たまりば

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2023年09月05日

SVOCを理解できれば、英語学習は楽になります。

SVOCを理解できれば、英語学習は楽になります。


高校生と「分詞」の学習をしていたときのことです。
例えば、こんな問題。

問題 ( )の語を適切な形に直せ。
(1) Do you know the man (sit) on the bench ?

分詞の限定用法の問題です。
中学では「分詞の形容詞的用法」という言い方で学びます。
分詞が名詞を修飾する用法です。
修飾される名詞 man が sit という動作をするのですから、現在分詞 sitting が正解です。

(2) Ken showed me some pictures (take) by his brother.

修飾される名詞 pictures は take という動作をされるのですから、過去分詞 taken に直します。

ここまでは中学の復習。
その子も、順調に正解していました。


そこから先が高校の「分詞」の学習です。
分詞の叙述用法に進みました。
SVCやSVOCの、Cに分詞を用いる用法です。
解説をして、練習を開始しました。

He kept (knock) on the door until I opened it.

その子の答えは knocked でした。

「・・・・え?何で?」
解説したばかりなのに、何で?
「door はノックされるから・・・・」
「・・・・え?」

ここからは叙述用法、新しく学ぶ用法と明言し、解説したばかりなのに、何で限定用法に戻るのだろう?
door は、分詞の直前・直後の名詞ではありません。
分詞に修飾される名詞ではありません。

文法が苦手な高校生に英文法の授業をしていると、上のようなことが起こりやすいのです。
教えたことが上手く伝わっていきません。

1つには、高校英語を学んでいるのに、中学英語の知識で乗り越えていこうとする点。
何でも、ただ1つの解き方で解決しようとします。
分詞ならば、すべて、限定用法で解決しようとします。


もう一度、叙述用法の解説をした後、今度は、乱文整序問題を解きました。

問題 次の日本語を以下の語句を並べ変えて英文にせよ。
私は電車のドアに指をはさまれた。
had , I , in , doors , fingers , the , train , my , caught .

その子の答は。
I had caught my fingers in the train doors.

これも誤答です。
この文を日本語にすると、
「私は、電車のドアの中で、自分の指をつかまえてしまった」
となってしまいます。
なぜ、突然過去完了形?
今は、分詞の叙述用法を学習しているのであって、had+過去分詞の学習をしているのではないのに・・・。

しかし、その子だけのミスではなく、乱文整序でこういう英文を作ってしまう高校生は多いです。
have または had と、過去分詞が存在したら、それは完了形の文、と思い込んでしまうようなのです。
それもまた、やり方は1つだけ、中学で勉強したことだけ、という解決方法です。

正解は、
I had my fingers caught in the train doors.
です。

これは、「受身・被害の have 」と呼ばれる have の文です。
第5文型をとります。
英語は、語順がすべて。
どの語句をどの順番に並べていくか。
それが、英文法です。
S、Vときたら、次はO。そしてCです。
そのルールを覚えれば、あとは単語・熟語を覚えるだけ。
日本語のように、「その語句は、ここに置いていいし、そこに置いてもいいけど、そこには置いたらダメ」といった、緩くてわかりにくいルールはありません。
カチッと語順が決まっているので、英語は学習しやすいのです。

ところが、英語が苦手な子は、5文型を理解しない。
語順を理解しない。
というより、無視する傾向があります。
そういう概説的でよくわからなかったことは、どうでもいい、としてしまうようなのです。
特に、第5文型SVOCは、
「そんな不自然な語順はこの世に存在しない」
と、心の中で消し去っている気配すら感じます。

S、V、O、C、Mといった文の成分の話や、形容詞、副詞などの品詞の話を嫌う。
何回説明しても覚えない子が多いです。
目先の定期テストに出ないからかもしれません。
これはCですかOですか、とか、この単語の品詞は何ですかといった問題は、確かにテストには出ないです。
でも、テストに直接問われることはないけれど、その知識がないから問題が解けないのに・・・。
そういうことを説明しても、その説明も耳を素通りしていくようです。

SVCやSVOCの語順が理解できていないと、分詞の叙述用法は、理解できません。
根本がわからないし、根本を覚えないから、結局、その上の文法知識は何も載っていかない・・・。

SVOCの基本は、中3で学習しています。
She named the dog Pochi.
彼女は、その犬をポチと名付けた。

こういう文を学習したことは、かろうじて覚えている子が多いです。

しかし、
Her parents let her study abroad.
彼女の両親は、彼女が外国で学ぶことを許した。

この文も、中学で学習しているのですが、それについては記憶がない子が大半です。
新課程で、使役動詞 let も、高校の文法事項が中学に降りてきたのですが、なぜかそれだけをぽつんと学習することもあり、記憶に残らない様子です。

SVOCのCが、名詞や形容詞の文は、かろうじて記憶に残る。
しかし、Cが原形不定詞だった文は、記憶に残らない・・・。
それは、1つのヒントかもしれません。
その子の頭の中での「あるべき英語」は、中1レベルの英語であり、それより複雑な文や、そうではない語順の文は、異常な文として、記憶からシャットアウトするのではないか?
主語+be動詞+補語。
主語+一般動詞+目的語。
その語順は、許容できる。
しかし、その後に、また動詞の原形が出てくる文など、許容できない。
そういうのは「よくない英語」として記憶から除去してしまうのではないか?
少なくとも、本人が自力でその語順で英文を組み立てることは、できないのです。

原形不定詞や to 不定詞の部分をCとしてよいかどうか。
このあたりは、正確な英文法では否定的かもしれません。
テキスト等で明示しないことが多いです。
しかし、ここはゆったりざっくりと、SVOCととらえてしまえば、結局全部同じ語順として把握できる英文が多いのです。
私は正しい英文法を修めたいわけではなく、受験に役立つ実用的な英語を教えたい。

SVOCととらえれば、
She named the dog Pochi.
Her parents let her study abroad.
Her parents allowed her to study abroad.
I had my fingers caught in the train doors.
I saw a duck cross the river.
I saw a duck crossing the river.

Cの位置にくるのは、名詞と形容詞の他に、原形不定詞、to不定詞、過去分詞、現在分詞。
これらは、すべて、同じ構造の英文として把握できます。
あとは、Cに何を用いるのかのルールを学べばいいだけ。
それは、その文のVの種類と、OとCとの関係。
根本の語順は、SVOCで変わらない。

この教え方で劇的に高校英語がわかるようになる子もいます。
何だかこまごまとして覚えにくかった英文法が、大きくまとまりますから。
私の「S・V・O・C!」のかけ声で語句を並べる練習を繰り返して、SVOCの語順をマスターしています。
不定詞や分詞の学習でちらちらと出てきてモヤモヤしてしまうのに、文法テキストのまとめ問題や模試問題にはよく出てくる問題。
結局、いつもいつも何だかよくわからずに終わってしまうことが、大きな原則で整理できるのです。

それでも、英語が苦手な子たちは、そうではない奇妙な語順の英語を、しかし、そのほうが正しい語順の気がするからという理由で並べ続けます。
そういう英語のほうが正しい気がする。
明らかに間違っているのですが、本人の中では、自分の誤答の堆積すらも、英語としての記憶なので、同じ誤答を繰り返します。


「学校で、もう学習した内容ですよね?学校の文法のテキストを出してみて。ほら、そこに載っているでしょう、叙述用法」
そうして、もう一度解説しました。
その後、学校の文法テキストの見開き右側ページの練習問題を解くと、それは全部正解できました。
SVC、SVOCのCにあたる分詞を正しい形で使用できたのです。

「教科書の問題は正解できますね」
と私が言うと、その生徒は、奇妙なことを言いだしました。
「これは、答を覚えているから・・・・」
「え・・・・?答を覚えている?」
「復習したという意味ですよ」
「え?」
「・・・・」
「・・・・私は何回解いても、答なんか覚えないけど?」
「・・・・・?」
「何でそんな意味のないことを覚えるの?」


文法は覚えないのに、何で答を覚えるの?


愕然として、私は悟りました。
そういう勉強をしてしまうのか・・・・。
なぜ英語が得意にならないのか、その一端が垣間見えた気がするのです。
いや、英語に限らずなぜ勉強が得意にならないか。
努力をしているのは伝わってくるのに、なぜ結果が出ないのか。
その一端が見えた気がしました。

うちの塾で、歴代でも最も英語が得意だった子は、90分の授業時間の中で、問題のぎっしり詰まったテキストや確認テストを毎回平均12ページ解いて帰っていきました。
30分あたり4ページ。
答え合わせの時間もありますから、1枚解くのに5~6分というところでしょう。
決して速すぎるわけではありません。
後に国立大学に合格したその子は、1冊40ページのテキストの残りのページを丸ごと宿題に出しても翌週全部解いてきていました。

しかし、英語が苦手な子たちのスピードはガクッと落ちます。
上に書いた高校生は、最初にいろいろ説明しなければなりませんでしたし、間違えているとさらに説明する時間も長くなるのですが、演習スピード自体も遅く、90分の中で結局1ページしか問題を解けないことが多かったのです。
そしてその1ページの問題の答えを覚えることが、その子にとっての復習なのだとしたら・・・・。

12ページと1ページ。
塾だけで12ページ解く子が、問題の答えを覚えているかといったら、覚えているはずがありません。
いちいち答えを覚えていられるような量ではありません。
余程印象的な問題が含まれていたら別でしょうが、翌週同じ問題を渡しても、同じだと気づかず解き終わるかもしれません。
学習した文法にしたがってサクサク解いているだけだからです。

英語コミュニケーション教科書の重要文を日本語訳から復元するための暗唱はしていました。
単語の暗記もやっていました。
そういう暗記はするのです。
でも、文法テキストの問題の答えは覚えない。
何度解いても正答できましたが、それは、答えを覚えているからではなかったでしょう。


復習すると自然に答えを覚えてしまうのだ。
そういう反論はあるかもしれません。
それでも、「その勉強のやり方は変えなさい」と言わざるをえません。
類題は正答できないのなら、なおのこと。
問題の見た目が変わると、自分はどうも解けなくなるんだなあ・・・。
何の文法事項の問題なのか、わからないし・・・。
そういう自覚があるのなら、それは、勉強のやり方に課題があるのです。

教科書の問題の答えは覚えても、もっと重要なことを覚えていないのです。
その問題を解く中で抽出し理解するべき文法を把握できていません。
答えを覚えてしまうくらいに数少ない問題をねっとり見つめ続けているのに、それが文法把握につながっていないのです。

有効なやり方は正反対のものです。
教科書の問題の答えは覚えていないけれど、文法は覚えた。
多くの問題練習でその文法を実践できるようになった。
だから、教科書の問題は何度解いても正答できる。
他の問題も正答できる。
定期テストの問題も正答できる。
入試問題も正答できる。
文法の勉強はそういうふうにやっていってほしいです。


「英語って文法だよ」
「SVOCMの位置に、単語をぽんぽんぽんと入れていくだけだよ」
「慣用表現以外は、理屈だよ」
という私の説明が理解できると、ロケット並みの成績上昇を見せる子がいます。
英語のシステムは理解しやすく明瞭で好ましい。
こういう感覚になれば、あとは単語・熟語さえ覚えればどうにでもなるとわかりますので、覚えることにも抵抗がなくなります。

有効な学習方法を体得できれば、その後は、速いのです。
ただ、そこまでが長く、苦しい。
いつまでも、いつまでも、SVOCという文型の存在を把握できない子は多いです。
そのような語順の英文があることを発想できず、空所補充問題も乱文整序問題も、すべて間違えます。
SVOCのCに、to 不定詞を入れるか、原形不定詞を入れるか、現在分詞か、過去分詞か。
そのような文法問題の典型題が、その子にとっては、そのような切り口には全く見えない。
熟語問題か何かにしか見えていないのだと思うのです。
1つの英文を作るとき、「まず主語は?」とシステム的に考えず、「これと似た英文を前に見たことはなかっただろうか?」と自分の記憶をたぐりよせようとします。
だから、乱文整序や和文英訳で誤答した後の解説で、私が、「まず、この文の主語は?」と問いかけると、その発想自体がなかったかのように絶句します。

文法的には10個未満の例文把握で済むことを、何千もの英文を丸暗記することでカバーしていくしかない・・・。
それが、その子にとっての英語学習なのかもしれません。
でも、普通は、そのような暗記力はないのです。
だから、英語ができるようにならない・・・。

そして、それは、英語だけの話ではなく、他の科目でも、学力が伸びない根本に、そういうことがあるのだと思うのです。
根本のルール、根本の理屈を理解せず、表面だけ追って、表面の解き方だけ丸暗記して、そして、すぐに忘れていく・・・。

本質に手が届けばいいのです。
本質に意識が届けば、後は速いのです。

だから、私は繰り返し繰り返し、S・V・O・Cと生徒に声をかけ続けます。
いつか、その意味が、その子の脳に届くことを信じて。




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