たまりば

地域と私・始めの一歩塾 地域と私・始めの一歩塾三鷹市 三鷹市

2023年08月26日

自分のミスを自分で修正する力。

自分のミスを自分で修正する力。

生徒と大学入試共通テストの模試問題を解いていたときのことです。
英語力のある子ですので、共通テストの英語リーディングなら、100点満点のうち90点以上は取りたい。
共通テストは、易しい英文を80分で大量に読まなくてはなりません。
そういう意味で、ペース配分の難しさはありますが、大問1の最初の英文などは、中学生でも読めるものです。
その模試も、最初の英文は、非常に易しい内容でした。
それは、学校の掲示板に貼られていた英文という設定でした。
日本語に訳してみます。

ぼくは、1年間ここで学ぶためにロンドンから来ました。
ぼくの日本語の能力は基本的なものですが、みなさんの助けで、すぐに向上できると思います。
ぼくは新しいロックバンドを作るために仲間を探しています。
ぼくは故郷で日本の音楽を沢山聴きました。
そして、去年、有名な日本のミュージシャンの素晴らしいコンサートにいくつか行きました。
すごくかっこいいと思いましたが、歌の意味がわかりませんでした。
そういうわけで、ぼくは日本語を学び始め、ここに来ることに決めました。
ぼくは、自分たちのバンドが日本語と英語でパフォーマンスをするのを望みます。
そうすれば、あなたの英語もきっと上達するでしょう。


高校三年生が読む英文としては、非常に易しい。
ところが、英語秀才が、この英文をなかなか読み取れなかったのです。
状況と人間関係がよくわからない、というのです。
設問の大半にはかろうじて正答していましたが、難しかったし時間がかかったというのです。

こんなシンプルな英文のどこに落とし穴があるのでしょう?

実は、この告知文の上には、短い英文が載っていました。

You visited your school bulletin board where students often share information.
あなたは、生徒たちがよく情報を共有する学校の掲示板を訪れた。

ここで、難しい単語はただの1語「bulletin」ですし、これは読解の妨げにはならないと思います。
こんな1語くらい、意味がわからなくても、前後から推測できます。
「生徒たちが情報を共有する」bulletin board。
それは、掲示板でしょう。
内容から考えても、これは学校の掲示板に貼られた文章です。

ところが、その子は、bulletin を、Britain と読み間違えたのです。

私が、生徒のその誤読に気づくまで、本当に時間がかかりました。
そんな誤読、起こるわけがない。
大文字で始まっていないし、スペルもかなり異なるのだし。
そもそも、そんな勘違いをするような学力の子ではないのに、なぜ?

でも、どんな誤読も、起こるときは起こるのです。

school Briten board って、何?
そもそも、その言葉が奇妙なので、そこで自分の誤読に気づいても良さそうなのですが、誤読しやすい子は、そこで引き返さないのです。
「これは、イギリスの掲示板」
と、そこは断定してしまうのが、誤読のメカニズムです。
そうなると、この告知を書いた少年は、イギリスにいて、イギリス人の生徒たちに向けて告知しています。
この少年がイギリスにいると断定したうえで、上の文章をもう一度読んでください。
わかりにくいです。
矛盾に満ちています。
この少年は、いったい何を言っているんだろう?
ロンドンから、イギリスのどこか他の町に、やって来たのだろうか?
それで何で日本語がどうとか言っているのだろう?
どういうこと?
それで、バンドを結成する?
バンドを結成するために、この町に来たの?
日本語と英語の両方を使うバンドを、イギリスで?
この少年は、誰に向かって何を言っているの?

この意味不明な状況を、論理的に飲み込もう、何とか辻褄を合わせようとして読むので、ひどく読みにくく、意味をつかみにくい英文になったようなのです。
いや、そんな無理な辻褄合わせをするより、最初に戻って、自分の誤読に気づけばいいだけなのに・・・。

こんな誤読のため、大問1の読解に時間がかかってしまい、焦りが生じて、あとはドミノ倒し。
得意な英語でこの子がなぜこんな出来なんだろう、という得点になってしまっていました。


一般に、英語は、スペルの似た単語が多いです。
例えば、through , thought , though などは、よく似たスペルの語です。
ただ、これらの単語は、英文の中で出てくる場所が異なります。
意味も大きく異なるので、文脈上、どの単語であるか特定しやすい。
だから、本来、誤読する可能性は低いのです。
英語が得意な人は、これらの語のスペルが似ていると感じたことすらないかもしれません。
それぞれ、全く別の単語として認識できますので、紛らわしくないのです。

ところが、誤読する子もいます。
まず、音読できません。
訳も、意味を取り違えて変な訳をしてしまいます。

一つには、個々の単語を把握できていない、ということがあるかもしれません。
thought という単語が、何かの過去分詞だったのは、ぼんやりと覚えている。
一方、through という前置詞や、though という接続詞は、その存在を把握していない。
何度も教科書その他の英文に出てきている単語なのですが、前置詞や接続詞を無視する心理的傾向があるようで、覚えられない。
前置詞といえば、on , at , in , to , from くらいしかイメージにない。
それも、言われればわかるけれど、自分では書き忘れる。
接続詞といえば、and , but , because くらいしかわからない。
それ以外のものもあると言われると、何となく不愉快で、嫌な気分になる。
もやもやと、似ているものがあったようだという印象しか残らない・・・。
英語が苦手な子の典型的な状態です。

これは、基礎力不足なので、誤読が大きな課題、というわけではないと思います。
根本の問題は、英語力不足です。
英語学習にそれなりの時間をかけて、努力をして脱出してほしいです。


気になるのは、そうではない誤読。
十分な力があるのに、なぜ、ふっと奇妙な誤読をしてしまうのか?
それもまた英語力の一種なのだといってしまえばそれまでなのですが、それでは可哀相です。
努力しているのに、なぜ、そうなってしまうのか。

振り返ると、私も、生徒の前で音読するときなどに単語を読み間違うことがあります。
でも、すぐに気づいて、読み直します。
すぐに、あ、間違えた、違う単語だと気づくのです。

間違えることは、ある。
でも、自分で気づく。
自分が間違える可能性を想定しているからです。

一方、誤読をしやすい人は、自分が誤読をしたことに気づかず、そのまま突き進んでしまう傾向が強いです。
自分が何か読み間違えているんじゃないかと思うことがないようなのです。

誤読しやすい人は、自分が間違える可能性を想定していないのではないか?
何かおかしいと感じたときに、そのままの方向で辻褄合わせをしてしまい、後戻りできない。
自分のやったことを点検する機能が働いていない。
先ばかり見てしまい、視野が狭い。
では、なぜ、視野が狭いのか?
それは、経験値が足りないからでしょうか。

そうなのだとすれば。
本番の前に、できるだけ失敗しておくことです。
そして、自分が誤読しやすいことを、自覚しておくこと。
自分の特徴、特性を知っておくことは、最大の武器です。




  • 同じカテゴリー(英語)の記事画像
    英語の重要文を暗唱する学習法。
    誤読のメカニズム。主観で文章を読む子。
    質問しても、しなくても、大丈夫。
    共通テストで失敗したと感じたら。2024年1月。
    「覚える」ということが、何をどうすることか、わからない。
    英語長文読解。具体例から論理を推理する。
    同じカテゴリー(英語)の記事
     英語の重要文を暗唱する学習法。 (2024-04-18 12:08)
     誤読のメカニズム。主観で文章を読む子。 (2024-03-20 10:57)
     質問しても、しなくても、大丈夫。 (2024-02-25 14:59)
     共通テストで失敗したと感じたら。2024年1月。 (2024-01-16 14:24)
     「覚える」ということが、何をどうすることか、わからない。 (2023-11-24 12:15)
     英語長文読解。具体例から論理を推理する。 (2023-10-20 13:13)

    Posted by セギ at 14:02│Comments(0)英語
    上の画像に書かれている文字を入力して下さい
     
    <ご注意>
    書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

    削除
    自分のミスを自分で修正する力。
      コメント(0)