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2021年09月26日

高校数Ⅱ「三角関数」。三角不等式の応用。

高校数Ⅱ「三角関数」。三角不等式の応用。

さて、三角不等式の応用。
前回よりも少し難しい問題を解いてみましょう。
こんな問題です。

問題 0≦θ<2π のとき、2cos(2θ-π/3)≦-1 を解け。

とりあえず、θの定義域から、( )内の角度、すなわち、2θ-π/3 の変域を求めておくことが第一歩です。
これを忘れてしまう人が多いので気をつけてください。
2θ-π/3 の変域をうんうんうなって暗算で出す人もいますが、そんなに無理をする必要はありません。

0≦θ<2π より
0≦2θ<4π
よって、
-π/3≦2θ-π/3≦11/3 π

と、順番に計算していけば、大丈夫です。
しかし、分数計算が苦手な人は、ここでつまずくことがあります。
中学生でも、4π=12/3 π がわからない人は、案外多いです。
12/3=4/1=4は、機械的な作業として知っている。
でも、4=12/3 はわからないのです。
整数を分数に直すという発想そのものがないのだと思います。
約分を、作業手順として覚えただけで、意味がわかっていないことが大きいのでしょう。
その後に分数計算について新しい学習をしたわけでもない場合、高校生になっても、
4π-π/3=11/3 π
が、よくわからないということはあっても仕方のないことです。

0≦θ<2π より
0≦2θ<4π
よって、
-π/3≦2θ-π/3≦11/3 π

この4行がわからない・・・。
昔、そのように言う生徒との個別指導で、長時間格闘したことがあります。
若かった私は、高校数学レベルでの疑問だと決めてかかっていました。
だから、こんなふうな説明になりました。

「えーとね、0≦θ<2π の定義域のまま、この問題を解いてしまってはダメなんですよ。
この問題は、2θ-π/3 の範囲について、2cos(2θ-π/3)≦-1を解けということなんです。
だから、まず、2θ-π/3 の変域を求めないと、どういう範囲なのかわからないんです。
これ、単位円の2周目にも答があるんですね」

このように、なぜそのように変域を定めるのか、理由の説明に終始しました。
しかし、どんなに言葉を変えて解説しても、生徒は首をひねるばかり。
徐々に反応は薄くなっていきました。
「・・・何がわからない?」
と尋ねても、生徒は黙りこみ、何も言わない・・・。

数学が苦手な生徒との個別指導の「あるある」です。
生徒の疑問と講師の解説が、かみ合っていないのです。
若かった私は、4π-π/3=11/3 π がわからない高校生がいると、思っていなかったのです。

生徒の大半は、今学んでいること以外のことでつまずいています。
その原則を体得して以降はかなり上手くいくようになりましたが、個別指導は、生徒の言語能力によって質が違ってくるのは事実です。
そして、数学が苦手というよりも、そもそも勉強が苦手な子は、言葉による説明を苦手としている子が多いのです。

日本語がおかしいことなんか、何でもない。
とにかく、具体的に、カタコトの日本語でいいので何か言ってくれればいいのですが、それすらできないことが多いです。
例えば、上の場合も、せめて、
「何で11/3 πになるの」
と質問してくれれば、解決までそんなに時間がかからなかったと思います。
「何で11/3 πになるか・・・?4π-π/3 をしたからです」
「・・・」
「4π-π/3をしたから、11/3 π です」
「・・・」
「4π-1/3 π=11/3 π です」
「・・・」
「4π-1/3 π=4/1π-1/3 π=12/3 π-1/3 π=11/3 π です」
「・・・!」

本人のわからないところにポイントをしぼった解説をすれば、先に進めます。


ともあれ、-π/3≦2θ-π/3≦11/3 π という定義域で、2cos(2θ-π/3)≦-1。
とりあえず、先頭の2が邪魔なので、両辺を2で割りましょう。
cos(2θ-π/3)≦-1/2

ここで、2θ-π/3を、何か別の文字に置き換えて考えて構いませんが、そんなことはしなくても、このままいける人はいってしまいましょう。
コサインの値が、-1/2以下なのです。
単位円を描いて考えます。
まず第1象限で考えると、コサインの値が1/2のときは、角度は60°すなわちπ/3。
コサインの値が、-1/2ということは、第2象限か第3象限。
つまり、コサインの値が-1/2のとき、角度は、2/3 πと、4/3 π。
コサインの値が、-1/2以下ということは、2/3π以上4/3π以下ということ。
単位円の1周目でそうだということですから、今回、定義域は2周目も入ります。
-π/3≦2θ-π/3≦11/3 π という定義域を考えなければならないのはそういう意味です。

すなわち、
2/3 π≦2θ-π/3≦4/3 π , 8/3 π≦2θ-π/3≦10/3 π

ここで終了してはいけません。
三角不等式を解くということは、θ の範囲を求めるということです。
上の不等式を、θ について解いていきます。
これも、いきなり暗算でうんうんうなってやっていく必要はありません。
できるのならば止めませんが、時間ばかりかかってミスが多いのなら、丁寧にやっていきましょう。
まず、辺々に、π/3を加えます。
π≦2θ≦5/3 π , 3π≦2θ≦11/3 π
さらに、辺々を2で割ります。
π/2≦θ≦5/6 π ,  3/2 π≦θ≦11/6 π
これが解です。

今回は、分母がすべて3だったので、計算は比較的楽でした。
しかし、問題によっては、通分が必要な複雑な計算の場合も多いです。
暗算できなかったら、分数の通分とその計算は、別に計算用紙を用意して、そこにやっていくのも1つのやり方です。
通分や、分数の足し算引き算の計算の過程は、答案に残す必要はありません。
答案としては、

0≦θ<2π より
0≦2θ<4π
よって、
-π/3≦2θ-π/3≦11/3 π
このとき、
2cos(2θ-π/3)≦-1 より
cos(2θ-π/3)≦-1/2
よって、
2/3 π≦2θ-π/3≦4/3 π , 8/3 π≦2θ-π/3≦10/3 π
π≦2θ≦5/3 π , 3π≦2θ≦11/3 π
よって、
π/2≦θ≦5/6 π ,  3/2 π≦θ≦11/6 π

これで通じます。

「三角関数」の学習は、このあたりから、泥沼の死闘になっていくことがあります。
「テキストの何ページを見て」
と指定しているのに、生徒は別のところを見ていたりします。
定理の説明をしているのに、例題解説を必死に読んでいたりします。
2θ-π/3 と問題に書いてあるのに、なぜそんなのが出てくるのだろうと独りで考えこんでいたりします。
学校の問題集からの質問を受けて解説している際、解答解説集の正解をその子が見間違っているため、話が噛み合わないということもあります。
それほどに混乱してしまう人も、います。
これは、すでに気持ちで負けている場合が多いのです。
わからない、わからない、わからない・・・。
そうして、「三角比」の冒頭からある混乱、サイン・コサイン・タンジェントの値を、角の大きさのことだと思っている誤解が、常にぶり返してきます。

でも、諦めるのは、まだ早いのです。
「わからない」と思っていることの多くは、三角関数についてのことではありません。
何かの見間違い。
見落とし。
そして、基礎知識の欠落。
原因は、それらです。
それを解決すれば、まだ先に進めます。
頑張りましょう。




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