中1数学「比例・反比例」の活用の問題。

セギ

2025年01月25日 12:33


「活用」の問題とは、数学の問題を、実生活と結びつけて考えてみるものです。
目的の1つは、生徒が数学に興味を持つようになることでしょう。
しかし、実際は、数学がますます難しく感じられ、苦手になっている場合が多いのです。

中1数学の「比例・反比例」を例にとって考えてみましょう。
例えば、こんな問題。

問題 視力検査に使われる、1か所が切れている輪が描かれた図形は、ランドルト環と呼ばれる。
外周直径7.5mm、切れ目1.5mmのランドルト環を5.0m離れた場所から見て、切れ目の方向がはっきり見えれば「視力1.0」と定められている。
ランドルト環の大きさをいろいろと変えて、5.0m離れた場所から視力を測るとき、視力はランドルト環の外周直径に反比例するものとして、以下の問いに答えなさい。
(1) ランドルト環の外周直径が12.5mmのときの視力を求めなさい。
(2) 視力が1.5のとき、外周直径が何mmのランドルト環まで明瞭に見えるか。


基本問題は正解できるのに、こういう問題になると、頭が真っ白になる・・・。
日本の過半数の生徒がそうかもしれません。
自力では、こういう問題は解けないのです。
実際の問題には、ランドルト環の図も添えられていて、よりわかりやすくなっています。
それでも、わからない・・・。

原因は色々と考えられます。
①知らない事柄が問題に出されると、「知らない」「わからない」「習っていない」と短絡的に反応してしまう。
②問題を読み取る力が低い。
③知識の応用が効かない。


まず①について。
この問題を宿題に出したところ解けなかった子に授業をしたときのこと。

「何がわからないですか?」
「・・・ランドルト環」
「そうですか。でも、視力検査でこの図形を見たことはありますよね?私も、そういえばそんな名前を聞いたことがある、という程度ですが」
「・・・」
「ランドルト環のことを知らなくても、この問題は解けますよ」
「・・・」

しかし、多くの生徒は、知らないことが問題に出されたら、知らないから解けない、となってしまいます。
この頭の固さは、どうすれば改善できるのか・・・。

頭が柔軟な子は、このタイプの問題を何問か解いていくうちに、知らないことであっても問題を解くのには支障がないことを実感し、解いていけるようになります。
本人の中に学習能力が備わっているので、新しいことへの対応の仕方も学習していきます。

しかし、そうはならない子も多いのです。
とにかく頭が固い。
「活用」のどの問題も、結局自力では解けず、解説を聞いて、あるいは解説を読んで、その解き方を覚え込むだけとなるのです。
実際にテストに出るのは、また別の初見の問題。
「活用」の問題に、典型題は存在しません。
初めて見る内容ばかりです。
そうであるのに、「知らないことは、わからない」。
そうやって、固まってしまいます。

頭の固さの改善は、一朝一夕にはいきません。
究極、学ぶことで頭を柔らかくしていくしか、道はありません。
自分の頭の固さという課題を自覚して、一歩一歩進んでいくしか道はないのだと思います。
知らない事柄でも、数学の問題は解ける!
まず、落ち着いて、そのことを意識することです。


②問題を読み取る力が低い。
については、どうでしょうか。

「問題に、反比例という言葉がありますよ。何と何が反比例するのか、読み取れますか」
「・・・」
非常に不思議な傾向なのですが、読解力の低い子に、このように話しかけたとき、私をまっすぐに見つめ返すけれど、問題文には目を戻さないことが多いのです。
私の顔なんか見たところで、何も書いていないのに。
人が話しているときには、人の目を見ましょう。
そういう教育が行き届いているのでしょうか?
それもあるのでしょうが、おそらく、「問題文をもう一度読みなさい」という指示を私が出していないことが一因なのだろうと思います。
文字を読むだけでなく、人の話を聞く上での「読解力」も低い子は、直截に具体的な指示を出さないと、何を期待されているか理解できないことがあります。

「問題をもう一度見て、読み取りましょう。何と何が反比例するのでしょう。問題文に書いてありますね」
「・・・視力は、ランドルト環の外周直径に反比例する」
「そうです。今、1組、具体的な値が問題文に載っています。問題文を見直してください。視力がいくつのとき、ランドルト環の外周直径はいくつですか」
「7.5のとき、1.5」
「・・・違いますよ」
「7.5のとき5」
「・・・違います」

こういう「活用」の文章題では、不要な数値が他に多く書かれていることがあります。
そうした中で、必要な数値がどれなのか読み取れない生徒がいます。
1つ1つ、補助していく必要があります。
「視力はいくつですか。読み取ってください」
「・・・・1.0?」
「そうです。そのときの、ランドルト環の外周直径は?」
「5?」
「違います」
「1.5?」
「違います。・・・落ち着いて。即答しなくていいんですよ。ゆっくり読み取って。何分かかってもいいんです。大切なのは、正解すること」
「・・・・・・・・・7.5?」
「そうです!」

・・・しかし、そうやって一度読み取った数値も、では解きましょうと促したとき、もう忘れていることもあります。
記憶がもたず、本人にメモを取る習慣もありません。
そこは、特に個別指導が必要なところです。
メモを取ろう!
下線を引くか、〇で囲もう!
そのように助言を繰り返しますが、往々にして、そうした助言を受けたこともすぐに忘れます。
幾度も幾度も忠告と助言を繰り返し、年単位の学習の後に、身についていきます。


さて、課題の3つ目。
③知識の応用が効かない。

今までのところは、何だか低学力の子の話だけしているような印象を持たれた方も多いと思いますが、「活用」の問題が解けないのは、低学力の子だけではありません。
ほんのひと握りの秀才以外は、ほおっておいたら「活用」の問題は解けない、と覚悟する必要があります。
それほどに、「活用」は、高く大きな壁です。

知らないことが問題に書いてあっても、問題文の中で知れば大丈夫なのだとわかっている。
それなりに読解力もある。

課題の①や②はクリアしている子たちです。
それなのに、なぜ、大多数の子は、「活用」の問題が解けないのか?

それは、応用力がないからです。
ではなぜ、応用力がないのか?

反比例の基本問題は解くことができても、それは作業手順として覚えているだけで、意味はわかっていないのです。
このことはもう本当に繰り返し書いてきました。
小学生の頃から、算数・数学は、作業手順だけになってしまっている子は多いです。
理由も、繰り返し書いてきました。
ある意味頭の回転が速かったため、意味まで深く理解するような「重い」学習を避け、やり方だけちゃちゃっと覚えることで済ませてきた子。
意味が全く理解できなかったため、やり方を覚えることに活路を見出してきた子。

ある中学生と「方程式」の授業をしていたときのこと。
平均の考え方を使う問題でした。
「平均って、小学校で勉強しましたよね。公式を覚えていますか。平均はどうやって求めるのだったでしょうか」
その子は、長い沈黙の後、答えました。
「・・・たして、割る」

・・・まあ、確かに、その通りですし、語彙が少ない子でしたので、本当はわかっているのに、そのようにしか表現できなかった可能性もありますが、手順しか覚えていないのだし、手順にしか興味がないからこの答になるのだろうとも感じてしまうのです。

では、なぜ手順しか覚えないのか?
意味まで深く理解するような「重い」学習をすると、頭が重くなって苦しくて、脳細胞が潰れる気がするので、そういうことを本能的に避けてしまう子は案外多いです。
こんなに秀才ふうな子がそんなレベルなの?と思うこともあります。
小学校のカラーテストでは毎回90点以上を取っていたのに、実は何もわかっていなかった、ということもあるのです。
理解はすべて表面的。
ただの作業手順です。


とはいえ、意味がわかった上での手順は、数学で通用することでもあります。
問題を分析した後は、手順に沿って、合理的に解いていく。
正解への最短距離をいく。
小学校から作業手順だけだった子は、それができないのです。
基盤がないので、
「ここは、あの公式を使えばいい」
「ここは、あの手順でいい」
という判断が自力でできないし、そのような指示には、逆にポカンとしがちです。

「反比例すると問題に書いてあるのですから、反比例なのですね。ならば、反比例の一般式にあてはめて解くことができますよ」
「・・・」
「反比例の一般式は、覚えていますか」
「・・・y=a / x」
「そうです。その式を使って、解いていきましょう」
「・・・」

この単純な思考を、自力で行うことができないのです。
日頃は何でも作業手順で覚えこもうとするのに、なぜ、この作業手順が理解できないのだろう?
なぜ心も頭もついていけないような様子を見せるのだろう?
そう思うことは多いです。

もう一度問題を見ましょう。

問題 視力検査に使われる、1か所が切れている輪が描かれたものは、ランドルト環と呼ばれる図形である。
外周直径7.5mm、切れ目1.5mmのランドルト環を5.0m離れた場所から見て、切れ目の方向がはっきり見えれば「視力1.0」と定められている。
ランドルト環の大きさをいろいろと変えて、5.0m離れた場所から視力を測るとき、視力はランドルト環の外周直径に反比例するものとして、以下の問いに答えなさい。
(1) ランドルト環の外周直径が12.5mmのときの視力を求めなさい。
(2) 視力が1.5のとき、外周直径が何mmのランドルト環まで明瞭に見えるか。

視力は、ランドルト環の外周直径に反比例する。
では、視力とランドルト環の外周直径の積は、常に一定なのです。
こういうときは、反比例のフォーマルな一般式、y=a / x よりも、
xy=a
という式のほうが、文章題を解くのは楽です。

今、与えられている1組の数値は、外周直径7.5mmで、視力1.0。
この問題の比例定数は、7.5×1.0=7.5
これさえわかれば、何でも解けます。

(1) ランドルト環の外周直径が12.5mmのときの視力を求めなさい。
xy=7.5 ということですから、
これに、x=12.5を代入して、
12.5y=7.5
y=7.5÷12.5
 =0.6

求める視力は、0.6 です。

(2) 視力が1.5のとき、外周直径が何mmのランドルト環まで明瞭に見えるか。
xy=7.5
これに、y=1.5を代入して、
1.5x=7.5
x=7.5÷1.5
 =5

求める外周直径は、5mmです。

と、小数のままスラスラと解きましたが、方程式の解き方の基本に戻って、全体を10倍してから解いても構いません。
こういう文章題は、特に指示がない場合は必ず割り切れますから、今回は、小数のまま解きました。


このように、「活用」の問題は、文章が長いし、不要な数値も入っていますが、構造は、

問題 y は x に反比例しているとする。x=1のとき、y=7.5である。y=12.5のときの xの値を求めなさい。

という基本問題と同じなのです。
それを見抜くこと。
構造を把握すること。
それが、数学における応用力なのですが、多くの生徒が、この応用力が不足しています。
応用問題を見ると、初めての問題を初めての解き方で解かねばならないと身構えてしまうのでしょうか。
知っていることを全部放り投げてしまいます。

まずは、基本を頭の中にしっかり入れること。
その上で、応用問題は、基本の知識を使うのだと、強く意識することです。

知識が頭の中にあるのに、使えない。
使い方がわからない。

その改善には、経験がものを言います。
問題を解き散らかし、わからないとすぐ解答解説を見て、その問題の解き方を暗記する・・・。
それを繰り返しても、応用力はつかないです。

同じ1時間、数学の勉強をするのならば。
基本が身についていない子は、まず基本の公式を理解し、暗記し、基本問題を沢山解きましょう。
公式も覚えていない、基本問題の解き方も知らない、という状態で「活用」の問題を解くのは、無理です。

しかし、基本は身についている子ならば、応用問題を時間をかけて考え抜きましょう。
1問に1時間かかってもいいです。
もしも、1時間かかって1問を自力で正解すれば、それだけで、応用力は爆上がりします。
その無駄のような1時間の間に、脳細胞が繋がって、繋がって、繋がって、頭の中に様々なバイパスが通るからです。

数学が得意な子、数学が好きな子は、当たり前のようにそれをやっています。
数学の問題を考えていたら、気がつくと2時間経っていた・・・。
そんな夢を見ているような時間の使い方をしているのです。
そして、それは決して無駄な時間ではないのです。
時短とかタイパの話は、よそでやりましょう。
数学の力をつけるときには不要です。

「活用」の問題は、教科書や問題集でも、数が少ない。
貴重な問題なのに、すぐに解答解説を見てわかった気になっても、そっくりな問題はテストには出ません。
構造や本質が見抜けるようにならない限り、全ての問題が見たことのない新しい問題です。
「活用」の問題は、深く考えて応用力を養う、数少ない機会です。
有効に使ってください。


関連記事