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2022年12月16日

英語が下手の横好きな子の課題。

英語が下手の横好きな子の課題。

英語は数学と異なり、「下手の横好き」な子も多いです。

数学の場合は、数学のテストの点数が低いのに数学が好きという子に出会うことはほとんどありません。
しかし、英語は、テストの点数が低いのに英語が好きという子がいます。
テストの点数が低く成績も良くはないのに、「自分は英語が得意だ」と思っている子に出会うこともあります。
中学校の英語の成績は5段階の「3」なのに。
そういう子は、ペーパーテストで得点できないことには目をつぶり、音声英語がそこそこ得意であることに焦点を絞って、自分はリスニングやスピーキングは平均以上にできるから英語は得意だと思っているふしがあります。

「そこそこ得意」というところが重要であり、突き抜けて得意なわけではありません。
典型的なのが、小学校の途中まで海外で過ごしていた子です。
無論、発音はいいですし、リスニングもできます。
でも、文法問題は間違いだらけ。
英文を書くと、スペルミスだらけ。
小学校の途中までの海外経験ですから、そういうことになってしまいます。

逆に考えたらわかりやすいと思います。
日本の小学校に途中まで通っていた外国人の子どもを想像してみてください。
その子は、日本語を聴き取れるし、話せるでしょう。
でも、日本語の文章をどこまで読み取れるかといったら、それは、小学校の途中くらいまでの読解力しかないでしょう。
漢字も、小学校の途中くらいまでの漢字しか書けないでしょう。
その後もこつこつと勉強し続けたというのでない限り。
海外で過ごした日本人の子どもも同じことです。
子どもの英語力なのです。

そして、本人としては自信のよりどころであるスピーキングもリスニングも、子どもの英語力ですから、鍛えない限り、そのままです。
日常会話には苦労しないですが、大人の話す英語ではありません。
英語に教養を載せていくことができません。

しかし、日本人の英語講師がこうした子を指導するのは難しいです。
私のような日本人英語講師は、発音の正確さで負けます。
子どもは、自分の強みを絶対のものと思いますから、そんな日本人英語講師は尊敬しません。
こういう子の指導をするのは、外国人講師か、日本人でもネイティブ並みの発音のできる人が良いでしょう。
そういう人にダメ出しされれば、謙虚になれる可能性があります。
しかし、そういう講師は、スピーキングやリスニングの能力を高く評価し、ほめそやす傾向があります。
読解力の低さや語彙の乏しさ、文法の理解不足を徹底的に突いて鍛える、ということはあまりないのです。
そこを強くやってくださいと保護者から要求する必要が出てきます。
定期テストで何点以上ほしい、あるいは英語のあの資格でスコアがいくつ以上ほしい、といった具体的な要求を講師に求めていく必要が生じます。
そうでない限り、「お稽古ごと英語」の域を出ず、本人は楽しく授業を受けるでしょうが成績は変わらず、ということになりかねません。


もう1つ厄介なのが、キッズ英会話教室に通って英語が得意なつもりでいる、「もどき」な子どもたちです。
本物の帰国生ほどのスピーキング能力もリスニング能力もないのですが、なぜか「英語は得意」という自信だけはゆるがない子たちです。
小学生で英検3級に合格し、中1の1学期の英語の成績は5段階で「5」だったけれど、それ以後はパッとしない子たちです。
英語も学校で学習する教科の1つなので、結局、勉強ができる子が英語もできるようになっていきます。
そうした子たちに簡単に追い抜かれていくのですが、本人はなかなかそれを認めません。
認めたくないことは認めない。
そんな事実は存在しないかのようにふるまいます。
学校の英語の成績が「3」なのは、多分、授業に積極的に参加していないから。
英語の先生に嫌われているのかもしれない。
英語力以外のよくわからない観点で評価されているから「3」なだけで、本当は私は英語ができる。
そんなふうに思っている子もいます。
・・・いや、そもそも中学の定期テストの点数が80点未満では、「4」なんか取れませんよ?

英文の精読や、文法事項の学習、単語のスペル練習には興味を示さない。
子ども向けの英語のYouTubeを見るのが英語の勉強。
・・・それが楽しいのなら別に止めませんが、それだけでは、ペーパーテストの得点は上がりません。

学校の英語の成績は「3」だけど、英検準2級は落ちたけど、私は本当は英語ができる!

そんな、訳のわからない「無冠の帝王」みたいな感覚でいられても。
それ、英語ができるとは言わないですよ。
いつまでもいつまでも日常会話の英語にとどまって、それについては得意意識があって、それが本人の思う「本当の英語」。

・・・「本当の英語」って何なんですかね?

知らない単語の意味は、そのときに覚えてくれたらそれでいいですが、日本語に直しても意味を理解できない子もいます。
例えば環境問題に関する文章。
「温室効果」と日本語にしたところで、その言葉の意味がわからない。
「温室効果ガスが熱を吸収し、大気に向けて放出するので、地表の気温が下がらない」という文の意味がわからない。
また、「オゾン・ホール」の意味がわからない。
温室効果ガスとオゾン層を同じものだと思っている・・・。

最近のテストは、表面的な英文の字面だけで正解が出せるような出題は減っています。
本文の内容を受けての4択問題は、本文に書いてある内容を別の言葉で言い換えたものが正解であることが多いです。
しかし、本文の内容がそもそも理解できないのに、それを別の言葉で言い換えられても、理解できるはずがありません。
だから、本文と同じ表現を使っている選択肢に簡単に騙されて、誤答を繰り返す子もいます。

それでも、私は、本当は英語ができる!

・・・え?
どこらへんが?

しかし、そうした子たちの鼻っぱしらを折ったところで、良い効果があるわけでもありません。
この先生も、私の英語力を認めない種類の人間か。
そのように思われてしまうだけです。
誰が見たってあなたに英語力はないぞ、と言っても、話は通じません。
だから、ほめもせず、くさしもしない。
そして、正解を出すべきレベルの問題をひたすら解かせます。
その子が、できない言い訳を必死にするのも、笑顔でスルー。
はいはい、とにかく問題を解きましょう。
あなたがなぜ間違えたのかを解説しますから、それは聞きなさい。
言い訳で頭の中をいっぱいにしていないで、私の話を聞きなさい。

そうやっていると、少しずつですがペーパーテストの得点が上がっていきます。
英文を読むことで教養を獲得し、英文を読むことで思考を深める。
そうしたことが可能になっていく子もいます。

あんなに愚かそうに見えた子が、今、目の前で静かに英文を読んでいる。
その表情にうかがえる知性。
そうして、こうなってみれば、その子のスピーキング能力とリスニング力は、本当にその子の強みなのです。




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    Posted by セギ at 12:15│Comments(0)英語
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