たまりば

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2015年12月10日

数学の応用力をつけるには。



数学の応用力をつけるには。

「数学の応用問題はどうしたら解けるようになるんですか」
と質問されることがあります。
でも、その答えは、質問者が誰によるかで違ってきます。

その子のテストの答案を見ればわかることですが、前半の基本問題でぽろぽろ失点しているにも関わらず「応用がー」「応用問題がー」と思っている子は、応用問題のことよりも、まずは基礎固めの重要性に目を向けたほうがよいのです。
その基礎力では、現時点で応用問題を解くことは難しい。
公式や定理の定着が曖昧なままでは応用問題は解けないのです。
応用問題というのは、結局、基本的な定理を組合せて利用するものだからです。

しかし、もう基礎力は身についていて、本当に後は応用力だという段階の子の場合、応用問題はどうしたら解けるようになるのかは大きな課題です。

ひと口に応用問題と言いますが、大きく分けて2種類あります。
応用問題の中での典型題と、類題があまりない本物の応用問題です。
応用問題の典型題とは、学校の教科書や準拠ワークに1題ずつ載っているような問題です。
難しそうに見えますが、パターンは決まっている定型の問題です。
その1題を自力では解けず、解説を聞いただけで学習が終わってしまい、テストに類題が出たけれどやはり解けなかったという人は、真面目な秀才の中にもいると思います。
塾に通えば応用の典型題は類題をたくさん練習しますから、本人に理解力があればそういうものは確実に解けるようになります。

では、典型題でない、本物の応用問題を自力で解けるようになるには、どうしたら良いのか。
国公立・私立の中学入試や高校入試、そして大学入試は、そういう問題が出題されます。
どうすれば、そういう問題を解けるようになるのか。

受験算数や数学の成績アップで成功している塾のやり方に、こういうものがあります。
大切なことは3つ。
①良質の難問を考え抜かせる。何時間でも。解き方は教えない。
②解いた子にしか正答を教えない。
➂解いた子を皆の前で褒め、何問解けたかで順位をつけるなど競争の仕組みを作り上げ、生徒同士を競わせる。

勝気な子が、これに乗らないわけがありません。
目の前に解く価値のある難問がある。
解けば仲間内での立場が圧倒的に上がり、自分の能力の高さを周知させることができる。
この勝負に負けるわけにはいきませんから意地でも全力を出します。
考えて考えて考え抜きます。
当然、学力は飛躍的に向上します。

数学の応用問題を解く力を養うには、この「全力で考えて考えて考え抜いた過程」が必要です。
知っている定理や公式を頭の中でどう組み合わせるか。
何をどのように発想するか。
それは、経験をつまなければ身につきません。

問題の最初から考え、詰まったら今度は最後から考えて、わからないことの距離が縮んだ瞬間に火花が散って、通電する。
全てがつながる。
それを自分で経験することが重要です。

あるいは、この問題はこのパターンに近いから、このやり方である程度まではいくはずだと推測する。
だから、そこまでやってみる。
その先に、新しい展開があり、その問題の真の姿が見えてくる。
どの定理を使うか、頭の中で精査する。
どれを使うか自力で発見できたときの充実感。

そういう経験を積まなければ、自力で応用問題を解けるようにはなりません。
逆に言えば、基礎はあっても応用問題の解けない子は、この経験が不足しています。
応用問題を解こうとして、ちょっとわからないと、すぐ諦める。
諦めて解答を見る。
他人に教わって済ます。
本気で考えたことがなく、1題も自力で解いたことがない。
応用力のない子の多くがそうです。

そういう子に、考え抜く学習を勧めても、
「でも、数学にばかりそんなに時間はかけられない」
「能率が悪い」
など小理屈をこねます。
まず実行しません。
自力でこの環境を作り出すのは難しいのです。
強い意志が必要です。

うちの塾でも、このレベルに進める子は限られています。
難しい問題を宿題にしても解いてきません。
教わればいいと思ってしまうのでしょう。
レベルアップを図るためテキストを難しいものに変えると、保護者を通じて「解答集をください」と連絡が入ることもあります。
応用力をつけるための最大の障害は、たいてい本人なのです。
難しい問題も歯をくいしばって解いてきた子のみが、大きな成果を上げています。

良質の難問を与える。
解いた子にのみ正解を教える。
これを実践している中学校があります。
もちろん、教科書準拠の問題集は解答つきで渡され、基本問題のプリントなども時間を置いて解答を渡されるので、基礎的な学習はそれでしっかりできます。
その上で、プリント1枚に1問しか載っていない応用問題が配られています。
これは、解いた子にしか解答が渡されません。
解答は渡されないが、定期テストの範囲であると言われるようです。
授業の度に、プリントをノートに貼って解いて提出しろと言われるとも聞いています。
解いていないのに提出すると「再提出」のハンコが押されて返ってきます。
先生は、プレッシャーのかけ方が上手い。
さて、どうしたものか?

うちの塾生の1人が、その中学の生徒なんです。
そのプリントは自分で考えなさいと繰り返し言っているのですが、それでもときどき塾に持ってきます。
私はその度に説得します。
自分で考えなければ意味ないよ。
え?でも、テスト範囲だから教えてほしい?
テスト範囲なんて言うけれど、テストには出ないじゃない?
え?最後のチャレンジ問題に出たことがある?
あれは、100点満点+アルファのボーナス問題でしょう?
あなたはあれに気を取られるけれど、あれ以外のテスト問題は易しい基本問題と応用の典型題だけなんだから、それをしっかり解けばいいんだよ。
このプリントは、自力で解くことが大切で、教わって解いても意味がないんだよ。
解けないなら解けないで、仕方ないよ。
え?ノートに再提出のハンコを押された?
でも、私が解いたのを書き写して辻褄を合わせても仕方ないでしょう。
私の学力がグングン上がっちゃうだけでしょう?

それでも、どうしてもと言われると、定期テストの後など比較的スケジュールに余裕のあるときは私が解くこともあるのですが、予想を越えた難問ばかりです。
問題が漢文で書いてあるものもあります。
江戸時代の算額なんでしょう。

計算を始めると、その過程も企みに満ちていることにさらに驚かされます。
例えば、計算の過程で√1681なんていう数字が出てきます。
これを整数に直せないと、その後の計算は煩雑を極め、行き詰ります。
そりゃあ、算額ですからそうですよね。
算術の腕自慢が互いに「どうだ、この問題を解けるか」と作ったり解いたりして楽しんでいたものなのですから、ある種の「悪意」が問題中にこもっているのは当然です。

解き方を解説し、私も解きながら本人にも解いてもらうのですが、生徒は早い段階で計算ミスをして、行き詰ってしまいます。
こんなふうでは、この難問をスラスラ解いて提出するほうが印象が悪いのでは?
誰かに教わったか写したのが丸わかりです。
そういうことは、本人が思うよりずっと、大人は気がつくものです。
証拠があるのないのと水掛け論になるのが嫌で先生は口にしないでしょうが、心証は最悪です。
むしろ平常点に影響するでしょう。
自分で考えて、自力で解けた問題だけ提出したほうが良いのです。
やはり、塾でこのプリントを解くのは、良くない・・・・・・。
解く度に、結局反省します。


もしも、私が中学生だったときに、数学の先生からそういうプリントが定期的に渡されるようだったら、私はどうしたかなあと想像します。
昔も今もあまり社交的なほうではないので、とりあえず1人で解こうとし、解けたり解けなかったりしていたと思います。
友達から教えてくれと言われれば、解けた問題は教えたでしょう。
友達から友達へ、情報は伝わっていく。
「あいつが、あの問題を解いた」
3クラス135人しかいない中学で、そのうち3分の2は小学校からの内部進学ですから、全員が顔見知り。
そういう情報は広がるのが速いです。
「答を教えてくれ。自分はこっちの問題を解いたよ」
普段話したこともない他のクラスの数学好きが、ある日やってくる。
そして、教えあうゆるい共謀関係の相手が1人2人と現れ、増えていくと思います。
教えあうことで楽をしようとしているのかというと、しかし、この場合、一方的に教わるだけでは体面が保てません。
競争心もありますから、今度の問題は絶対に自分が一番に解いてやる、という方向に進んていくと思います。
本気で解きますから、解ける問題が増えていくでしょう。
そんな中で、あの当時個別指導塾はなかったけれど、家庭教師のついている子はいたから、そういう子が家庭教師から教わって解いたという情報が入ってきたら、私はどうしたかなあ。
誰にも解けない問題がもしあったら、それについては有難く情報を活用しただろうけれど、それでいてその情報源の子を尊敬する気持ちはもたなかったんじゃないかなあ。
むしろ、軽視したんじゃないかなあ。
あいつ、家庭教師に教わったのか。
自分では1題も解けないくせにねと、失笑した気がします。
すいません。
プライドばっかり高くて残酷で。
でも、中学時代の私なら、そうだったろうなあ。


応用力をつけるには、応用問題を解くこと。
自力で解くこと。
考えて考えて考え抜くこと。
プライドをかけて臨むこと。
テクニックより何より、まずそれが前提として必要だと思います。
考えて考えてそれでもわからなくて教わった1問の中のテクニックは、悔しさとともに自分の血肉となります。
安易に教わった問題は、安易に忘れます。
定着しないのです。




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