たまりば

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2014年09月29日

日影林道から南高尾を歩きました。2014年9月。



御嶽山の噴火は、想像を越えた災害になっていて、今日は朝からテレビを見ています。
相変わらず、各局がヘリで上空を旋回しているけれど、救助活動の邪魔だろうなあ。
ヘリでの上空からの映像なんて、なくていいのになあ。

火山は噴火するものだけれど、それが「紅葉の季節の」「快晴の」「休日の」「昼頃」にぶつかる可能性は低い。
でも、低い確率のことが起きてしまうときがある。
大きな災害は、ありえないことが組み合わさったときに起こる。
この夏の土砂災害のときも、専門家がそのようなことを話していましたね。
本当に、なぜ、よりによって、という気持ちになります。

私が御嶽山を歩いたのは、まだ山を初めて数年くらいの頃で、夜行日帰りの登山ツアーに参加しました。
まだ私自身が本当に初心者だったのと、今ほど登山道も整備されていなかったので、そんなに楽な山ではなかった記憶があります。
現地の登山ガイドさんがリーダーで、山頂付近はガスのため道迷いが生じやすいことなど厳重に注意されました。
実際、山頂付近は雲の中で視界が悪く、小雨も降ってきて、最高点まで行くかどうか、リーダーと添乗員が打ち合わせをしている深刻な場面もありました。
「絶対に前の人と間を開けないで」と注意され、緊張して歩きました。

休憩中、個人で来ていた他の登山客が、私たちのリーダーに、この先、この天気で大丈夫かどうか質問してきました。
「さあ、どうですかね」
リーダーは、言葉を濁して、語りませんでした。
続けて、方向を訊く人もいたのですが、それにも一切答えなかったのが印象的でした。

なんか冷たいなあ。
ケチだなあ。
自分の仕事ではないからかなあ。
自分がガイドするのは、自分のパーティだけだということかなあ。

最初はそう感じたのですが、でも、よく考えると、山で安易に自分の判断を他人に語らないのは、自分のためにも相手のためにも必要なことなのかもしれません。
自分で判断しなければならない。
それができないのなら、山に来てはいけない。

しかし、それは、今回のような大きな危険のときはまた別です。
とっさに、
「逃げろ」
「避難小屋に行こう」
「タオルで口をふさげ」
「ザックで頭を守れ」
と周囲に叫ぶ人の声。
噴火の現場にいた登山者の動画の中に、そういう声が記録されているのを見ると、こうした場面で適切な判断をしている人の多さを感じました。
危険を認知しガイドする技術のある人が、できるだけ多くの人を率いていく様子も報道されていました。
頼もしい。


さて、ブログ更新が遅くなりましたが、先週の日曜日は、高尾山を歩きました。
JR高尾駅北口から小仏行きのバスに乗り、「日影」で下車。9:05。

バスの進行方向のまま車道を少し歩いていくと、登山口が見えてきます。
日影林道は、広い沢沿いの砂利道です。
高尾の中でも、特に花の多いところの1つです。
ミズヒキ、ミゾソバ、ツリフネソウ、キツリフネ、ジャコウソウ、ヤマホトトギス、・・・・・。
少し登ると、咲いている花の種類がまた違ってきますので、スマホをしまう暇もなく、立ち止まっては写真を撮り、ちっとも先に進めません。
この季節、ここを歩くのは、花好きの中高年が多く、花の写真を撮っていると、皆、立ち止まります。
花の名前を教えたり、教えられたり。
感想を語り合ったり。
楽しいひとときです。

やっと頂上付近の舗装道路に入りました。
小仏城山到着。10:40。
そこからすぐにも大垂峠への分岐がありますが、今回は高尾方向にかなり戻ってみました。
小仏城山から一丁平へは、木道が整備されています。
途中から道が細くなり、両側からススキが覆いかぶさっていました。
ススキをかき分けて進みました。
秋だなあ。

一丁平を越えた先から、分岐を大垂峠へ。
この道は、崖っぷちの細い道ですが、城山からすぐの道のような急な下りはありません。
登山道に覆いかぶさるように花が一杯でした。
上の画像がそこで撮った1枚。
イヌショウマでしょうか。
シモバシラの花もたくさん咲いていました。
初冬になると、ここはシモバシラの氷花も見られます。

いったん林道へ。
危険を示す黄色いテープに囲まれているところがときどき出てくるのは、スズメバチの巣でもあるのでしょうか。
静かに足早に通り過ぎ、また登山道と合流。
やがて、大垂峠の歩道橋が見えてきました。11:40。

歩道橋で甲州街道を越えると、南高尾山稜の道です。
坂道を登りきって、大洞山。12:05。
ちょうど昼食どきなので、ベンチは満員。

しばらく歩きやすい道が続きますが、その先、1か所、急な下りがあります。
土嚢を入れて整備されていますが、それでも滑りやすいので慎重に下りました。
あとは、全部まき道を行けば、それほどのアップダウンもありません。

見晴台。12:45。ここで昼食。
津久井湖が見下ろせ、丹沢の眺めの良いところです。
南高尾を歩くときは、お昼はいつもここにします。
冬や春に歩くときは、陽だまりが気持ちいい。
しかし、さすがにまだ夏の名残があり、日向にいたら暑くて我慢できなくなってきて、木陰のベンチに移動しました。

15分ほど休んで、出発。
そこからも、まき道、まき道と選んで、三沢峠。13:45。
道が広くなり、観光地とクロスして、登山姿ではない人と多くすれ違うところです。
草戸山。14:10。

少し休んで、またここから道が険しくなります。
今回は、新しいトレイル・ランニングシューズの試し履きも兼ねての山歩きだったのですが、午後になるにつれ、足が痛くなってきました。
わあ、この靴は、失敗だー。
夕方の店内で、かなり履いてみたのですが、それでも、一日履いてみないとわからないことがあります。

足の痛みに耐えて、ペースが落ちながら、アップダウンをいくつも越えて、高尾山口。15:30。
はあ、無事に下山しました。
(^-^;


  


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    2014年09月18日

    尾瀬沼・尾瀬ヶ原を歩いてきました。2014年9月。




    連休は尾瀬を歩いてきました。
    9月14日(日)7:20、新宿駅新南口高速バスターミナル出発の尾瀬号に乗車。
    新宿駅新南口とは言いますが、新宿駅からは遠く、代々木駅が最寄り駅です。
    代々木駅のホームには、「高速バスターミナル」を案内する表示があり、表示の通りに東口を出て左に曲がると、もうすぐ目の前に待合室の建物がありました。
    徒歩1分でした。
    バスは定刻に発車。
    空も晴れているし、順調すぎて怖いくらい、と思っていたら、関越自動車道は大渋滞。
    大清水に11:30到着予定のバスなのに、到着は2時間15分遅れの13:45。

    バスを降りると、半透明の白いフワフワしたものが空中を浮いていました。
    ああ、これは何だっけ。
    何か虫のようなものだ。
    秋から冬に見られるものじゃなかったかなあ。
    尾瀬はもう秋なんだなあ。
    渋滞に焦る気持ちが一気に鎮まりました。
    支度をして出発。13:50。

    まずはバスが入ってきたそのままの方向に、広い砂利道を歩きだしました。
    ここから先は一般車の通行は禁止です。
    低公害車が試験運転で何台も往復していました。
    夏から秋の休日は、登山者も乗車できるみたいです。
    ネットで事前に申し込むとか、山小屋の受付で申し込むとか、何か手続きが必要だったと思います。

    一ノ瀬休憩所。14:30。
    まだ昼食を食べていませんでした。
    休憩所のベンチは、下山してきた人たちで満杯。
    一番奥の岩に座って、おにぎりを1つ食べました。
    さて、出発。14:40。
    ここから、三平橋を渡ると、山道です。

    同じ道を、2年前も歩きました。
    下をクリックすると、そのときのブログがすぐ開けます。
    http://seghi.tamaliver.jp/e319913.html
    今回、出発する前に読み返したのですが、自分が記憶していた以上に東日本大震災が影を落としている内容でした。
    あのときは、木段が壊れているのを見ても、震災の影響かなとつい想像してしまいました。
    通行危険な木段は、2年後の今年は、きれいに直されていました。
    でも、他の木道の腐敗が始まっていました。
    尾瀬の木段・木道は、全長65km。
    なかなか手が回りきらないのでしょう。
    尾瀬の自然に配慮し、防腐剤等は使っていないそうです。
    10年しかもたず、次々付け替えていかなればなりません。
    注意して歩けば、大丈夫です。

    あのときは初めての道で、不安もあったので長く感じましたが、今回は日没前にテントを張りたかったのでどんどん登っていったら、何かあっという間に岩清水に到着しました。15:00。
    おいしい水を一杯汲んで飲んで、またたったか登ったら、すぐ三平峠。15:15。
    ここから下りです。
    気楽にたったか歩いて、尾瀬沼の湖畔に建つ、尾瀬沼山荘。15:30。
    ここまでくれば大丈夫。

    尾瀬沼ヒュッテ。15:45。
    ここで手続きです。
    テン場使用料は、800円。完全予約制です。
    ネットから簡単に予約できます。
    缶ビール500mL、650円も購入。
    小屋の玄関は広く、ビールその他の自動販売機もあって、便利でした。
    確か、テント宿泊者も有料で入浴できるはずです。
    尾瀬のお風呂は、石鹸・シャンプーの使用自粛が前提ですので、汗を流すだけですが。

    尾瀬の山小屋は比較的便利で、予約制なので過剰な混雑もありません。
    きれいな山を歩いてみたい。
    山小屋に泊まってみたい。
    そういう人にはハードルが低い、泊まりやすいところだと思います。
    私も、山小屋デビューは尾瀬でした。

    テン場は、1つ1つ独立し、1つのデッキに1つのテントを張るシステムです。
    整地の心配がいらず、地面から冷えがしんしんと上がってくるということも少ない、快適なテン場です。
    2年前は、尾瀬沼ヒュッテで番号札をもらって、その番号のデッキにテントを張らなければなりませんでした。
    自分がもらった番号のテン場に行ったら、既にテントが張られていて、小屋に戻って確認したりしまた。
    今回は、番号は関係なく、早く着いた人から好きなデッキにテントを張れるシステムになっていました。
    そのほうがいいですね。
    当然、トイレや水場に近いほうから埋まっていきます。
    11番のデッキが空いているのを発見。
    テントを張りました。

    少し離れたところに立派な水洗トイレがあり、その前が水場になっています。
    水を汲んできて、コンロに火をつけて、お湯がわくのを待ちます。
    テント泊まりの中でも、好きな時間の1つです。
    食事は安定のマルタイ棒ラーメンと、コンビニおにぎり。
    粗末な食事ですが、汗をかいて登ってきたので、ビールがおいしい。
    ビールを飲み終えたら、担いできた缶ハイボール。
    ささやかな宴会です。

    樹間から見える遠くの空が赤い。
    のんびりと尾瀬沼のほうに下りていき、他の人たちと木道に並んで、夕陽を眺めました。

    食事を終えた頃に日も暮れて、暗くなるともう何もすることがありません。
    テントに入り、横になって、小型ラジオを着けました。
    関越自動車道上りは、事故により通行止めとの交通情報。
    どんなに渋滞でも、動いてくれていただけ有難かった。
    今回は、NHKだけでなく、民放局も電波が届きました。
    デッキの位置のちょっとした差なのでしょうか。
    イヤホンで小さい音でラジオを聴きながら、うとうとするのもテント泊での好きな時間です。

    夜8時頃、トイレに起きだしていくと、さっきまで小屋の外で星空観察会をしていた様子で、木道は、人通りが多く賑やかでした。
    頭上は満天の星。
    上空を横切る白く煙る天の川まで見えます。
    降るような星空でした。

    尾瀬は、若い子もたくさん来ています。
    山を始めたばかりの様子の子もたくさんいます。
    きれいだねえ、凄いねえと言い合う声が聞こえてきます。
    この世の本当にきれいなものが、消えずにここにあることの幸せ。
    身体が冷えてくるまで、飽きず空を眺めました。

    9月15日(月)、5:00起床。
    テントを撤収して、朝の散歩。
    尾瀬沼には朝霧がたちこめていました。
    木道の脇には、エゾリンドウ、ウメバチソウ。
    戻ってきて、売店前のベンチで朝食をとりました。
    カフェオレとカロリーメイトの朝食です。
    アルファ米のドライカレーに水を入れて、ザックの一番上にしまって、さて出発です。6:30。

    今回は、山には登りません。
    尾瀬ヶ原を歩いたことがまだなかったので、のんびり歩いて鳩待峠まで行く計画を立てました。
    計画を立てたときは、夏の朝日岳を歩いた直後で、夏期講習の疲れもたまっていて、あー、とにかく尾瀬でのんびりしたいと思ったので、こんな楽な計画になりました。
    今となっては、夏期講習の疲れって何だっけ?というようなものです。
    何で山に登らないんだっけ私は?
    しかし、帰りのバス時刻との兼ね合いでいくと、燧ヶ岳に登るのは、ちょっと難しい。
    昨年の台風で見晴新道が流失し、歩けないため、ロスタイムが大きいのも一因。
    崩落ではなく、流失。
    登山道が流失。
    最初に聞いたときは、え、と思いましたが、状況がよくわかる描写ですね。
    この10月には、見晴新道は修復が終わるそうです。

    ときどき立ち止まって、木道脇の花の写真を撮りながら、のんびり歩いて、沼尻休憩所。7:20。
    連休3日目ということもあり、尾瀬は比較的空いていました。
    ほどよく人がいて、自分のペースで歩いていけます。
    白砂峠。7:40。
    この辺りは、沢沿いの普通の山道の印象です。

    どんどん下って、見晴。8:50。
    さあ、ここから尾瀬ヶ原。
    至仏山が見えてきました。振り返れば、燧ヶ岳。
    前を眺め、後ろを眺めの繰り返しで、なかなか先に進みません。
    木道にも休憩できるベンチかそこかしこに用意されています。
    至仏山からも燧ヶ岳からも同じくらい遠い、尾瀬ヶ原のど真ん中で休憩。
    2年前と比べると10日ほど早いので、尾瀬の草紅葉はまだ始まったばかりでした。
    それでも秋の風情はあります。
    静かです。
    中高年のグループが、遠くからゆっくりやってきて、ゆっくり通り過ぎていく。
    お湯を沸かし、コーヒーを飲みながら、そんな様子も眺めていました。

    山ノ鼻。10:55。
    ここは、至仏山の登山口にもなっています。
    高天ヶ原に通じる、上り専用の登山道です。
    蛇紋岩という滑りやすい岩が多いため、下りに使うと危ないし、その岩を避けようとして登山道からはみ出して歩いてしまう人が多く、植相保護のため上り専用にしたと聞いたことがあります。
    この道も、1度歩いてみたいなあ。
    尾瀬は、まだ歩いたことのないコースがたくさんあります。

    今回は時間もないので、まっすぐ鳩待峠へ。
    この道は、熊の目撃情報が多く、熊鈴の使用が呼びかけられています。
    木道の脇に鐘が設置されている箇所もありました。
    カーンと鳴らして、人間がいることを熊に知らせましょう、というもの。

    この夏、東北の朝日連峰を歩いたとき、避難小屋の管理人さんと呑んだのですが、そこでも熊の話題になりました。
    朝日連峰に熊がいるのは、当たり前。
    でも、熊鈴なんかしても意味がないと管理人さんは言っていました。
    熊鈴の音が聞こえる前から、熊は、人間が来ていることに気づいている。
    気づいているが、興味がない。
    人間が登山道を歩いている分には、熊は、襲ってこない。
    ただ、山小屋の前の水場は沢からひいていて、水が詰まらないように、定期的に掃除に行かないといけない。
    そのとき、熊に出くわすのは、本当に怖い。
    そんなときの熊は、人間に襲い掛かってくる。

    朝日連峰は森林限界を越えた草原の山で、見通しが良く、それが人間にとっても熊にとっても平和をもたらしているのでしょう。
    人間の食べ物の味を知らない、性質の良い熊の話という印象でした。

    尾瀬の山の鼻は、樹木が多く、沢音も大きいので、熊が、人間の気配に気づけない場合が多いのかもしれません。
    熊がしっかりしたテリトリーを持っていて周辺の地形を把握していれば、人間との不幸な出会いは少ないと思うのですが、熊って、かなり広い範囲を動きまわり、確定的なテリトリーを持っていないらしいですね。
    土地勘のない熊が、ひょこっと人間に出会って、逆上する。
    草食が中心の臆病な動物なのに、何であんな爪と牙があるのかなあ。
    出くわしてしまうのは、お互いにとって不幸です。
    設置されている鐘の他、持参の熊鈴もカンカン鳴らしながら歩いていきました。
    熊は夜行性で、出くわす可能性が高いのは朝と夕方と聞きますが、念には念を入れて。

    鳩待峠までは木段の上りが中心で、かなり汗をかきました。
    木段の途中にたくさんベンチが設置されていて、好きなところで休めます。
    最後の最後でたくさん汗をかき、鳩待峠。12:10。
    ここから尾瀬戸倉まで、バスもありますが、休日は、乗り合いタクシーも運行中。
    バスと同じ料金で、尾瀬戸倉まで行ってくれます。
    席が一杯になると、出発。

    尾瀬戸倉。12:45。
    ここで日帰り入浴。
    もちろんビール。
    飲み終わってもまだ時間はたっぷりあり、尾瀬についての展示物などを見学。
    熊の毛皮に触ったり、尾瀬に関するビデオを見たり。
    15:30。予約していた新宿行きの高速バスに乗りこみました。
      


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    2014年09月11日

    ニュートン算と連立方程式



    連立方程式の利用、すなわち文章題は、文字を2つ使えるので、1次方程式や2次方程式よりも解きやすいと感じる子のほうが多いです。
    室際、1次方程式でかなり苦戦した子も、「個数に関する問題」、「速さに関する問題」、「売買の問題」、「食塩水の問題」などの典型題に関しては、連立方程式の文章題は、ある程度解けるようになることが多いです。
    ただし、レベルが上がると、やはり難しいのが文章題。
    特に難しいのが、増減に関する問題かもしれません。
    たとえば、こんな問題です。

    問題 ある牧場では、80頭の牛を放すと21週間で草を食べつくし、93頭の牛を放すと18週間で食べつくす。
    1週間で生える草の量は一定とし、またどの牛も1週間で食べる草の量は同じであるとする。
    この牧場で、100頭の牛を10週間放したのち、さらに何頭の牛を加えて放牧したら、2週間で草を食べつくすか。

    受験算数を知っていらっしゃる方は、よくご存じ。
    これはニュートン算と呼ばれるものです。

    なぜ、ニュートン算と呼ぶのか。
    このタイプの問題を、ニュートンが、「プリンピキア」という著作の中で発表したからです。
    昔は、哲学も数学も物理学も、ごった煮的に、一人の人が研究していました。
    今のように、科学が細分化・専門家されていなかった時代は、一人の天才が多くの分野で発言していたんですね。

    ニュートンは、「こういう問題は、算数では解けないだろう。数学の方程式だから解けるのだ」ということを示す例としてこの問題を作ったらしいです。
    しかし、その問題を算数で解いてしまうのが受験算数です。
    線分図を描き、比を利用して解きます。
    もっとも、ニュートン算は、受験算数の特殊算の中でも、なかなか理解できないものの1つで、これを解ける子は受験生の中でも限られてくるのですが。


    私自身も、中学受験をしたのですが、このニュートン算の印象は鮮烈でした。
    牛がバクバク草を食べる。
    しかし、それにも負けずに、ワッサワサと生え続ける牧草がある。
    どう考えても、草の生え方が尋常じゃない。
    こんなの嘘じゃないの、と思っていました。

    大人になって、私は山歩きをするようになりました。
    あるとき、山小屋で相部屋になった方から、面白い話をうかがいました。
    その方は、アルプスのトレッキング・ツアーに参加したのです。
    憧れのマッターホルンを眺めながらの、楽しいヨーロッパ・アルプスのトレッキング。
    その旅の思い出に、足元に生えていたクローバーをこっそり摘んで、土ごと、カメラのフィルム・ケースにしのばせたそうです。
    空港の荷物検査でも、その程度のことなら引っかかるはずもなく、その人は、アルプスのクローバーを日本に持ち帰り、自分の庭に植えました。
    芝生の隅にそっと。

    ひと月もたたないうちに、クローバーは、庭の芝生を駆逐し、庭を埋め尽くして大繁殖したそうです。
    外来種の中には、日本の在来種にはない繁殖力をもつものがいます。
    そのクローバーもそういうものだったのでしょう。
    あまりのことに蒼白になり、その人は、クローバーをすべてむしり取り、燃やしたそうです。
    ヨーロッパのクローバー、恐るべし。

    私は、ニュートン算の中で生え続ける牧草を、この話で実感しました。
    牛が食べても食べても、ワッサワッサ生え続ける牧草は、ニュートンの目の前に実在したのでしょう。

    さて、イメージを抱くことができました。
    まずは、ニュートン算らしく、受験算数の解き方で解いてみましょう。

    問題 ある牧場では、80頭の牛を放すと21週間で草を食べつくし、93頭の牛を放すと18週間で食べつくす。
    1週間で生える草の量は一定とし、またどの牛も1週間で食べる草の量は同じであるとする。
    この牧場で、100頭の牛を10週間放したのち、さらに何頭の牛を加えて放牧したら、2週間で草を食べつくすか。

    線分図を2本描きます。
    1本目は、まず左端にもとから生えていた草の量を線分で描きます。
    その右に、新たに生える草の分の線分を加えます。
    1週間で生える草の量を①としましょう。
    21週間で生える草は、①が21個分です。
    同じ量の草を、牛は食べ尽くしました。
    1頭の牛が1週間で食べる草の量を☐の1とします。
    80頭の牛が、21週間で食べ尽くしたので、この線分図の総量は、☐×80×21で、☐の1680個分となります。

    1本目の線分図の真下に、左端をそろえて、もう1本、線分図を描きます。
    左端にもとから生えていた草の量を描きます。
    当然、上の線分図と同じ長さです。
    その右に、今回は、18週間で生えた草の量を書き加えます。
    ①が18個分です。
    その量の草を、牛は食べ尽くしました。
    93頭の牛が、18週間で食べ尽くしたので、この線分図の総量は、☐×93×18で、☐の1674個分となります。

    大事なのは、ここで、2本の線分図の差を見ることです。
    この発想が持てず、描いた線分図を眺めたままで終わってしまう子がいます。
    線分図は、差を読み取るのが基本的な使い方です。
    もとから生えていた草の量は同じですから、2本の線分図の差は、①で言えば、21-18で①が3個分。
    同じ差を☐で見ると、1680-1674=6 で、☐の6個分となります。
    〇3個分が、☐6個分。
    つまり、①が、☐2個分にあたります。
    そこで、線分図の〇を全て☐の数字で表しましょう。
    どちらに線分図を使っても同じですが、今回は、上の線分図を使いましょうか。
    〇21個分は、☐42個分。
    全体の長さは☐1680個分でしたから、もとから生えていた草は、
    1680-42=1638 で、☐1638個分となります。

    これがわかれば、もう何でも解けます。
    「この牧場で、100頭の牛を10週間放したのち、さらに何頭の牛を加えて放牧したら、2週間で草を食べつくすか」
    求めるものは、これでしたね。
    こうした問題では、「新しく生える草担当の牛」を任命します。
    1週間で生える草は、牛2頭分でした。
    生えたそばから食べるのが担当の牛が、2頭。
    100頭のうち、2頭が新しい草にかかりきりになります。
    残る98頭で、もとから生えていた草を攻略します。
    まず、10週間で、98×10=980の草を食べました。
    残りの草は、1638-980=658
    この草を2週間で食べ尽くします。
    658÷2=329
    これに、「新しく生える草担当の牛」2頭を加えて、必要な牛の数は、331。
    100頭は最初からいましたから、
    331-100=231
    答は、231頭 です。


    さて、同じ問題を、方程式で使って解きましょう。

    1週間に生える草の量をxとする。
    1週間に1頭の牛が食べる草の量をyとする。
    あとは、何を表す式を立てるか、です。

    文章題の立式が苦手な子は、方程式が何かの数量を表すものであるという発想がありません。
    何か足したり引いたりした変な式を立てているので、
    「この方程式は、何の量を表しているの?」
    と私が質問すると、きょとんとする子がいます。
    このセンセイ、何か変なことを訊いてくるけど、何だ?みたいな顔です。
    「方程式は、文章の中の何かの数量を表しているんだよ」
    と説明しても、まだきょとんとしています。
    「え。何か同じ関係を表せばいいんじゃないの?」
    「だからね、『等しい関係』というときの、その等しさは、何の数量だから等しいんだろう?」

    この話が通じるかどうかは、ニュートン算に限らず、方程式の文章題を解けるかどうかの分かれ目です。

    牧場には、もともと生えている草がある。
    もともと生えている草の量は、どの場合も等しい。
    さらに、新たに毎日生え続ける草がある。
    そして、生えた草の総量は、見方を変えれば、牛が食べつくした草の総量である。
    そうしたことを把握していることが、ニュートン算を解く場合に欠かせません。

    1週間に生える草の量をxとする。
    1週間に1頭の牛が食べる草の量をyとする。
    もともと生えていた草の量を左辺と右辺、それぞれで表すと、

    80y×21-21x=93y×18-18x ・・・①
    これを整理しましょう。
    1680y-21x=1674y-18x
    -3x=-6y
    x=2y

    これを①の左辺に代入すると、
    1680y-41y=1638y となります。
    もともと生えていた草は、1638y と表すことができます。
    これを用いて、
    「この牧場で、100頭の牛を10週間放したのち、さらに何頭の牛を加えて放牧したら、2週間で草を食べつくすか」
    という内容を方程式にしてみましょう。
    新しく加える牛をz頭とします。
    牛が食べ尽くした草の総量を表す式は、
    100y×10+2(100+z)y=1638y+12x
    x=2yですから、これを代入すると、
    1000y+200y+2yz=1638y+24y
    1200y+2yz=1662y
    両辺をyで割って、
    1200+2z=1662
    2z=462
    z=231
    答は、231頭 です。

    中学の定期テストにニュートン算が出るかといったら、ほとんど出ないんです。
    かなり学力の高い私立中学でも、出るかどうか。
    公立中学の場合、「普通の秀才」と「超秀才」とを識別するために、最後に正答させるつもりのない難問として1題出す主義の先生もいます。
    そうした場合、配点は低いことが多いです。

    それでも、発展的なテキストには載っています。
    私も、ある程度の学力のある子には宿題に出して、解かせてみます。
    完全にマスターすることは求めていません。
    むしろ、本人がどこまで善戦するのかを見ています。
    正解は出ないかもしれません。
    でも、どの程度まで正解に肉薄できるのか。

    「わかりませんでしたー。教えてくださーい」
    と、あっさりギブアップする子は、まあ、それでいいのです。
    しかし、間違った式であっても、ある程度の関係を把握して立式している場合、現在の成績がどうであれ、これは伸びる可能性があります。
    これは伸ばさなければなりません。
    と、こちらも背筋が伸びるんです。

      


  • Posted by セギ at 14:31Comments(0)算数・数学

    2014年09月01日

    ブラックな塾業界?




    さて9月になりました。
    セギ英数教室も今日から通常授業です。

    夏期講習のある日、生徒とこんな会話を交わしました。
    「朝は何時からやってるんですか」
    「9時20分ですよ」
    「夜は何時までですか」
    「夜の9時半までですね」
    「えー、そういうのって、労働ナントカ法とか、そういうのに、ひっかからないんですか」
    「あー、労働基準法ですか。ははは。ひっかかりませんよ。合法ですよ。ははは」
    なんだか、笑ってしまいました。

    現在の私は自営業ですから、何時間働こうと、本人の勝手です。
    しかし、それ以前、集団指導塾で正社員だった頃も、個別指導塾で講師として契約して働いていた頃も、夏期講習となると、そんな働き方でした。
    8時間を超えて働いたところで、残業手当がつくことはありません。
    8時間を超えた分の時給が割り増しになるということもありませんでした。
    これは、よく考えたら、問題だったのでは?
    今は、是正されているかな?
    いや、むしろ、残業代を払わずに済むよう、8時間以内しか授業を入れてもらえないようになってしまっているかもしれません。

    それで思い出したのが、数年前からときどき耳にすることのある「ブラック企業」。
    給料を払わない。
    辞めたいと言うと恫喝する。
    入社して間もないのに役職につけて、会社が残業代を払わなくて済むようにする。
    勤務時間外も働かなければならないような課題を与え続け、睡眠時間を削らせ、社員を病気に追い込む。

    そうした話を聞くと、それはひどいと感じます。
    そういう、若年層が苦しむ構造は、変えていかないと、国が滅びる。
    そして、そういう風潮が、学生アルバイトにまで及んでいると聞いて、うーむ、それは遺憾であると思います。
    とはいえ、細かい事例を読んでみると、「なんだかなあ」と感じる面もあるのです。

    特に、塾講師のアルバイトに関して、「こういう点がブラックだ」と学生が主張している内容を読むと、業界を知る者として、首を傾げる点がありました。
    他の業界のブラックなアルバイトと比較しても、学生が不満に思っている点が何だかほんわかしていました。

    まずは、「スーツ着用を義務づけておいて、その費用はアルバイトの自己負担」。
    ああ、それがブラックなのか・・・。
    飲食業などが制服貸与である場合が多いことからくる発想なのでしょうか。
    えー、じゃあどうすればいいんだろう。
    学生アルバイトは全員同じ制服を塾から貸与されて着ればいいのでしょうか。
    ・・・・・・気持ち悪いなあ。
    塾も一応教育に関する仕事です。
    全員が同じ制服を着た者たちが教育の仕事をするのは、何やらファシズムの匂いがして、そのこと自体が気持ち悪いと私は感じます。
    だからといって学生アルバイトの私服は、もともと年齢が近いこともあって、生徒とほとんど区別がつかなくなりますし。
    私服で良いが、生徒に教えることを意識して良識的な服装を、みたいな曖昧な基準を出されるよりは、「スーツ着用」のほうが、わかりやすいです。

    スーツを買うお金を会社に負担してもらいたいということなのでしょうか。
    そういう塾もあるようですが、その費用を償却できるほど、働いてくれるのかなあ・・・・・。
    特に個別指導塾や家庭教師派遣会社は、学生アルバイトを大量に雇い、実際に使ってみて、生徒から指名をもらえる人材だけを繰り返し使用し、それ以外は登録だけ残して声をかけないということが多くありますので、全員に支度金を渡すことはできないかもしれません。

    「遅刻したら時給をひかれる。15分までの遅刻で、時給の50パーセント。15分以上遅刻すると、全額ひかれる」
    ・・・・・・うーん。
    とりあえず、遅刻はやめましょう。
    労働基準としてそれが合法かどうかという話になると、それは確かに違法かもしれないとは思うんですが、そもそも塾講師は遅刻したらダメなんです。
    生徒は遅刻してくるかもしれませんが、講師は遅刻したらダメです。
    それは、塾の信用にかかわることです。
    遅刻常習の講師がいることで塾は信用を失います。
    その損失は、アルバイトの時給をはるかに超えたレベルの金額に換算されるでしょう。
    でも、学生気分が抜けないどころか、まだそもそも学生のアルバイトに、「遅刻したらダメですよ」と注意しても、治らない子は全く治らない。
    しかし、そういう子も、「15分遅刻したら時給なし」と言われれば、遅刻しなくなる。
    遅刻癖があっても講師として使う価値のある子なら、そうやって使いたい。
    そういう意味でのペナルティで、労働基準といった大人の話ではなく、子どもに与えるバツみたいなものに感じます。
    「お小遣いなしにするよ!」
    と叱るママみたいな感覚ですね。

    実験やゼミが伸びてしまうことがあって、それでバイトに遅刻する?
    そんな曜日にアルバイトの仕事を入れたらダメでしょう。
    「多分、大丈夫」といった見込みで働いたら、ダメです。

    「授業と授業の間が空いていて、空いている時間は時給が払われないのに拘束時間が長い」
    ・・・・拘束はされていないと思います。
    時給が払われていないのなら、その時間は自分の勉強をしていても怒られないでしょう。
    ただ、効率よく働きたい場合、確かに、あまり好ましい状況ではないです。
    単にお金を稼ぎたいだけなら、もっと効率よく稼げるアルバイトが他にあると思います。
    1つ言えば、人気のある講師は、教室側も大切にします。
    空き時間がないように授業を入れてくれることが多いんです。

    「大学の試験前なのに仕事に入れと要求される」
    大学の試験前は、受験シーズンだったり、定期テストシーズンだったり、塾としても重要な期間です。
    保護者が学生講師を嫌う理由の1つが、この「試験前に休む。私用でもよく休む」ということなのです。
    たかがバイトのために、大学の試験を犠牲にはできない。
    それもわかるのですが。


    ところで、昔教えていたことのある子が、大学生になり、塾の講師を始めたことがありました。
    すると、その子のお母様が、SNSでつぶやいていました。
    塾の時給が安すぎる、というのです。

    うーん・・・。
    確かに、大学1年生の子が、初めて個別指導塾の講師になって、もらえる時給は、そんなに高額ではありません。
    でも、東京都の最低時給よりもはるかに高いし、労働として、身体は楽だし。
    そもそも、うちの塾みたいに安い塾に通っていたのに、立場が変わったら、急に時給が安すぎるって・・・。
    そこに矛盾は感じないものなのだろうか?
    聡明そうなお母様なのに、我が子かわいさが前面に出ると、こういう発言になってしまうのか・・・。

    いや、これは、むしろ、私が自分の時給をもっと上げたほうがいいのでしょう。
    全体にもっと賃金アップを。
    それは、考えてもいいことです。
    しかし、それは、つまり、授業料を上げるということですが、さて、それはどうなんでしょう・・・。

    働く立場としては、賃金は高いほうがいい。
    けれど、客としては、安いほうがいい。
    個別指導は受けたいけれど、コストはできるだけ抑えたい。
    ネットのビデオ授業くらいの値段で個別指導を受けられたらいいのに・・・。
    客の立場では、そういう気持ちになると思うのです。

    新規のお客様が、
    「90分で2教科受講できませんか?」
    「じゃあ、1週交代で、数学と英語というわけにはいきませんか?」
    と問い合わせてくることがあります。
    うちはかなり費用を抑えているのですが、これだけ安くても、そういうふうにしたいのだなあ・・・。
    中3の都立受験対策で、90分で理科と社会、というなら、わかります。
    しかし、高校数学と高校英語を90分で両方ともって、それは無理です。
    そもそも、高校数学自体が、本当は数Ⅰと数Aといううように、2科目。
    高校英語も本当は、英語コミュニケーションと論理表現の2科目です。
    この2科目を90分でこなすのも、実はかなり厳しい状態のところを頑張っているのです。

    ただ、英語・数学を90分でという要望は、指導効果が薄いという正当な理由があるので断れますし、断ったからといって、
    「じゃあ、他を探します」
    と客が離れていくかというと、そういうことはないのです。
    同じ費用で同じレベルの個別指導を受けることは不可能だからです。
    間に企業が入っていないからうちは安くても大丈夫ですが、企業としての塾は、学生アルバイトを安く使っても、それでも授業料はかなり高額に設定しないと経営が成り立ちません。
    学生アルバイトの時給が安いのは、そういう理由です。

    うーん。
    結論としては。
    はい。
    全体的にブラックな業界なのかもしれません。
    すみません。

      


  • Posted by セギ at 16:20Comments(0)講師日記