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2023年09月23日

100a+10b+cの意味。十進法が、わからない。

100a+10b+cの意味。十進法が、わからない。

まずは、問題。

問題 3桁の整数がある。その数の百の位の数と一の位の数を入れ換えて整数を作る。もとの数から、入れ換えて作った整数を引いた差は、9の倍数であることを示しなさい。

典型題です。
まずは、正解から。

百の位の数をa、十の位の数をb、一の位の数をcとおくと、
もとの数は、
100a+10b+c
百の位の数と一の位の数とを入れ換えて作った数は、
100c+10b+a と表される。
よって、その差は、
(100a+10b+c)-(100c+10b+a)
=99a-99c
=9(11a-11c)
11a-11cは整数だから、9(11a-11c)は9の倍数である。
よって、もとの整数と入れ換えて作った整数との差は、9の倍数である。


特に問題ないはずなのですが、もとの数を、
100a+10b+c
と表すことから、既にわからない・・・、という子もいます。

もっと以前の、中1の「文字式」の学習で、
「百の位の数がa、十の位の数がb、一の位の数がcである3桁の整数の大きさを文字を使って表しなさい」
という問題も、当然、解けなかったのでしょう。

そういう子の答は、
a+b+c
となっていることが多いです。
「うーん。違いますよ」
と私が言うと、あわてて、
「abc」
と直したりします。
なぜ、aではなく100a、bではなく10bとしなければならないのか、わからないのです。

位取りの感覚、あるいは十進法の感覚が、その子の中で育っていない。
あるいは、その子の中で眠っていて、問題を解く際に結びついてこない。
そういうことのように思います。

位取りの感覚がその子の中で眠っているだけの場合、小学校の算数の問題に戻って考えると、覚醒することがあります。
小学校の算数では、新しい桁の学習に進む度に、以下のような問題を解いています。
例えば、千の位の数を初めて学習する際には、

次の( )にあてはまる数をこたえなさい。

2435=1000×( )+100×( )+10×( )+1×( )

あるいは、本質は同じで、見た目が異なる問題としては、

2435は、1000が( )つ、100が( )つ、10が( )つ、1が( )つ、集まってできた数です。

逆に、

1000が2つ、100が4つ、10が3つ、1が5つ集まってできた数は、(    )です。

という問題も見たことがあると思います。

いずれにしても、これを答えられない小学生はほとんどいないのですが、この問題が何の理解を確認しているのかについては、わかっていない子のほうが多いのかもしれません。
自動的に答を出してしまい、問題の意図を理解していないのです。
「大きな数を勉強するときに最初に必ず出てくる簡単な問題」
「つまらない問題」
「どうでもいい問題」
として自動的に処理している子が多いと思うのです。

でも、これこそが、桁の概念の根本、十進法の根幹を確認している問題なのです。

頭の回転がある意味速く、その分だけ、頭の歯車がうわ滑りする傾向のある子は、こういう問題は、問題文をろくに読まずにちゃちゃっと解いてしまいます。
一方で、中学生になって、
「百の位の数がa、十の位の数がb、一の位の数がcである整数の大きさを文字を使って表しなさい」
という問題を解く際に、その正解が、
100a+10b+c
であることの意味がわからない。
なぜ、a+b+cではなく、100a+10b+cなのかが、わからない・・・。

そういう子に、
「小学校でこういう問題を解いたでしょう?」
と、問いかけ、

435=100×( )+10×( )+1×( )
の正解が、
435=100×4+10×3+1×5

であることを確認した後で、
100a+10b+c
と見比べさせると、
「ああっ!」と覚醒することがあります。
小学校のときに何度も解かされた「アホみたいな問題」の本当の意味に気づいたのです。


しかし、これでもまだ覚醒しないこともあり、ここからが、私と生徒との格闘の始まりです。
小学校で数理の基盤を身につけてこなかったツワモノが相手の格闘となります。

「例えば、432円の買い物をするときに、お金はどんな払い方をするかな?」
百円玉を4枚、十円玉を3枚、一円玉を2枚。

これが期待する模範解答なのですが、まあ、そんな答は返ってきません。
「お金はお母さんが払う」
「・・・ええと、自分で払うことは、ないのかな?お小遣いはもらっていないの?」
「もらってない。ほしいものは、お母さんと一緒に買う」
「・・・なるほど。お母さんはどういうお金の払い方をしているかな」
「カードかスマホ」
「・・・ですよねえ」

中1くらいですと、こういうことはよくあることです。
そして今後は、現金払いのさらなる衰退とともに、現金に対する実感から算数の基本を理解するということは、もっと難しくなっていくだろうと想像されます。
百円玉1枚と、一円玉1枚とでは価値が違う。
それは、桁が違うから。
1円玉が10枚集まると、それは十円玉1枚と同じ価値になり、十円玉が10枚集まると、それは百円玉1枚と同じ価値になる。
十進法の具象化として、これほどわかりやすい話はなく、子どもの頃に脳の奥までしみ込むはずのことが、何もしみ込まずに終わるのです。
何でもお金にたとえてものを考えるのも何だかなあとは思いますか、お金にたとえても何もイメージできないというのも残念な話です。
お金も、デジタル的な数字の羅列となり、実感を伴わない・・・。


これとは少し違う話ですが、アナログ時計が読めない子。
それどころか、アナログ時計を読めない大人もいます。
アナログ時計の凄いところは、針の回転が時間の進行を表すという「置き換え」を頭の中で行っているという点です。
時間の流れというものを、針の「回転」で表しています。
アナログ時計が読めない人は、その根本を理解していないため、
「短い針は意味がわかるけど、長い針が3のところにあるときに3分じゃないのが、意味がわからない」
と言ったりします。
それに対して、「5倍すればいいんだよ」というアドバイスをする人もいるようですが、それもまた何だか怖い会話と感じます。
双方がデジタルでものを言っているという気がするのです。
アナログ時計は、そういうことではなく、針の回転で時間の流れを把握するのです。
針が1回転するときの時間の流れを全体と見たとき、今、どの割合で時間が進行しているかを、針の回転で読み取ることが可能です。
だから、5倍しなくても、ぱっと見ただけで、時間がわかるのです。

時間の流れを針の回転に置き換える。
この置き換えが頭の中で自然なものになっている場合、例えば、中学受験の受験算数で、「数量を線分や面積に置き換える」ということも特に違和感なく理解しやすいと思います。
子どもは抽象思考が苦手なので、小学生に方程式を教えても理解できない場合が大半です。
だから、数量を目に見える形にします。
それが線分図です。
しかし、数量を線分で表すという根本を理解できない場合、線分で説明されても、何をやっているのか全く理解できない可能性があります。
なぜ、仕入れの値段を線分で表すのか?
本のページ数全体を線分で表すのか?
値段もページも、線じゃないのに・・・。
線ではないものを線で表す意味がわからない・・・。
そういう状態の場合、自分で線分図を描いて問題を解くことなど、できるはずがありません。


さて、十進法の話に戻りますと、十進法が理解できないと、高校数学で「n進法」を学習しても、怖いくらいに意味がわからないということになります。
そもそも、自分が普段使っている数が十進法だということがわからないのです。
2進法とか3進法とか言われても、意味がわかるわけがないのです。
以前も書きましたが、ある高校生が、
「普段使っている数は、十進法じゃない。だって、10の次は11で、次は12で、数は無限に続いていくんだから、十進法じゃない」
と私に言ったことがあります。
十進法が当たり前になりすぎて、かえって理解できなくなっているのでした。
ここを覚醒させるのは、本当に大変でした。


しかし、デジタル表記がすべて悪いとは限りません。
デジタル表記を活用すれば簡単に解ける問題もあります。
以下は、「場合の数」の問題。

問題 0、1、2、3、4の5種類の数字を用いて表すことのできる4桁以下の自然数は全部で何個あるか。ただし、同じ数字を何回用いても良いものとする。

4桁、と限定されたらむしろ簡単なんだけれど、4桁以下、と言われると難しい・・・。
4桁の場合、3桁の場合、2桁の場合、・・・と場合分けして求めないとダメなのかなあ?

それでも求められますが、もっと簡単な求め方があります。
これは、デジタル表記で考えたらいいのです。
たとえば、「0123」という数は、実際には3桁の数123だ、ととらえればいいのです。
この場合、一番大きな桁にも0を用いていいということになります。

では、千の位に使用できる数字の種類は、0を含めて、5通り。
百の位も同様に、5通り。
十の位も5通り。
一の位の5通り。
したがって、5×5×5×5=625
ただし、この中には、すべてが0である「0000」、すなわち0が含まれています。
0は、整数ですが、自然数ではありません。
これを除きます。
625-1=624
答は、624個です。

デジタル表記を活用するからこそ、簡単に解くことができました。





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