たまりば

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2023年06月14日

高校数学の答案の書き方がわからない。数Ⅱ不等式の証明。

高校数学の答案の書き方がわからない。数Ⅱ不等式の証明。

画像は、タイマツバナ、かな。
散歩した都立小金井公園で咲いていました。

さて、今回は、数学の話。数Ⅱ「不等式の証明」から。

問題 2次不等式 x^2-4x+5>0 を証明せよ。

不等式の証明問題としては、基本中の基本です。
しかし、以下のような答案を書いてしまう子もいます。

x^2-4x+5>0
=(x-1)(x-5)>0
よって、
x^2-4x+5>0


証明問題の答案は何をどう書いていけばいいか、わからないのでしょう。
この答案は、0点です。

一番やってしまいがちなミスが、1行目です。
x^2-4x+5>0
という不等式は、これから証明すべきことなのに、1行目にするっと書いてしまうのです。
そして、それを書いてはいけないということを、理解できない子は多いです。
本人は、ただ問題文を書き写しているだけなので、それがダメだと言われる理由がわからないようです。
「いつも与式を書け書け、書き写せ、とうるさいのに、何で、このときはダメなんだろう?」
と思ってしまうのかもしれません。

これから証明すべきことは、まだ証明できていないことです。
いつもの、不等式を解く問題とは違います。
x^2-4x+5>0 が本当に言えるかどうかはまだ不明であり、それをこれから証明します。
それを事実であるようにするっと書いてしまうことはできません。

どうしても、与式を書きたかったら、答案の1行目に、
x^2-4x+5>0 を証明する。
というふうに書くことならできます。
それなら、意味が通じます。
そう解説すると理解してくれる子もいるのですが、数学の答案に日本語をそんなに書くのは変だと、謎の誤解をしている子もいます。
「えー、そんなのおかしい」
と言います。
数学は数学なのだから、日本語は無駄、不要、と思っているのでしょうか。
いやいやいや。
その考え方のほうが、おかしいんですよ。
早く気づいてください。
でも、反論してくれるだけましなのです。
にこにこ笑っているから、理解しているかなと思っていたら、心の中で勝手に却下している子もいます。
個別指導を受けても、それでは伸びないですよ。
せめて、議論しましょう。

次にまずいのが、2行目です。
x^2-4x+5>0
=(x-1)(x-5)>0
という、このイコールは、どういう意図で書いているんでしょうか?

その子は、以前、テストでこんな答案を書いたこともありました。

問題 方程式 2x^2+3x-15=x^2+2x-9 を解け。

2x^2+3x-15=x^2+2x-9
=x^2+x-6=0
=(x-2)(x+3)=0
=x=2 , -3

日頃、計算過程をしっかり書いていくことがなく、ノートは計算メモばかりの子でした。
イコールをまともに書いたことがないので、いざ答案を書けと言われると、どう書いていいのかわからなかったのでしょう。
学校の定期テストだけは頑張って答案を書こうとし、訳のわからないところにイコールを書きまくっていました。
こういう答案を書いてしまうと、
「解き方の手順だけは覚えているが、意味はわかっていないんだな」
と数学の先生に解釈されかねません。

そういうことが続くと、理系に進学したいと希望を伝えても、高校の先生にブロックされることがあるのです。
具体的には、数Ⅲを選択することを禁じられます。
それより手前、数Bを選択することを禁じられた子もいました。

本人の進路なのに、何でそんな勝手なことをするんだ!
という怒りもわかりますが、上のような答案を書いている子を理系に進ませないのは、高校の先生の温情かもしれません。
数学が全くわかっていない。
しかも、答案を読む者にそれが伝わっているということすら、本人には理解できていない・・・。
自分のどこがどの程度ダメであるか自覚できる子ならば、伸びる可能性があるのです。
しかし、これでは、おそらく、話が通じない・・・。
少なくとも、上の答案では、そう思われてしまいます。

例えば、テストでついうっかり 2+3=6 という計算ミスをしても、それで、
「数学センスがない」
「数学が全くわかっていない」
と言われることはないのです。
でも、上のような答案を書いてしまうと、ああ、この子は数学が全くわかっていないのだ・・・と思われてしまう可能性があります。

しかし、数学ができない子は、それを逆にとらえてしまう傾向があります。
2+3=6 としてしまうのはダメ。
一方、上のような、
2x^2+3x-15=x^2+2x-9
=x^2+x-6=0
=(x-2)(x+3)=0
=x=2 , -3
という答案は、答が合っているのになぜダメだと言われるのか、理解できない。

つまりは、答さえ合っていればいいという、小学校時代の感覚から一歩も前に進んでいないのだろうと思います。

いえ、小学校時代の算数だって、本当は、答さえ合っていれば良かったわけではないのです。
ただ、そういう形式のテストが多かったので、それで、本人はそのように勘違いしてしまったのでしょう。
その勘違いをいつまでもひきずって、数学にバージョンアップできず、気がつくと、もう数Ⅱを学習する段階にきてしまった・・・。
そして、突然、高校の数学の先生から、
「数学がわかっていない」
と断定される。
本人には、寝耳に水のことかもしれません。

上のような答案を書く子は数学センスがないとも、数学がわかっていないとも、私は思いませんが、しかし、課題があるのは事実です。
そして、それは、数学上の課題というよりも、もっと別の課題のように思います。

まずは観察力の問題。
塾に行かずに自学しているのだとしても、教科書の解答や学校の先生の板書を見れば、自分の答案と違うということに気づいてもいいはずです。
学校の先生が授業中に、「こういうふうに書きなさい」と注意している場合も多いでしょう。
そういうものを全部無視し、素通りしてしまうのです。
観察の目が粗いのでしょうか。
大体同じだから、大丈夫、と思ってしまうようです。
それは、やはり、能力の問題も多少あるかもしれません。
緻密さがないのです。
そこまで緻密さを要求されるはずがないと、本人が勝手にゆるい基準を設けてしまうので、世間の基準とのズレが大きい。
そのために、能力を疑われる結果になってしまいます。
やればできるのかもしれないのですが。

そして、改善する力の問題。
教科書の解答や学校の先生の板書と、自分の答案とに違いがあることには、気づいている場合もあります。
個別指導塾に通っていれば、「それは違うよ。こう書くんだよ」と指導が入るでしょう。
それでも、直さない。
いや、そんなの大差ない。
自分のやり方でいいはずだ。
と、なぜかそのように考える傾向のある子はいます。
自分は勉強ができるのに、何か、あれを直せ、これを直せと言ってくる。
もっと自分を認めてほしいのに。
何でこのセンセイは自分を認めないんだー。
・・・と思っているのだろうか?
と講師として首を傾げてしまうほど、何を助言しても直さない子は、いつの時代もいます。
そして、学校の先生に全否定され、数学のテストの点数がひどく低くなってから、現実に気づきますが、その頃には、何をどう直せばいいのか、本人の理解が追い付かなくなっていることがあります。

何を助言しても直さない。
それにも、実は理由があるのかもしれません。
日本語を多用した数学答案や、思考の過程を丁寧に書いていく答案の価値を、本人が認めていない可能性があります。
そこまでする必要はないと、本人が判断しているのだと思うのです。
その根本にあるのは何なのか?
それは単に、字を書くのが好きではない、ということだったりするのかもしれません。
子どもの頃、鉛筆を上手く持てず、字を書くのがつらくて不快だったのかもしれません。
高校数学を学習する年齢になっても、それをひきずってしまっている可能性はないでしょうか。

もう1つは固定観念でしょうか。
数学は、数学なんだから、数式だけ書いていくものだ、という固定観念。
とにかく左端にイコールをつけておけばいいんだ、という固定観念。
答案の中に日本語が入っているほうがおかしいんだ、という固定観念。
複雑な問題になればなるほど、答案の中に日本語が多く含まれていく、という事実を知らないのか。
あるいは認めたくないのか。
それも繰り返し説明しているのですが、固定観念が強過ぎて、自分の考えに反する内容は聞こえないようです。
あるいは、
「学校の数学のテストは、どうせ大半は答だけ書けばいい形式だし」
と思って聞き流している可能性もあります。
前半の計算問題は答だけ記入する形式ということもありますが、後半、記述形式の問題は必ずあります。
学校の数学の先生は、そこを見ています。
そして、ある日突然宣告されます。
「君は、理系には進めない」
その前に、立ち止まって、気づいてほしいのです。
自分で文系を選択するのは別に構わないですが、理系に進めないと宣告されるのは、嫌じゃないですか。


実は、正しい書き方がわからない、ということもあるでしょう。
正しい書き方の何がどう正しくて、自分の書き方の何がどうダメなのか、解説されても、理解が追い付かない。
どうでもいい、と思っていることが、理解の妨げになる面もありますが、理解しようとしても、理解できない。
イコールの意味や、証明ということの意味がそもそもわかっていないのです。
そういうことも、あると思います。


上の不等式の証明の誤答に戻ります。

x^2-4x+5>0
=(x-1)(x-5)>0

このイコールの使い方では、イコールの意味が理解できていないことが露呈しています。
これでは、何と何が等しくて、何が>なのか、意味不明です。
そのことが、自分で書いていてわからないのです。

x^2-4x+5
=(x-1)(x-5)>0

これならば、答案としては誤答ですが、イコールの使い方は間違っていません。
でも、上の書き方とこの書き方の何がどう違うのかよくわからない、という人がいます。
イコールの意味のような根本の概念になると、小学生の頃に脳の奥までしみ込んでよく理解しているのでない限り、後になって学習して使いこなすのは難しいのかもしれません。
絶対に不可能だとは思いませんが。


ところで、この答案は、答案の書き方がおかしいだけでなく、解き方そのものも間違っています。
因数分解としても、間違っていますし。
x^2-4x+5 は、実数の範囲では因数分解できません。
因数分解できたところで、左辺>0 など証明できませんし。
x-1、x-5のそれぞれが正の数か負の数かわからないのですから、その積が正の数か負の数かなど、判断がつきません。

では、どうすればいいのか?
どうすれば、左辺が正の数であることを示せるのか?

「因数分解ではありませんよ。平方完成をするんだったでしょう?」
「・・・」
「私の言っていることが、わかりますか?頭の中で漢字変換できますか?因数分解ではなく、平方完成」
「・・・」
平方完成と板書して、指さします。
「言ってみて。リピート・アフター・ミー。平方完成」
「ヘーホーカンセー・・・。あっ・・・!」
「わかった?やりましょう、平方完成」

やりましょう、平方完成。

x^2-4x+5
=(x-2)2-4+5
=(x-2)2+1>0
すなわち、
x^2-4x+5>0

これが正解です。

x-2という( )の中の値は、正か負かわかりません。
しかし、2乗すれば、どちらにしても正の数になります。
だから、(x-2)2は、正の数です。
+1は勿論正の数です。
正の数と正の数の和は、必ず正の数です。
だから、左辺>0です。
もっとも平易なタイプの2次不等式は、このように証明されます。

なぜ、この問題が解けないのか?
課題としては、
「実数を2乗した数は必ず正の数」
「正の数と正の数の和は、正の数」
を、発想できないことです。
解説されれば理解できる。
しかし、解説されないと理解できないのです。
本人の中に、そういう知識がないのだと思います。
問題の解き方のストックとして、頭の中に入れておきましょう。

また、本人としては解説されてやっと理解できるそんなことを、証明の答案の中ではほとんど書いていないことが納得できない、ということもあるようです。
わかりきったことを書かないでいると色々注意されるのに、そういうことは、書かなくてもいいという。
そのバランスがわからない・・・。

いや、「実数を2乗した数は正の数だから」「正の数と正の数の和は、正の数だから」と答案の中に書いてもいいんですよ。
それを書いたら減点される、ということはありません。
でも、そんな数学的常識は書かなくていいことになっているのです。

つまり、数学的常識が身についていないため、本人のバランス感覚が数学の世界の常識と違うのです。
これは、数学的常識を身につけていくことでしか解決のつかないことです。
練習を重ねることで、自分の中の常識を変えていきましょう。
数学的に非常識なのは、練習不足が一番の原因です。
問題を解く度に模範解答を読んで、それによって数学答案の書き方と数学的常識を身につけていきましょう。




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