たまりば

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2022年10月03日

英語。関係代名詞を用いた文を作れない。

英語。関係代名詞を用いた文を作れない。

関係代名詞に関する問題は、( )の中に適切な関係代名詞を補充する問題のような比較的易しいものもありますが、乱文整序問題になると、正答率は低くなります。
それまで乱文整序問題はわりと得意だった子も、一気に正答率が下がります。
なぜでしょうか?

易しい問題から順番に考えてみます。
問題はすべて、日本語を英語に直す問題です。

(1) 私にはニューヨークに住んでいるおばがいます。
I / New York / an aunt / who / have / in / lives / .

この問題の正答率は高いです。
正解は、
I have an aunt who lives in New York.

I have an aunt という主節と、それを修飾する関係代名詞節とが、きれいに分かれていて、主節を全部書いてから、関係代名詞節という構造。
しかも、主格の関係代名詞。
こうした文は、正解できる子が多いのです。
例文などで見慣れている文でもあるので、作りやすいということもあるかと思います。

関係代名詞の学習の最初は、当然この構造の文です。
そして、最後まで、この構造から一歩も先に進めない子がこの先現れます。
全部この構造だと思ってしまうようです。

(2) 私が昨日読んだ本は面白かった。
book / the / I / yesterday / was / read / which / is / interesting / .

正解は、
The book which I read yesterday was interesting.

よくある誤答は、
I read the book yesterday which was interesting.
あるいは、
The book was interesting which I read yesterday.
というものです。

とにかく1文を全部書いて、それから関係代名詞を書いて、2文目を書く。
そういうルールだと思いこんでいるのです。
それ以上に難しいルールは受け入れがたい。
難しいことをひどく単純化してとらえてしまいます。

結局、基本的に英語力が中1くらいで止まっていて、それ以上に複雑な構造の文は作ることができないのだろうと感じます。
そして、なぜ英語力が中1で止まってしまうのかというと、本人の日本語能力も、中1英語レベルだからではないかと感じるのです。
英語を構造でとらえることができないのは、本人の使う日本語が、複雑な構造を持っていないからでしょう。

国語が苦手な子は、日常会話も痩せています。
子どもどうしの会話は、ある意味のびやかですが、せいぜいで主語と述語だけの会話です。
形容詞だけの文も多いです。
1文の文節の数は、多くて3つ。
ニュアンスさえ伝わればいいのでしょう。
そして、大人との会話は、大人が洞察力で助けてあげている場合が多いです。
うちの塾の生徒でも、帰国生ということでもないのに、日本語がカタコトな子がいます。
単語を1語発して、私が続きを察知するのをひたすら待っています。
例えば、学校の授業進度を確認する際に、
「学校の授業は、どこまで進みましたか?」
「かん・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・かん、ナニですか?」
「・・・!」
それで察してくれない大人の存在に、慌てた表情を浮かべます。
「関係」
「関係、ナニですか?」
「・・・!」
「テキストを開いて、確認するのはどうですか?」
「・・・!」
「ページ数を言ってくれれば、わかりますよ」
「・・・!」
自分のひと言で大人がすべて察して配慮してくれる環境に慣れすぎているのでしょうか。
だから、言葉を正確に覚える必要もなく、「関係代名詞」ではなく「かん」だけ覚えておけば通じると思っているのでしょうか。
入会したてならそれも仕方ないのですが、何か月経っても、その都度、私の「理解しない態度」に驚いている子もいます。
私は、理解できないわけではないのです。
しかし、「かん・・・」というつぶやきだけで何もかも察してあげていては、その子の言語能力が育ちません。
この「1語メソッド」とでも呼ぶべき、自分が1語発すれば、周りの大人が全部察するはずだという認識は15年なら15年かけて培われたものでしょうからなかなか強固で、改めるには時間がかかります。
しかも、こうした傾向のある子は、表現力だけでなく読解力も低いことが多いのです。
言葉の少ない子が、少ないながらも発する言葉の意味をとらえようと、周囲の大人が洞察し「受信」に力を注いでしまうのは愛情ゆえのこと。
そして、その子に伝わりやすいようにと思うからか、周囲の大人の「発信」までがカタコトの1語文か2語文になりがちです。
では、誰がその子に日本語の助詞や助動詞の働きを教えるのでしょうか?
豊かな修飾表現を誰が教えるのか?
本人の日本語に修飾語がないのに、英語で関係代名詞を用いた文を作れる道理がないのです。

問題に戻ります。

(2) 私が昨日読んだ本は面白かった。
book / the / I / yesterday / was / read / which / interesting / .

言語能力の高い子はこの程度なら瞬時に分析し、自分が分析していることすら自覚しないでしょう。
しかし、基礎の基礎に戻るならば、この問題は、まず日本語を分析しなければ英文を作れません。
この日本語の主語と述語は何か?
「私が」は主語ではありません。
上の日本語の主語と述語は、「本は」「面白かった」です。
では、「私が昨日読んだ」は何なのか?
「本」という名詞を修飾している修飾語です。
こんなことは、中1の国語で学習しています。
それ以前に、小学校の国語でも、繰り返し学んでいます。
しかし、国語の文法をなぜか一切無視する子たちがいて、その子たちは、英語の文法も一切無視します。
文法を無視し、基本文の暗記だけでそこそこ何とかなるのは、中1の英語までなのですが。

「本は」「面白かった」という主な構造が理解できたら、まず、主語を書きます。
The book
ここまで作れました。
その先、関係代名詞節の登場です。
修飾される名詞、すなわち先行詞がきたら、すぐに関係代名詞。
しかし、ここでも混乱が起こります。
The book which read yesterday
としてしまう子もいます。
最初に「主格の関係代名詞」を学んだためか、「目的格の関係代名詞節」の語順を理解しないのです。
関係代名詞がきたら、次は動詞と思ってしまうようです。

The book was interesting. I read it yesterday.
この2文目が、1文目の book を修飾するように挿入されているのが、関係代名詞を用いた文です。
it がwhich になって、book の直後にきて、それ以外は、そのままの語順で続きます。

The book which I read yesterday was interesting.

2個目の文の中で、もともとは目的語だったものが which になったから、それを目的格の関係代名詞と呼びます。
だから、which の後、関係代名詞節の主語と動詞が続きます。

そのように説明すると、それは理解する子が多いです。
実際、2文を1文にする問題は正解できるのです。
でも、日本語を英語に直せない。
乱文整序でも、英作文問題でも、日本語を英語に直す問題になると、語順がぐちゃぐちゃになります。
この問題だけは理解したとしても、類題ではまた同じことを同じように間違えます。
根本を理解していないのを痛感します。


(3) 私が昨日駅への道を教えたその少年は、少し日本語を話した。
Japanese / a / the / the / I / way / spoke / to / boy / way / station / told / that / little /.

かなり難しくなりました。
これも、
I told the station the boy spoke a little Japanese.
といった、もうぐちゃぐちゃな誤答しか作れない子が多くなります。

日本語を分析しましょう。
主語と述語は?
主語は「私が」でしょうか?
いいえ。
日本語には、文末決定性があります。
日本語の述語は、倒置法などの例外は除けば、文末にあるのです。
述語は、「話した」です。
話したのは、誰か?
「少年」です。
だから、この文の主語は、「少年は」です。
したがって、書き出しは、The boy です。
では、その前にある日本語「私が昨日駅への道を教えた」は何なのか?
それは、boy を修飾する語句です。
日本語は、修飾語は前に置きますが、英語は、2語以上の意味のまとまりである修飾語は後ろに置きます。
だから、The boy を書いたらすぐ、修飾節に移ります。
修飾節、すなわち、関係代名詞節です。

The boy I told the way to the station yesterday

これはこれで正しいのです。
目的格の関係代名詞は省略可能ですから。
というより、日常会話では、目的格はほぼ省略します。
先行詞が人で、目的格の関係代名詞というと whom ですが、中学の英語教科書からは whom の存在が消されています。
「whom なんて使わない」
と言う人もいます。
日常会話で使うことは確かにあまりないでしょうが、書き言葉としての whom は現役です。
だから、高校英語では whom を普通に学習します。
「中高接続」というのなら、この矛盾はそろそろ解消したほうがいい。
中学英語でも whom を復活させて構わないと私は思います。
結局、関係代名詞を省略しない用法も学ばなければならないので、whom を教えない代わりに、that を使うことを教えているんですから。
だったら、whom を教えたらいいのに。
本末転倒もいいところです。
ところで、高校英語では、人が先行詞の目的格の関係代名詞は、whom の他、who も許容されていると学習します。
結局、ネイティブも間違えるので、それでOKになりつつある。
言語とはそういうものです。
とはいえ、目的格にも who を使うことは、中学で教えません。
テストで目的格に who を使った場合、その中学の英語の先生の見識にもよりますが、バツになる可能性があると思います。
こういう、whom 周りの気持ち悪い感じは、新課程になっても全く解消されていません。

それはともかく、上の問題では、that の使いみちが他にないことを判断したうえで、目的格の関係代名詞として that を用いましょう。
すなわち、
The boy that I told the way to the station yesterday

ここまでが、長い主語と主語の修飾語です。
ここから、主節に戻りましょう。
その少年がどうしたのでしたっけ?
「少し日本語を話した」のでした。
ですから、正解は、

The boy that I told the way to the station yesterday spoke Japanese a little.

です。

主節が途中で分断される。
しかも、目的格の関係代名詞を用いる。
このタイプの問題になると、中学はおろか、高校生になっても英作文できない生徒が多く現れます。
原因は、英文法の理解不足だけでなく、日本語の構造を把握できないことにあると感じます。

対策としては。
うちの塾では、このタイプの類題を繰り返し繰り返し練習して、毎回毎回全滅して、どうやら自分のやり方では正答に至らないと本人に自覚してもらいます。
勉強が苦手な子は、自分が何をどう間違えているかの分析が嫌いですし、そもそも、間違えたことを記憶から消去しがちです。
1問2問こういう問題を間違えた程度では、痛くもかゆくもないのです。
記憶を消しますから。
その状態で定期テストを受け、そこで初めて得点が低いことにショックを受けます。
それですら、どの問題をどのように間違えたかの分析はしないでやり過ごしてしまう子もいます。
ポジティブ思考も結構ですが、忘れてはいけないこともあります。
そもそも、自分が何をどう間違えているかの分析は、ネガティブ思考ではありません。
本人が自覚できないのなら、これでもかというほどに、誤答、誤答、誤答を繰り返させ、どうしてだろうとさすがに本人が考えて質問してくるようにしています。

ものごとを単純化してしまう子は、「関係代名詞の文は、1文目を書いたら、関係代名詞を書いて、2個目の文」といった間違ったルールを押し通そうとします。
それではダメらしいと本人が気づかないうちは、それをやり続けます。

主節を分断する場合としない場合があること。
主格の関係代名詞と目的格の関係代名詞があること。
まず、それを本気で理解する必要があります。

本人の日本語能力を越えた英文を作る。
それは大変なことですが、そうした英文を作ることで、本人の日本語能力を底上げすることは、可能だと信じます。




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