たまりば

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2018年03月07日

それぞれの夢を心に宿して。

それぞれの夢を心に宿して。


今年は芸人さんが大学受験をしたのが話題になりました。
テレビ番組の企画で東大受験を目指し、センター試験を受けた方もいました。
結果は、
国語148/200(現代文92古文35漢文21)
英語76/200
数学1A32/100
数学ⅡB20/100
地理B66/100
日本史B51/100
生物基礎30/50
地学基礎25/50 だったとのこと。

この数字をどう読むかは難しい問題です。
その人の基準がどこにあるかによって見え方は違ってくると思うのです。
「結局、国語しかできていない。本当に勉強したのか?」
と言うことも可能です。
特に英語と数学の得点は胸が痛いです。
基礎を積み上げ、理解を深めないと、なかなか伸びないのがこの2科目です。

あの番組を見ていた人の中には、合格が可能なのではないかと本気で思っていた人もいたかもしれません。
「たった3か月で偏差値が30上がった!」という宣伝文句を見ることもそう珍しくない昨今です。
それは本当に可能なのではないか?
宣伝文句に煽られ、慣らされて、
簡単なことのように感じてしまう人もいると思います。
それは危険なことです。
実際にはかなり珍しい事例ですから。
だから話題になるのです。
とはいえ、それは絶対に不可能なことでもない。
そのはざまで、生徒本人も保護者の方も心が揺れてしまうのかもしれません。
自分の子どももそれは簡単にできると信じたい気持ちになってしまうこともあるのでしょうか。

最近、教育関係のネット記事など拾い読みしていて、1つ興味を引いたのが、学力の低い子たち向けの学習プログラムを提供する会社が業績を上げているという記事でした。
教育関係というよりもビジネス記事です。
その学習プログラムを導入した塾に通う生徒たちは、各自、パソコンで勉強します。
アニメが多用され、クイズ形式で進行する学習プログラムには、パスワードを使って自宅の端末でもアクセスでき、繰り返し学習が可能。
平均で1割の得点増加が見られ、評判は上々である、とのこと。

・・・・1割?
学力の低い子で1割の得点増加?
それは、例えば、定期テストで20点の子が、22点になったということですか?
30点の子が、33点になったということですか?
え?
そんなことでいいんですか?
それ、誤差の範囲ではないんですか?
それで本当に「成績が上がった!」と喜んでもらえるんですか?
思わず記事を二度見しましたが、やはり「1割」と書いてあるのです。
普段ビジネス記事を書いている記者は、売り上げが1割上がることのような感覚でそれをとらえてしまったのでしょうか。

一方で、「3か月で偏差値30上昇」が簡単なことのように言われ、一方で、学力の低い子の得点が1割上昇したことが凄い成果であるように言われる。
この落差に、振り回されそうになります。

現実は、それと似ているようで、でも、それぞれに異なると思うのです。

今年、セギ英数教室は受験生が多く、まとまった結果を出しました。
高校入試では2015年度入試以来の成果です。
その間の数年に、受験生がいなかったわけではありません。
高校受験をした子はその間もいました。
合格しているのですが、それをこのブログに記すのはちょっと違うかなあと感じていました。
年に1人ずつで、ぽつんとした印象になってしまうのを懸念してのことでもあります。
でも、それだけではありませんでした。

ある子は、中学2年の冬に入会しましたが、直前の定期テストの英語の得点は、ひと桁でした。
公立中学の英語の定期テストで10点未満というのは深刻です。
提出物や授業態度で加点があったのでしょう、成績は「2」でしたが、いつ「1」になってもおかしくありません。
授業をしてみると、英語が全く読めないことがわかりました。
単語の識別がほとんどできないのです。
fatherとfamilyの区別がつかず、同じ単語に見えるようでした。
「faしか同じじゃないよ。アルファベットは文字の種類が少ないから、どんな単語も多少は似ているよ。それを見分けるんだよ」
と説明しても、
「えー、同じだよー」
と、にこにこ笑っていました。

とにかく、教科書の重要例文・重要表現をどんなことをしてでも丸暗記すれば、穴埋め問題くらいはいくらか得点できるようになるだろうか。
すぐに結果が表れないと辞めてしまう子もいますから、最初のテストの得点の動きは大切です。
しかし、その学校の定期テストの問題を見て、私は青ざめました。
リスニング問題を除く大問1はテスト範囲の文法問題、大問2はテスト範囲の重要表現、と穏当な出題でしたが、大問3以降は、都立入試問題と同じ形式の問題でした。
初見の長文読解問題と英作文です。
中学2年で、応用問題だらけの英語のテストです。
テスト範囲が直接反映されている配点は20点程度。
本当に英語力がないと太刀打ちできないテストでした・・・・。

公立中学の英語問題は、テスト範囲の問題しか出題されない場合、問題自体がワークブックのように単調で簡単なことがあります。
んなテストのための試験勉強しかしていない子は、中3になって突然、都立入試に向けての学力診断テストを学校で受けると、初見の英文を全く読めないため、普段の成績とはかけ離れて低い点数を取って慌てることになります。
極端な話、学校の英語の成績は「5」なのに、初見の長文を読めない子もいます。
その場合、学校の英語の成績は、その子の本当の英語力を表していません。
変にふわふわと高い内申のため志望校が高くなってしまうと、それに見合った入試得点を取れないため、結局、他校の受験生に競り負けてしまいます。

そういうことがありますから、学校の英語の定期テストに応用の長文読解問題があると、塾講師として、この学校の英語の先生は信頼できると感じます。
学校のテストに応用問題が出るのだから、教科書を離れた問題も解いていくべきだよねという話を生徒にしやすいですし、生徒も納得してくれます。
しかし、2割がリスニング、6割が応用問題で、しかも都立入試形式となると、学力の低い子は、どこから手をつけていいかわからない状態です。
これは厳しい・・・。

それからのことは、思い出すだけで胃酸が逆流してきそうです。
週に1回塾に通うだけで英語力がつくわけがないのです。
宿題の質、そして、宿題を解いている学習時間の質が学力を左右します。
しかし、その子は独りで家庭学習ができる学力ではありませんでした。
文法の基礎からやり直すといっても、中1の1学期の内容であるbe動詞と一般動詞の章で学習はほぼストップしました。
文法問題を解くときに、文法を考えて答えていくという学習習慣がなかったのです。
何となくそれらしい単語で( )を埋め、何となく英語っぽい順番で与えられた単語を並べていくだけなのでした。
問題を解くスピードは速いのですが、それは考えていないからでした。
常に当てずっぽうです。
正答はほとんどありませんでした。

適当に答えを埋めれば勉強した気分になれるので、文法の勉強はそれでも好きなようでしたが、長文読解問題は、中1向けの5行程度のものでも解いてきませんでした。
全く読めないというのです。
文法の宿題はやったのだから、長文の宿題はやらなくてもまあいいだろう、勉強はしている、と本人の中では辻褄が合ってしまう様子でした。
当てずっぽうに解いているだけの勉強が英語の家庭学習の全てでは、英語力はつきません。
( ;∀;)

一方、保護者の方は、わざわざ塾に通わせているのだから、効果があるのが当然と思っています。
そして、それは塾という存在への信頼でもありますから、その信頼には応えたい。
しかし、
「目標は私立単願です。40点とるだけでいいのです」
と言われてしまうと、それがどんなに大変なことかわかりますか、奇跡への挑戦ですよ、という気持ちにもなります。
1割アップどころの話ではありません。
得点を5倍にしろというのですから。

勉強が苦手な子どものテストの得点が1割アップしただけで喜ぶ保護者は本当に実在するのでしょうか。
10点が11点に。
20点が22点に。
30点が33点に。
それで喜んでいただけるのでしょうか。
私はそれで喜んでいただいたことはありません。
そんなことでは喜べないほど現実は厳しく、保護者の方も追い込まれているのです。

しかし、
「40点とるだけでいいのです」
と言っていただけたことはむしろ幸いだったと思います。
それには家庭の協力が不可欠です。
家庭学習の具体的な方法を私から提案できました。

それ以降、保護者の方もその生徒も、本当に頑張りました。
中3の2学期の定期テストでついに40点台を取り、無事に「2」をキープ。
その子は、私立単願推薦をもらうことができ、高校に合格しました。
内申に「1」があると、さすがに私立単願も難しいのです。
私立単願が不可能となれば、一般入試に賭けなければなりません。
入試で合格点が取れるようなら、そもそもこんな苦労はしないのです。


偏差値が高いとはいえない私立高校の単願推薦合格です。
しかし、私にとっては、今年の受験結果とはまた別の意味で誇らしい成果でした。
ただ、その凄さ、その価値はなかなか伝わらないと思い、ここには書きませんでした。
何しろ胃酸が逆流しそうな生々しい記憶でもあり、こうして時間が経過して、ようやくここに記しています。

勉強が得意で、もっともっと勉強を得意になりたい人も大歓迎です。
でも、勉強のやり方がわからず、結果が出せないでいる人も歓迎します。
一番上に記した、芸人さんのセンター得点に、
「何だこんな低い点。あったま悪いな」
と笑う周囲の人たちに同調して作り笑いを浮かべはしても、あれは勉強した人の得点だ、勉強したけれど夢かなわなかった人の得点だと読み取ることのできる人。

私と勉強しませんか?




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    Posted by セギ at 14:30│Comments(0)講師日記
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