たまりば

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2014年09月01日

ブラックな塾業界?


ブラックな塾業界?

さて9月になりました。
セギ英数教室も今日から通常授業です。

夏期講習のある日、生徒とこんな会話を交わしました。
「朝は何時からやってるんですか」
「9時20分ですよ」
「夜は何時までですか」
「夜の9時半までですね」
「えー、そういうのって、労働ナントカ法とか、そういうのに、ひっかからないんですか」
「あー、労働基準法ですか。ははは。ひっかかりませんよ。合法ですよ。ははは」
なんだか、笑ってしまいました。

現在の私は自営業ですから、何時間働こうと、本人の勝手です。
しかし、それ以前、集団指導塾で正社員だった頃も、個別指導塾で講師として契約して働いていた頃も、夏期講習となると、そんな働き方でした。
8時間を超えて働いたところで、残業手当がつくことはありません。
8時間を超えた分の時給が割り増しになるということもありませんでした。
これは、よく考えたら、問題だったのでは?
今は、是正されているかな?
いや、むしろ、残業代を払わずに済むよう、8時間以内しか授業を入れてもらえないようになってしまっているかもしれません。

それで思い出したのが、数年前からときどき耳にすることのある「ブラック企業」。
給料を払わない。
辞めたいと言うと恫喝する。
入社して間もないのに役職につけて、会社が残業代を払わなくて済むようにする。
勤務時間外も働かなければならないような課題を与え続け、睡眠時間を削らせ、社員を病気に追い込む。

そうした話を聞くと、それはひどいと感じます。
そういう、若年層が苦しむ構造は、変えていかないと、国が滅びる。
そして、そういう風潮が、学生アルバイトにまで及んでいると聞いて、うーむ、それは遺憾であると思います。
とはいえ、細かい事例を読んでみると、「なんだかなあ」と感じる面もあるのです。

特に、塾講師のアルバイトに関して、「こういう点がブラックだ」と学生が主張している内容を読むと、業界を知る者として、首を傾げる点がありました。
他の業界のブラックなアルバイトと比較しても、学生が不満に思っている点が何だかほんわかしていました。

まずは、「スーツ着用を義務づけておいて、その費用はアルバイトの自己負担」。
ああ、それがブラックなのか・・・。
飲食業などが制服貸与である場合が多いことからくる発想なのでしょうか。
えー、じゃあどうすればいいんだろう。
学生アルバイトは全員同じ制服を塾から貸与されて着ればいいのでしょうか。
・・・・・・気持ち悪いなあ。
塾も一応教育に関する仕事です。
全員が同じ制服を着た者たちが教育の仕事をするのは、何やらファシズムの匂いがして、そのこと自体が気持ち悪いと私は感じます。
だからといって学生アルバイトの私服は、もともと年齢が近いこともあって、生徒とほとんど区別がつかなくなりますし。
私服で良いが、生徒に教えることを意識して良識的な服装を、みたいな曖昧な基準を出されるよりは、「スーツ着用」のほうが、わかりやすいです。

スーツを買うお金を会社に負担してもらいたいということなのでしょうか。
そういう塾もあるようですが、その費用を償却できるほど、働いてくれるのかなあ・・・・・。
特に個別指導塾や家庭教師派遣会社は、学生アルバイトを大量に雇い、実際に使ってみて、生徒から指名をもらえる人材だけを繰り返し使用し、それ以外は登録だけ残して声をかけないということが多くありますので、全員に支度金を渡すことはできないかもしれません。

「遅刻したら時給をひかれる。15分までの遅刻で、時給の50パーセント。15分以上遅刻すると、全額ひかれる」
・・・・・・うーん。
とりあえず、遅刻はやめましょう。
労働基準としてそれが合法かどうかという話になると、それは確かに違法かもしれないとは思うんですが、そもそも塾講師は遅刻したらダメなんです。
生徒は遅刻してくるかもしれませんが、講師は遅刻したらダメです。
それは、塾の信用にかかわることです。
遅刻常習の講師がいることで塾は信用を失います。
その損失は、アルバイトの時給をはるかに超えたレベルの金額に換算されるでしょう。
でも、学生気分が抜けないどころか、まだそもそも学生のアルバイトに、「遅刻したらダメですよ」と注意しても、治らない子は全く治らない。
しかし、そういう子も、「15分遅刻したら時給なし」と言われれば、遅刻しなくなる。
遅刻癖があっても講師として使う価値のある子なら、そうやって使いたい。
そういう意味でのペナルティで、労働基準といった大人の話ではなく、子どもに与えるバツみたいなものに感じます。
「お小遣いなしにするよ!」
と叱るママみたいな感覚ですね。

実験やゼミが伸びてしまうことがあって、それでバイトに遅刻する?
そんな曜日にアルバイトの仕事を入れたらダメでしょう。
「多分、大丈夫」といった見込みで働いたら、ダメです。

「授業と授業の間が空いていて、空いている時間は時給が払われないのに拘束時間が長い」
・・・・拘束はされていないと思います。
時給が払われていないのなら、その時間は自分の勉強をしていても怒られないでしょう。
ただ、効率よく働きたい場合、確かに、あまり好ましい状況ではないです。
単にお金を稼ぎたいだけなら、もっと効率よく稼げるアルバイトが他にあると思います。
1つ言えば、人気のある講師は、教室側も大切にします。
空き時間がないように授業を入れてくれることが多いんです。

「大学の試験前なのに仕事に入れと要求される」
大学の試験前は、受験シーズンだったり、定期テストシーズンだったり、塾としても重要な期間です。
保護者が学生講師を嫌う理由の1つが、この「試験前に休む。私用でもよく休む」ということなのです。
たかがバイトのために、大学の試験を犠牲にはできない。
それもわかるのですが。


ところで、昔教えていたことのある子が、大学生になり、塾の講師を始めたことがありました。
すると、その子のお母様が、SNSでつぶやいていました。
塾の時給が安すぎる、というのです。

うーん・・・。
確かに、大学1年生の子が、初めて個別指導塾の講師になって、もらえる時給は、そんなに高額ではありません。
でも、東京都の最低時給よりもはるかに高いし、労働として、身体は楽だし。
そもそも、うちの塾みたいに安い塾に通っていたのに、立場が変わったら、急に時給が安すぎるって・・・。
そこに矛盾は感じないものなのだろうか?
聡明そうなお母様なのに、我が子かわいさが前面に出ると、こういう発言になってしまうのか・・・。

いや、これは、むしろ、私が自分の時給をもっと上げたほうがいいのでしょう。
全体にもっと賃金アップを。
それは、考えてもいいことです。
しかし、それは、つまり、授業料を上げるということですが、さて、それはどうなんでしょう・・・。

働く立場としては、賃金は高いほうがいい。
けれど、客としては、安いほうがいい。
個別指導は受けたいけれど、コストはできるだけ抑えたい。
ネットのビデオ授業くらいの値段で個別指導を受けられたらいいのに・・・。
客の立場では、そういう気持ちになると思うのです。

新規のお客様が、
「90分で2教科受講できませんか?」
「じゃあ、1週交代で、数学と英語というわけにはいきませんか?」
と問い合わせてくることがあります。
うちはかなり費用を抑えているのですが、これだけ安くても、そういうふうにしたいのだなあ・・・。
中3の都立受験対策で、90分で理科と社会、というなら、わかります。
しかし、高校数学と高校英語を90分で両方ともって、それは無理です。
そもそも、高校数学自体が、本当は数Ⅰと数Aといううように、2科目。
高校英語も本当は、英語コミュニケーションと論理表現の2科目です。
この2科目を90分でこなすのも、実はかなり厳しい状態のところを頑張っているのです。

ただ、英語・数学を90分でという要望は、指導効果が薄いという正当な理由があるので断れますし、断ったからといって、
「じゃあ、他を探します」
と客が離れていくかというと、そういうことはないのです。
同じ費用で同じレベルの個別指導を受けることは不可能だからです。
間に企業が入っていないからうちは安くても大丈夫ですが、企業としての塾は、学生アルバイトを安く使っても、それでも授業料はかなり高額に設定しないと経営が成り立ちません。
学生アルバイトの時給が安いのは、そういう理由です。

うーん。
結論としては。
はい。
全体的にブラックな業界なのかもしれません。
すみません。



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