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2022年05月16日

中3数学「式の計算」。式による説明。

中3数学「式の計算」。式による説明。


中学校によっては、定期テストに出す問題を事前に指定することがあります。
そのすべてを出すわけではないが、そのうちの何問かを出すと指定することもあります。
いずれも、教科書の章末B問題の難問や、教科書準拠ワークのC問題とか「オープンセサミ」といったコーナーなどの難問であることが多いです。

例えば、こんな問題です。

問題 0でない4つの数字a、b、c、dを考える。
この数字を、a、b、c、d、d、c、b、aの順に並べ、前から読んでも後ろから読んでも同じになるような8つの数字の並びを作る。
例えば、a=2、b=3、c=9、d=6のとき、8つの数字の並びは、23966932となる。
この数を、2けたずつ4つの数に区切る。
23966932では、23 96 69 32 となる。
この場合、
23×96=2208
69×32=2208
と、前の2つの数どうしの積と、後ろの2つの数どうしの積は等しくなる。・・・①
(1) ①で示したことは、上のようにして作った8つの数字の並びでつねに成り立つと言えるか。なお、反例があれば、1つあげよ。
(2) ①がつねに成り立つには、a、b、c、dについて0でないことの他のどのような条件があればよいか。

これ、普通の公立中学校で採択されている数学の教科書の問題です。
新課程の数学の教科書です。
ただし、章末B問題のしかも「活用」の問題です。
これくらいの難度の問題も、教科書に載っているのです。
難しいですね。


少し前になりますが、小学校6年生対象の全国学力テストの算数の問題で、3辺の長さがそれぞれ3cm、4cm、5cmの直角三角形の面積を求める問題が出題されました。
3辺の長さはすべて図に描かれ、どこが直角であるかも示されていました。
ただし、5cmの辺が下向きに置かれた図でした。
直角を挟む3cmと4cmを底辺と高さとすれば、すぐに面積を求められます。
しかし、5cmの辺が底辺と思い込む子には、高さがわからず、答が出せません。

この問題の全国正答率は、55%。

この数字を高いと思うか低いと思うかは、人によるでしょう。
私は「そんなものだろう」と感じました。
類題としては、その三角形の底辺を5cmの辺と把握した場合の高さを求める問題が、教科書や問題集にはよく載っています。
いったん面積を求めて、そこから、底辺を5cmと見立てたときの高さを求める式を立てます。
そして、そうした問題の正答率はいつもきわめて低いのです。
その考え方は空間図形の求積の問題などで、中学数学でも高校数学でも使いますが、やはり、正答率は低いです。
そうした発想ができない子は沢山います。
特に独創的なものではなく、典型的な発想で、「このような考え方がある」と覚えておけば済むのですが、覚えていられないようです。

公式や定理だけでなく、発想も、覚えておけば済むものは沢山あります。
頭の中にそうした発想の「架け橋」があれば、他の問題で使えます。
高校数学までは、そんなに独特な発想を要求されているわけではなく、既存の普通の発想を身につけるだけで済む場合が多いのです。

しかし、解き方を作業手順として覚えるばかりで、しかも、定期テストが終わればすぐ忘れ、数理の基盤のない子には、そのような発想を「覚えておく」のは難しいことです。
どの見た目のどの問題でどう使うというものではなく、発想のストックとして頭の中に置いておく、あるいは脳の中に架け橋をかけておくのは、抽象的なことです。
同じ発想だよと言われても、わからない子には、わかりません。
どこが同じなのかすらわからない、ということになってしまいます。


上のようなテスト情報は、これまでずっと「5」を取ってきた生徒にとっては、とても嬉しいものです。
学校の先生ありがとう、と拝みたいほど。
これは、明らかに、そうした子たちへの先生からの「愛情」でしょう。
こういう問題を出しますよ。
こういう問題をしっかり解いて、今回のテストも90点台を取りなさい。
そうして、内申「5」を取り、目指す高校に進学しなさい。
そういう温情だと思います。

しかし、そうではない学力の子にとっては、有益ではない面もあるかもしれません。
こんな問題ばかりに目を奪われ、まだ確かなものになっていない基本問題の練習をおろそかにしてしまったら、むしろ普段よりも得点が下がる可能性もあります。
とはいえ、成績優秀な子だけにテストの出題を予告するということは、平等の面から考えて、許される話ではない。
難しいところです。


もう一度、問題を見てみましょう。

問題 0でない4つの数字a、b、c、dを考える。
この数字を、a、b、c、d、d、c、b、aの順に並べ、前から読んでも後ろから読んでも同じになるような8つの数字の並びを作る。
例えば、a=2、b=3、c=9、d=6のとき、8つの数字の並びは、23966932となる。
この数を、2けたずつ4つの数に区切る。
23966932では、23 96 69 32 となる。
この場合、
23×96=2208
69×32=2208
と、前の2つの数どうしの積と、後ろの2つの数どうしの積は等しくなる。・・・①
(1) ①で示したことは、上のようにして作った8つの数字の並びでつねに成り立つと言えるか。なお、反例があれば、1つあげよ。
(2) ①がつねに成り立つには、a、b、c、dについて0でないことの他のどのような条件があればよいか。


さて、(1)から。
こういうのは、とにかく何か適当な数字をまずは試して考えてみると良いと思います。
そんなに難しいことは考えず、まずは機械的に。
a=1、b=2、c=3、d=4で、どうでしょうか。
12×34 と、43×21は、等しくなるか?
式を見た瞬間に、なるわけないと気づきます。
後ろの式は、十の位の数が、前の式よりもそれぞれ大きいですから。
したがって、(1)の答は、
「つねに成り立つとは言えない。
反例、a=1、b=2、c=3、d=4」
です。

問題は、(2)です。
何かの条件があれば、①は成立するのでしょう。
問題に示された例でも等しくなっていますから。

ここで、いつまでも具体的な数字をいじって考えていても、らちがあきません。
文字で表しましょう。
aはaのまま、bはbのままで、問題の通りの式を立てると、どうなるか。
前半分の2つの式の積は、
(10a+b)(10c+d)
後ろ半分の2つの式の積は、
(10b+a)(10d+c)
となります。

2桁の数をこのように文字を使って表すことは、中1のときも中2のときも、方程式の文章題で学んでいますが、当然のように、そうしたことはきれいさっぱり忘れてしまっている子は多いです。
そればかりでなく、たとえば連立方程式のような単純な計算問題の解き方すら忘れてしまっている中3もいます。
あんなに印象的なものをなぜ忘れるのか?
本当に、テスト前だけ覚えて、テストが終わればすぐに忘れてしまうのです。
わかりやすい解説を聞けば、その場では理解することができるのですが、記憶にとどめる意志を本人が持っていない場合、学力の蓄積は難しいです。
あるいは、「理解」の質が違うのかもしれません。
教える側が本質的な理解を促しているにも関わらず、本人は、作業手順を覚えることを重点目標として話を聞いているので、やり方さえわかればそれで「理解」した気になる。
小学校の低学年からそうやって勉強してきたので、それ以外に「理解」という概念がない。
学力の掘り起こしというのは、いつの時代も最大の課題です。


上のように文字式で表すことのできた子は、これは文字式による証明問題だ、これでいけそうだと気づくでしょう。

その発想を自力でできるかどうか。
子どもによっては、その発想がとんでもない「飛躍」と感じられて、どうしても飛び越えられないことがあります。
脳にその架け橋をかけるには、経験値を上げることが必要です。
この種の問題を沢山解いて、脳にストックされているから、その発想を他の問題で活用できるのです。
学校の先生が、出題を予告したのには、そういう意図もあるかもしれません。
自力で発想しろとは言わない。
でも、こういう問題を脳にストックしておきなさい。
いつか必ず役に立つから、と。

さて、解法の続きは。
前半分の2つの式の積は、
(10a+b)(10c+d)
=100ac+10ad+10bc+bd

後ろ半分の2つの式の積は、
(10b+a)(10d+c)
=100bd+10bc+10ad+ac

この2本の式を見比べると、10bc、10adの項は共通であることに気づきます。
違いは、1番目の項と、4番目の項。
このそれぞれの値が等しくなれば、式全体は等しくなります。
1番目の項でいえば、
100ac=100bd
4番目の項でいえば、
bd=ac
であればよいのです。
すなわち、
ac=bd
であるとき、この2本の式は、等しくなります。

これが、(2)の答です。




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