たまりば

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2013年04月08日

考える力をつけるには


さて、いよいよ新学期。
年間の定期テスト日程の確認、教科書準拠ワークの注文受付と、この1週間も忙しくなりそうです。

本日は、算数の話。
たとえば、こんな問題が出されたとします。

問題
長さ92mの普通列車が時速57.6kmで走っています。
この列車に、その1.5倍の速さで走る急行列車が追いついてから追い越すまでに27秒かかりました。
普通列車が入り始めてから全部出るまで1分55秒かかるトンネルを、急行列車が入り始めてから全部出るまで、何分何秒かかりますか。

これは、「通過算」と呼ばれるもので、受験算数としてはそれほど難しいものではありません。
ただ、初めてこの種の問題を解く子には、必要な知識があります。

急行列車が普通列車に追いついてから追い越すまでに、急行列車は、普通列車よりも、2つの電車の長さを足した分だけ、多くの道のりを進んでいるということ。

電車がトンネルに入り始めてから全部出るまでの道のりは、トンネルの長さ+電車の長さであるということ。

この2つのことに子どもが自分で気づくことは、塾は要求しない場合がほとんどです。
それは、図に描いて、わかりやすく説明します。
そして、そのことが理解できない子もほとんどいません。

さて、そうした知識を踏まえて、この問題をどう解くか。
私は、受験算数を「異様に肥大した特殊な算数」と、ときに悪口を言うこともあるのですが、やっぱり受験算数はよく出来ていると、こういう問題を見ると思います。

こういう問題が解けない子の多くは、この問題文の長さにまず息切れし、最後まで読み通すことができません。
問題の意味がわからない。
長くて、理解する気になれない。
第1段階でアウトです。

第2段階。
解きたい気持ちはある。
最後まで読み通し、意味も一応わかった。
でも、解けない。
そういう子は、全体ばかり見て、細部の分析ができません。
「センセイ、この問題、1本の式にしなくちゃダメ?」
なんて、こちらが予想もしなかった質問をして、びっくりさせることがあります。

1本式?
これを?
「1本の式で答えなさい」という指示は、小学校の問題で、たまにあります。
( )の使い方や、計算のきまりの学習のためです。
あるいは、受験算数でも、複雑な面積や体積の問題は、分配法則を利用して3.14でくくれば計算が簡単になるので、1本の式を立てることを勧めますが、こんな問題を1本式で解けとは、誰も要求しません。

「1本の式にする必要はないよ。部分部分で式を立てていくんだよ」
「ふうん」
全体の構造は把握できていて、あとは1本の式にならないことで悩んでいたのかと思ったら、しかし、その後も手が動きません。
部分的な式すら書けません。
やはり、質問自体が少しズレたものだったのでしょう。
この問題を解くまでは、まだ距離があるようです。

自分が学んでいることの複雑さが理解できていないのか、問題にある数値をとにかく足したり引いたりかけたりすれば偶然解けるのではないかと期待している子もいます。
小学校で習う内容は、確かにそんなのが多いですからね。
そういう子は、57.6÷1.55なんて、謎の式を立ててしまいます。

「その式、どういう意味?」
と尋ねると、
「知らない」
と言って、慌てて消そうとします。
「意味があるなら説明して?」
「知らない」
「意味のある式を立てるんだよ?」
「・・・・・・」

小学校で習う文章題は、構造が易しいこともあって、今は「かけ算」の勉強をしているんだから、かければいいんだろうという判断で式を立てている子がかなりいます。
今は「わり算」を習っているから、大きい数を小さい数で割る式を立てれば正解だね、という判断だけで問題をこなしています。

子どもに「かけときゃいいんだろう」という安易な判断をさせてしまう問題しか解かせていないからそういうことになる、という意見もあり、私も少し賛成です。
頭の良い子が勉強をなめてしまうような問題を解かせているから、思考が停止する。
気がついたときは、頭の使い方がわからなくなっている。
そうなってしまわないように、その子にふさわしいレベルの問題を解かせ、考える力をつけさせたいですね。

中学受験をすれば、高校入試がなくて楽だ。
そんな考えで中学受験をする場合があるんですが、中高一貫校なら高校入試がないのは事実でも、それが楽であるとは限りません。
私立中学に入るということは、速度を上げて全力で走りとおすということ。
はるか遠い目的地に全力でたどりつくこと。
それが楽なことであるわけがありません。
公立中学よりも学ぶ内容はレベルが高く、進度も速い。
大変ですよ。

それでも、私は、素質のある子には、中学受験を勧めます。
小学校高学年の大切な時期に、思考力を要求される問題をたくさん解くことが、どれほど学力を高めるか。
この効果だけは、絶対のものだと思うからです。

普通の小学校の算数は何も考えなくても乗り切れるかというと、そうではありません。
5年生には、「単位あたり量」や「割合」の単元があります。
かけるのか割るのか、自分で判断しなければならなくなり、安易に判断していた子は、途端に式がたてられなくなります。
そういう子は、中学生になると、今度は方程式の文章題が立式できません。
安易な判断をしていると、学校でも、いずれ壁に突き当たるんです。
受験算数を学んでいる子は、少なくとも、そのレベルではへこたれません。
淡々と解いていきます。

さて、初めの問題に戻って。
こういう問題を解くには、問題を、細部に分割する目と、全体を俯瞰し統合する目と、両方を持っていなければなりません。
それは、解き方をすぐ教えては、身につきません。
同じ形式で数値だけ違う問題しか解けるようになりません。
だから、教えない。
最悪の場合、90分間これ1問でも構わないという覚悟がこちらに必要になります。

ご家庭でお子さんの勉強を見ていらっしゃるお母様から、よく、
「私が教えると喧嘩になってしまって」
という相談をいただくのですが、もう1つ、難しいのは、すぐ教えたくなってしまう気持ちをどう抑えるか、ではないでしょうか。
子どもの手が止まっていると、つい、どんどんヒントを出して、結局何もかも教えてしまいます。
子どもも、全部教わって式が立ち答えが出れば、それでわかったような気になります。
しかし、教わって解いた問題は、それを応用することはできない可能性のほうが高いんです。

今、未消化の問題があるのは、仕方ない。
解けない問題があるのは、仕方ない。
少しでも、自分で考えた経験を増やすこと。
解いたつもりになっていることのほうが、恐ろしいです。


さて、上の問題の答は、1分18秒です。

え?何でそうなるか?
教えませんよー。

(*^_^*)



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