たまりば

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2024年03月31日

数学で壁を越えられない子のやりがちなこと。

数学で壁を越えられない子のやりがちなこと。

さて、数学が理解できないわけでは決してないのだけれど、満足のいく得点でもないという場合、どんな状態であるのかを、今回は、考えてみたいと思います。

最初に考えられるのは、計算のやり方に課題があり、精度が低い、ということがあります。
例えば、こんな問題。
高校数Ⅰの問題です。

(1-√3+√5)2 を計算せよ。

これを、
(1-√3+√5)2
=3-2√3-2√5

といった謎の計算をしてしまう子が、1つのタイプです。

「・・・うん?どういう計算をしたの?途中式は?2行目を教えてくれる?」
「途中なんてありませんよ」
「・・・ああ。暗算したの?どんなふうに?」
「まず、整数になるものを先に足して・・・」
「ああ・・・」

もう、それ以上を聞く気になれず、私はうなだれてしまいます。

(1-√3+√5)2

この計算をするための、もっともスマートな方法は、公式の利用です。
3つの項の2乗の公式を覚えていれば、簡単に計算していけます。

(a+b+c)2
=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca

これが、公式です。
これにあてはめます。
各項の前に-がある場合は、その-は、その項についている符号だと考えれば、この公式をそのまま活用できます。

(1-√3+√5)2
=1+3+5-2√3-2√15+2√5
=9-2√3-2√15+2√5

これが正解です。
公式がある場合、公式通りに書いていき、その後、計算できるところは計算して整理するのが、実は一番時間がかからず、精度も高いです。
最終解答まで、1分とかかりません。

整数になるものだけ、先に計算する・・・。

おそらく、(1-√3+√5)(1-√3+√5)
という式を頭の中でイメージし、個々に展開しようとしたのでしょう。
その中で、整数になるものだけ、先に計算しようとしたのだと思います。
合理的なようでいて、無駄なことです。
そんな余計なところで、余計な頭を使って、暗算ミスをしてしまうのです。
(-√3)^2=-3 と、間違った計算をしてしまったのでしょう。
目に見える形にしておかないと、そういうミスをしやすくなり、
1-3+5=3
となってしまったのだと思います。
平方根のところの計算は、何をどうしたら、-2√3-2√5 になってしまったのか?
これも、暗算の過程で、思考が歪んだ結果なのだろうと思います。

公式通りにさっさと書いていけば、速く正確に解けます。
つまらないところで暗算していると、実は無駄な時間がかかるのですが、本人は夢中で暗算しているので、時間がかかっていることに気づいていないことが多いです。
こんな計算問題を1問解くのに、5分ほどもかかっていることに、本人は気づいていません。
時間がかかり、かつ精度が低い。
数学の得点を上げていくうえで、大きなネックとなります。
数学が理解できないわけでないのに精度が低い子の、1つの典型的な状態です。


もう1つの誤答の例。

(1-√3+√5)2
={1-(√3+√5)}2
=1-2(√3+√5)+(3+2√15+5)
=1-2√3-2√5+3+2√15+5
=9-2√3-2√5+2√15

3つの項の2乗の公式を覚えていない子の中に、このようなミスをする子がいます。
考え方は間違っていないのですが、2行目で符号ミスをしているのです。
正しくは、
(1-√3+√5)2
={1-(√3-√5)}2
=1-2(√3-√5)+(3-2√15+5)
=1-2√3+2√5+3-2√15+5
=9-2√3+2√5-2√15
が正解です。

こういう解き方をする子は、真面目な子が多いです。
おそらく、この解き方を学校で学習したのでしょう。
こうした真面目な子は、受験勉強を始めても、真面目に学校のやり方で解きます。
発展的な公式を教えても、利用しないことが多いです。
学校で習っていない、というのです。
発展的な公式や解法は、中3や高1には教えない方針の学校が、今は多くなりました。
進学率の高い中堅私立高校でも、基本しか教えません。
おそらく、理系の高校3年生に入試用の数学演習の授業をするときには、教えるのだろうと思います。
文系志望で、共通テストで数学を使いたい、という子は、発展的な公式や解法は、学校で一度も教わらないまま、なのかもしれません。

その場合、私が、こういう公式があって便利だよと解説しても、にこにこと話は聞いていますが、使いません。
そうして、おそらく学校で習ったのだろう上のような地道な解き方をするのですが、符号ミスをしてしまいます。
どこで符号ミスをしたのか、そのままでは納得しないので、その子のために、私も地道に解いてみせて、その子の符号ミスや書き間違いを発見するのが、個別指導の授業の大半ということになります。

そんな授業は、効果のあるものなのだろうか?
自力では発見できない符号ミスや書き間違いを見つけてあげるのだから、全く無意味ではないのか?
とはいえ、もっと効果のある授業のやり方もあるのに・・・。
そんな、やるせない気持ちになることがあります。
私が地道に書いて見せた答案で、自分の符号ミスに気づくと、
「あ。何でもありません」
と急に隠し事を始め、それまでのことはなかったことにするのも、真面目な子たちの特徴です。
寂しい気持ちになります。


地道にやると面倒くさいことになり、ミスをしやすい問題。
だからこそ、公式があるのですが、その公式は、使わない。
でも、地道に書いていくのは面倒くさいから、暗算してミスをする。
あるいは、地道に面倒くさい手順を踏んで、途中でミスをする。
それでも、公式は、使わない。

ここを解きほぐしていくのに、時間がかかります。
受験勉強のスタートラインより、はるか手前からの出発。
それでも、一歩ずつ、です。




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    Posted by セギ at 18:25│Comments(0)算数・数学
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