解説が終わると、本文の全訳プリントが渡されます。
その全訳プリントで、重要文を英語に直す反訳練習。
それで授業は終了。

本文を読んで訳して、読んで訳して。
そうした昔ながらの「リーダー」の授業と比べると、上のような英語の授業はすごく進化しているような気がします。
しかし、英語学習の意欲のない子にとっては、予習しなくて済む好都合な授業形態になっているだけかもしれません。
本人は授業に参加しているつもりでも、学習内容に全くアクセスできていないということも起こり得ます。
本人の英語のレベルとは関係のない、雲の上のことが行われているだけ。
それでも英語を勉強していることに形の上ではなっています。

勿論、復習もしません。
予習も復習もしない。
つまり、家庭で英語を学習しないのです。
何にもわからないから、勉強のしようもないですし。
テスト前に全訳プリントを眺めて、こんなお話だったと振り返って、テスト勉強は終了。
テストは、教科書本文以外からの出題も多いから、テスト勉強してもどうせそんなにいい点は取れないし。
と、色々と言い訳しやすいシステムにもなっています。

「論理・表現」の授業も、難しくて諦めてしまう子が多いです。
文科省認定の「過度の文法事項を排した」ふわふわした内容の教科書を実際に使用する高校は少ないです。
生徒にそういう教科書も渡してはありますが、実際に使うのは副読本のほうです。
英文法のテキスト、参考書、ワークブックを、多くの高校が生徒にしっかり渡しています。
しかし、英語が苦手な高校生は、そうした文法学習は何のために何をやっているのか、よく理解できないのです。
国語の文法も苦手で、文法なんか意味がないと、文法を敵視しているような子が一定数います。
国語の文法がわからなくても日本語を話せるように、英語の文法なんかわからなくても英語は話せるはずだ、と誤解しているのです。 
英文法なんて意味ない。
こういうのじゃない英語を勉強したい。
と、変なことを夢想します。
あるいは、そこまで強気ではなくても、何を勉強しているのかとにかくわからなくて困ってしまう子もいます。
英文法の問題を漠然と解いていても、それがどういう意図の問題で、何が問われているのか、よくわからないようです。
全部、熟語の問題だと思って解いていた子もかつていました。
文法がわからない子は、自分が何を学んでいるのか、わからないのです。

文法学習をしているということは自覚していても、文法用語を覚えられない子も多いです。
「時・条件を表す副詞節は未来のことを現在形で表す」
たったこれだけの内容を、何度反復しても理解できない子もいますし、理解した顔をしてもすぐに忘れてしまう子もいます。
副詞とは何か。
節とは何か。
常にそこに戻って説明しても、次のときには、全部忘れています。
心のどこかで文法の価値を認めていないからかもしれませんし、単純に覚えられないだけかもしれません。
英文法の宿題は解きますが、文法を理解せずに解いているので、あてずっぽうで解いているだけで、そんなのは勉強ではありません。
そして、学校で宿題の答えあわせと解説の授業を受けても、意味がわからないので、復習もできませんし、しません。

また、文法を、英文を読むとき、書くとき、話すときに使うのだということを理解していない子は多いです。
文法の勉強は受け入れても、それはそれとして、長文を読むときにはそんなのは全部忘れて我流で読んでしまうのです。
短い文なら何とかなっても、複雑な構造の英文は意味が取れません。
英文中の単語をいくつか拾って意味を想像するような読み方しかできないのです。
単語の意味がわからないことが、それに拍車をかけます。
それで英文を読めるわけがありません。


そんな英語学習をしているのに、いや、本質的には英語学習と呼べるものを全くしていないのに、英検を受けるのです。
いやいや・・・・。
そんな英語力じゃないでしょう?
そんな勉強をしていないでしょう?
単語力が全く足りないでしょう?
長文をまともに読めないでしょう?


否定的なことばかり書いてきましたが、要するに上と反対のことをやっていれば、英語力がつくのです。
まずは1日最低1時間は英語を勉強すると決めましょう。
これが大切。
やる気だけあっても、具体的にいつ英語を勉強するか決めていない人は、実行できません。

「英語コミュニケーション」は、
まずは、教科書の音声を聴きながら、それにあわせて音読してみましょう。
次に、本文を見ないで、音声にあわせて言ってみるシャドーイング。
こういう練習の効果を信じない子は多いですが、読めない英語は身につきません。
英文読解が、暗号解読みたいになってしまうのは、読めない単語の羅列を読んでいかなければならないからです。
そして、読めない英語は聞こえない。
これはリスニング対策でもあるのです。

さらに、教科書全訳を見て、それを英文に直す練習。
大体直せるようだったら、全訳を見て、ノートに英文を書いてみる練習。
スペルミスがあったら、単語練習。

学校の単語集は、テスト範囲にこだわらず、繰り返し繰り返し反復練習しましょう。
赤シートをかけて、常に自分にテストをしてください。
単語集の音源も積極的に活用します。
今はその単語集の出版社のサイトで音源を無料で利用できることもあります。

高校から配布された単語集を1冊丸ごと覚えれば、英検2級くらいはどうにでもなります。
しかし、学校の単語テストにあわせて、その範囲を覚えただけでは、1冊終わった頃には最初のほうの単語は忘れています。
幾度も自分で反復することが必要です。
大人なら、そんなの当たり前だとわかっているのですが、記憶というものについて、高校生は案外わかっていない子がいます。
「1回覚えたのに、何ですぐ忘れてしまうの?こんなの、覚えても無駄じゃん」
と、訳のわからないことを平気で言ったりします。

人間は忘れるものです。
脳は不要な記憶を消去することに一所懸命なんですから。
脳に「このことは大事だから覚えておけ」と指令を出さなければなりません。
それには反復・反復・反復。
幾度も反復すると、脳は「あれ?これ、消去する記憶じゃないの?」と気づいて、長期記憶に組み替えてくれます。


また、「論理・表現」の学習は、学校で使うメインテキストだけの勉強になりがちですが、厚い参考書が配られていたら、それも必ず読みましょう。
知りたかったことが全部書いてあって、目からウロコがぽろぽろ落ちます。
それで文法が面白くなったという英語秀才は多いです。
さらに、学校の文法のテキストやワークに答を直接書き込むような愚挙だけは絶対に避けてください。
解き直せなくなるからです。
ノートにしっかり解いて、学校の授業で正解を確認したら、それを正答集として、繰り返し解き直しましょう。

そして、上のようなことをやっても、毎日1時間の英語の学習時間が余るなあと感じたら。
そこからは、何をやるか、自分で決めていきましょう。
NHKのラジオ講座をやるもよし。
市販の英語教材を購入してやってみるもよし。
英検の過去問もいいですね。

塾に来てくれれば、教材はいくらでもあります。
英語の初歩の初歩から大学入試問題まで。
無尽蔵にあります。




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