たまりば

地域と私・始めの一歩塾 地域と私・始めの一歩塾三鷹市 三鷹市

2023年09月12日

クールな計算のできる子は伸びます。

クールな計算のできる子は伸びます。

数学力をどのように判断するか、さまざまな観点があると思いますが、「思考力」「計算力」の2点だけで見ても、
思考力も計算力もある子。
思考力に乏しいが、計算力のある子。
思考力はあるが、計算力に乏しい子。
思考力も計算力も乏しい子。
の4つのタイプに分かれます。
それもそれぞれどの程度なのか、グラデーションのある話ではありますが。

思考力に乏しいが計算力のある子は、数学的思考のやり方に本人が気づくことさえできれば学力が飛躍します。
中1の段階では数学の成績は「3」で、言うことも何だかトンチンカンだけれど、計算ミスはほとんどない。
計算する様子を見ていると、地道でもっさりしたやり方ではなく、クールな計算方法を身につけている。
暗算するところと、しっかり書いていくところのメリハリがある。
こういう子は、いずれ大バケする可能性があります。
問題を解く過程で対話を繰り返しながら、いずれ伸びると呑気に構えていると、予想通りに中3では「5」になった。
そんな子を、今まで何人も見てきました。
計算を正しくできるというのは、やはり数学的には何らかの達成を見せているのだと思います。
計算をする際に使っている論理を思考に生かせていないだけで、思考力がないわけではなかったのだ、ということかもしれません。

「クールな計算方法」を身につけているのが鍵です。
計算をこのように論理的にこなしているのに、問題を解く際になぜその思考力を使わない?
そのように感じる子は、いずれどこかの回線がつながって何とかなるだろうという予感がするのです。

反対に「地道でもっさりした計算」というのは、しかし、多くの子がやってしまう計算です。

例えば、25000×5000 といった計算。
これは、25×5を計算して(暗算もできるはずです)、それに0を6個つけたらいいですね。
小学校でも教えている計算方法です。
習ったときは、誰でもできます。
しかし、その単元が終わると、それをコロッと忘れて、以後ずっと、0の大行進的な筆算をしてしまう子がいます。
そして、桁がズレてしまい、誤答します。
そういう計算をしているのを発見する度に助言しますが、しばらく経つと、また同じ0の大行進を行ってしまう子は多いです。
つまりは、なぜそれで計算できるのか、本質を理解していないのだと思います。
そういう解き方があることを習ったときだけそのように計算しますが、根本を理解できていないのです。

10進法と桁に関する感覚が脆弱なのだと思うのです。
10個たまると、次の桁に上がる。
10倍すると、次の桁に上がる。
そういう感覚が育っていないのです。
さらに、交換法則が理解できていないのです。

25000×5000
=25×5×1000×1000
=125000000

数字を上のように分解した上で、さらに交換法則・結合法則を利用して計算するのが、この計算方法の意味です。
やり方だけ覚えるのではなく、その意味がわかっている子は、学習した後は、ずっとこの計算方法で計算します。
意味がわかっていない子は、やり方をすぐ忘れてしまい、このやり方を自分のものとすることができないのです。

また、例えば、312×205 といった計算。


  312
 ×205
 1560
624
63960

といった筆算をすれば良いのですが、

  312
 ×205
 1560
 000
624
63960

といった余計な1行を書かずにいられない子もいます。
これも、省略するよう小学校で教えられているのですが、それを省略できることをすぐに忘れ、型通りに計算してしまうのです。

また、例えば、25000÷5000 といった計算。
割られる数と割る数とに、それぞれ同じ数をかけても、あるいは同じ数で割っても、商は同じです。
だから、
25000÷5000
=25÷5
=5
と暗算できます。
慣れてくれば、0がついたままの状態でも桁を読むことで暗算できます。
しかし、これも、0が3個ついたまま、もっさりした筆算をする子は多いです。
25000÷5000=25÷5 であることは、小数のわり算を行うためにも重要な考え方です。
例えば、2.5÷0.5 をなぜ小数点を移動して計算するのかは、上の考え方がもとになっています。
小数点の移動は、すなわち、割られる数と割る数とをそれぞれ10倍して、25÷5 として筆算しているのです。
しかし、そのことを理解せず、ただ筆算のやり方だけを覚えている子は多いです。
計算は意味を失い、ただの作業手順となっています。

これは学校教育が悪いのではありません。
学校の授業でも、教科書でも、このことは強調されているのです。
ただ、本人が、やり方しか覚えない。
小学校でやり方しか覚えなかったため、中学生・高校生になって、論理的思考についていけなくなってしまうのです。
どれだけ意味を説明されても、それをまだるっこしいと感じて、
「やり方だけ教えて」
「やり方だけ知りたい」
となってしまうのです。

頭の回転が速いように見える子に、案外このタイプが多いので、苦慮するところです。
本人の頭の働かせ方の癖なのでしょう。
一方で、どんなに小さなことでも、意味を知りたいタイプの子もいます。
そして、意味を知っている子は、時間が経っても、25000÷5000 といった計算では、同じ論理を利用し、スマートに計算します。
算数・数学が統一された論理で動いていることを実感しています。
数理の根本がわかっているというのは、そういうことだと思います。
中学や高校の数学で、何をして良くて、何をしたらダメなのか、自分で判断できなくなるのは、やり方だけ覚えてきたけれど意味を理解していなかったからなのです。

また、例えばこんな計算。
-27+18-33+26
中1の最初に学習する「正負の数」の計算です。
これも、同符号の計算をまとめてやれば楽であることを学校で指導されています。
=-60+44
=-16
というように。
しかし、これを、
-27+18-33+26
=-9-33+26
=-42+26
=-16
と、順番通りに計算しなければ答えが出せない中学生もいます。

順番通りでなければ計算できないと思っているのか?
数字の前にある符号は、計算記号ではなく、その数のもつ正負の符号であることを、学習が終わると忘れてしまうのか?
つまり、その子にとって上の式は、小学校からお馴染みのたし算と引き算の式のままで、中学で新しく学習した、
(-27)+(+18)+(-33)+(+26)
と見ることができないのではないかと思うのです。
「正負の数」の学習の最初は、このように(  )がついています。
省略して書くことができるというだけで、(  )は常に存在すると思って計算して良いのです。
全てたし算ですから、交換法則も結合法則も利用できます。
そのことを、忘れてしまう。
あるいは、最初から理解していない。
だから、法則が使えることがわからない。
「え?ひき算って、順番変えたらダメなんじゃないの?」
という小学生の感覚に戻ってしまうのだと思います。

-27+18-33+26
=-9-33+26
=-42+26
=-16
という順番で正確に計算している子は、計算力はあるのではないか?
確かに「人間電卓」的な計算力はあると思います。
しかし、論理的思考力を感じさせるものではないのです。

交換法則も結合法則も分配法則も、桁移動の仕組みも、全ては小学校で学習しています。
大切なことは小学校で学んでいるのです。
しかし、大切なことを学んでいることに気づかない。
大切なことを、大切なことだと認識できず、記憶の中からあっさり消して、筆算のやり方や公式の丸暗記のみ行う子は、計算の過程にそれが表れます。
答は合っているけれど、もっさりした計算です。
そうではないクールな計算方法を身につけている子は、数学的思考が可能な子、いずれ大バケする子、と感じるのです。

一方、思考力はあるが計算ミスの多い子というのも存在します。
計算のやり方がわからないわけではありません。
ただ、雑なのか、正確さを保てないのか、計算の正答率はかなり低い。
計算問題を正答できるかどうか五分五分ということもあります。
しかし、理解力や思考力があるので、座標平面と図形の問題、動点に関する問題、図形の証明問題、円と三角形の相似に関する問題のような、数学嫌いな子が避けたがる問題も自力で解いていくことができます。
ただ、計算は合わないことが多いです。

なぜケアレスミスをそれほど繰り返すのか?
特定の計算でミスをしやすいのならそこを改善すれば良いのですが、多種多様なミスをその都度新たに繰り出してくるタイプの子が多いのも特徴です。
ある日は数字を書き間違い、ある日はひき算なのにうっかり足してしまい、ある日は符号を書き忘れる・・・。
考えることに夢中で、手元がおろそかになっているのか?
式を書いている間に、他のことを考えているのではないか?
思考力はあるが、集中力が足りないのか?
さまざまな理由が考えられますが、受験を機に解消される子と、それでは解消されないまま高校生になってしまう子とがいます。

ケアレスミスをしやすい傾向は、残念ですが非常に直りにくいものです。
計算ドリルを何冊解いても、目立った改善は見られないことがあります。
あとは、ミスしやすい自分と折り合いをつけながら、それを含み込んで点数を読んでいく。
複雑な計算過程を踏まないよう、ミスしなくて済む解き方を選ぶ。
そういうことで対応していくしかない場合もあります。

多少の改善はみられても根本的には直らない。
どうにも精度が低く、自分でミスに気づいて直すリカバーの力も乏しい。
この計算力を前提としてやっていくしかない、と感じることもあります。
本人が一番嫌な思いをしているのですから、自覚すれば直るというものではないのです。
まして、それを叱ったりしても、直りません。
誰にも苦手はあります。
その代わり、思考力を伸ばすだけ伸ばす。
基本問題でも失点してしまう分、テストの後半の応用問題で部分点を取る。
そういう得点の取り方を考えていくのが現実的ではないかと思います。
また、そうやってあまり思いつめないようにしていると、前よりは改善されていることもあります。




  • 同じカテゴリー(算数・数学)の記事画像
    倍数とあまりに関する受験算数の問題を、高校数学で解く。
    数学で壁を越えられない子のやりがちなこと。
    通過算の難問。
    中1数学「正負の数の乗法」。旅人は東を目指す。
    考えて問題を解く習慣のない子。
    図形問題の攻略。
    同じカテゴリー(算数・数学)の記事
     倍数とあまりに関する受験算数の問題を、高校数学で解く。 (2024-04-23 12:18)
     数学で壁を越えられない子のやりがちなこと。 (2024-03-31 18:25)
     通過算の難問。 (2024-03-26 17:35)
     中1数学「正負の数の乗法」。旅人は東を目指す。 (2024-03-12 12:23)
     考えて問題を解く習慣のない子。 (2024-03-06 13:57)
     図形問題の攻略。 (2024-02-18 17:25)

    Posted by セギ at 18:33│Comments(0)算数・数学
    ※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
    上の画像に書かれている文字を入力して下さい
     
    <ご注意>
    書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

    削除
    クールな計算のできる子は伸びます。
      コメント(0)