たまりば

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2012年11月15日

就活にも必要な数学力


たとえ文系出身でも、就職試験には数学の問題が出ます。
数学というよりも、「算数」のレベルのことですが、これが苦手な人が増えているらしいです。

芳沢光雄『就活の算数』という本の宣伝文を読みました。
中身は読んでいないので知りませんし、特に薦めませんが、とりあえず、宣伝文に書いてあることは、説得力がある、と感じました。

時速80kmで、空いた道路を運転中、「目的地まであと20km」の標識を見たら、「あと15分で到着」と思うこと。
7800円の商品を購入するとき、外税ならば、「消費税額は390円」とすぐにわかること。

これらのことがパッとわかることは、社会人における大事なセンス。
だから、就職試験に出る。

うん、それは全くその通り。
そして、それがパッとわからない子が増えているから、試験で振り落とさないといけない現状。(-_-;)

実際、子どもたちに算数・数学を教えていても、頭が固いなあ、と思うことはよくあります。
上に書いてあるような「速さ」「割合」の文章題への対応力の弱さなど言わずもがなですが、少しの計算の工夫もできない頭の固さが気になります。

たとえば、多角形の1つの内角を求める問題。
五角形の内角の和は、540°です。
他の4つの内角が、105°、98°、73°、120°と示されていれば、残る1つの内角を求めるのは簡単。
やり方がわからない子は、あまりいません。
でも、正答が出せない子は、たくさんいます。
105+98+73+120 のたし算が、できないんです。
何をやってるのかなあというくらい、ノートにぐちゃぐちゃ書いていて、なかなか計算が終わりません。
3回たし算の筆算をするのがつらくて、途中で手が止まり、ぼんやりしてしまい、そのうちに、自分がノートのどこに何を書いたかわからなくなり、混乱し、最初からやり直し。
(>_<)

小学生でメンタルの弱い子ですと、
「わからない」
「できない」
と言い始めて、励ますのに苦労することがあります。
肉親ならキレてしまう場面かもしれません。

そもそも、なぜ、たし算の筆算をしているのだろう?
暗算で、パッパッパッと足して、メモしていけば、1分で終わるのに。
いや、筆算をするのならそれでもいいが、なぜ、まとめて4つ、筆算しないのだろう?

「たし算の筆算は、まとめてできるよ?」
と声をかけると、
「どうやって?」
と不思議そうに訊き返してきます。

たし算は、一の位の数字だけまとめて足して、その繰り上げも加えて、十の位の数字をまとめて足して、その繰り上げも含めて百の位の数字を足せば、一度で計算できます。
そのことを、知らない子が、今の小・中学生には、多いです。

計算ドリルに、そういう問題がないからでしょうか。
教わったことがないことは、全くできない。

先日、高校生と確率の勉強をしていたときのこと。
数学はよく出来る子ですので、反復試行の確率も、難なく立式し、解いていました。
反復試行の確率は、分母が8の6乗など、大きな数字になることが多いです。
式を立てるのは速いのに、計算が遅いなあ、と見ていると、
64×8=512
512×8=
・・・・と、1つ1つ計算していました。
「うーん。512×512で、答えを出そうか?」
とアドバイスしますと、さすがに根本的には数学のできる子ですので、その意味はすぐわかった様子で、驚愕していました。
×8の暗算がささっと出来るタイプなら、そのほうが速い場合もあるので、止めないのですが。

最初に書いた、時速80kmで、あと20kmなら、あと15分、という問題。
「速さ」に関する問題は、実感を伴うことなので、公式の意味もわかりやすいです。
本当は、覚え方なんて必要ありません。
でも、現実には、理解できない子があまりにも多いので、「は・じ・き」で教えざるを得ないのが現状です。
しかし、実感で理解していず、「は・じ・き」の図を描いて、公式に当てはめないと式が立てられない子は、結局、上の問題をパッと理解することはできないのかもしれません。

時速80kmとは、1時間で80km進むということ。
だったら、20km進むには、その4分の1の時間で良い。
1時間の4分の1は、15分。これは、アナログ時計をイメージすれば、すぐわかること。

20÷80=0.25(時間)
1時間=60分
60×0.25=15
なんて固い式を立てる必要はありません。
そんなものを立てるだけ、判断は遅れます。

でも、頭の固い子は、この計算方法じゃないと、正解にたどりつけないんです。
せめて、0.25はやめようよと思うのですが、分数アレルギーの強い子は、何でも小数で計算してしまいます。
そのほうがわかりやすいと、本人は信じこんでいます。

大学生になっても、社会人になっても、こういう計算が瞬時にできない人は、比例の関係を見抜き応用できないようです。
分数や割合を使えないことも、根本の原因と感じます。


最近、池谷裕二『受験脳の作り方』という本を読んで、驚いたことが1つ。
記憶の仕方に関する本で、特別目新しいことは書いてありません。
要するに、反復と努力だよ、という話で、全面的に賛成ですが、特にどうということでもないので、これも読めとは薦めません。
でも、1つ、面白かったのは、この人は、九九を覚えていないのだそうです。
せいぜいで、2の段までしか、覚えていない。
彼の頭の中の計算方法は3つだけ。
「十倍すること」「倍にすること」「半分にすること」
この3つだけで、全ての計算は瞬時に出来るというのです。

例えば、23×16という計算は、
まず、16を10と6に分ける。
23の十倍は、230。
次に、6を5と1に分ける。
5は10の半分だから、23×5は、230の半分。
つまり、115。
残る1は、そのまま、23。
すなわち、
23×16=230+115+23=368

初めて読んだときは、「うっ、面倒くさ!」と思いました。
こんなことをするくらいなら、普通に九九を覚えて、普通に筆算したほうがましです。
でも、考えてみると、似たようなことは、現実生活の中での計算では、私もやっています。

十倍すること。
あるいは、十分の一にすること。
倍にすること。
半分にすること。
その計算方法に慣れている人が、消費税を簡単に計算できる人です。

消費税率は、現在5%。
5%とは、100%を十分の一にして、さらに半分にしたもの。
だから、7800円の商品の消費税は、
780円の半分の390円。

常に頭をやわらかく。
現実生活に、数学は必要です。


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