たまりば

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2024年02月25日

質問しても、しなくても、大丈夫。

質問しても、しなくても、大丈夫。

勉強が上手いか下手かというのは、ほんのちょっとした差です。

相変わらず、私は、NHKラジオ講座「ラジオ英会話」を聴き続けています。

番組の中で、例えば、look という動詞についての解説があります。
look という動詞の意味は「見る」。
何を見るのか、見る対象を点としてとらえているから、look at。
だから、at という前置詞をつける。

また、見ながら後をついていくというイメージだから、look after は、「世話する」「面倒をみる」。
まさに、幼児がよちよち歩いていくのを後ろからずっと見ているようなイメージです。
熟語の語感や成り立ちを大切にすることで、簡単に暗記ができます。

うん。
わかりやすい。
面白い。

でも、こういう授業を個別指導でやると、失敗することもあります。
ラジオ講座は、一方向のもの。
言いっぱなしで済みます。
聴いた側が、「面白い。理解した」と思えばそれでいい。
それで聴き手がその熟語を1つでも覚えられたら、それで良いのです。

しかし、個別指導は、双方向性のものです。
質問が返ってくる可能性があります。

「じゃあ、同じ世話をするという熟語でも、take care of は、何で of なんですか?」
「look for という熟語はなんで for なんですか?」
「look to という熟語はありますか?」
「look on は?」
「look in は?」
怒涛のように質問してくる子が、個別指導の場合は、存在します。
何かが頭の中に浮かぶと、すぐに何でも質問してしまうのです。

生徒が知的好奇心旺盛なのは良いことです。
だから、個別指導において、生徒の質問にはできるだけ答えます。
しかし、あれこれ何でも質問した翌週、その子は、覚えてほしかった重要熟語 look after の意味を覚えているかというと。
残念ながら、その可能性は低いのです。
余計な質問を沢山する子は、大事なことを覚えていないことがあります。
余計な質問をし過ぎたために、印象が薄れてしまうのでしょうか。
沢山質問したのに、大切なことを覚えていない。
質問をいっぱいできて楽しかった記憶はある。
でも、質問の回答は何1つ覚えていない。
そんな、5歳児みたいな子も、います。
思いつきの質問をとにかく沢山することが「良い学習態度」だと、おそらく就学前か小学生の頃に間違って「学習」してしまったのかもしれません。


これは私の説明の癖ですが、順番に根拠を示し、理由から話し始めることがあります。
AだからBで、BだからCで、CだからDになるんですよ。
そのように解説するとき。
私が結論を話し終わるのを待っていたかのようなタイミングで、
「なぜですか?」
と尋ねてくる子がかつていました。
皆で一斉にそう発声することがお約束であるような、独特の抑揚でした。

「・・・今、説明しましたよね?」
「え・・・」
積極的に質問したから当然褒められるはずなのに、変な顔をされた・・・。
その子は、明らかに、驚いていました。
「では、もう一度説明しますね」
「・・・」
入塾して半年ほどの間は、そうしたことが繰り返され、その子の成績は上がりませんでした。

そういう観点で振り返ると、小学生が国語の授業で読む説明文には、「なぜかというと」という語句が使われているものが結構あります。
いかにも幼稚な文章ですが、それを書かないと、以降は理由の説明部分であるということが、わからない子が多いからでしょう。
小学生は、まだ読解力が低いですから。
「なぜかというと」が合図で、その後に理由が説明されている・・・。
しかし、そのように学習すると、中学に進学して以降、そのような構造ではない、大人の読む評論をほとんど読解できない子が現れます。
大人の評論は、理由を説明していても、「から」や「ため」という語すら使っていないこともあります。
それでも、理由は説明しています。
文脈を読めば、どこが理由の説明かは、わかるのですが、そういう読解を要求されても、できない子たちがいます。
小学生の読解テクニックで大人の文章を読もうとしても無理があるのですが、小学生の頃に成功した受験テクニックを捨てられないのかもしれません。

いずれにせよ、文章でも、口頭でも、結論が先に述べられて、その後に理由を説明されることに、慣れている。
理由から話し始めても、何の話をされているのか把握できない子たちがいます。
理由を言うときには、「なぜかというと」というふうに、「今から理由を説明しますよー」と合図を送らないと、理解できない・・・。

私も話し方に気をつけるようになり、一方、その子も、説明し終わった後で「なぜですか?」と訊いてくるような頓珍漢なところは減っていきました。
それは、
「なぜですか?」
と抑揚をつけて質問することに一所懸命になる必要がなくなったことも一因のような気がします。
何か質問しなければならない、という妙な思い込みがなくなり、黙って聞いていていいんだ、聴くことだけに集中していいんだと理解した頃から、説明を一度で理解できるようになっていったように思います。
以後、その子から質問を受けることはほとんどありませんでしたが、対話は可能でした。
私からの問いかけには答えられたので、理解していることが把握できました。
成績は徐々に上がっていきました。


しかし、わからないことは、質問するのが最善です。
それができない子もいました。
わからないのに、わかったふりをします。
わからないままなので、宿題を解こうとしても、わからない。
だから、宿題は、親に訊いて解いている様子でした。
宿題は、ほとんど正解。
「宿題について、質問はありますか」
と尋ねても、
「ありません」
という返事。

これは、保護者の方が、宿題の面倒を見ることをもう止めたいと思わないでいてくださったので、何とか上手くいきました。
無論、本当はわかっていないことを、教える側も知っていることが前提です。
本当は、わかっていない。
でも、それを言えないらしい。
では、もっと丁寧にやっていこう。
前回の授業の復習から、ゆっくりやっていこう。
質問できない子は、質問しなさいと叱っても、質問はできないままのことが多いです。
「質問できない子」は「質問する必要のない子」に変わっていけるように、教える側が注意を払っていくことが必要になります。


質問は一切しないけれど、頭の中は疑問でいっぱい、という子もいます。
最近は、そういう子のほうが多いかもしれません。
私が、上のように look after の説明をしたとします。
しかし、本人は、そこで、look for のことを連想し、それについて考えています。
なぜ、for なのだろう?
それをずっと考えているのですが、質問はしません。
個別指導を受けている途中でも、独りで考えています。
当然、その後の授業は聞いていません。
あるいは、その後の授業に集中できません。
ならば、質問すればいいのに、それもしません。

「何か質問がありますか?」
とこちらから尋ねれば解決するのか?
多くの場合、そうではありません。
そういうときも、首を横に振り、質問はしないのです。
でも、本人は、look for のことが気になって、その後の学習に集中できないのです。

「look for のことを考えていますか?」
と、ここまで具体的にこちらが気がついて質問すれば、表情が輝きます。
以後は、質問をしてくれるようになるかもしれません。
講師は、人の心が読めるわけではないので、なかなかそこまで気づかないですが・・・。

まだ十代なので、人間関係への過剰の期待もあるのでしょう。
心で思っているだけでは、相手には伝わらない。
言葉にしないと、無理なんですよ。
そんなことも、十代のうちは、それでも、言葉にしなくても伝わる関係に憧れる、ということもあるのかもしれません。

ともあれ、その翌週。
look after の意味を、その子は、覚えていない・・・。
その後の授業に集中できないほど考えていたのだから、覚えていてもいいはずなのに、覚えていない・・・。
不器用というのは、そういうことなのかもしれません。



質問に良い質問も悪い質問もない。
回答に良い回答とくだらない回答があるだけだ。

これは、私の座右の銘です。

勿論、質問することは、良いこと。
ただ、
「沢山質問しなさい」
と教えられているのみで、質問して得た回答をどう活用するかを教わっていないと、質問も回答も無駄に終わってしまうことがあります。
むしろ、質問することを探すのに必死で相手の話をよく聞いていないという本末転倒なことすら起こります。
「積極的に質問する」とは、何をどうすることなのか。
それを理解していなければ、助言を誤解し、間違ったことをやり続けてしまいます。
学習するということの本質を体得していない限りは、そうなります。
思いつきの質問をいくらしても、それで学力が伸びることはないのです。

思いつきではなく、本心からの根本の問いとして、例えば、
「なぜ、三単現のときは、動詞にsをつけるんですか」
という問いかけを、もしも生徒がしてきたなら。
その問いこそが、その子にとって英語がよくわからない根本だったなら。
私がそれに応えることができたら、何かが変わる。
それをきっかけに、爆発的に英語力が伸びる可能性があります。








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    Posted by セギ at 14:59│Comments(0)講師日記英語
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