たまりば

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2020年05月15日

確証バイアスと計算ミス。

確証バイアスと計算ミス。


ソーシャルディスタンスは2m。
スーパーでもドラッグストアでも、レジの行列は一定の間隔で並ぶための線が床に貼られています。
しかし、そのことに気づかず、すぐ後ろに並ぶ人がたまにいて、困惑することがあります。
そんなとき、ちょっと後ろを振り返り、そのまま、さらに床に目を落とすと、床に貼られたテープに気づき、下がってくれる人もいます。
知らない人との会話そのものにリスクがあるので、声を出す気にはなれません。
こうした視線の動きで気づいてほしい。
そう思うのですが、なかには全く気づいてくれない人もいます。

先日、駅前の書店で買い物したときも、行列でやはりテープを無視して私のすぐ後ろに立った人がいました。
その後、それぞれ別のレジで支払いを済ませたので、書店を出るのもほぼ同時になりました。
ビルの3階にあるその書店から降りるエスカレーターで、その人は、わざわざ歩いてきて私のすぐ後ろに立ちました。
私がちょっと歩いて距離を保とうとしても、またその人も数歩歩いて距離を詰めてくるのです。
私の前には、別の人が立っていました。
これ以上私が進んだら、今度は私が前の人に近づき過ぎてしまう・・・。
普段なら特に何ということもない行動ですが、こういう時期にそれをやられると・・・。

こうした人は、自分が間違った行動をとっていることに気づいていない可能性が高いのです。
まさか、わざとやっているわけではないでしょうから。
本人にもリスクのある行動です。
私がもしも感染者だったら、どうするつもりなんだろう?

むしろ、その人は、自分は正しいことをしていると思っていたかもしれません。
行列は詰めて並ぶものだし、エスカレーターは後ろの人に迷惑をかけないようにどんどん歩くものだ。
そう信じ込み、今の時期はそれが必ずしも正しいわけではないと気づいていなかったのだと思います。


他人の振り見て我が振り直せ。
「自分は間違っていない」と思い込んでいることはないか?
自分のほうが間違っていることを示す情報が目の前にあるのに、気づいていないということはないだろうか?
そんなふうに考えてみました。

「確証バイアス」という言葉があります。
自分が正しいことを証明する情報は目に入ってきやすいが、それを反証する情報は目に入りにくい。
意識してのことではなく、本当に目に入らず、無視するそうなのです。

だから、自分が間違っていても、間違っていると気づくのは難しい。
確証バイアスは、学習面でも大きな課題です。


数学の授業中、計算ミスをしているので、
「そこ、間違っているんじゃない?」
と柔らかく問いかけても、
「間違ってません!」
と即答する子が、かつていました。
その子に、間違っていることを納得させるのには、他の子よりも時間がかかりました。
計算ミスの箇所を指さしても、なかなかピンとこない様子でした。
正しい答えを私が言ってもまだ「え?」と疑い深い顔をし、そこでようやく考え始め、1分ほども考えて、ようやく気づくのでした。

滅多にミスをしない子なら、そのように自信家なのもわからなくはないのです。
しかし、その子は、むしろ普通よりもミスの多い子でした。
計算ミスの他にも、毎週のように何かしら忘れ物をしてくるので、授業がスケジュール通りにいかないこともありました。
計算ミスが多いこと。
忘れ物が多いこと。
そうしたことを自覚していてもおかしくないのですが、本人は全く認めず、それを指摘するときょとんとした顔をしました。
ありもしないことを指摘された、といった表情です。
単にすっとぼけているだけなのか?
うすうす気づいているのだが、認めたくなくて、知らない顔をしているのか?

これがどうも、本当に気づいていないようなのでした。
計算ミスが多いことも。
忘れ物が多いことも。
そして、自覚がないので対策も立てませんから、ミスが減ることもないのでした。

これも確証バイアスの一種だったのかもしれません。
自分がミスした事実は意識しないのです。
ミスをしたことをすぐに忘れます。
一方、他人のミスはよく目につき、記憶するようでした。
他人はミスが多いなあと感じる。
自分が10回ミスをしてもすぐに忘れるが、他人が1回ミスをしたことは、非常に印象深く記憶する。
他人はよくミスをする、と感じる。
他人と比べれば自分はそんなにミスをするほうではない。
ミスをしやすい人ほど、案外本当にそう思ってしまうようなのです。

しかし、それは事実とは異なります。
学校で、家庭で、それを指摘されることはあったでしょう。
あなたは、よくミスをするよ。
あなたは、ミスが多いよ。
自分の思う真実と、複数の他人が指摘する事実とが明らかに異なるのです。
信念が脅かされます。
「間違ってません!」
という叩き返すような断定は、そういうところから発していたのかもしれません。

計算ミスを防ぐには、計算ミスをしやすい事実を認め、どこで計算ミスをしやすいかを自覚し、対策しなければなりません。
符号ミスをする。
0と6をいい加減に書いて見間違う。
かけ算やわり算の筆算をまっすぐに書いていくことができず、桁がズレる。
7の段など、特定の九九を間違える。
数字や文字を書き間違う。
無理な暗算をする。
そうした、自分がミスをする傾向と原因を把握し、意識し、そこに差し掛かったらスピードを落として慎重に事を運び、また、そこを重点的に見直すことが必要となります。
1度はミスをしても、2度と同じミスをしないよう努力する。
自分が何をミスしたかを記憶していることが、それを助けます。
そうやって慎重にやっていても、睡眠不足だったり、疲れがたまっていたり、他に気になることがあって精神的に安定していなかったりすると、ミスは出ます。

人はミスをするものです。
それすらも認められない間は、ミスは減りません。

「間違ってません!」
と即答する子は、もう高校生になっていました。

ある日、その子の定期テストの答案を見た後、改めて、私は問いかけました。
「あなたは普通よりも計算ミスが多いし忘れ物が多いと私は思う。あなたはどう思う?」
その子は、顔を歪めて否定しようとしましたが、その後、黙ってしまいました。
「計算ミスが多いことを自覚しないと、その対策もできないですよ」
「そんなことを認めたら・・・・」
「うん?認めたらどうなるの・・・・?」
「・・・・」
返事はありませんでした。

でも、私の指摘は、そのときその子に届いたのだと思います。
認めることはできないけれど、その事実が自分の外側に存在することは自覚したのだと思います。
それ以降、計算ミスを指摘すると、静かに見直すようになりました。
計算ミスは、そう簡単には減りませんでした。
しかし、忘れ物は目に見えて減りました。






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