たまりば

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2018年08月17日

英語学習と映画 ノッティングヒルの恋人


このお盆休みは、前半はゲリラ雷雨が凄まじく、大気不安定。
後半は晴れてはいるものの風が強く、結局、部屋で映画三昧の毎日でした。
新しい映画ではなく、手元にある古い映画のDVDを見直していました。
そうして、以前、とりつかれたように1つの映画を繰り返し見て、英語がそれ以前と比べて格段に聴き取りやすくなった頃のことを思い出していました。

私が長年教えているのは中高生に向けての受験英語で、つまりは英語の入試問題をどう攻略するかを指導するのが仕事です。
この仕事を始めた頃は今とは随分事情が違い、長文読解は論説文と同じくらい小説も多く、今よりも英文としては難解で、一方、リスニングは今よりずっと簡単でした。
しかし、時代は変わり、入試問題は難解な小説よりも平易で実用的な文章を速読して内容を理解することが主流となり、一方、リスニング問題はボリュームが増え難度も上がっていきました。

仕事を続けていくためには、自分の能力を時代に即してバージョンアップしていかねばなりません。
私はCD付きの単語集やNHKのラジオ講座などでリスニング学習を続けていました。
それは十分に効果があり、生徒にも勧めています。
しかし、塾講師としての立場からは特に勧めないけれど、劇的にリスニング力の上がる方法もあります。

1つは、英語の歌詞の音楽。
ただ、私が良いと思うものを生徒に勧めても意味がありません。
生徒はそれを「音楽」として勧められたと誤解するからです。
だから、つきあいのいい生徒でも、1回試しに聴くくらいのことしかしないでしょう。
しかし、1回や2回聴いたところで効果はありません。
100回、200回のリピートで初めて結果が表れます。
好きでもない音楽をそんなに聴けないですよね。

自分が本当に好きで、早口なのに発音が明瞭な英語の歌詞の音楽。
これは、そうしたものに出会えたときに、初めて可能な学習方法です。
私の場合は、エミネムでした。
抜粋した4曲ほどを延々と繰り返し聴いていました。
これは好きじゃなければ不可能なことです。
エミネムの歌詞は過激で、青少年の健全な育成に貢献するとはとても思えないので、生徒に勧めたことはありません。
音楽的には、わかりやすくポピュラーで、カッコいい。
それでも、趣味というものがありますから、受け付けない人もいるでしょう。

何百回でもリピートできる曲に出会った私は幸運だったのだと思います。
早口で、しかも発音がクリアで、音がシャキシャキと耳に心地良い英語。
それを自分の楽しみとして繰り返し聴くことができました。
やたらとエミネムを聴き込んだ数日後、いつものように勉強のために英語のニュースを聴いたときの衝撃。
何だかニュース英語が間延びして聞こえるほど聴き取りやすくなっていたのです。
センター試験のリスニング問題も、こんなに簡単なら有難いと感じる明瞭な聞こえ方に変わりました。

それまでは、聴き取れるにしても、いわば、自分の脳の英語スイッチを入れて、さらに電圧を上げて、聴くぞ、聴くぞ、というふうにもっていかないと聴き取れなかった細部が楽に聴き取れたのです。
効果は絶大でした。
歌詞ではなく、意味でもなく、英語の音を音として聴き取れるようになったのは、エミネムからだったと思います。

そこで1段階リスニングレベルが上がったところで、さらにもう1段階上がったのは、映画を英語で見るようになったことが大きかったと思います。
英語字幕で、あるいは、字幕なしで映画を見るようになりました。
映画俳優の英語は、エミネムより聴き取りにくいです。
音が不明瞭です。
ほぼ発音していないような音があります。
前の単語の最後の音と、次の単語の最初の音がくっついています。
で、その単語の最初の音と2番目の音との間にポーズがある。
1つの単語の途中にむしろ音の隙間があるのです。
ニュース英語や原稿を読んでいる英語、ラジオ講座の英語のように、聴き取らせるための英語とは次元が違います。

そのときどきで集中して見た映画は色々ありましたが、一番繰り返し見たのは、『ノッティングヒルの恋人』。
これは、日本語対訳付きの脚本集も買いました。
脚本を読む。
字幕なしで映画を見る。
また脚本を読む。
字幕なしで映画を見る。
その繰り返しで、50回は見たと思います。
そうすると、それまで聴き取れなかった音が聴き取れるようになっていきました。

ここからは、ネタバレを含みますので、『ノッティングヒルの恋人』をこれから見ようと思っている人は読まないほうがいいです。
20年も前の映画なので、もうそんなのどうだっていいかもしれませんが。
そういえば、今年、ネタバレは絶対にダメということも含めて評判になっている日本映画がありますが、それに関して、あるラジオパーソナリティーが、
「『猿の惑星』のDVDのパッケージに自由の女神を描くくらいにダメなこと」
と言っていました。(*^^*)
うーん、それは絶対にダメだ。
絶対にダメなことの比喩として、私も使おう。

話がそれました。
『ノッティングヒルの恋人』の中でも好きなシーン。
主人公ウイリアムが、ハリウッド女優アナ・スコットに、新作映画についてインタビューをするはめになり、さらには共演者の少女にもインタビューするシーン。

ウイリアム  Is this your first film?
少女     No. It's my 22nd.
ウィリアム  Of course it is. Any favourites among the 22?
少女     Working with Leonardo.
ウィリアム  Da Vinci?
少女     Di Caprio.
ウィリアム  Of course. And is he your favourite Italian film director?

この、最後のセリフのItalian の「イ」の音が、最初は全く聴き取れなくて、
「このイを発音してないよね、ヒュー・グラント?」
と詰問したいくらいだったのですが、この「イ」は、その前のfavouriteの語尾とほとんど同時に発音されていて、1拍おいて「タ」が発音されるというからくりに気づいて愕然としました。
これが英語のリエゾン。
そんなの聴き取れるわけがない。
しかし、そのからくりがわかると、「イ」が聞こえるようになっていきました。
英語が聴き取れないというのはこういうことだという仕組みもわかってきました。
映画の脚本なんて、内容は中学英語です。
仮定法が使われていることを考えても、せいぜい高校1年の英語。
でも、易しい英語であるにも関わらず聴き取れないのは、日本人が予測している単語として音が聞こえてこないからです。
リエゾンと妙な隙間。
そのからくりと音に慣れることが必要です。

そうして、聴き取れない音を聴き取るようにしておよそ50回も同じ映画を見た後。
英検1級のリスニング問題がクリアに聴こえるのに愕然としました。
聴かせようと努力してくれている人の英語はこんなにも聴き取りやすい。
英語学習らしい英語学習も必要なのですが、回り道の娯楽が実は近道なこともあるのでしょう。

『ノッティングヒルの恋人』は、小道具や複線の1つ1つが回収されていくのが気持ちよく楽しい映画です。
その分、セリフを聞き逃したり、セリフの意味がわからなかったりすると面白さが半減します。

例えば、ウィリアムが同居人スパイクと屋上で会話しているシーン。
 
スパイク  There's something wrong with the goggles.
ウィリアム No,they were prescription, so I could see all the fish properly.

このゴーグルに度が入っていることは、この後に活きてくるのですが、prescription という単語は他と比べて難度が高く、文字で見ても私は意味がわかりませんでした。 
英語圏の一般の人にも難しい単語なのか、魚がはっきり見えると説明して補強しているところに脚本の工夫を感じたりもします。

ハリウッド女優アナがウィリアムの家の屋上でセリフの練習をした後、ウィリアムに感想を求めるシーンも好きです。

アナ     What do you think?
ウィリアム Gripping. It's not Jane Austen, it's not Henry James, but it's gripping.

この映画の監督は、ジェーン・オースティン原作の映画で英国アカデミー賞を取った人で、そういう楽屋落ちもあるのかもしれません。

アナ     You think I should do Henry James instead?
ウィリアム I'm sure you'd be great in Henry James.
 
と、ワクワクした早口で言うウィリアム。かなり文学が好きな様子。
でも、アナの仕事を否定しません。

アナ     They would never say 'inform the Pentagon we need black star cover'.
ウィリアム And I think the book is the poorer for it.

核戦争から世界を救うという内容の映画に出演するアナは、文芸作品なら「ブラックスターカバーが必要だとペンタゴンに知らせて」なんて言わないわよねと自嘲するのですが、ウィリアムは、文芸作品のほうが、だからそれだけ内容が乏しいんだよとジョークで和ませます。
二人の気持ちが通う良いシーンですし、これが、その後、二人は別れたのに、アナはヘンリー・ジェームズ原作の映画に出演することを選ぶという展開につながっていきます。

主演の二人も良いですが、50回も見ると、もう主演なんかほとんど見ていなくて、セリフを聴いている他は、ちょい役の役者さんたちの芝居に見入っていました。
今回、久しぶりに見直しても、そうでした。
ウィリアムの友人たちや妹ではなく、もっともっと脇役。
例えば、ハリウッド女優アナの広報の人らしいのですが、日本人から見てほぼマネージャー的役割の、いかにも仕事が出来そうなアメリカ女性。
一応、カレンという役名があります。
ウィリアムが、アナ・スコットの新作映画に関するインタビューの場に紛れ込んでしまったときに、重要な役割を果たす女性です。
映画に対する予備知識もないのに何人もの俳優にインタビューし、消耗して部屋から出てきたウィリアムに、
Do you have a minute?
と軽快に問いかけ、ウィリアムが疲れ果てて「No」と答えると、眉を寄せるものの意に介さず従わせていく芝居。
アナの意向に添い、おそらく二人の関係も汲み取っているドアの開け方と表情。

あるいは、ウィリアムの家の前に集まる記者たちからアナを庇って車に導くときの、ドアが開いたその一瞬の表情。

アナがヘンリー・ジェームズ原作の映画のロケをしているときにウィリアムに快活に声をかけるのもカレンでした。
カレンは、アナの近くでアナとウィリアムの恋を知っていた唯一の人物なのかもしれません。

もう1人好きな脇役さんは、最後のヤマ場、アナの記者会見の場面で、アナに2回同じ質問をする記者、ドミニク。
1回目の質問は、
How much longer are you staying in UK then?
2回目、同じ質問をするよう請われて、
How long are you intending to stay here in Britain?
と言っています。
これ、最初のうちは、Britainがほとんど「ブ」としか聴き取れなかったのですが、今は聞こえるなあと感慨深いです。
それはともかく、映画は、この2度目の質問へのアナの答えでようやく記者たちは何が起こったか気づいて大団円となります。
このドミニクは、記者の中でも最初にそれに気づいたという設定なのでしょう。
アナの返事を書き留めながら、もう微笑んでいます。
それから、自分の質問がそういうふうにおしゃれに使われたことが嬉しいのもあってか、相好を崩してウィリアムに近づいていきます。
その芝居が上手い。
ドミニクは、この後、うきうきと長文の署名記事を書くだろうね、と思ってしまいます。

事の次第に気づいた2人目の男性記者の表情。
3人目の女性記者の表情。
上品そうな人たちで、ゴシップ誌ではなく、権威ある映画雑誌の記者なのでしょうか。
このあたりはアップになっていますから、説得力のある芝居なのは当然なのですが、それ以外の記者たちも、それぞれ芝居をしています。
His name was Thacker.
と、ご親切にウィリアムに教えた記者の表情もいい。
ウィリアムをじっと見ているくせに、彼こそがMr Thacker だと気づいていない。
やはり、ウィリアムがかつて言った、
Today's newspapers will be linging tomorrow's waste bins.
今日の新聞は、明日にはゴミになる。
という言葉のほうが真実ではないかと思わせてくれる演技です。
だけど、まぬけな記者というのでもなく、アナとドミニクとのやりとりを窺う表情の厳しさと、事実を悟って、うわっと表情が緩む様子がいいんです。
ゴシップ誌の記者なんだろうなあ。
仕事に真剣なのは素敵なことだ。

ウィリアムの友人バーニーに突然キスされた若い女性記者は、その後もニコニコ笑ってバーニーに話しかけていましたから、良いサイドストーリーを聴き取って独自の記事にするかもしれません。
お手柄だね。

そんなことを色々考えるのも、同じ映画を50回も見たからこそ。

『ノッティングヒルの恋人』を見ろという話ではなく、こんなふうに、メインストーリーや主役の芝居に興味がなくなって脇役ばかりに目がいくくらいに繰り返し同じ映画を見ると、英語が聞き取れるようになりますよ、という話。
私の『ノッティングヒルの恋人』は、他の人にとっては全く別の映画だろうと思います。

短大の英文科だと思いますが、半年かけて『ノッティングヒルの恋人』の映像を繰り返し見て音声を聴いて脚本を読み込む授業を受けた人の感想をネットで読んだこともあります。
試験は、脚本をほぼ暗記して受けたそうで、懐かしい思い出になっているようです。
確かに、授業の素材に選ぶ先生がいるのも頷けます。
SF大作やアクション映画よりも、セリフの駆け引きが面白い映画のほうが英語学習に向いているでしょう。

お盆休みのせいか、ちょっと普段と違う内容になってしまいました。

いやあ、映画って本当にいいものですね。(^-^;
  


  • Posted by セギ at 18:19Comments(0)英語

    2018年08月11日

    不定詞の攻略法。まずは中学2年レベル。


    中2の2学期あたりから急に英語の成績が下がっていく子がいます。
    なぜそうなってしまうのか?
    それまで学習していた英文とは語順が異なる文が増えてくるからでしょう。
    実際のところは、それまでと根本の構造は同じなのですが、文法的なアプローチが苦手な子には、全く別の語順の文に見えてしまいます。
    今まで、基本例文を暗唱して、英語は大体こんな順番で単語を並べればいい、と思ってきたことが覆されます。
    また、英文を全て日本語に直して、その文の意味から文法問題を解いてきた子にとっては、どう解いていいのかわからない種類の問題が出てきます。

    典型的なのは、不定詞の三用法の見分けです。

    問題 次の英文のうち、同じ用法のものを選べ。
    (1) I want to play the guitar.
    (2) My hobby is to collect old coins.
    (3) He was the first man to land on the moon.
    (4) You come to school to study.

    答えは(1)と(2)。
    この2つは名詞的用法。
    (3)は、形容詞的用法。
    (4)は、副詞的用法です。

    できるだけ文法用語に触れないで学習を進める場合、この3用法も、「名詞的用法」「形容詞的用法」「副詞的用法」という用語を用いないで説明することになります。
    この用語を正しく定義し説明すれば何もかも上手くいくのですが、それを避けるために大切なことが伝わらず、全てが曖昧になっていくことがあるのです。

    例えば、「名詞的用法」とは、不定詞を名詞として用いる用法です。
    名詞として用いるということは、名詞と同じ働きをするということ。
    すなわち、その文の主語・補語・目的語のいずれかになるということ。
    (1)の to play は、動詞の目的語。
    (2)の to collect は、補語です。
    だから、どちらも、名詞的用法。

    これが文法的な分析ですが、中2は、さすがにそれだけでは理解しづらいので、意味からもアプローチします。
    名詞的用法というのは、動詞が名詞のように使われる用法。
    つまり、「~する」という意味の動詞が、「~すること」という意味になるのが、名詞的用法の不定詞です。
    (1)の直訳は、「私は、ギターを弾くことを欲する」。
    さすがに、何時代の日本語なのだろう?という感じがするので、「私はギターを弾きたい」と訳しますが、構造を意識した直訳は「~すること」です。
    (2)の訳は、「私の趣味は、古い硬貨を集めることです」。
    「~すること」という意味なので、これも名詞的用法。

    文法からと意味からと双方で補強しあえば、名詞的用法は理解できます。
    これが意味から把握するだけですと、want to ~は「~したい」、like to ~は「~するのが好き」と、まるで熟語のように把握しがちで、そういうものが不定詞だと思うようになってしまう子がいます。
    そのあげく、不定詞は「動詞+to」だと、逆転して覚えてしまう子すらいます。
    不定詞は、to+動詞の原形だよ、と説明しても妙な顔をしたりします。

    それでも、名詞的用法は、まだ理解しやすいのです。
    問題は、形容詞的用法。
    形容詞の働きは、名詞を修飾する働きと、補語になる働き。
    しかし、中学生で不定詞を学んでいる間は、補語になる働きのことは無視しましょう。
    名詞的用法と重なる部分があって紛らわしくなりますから。
    不定詞の形容詞的用法は、名詞を修飾する。
    これだけで大丈夫です。

    しかし、これだけでも、文法嫌いな子には、ハードルが高いようです。
    形容詞は、名詞を修飾する。
    これの何を難しく感じるのか?
    「形容詞って何?」
    「だから、名詞を修飾するのが形容詞ですよ」
    「・・・え?」
    名詞を修飾するのが形容詞。そして、形容詞は名詞を修飾する。
    これを堂々巡りのように感じ、よくわからないと思う子がいますが、これは堂々巡りではなく、定義です。
    わかりやすいように少し補足するならば、
    日本語に直すと言い切りの形が「~い」で終わる、性質や状態を表す言葉が形容詞です。
    本当は、「~だ」で終わる日本語の形容動詞も英語では形容詞ですが、そういうことを言い出したらますます難しくなるので、ざっと理解しておきましょう。

    前にも書きましたが、中1の段階で、文の中のどれが動詞でどれが名詞か識別できるようになっていると、少し楽です。
    中2で不定詞を勉強する際に、今度は、形容詞と副詞の働きを理解すれば良いのですから。
    でも、それが上手くできない子が多いのです。

    どれが名詞なのかもよくわからないまま、不定詞の形容詞的用法を学ぶ。
    確かにそれはハードルが高いでしょう。

    He was the first man to land on the moon.

    この文の man が名詞です。
    後ろの to land on the moon は、この man をより詳しく説明しています。
    どんなmanなのか?
    to land on the moon したmanなのです。
    これで、どんな男か、より詳しくなりました。
    言い方を変えると、「男」というだけと比べて、意味が限定されました。
    より詳しく説明する、あるいは意味を限定する。
    これが「修飾する」ということです。
    to land on the moon という不定詞は、man と言う名詞を修飾しています。
    名詞を修飾するのが、形容詞。
    だから、この不定詞は形容詞的用法です。

    形容詞的用法の不定詞の訳し方は何通りかあります。
    「~する」名詞、「~するための」名詞、「~するべき」名詞、などです。
    この訳し分けは日本語の都合で、英語としての違いではありません。
    日本語に訳して自然なものを選ぶだけです。
    不定詞の形容詞的用法を名詞との関係からさらに分類するのは、高校英語になってからです。
    それもそんなに必要なことではないと私は思っていますが。
    「文法のための文法」のような知識は不要。
    でも、理解の助けになる文法は身につける。
    何でも毛嫌いせずに、そのような姿勢で文法を利用すると、難しかった英文の構造がスッキリわかり、意味がスラスラ読み取れるようになります。

    しかし、文法が苦手な子は、「名詞」「形容詞」といった言葉が説明の中に出てきただけで、もう耳を塞いでしまいます。
    はい、もうわからなーい。
    はい、その説明、難しーい。
    頭が、心が、文法を拒絶する様子です。
    そうした子は、文法の力を借りることができず、意味だけで不定詞の三用法を判断することになります。
    そして、形容詞的用法だけで何通りも訳があることに混乱し、不定詞がわからなくなります。
    名詞を修飾しているかどうかだけが判断の基準で、日本語の訳なんか何通りあっても全部同じなのですが。

    形容詞的用法は、乱文整序問題や英作文で混乱する子が多いのも厄介な点です。
    「彼は、子どもたちと遊ぶ時間がない」
    この日本語を英語に直すと、
    He doesn't play to time children.
    といった謎の英文を書いてしまう子は多いです。
    それまで、英語の語順はこういうものと思っていたのとは少し違う語順の文が、不定詞の形容詞的用法の文です。
    名詞の直後に to 動詞。
    文法的に理解していないと確かにこの語順は衝撃的で、自ら進んでこの語順で単語を並べていくには勇気が必要かもしれません。
    今までの語順にこだわっていると、「動詞 to 名詞」の語順で書いてしまうのです。

    主語を書いて、動詞を書いて、目的語となる名詞を書いて、to 不定詞。
    「誰々が」を書いて、「何々する」を書いて、「何々を」を書いて、to 不定詞。
    この呪文を唱えながら、そのナビの通りに英文を書いていけるようになるまで練習すると、段々とこの語順で英文が書けるようになっていきます。
    He has no time to play with his children.


    形容詞的用法と比べれば、副詞的用法は、まだ理解しやすいでしょう。
    You come to school to study.
    あなたは勉強するために学校に来るのです。

    中2で学習する副詞的用法の不定詞は、動作の目的を表す用法の1種類だけです。
    文がひと通り終わって、その後、最後に不定詞がくっついている印象なので、構造的にも理解しやすい。
    ただし、意味だけから判断しようとする子は、副詞的用法と形容詞的用法の区別がつかないことが多いです。
    「~するための」と「~するために」が似ているせいで混乱するのでしょう。

    名詞を修飾するのが形容詞。
    名詞以外のものを修飾するのが副詞。

    これを理解するだけで、形容詞的用法と副詞的用法の識別は、完璧にできます。

    三用法の識別。
    基本を理解したうえで、さらに簡単に識別するための目安もあります。
    「動詞 to 動詞」の形のときは、名詞的用法の可能性が高いです。
    勿論、例外はあります。
    He lives to eat.
    この文は、動詞 to 動詞 の形ですが、名詞的用法ではありません。
    この to eat は、lives の目的語ではありません。
    「彼は、食べることを生きている」ではありません。
    「彼は、食べるために生きている」です。
    これは、副詞的用法です。

    「名詞 to 動詞」の形のときは、形容詞的用法の可能性をまず考えてみます。
    ただし、本当にその不定詞がその名詞を修飾しているか、確認が必要です。
    I went to the library to do my homework.
    名詞 to 動詞 の見た目ではあります。
    しかし、この不定詞は、名詞を修飾しているのでしょうか?
    「宿題をやるための図書館」。
    おかしいですよね。
    宿題をやるため専用の図書館?
    そんなもの、あるはずがありません。
    「私は、宿題をやるために図書館に行った」
    これが正しい。
    to do my homework は、went という動詞を修飾しています。
    だから、これは、副詞的用法です。

    意味からも補強するけれど、文法的な把握は問題を解くのにこんなにも助けになる。
    不定詞の三用法は、文法を理解することがどれほど有利かを知ることができる学習内容です。
    文法を理解できる子はここから英語で頭角を表し始め、一方、文法を理解できない子は、徐々に英語がわからなくなってくる境目です。

    文法用語を多用せず、それでも、文法を理解してもらうこと。
    教える側としても、ここからが正念場となります。
      


  • Posted by セギ at 14:39Comments(0)英語

    2018年08月08日

    高校数Aの図形の学習。


    現行の高校1年生の数学は、数Ⅰと数Aに分かれています。
    数Ⅰの単元は「数と式」「2次関数」「三角比」「データの分析」。
    数Aの単元は、「場合の数と確率」「図形の性質」「整数の性質」。
    中学で発展的な数学の学習をしている場合、高校数A「図形の性質」はほとんど学習済みの内容ですので、この単元は夏休みの課題として自習し、夏休み明けに課題テストをします、ということで済ませてしまう高校もあります。

    現行のセンター試験数ⅠAは、数Ⅰの全単元が必答問題。配点60点。
    数Aの3つの単元はそれぞれ大問になっていて、3つの大問から2つを選択します。配点40点。
    このとき、図形は苦手だからと「場合の数と確率」「整数の性質」しか選ばない子が結構いますが、問題を全部解いてみると、「図形の性質」が結局一番得点しやすいということもあります。
    「場合の数と確率」はものの考え方のソリが合わず、問題の後半は全く得点できない子が多いのです。
    特に最後の問題は細かい場合分けが必要で、解くのに時間もかかります。
    「整数の性質」は、公倍数・公約数までは何とかなるようですが、不定方程式やn進法は、高校1年の終わりにぽつんと学習してそれっきりの印象があり、公式や解法を何だかすぐ忘れてしまうようで、身につかない子が多いです。
    また、センター試験の問題は不定方程式の基本問題ではなく、癖が強くてよくわからないという子も多いのです。

    でも、「図形」は嫌いだから、選ばない。(^-^;

    結局、数Aはどの単元も苦手という子が多いのです。
    文系で、数ⅠAだけは仕方なく入試科目にしている子には特に負担が大きいのが数Aのようです。
    そんな中で、図形を攻略できると、選択の余地が広がります。

    なぜ図形が苦手なのか?
    理由は本当にさまざまですが、根本は、重要な定義や定理を覚えていない。
    これに尽きます。
    頭に入っていないから使えない。
    定理を使って問題を解くことができない。

    逆にいえば、それさえ解消すれば、図形はある程度の得点を見込める単元になります。
    満点は難しい。
    でも大きな崩れもない。
    「確率」や「整数の性質」の危なっかしさに比べると、むしろ安定して得点できるかもしれません。

    しかし、正直、高校3年生の夏になって、図形分野の攻略などやっている時間的余裕のある受験生はいないと思います。
    そんな時間があるのは高校1年の夏。遅くとも高校2年の夏。
    この夏、図形を攻略したい人は、中学で学んだ基本定理に戻って復習すると良いでしょう。
    中2の数学からで構いません。
    「平行線と角」「図形の合同」「三角形」「四角形」。
    中3の数学は、
    「相似」「円」「三平方の定理」。
    数Aの図形は、そこから半歩しか先に進みません。
    新しく学ぶ内容はいくつもありません。
    「三角形の五心」「角の二等分線の定理」「接弦定理」「チェバの定理」「メネラウスの定理」「方べきの定理」。
    その程度です。

    以下、中学で学ぶ重要定理をおさらいしておきます。
    箇条書きにしてみると、重要定理は案外少ないのです。
    以下の定理の逆が言えることが多いのですが、それを書くと分量が増えて、気持ちの負担が増すと思いますので、今回、あえて逆は省略しています。

    ◎対頂角は等しい。
    ◎平行線の同位角は等しい。   
    ◎平行線の錯角は等しい。     
    ◎平行線の同側内角の和は180°。   
    ◎三角形の内角の和は180°。
    ◎三角形の外角は、隣り合わない内角の和に等しい。
    ◎三角形の合同条件。
     3組の辺がそれぞれ等しい。
     2組の辺とその間にの角がそれぞれ等しい。
     1組の辺とのその両端の角がそれぞれ等しい。
    ◎二等辺三角形の底角は等しい。
    ◎二等辺三角形の頂角の二等分線は、底辺を垂直に2等分する。
    ◎直角三角形の合同条件。
     斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい。
     斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい。
    ◎平行四辺形の対辺は等しい。
    ◎平行四辺形の対角は等しい。
    ◎平行四辺形の対角線はそれぞれの中点で交わる。
    ◎平行線と線分の比。(図が必要な定理ですので、テキスト等で確認してください)
    ◎三角形の相似条件
     3組の辺の比がすべて等しい。
     2組の辺の比が等しく、その間の角が等しい。
     2組の角がそれぞれ等しい。
    ◎中点連結定理。
    ◎内角の二等分線の定理。
    ◎外角の二等分線の定理。
    ◎三角形の線分の比と面積比。
    ◎相似な三角形の面積比は相似比の2乗。
    ◎三平方の定理。
    ◎円周角の定理。
    ◎円に内接する四角形の定理。
    ◎接弦定理。

    もう終わりました。
    中学3年間かけても、これしか勉強していないのです。
    十分、取り返せます。
    復習は可能です。

      


  • Posted by セギ at 14:43Comments(0)算数・数学

    2018年08月05日

    8月25日(土)、大人のための数学教室を開きます。




    8月4日(土)の大人のための数学教室は、出席者0人のため延期となりました。
    次回は、お盆休みを挟みますので、3週間後、8月25日(土)となります。

    さて、今回も、数学こぼれ話を。

    平方根のおよその大きさが必要なときってありますね。
    その平方根が大体いくつなのかわからないと、問題が解けない。
    そんなとき、どうしましょう?

    問題 √19 の整数部分をa、小数部分をbとするとき、a2+b2の値を求めよ。

    これは、aの値がわからないと解けないです。
    √19って、整数部分はいくつなんだろう?
    √2=1.41421356・・・・
    など、語呂合わせで覚えている数は、せいぜい√5まででしょう。
    √19って、どれくらいだろう?

    これは、中学3年生で学ぶ数学です。
    まず、整数に直せる平方根との大小を比べます。
    √16<√19<√25
    これを、√18<√19<√20
    と書いてしまう子がいますが、そういうことではなく、整数に直せる平方根でなければ意味がありません。
    また、一番値の近いものを書くことも必要です。
    √4<√19<√36
    では、意味がありません。
    √16<√19<√25
    これを整数に直すと、
    4<√19<5
    よって、√19は、4と5の間にある数、つまり、4.・・・と表される数とわかります。
    ゆえに、整数部分 a=4です。
    さて、bは、無限に続いていく小数なのにどうするのでしょう?
    心配いりません。
    b=√19-4 と表せば良いのです。

    この問題が解けない中学3年生は、この発想を持てないことが多いです。
    「そんなことして、いいの?」
    と不安そうに言います。
    あるいは、
    「そんなの自分で思いつかない」
    と落ち込んでしまう子もいます。
    数学者ではないので、こんなことをゼロから自力で発想できなくてもいいです。
    この解き方をテクニックとして自分のものとしておけば大丈夫です。
    こんなことで、「自分には数学の才能がない」「勉強しても意味がない」と落ち込む必要はありません。
    2つの値の和がわかっているとき、一方は他方の数を用いて差で表すことができる。
    こうしたことをテクニックとして学び、以後、他の問題で活用できれば良いのです。

    さて、問題に戻って、
    a2+b2
    の求め方は大丈夫でしょうか?
    こちらは、中3では1つ前の「展開と因数分解」の学習で解いている問題です。
    自力で発想できない云々よりも、むしろ以前解いたのと同じパターンの問題がやっぱり解けないことのほうを気にしてほしいのですが、そういうことはわりと平気な子が多く、バランスの悪さを感じないでもありません。
    ゼロから発想できなくてもいいから、一度使ったテクニックは身につける。
    その積み重ねが応用力となります。

    a2+b2
    =(a+b)2-2ab
    ここで、a+bというのは、何のことはない、√19そのものです。
    =√192-2・4(√19-4)
    =19-8√19+32
    =51-8√19
    これが答えです。

    「答えに√19が残っていいの?」
    と質問した子がかつていました。
    「え?どういうこと?」
    「√19が残ったらダメなんじゃないの?」
    そんなこと、問題には書いてないのですが、そうした謎の思い込みに苦しむ子もいます。
    何をして良く、何をしたらダメなのか、中学3年生くらいになると、そうしたことで悩む子が増えてきます。
    いつからか、もしかしたら算数の頃から、理解できないのに解き方だけ丸暗記して表面をとりつくろってきたのかもしれません。
    最初のうちは、いちいち理解するのが面倒くさいから、丸暗記して済ませていた。
    気がつくと、理解したくても理解できなくなっていた。
    案外頭の回転が速く、楽できる方法をつい探してしまう子にこのタイプが多いのです。


    平方根のおよその大きさが必要な問題としては、連立不等式もあります。
    x2-x-8>0   ・・・①
    8x2-19x-27<0 ・・・②
    この2本の連立不等式の解は?
    連立不等式の解き方は理解しているとして、今回は省略します。
    ①より
    x<1-√33 /2 , 1+√33 /2<x 
    ②より
    -1<x<27/8

    ここまで順調に解いて、数直線上にそれぞれの範囲を記していく際に、あれ?と思います。
    1-√33 /2 と-1って、どちらが大きいの?
    1+√33 /2 と27/8って、どちらが大きいの?
    それがわからないと、数直線上に記すことができません。

    まずは、1-√33 /2 と-1を比べましょう。
    両方を2倍して、
    1-√33 と-2。
    両方から1を引いて、
    -√33 と-3
    それぞれを2乗すると、
    33と9。
    負の数は、絶対値が大きいほうが小さい数ですから、
    -√33<-3
    よって、1-√33 /2<-1

    しかし、このように丁寧に計算していくスペースが答案用紙や計算用紙に存在しない、ということが数学のテストの場合、起こります。
    小学生の頃からの癖なのか、高校の定期テストの解答スペースの上から2㎝ほども下がったあたりから、1㎝四方ほどの大きな字で答案を書き出し、書くスペースがなくなり、その問題は解けなくなって終了、という子がかつていました。
    それは極端な例ですが、こんなどうでもいい計算に解答スペースをあまり使いたくないものです。
    この程度のことは、暗算できれば何よりです。
    √33は、5<√33<6。
    大体6として、1-6は-5。
    それを2で割るから、1-√33 /2は、約-2.5。
    だから、-1よりは小さい。

    一方、1+√33 /2と27/8の大小は?
    √33は6より少し小さい数。
    だから、1+√33は7より少し小さい数。
    1+√33 /2は、3.5より少し小さい数。
    一方、27/8は、27÷8だから、3.3・・・。
    あれ、あまり差がないなあ。
    これで1+√33 /2のほうが大きいとするのは危険です。
    やはり、こういうときは、しっかり計算するしかありません。
    両方を2倍して、
    1+√33と27/4
    両方から1を引いて、
    √33と23/4
    両方を2乗して、
    33と529/16
    529/16=33+1/16
    うわ、27/8のほうが大きかったのですね。

    それぞれを数直線に記して、重なっている部分がこの連立不等式の解ですから、
    1+√33 /2<x<27/8。

    あー、大変だった。(^-^;

    それでも、大小の判断だけならこれで何とかなるのですが、一番厄介なのが、数Ⅰ「データの分析」です。
    標準偏差は、平方根になります。
    高校の定期テストや入試問題で、それを何のヒントもなく小数を用いた表記に直させるようなことはありませんが、問題集などで自分で問題を解いている際に、模範解答で平方根がスルッと小数に直っているのを見て、「何で?」と思ったことはありませんか?
    小数第2位まで、平然と小数に直しているけれど、どういうこと?
    どうやるの?

    やり方は3つあります。
    まず1つ目は、「平方根表」を使用する方法。
    三角比の表と似たような見た目の「平方根表」というものがあります。
    中3向けの問題集の巻末などに載っています。
    例えば、「体系問題集・代数2」など。
    その表で読み取ります。

    2つ目。
    電卓を使用する。
    √ のボタンのついている電卓なら、すぐに平方根を計算できます。

    3つ目。
    「開平法」で筆算する。
    平方根は、筆算で小数に直すことができます。
    一番上の画像がその計算です。

    上の画像は、√13 を計算したものです。
    まず、13より少し小さい平方数(何かの2乗の数)を考えます。
    3×3=9ですね。
    その3を、√13の横に書き、平方数の9を13の下に書いて、引きます。
    引いた答えは、4となります。
    これに小数点以下の2桁分を加え、400とします。
    3は、真下にも3を書き、足します。
    3+3=6 となります。
    この6が十の位となります。
    次に、6☐×☐の答えが、400より少し小さくなる数を探します。
    ☐は6ですね。
    66×6=396を400の下に書いて、引きます。
    答えは4です。
    66の下に、見つけた6を書いて、足します。
    72となります。
    これを繰り返し、見つけた数を順番に√13の上に書いていくと、それが√13を小数に直した数となります。

    これを開平法、あるいは開平計算と言います。
    なぜ、こんな方法で計算できるのか?
    大体のイメージを説明しましょう。
    √xという数を開平法で計算するとします。
    まず、2乗してxより少し小さくなる数を見つけ、それをaとし、
    √x=a+b
    と表すとします。
    上の√13の例で言えば、x=13、a=3 です。
    √x=a+b を2乗しましょう。
    x=(a+b)2
    x=a2+2ab+b2
    移項します。
    x-a2=2ab+b2
        =b(2a+b)
    次に、x-a2の値より少し小さくなるb(2a+b)を満たすbを探します。
    上の図で、bは0.6です。
    2a+b=6.6、そして、b(2a+b)=3.96です。
    以下、これの繰り返しで割り進めていきます。

    正確な証明ではありませんので、今の説明で、パッとひらめくものがあればそれで良し、わからなかったら、もうそれはそれでいいというくらいに気楽に受け取ってください。
    開平法は、必ず身につけなければならないというものではありません。
    こんな方法もありますよ、というお話でした。

    さて、次回の数学教室のお知らせです。

    ◎日時  8月25日(土)10:00~11:30
    ◎内容  数Ⅱ「図形と方程式」を続けます。p.45例題8の解説から。
    ◎場所  セギ英数教室
           三鷹市下連雀3-33-13
             三鷹第二ビル 305
           春の湯さんの斜め前のビルです。
    ◎用具   ノート・筆記用具
    ◎参加費 2,000円
           当日集めさせていただきます。
    ◎予約  私の携帯メールかLINEに、ご予約をお願いいたします。








      


  • Posted by セギ at 15:09Comments(0)大人のための講座

    2018年08月01日

    感覚で英語の問題を解いてしまう子。



    さて、今日は英語の話。
    入試問題でも、英検などでも、英語の4択問題は多いのですが、本来得点源であるこうした問題で見事に外してしまう子がいます。
    機械的に選んでも確率として25%は正答するはずなのに、本人の正答率は25%に達しません。
    ほぼ全て誤答してしまうことすらあります。

    例えば、こんな問題。
    これを、中学3年生が解くとして。
    Yoshihiko works at the hospital near his house. He (  ) people who cannot get out of their beds.
     1. translates  2.promises  3.assists  4.spells

    本人の単語力にもよりますし、学んでいる教科書によっても若干のズレはありますが、普通の中3ですと、はっきり意味のわかる単語は、この中では1つもない場合もあるかもしれません。
    教科書には出てきていた気がする。
    テスト前には覚えたような気がする。
    でも、今は覚えていない。
    そんな子のほうが普通です。
    でも、この問題、正答率はそんなに低くないはずです。

    正答は、3.assists

    これを正答できる生徒の考え方は、こんなふうです。
    英語としては初めて見るような気がするけど、この単語は「アシスト」でしょう?
    「アシストする」のアシストだよね。
    「アシスタント」のアシストだよね。
    「補助する」とか、そういう意味なんじゃないかなあ。
    他の単語の意味はわからないけど、正答はこれだよ。

    そういう判断をする子は、正答できます。
    ところが、そういう判断ができない子もいます。
    知らない単語は、読むこともできないと決めてかかって、目を通しません。
    assistが「アシスト」と読める単語であることを教えると、がく然として、あー、答えられたのに、と悔しがります。
    ローマ字読みで良いからとにかく読んでみれば良かったのに、それをしなかったんですね。
    読んでみたら、もう案外日本語として普通に使っている英単語は多いのですが。

    もっと重症な子になりますと、「アシスト」と読めるとわかっても、その意味がわからない子もいます。
    「アシストするって、日本語として聞いたことがあるでしょう?」
    「知りません」
    「アシスタントって言うでしょう?」
    「言いません」
    そうなると、それは、その子の日本語の語彙が少ないのが根本の問題となってきます。
    あるいは、間違えた問題のことに触れられるのが嫌で、たたき返すように「知りません」「言いません」と言っているだけかもしれませんが。
    その情報がその子の脳を通っていないのです。
    間違えた問題についてあれこれ言われるのが嫌なのでしょう。
    プライドが傷ついてしまうらしいんです。
    一刻も早く忘れたいと思っているのに、「アシストって言うでしょう」「もう、それは日本語でしょう」と言われるのが嫌で、「知りません」「言いません」とたたき返してしまうようです。
    しかし、間違えた問題を分析し原因を確認することができず、忘れたい、ごまかしたいという反応をする子は、また次も同じ間違いを繰り返します。
    この問題が1問できなかったことよりも、もっと根深い問題を抱えています。

    以上のように、さまざまな場合がありますが、正答の3.assistsが正答に見えなかった子は、では、何を選ぶのでしょうか。
    どうも、1. translates(翻訳する) を選んでしまう子が多いようです。
    この間違い方も、いろいろと分析できます。

    まず、transport(輸送する) という単語との混同があった場合。
    「ベッドから出られない人々を輸送する」という表現はどうなのかな?
    大体、どういう仕事なのそれ?
    救急隊員なの?
    救急隊員をそのように表現するかなあ?
    とは思うものの、気持ちはわかります。
    ああ惜しかったね、勉強はしているよね、と声をかけたくなるタイプです。

    一番困ってしまうし、しかし、一番多いのは、
    「何となく、translateが正解のような気がしたから」
    という返答です。
    ・・・・・何となくって、何なんでしょう?
    「なんか、長くて、難しそうな単語だったから」
    長い単語が正解に見えてしまう?
    難しそうな単語が正解に見えてしまう?
    混乱しているときは、そんな判断をしてしまうようなのです。

    以前、うちの塾生の1人が、こんなことを言いました。
    「問題が、魔物に見える」
    間違えて、間違えて、また間違えて。
    どう選んでも間違いが続くと、もう訳がわからなくなる。
    問題が、自分をだます魔物に見えてくる。
    必ず落とし穴があるように見えてくる。
    そういう意味のようでした。
    そういう感覚に陥っていると、自分の知らない単語、一番長くて難しそうな単語が正解だろう、という誤った判断をしてしまうのかもしれません。

    勉強というのは、いくら基礎でも学問なので、感覚で解いていたら、いずれ迷宮に入り込みます。
    にも関わらず、特に英語は自分の感覚に頼ってしまう子が多いように感じます。
    感覚に頼って4択を選び、単語を並べて文らしきものを作り、それで正答になると漠然と夢見ているような勉強をしている子がたくさんいます。

    英語が得意な人たちが「英語は感覚を大切に」などと、誤解されやすい発言をすることも一因です。
    これは良くないと、以前にも書きました。
    その人たちの「感覚」は、本人は「感覚」のつもりでも、実は「理屈」なのです。
    英文法の体系がその人の内にあるのです。
    本人がそれを意識していないだけです。
    長年、勉強が苦手な子たちの「感覚」につきあっていると、「感覚に頼れ」と言う気にはなれません。
    「一番長い単語が正解」というのが、その子の「感覚」かもしれないのです。

    教えて教えて、さまざまな武器を持たせたのに、試験当日、それらの武器を全部放り出して、素手でわあっと突入していってしまう。
    「感覚」に頼る子の試験の受け方はそんなふうで、結果を見て本人も傷つきますが、教えた側の落胆も大きいのです。


    勉強は、推理小説ではありません。
    「一番犯人ではなさそうだった奴が、実は犯人だった」
    なんてことは、ありません。
    一番「犯人」だと思われる奴が、まさしく「犯人」です。
    一番正答らしいものが、正答です。
    証拠がそろっているから「犯人」なのです。
    その証拠をそろえるには、しかし、こちらに知識が必要。
    論理的な判断力が必要。
    知識と判断力があれば、問題は魔物には見えません。

    出題者は、あの知識を確認するために、この問題を出しているのだ。
    こう間違える可能性を予想して、こういう構造の問題を作ったのだ。
    だから、これが正解なのだ。
    そういう判断を繰り返していくことが問題を解くということです。
    それができるようになるには、単語力と文法力をつけ、判断力を養うために、たくさん練習するしかありません。
    ネイティブでもない日本人が、英語を感覚で解くのは不可能です。
    間違った自分の答えばかりが記憶に残り、それの集積がその子の「英語の感覚」であるのは、よくあることです。
    英語の問題を感覚で解くのをやめ、少しでも理屈を考えていこうするのがまず第一歩です。

      


  • Posted by セギ at 11:18Comments(0)英語